説明

フェノール樹脂の製造方法

【課題】2種類以上のフェノール化合物を用い、ゲル生成を抑制しつつ高重量平均分子量のフェノール樹脂を製造する。
【解決手段】反応活性が異なる少なくとも2種類のフェノール化合物からなるフェノール化合物成分と、特定の重合成分とを反応させてフェノール樹脂を製造する方法であって、該少なくとも2種類のフェノール化合物を該反応活性が低い順に1種類ずつ反応系内に段階的に導入するとともに、各導入に際して、導入されるフェノール化合物と導入される重合成分とのモル比が1:1〜2.5:1となる量で重合成分を反応系内に導入してフェノール化合物と反応させることによって、該少なくとも2種類のフェノール化合物を1種類ずつ重合成分と順次反応させること;を含む、フェノール樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂は、通常、フェノール類とアルデヒド類とを、蓚酸、パラトルエンスルホン酸、塩酸、及び硫酸のような、公知の有機酸及び/又は無機酸を触媒として用い、常圧下、還流温度で数時間付加縮合反応を行い、その後、脱水及び未反応モノマー類を除去する方法により得られる。
【0003】
一方、フェノール樹脂の性能を改善するため、フェノール樹脂を合成する時に、2種類のフェノール化合物を共重合させる方法を報告されている。特許文献1には、フェノール樹脂の使用時の流動性能を改善するため、分子内にフェノール性水酸基1個を有するフェノール化合物と、分子内にフェノール性水酸基2個を有するフェノール化合物とを共に含むビフェニルジイル架橋基型重合体単位と、メチレン架橋基型の重合体単位とを共重合させ、両者の重合度の比率を特定範囲にすることで、得られたフェノール樹脂の溶融粘度を低下する方法を提案している。共重合フェノール樹脂の合成法としては、原料2段仕込み法が言及されているが、実施例中、2段目の原料としてはビフェニルジイル架橋基型重合体の添加例しか開示されていない。更に、前記の特許文献1においては、フェノール類化合物トータル使用量は、混合架橋基型重合体のトータル使用量の2.5倍モル以上であり、特許文献1に記載される方法では重量平均分子量が1,000以下のフェノール樹脂しか得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−156553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば半導体装置及び発光装置等の表面保護膜及び層間絶縁膜等として好適に使用するために、2種類以上のフェノール化合物から高分子量の共重合フェノール樹脂を安定的に製造することが要求される。高分子量の共重合フェノール樹脂を製造する際には反応途中のゲル生成が問題となり、ゲル生成を抑制しつつ高分子量の共重合フェノール樹脂を合成できれば、機械特性に優れる共重合フェノール樹脂の提供が可能になることを本発明者らは見出した。かかる現状に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、2種類以上のフェノール化合物を用いてフェノール樹脂を合成する際に、簡便に、反応途中のゲル生成を抑制でき、かつ、高い重量平均分子量を有するフェノール樹脂を得ることができる、フェノール樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた結果、2種類以上のフェノール化合物を用いるとともに、フェノール化合物と、該フェノール化合物と重合させるための重合成分である、アルデヒド化合物、ケトン化合物、メチロール基を分子内に2個有する化合物、アルコキシメチル基を分子内に2個有する化合物、ジエン化合物、及びハロアルキル基を分子内に2個有する化合物からなる群から選ばれる1種類以上の化合物とのモル比率を一定範囲内に制御し、かつ、用いられるフェノール化合物を、反応活性の低い順に、段階的に該重合成分と重合させることで、反応過程中のゲル化を防ぐとともに高い重量平均分子量を有するフェノール樹脂を製造できることを予想外に見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
[1] 反応活性が異なる少なくとも2種類のフェノール化合物からなるフェノール化合物成分と、アルデヒド化合物、ケトン化合物、メチロール基を分子内に2個有する化合物、アルコキシメチル基を分子内に2個有する化合物、ジエン化合物、及びハロアルキル基を分子内に2個有する化合物からなる群から選ばれる1種類以上の重合成分とを反応させてフェノール樹脂を製造する方法であって、以下のステップ:
該少なくとも2種類のフェノール化合物を該反応活性が低い順に1種類ずつ反応系内に段階的に導入するとともに、各導入に際して、導入されるフェノール化合物と導入される重合成分とのモル比が1:1〜2.5:1となる量で重合成分を反応系内に導入してフェノール化合物と反応させることによって、該少なくとも2種類のフェノール化合物を1種類ずつ重合成分と順次反応させること;
を含み、
該反応活性は、同一の重合成分と重合させるための最低反応温度が低いほど反応活性が高いという指標に基づき該フェノール化合物間で相対的に規定される、フェノール樹脂の製造方法。
