説明

フェノール樹脂型架橋剤

【課題】高感度で且つアルカリ溶解特性、硬化膜の膜特性に優れたフォトレジスト用アルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤およびその製造法を提供する。
【解決手段】2種類の繰り返し単位(A)および(B)を含んでなる、レゾールタイプの高分子構造を有するアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤。但し、式中の波線は、隣接する繰り返し単位との結合部位であることを示す。アルキルフェノール類とアルデヒドをレゾール化し、次いでアルコールによりアルコキシ化する。重量平均分子量は2000〜20000である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を硬化させるために用いる架橋剤に関し、特に、レゾールタイプの高分子構造を有するフェノール樹脂型架橋剤に関する。この架橋剤は、半導体産業において多用される感光性樹脂組成物の架橋剤、特に、比較的低温での架橋硬化反応を必要とする感光性樹脂組成物に用いる架橋剤として特に有用である。
【背景技術】
【0002】
半導体産業では、半導体素子の表面保護膜(パッシベーション膜)、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層、およびフォトリソグラフィーにおけるマスク等として、感光性樹脂組成物が多く用いられる。その中で、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜等には、従来、耐熱性や機械的特性等に優れたポリイミド系樹脂およびポリベンゾオキサゾール系樹脂が広く使用されている。また、感光性フォトレジストの一例としては、アルカリ現像可能なポジ型感光性ポリイミド前駆体樹脂組成物が知られている。
【0003】
ポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体を熱的に脱水閉環させてポリイミド薄膜やポリベンゾオキサゾール薄膜とする場合、通常は350℃前後の高温での焼成を必要とする。しかし、例えば次世代メモリとして有望なMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory;磁気抵抗メモリ)等は高温プロセスに弱いため、表面保護膜についても約250℃以下、望ましくは200℃以下の低温焼成で硬化可能で、且つ従来の350℃前後の高温焼成したものと遜色ない性能が得られるポリイミド系樹脂またはポリベンゾオキサゾール系樹脂が求められている。
【0004】
低温硬化可能なポジ型感光性耐熱性樹脂組成物としては、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾールなどの樹脂100質量部および熱架橋剤10〜100質量部を含有する樹脂組成物(例えば特許文献1参照)、アルカリ可溶性ポリアミドイミド樹脂、光酸発生剤、溶剤および架橋剤を含有するポジ型感光性ポリアミドイミド樹脂組成物(例えば特許文献2参照)などが知られている。これらの樹脂組成物は前駆体ではなく既閉環型の樹脂を用いることで、低温焼成においても耐薬品性に優れ、硬化時の熱収縮を抑えることが可能であった。ところが、これらの樹脂組成物は露光光源として用いられる水銀灯のi線(365nm)の透過率が低く、低感度であるという問題があった。
【0005】
そこで、高感度化の手法として、耐熱性樹脂やその前駆体にノボラック樹脂やポリヒドロキシスチレン樹脂等のフェノール性水酸基を有する樹脂を混合する系が研究されている。具体的には、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対して、ノボラック樹脂および/またはポリヒドロキシスチレン樹脂101質量部以上、およびキノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性樹脂前駆体組成物(例えば特許文献3参照)、並びにポリイミド樹脂、フェノール性水酸基を有する樹脂、光酸発生剤および架橋剤を含有する感光性樹脂組成物(例えば特許文献4参照)などが挙げられる。しかし、フェノール性水酸基を有する樹脂を含有する樹脂組成物は、特に200℃以下の低温で焼成した場合、膜の硬化が不充分なため機械的特性が著しく低下し、10μmの膜厚であっても強度のある自己支持膜が得られない課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007―16214号公報(第1−4頁)
【特許文献2】特開2007―240554号公報(第1−3頁)
【特許文献3】特開2005―352004号公報(第1−3頁)
【特許文献4】特開2008―83359号公報(第1−3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の架橋剤の特性を損なわず、感光性樹脂組成物に用いたときに、該組成物の感度、アルカリ溶解特性、および硬化膜の膜特性に優れた架橋剤およびその製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明は、そのポリマー鎖が下記一般式で示される2種類の繰り返し単位(A)および(B)を含んでなる、レゾールタイプの高分子構造を有するフェノール樹脂型架橋剤を提供する:
【化1】

【0009】
ここで、
xは1,2または3であり、
yは1または2であり、
は、炭素数1〜20のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基を示し、フェノール環の2、4、6位には0または1つ、3、5位には0または1つもしくは2つが含まれ(但し、2〜6位の何れにも含まれない場合を除く)、
2は、レゾール化反応に用いたアルデヒド由来のメチレン基側鎖で、水素または炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基を示し、
は、Rと同じく炭素数1〜20のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、好ましくはメチル基、エチル基を示し、フェノール環の3,5位に1つまたは2つ含まれ、
は、水素またはRであり、
は、炭素数1〜20のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基を示し、ここでのRは、Rが水素である繰り返し単位(B)のアルカノール基(CH(R)―OH)をアルコキシ化するために使用したアルコールに由来するものであり、
GPCポリスチレン換算の重量平均分子量は、2000〜20000であり、
