説明

フェノール樹脂及びその製造方法

【課題】環境負荷を抑え、良好な特性を有するフェノール樹脂を提供する。
【解決手段】フェノール樹脂において、下記一般式(1)で示される構造を含む化合物を原料とする。
【化7】


(式中、Rは(n+l)価の多価アルコール誘導体を表し、Rは置換若しくは無置換芳香族環を表し、RはCH,C,C,C置換若しくは無置換芳香族環のいずれかを表し、m及びnは1以上の整数、lは0もしくは1以上の整数を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、接着剤や塗料の成分として幅広く用いられているフェノール樹脂において、環境への配慮が検討されている。例えば、遊離モノマーを低減したフェノール樹脂や、成型時にガスが発生しないフェノール樹脂が、既に市場に投入されている。
【0003】
一方、PET(Polyethylene Terephthalate)ボトルは、軽量で透明性、ガスバリア性に優れ、高強度であることから、近年、使用量が急増している。そして、使用量の急増に伴い、廃棄量が増大し、社会問題化している。
【0004】
PETボトルは分別収集され、リサイクルされる。しかしながら、PET樹脂を再生する際、エステル結合の加水分解によりPETの分子量が減少し、PETの溶融粘度と機械的強度が低下するという問題が生じる。そのため、再生PET樹脂は、現状として、主に繊維分野や産業用資材分野において利用されているに過ぎない。
【0005】
そこで、再生PET樹脂の新たな利用方法が模索されている。例えば、グリコール類による解重合反応を用いて生成されたアルキド樹脂(特許文献1など参照)、ポリエステル樹脂(特許文献2など参照)、光硬化性ウレタン樹脂(特許文献3など参照)などをそれぞれ塗料として用いることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3310661号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3443409号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2004−307779号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の再生PET樹脂において、分解時の特性の低下により、用途が限定されるという問題がある。
そこで、本発明は、このような問題に鑑み、環境負荷を抑え、良好な特性を有するフェノール樹脂を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の一態様のフェノール樹脂は、下記一般式(1)で示される構造を含む化合物を原料とすることを特徴とする。
【化1】

(式中、Rは(n+l)価の多価アルコール誘導体を表し、Rは置換若しくは無置換芳香族環を表し、RはCH,C,C,C置換若しくは無置換芳香族環のいずれかを表し、m及びnは1以上の整数、lは0もしくは1以上の整数を表す)
このような構成の化合物を原料とするフェノール樹脂により、環境負荷を抑え、良好な特性を得ることが可能となる。
【0009】
また、本発明の一態様のフェノール樹脂は、下記一般式(2)で示される構造を含むことを特徴とする。
【化2】

(式中、Rは(l+n+p)価の多価アルコール誘導体を表し、R及びRはそれぞれ独立に置換または無置換芳香族環を表し、R及びRはそれぞれ独立にCH,C,C,C芳香族環のいずれかを表し、qは1〜5の整数を表し、RはH又はOH(少なくとも一つはOH)を表し、m、p、oは1以上の整数、lおよびnは0もしくは1以上の整数を表す。)
このような構成のフェノール樹脂により、環境負荷を抑え、良好な特性を得ることが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様のフェノール樹脂は、ポリエステルを1分子内に2つ以上の水酸基を有するポリオールで解重合させた解重合体に、フェノール基を有するモノカルボン酸を反応させて得られることを特徴とする。
このような構成のフェノール樹脂により、環境負荷を抑え、良好な特性を得ることが可能となる。
【0011】
このようなフェノール樹脂において、ポリエステルとして、再生ポリエチレンテレフタレートが用いられることが好ましい。このように再生ポリエチレンテレフタレートを用いることにより、環境負荷を抑えることが可能となる。
【0012】
また、このようなエポキシ樹脂において、ポリオールは、トリメチロールプロパンを含むことが好ましい。トリメチロールプロパンを用いることにより、より安定性高く解重合することが可能となる。
【0013】
さらに、このようなフェノール樹脂に、分子中に複数の環状エーテル基及び環状チオエーテル基の少なくともいずれかを有する熱硬化性成分を混合することにより、熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。このような熱硬化性組成物により、耐熱性、耐薬品性、柔軟性などに優れた良好な特性を有する硬化皮膜を形成することができる。
【0014】
また、本発明の一態様のフェノール樹脂の製造方法は、ポリエステルを1分子内に2つ以上の水酸基を有するポリオールで解重合させた解重合体に、フェノール基を有するモノカルボン酸を反応させて得られることを特徴とする。