[2] 上記少なくとも2種類のフェノール化合物のうち少なくとも1種類がピロガロールであり、かつ、上記重合成分がビフェニルジイル骨格を有する化合物である、上記[1]に記載のフェノール樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2種類以上のフェノール化合物を用いてフェノール樹脂を合成する際の合成途中のゲル化を防ぐことができ、かつ、得られたフェノール樹脂は高い重量平均分子量を有することができる。よって本発明によれば機械特性に優れる共重合フェノール樹脂を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のフェノール樹脂の製造方法(以下、単に「製造方法」とも言う)について詳細に説明する。
本発明は、反応活性が異なる少なくとも2種類のフェノール化合物からなるフェノール化合物成分と、アルデヒド化合物、ケトン化合物、メチロール基を分子内に2個有する化合物、アルコキシメチル基を分子内に2個有する化合物、ジエン化合物、及びハロアルキル基を分子内に2個有する化合物からなる群から選ばれる1種類以上の化合物である重合成分とを反応させてフェノール樹脂を製造する方法であって、以下のステップ:該少なくとも2種類のフェノール化合物を該反応活性が低い順に1種類ずつ反応系内に段階的に導入するとともに、各導入に際して、導入されるフェノール化合物と導入される重合成分とのモル比が1:1〜2.5:1となる量で重合成分を反応系内に導入してフェノール化合物と反応させることによって、該少なくとも2種類のフェノール化合物を1種類ずつ重合成分と順次反応させること;を含み、該反応活性は、同一の重合成分と重合させるための最低反応温度が低いほど反応活性が高いという指標に基づき該フェノール化合物間で相対的に規定される、フェノール樹脂の製造方法を提供する。本発明においては、フェノール化合物を1種類ずつ段階的に反応系内に導入し、これを所定量(すなわちフェノール化合物と重合成分とのモル比が1:1〜2.5:1となる量)で導入された重合成分と反応させるという工程を繰り返す。これにより、本発明においては、反応系中のフェノール化合物の合計モル数(P)と重合成分の合計モル数(M)とのモル比率を、反応の全過程を通じて1:1〜2.5:1の範囲にすることができる。
【0010】
<フェノール化合物成分>
フェノール化合物成分は、反応活性が異なる少なくとも2種類のフェノール化合物からなる。なお本明細書においてフェノール化合物とはフェノール性水酸基を有する化合物全般を意味する。本発明において規定する、フェノール化合物の反応活性は、同一の重合成分と重合させるための最低反応温度が低いほど反応活性が高いという指標に基づき該2種類以上のフェノール化合物の間で相対的に規定される。反応活性は具体的には以下のモデル実験によって決定される。すなわち、各フェノール化合物と、任意の同一の重合成分(本発明において規定するもの)とのそれぞれの反応を加熱下で行い、反応液をゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により分析し、より低い加熱温度で重合成分の消失が確認されるフェノール化合物を、より反応活性が高いフェノール化合物と判定する。反応活性は、フェノール化合物のベンゼン環の電子密度が高いほど大きくなる傾向がある。よって反応活性が異なる2種類以上のフェノール化合物の組合せとしては、電子密度の高いピロガロール、フロログルシノール、レゾルシノール等の化合物と、電子密度の低いヒドロキシ安息香酸、フルオロフェノール等の化合物との組合せを例示できる。
【0011】
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ヒドロキシビフェニル、ベンジルフェノール、ニトロベンジルフェノール、シアノベンジルフェノール、アダマンタンフェノール、キシレノール、ニトロフェノール、フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、トリフルオロメチルフェノール、N−(ヒドロキシフェニル)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシフェニル)−5−メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、トリフルオロメチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸エチル、ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシベンズアミド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキシアセトフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾニトリル、カテコール、メチルカテコール、エチルカテコール、ヘキシルカテコール、ベンジルカテコール、ニトロベンジルカテコール、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、エチルレゾルシノール、ヘキシルレゾルシノール、ベンジルレゾルシノール、ニトロベンジルレゾルシノール、ハイドロキノン、カフェイン酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸メチル、ジヒドロキシ安息香酸エチル、ジヒドロキシ安息香酸ベンジル、ジヒドロキシベンズアミド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、ジヒドロキシアセトフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾニトリル、N−(ジヒドロキシフェニル)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ジヒドロキシフェニル)−5−メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、ニトロカテコール、フルオロカテコール、クロロカテコール、ブロモカテコール、トリフルオロメチルカテコール、ニトロレゾルシノール、フルオロレゾルシノール、クロロレゾルシノール、ブロモレゾルシノール、トリフルオロメチルレゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸メチル、トリヒドロキシ安息香酸エチル、トリヒドロキシ安息香酸ベンジル、トリヒドロキシベンズアミド、トリヒドロキシベンズアルデヒド、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾニトリル等が挙げられる。フェノール樹脂をアルカリ現像型の感光性組成物として用いた時のアルカリ現像液への溶解性の観点から、少なくとも2種類のフェノール化合物のうち少なくとも1種類がピロガロール又はフロログルシノールであることが好ましい。
【0012】
通常、得られたフェノール樹脂の物性のバランスの観点から、フェノール性水酸基価の異なる少なくとも2種類のフェノール化合物の使用が好ましく、特に、水酸基価が1価のフェノール化合物と水酸基価が3価のフェノール化合物との組み合わせがより好ましい。水酸基価が1価のフェノール化合物の好ましい例として、例えば、フェノール、クレゾール、フルオロフェノール等が挙げられる。また、水酸基価が3価のフェノール化合物の好ましい例として、例えば、ピロガロール、フロログルシノール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられ、特に好ましくはピロガロール又はフロログルシノールである。
【0013】
<重合成分>
フェノール化合物成分と重合させるための重合成分は、アルデヒド化合物、ケトン化合物、メチロール基を分子内に2個有する化合物、アルコキシメチル基を分子内に2個有する化合物、ジエン化合物、及びハロアルキル基を分子内に2個有する化合物からなる群から選ばれる1種類以上の化合物である。
【0014】
上記アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピバルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、トリオキサン、グリオキザール、シクロヘキシルアルデヒド、ジフェニルアセトアルデヒド、エチルブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキシル酸、5−ノルボルネンカルボキシアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ナフトアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0015】
上記ケトン化合物としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジシクロヘキシルケトン、ジベンジルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ビシクロヘキサノン、シクロヘキサンジオン、ブチンオン、ノルボルナノン、アダマンタノン、ビス(オキソシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
【0016】
上記メチロール基を分子内に2個有する化合物としては、ビス(ヒドロキシメチル)尿素、リビトール、アラビトール、アリトール、ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、ベンジルオキシプロパンジオール、ジメチルプロパンジオール、ジエチルプロパンジオール、モノアセチン、メチルニトロプロパンジオール、ノルボルネンジメタノール、ペンタエリスリトール、フェニルプロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ビス(ヒドロキシメチル)デュレン、ニトロキシリレングリコール、ジヒドロキシデカン、ジヒドロキシドデカン、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセン、ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタン、ベンゼンジメタノール、ベンゼンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)クレゾール、ビス(ヒドロキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、ビス(ヒドロキシメチル)アントラセン、ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルチオエーテル、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、ヒドロキシメチル安息香酸ヒドロキシメチルフェニル、ヒドロキシメチル安息香酸ヒドロキシメチルアニリド、ビス(ヒドロキシメチル)フェニルウレア、ビス(ヒドロキシメチル)フェニルウレタン、ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ビス(ヒドロキシメチルフェニル)プロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。反応性及び得られたフェノール樹脂の機械物性の観点から、分子骨格にベンゼン環を有する化合物が好ましく、ビフェニルジイル骨格を有する化合物がより好ましく、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニルが特に好ましい。