フェノール骨格1モル当たりの−CH(R)―O−R4のモル数は0.3以上、即ち、繰り返し単位(A)および(B)のモル数をそれぞれaおよびbで表したときに、
b/(a+b)≧0.3であり、
また、繰り返し単位(B)におけるアルコキシ化率は95モル%以上、即ち、繰り返し単位(B)において(ORのモル数)/(OR4のモル数)≧0.95である。
【0010】
なお、各繰り返し単位における波線は、隣接する繰り返し単位との結合部位であることを示し、各繰り返し単位がポリマー鎖の末端に位置する場合は、隣接する繰り返し単位に結合していない前記結合部位は水素で飽和される。
【0011】
また、本発明による上記フェノール樹脂型架橋剤の製造方法は、
(I)アルキルフェノール類(RPhOHおよびRPhOH)およびアルデヒド類(RCHO)を溶媒中で混合し、更に塩基性触媒を加えて加熱し、レゾール化反応を起こさせることにより、既述の繰り返し単位(A)および(B)を含んでなるレゾール樹脂を生成させる工程と、
(II)水との共沸混合物を形成する溶媒を上記で得た反応混合物中に加え、上記反応により生じた水を前記溶媒との共沸混合物として除去し、更にアルコール(ROH)および酸性触媒を加えて加熱することにより、繰り返し単位(B)のアルカノール基(−CH(R)―OH)とアルコール(ROH)を縮合反応させて、前記レゾール樹脂に含まれる繰り返し単位(B)におけるアルカノール基の95モル%以上をアルコキシアルキル基(−CH(R)―OR)に変換する工程
を具備したことを特徴とする。なお、工程(I)および(II)におけるR、R、R、RおよびRは、繰り返し単位(A)および(B)について述べた通りである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレゾールタイプの高分子構造を有するフェノール樹脂型架橋剤は、フォトレジスト等の感光性樹脂組成物のための架橋剤として使用したときに、該組成物の感度、アルカリ溶解性に優れ、且つ200℃以下の低温焼成によって、膜特性に優れた硬化膜を形成できるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<フェノール樹脂型架橋剤>
本発明の樹脂型架橋剤において、既述した一般式(A)および(B)の繰り返し様式は、ランダム型、ブロック型およびグラフト型の何れでもよいが、通常はランダム型である。これら3種類の繰り返し単位を含んでなるレゾールタイプの高分子構造をもった本発明のフェノール樹脂型架橋剤の重量平均分子量は、2000〜20000であり、好ましくは2000〜10000、より好ましくは3000〜9000である。分子量2000未満のものは揮発性のある低核体成分が残存し膜特性を劣化する問題がある。また、レジスト用途としてのアルカリ溶解特性が速く、レジスト解像性、残膜率が低下する問題がある。分子量20000を超えるものは、製造上ゲル化等の不溶化を起こしやすく、製造安定性が取りづらくなる問題があること、また、本用途におけるアルカリ溶解特性が遅くなりすぎる、溶剤溶解性が悪くなることから好ましくない。
【0014】
本発明のフェノール樹脂型架橋剤の分散度は、1.5〜20.0であるものが好ましい。より好ましくは2.0〜10.0であるものが好ましい。
【0015】
本発明のフェノール樹脂型架橋剤のアルカリ溶解速度は、2.38%のテトラアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対する溶解速度の範囲が、200Å/s以上8000Å/s以下であるものが好ましい。より好ましくは500Å/s以上6000Å/s以下であるものが好ましい。アルカリ溶解速度が200Å/s未満の場合、溶解速度が遅すぎるため、感光性樹脂組成物にしたときのパターンニング性能において充分な露光感度が得られない。また、アルカリ溶解速度が8000Å/sを越える場合、溶解速度が速すぎるため、感光性樹脂組成物にしたときのパターンニング性能において充分な未露光部の残膜率を得ることができない。
【0016】
本発明のフェノール樹脂型架橋剤による架橋反応は、一般式(B)の繰り返し単位に含まれるアルカノール基(−CH(R)―OH)およびアルコキシアルキル基(−CH(R)―O−R)の作用によるものである。従って、本発明の好ましい架橋効果を得るためには、フェノール骨格1モル当たりの−CH(R)―O−R基のモル数は0.3以上、即ち、繰り返し単位(A)および(B)のモル数をそれぞれaおよびbで表したときに、b/(a+b)≧0.3であることが必要である。この条件を満たすと高い架橋密度を示すため、硬化物のガラス転移温度および分解温度が高くなる利点が得られる。また、繰り返し単位(B)のアルカノール基をアルコキシ化する際のアルコキシ化率は95モル%以上、即ち、繰り返し単位(B)における(ORのモル数)/(OR4のモル数)≧0.95であることが必要である。この条件を満たすことにより、アルカリ溶解速度が速くなりすぎず、且つ製品の保存安定性にも優れるという利点が得られる。
【0017】
本発明のフェノール樹脂型架橋剤において、RおよびRは、レゾール化反応に用いるアルキルフェノールのアルキル基によって決まり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基であり、好ましくはメチル基である。
【0018】
また、本発明のフェノール樹脂型架橋剤におけるRは、レゾール化反応に用いるアルデヒド化合物によって決まり、例えば水素、メチル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基であり、好ましくは水素である。
【0019】
本発明のフェノール樹脂型架橋剤におけるRは水素またはRであり、Rはレゾール化反応の生成物に含まれるアルカノールをアルコキシ化するために使用したアルコールによって決まり、例えばメチル基、エチル基、n−ブチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、1−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基、1−ノニル基、2−ノニル基、1−デシル基、2−デシル基、1-ウンデシル基、1−ドデシル基、2-ドデシル基、1−トリデシル基、1−テトラデシル基、2-テトラデシル基、1−ペンタデシル基、1−ヘキサデデシル基、2−ヘキサデシル基、1−ヘプタデシル基、1−オクタデシル基、1−ノナデシル基、1−エイコサニル基等を例示することができる。
【0020】
<フェノール樹脂型架橋剤の製造方法>
次に、本発明によるフェノール樹脂型架橋剤の製造方法について、反応条件等を含めてより詳細に説明する。
【0021】
