説明

フェノール樹脂系活性炭及びそれを用いた分極性電極、電気二重層キャパシタ

【課題】フェノール樹脂を用いた活性炭において、特に電気二重層キャパシタ用の活性炭として特性向上、特に静電容量の向上させ、これによって、電子機器の駆動用電源さらには電気自動車の補助電源として使用可能な大容量の電気二重層キャパシタを提供すること。
【解決手段】 フェノール性水酸基とラジカル重合性不飽和基を共に含有する有する変性ノボラック型フェノール樹脂を炭化、賦活することにより得られる活性炭である。
上記の変性ノボラック型フェノール樹脂としては、好ましくはノボラック樹脂にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂、またはノ
ボラック樹脂にN−メチロールアクリルアミドを反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂系活性炭及び特に電気二重層キャパシタに用いられる分極性電極材用の活性炭に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂を焼成した活性炭は、吸着剤、水処理用等広く用いられている。
近年、地球環境に関する世界的な関心が高まる中、電気エネルギーの利用が急速に進んでいる。その中で、高性能化活性炭の用途として電気二重層キャパシタはイオン伝導性の電解液と活性炭などの分極性電極との界面に形成する電気二重層に蓄積される電荷を利用した蓄電デバイスであり、リチウム電池を代表とする二次電池と比較して大きなパワー密度、化学反応を伴わないため半永久的な寿命、安全性など数多い優れた特長を持つことから、様々な電子機器のバックアップ用電源から電気自動車の補助電源まで実に幅広い応用分野に利用されつつある。
【0003】
しかしながら、電気二重層キャパシタをハイブリッド電気自動車や燃料電池自動車用として利用する場合、二次電池と比較してエネルギー密度が低いことが欠点として挙げられる。鉛電池のエネルギー密度は約70Wh/L、リチウムイオン電池で約200Wh/Lに対し、電気二重層キャパシタのエネルギー密度は現状で約4Wh/Lほどであり、そのため静電容量の向上検討が行なわれている。
電気二重層キャパシタの電極材料としては、ヤシ殻炭、石炭、フェノール樹脂炭素材等の難黒鉛化性炭素材や、石油系又は石炭系ピッチ系等の易黒鉛化炭素材を賦活して得られる活性炭がある。しかしながら、未だ静電容量としては十分ではない。
【0004】
フェノール樹脂系の場合、ヤシ殻等に比べて高静電容量が得られ、各分野に利用されつつあるが、未だ十分とは言えない。フェノール樹脂系を使用したものとして球状フェノール樹脂を使用したもの(特許文献1〜2)があり、特許文献1ではフェノール樹脂活性炭とフェノール樹脂バインダーとを混合して弱酸化性雰囲気下で賦活酸化することで、特許文献2ではフェノール樹脂を酸化処理し酸素含有量を増加させた後に炭化することで静電容量が向上するとしている。また、特許文献3ではフェノールモノマーとしてクレゾール類、キシレノール類及びトリメチルフェノール類を使用することで炭化後の細孔構造が最適化され、静電容量が向上するとしている。
【特許文献1】特開平11-1316号公報
【特許文献2】特開2001-288238号公報
【特許文献3】特開2004-221332号公報 しかしながら、これまでのところ十分な静電容量が得られているとは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フェノール樹脂の改良により、例えば電気二重層キャパシタに用いられる電極用活性炭の特性向上、特に静電容量を向上させることで、電子機器の駆動用電源さらには電気自動車の補助電源として使用可能な大容量の電気二重層キャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
活性炭の製法の一つとして、フェノール樹脂を炭化・賦活する方法が挙げられる。しかし、元の原料であるフェノール樹脂を変性して、化学構造を改良し、これを炭化、賦活して高性能の活性炭を製造する試みはこれまで殆どなされていない。本発明者は、各種ラジカル重合基により変性したフェノール樹脂について検討し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち本発明は以下の通りである。
(1)フェノール性水酸基とラジカル重合性不飽和基を共に含有する変性ノボラック型フェノール樹脂を炭化、賦活してなる活性炭。
(2)変性ノボラック型フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂である上記(1)に記載の活性炭。
(3)変性ノボラック型フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂にN−メチロールアクリルアミド類を反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂である上記(1)に記載の活性炭。
【0008】
(4)変性ノボラック型フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量100に対して当量比20〜90のグリシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂である上記(2)に記載の活性炭。