【0017】
上記アルコキシメチル基を分子内に2個有する化合物としては、ビス(メトキシメチル)尿素、ビス(メトキシメチル)酪酸、ビス(メトキシメチル)ノルボルネン、ビス(メトキシメチル)シクロヘキサン、ビス(メトキシメチル)シクロヘキセン、ビス(メトキシメチル)アダマンタン、ビス(メトキシメチル)ベンゼン、ビス(メトキシメチル)クレゾール、ビス(メトキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(メトキシメチル)ナフタレン、ビス(メトキシメチル)アントラセン、ビス(メトキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(メトキシメチル)ジフェニルチオエーテル、ビス(メトキシメチル)ベンゾフェノン、メトキシメチル安息香酸メトキシメチルフェニル、メトキシメチル安息香酸メトキシメチルアニリド、ビス(メトキシメチル)フェニルウレア、ビス(メトキシメチル)フェニルウレタン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(メトキシメチル)ビフェニル、ビス(メトキシメチルフェニル)プロパン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。アルコキシメチル基の炭素数は、反応活性の観点から好ましくは1〜10である。炭素数は1〜2であることがより好ましく、1であることが最も好ましい。反応性及び得られたフェノール樹脂の機械物性の観点から、分子骨格にベンゼン環を有するものが好ましく、ビフェニルジイル骨格を有する化合物がより好ましく、特に好ましくは4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニルである。
【0018】
上記ジエン化合物としては、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、デカジエン、メチルブタジエン、ブタンジオールジメタクリラート、ヘキサジエンオール、メチルシクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、ヒドロキシジシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジアリルエーテル、ジアリルスルフィド、アジピン酸ジアリル、ノルボルナジエン、テトラヒドロインデン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、シュウ酸ジアリル、グルタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、シアヌル酸ジアリル、シアヌル酸ジアリルプロピル、イソシアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリルプロピル等が挙げられる。
【0019】
上記ハロアルキル基を分子内に2個有する化合物としては、例えば、キシレンジクロライド、ビスクロロメチルジメトキシベンゼン、ビスクロロメチルデュレン、ビスクロロメチルビフェニル、ビスクロロメチル−ビフェニルカルボン酸、ビスクロロメチル−ビフェニルジカルボン酸、ビスクロロメチル−メチルビフェニル、ビスクロロメチル−ジメチルビフェニル、ビスクロロメチルアントラセン、エチレングリコールビス(クロロエチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(クロロエチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(クロロエチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(クロロエチル)エーテル等が挙げられる。
【0020】
特に好ましい例としては、反応性及び得られたフェノール樹脂の機械物性の観点、及びフェノール樹脂をアルカリ現像型の感光性組成物として用いた時のアルカリ現像液への溶解性のの観点から、少なくとも2種類のフェノール化合物のうち少なくとも1種類がピロガロール又はフロログルシノールであり、かつ、重合成分が、炭素数1〜10のアルコキシメチル基を分子内に2個有する化合物としての、ビフェニルジイル骨格を有する化合物である組合せが挙げられる。中でも、少なくとも2種類のフェノール化合物のうち少なくとも1種類がピロガロールであり、かつ、重合成分がビフェニルジイル骨格を有する化合物であることが特に好ましい。
【0021】