先ず、工程(I)のレゾール化反応においては、アルキルフェノール類(P)とアルデヒド類(A)をある一定量のモル比(A/P)で仕込む、この時の仕込みモル比は0.5以上2.0以下が好ましい。より好ましくは0.7以上1.2以下である。次に反応溶剤としてアルコキシ化に用いるアルコール類を、アルキルフェノール類の仕込量1質量部に対して0.5〜5.0質量部仕込む、より好ましくは0.5〜1.0質量部である。次に塩基性触媒をアルキルフェノール類1質量部に対して0.01〜1.0質量部仕込む、より好ましくは0.05〜0.5質量部である。これらを仕込んだ後、後述する反応温度にて2〜8時間かけてレゾール化反応を行なう。反応時間は未反応のアルデヒド類が0.1質量パーセント以下となった時点を終点として決定すればよい。
【0022】
上記レゾール化反応の反応系濃度は、アルキルフェノール類及びアルデヒド類、塩基性触媒、アルコール類の種類によって変化させることができる。好ましくは10〜80質量パーセント、更に好ましくは30〜80質量パーセントで行なうことが好ましい。また、上記レゾール化反応の反応温度は、アルキルフェノール類及びアルデヒド類、塩基性触媒、アルコール類の種類によって変化させることができる。好ましくは30〜120℃、更に好ましくは30〜80℃で行なうことが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法において、上記レゾール化反応に用いるアルキルフェノール類は特に限定されるものではないが、例えばp−クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,3,4−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、メチレンビスp−クレゾール、2−メチルレゾルシン、4−メチルレゾルシン、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−ジエチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、およびp−イソプロピルフェノール、カルダノール等が例示される。なかでも樹脂の特性や経済性の点から、m−クレゾール、p−クレゾールが好ましい。
【0024】
本発明の製造方法において、レゾール化反応に用いるアルデヒド類は、特には限定されないが、ホルマリン、パラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドが挙げられ、これらのうちの何れか1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明の製造方法において、レゾール化反応に用いる塩基性触媒としては、特に限定はされないが、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、3級アミン類、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミンが挙げられ、これらのうちの何れか1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
レゾール化反応の終了後、工程(II)のアルコキシ化反応を行う。即ち、反応混合物を30℃以下まで冷却し、ジオキサン等の共沸溶媒をアルキルフェノール類の仕込量1質量部に対して1.0質量部加え、40℃、圧力0.08MPaにて共沸溶媒と共沸させることにより、アルデヒド由来の水分及び縮合水を除去し、反応系内の水分を3質量%未満に調整する。こうして系内の残留水分を3質量%未満にすることにより、アルコキシ化率を著しく向上させることができる。続いて、アルコール類をアルキルフェノール類の仕込量1質量部に対して2.0〜10.0質量部添加し、冷却しながら酸性触媒を添加して、系内のpHを0.3〜6.0、より好ましくは0.5〜5.0に調整する。調整後、還流温度にて2〜8時間反応し、アルコキシ化反応を行なう。アルコキシ化反応の終点判定については、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)による分子量の成長が無くなった点を反応終点とすればよい。
【0027】
上記アルコキシ化反応の系の固形分濃度は、アルキルフェノール類及びアルデヒド類、酸性触媒、アルコール類の種類によって変化させることができる。好ましくは10〜80質量パーセント、更に好ましくは10〜40質量パーセントで行なうのが望ましい。また、上記アルコキシ化反応の反応温度は、アルキルフェノール類及びアルデヒド類、酸性触媒、アルコール類の種類によって、変化させることができる。好ましくは30〜120℃、更に好ましくは30〜80℃で行なうのが望ましい。
【0028】
アルコキシ化反応の終了後、系内の圧力を0.08MPaとして、未反応のアルコール類を減圧留去する。濃縮された反応液に洗浄用分離溶剤をアルキルフェノール類の仕込量1質量部に対して1.5〜3.5質量部加え、さらにイオン交換水をアルキルフェノール類の仕込量1質量部に対して1〜5質量部加え、攪拌、静置し、水層を除去し、除水液の電気伝導度が100μScm以下になるまでイオン交換水で洗浄を繰り返す。洗浄終了後、樹脂溶解用溶剤をアルキルフェノール類1質量部に対して2〜5質量部加え、圧力を0.08MPaにて洗浄用分離溶剤を留去する。
【0029】
本発明の製造方法において、工程(II)のアルコキシ化反応に用いる酸性触媒としては、特には限定されないが、塩酸、硫酸などの無機酸、シュウ酸、酢酸などの有機酸を単独あるいは併用して用いる。また、このアルコキシ化反応に用いられるアルコール類は、特には限定されないが、1級アルコール、2級アルコール、3級アルコール、不飽和アルコールであり、メタノール、エタノール、ノルマルブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、2−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、2−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、2−ヘキサデカノール、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール、1−ノナデカノール、1−エイコサノール等を例示することができる。また、分岐状アルキル1価アルコールである2−プロピル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、4−メチル−3−ヘプタノール、6−メチル−2−ヘプタノール、2,4,4−トリメチル−1−ペンタノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、イソノニルアルコール、3,7−ジメチル−1−オクタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2,4−ジメチル−1−ヘプタノール、2−ヘプチルウンデカノール等を例示することができる。