このような構成により、環境負荷を抑え、良好な特性を有するフェノール樹脂を生成することが可能となる。
【0015】
また、本発明の一態様のフェノール樹脂の製造方法において、ポリエステルとして、再生ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。このように再生ポリエチレンテレフタレートを用いることにより、環境負荷を抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様のフェノール樹脂及びその製造方法によれば、環境負荷を抑え、良好な特性を有するフェノール樹脂を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施態様について説明する。
本実施態様のフェノール樹脂は、ポリエステルを解重合させる工程と、その解重合体とフェノール基を有するモノカルボン酸とを反応させる工程より生成される。
【0018】
先ず、ポリエステルを解重合させる。このとき、1分子内に2つ以上の水酸基を有するポリオールで解重合させる。ここで、溶剤を用いることなく加熱溶解させたポリエステルに、液状のポリオールを添加して解重合させることが好ましい。溶剤を用いない解重合により、COの削減など、環境負荷の低減が可能となる。ポリオールが固形の場合は、加熱溶解させ液状にして添加することができる。また、解重合触媒の存在下、約200〜300℃で反応を行うことが好ましい。
【0019】
本実施態様のフェノール樹脂の生成に用いられるポリエステルとしては、特に限定されるものではなく、公知のポリエステルを用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)を好適に用いることができる。
【0020】
特に、ペットボトル廃材などの廃棄物から回収されたリサイクルPET及び再生PETが好適に用いられる。リサイクルPETは、回収されたPETを粉砕、洗浄されたものを、再生PETは、洗浄、ペレット化されたものを、市場から手に入れることができる。なお、後述するように、再生時に水を取り除く必要はなく、また、高濃度で用いることができる。
【0021】
このようなポリエステルにおいて、その形状は特に限定されないが、ペレット状及び又はフレーク状であることが好ましい。また、粉状に細かく粉砕する必要はないが、粉砕されたものでもかまわない。
【0022】
本実施態様のフェノール樹脂の生成に用いられるポリオールは、1分子中に2個以上の水酸基を有するものである。2官能ポリオールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(NPG)、スピログリコール、ジオキサングリコール、アダマンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、メチルオクタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,1,4シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパンジオール1,3、3−メチルペンタンジオール1,5、ヘキサメチレングリコール、オクチレングリコール、9−ノナンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAなどの二官能フェノールのエチレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAなどの二官能フェノールのプロピレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド共重合変性化合物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、アダマンタンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ヒドロキシル基末端ポリアルカンジエンジオール類、(例えば1,4−ポリイソプレンジオール1,4−および1,2−ポリブタジエンジオール並びにそれらの水素添加物などのエラストマー)が挙げられる。
【0023】
これらの市販品としては、例えば、ポリカプロラクトンジオールでは、プラクセル(登録商標)205、プラクセルL205AL、プラクセル205U、プラクセル208、プラクセルL208AL、プラクセル210、プラクセル210N、プラクセル212、プラクセルL212AL、プラクセル220、プラクセル220N、プラクセル220NP1、プラクセルL220AL、プラクセル230、プラクセル240、プラクセル220EB、プラクセル220EC(以上いずれもダイセル化学工業株式会社製)、ヒドロキシル基末端ポリアルカンジエンジオールでは、エポール(登録商標)(水素化ポリイソプレンジオール、分子量1,860、平均重合度26、出光石油化学社製)、PIP(ポリイソプレンジオール、分子量2,200、平均重合度34、出光石油化学社製)、ポリテール(登録商標)H(水素化ポリブタジエンジオール、分子量2,200、平均重合度39、三菱化学社製)、R−45HT(ポリブタンジオール、分子量2,270、平均重合度42、出光石油化学社製)などが挙げられる。
【0024】
また、3官能以上のポリオールとしては、具体的には、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン(TMP)、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、アダマンタントリオール、ポリカプロラクトントリオール、芳香環を有するポリオールとしては、3官能以上のフェノール化合物のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性物、複素環を有するポリオールとしては、イソシアヌル酸トリエタノールなどが挙げられる。
【0025】
これらの市販品としては、例えば、ポリカプロラクトントリオールでは、プラクセル303、プラクセル305、プラクセル308、プラクセル312、プラクセルL312AL、プラクセル320ML、プラクセルL320AL(以上いずれもダイセル化学工業株式会社製)、イソシアヌル酸トリエタノールでは、セイク(四国化成社製)などが挙げられる。
【0026】
これらのポリオールのうち、特に、トリメチロールプロパン(TMP)又はネオペンチルグリコール(NPG)を含むことが好ましい。
【0027】
また、ポリオールとしては、植物に由来するアルコール成分を用いても良く、具体的には、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールやひまし油類アルコール成分などが挙げられる。
【0028】
ひまし油類アルコール成分の市販品としては、例えば、URIC H−30、URIC H−31、URIC H−52、URIC H−56、URIC H−57、URIC H−62、URIC H−73X、URIC H−92、URIC H−420、URIC H−854、URIC Y−202、URIC Y−403、URIC Y−406、URIC Y−563、URIC AC−005、URIC AC−006、URIC PH−5001、URIC PH−5002、URIC PH−6000、URIC F−15、URIC F−25、URIC F−29、URIC F−40、URIC SE−2010、URIC SE−3510、URIC SE−2606、URIC SE−3506、URIC SE−2003、POLYCASTOR#10、POLYCASTOR#30(以上いずれも伊藤製油社製)などが挙げられる。
これらポリオールは、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、このとき、解重合を促進させるために解重合触媒を使用することができる。解重合触媒としては、例えば、モノブチル錫ハイドロオキサイド、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫−2−エチルヘキサノエート、ジブチル錫ジラウレート、酸化第一錫、酢酸錫、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートなどを挙げることができる。
【0030】
これらの解重合触媒の使用量は、ポリエステルとポリオールの合計量100重量部に対して、通常、0.005〜5重量部であることが適当である。より好ましくは、0.05〜3重量部である。
【0031】
また、解重合触媒ではないが、解重合を促進する添加剤として水を用いることもできる。水は、再生PETに不純物として存在しているものであって、PETをリサイクルする際に分子量低下の原因になるため、通常は、非常にエネルギーを消費する乾燥工程によって除去するものである。しかしながら、本実施形態においては、むしろ解重合を促進するため、除去の必要がなく、さらに水を加えてもよい。例えば、水を加えて、押出し成型機のようなペレット製造機で、一度溶融混練した再生PETペレットを使うことにより、再生PETの分子量が低いため、短い反応時間で解重合できる。また、溶融時の粘度が低いため、高濃度の反応が可能となる。
【0032】
一般に、市販のポリエステルペレット(バージン)のIV値(固有粘度)は、1.0−1.2程度であるが、リサイクルPETや再生PETのIV値は、0.6−0.7と低い。このため、リサイクルPETや再生PETにおいて、解重合に必要な時間を短縮することができる。また、PETの再生時に水分を取り除くことなく、押出し成型機でリペレットしたもののIV値は、低いもので0.1前後であるが、そのまま本実施形態におけるポリエステルとして用いることが可能である。
【0033】
このようにしてポリエステルをポリオールで解重合することにより、例えば、下記一般式(1)で示される構造を含む化合物(原料化合物)が生成される。
【化3】

(式中、Rは(n+l)価の多価アルコール誘導体を表し、Rは置換若しくは無置換芳香族環を表し、RはCH,C,C,C置換若しくは無置換芳香族環のいずれかを表し、m及びnは1以上の整数、lは0もしくは1以上の整数を表す)
【0034】
次いで、このようにして得られたポリエステルをポリオールで解重合した解重合体と、フェノール基を有するモノカルボン酸とを反応させる。このとき、ポリエステルを解重合した解重合体に、フェノール基を有するモノカルボン酸を添加し、触媒の存在下、約150℃〜250℃で反応を行うことが好ましい。