本発明においては、使用するフェノール化合物の種類の数と同じ原料仕込み回数を採用し、少なくとも2種類のフェノール化合物を反応活性が低い順に1種類ずつ反応系内に段階的に導入するとともに、各導入に際して、導入されるフェノール化合物と導入される重合成分とのモル比が1:1〜2.5:1となる量で重合成分を反応系内に導入してフェノール化合物と反応させる。重合成分は、1種類のフェノール化合物との混合物の状態で反応系内に導入してもよいし、1種類のフェノール化合物と重合成分とを各々別個に反応系内に導入してもよい。このようにして、少なくとも2種類のフェノール化合物を1種類ずつ重合成分と順次反応させる。ここで、各段階における反応はフェノール化合物を実質的に1種類ずつ反応させることを主に意図するが、例えば先の工程に由来する未反応フェノール化合物が後続の工程で反応する可能性を妨げるものではない。2種類以上のフェノール化合物と重合成分(炭素数1〜10のアルコキシメチル基又はメチロール基を分子内に2個有する化合物)とを反応させてフェノール樹脂を製造する際に、上記の段階的な工程手順を採用することにより、反応の全過程を通じて、反応系中で、フェノール化合物のトータルモル数と重合成分のトータルモル数とのモル比率を1:1〜2.5:1の範囲に保つことができる。よって、本発明によれば、フェノール樹脂合成途中のゲル化を防ぐことができ、かつ、得られたフェノール樹脂は高い重量平均分子量を有することができる。
【0022】
例えば、本発明において用いるフェノール化合物成分が2種類のフェノール化合物からなる場合、以下の(i)工程及び(ii)工程の順で反応を行うことができる。
(i)2種類のフェノール化合物のうち、より反応活性の低いフェノール化合物と、重合成分(炭素数1〜10のアルコキシメチル基又はメチロール基を分子内に2個有する化合物)とを、重合成分に対するフェノール化合物のモル比が1〜2.5となるように混合した後反応系内に導入し、フェノール化合物と重合成分とを反応させる。
(ii)上記(i)工程の後、フェノール化合物のうち、より反応活性の高いフェノール化合物と、重合成分(炭素数1〜10のアルコキシメチル基又はメチロール基を分子内に2個有する化合物)とを、重合成分に対するフェノール化合物のモル比が1〜2.5となるように混合した後反応系内に導入し、フェノール化合物と重合成分とを反応させる。
【0023】
上記(i)工程、上記(ii)工程の順での反応によって共重合フェノール樹脂を合成することにより、反応の全過程を通じて、反応系中に存在する重合成分(炭素数1〜10のアルコキシメチル基又はメチロール基を分子内に2個有する化合物)の量に対するフェノール化合物の量1倍モル以上を確保できる。従って、過剰なアルコキシメチル基又はメチロール基とフェノール性水酸基との反応によるゲル化の発生を防ぐことができる。
【0024】
本発明の各段階の反応においては、重合成分の合計使用モル数に対し、フェノール化合物の使用量は1倍モル以上2.5倍モル以下であり、好ましくは、1.1倍モル以上2.3倍モル以下、最も好ましくは1.2倍モル以上2.0倍モル以下である。重合成分の合計使用モル数に対し、フェノール化合物の使用量が1倍モル以上であれば、過剰なアルコキシメチル基又はメチロール基とフェノール性水酸基との反応によるゲル化を防ぐことができ、また、2.5倍モル以下であれば、高重量平均分子量のフェノール樹脂を得ることができる。
【0025】
フェノール化合物成分と重合成分との反応は、通常触媒の存在下で行う。触媒としては、特に限定されるものではないが、酸触媒が好ましい。酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸、硫酸ジエチル等の有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸、等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。触媒の使用量は、重合成分のモル数に対して、0.01〜2倍モルの範囲が好ましい。より好ましくは0.02〜1倍モルの範囲である。
【0026】
フェノール化合物成分と重合成分との反応は、必要に応じて有機溶剤中で行うことができる。使用できる有機溶剤の具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、γ―ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。有機溶剤の使用量としては、仕込み原料の総質量100質部に対して通常10〜1,000質量部、好ましくは20〜500質量部である。本発明の各段階での反応温度は、それぞれ通常40〜250℃であり、100〜200℃の範囲がより好ましい。本発明においては、フェノール化合物を反応活性が低い順に順次反応させる。よって、反応させるフェノール化合物毎に反応温度を段階的に低下させる等、反応過程を通じて反応温度を変動させてもよい。また、各段階におけるフェノール化合物の導入時に、反応系の温度を一旦低下(例えば室温まで)させ、その後再び所望の反応温度まで反応系を加熱してもよい。また反応時間は通常1〜10時間である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
下記実施例では以下のようにカラム構成の異なる2種類のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を使用している。
GPC−1:
カラム:Shodex KF−801 2本及び KF−802 1本を直列に
移動相:THF
GPC−2:
カラム:Shodex KD−806M 直列に2本
移動相:0.1mol/l EtBr/NMP
GPC−1,2共通:
ポンプ:JASCO PU−980
検出器:JASCO RI−930
カラムオーブン:JASCO CO−965 40℃
流速:1ml/min.