また、環状アルキル1価アルコールであるシクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、シクロペンタンメチロール、ジシクロヘキシルメタノール、トリシクロデカンモノメチロール、ノルボネオール、水添加ロジンアルコール等を例示することができる。2級アルコールであるイソプロピルアルコール、3級アルコールであるターシャルブタノールも例示することができる。より好ましくはメタノール、ノルマルブタノール、ターシャルブタノールが挙げられ、これらのうちの何れか1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の製造方法において用いる共沸溶媒としては、水との共沸混合物を形成することができ、また該共沸混合物の沸点がアルコキシ化に用いるアルコールの蒸発を抑制し得る温度であるような溶媒を使用すればよい。そのような共沸溶媒としては、アルコキシ化に用いるアルコールにもよるが、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン等が挙げられ、特に、メタノールを用いてメトキシ化するときにはジオキサンが好ましい。
【0031】
本発明の製造方法で用いられる洗浄用分離溶剤は、樹脂を溶解し且つ水層と分離しうる有機溶剤で、特に限定されないが、ジエチルエーテル等のエーテル類、四塩化炭素、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、メチルイソブチルケトン等のケトン類が挙げられる。より好ましくは、沸点および環境面から酢酸エチル、メチルイソブチルケトンを使用するのが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法で用いられる樹脂溶解用有機溶剤としては、上記樹脂を均一に溶解させることができ、かつこれらと反応しないものが用いられる。このような溶剤としては、たとえば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのジエチレングリコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が挙げられる。
【0033】
さらにこれらとともに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ―ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどの高沸点溶媒を用いることもできる。
【0034】
これらの溶剤の中で、溶解性、各成分との反応性などから、プロピレンレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのジエチレングリコール類、γ―ブチロラクトン等のラクトン類が好ましく用いられる。
【0035】
<フェノール樹脂型架橋剤の使用>
本発明の架橋剤は、一般式(B)の繰り返し単位に含まれるアルカノール基(−CH(R)―OH)およびアルコキシアルキル基(−CH(R)―O−R)の作用により架橋され得る樹脂組成物に混合し、該樹脂組成物を硬化させるために使用することができる。特に好ましい使用の態様は、アルカリ可溶性ノボラック樹脂組成物、特に感光性樹脂組成物に混合して使用するものである。なかでも、感光剤および溶解抑止剤として、光酸発生剤であるナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を使用したポジ型フォトレジスト組成物の架橋剤として使用したときに、従来は得られなかった優れた効果を得ることができる。
【0036】
即ち、従来の高感度化の手法として用いられているノボラック樹脂、およびポリヒドロキシスチレン樹脂は、それ自体では架橋基を持たないため、膜の機械的特性が低かった。これに低分子型のメトキシメチロール体を添加して架橋機能を持たせることはできるが、低分子型であるため充分な機械的特性の向上を期待できなかった。
【0037】
これに対して、本発明の架橋剤はアルカリ可溶性のフェノール樹脂型であるため、フォトレジストのアルカリ可溶性を損なわず、且つこの架橋剤にも感光剤である光酸発生剤が結合するので、感光性樹脂組成物としての感度が向上する。また、高分子量の樹脂型であるため、硬化物フィルムは優れた機械的強度および優れた屈曲性が得られる。しかも、既述のように、本発明のフェノール骨格1モル当たりのアルカノール基およびアルコキシアルキル基のモル数を平均で0.3以上とすることにより、硬化物の架橋密度を高め、ガラス転移温度および分解温度を高くすることができる。また、繰り返し単位(B)におけるアルコキシ化率は95モル%以上であるため、溶解速度が速くなり過ぎず、且つ製品の保存安定性にも優れるという利点を有する。その結果、本発明の架橋剤は低温焼成でも高温焼成したものと遜色のない硬化膜特性を得ることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によりさらに詳細かつ具体的に本発明を説明するが、これら実施例は本発明を何ら制限するものではない。
【0039】
実施例1
窒素置換した三口フラスコ1000ml中にm−クレゾール108.0g、メタノール108.0g、水酸化ナトリウム40.0gを仕込み、攪拌しながら、67℃まで昇温後、30分間還流反応を行なった。その後、反応液を40℃まで冷却し、92質量%パラホルムアルデヒド65.2gを仕込み、再び67℃まで昇温後、5時間還流反応を行なった。反応終了後、反応液を30℃以下にまで冷却し、30質量%硫酸140.0gを反応液が35℃以上にならない様に30分かけて滴下した。得られた反応液のpHは4.9であった。さらに反応液中にイオン交換水540.0gを添加し、20分攪拌して20分静置後、分離した水層を除去した。水層除去後、ジオキサン108.0gを添加し、40℃、圧力を0.08MPaにて残留水分を3質量%未満まで除去した。反応液にメタノール432.0g、96質量%硫酸2.0gを加えた。得られた反応液のpHは0.8であった。反応液を60℃まで昇温し、60℃にて3時間アルコキシ化反応を行なった。反応終了後、反応液を30℃以下まで冷却し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を、反応液の温度が35℃以上にならない様に30分かけて反応液のpHが9.0になるまで滴下した。反応液に洗浄用分離溶剤であるメチルイソブチルケトン(MIBK)216.0g、イオン交換水324.0gを加え、30℃で20分攪拌し、20分静置し、分離した水層を除去した。更にイオン交換水324.0gを加え、除去水の電気伝導度が100μScm以下になるまでイオン交換水で洗浄操作を繰り返した。洗浄終了後、γ―ブチロラクトン300gを加え、70℃、圧力を0.08MPaにてイオン交換水及びMIBKの留去を行い、固形分50質量%のアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液1を得た。