(5)変性ノボラック型フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量100に対して当量比20〜200のN−メチロールアクリルアミド類を反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂である上記(3)に記載の活性炭。
(6)電気二重層キャパシタの分極性電極用である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の活性炭。
(7)上記(6)に記載の活性炭を使用した分極性電極。
(8)上記(7)の分極性電極を用いた電気二重層キャパシタ。
【発明の効果】
【0009】
フェノール性水酸基とラジカル重合性不飽和基を共に構造中に含有する変性ノボラック型フェノール樹脂を炭化、賦活することにより単位重量、及び単位体積当たりの静電容量が高容量となり、よってこの活性炭を電気二重層キャパシタの電極材として用いることで、従来に比べて高静電容量の電気二重層キャパシタを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の活性炭はフェノール性水酸基とラジカル重合性不飽和基を共に有する変性ノボラック型フェノール樹脂を原料として使用するものである。この変性ノボラック型フェノール樹脂は一般的にはノボラック型フェノール樹脂(ノボラック樹脂と略す場合もある)にラジカル重合性不飽和基を有する化合物を反応させて得られるものである。ノボラック樹脂としては通常のもの、即ちフェノール類とアルデヒド類とを触媒の存在下に反応させて得られる含水ノボラック樹脂、これを脱水した固形のノボラック樹脂、及び溶剤に溶解したワニス状ノボラック樹脂であり、分子量が200〜20000程度のものを用いることができる。
【0011】
ここでいう、フェノール類としてはフェノール性水酸基を分子内に1個以上有するものすべてを含む事ができる。具体的には、フェノール、クレゾール類、キシレノール類、tert−ブチルフェノール、フェニルフェノール、ノニルフェノール、クミフェノール、イソプロペニルフェノール、ブロモフェノール、フルオロフェノール、アミノフェノール、レゾルシノール、カテコール、イソプロピルカテコール、ピロガロール、グリシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等を挙げることができ、これらは単独又は2種以上の混合物として使用できる。
アルデヒド類としては、例えばホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサン、アセタール、ヘキサメチレンテトラミン、グリオキサール、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等を挙げる事ができるができるがこれらに限定されるものではない。
【0012】
反応触媒としては、特に制限はなく、例えば塩酸、硫酸、りん酸、ほう酸等の無機酸、フェノールスルホン酸、キシレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、蓚酸、サリチル酸等の有機酸、酢酸亜鉛、塩化亜鉛等の酸性金属塩、その他、アルカリ金属又はアルカリ土類金属等の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩又はりん酸塩などが挙げられる。
上記のラジカル重合性不飽和基とは活性な二重結合を有するものであればよく、ビニル基、アリル基などが挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂と反応させるこれらの基を有する化合物としてはN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-α-エチルアクリルアミド、N-メチロール-α-プロピルアクリルアミド、N-メチロール-α-ブチルアクリルアミド等のN−メチロールアクリルアミド類、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリル酸クロライド等が例示される。これらのなかでグリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド類が好ましい。これらは混合して使用してもよい。
【0013】
グリシジル(メタ)アクリレートを使用する場合、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基100当量に対して好ましくは20〜90当量、より好ましくは40〜75当量のグリシジル(メタ)アクリレートを反応させて変性ノボラック樹脂とすることが好ましい。この反応ではフェノール性水酸基は反応に関与するが、グリシジル(メタ)アクリレートがフェノール性水酸基の等量以下なので、反応後もフェノール性水酸基は残る。またグリシジル(メタ)アクリレートの不飽和基は反応後もそのまま残る。