このとき用いられるフェノール基を有するモノカルボン酸としては、例えば、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2−アミノ−3−ヒドロキシフェニルプロピオン酸3,4,ジヒドロキシフェニルアラニン、3,4,5トリヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。このうち、特に、ヒドロキシ安息香酸を含むことが好ましい。
【0035】
このようにして、例えば、下記一般式(2)で示される構造を有するフェノール樹脂が生成される。
【化4】

(式中、Rは(l+n+p)価の多価アルコール誘導体を表し、R及びRはそれぞれ独立に置換または無置換芳香族環を表し、R及びRはそれぞれ独立にCH,C,C,C芳香族環のいずれかを表し、qは1〜5の整数を表し、RはH又はOH(少なくとも一つはOH)を表し、m、p、oは1以上の整数、lおよびnは0もしくは1以上の整数を表す。)
【0036】
得られたフェノール樹脂は、固形分100%でアモルファスな固形、半固形、もしくは流動性のある液体であり、溶剤可溶性であることが好ましい。このようなフェノール樹脂は、例えば、紙、木材、金属、プラスティック、ガラス、セラミックスに対する塗料、インキ、コーティング剤、接着剤、エポキシ樹脂の原料として用いることができる。
【0037】
フェノール樹脂が固形分100%で半固形の場合、接着剤や封止剤として好適に使用することができる。さらに、有機溶剤や反応性希釈剤を加え、粘度を調整することにより、各種コーティング剤、塗料として好適に使用することができる。
【0038】
このようにして得られたフェノール樹脂を、さらに分子中に複数の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性成分と共に配合することにより、熱硬化性組成物を生成することができる。
【0039】
このような分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4又は5員環の環状エーテル基、又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0040】
多官能エポキシ化合物としては、エポキシ化植物油、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂などが挙げられる。このうち、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0041】
市販品としては、例えば、エポキシ化植物油では、アデカサイザー(登録商標)O−130P、アデカサイザーO−180A、アデカサイザーD−32、アデカサイザーD−55(以上いずれもADEKA社製);ビスフェノールA型エポキシ樹脂では、jER(登録商標)828、jER834、jER1001、jER1004(以上いずれも三菱化学社製)、EHPE(登録商標)3150(ダイセル化学工業社製)、エピクロン(登録商標)840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055(以上いずれもDIC社製)、エポトート(登録商標)YD−011、YD−013、YD−127、YD−128(以上いずれも新日鐵化学社製)、D.E.R.(登録商標)317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664(以上いずれもダウケミカル社製)、アラルダイト(登録商標)6071、アラルダイト6084、アラルダイトGY250、アラルダイトGY260(以上いずれもBASFジャパン社製)、スミエポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128(以上いずれも住友化学工業社製)、A.E.R.(登録商標)330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664(以上いずれも旭化成工業社製);ブロム化エポキシ樹脂では、jERYL903(三菱化学社製、エピクロン152、エピクロン165(以上いずれもDIC社製)、エポトートYDB−400、エポトートYDB−500(以上いずれも新日鐵化学社製)、D.E.R.542(ダウケミカル社製)、アラルダイト8011(BASFジャパン社製)、スミエポキシESB(登録商標)−400、ESB−700(以上いずれも住友化学工業社製)、A.E.R.711、A.E.R.714(以上いずれも旭化成工業社製);ノボラック型エポキシ樹脂では、jER152、jER154(以上いずれも三菱化学社製)、D.E.N.(登録商標)431、D.E.N.438(以上いずれもダウケミカル社製)、エピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865(以上いずれもDIC社製)、エポトートYDCN−701、YDCN−704(以上いずれも新日鐵化学社製)、アラルダイトECN1235、アラルダイトECN1273、アラルダイトECN1299、アラルダイトXPY307(以上いずれもBASFジャパン社製)、EPPN(登録商標)−201、EOCN(登録商標)−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、NC−3000(以上いずれも日本化薬社製)、スミエポキシESCN(登録商標)−195X、スミエポキシESCN−220(以上いずれも住友化学工業社製)、A.E.R.ECN−235、ECN−299(以上いずれも旭化成工業社製);