【0040】
得られたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液1はGPC重量平均分子量(Mw)が約7000、分散度(Mw/Mn)は7.5、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するアルカリ溶解速度(ADR)が約1500Å/sであった。13CNMRによる前記化1におけるフェノール骨格1モル当たりの−CH(R)―O−R4のモル数(以下、オキシアルキル基導入率という)は57モル%、アルコキシ化率は100モル%であった。
【0041】
実施例2
上記実施例1の製法において、アルコキシ化反応を60℃にて2時間行ったものをアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液2とした。
【0042】
アルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液2のMwは6800、Mw/Mnは7.0、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約3800Å/sであった。13CNMRによる化1でのオキシアルキル基導入率は55モル%であり、アルコキシ化率は96モル%であった。
【0043】
実施例3
上記実施例1の製法において、92質量%パラホルムアルデヒド55.4gを使用したものをアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液3とした。
【0044】
得られたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液3のMwは4000、Mw/Mnは5.2、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約4000Å/sであった。13CNMRによる前記化1でのオキシアルキル基導入率は63モル%であり、アルコキシ化率は100モル%であった。
【0045】
実施例4
上記実施例1の製法において、92質量%パラホルムアルデヒド50.4gを使用したものをアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液4とした。
【0046】
得られたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液4のMwは3000、Mw/Mnは4.5、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約6000Å/sであった。13CNMRによる前記化1でのオキシアルキル基導入率は58モル%であり、アルコキシ化率は100モル%であった。
【0047】
実施例5
上記実施例1の製法において、m−クレゾール108.0gの代わりにm−クレゾール64.8g、p−クレゾール43.2gを使用したものをアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液5とした。
【0048】
得られたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液5のMwは3000、Mw/Mnは3.5、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約1000Å/sであった。13CNMRによる前記化1でのオキシアルキル基導入率は62モル%であり、アルコキシ化率は100モル%であった。
【0049】
実施例6
上記実施例1の製法において、m−クレゾール108.0gの代わりに3,5−キシレノール122.0gを使用したものをアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液6とした。
【0050】
得られたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液6のMwは8000、Mw/Mnは5.4、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約1300Å/sであった。13CNMRによる前記化1でのオキシアルキル基導入率は59モル%であり、アルコキシ化率は100モル%であった。
【0051】
実施例7
上記実施例1の製法において、m−クレゾール108.0gの代わりに2,3,5−トリメチルフェノール136.0gを使用したものをアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液7とした。
【0052】
得られたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液7のMwは7000、Mw/Mnは4.0、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約1100Å/sであった。13CNMRによる前記化1でのオキシアルキル基導入率は50モル%であり、アルコキシ化率は100モル%であった。
【0053】
実施例8
上記実施例1の製法において、m−クレゾール108.0gの代りにカルダノール300.0gを使用したものをアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液8とした。
【0054】
得られたフェノール樹脂型架橋剤溶液8のMwは5300、Mw/Mnは2.7、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約500Å/sであった。13CNMRによる前記化1でのオキシアルキル基導入率は86モル%であり、アルコキシ化率は100モル%であった。
【0055】
実施例9
上記実施例1の製法において、アルコキシ化反応においてメタノールの代わりにノルマルブタノールを使用したものをアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液9とした。
【0056】
得られたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液9のMwは6000、Mw/Mnは7.6、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約1300Å/sであった。13CNMRによる前記化1でのオキシアルキル基導入率は59モル%であり、アルコキシ化率は100モル%であった。