また、GPC−2によりポリマーの平均分子量を測定する際は、標準ポリスチレン(昭和電工社製 有機溶媒系標準試料 STANDARD SM−105)換算で算出した。
【0029】
<フェノール化合物の反応活性評価>
下記のモデル実験によって反応活性を評価した。
[m−クレゾールの反応活性]
窒素パージしながら、容量0.5Lのディーン・スターク装置付きセパラブルフラスラスコ中で、m-クレゾール9.73g(以下、「mC」とも言う)(0.09mol)、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル(以下、「BPDM」とも言う)10.90g(0.045mol)、ジエチル硫酸(以下、「DES」とも言う)1.05g(0.00675mol)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、「DMDG」とも言う)30gを50℃で混合攪拌し、固形物を溶解させた。
【0030】
混合溶液を攪拌しながら、オイルバスの温度80℃で1時間加熱し、反応液をGPC−1により分析したところ重合成分であるBPDMが消失しなかったため、オイルバス温度90℃まで昇温し、更に1時間攪拌反応させ、BPDMの消失が確認できなかった。前記のような操作を繰り返してオイルバス温度設定を10℃ずつ上げ、それぞれの温度下で1時間ずつ反応させた。オイルバス温度140℃にて30分間加熱した後、BPDMの消失を確認した。
【0031】
[2−フルオロフェノールの反応活性]
前記のmC反応活性確認実験におけるmCの代わりに、2−フルオロフェノール10.09g(以下、「2FP」とも言う)(0.09mol)を使用した以外、前記のmC反応活性確認実験と同様に反応を行った。BPDMの消失が確認されたのは、オイルバス温度140℃にて30分加熱した後であった。
【0032】
[ピロガロールの反応活性]
前記のmC反応活性確認実験におけるmCの代わりに、ピロガロール11.35g(以下、「PyG」とも言う)(0.09mol)を使用した以外、前記のmC反応活性確認実験と同様に反応を行った。BPDMの消失が確認されたのはオイルバス温度110℃にて35分加熱した後であった。
【0033】
各フェノール化合物とBPDMとの反応活性についての上記の結果から導き出される、フェノール化合物の反応活性の関係は、以下の通りである:
PyG>mC=2FP
【0034】
<実施例1>
窒素パージしながら、容量0.5Lのディーン・スターク装置付きセパラブルフラスラスコ中で、mC9.73g(0.09mol)、BPDM10.90g(0.045mol)、DES1.05g(0.00675mol)、DMDG30gを50℃で混合攪拌し、固形物を溶解させた。
【0035】
混合溶液をオイルバスにより140℃に加熱し、1時間反応させた後、反応液よりメタノールの発生を確認した。そのまま140℃で反応液を4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、反応液中に、PyG26.48g(0.21mol)、BPDM32.71g(0.135mol)、DMDG50g、DES0.35g(0.00225mol)を加え、再び反応液をオイルバスにより120℃に加熱し、更に1.5時間攪拌反応させた。
【0036】
次に反応容器を大気中で冷却し、これに別途テトラヒドロフラン100gを加えて攪拌して希釈した。上記反応希釈液を8Lの水に高速攪拌下で滴下し樹脂を分散析出させ、これを回収し、適宜水洗、脱水の後に真空乾燥を施し、フェノール樹脂を収率78%で得た。得られたフェノール樹脂はゲル化しておらず、GPC−2による重量平均分子量は、ポリスチレン換算で22,698であった。
【0037】
<実施例2>
窒素パージしながら、容量0.5Lのディーン・スターク装置付きセパラブルフラスラスコ中で、mC16.55g(0.15mol)、BPDM18.17g(0.075mol)、DES1.15g(0.0075mol)、DMDG40gを50℃で混合攪拌し、固形物を溶解させた。合成例1と同様、140℃で反応液を4時間反応させた後、次に、PyG18.92g(0.15mol)、BPDM30.29g(0.125mol)、DMDG43.6g、DES0.39g(0.0025mol)を加え、再び反応液をオイルバスにより120℃に加熱し、更に1.5時間攪拌反応させた。
【0038】
次に反応容器を大気中で冷却し、これに別途テトラヒドロフラン100gを加えて攪拌して希釈した。上記反応希釈液を8Lの水に高速攪拌下で滴下し樹脂を分散析出させ、これを回収し、適宜水洗、脱水の後に真空乾燥を施し、フェノール樹脂を収率76%で得た。得られたフェノール樹脂はゲル化しておらず、GPC−2による重量平均分子量は、ポリスチレン換算で18,800であった。
【0039】
<実施例3>
実施例2におけるm−クレゾールの代わりに、2FP16.82g(0.15mol)を用いた以外は、実施例2と同様に合成を行い、フェノール樹脂を収率73%で得た。得られたフェノール樹脂はゲル化しておらず、GPC−2による重量平均分子量は、ポリスチレン換算で16,253であった。
【0040】
<比較例1>