ビスフェノールF型エポキシ樹脂では、エピクロン830(DIC社製)、jER807(三菱化学社製)、エポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004(以上いずれも新日鐵化学社製)、アラルダイトXPY306(BASFジャパン社製);水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂では、エポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(以上いずれも新日鐵化学社製);グリシジルアミン型エポキシ樹脂では、jER604(三菱化学社製)、エポトートYH−434(新日鐵化学社製)、アラルダイトMY720(BASFジャパン社製)、スミエポキシELM(登録商標)−120(住友化学工業社製);ヒダントイン型エポキシ樹脂では、アラルダイトCY−350(BASFジャパン社製)などの;脂環式エポキシ樹脂では、セロキサイド(登録商標)2021(ダイセル化学工業社製)、アラルダイトCY175、CY179(以上いずれもBASFジャパン社製);トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂では、YL−933(三菱化学社製)、T.E.N.、EPPN−501、EPPN−502(以上いずれもダウケミカル社製);ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物では、YL−6056、YX−4000、YL−6121(以上いずれも三菱化学社製);ビスフェノールS型エポキシ樹脂では、EBPS−200(日本化薬社製)、EPX−30(ADEKA社製)、EXA−1514(DIC社製);ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂では、jER157S(三菱化学社製);テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂では、jERYL−931(三菱化学社製)、アラルダイト163(BASFジャパン社製);複素環式エポキシ樹脂では、アラルダイトPT810(BASFジャパン社製)、TEPIC(登録商標)(日産化学工業社製);ジグリシジルフタレート樹脂では、ブレンマー(登録商標)DGT(日油社製);テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂では、ZX−1063(以上いずれも新日鐵化学社製);ナフタレン基含有エポキシ樹脂では、ESN−190、ESN−360(以上いずれも新日鐵化学社製)、HP−4032、EXA−4750、EXA−4700(以上いずれもDIC社製);ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂では、HP−7200、HP−7200H(以上いずれもDIC社製);グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂では、CP−50S、CP−50M(以上いずれも日油社製);エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体では、PB−3600(ダイセル化学工業製)、CTBN変性エポキシ樹脂では、YR−102、YR−450(以上いずれも新日鐵化学社製)などが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0042】
多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0043】
エピスルフィド樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂が挙げられる。市販品としては、YL7000(新日鐵化学社製)などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0044】
これらの熱硬化性成分は、単独で又は2種以上を併用することができ、その配合割合は、フェノール樹脂100質量部に対して、20〜300質量部の範囲が適当である。
【0045】
このようにして得られた熱硬化性組成物を熱硬化させることにより、耐熱性、耐薬品性に優れ、柔軟性や良好な硬度を有する硬化皮膜を形成することができる。このような熱硬化性樹脂は、例えばICカード、タッチパネル、有機ELディスプレイなどのフィルム張り合わせの接着剤や、封止剤、プリント配線板、塗料、各種コーティング剤として、好適に使用することが可能である
【0046】
また、得られたフェノール樹脂、熱硬化性組成物において、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、また、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤や、機械的強度を上げるための無機フィラーを添加することができる。また、シランカップリング剤、消泡剤、レベリング剤などの密着性付与剤や、他の添加剤を用いることができる。さらに、銀、銅など金属、カーボンなど導電性物質を加えることにより、導電性組成物として用いることもできる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を示して本実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