【0057】
実施例10
上記実施例1の製法において、アルコキシ化反応においてメタノールの代わりにターシャルブタノールを使用したものをアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液10とした。
【0058】
得られたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液10のMwは7000、Mw/Mnは8.0、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約1100Å/sであった。13CNMRによる前記化1におけるオキシアルキル基導入率は60モル%であり、アルコキシ化率は100モル%であった。
【0059】
実施例11
上記実施例1の製法において、92質量%パラホルムアルデヒドの代わりにサリチルアルデヒド(SA)を使用したものをアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液11とした。
【0060】
得られたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液11のMwは7000、Mw/Mnは4.5、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約1100Å/sであった。13CNMRによる前記化1におけるオキシアルキル基導入率は60モル%であり、アルコキシ化率は100モル%であった。
【0061】
比較例1
窒素置換した三口フラスコ1000ml中にm−クレゾールを108.0g、メタノール108.0g、水酸化ナトリウム40.0gを仕込み、攪拌しながら、67℃まで昇温後、30分間還流反応を行なった。その後、反応液を40℃まで冷却し、92質量%パラホルムアルデヒド65.2gを仕込み、再び67℃まで昇温後、5時間還流反応を行なった。反応終了後、反応液を30℃以下にまで冷却し、30質量%硫酸140.0gを反応液が35℃以上にならない様に30分かけて滴下した。得られた反応液のpHは4.9であった。さらに反応液中にイオン交換水540.0gを添加し、20分攪拌、20分静置後、分離した水層を除去した。反応液に洗浄分離溶剤であるメチルイソブチルケトン(MIBK)216.0g、イオン交換水324.0gを加え、30℃にて、20分攪拌、20分静置し、分離した水層を除去した。更にイオン交換水324.0gを加え、除去水の電気伝導度が100μScm以下になるまで洗浄操作を繰り返した。洗浄終了後、γ―ブチロラクトン300gを加え、70℃、圧力を0.08MPaにてイオン交換水及びMIBKの留去を行い、固形分50質量%のレゾール型フェノール樹脂溶液を得た。得られたレゾール型フェノール樹脂溶液のMwは3000、Mw/Mnは4.3、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約12000Å/sであった。13CNMRによる前記化1におけるオキシアルキル基導入率は59モル%であり、アルコキシ化率は35モル%であった。
【0062】
比較例2
4,4’,4”−エチリデントリス[2,6−(メトキシメチル)フェノール](HMOM−TPHAP)250.0gにγ―ブチロラクトン250.0gを加え、50質量%γ―ブチロラクトン溶液500.0gを得た。本溶液を多環型モノマー型架橋剤溶液1とした。東ソー株式会社製の高速液体クロマトグラフィーで、カラムにODSを、展開溶媒にメタノール/水=90/10と水=100のグラジエントを用い、254nmで分析したところ、得られたHMOM−TPHAPの純度は97面積%であった。得られた多環型モノマー型フェノール樹脂溶液のMw/Mnは1.3、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約17000Å/sであった。13CNMRによる前記化1におけるオキシアルキル基導入率は190モル%であり、アルコキシ化率は100モル%であった。その構造を下に示す。
【化2】

【0063】
比較例3
4,4’−[1-[4-[1-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(メトキシメチル)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール](HMOM−TPPA)250.0gにγ―ブチロラクトン250.0gを加え、50質量%γ―ブチロラクトン溶液500.0gを得た。本溶液を多環型モノマー型架橋剤溶液2とした。東ソー株式会社製の高速液体クロマトグラフィーで、カラムにODSを、展開溶媒にメタノール/水=90/10と水=100のグラジエントを用い、254nmで分析したところ、得られたHMOM−TPPAの純度は98面積%であった。得られた多環型モノマー型フェノール樹脂溶液のMw/Mnは1.2、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対するADRが約13000Å/sであった。13CNMRによる前記化1におけるオキシアルキル基導入率は191モル%であり、アルコキシ化率は100モル%であった。その構造を下に示す。
【化3】

【0064】
なお、上記で得た実施例1〜11および比較例1〜3の架橋剤を、下記の表1に纏めて示した。表1においては、アルカノール基(ヒドロキシアルキル基)およびアルコキシアルキル基の総称としてオキシアルキル基の語を用いた。
【表1】

【0065】
<使用例>
以下、上記実施例および比較例になる架橋剤を、ポジ型フォトレジスト組成物中に使用した例を説明する。
【0066】
〔アルカリ可溶性ノボラック溶液の合成〕
群栄化学工業株式会社製ノボラックPSF−2808(m−クレゾールーホルムアルデヒド樹脂)500gにγ―ブチロラクトン500gを加え、固形分50質量%溶液に調整した。得られたノボラックの50質量%γ―ブチロラクトン溶液をアルカリ可溶性ノボラック溶液とした。
【0067】
〔光酸発生剤キノンアジド化合物の合成〕
乾燥窒素気流下、4,4’,4”−エチリデントリスフェノール30.6g(0.1モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニルクロリド53.7g(0.2モル)をテトラヒドロフラン300.0gに溶解させ、室温にした。ここに、テトラヒドロフラン70.0gと混合させたトリエチルアミン42.0gを系内が30℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で4時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液をイオン交換水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集め、さらに1質量%塩酸1000gで洗浄した。その後、さらにイオン交換水1000gで4回洗浄した。この沈殿を40℃48時間真空乾燥させ、Xのうち平均して65モル%が5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化された下記式で表されるキノンジアジド化合物を得た。