ノボラック樹脂のフェノール性水酸基100当量に対するグリシジル(メタ)アクリレートの変性量が20当量未満の場合は電気容量の向上が少なく、また変性量が90当量を超える場合は活性炭とした場合の収量が減少する。
【0014】
N−メチロールアクリルアミド類を使用する場合、ノボラック型樹脂のフェノール性水酸基100当量に対して20〜200当量、より好ましくは40〜150当量のN−メチロールアクリルアミド類を反応させて変性ノボラック樹とすることが好ましい。この反応ではフェノール性水酸基とラジカル重合性不飽和基とは反応に関与しないので、反応後もそのまま残る。
ノボラック樹脂のフェノール性水酸基100当量に対するN−メチロールアクリルアミド類の変性量が20当量未満の場合は電気容量の向上が少なく、また変性量が200当量を超える場合はN−メチロールアクリルアミド類同士の反応が増えてしまい、よって活性炭とした場合の収量が減少してしまう。
【0015】
本発明における変性ノボラック型フェノール樹脂はフェノール性水酸基とラジカル重合性不飽和基を共に有するものである。フェノール系活性炭はフェノール樹脂を炭化、賦活により細孔を形成して製造する。細孔形成のメカニズムは明確ではないが、フェノール樹脂を修飾することにより、炭化及び賦活の結果形成される微細構造(形状、ポアサイズなど)は微妙に変化することが考えられる。フェノール樹脂を変性して不飽和基を持たせることにより、活性炭として好ましい細孔構造が形成されるものと考えられる。
本発明におけるフェノール性水酸基とラジカル重合性不飽和基を共に構造中に含有する変性ノボラック型フェノール樹脂は、アラビアゴムに代表される多糖類やポリビニルアルコールに代表される合成水溶性高分子や界面活性剤など一種の乳化安定剤としての役割をするものを用いて球状の樹脂とすることも可能である。
【0016】
本発明におけるフェノール性水酸基とラジカル重合性不飽和基を共に構造中に含有する変性ノボラック型フェノール樹脂はノボラック型フェノール樹脂とビニル基、アリル基等を有する化合物を公知の方法で反応させることにより得られる。
例えばノボラック樹脂とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応としては触媒を用いて、公知慣用の方法で70℃〜150℃、好ましくは75℃〜100℃の温度範囲で得られる。樹脂を合成する際には、反応中のゲル化を防止する目的や、生成物の保存安定性、更には硬化性の調整の目的で重合禁止剤を用いても良い。触媒としては特に限定されるものではないが、塩基性触媒が好ましく、特にエポキシ基と反応性を有する第2級アミンまたは分子内第3級アミン基と水酸基の両方を有するものが好ましい。
【0017】
ノボラック樹脂とN−メチロールアクリルアミド類との反応としては触媒を用いて、70℃〜150℃、好ましくは75℃〜100℃の温度範囲で得られる。触媒としては特に限定されるものではないが酸性触媒が好ましい。樹脂を合成する際には、反応中のゲル化を防止する目的や、生成物の保存安定性、更には硬化性の調整の目的で重合禁止剤を用いても良い。
本発明における変性ノボラック型フェノール樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量としては、おおよそ500〜20000、好ましくは2000〜10000である。
【0018】
本発明において重合開始剤の併用が可能である。代表的な重合開始剤としては、アゾビスブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステル、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5ジ(2−エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ジブチルパーオキシヘキサンなどの有機系過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機系過酸化物などが挙げられる。これらの重合開始剤は1種でもよく、2種以上混合して用いても良い。その配合割合は変性ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対し0.05〜10質量部がよく、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0019】
本発明において、通常のフェノール樹脂、特にノボラック型フェノール樹脂で用いられる硬化剤の併用も可能である。例えば、ヘキサメチレンテトラミンやフェノール性水酸基との反応可能なエポキシ基を含有するエポキシ樹脂等の化合物、イソシアネート基含有の化合物、メラミン系樹脂化合物等である。その配合割合は変性ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対し1〜30質量部がよく、より好ましくは3〜15質量部である。
【0020】
樹脂に炭化、賦活などの処理を行なうことにより活性炭となるが、炭化は変性ノボラック型フェノール樹脂を400℃〜600℃程度に加熱乾留することによって行われる。また、賦活法としては、塩化亜鉛、燐酸、硫酸、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどによる薬剤賦活、水蒸気、炭酸ガス、酸素ガス、燃焼排ガス、これらの混合ガスなどによるガス賦活が適用できる。