実施例1における、mCとBPDMとを先に縮合重合させた後、PyGの仕込み及びBPDMの追加を行うという原料2段仕込み法の代わりに、全ての原料を一括で仕込み、その後オイルバスを140℃に設定して加熱を始めた。オイルバスが133℃に到達した時点で、メタノールの発生が確認できた。更に10分間加熱を続けたところ、反応系が一気にゲル化してしまった。
【0041】
<比較例2>
実施例3における、2FPとBPDMとを先に縮合重合させた後、PyGの仕込み及びBPDMの追加を行うという原料2段仕込み法の代わりに、全ての原料を一括で仕込み、その後オイルバスを140℃に設定して加熱を始めた。オイルバスが140℃に到達した時点で、メタノールの発生が確認できた。更に16分間加熱を続けたところ、反応系が一気にゲル化してしまった。
【0042】
<比較例3>
実施例2におけるmC、PyGの順の仕込みに代えてPyG、mCの順の仕込みで反応を行った。先にPyG18.92g(0.15mol)、BPDM30.29g(0.125mol)、DMDG43.6g、DES0.39g(0.0025mol)を、オイルバスにより120℃に加熱し、1.5時間攪拌反応させ、反応液を室温まで冷却した後、mC16.55g(0.15mol)、BPDM18.17g(0.075mol)、DES1.15g(0.0075mol)、DMDG40gを加え、オイルバスを140℃まで昇温し始めた。オイルバス温度が130℃に到達した時点で、反応系の粘度が急激に上昇し、2分間でゲル化してしまった。
【0043】
実施例1〜3及び比較例1〜3の結果を表1に纏める。なお、表中のフェノール化合物の反応活性については上記モデル実験で確認された通りであり、以下のように表される。
PyG>mC=2FP
【0044】
【表1】

【0045】
上記表中、P/M モル比は、合成に使用されたフェノール化合物の合計モル数の、合成に使用されたBPDMの合計モル数に対する比率である。
【0046】
上記表1から、実施例1〜3においては、各段階の仕込み量においてフェノール化合物の重合成分に対するモル比を1〜2.5の範囲としたため、反応の全過程を通じた、フェノール化合物の合計モル数の、BPDMの合計モル数に対する比率が1〜2.5の範囲にあり、かつ、BPDMとの反応活性が低いフェノール化合物をBPDMと先に反応させたため、反応途中ゲル化が起きず、かつ、高い重量平均分子量のフェノール樹脂が得られた。一方、比較例1〜2においては、反応活性が異なる2種類のフェノール化合物とBPDMとを一括に仕込んだ。また、比較例3においては、2種類のフェノール化合物の分割仕込み法を採用したが、反応活性の高いフェノール化合物を先にBPDMとを反応させた。よって、比較例1〜3のいずれにおいても、反応途中にゲル化してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の製造方法によって得られるフェノール樹脂は、半導体装置及び発光装置の表面保護膜、フリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜等を形成するための感光性樹脂組成物に、また、層間絶縁膜用としては、再配線用絶縁膜、多層回路の層間絶縁膜等を形成するための感光性樹脂組成物に、好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応活性が異なる少なくとも2種類のフェノール化合物からなるフェノール化合物成分と、アルデヒド化合物、ケトン化合物、メチロール基を分子内に2個有する化合物、アルコキシメチル基を分子内に2個有する化合物、ジエン化合物、及びハロアルキル基を分子内に2個有する化合物からなる群から選ばれる1種類以上の重合成分とを反応させてフェノール樹脂を製造する方法であって、以下のステップ:
該少なくとも2種類のフェノール化合物を該反応活性が低い順に1種類ずつ反応系内に段階的に導入するとともに、各導入に際して、導入されるフェノール化合物と導入される重合成分とのモル比が1:1〜2.5:1となる量で重合成分を反応系内に導入してフェノール化合物と反応させることによって、該少なくとも2種類のフェノール化合物を1種類ずつ重合成分と順次反応させること;
を含み、
該反応活性は、同一の重合成分と重合させるための最低反応温度が低いほど反応活性が高いという指標に基づき該フェノール化合物間で相対的に規定される、フェノール樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも2種類のフェノール化合物のうち少なくとも1種類がピロガロールであり、かつ、前記重合成分がビフェニルジイル骨格を有する化合物である、請求項1に記載のフェノール樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2012−251106(P2012−251106A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126377(P2011−126377)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】