【化4】

【0068】
使用例1:
架橋剤として実施例1で合成されたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液1を10.0g、アルカリ可溶性ノボラック溶液を20.0g、光酸発生剤としてキノンアジド化合物2.0g、γ―ブチロラクトン10.0gを加えて、室温にて約1時間混合し、得られたワニスを感光性樹脂組成物のワニス1とした。得られたワニス1はフィルム物性試験及び現像性評価試験を実施した。
【0069】
使用例2〜11:
実施例1における架橋剤を実施例2〜11で合成されたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液2〜11を用い、使用例1と同様な手法で感光性樹脂組成物のワニス2〜11を得た。得られたワニス2〜11は使用例1同様にフィルム物性試験及び現像性評価試験を実施した。
【0070】
使用例12:
架橋剤として実施例1で合成されたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液1を15.0g、アルカリ可溶性ノボラック溶液を15.0g、光酸発生剤としてキノンアジド化合物2.0g、γ―ブチロラクトン10.0gを加えて、室温にて約1時間混合し、得られたワニスを感光性樹脂組成物のワニス12とした。得られたワニス12はフィルム物性試験及び現像性評価試験を実施した。
【0071】
使用例13:
架橋剤として実施例1で合成されたアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤溶液1を20.0g、アルカリ可溶性ノボラック溶液を10.0g、光酸発生剤としてキノンアジド化合物2.0g、γ―ブチロラクトン10.0gを加えて、室温にて約1時間混合し、得られたワニスを感光性樹脂組成物のワニス13とした。得られたワニス13はフィルム物性試験及び現像性評価試験を実施した。
【0072】
比較使用例1〜3:
使用例1における架橋剤の代りに、比較例1〜3で合成されたレゾール型フェノール樹脂溶液及び多環型モノマー型架橋剤溶液1、2を用い、使用例1と同様な手法で感光性樹脂組成物のワニス14〜16を得た。得られたワニス14〜16について、使用例1と同様にフィルム物性試験及び現像性評価試験を実施した。
【0073】
上記使用例および比較使用例におけるフィルム物性試験及び現像性評価試験は、次のようにして行い、結果を表3に示した。
【0074】
[現像性評価用感光性樹脂組成物被膜の作製]
3.5インチシリコンウェハー上に、感光性樹脂組成物のワニス1〜16をプリベーク後の膜厚が所定の膜厚5μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、ついでホットプレートを用いて、120℃で3分間プリベークすることにより、感光性樹脂組成物被膜をそれぞれ得た。
【0075】
得られた感光性樹脂組成物被膜は光干渉式膜厚測定装置を使用し、屈折率1.629にて膜厚を測定した。
【0076】
以下、得られた感光性樹脂組成物の感度及びアルカリ溶解特性を示す指標として、露光パターンニングテスト、溶解速度比、未露光部残膜率を現像性評価として比較した。
【0077】
[露光パターニングテスト]
露光機(i線ステッパー)に、パターンの切られたレチクルをセットし、感光性樹脂組成物被膜を水銀灯のi線(365nm)により500mJ/cmの露光量で露光した。これらを2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に含浸し、取り出し純水にて洗浄を行なった。120秒未満でパターン形成した場合は◎、120秒以上300秒未満でパターンを形成したものを○、300秒以上600秒未満でパターンを形成したものを△、600秒以上のものを×とした。
【0078】
[溶解速度比の計算]
前記露光パターニングテストにおいて、パターン形成時間/2(秒後)の膜厚から、以下の式に従って溶解速度比を算出した。
【0079】
溶解速度比=(プリベーク後膜厚−露光部の現像後膜厚)/(プリベーク後膜厚−未露光部の現像後膜厚)
溶解速度比は500以上を◎、150以上500未満を○、50以上150未満を△、50未満を×とした。
【0080】
[未露光部残膜率の計算]
前記記載の現像方法において、パターン形成後または前記露光パターニングテストで×の物については600秒現像時点での膜厚から、以下の式に従って未露光部残膜率を算出した。
【0081】
未露光部残膜率=(未露光部の現像後膜厚)/(プリベーク後膜厚)×100(%)
未露光部残膜率は95.0%以上を◎、90.0%以上95.0未満を○、85.0%以上90.0%未満を△、85.0%未満を×とした。
【0082】
これらの感光性樹脂組成物の現像性評価結果より、露光パターンニングテスト及び溶解速度比が共に○以上のものは、高感度な感光性樹脂組成物の架橋剤として使用可能であり、溶解速度比及び未露光部残膜率が共に○以上のものは、アルカリ溶解特性に優れた感光性樹脂組成物の架橋剤として使用することができる。
【0083】
[硬化物フィルムの作製]
感光性樹脂組成物のワニス1〜16を膜厚10μmになるようPET上に塗膜し、80℃にて10分、120℃にて30分、200℃にて60分、乾燥機にて乾燥し、硬化物フィルムを得た。
【0084】
以下、得られた感光性樹脂組成物の硬化膜の膜特性を示す指標として、作製した硬化物フィルムのガラス転移温度の測定、熱分解温度の測定、屈曲性試験をフィルム物性評価として比較した。
【0085】
[ガラス転移温度の測定]
得られた硬化物フィルムのガラス転移温度はSII社製の粘弾性スペクトロメーターSII DMS 110にて測定した。温度条件20〜400℃、昇温速度2℃/分、周波数1、10Hz: 300℃以上のものを◎、250℃以上300℃未満のものを○、250℃未満のものを×とした。
【0086】
[熱分解温度の測定]
得られた硬化物フィルムの熱分解温度はSII社製 示差熱熱重量同時測定装置 SII TG/DTA 6300にて温度条件30〜800℃、昇温速度 10℃/分で測定した。
【0087】
また、これらの300℃における熱減量を測定した。
【0088】