【0021】
本発明の方法で得られた活性炭は、公知の電極の製造方法を用いて電気二重層キャパシタ用電極等とすることができる。その他吸着剤、水処理用等活性炭が使用される全ての分野に使用可能である。電気二重層キャパシタ用電極に使用する場合の例について説明すると、活性炭に必要に応じて所定量の導電性物質(カーボンブラック、黒鉛粉末等)を添加し、ポリエチレンやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PDF)などのバインダーを溶媒に溶解したものを添加し、プラネタリーミキサー等で混練りし、スラリーを形成し、ペースト化する。得られたペーストをアルミニウム、ステンレス、チタン等の箔、板状物の金属集電材(導電性基材)に、所定の厚さに塗布し、溶媒を室温又は加熱して蒸発後、また必要により、ロールプレス等で加圧処理して電極シートとする。
【0022】
電気二重層キャパシタの電解液としては、有機系電解液に用いられる有機系極性溶媒には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、スルホラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトニル等が挙げられ、電解質にはテトラエチルアンモニウムテトラフルオロ硼酸等の4級アンモニウム塩、テトラエチルホスホニウムテトラフルオロ硼酸等の4級ホスホニウム塩、あるいは過塩素酸リチウム等が挙げられる。水溶液系電解液には硫酸水溶液、水酸化カリウム水溶液等が挙げられる。常温溶融塩系電解液には1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム塩誘導体が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下実施例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
(合成例1)
温度計、攪拌機、ジムロート冷却管を備えた3口セパラブルフラスコにポリスチレン換算重量平均分子量が3000のノボラック型フェノール樹脂100質量部、メチルエチルケトン100質量部、グリシジルメタクリレート41質量部、ジメチルエタノールアミン2質量部を仕込み、80℃で7時間反応させた。この時のノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量とグリシジルメタクリレートの当量比は約100:30である。その後、減圧下にて溶媒を除去することによりポリスチレン換算重量平均分子量6000のフェノール性水酸基及びラジカル重合性水酸基を共に有する変性ノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0024】
(合成例2)
ポリスチレン換算重量平均分子量が約370のノボラック型フェノール樹脂100質量部を用い、グリシジルメタクリレート68質量部、反応触媒としてジメチルアミンを用いること以外は合成例1と同様の条件で合成を行った。この時のノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量とグリシジルメタクリレートの当量比は約100:50である。このとき、ポリスチレン換算重量平均分子量600のフェノール性水酸基及びラジカル重合性水酸基を共に有する変性ノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0025】
(合成例3)
ポリスチレン換算重量平均分子量が3000のノボラック型フェノール樹脂100質量部を用い、N−メチロールアクリルアミド144質量部、反応触媒として蓚酸1質量部を用いること以外は合成例1と同様の条件で合成を行った。この時のノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量とNメチロールアクリルアミドの当量比は約100:150である。このとき、ポリスチレン換算重量平均分子量5000のフェノール性水酸基及びラジカル重合性水酸基を共に有する変性ノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0026】
(合成例4)
ポリスチレン換算重量平均分子量が3000のノボラック型フェノール樹脂100質量部を用い、N−メチロールアクリルアミド72質量部、反応触媒として蓚酸1質量部を用いること以外は合成例1と同様の条件で合成を行った。この時のノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量とNメチロールアクリルアミドの当量比は約100:75である。このとき、ポリスチレン換算重量平均分子量5000のフェノール性水酸基及びラジカル重合性水酸基を共に有する変性ノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0027】
(合成例5)