(PET解重合体の合成)
先ず、以下のようにしてPET解重合体を合成した。
【0048】
[PET解重合体合成例1]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコに、IV値0.6〜0.7のリサイクルPETフレーク192部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、300℃に昇温させた塩浴に浸した。PETが溶解したところで、攪拌を開始するとともに、酸化ジブチルスズ0.65部を添加した。
【0049】
次いで、予め130℃で加温し溶解させたトリメチロールプロパン(TMP)134部をPETが固化しないよう注意しながら少量ずつ添加した。この間、粘度が低下した段階で攪拌速度を150rpmに高めた。さらに、塩浴から予め240℃へ昇温した油浴に交換し、フラスコ内温を220℃(±10℃)に保ち5時間反応させた後、室温まで冷却した。
得られた解重合体を解重合体Aと称す。
【0050】
[PET解重合体合成例2]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコに、IV値0.6〜0.7のリサイクルPETフレーク192部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、300℃に昇温させた塩浴に浸した。PETが溶解したところで、攪拌を開始するとともに、酸化ジブチルスズ0.65部を添加した。
【0051】
次いで、予め130℃で加温し溶解させたトリメチロールプロパン(TMP)45部をPETが固化しないよう注意しながら少量ずつ添加した。この間、粘度が低下した段階で攪拌速度を150rpmに高めた。さらに、塩浴から予め240℃へ昇温した油浴に交換し、フラスコ内温を220℃(±10℃)に保ち5時間反応させた後、室温まで冷却した。
得られた解重合体を解重合体Bと称す。
【0052】
このようにして得られたPET解重合体を、以下のようにして、フェノール基を有するモノカルボン酸と反応させた。
【0053】
[合成例1]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコに、解重合体A 200部、3−ヒドロキシ安息香酸250部、ジブチル錫オキサイド0.5部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした。湯浴を200℃まで徐々に加熱しながら約4〜6時間かけて縮合水を除き、十分に酸価が低下した時点で油浴を下げ、フラスコ内容物を取り出し、PET含有率26%のフェノール樹脂を得た。
【0054】
さらに、得られたフェノール樹脂を、カルビトールアセテートで希釈し、固形分80%のワニスを得た。得られたワニスをワニスAと称す。
【0055】
[合成例2]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコに、解重合体A 200部、パラヒドロキシ安息香酸250部、ジブチル錫オキサイド0.5部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした。湯浴を200℃まで徐々に加熱しながら約4〜6時間かけて縮合水を除き、十分に酸価が低下した時点で油浴を下げ、フラスコ内容物を取り出し、PET含有率26%のフェノール樹脂を得た。
さらに、得られたフェノール樹脂を、カルビトールアセテートで希釈し、固形分80%のワニスを得た。得られたワニスをワニスBと称す。
【0056】
[合成例3]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた1000mlの四口丸底セパラブルラスコに、解重合体B 433部、3−ヒドロキシ安息香酸250部、ジブチル錫オキサイド0.5部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした。湯浴を200℃まで徐々に加熱しながら約4〜6時間かけて縮合水を除き、十分に酸価が低下した時点で油浴を下げ、フラスコ内容物を取り出し、PET含有率51%のフェノール樹脂を得た。
さらに、得られたフェノール樹脂を、カルビトールアセテートで希釈し、固形分80%のワニスを得た。得られたワニスをワニスCと称す。
【0057】
[合成例4]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた1000mlの四口丸底セパラブルラスコに、解重合体B 433部、パラヒドロキシ安息香酸250部、ジブチル錫オキサイド0.5部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした。湯浴を200℃まで徐々に加熱しながら約4〜6時間かけて縮合水を除き、十分に酸価が低下した時点で油浴を下げ、フラスコ内容物を取り出し、PET含有率51%のフェノール樹脂を得た。
さらに、得られたフェノール樹脂を、カルビトールアセテートで希釈し、固形分80%のワニスを得た。得られたワニスをワニスDと称す。
【0058】
合成例1〜4で得られたワニスA〜Dについて、以下のような評価を行った。
[組成物評価]
〈再生ポリエステル含有率〉