300℃における熱減量が1質量%未満のものは○、1質量%以上5質量%未満のものは△、5質量%以上のものは×とした。
【0089】
[屈曲性試験]
得られた硬化物フィルムを180°に折り曲げ、割れないものを屈曲性良好○とし、折り曲げて割れたものを屈曲性不良×とした。
【0090】
これらのフィルム物性評価の比較により、ガラス転移温度の測定、熱分解温度の測定、屈曲性試験がいずれも○以上のものは、硬化膜の膜特性に優れた感光性樹脂組成物の架橋剤として使用ができる。
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
上記の試験結果に示されるように、感光性樹脂組成物において本発明のアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤を使用した場合には、現像性評価で示される感度及びアルカリ溶解特性、フィルム物性評価で示される硬化膜の膜特性がいずれも良好である。これに対して、レゾール型フェノール樹脂を使用した場合には、感度及び硬化膜の膜特性は良好なものの、アルカリ溶解特性が悪い。多環型モノマー型架橋剤を使用した場合には、感度は良好なものの、アルカリ溶解特性及び硬化膜の膜特性が悪い。以上のことから、本発明のアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤を使用した場合、従来の架橋特性を行わず、感度、アルカリ溶解特性、硬化膜の膜特性がいずれも優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー鎖が下記一般式(A)および(B)で示される2種類の繰り返し単位を含んでなる、レゾールタイプの高分子構造を有するアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤:
【化1】

但し、
式中の波線は、隣接する繰り返し単位との結合部位であることを示し、
xは1,2または3であり、
yは1または2であり、
は、炭素数1〜20のアルキル基であり、フェノール環の2、4、6位には0または1つ、3、5位には0または1つもしくは2つが含まれ(但し、2〜6位の何れにも含まれない場合を除く)、
2は、水素または炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基、またはヒドロキシフェニル基を示し、
3は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、フェノール環の3,5位に1つまたは2つ含まれ、
4は、水素またはRを示し、
は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、
重量平均分子量は、2000〜20000であり、
フェノール骨格1モル当たりの−CH(R)―O−R4のモル数は0.3以上、即ち、繰り返し単位AおよびBのモル数をそれぞれaおよびbで表したときに、
b/(a+b)≧0.3であり、
繰り返し単位(B)において、(ORのモル数)/(OR4のモル数)≧0.95であり、
各繰り返し単位における波線は、隣接する繰り返し単位との結合部位であることを示し、
各繰り返し単位がポリマー鎖の末端に位置する場合、隣接する繰り返し単位に結合していない前記結合部位は水素で飽和される。
【請求項2】
がメチル基、エチル基およびイソプロピル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤。
【請求項3】
が水素、メチル基、フェニル基およびヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤。
【請求項4】
4がメチル基、n−ブチル基およびt−ブチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3の何れか1項に記載のアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤。
【請求項5】
GPCポリスチレン換算の重量平均分子量の範囲が2000〜10000である、請求項1〜4の何れか1項に記載のアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤。
【請求項6】
2.38質量%のテトラアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に対する溶解速度の範囲が、200〜8000Å/sである請求項1〜5の何れか1項に記載のアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤。
【請求項7】
請求項1に記載のアルコキシ化フェノール樹脂型架橋剤を製造する方法であって、
(I)アルキルフェノール類(RPhOHおよびRPhOH)およびアルデヒド類(RCHO)を溶媒中で混合し、更に塩基性触媒を加えて加熱し、レゾール化反応を起こさせることにより、請求項1における繰り返し単位(A)および(B)を含んでなるレゾール樹脂を生成させる工程と、
(II)水との共沸混合物を形成する溶媒を上記で得た反応混合物中に加え、上記反応により生じた水を前記溶媒との共沸混合物として除去し、更にアルコール(ROH)および酸性触媒を加えて加熱することにより、繰り返し単位(B)のアルカノール基とアルコール(ROH)を縮合反応させて、前記レゾール樹脂に含まれる繰り返し単位(B)におけるアルカノール基(−CH(R)―OH)の95モル%以上をアルコキシアルキル基(−CH(R)―OR)に変換する工程を具備したことを特徴とする方法。
但し、R、R、R、RおよびRは請求項1で定義した通りである。
【請求項8】
前記工程(I)のレゾール化に用いる塩基性触媒が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはトリエチルアミンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(II)の縮合反応に用いる酸性触媒が塩酸、硫酸、シュウ酸、または酢酸である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(II)の縮合反応に用いるアルコールがメタノールであり、共沸溶媒がジオキサンである請求項7〜9の何れか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2012−162642(P2012−162642A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23732(P2011−23732)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】