コンデンサー、攪拌機、温度計を装着した2リットルフラスコにフェノール100質量部、50%ホルマリン96質量部、25%アンモニア水7質量部、ポリビニルアルコール6質量部、純水100質量部を仕込み70℃で2時間反応させた。その後、ヌッチェにて樹脂を濾別し分散剤を水洗により除去した。その後更に100質量部の純水にて水洗した後、150℃のオーブン中、2時間乾燥し、平均粒径5μmの粒状フェノール樹脂を得た。
【0028】
(実施例1〜4)
得られた樹脂を表1の配合に従い配合混合物を作成し、180℃のオーブンで2時間保持することで硬化樹脂を得た。この硬化樹脂をめのう乳鉢で約2mm未満の粒径になるまで解砕した。
次に解砕物をアルミナボードに入れ、窒素気流中600℃で2時間加熱し炭化を行った。この炭化物20gと水酸化カリウム80gをセラミックボードに入れ、管状電気炉で、窒素500ml/minを流し、雰囲気を十分に置換した後、電気炉を昇温し800℃で2時間加熱し、賦活を行った。
【0029】
賦活を終えた活性炭と水酸化カリウムの混合物を、200mlの水でセラミックボードから剥離させ、200mlの温水を20回注いで大部分の水酸化カリウムを水洗除去し、テフロン(登録商標)容器に移し替えた。次に、テフロン(登録商標)容器に給水し、3時間煮沸洗浄した。煮沸洗浄後の活性炭は、200mlの温水を25回繰り返し注ぐ方法で洗浄し、温風循環乾燥機で200℃、12時間乾燥した。
活性炭をめのう乳鉢で粉砕し、活性炭と粘着材としてテフロン(登録商標)をそれぞれ重量比95:5になるように混合し、圧縮成形後、ステンレス製網に圧着し作用電極とした。
【0030】
対極に活性炭繊維、参照極にリチウム金属、及び作用極には調整された活性炭からなる三極セルを用い、定電流20mA/cm2を加えることによる電圧変化から静電容量を求めた。
使用した電解液はプロピレンカーボネート溶液中にテトラエチレンアンモニウムテトラフルオロ硼酸(TEABF4)を1.0モル/リットルの濃度になるように溶解して調整した。
その結果、重量当たりの静電容量が40F/g以上と良好な値となった。
静電容量に寄与すると言われている活性炭のミクロ孔のうち、TEA+のイオン半径の2〜3倍に当たる1.5〜2.2nmの活性炭のポア分布測定を行い、静電容量に寄与する積分値を求めた。重量当たりの静電容量が高いもの程、積分値が高い結果となった。
【0031】
(比較例1〜2)
比較例1は合成例5の粒状フェノール樹脂を使用し、比較例2は市販レゾール型フェノール樹脂BLS-330(昭和高分子株式会社製)を使用し、比較例3は市販ノボラック型フェノール樹脂BRP-522Z(昭和高分子株式会社製)を使用した以外は実施例と同様にして評価を行った。
その結果、増加ポア体積の積分値は小さくなり、静電容量が実施例と比べて低い値であった。
以上の実施例、比較例の結果を表1に示す。
【0032】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の活性炭を用いた分極性電極は単位重量、及び単位体積当たりの静電容量が高い。したがって、この分極性電極を電気二重層キャパシタの電極材として用いることにより、従来に比べて高静電容量の電気二重層キャパシタを製造することができる。また本発明の活性炭は吸着剤、水処理用、その他にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基とラジカル重合性不飽和基を共に含有する変性ノボラック型フェノール樹脂を炭化、賦活してなる活性炭。
【請求項2】
変性ノボラック型フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂である請求項1に記載の活性炭。
【請求項3】
変性ノボラック型フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂にN−メチロールアクリルアミド類を反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂である請求項1に記載の活性炭。
【請求項4】
変性ノボラック型フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量100に対して当量比20〜90のグリシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂である請求項2に記載の活性炭。
【請求項5】
変性ノボラック型フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量100に対して当量比20〜200のN−メチロールアクリルアミド類を反応させることにより得られる変性ノボラック型フェノール樹脂である請求項3に記載の活性炭。
【請求項6】
電気二重層キャパシタの分極性電極用である請求項1〜5のいずれかに記載の活性炭。
【請求項7】
請求項6に記載の活性炭を使用した分極性電極。
【請求項8】
請求項7記載の分極性電極を用いた電気二重層キャパシタ。

【公開番号】特開2008−30981(P2008−30981A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204502(P2006−204502)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(504469776)MEFS株式会社 (13)
【Fターム(参考)】