合成例1〜4で得られたフェノール樹脂の再生樹脂成分の含有率を算出した。
結果を表1に示す。
【0059】
〈溶剤溶解性試験〉
合成例1〜4で得られたフェノール樹脂の溶剤溶解性を、以下のようにして確認した。
【0060】
合成例1〜4で得られたフェノール樹脂各50部に対して、各種溶剤を50部加え、攪拌し、解重合物の50wt%溶液を作成しその溶液の透明度を評価した。評価基準は以下の通りである。
完全に透明である:○
やや濁りがある :△
濁りがある :×
結果を表1に併せて示す。
【表1】

【0061】
また、得られたフェノール樹脂を、表2に示す混合比でエポキシ樹脂と混合し、得られた配合例1〜7の組成物について、コーティング剤としての性能を評価した。
【表2】

*1 jER828(三菱化学社製)
*2 キュアゾール2E4MZ(四国化成社製)
【0062】
〈ゲル化試験〉
配合例1〜4の組成物の硬化性を確認するために、以下のようにしてゲル化試験を行った。
ゲル化試験機として、ゲル化試験機1563(井元製作所社製)を用い、170℃でゲル化するまでの時間を測定した。
測定結果を表3に示す。
【0063】
[硬化物評価]
配合例1〜7の組成物を、ガラス板にアプリケーターにて膜厚30umで塗布した。これを熱風循環式乾燥炉にて70℃×20分で乾燥後、120℃×30分で硬化させた。得られた硬化物について、以下の試験を行った。
【0064】
〈ラビング試験〉
以下のようにしてラビング試験を行い、硬化物の硬化性を評価した。
得られた硬化物を、アセトンを含ませたウエスにて50回こすり、表面状態を目視にて観察した。評価基準は以下の通りである。
表面の溶解がないもの(硬化が十分):○
表面に僅かな溶解が見られたもの(硬化が不十分):×
評価結果を表3に併せて示す。
【0065】
〈鉛筆硬度試験〉
硬化塗膜に鉛筆の芯の先が平らになるように研がれたBから9Hの鉛筆を、塗膜に対して45℃の角度で、1kgの荷重をかけて押し付けた。この荷重をかけた状態で、約1cm程度塗膜を引っかき、塗膜の剥がれない鉛筆の硬さを記録した。
評価結果を表3に併せて示す。
【表3】

【0066】
以上詳述した通り、本実施形態のフェノール樹脂は、一切の溶剤を使用することなく合成することが可能である。さらに、再生樹脂を高効率で使用することができるため、環境へ与える負荷を軽減することが可能である。
また、本実施形態のフェノール樹脂は、良好な硬化性を有し、その硬化物においても、良好な耐薬品性、硬度を有していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される構造を含む化合物を原料とすることを特徴とするフェノール樹脂。
【化5】

(式中、Rは(n+l)価の多価アルコール誘導体を表し、Rは置換若しくは無置換芳香族環を表し、RはCH,C,C,C置換若しくは無置換芳香族環のいずれかを表し、m及びnは1以上の整数、lは0もしくは1以上の整数を表す)
【請求項2】
下記一般式(2)で示される構造を含むことを特徴とするフェノール樹脂。
【化6】

(式中、Rは(l+n+p)価の多価アルコール誘導体を表し、R及びRはそれぞれ独立に置換または無置換芳香族環を表し、R及びRはそれぞれ独立にCH,C,C,C芳香族環のいずれかを表し、qは1〜5の整数を表し、RはH又はOH(少なくとも一つはOH)を表し、m、p、oは1以上の整数、lおよびnは0もしくは1以上の整数を表す。)
【請求項3】
ポリエステルを1分子内に2つ以上の水酸基を有するポリオールで解重合させた解重合体に、フェノール基を有するモノカルボン酸を反応させて得られることを特徴とするフェノール樹脂。
【請求項4】
前記ポリエステルは、再生ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項3に記載のフェノール樹脂。
【請求項5】
前記ポリオールは、トリメチロールプロパンを含むことを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれか1項に記載のフェノール樹脂。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載のフェノール樹脂と、分子中に複数の環状エーテル基及び環状チオエーテル基の少なくともいずれかを有する熱硬化性成分と、を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
ポリエステルを1分子内に2つ以上の水酸基を有するポリオールで解重合させた解重合体に、フェノール基を有するモノカルボン酸を反応させることを特徴とするフェノール樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記ポリエステルは、再生ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項7に記載のフェノール樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2012−31226(P2012−31226A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169335(P2010−169335)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】