説明

フェロシアン化物のフェリシアン化物への電解酸化法

本発明は、酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相をフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相に分割された電解槽中で酸化する方法であって、酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相をデカンテーションまたは抽出または濾過により前処理することを含んでなる陽極液を製造すること;この陽極液をこの分割された電解槽の陽極と接触させること;陰極液をこの分割された電解槽の陰極と接触させること;そしてこの分割された電解槽に電力を印加し、この場合にこの電力が所定の電流または電圧を有し、そしてこの印加がこのフェロシアン化物(V)をフェリシアン化物(IV)に酸化するのに充分な時間のものであることを含んでなる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ガランタミン (I)
【0002】
【化1】

【0003】
の合成におけるキーとなる段階は、有機溶媒と塩基性水相の2相系中でフェリシアン化物(IV)を酸化剤として用いて式(II)
【0004】
【化2】

【0005】
の中間体を式(III)
【0006】
【化3】

【0007】
の中間体に酸化的環化(分子内フェノールカップリング)することである(特許文献1;特許文献2)。好ましい有機溶媒はトルエンなどの芳香族炭化水素である。この水性塩基は好ましくはアルカリ金属の炭酸塩または炭酸水素塩である。この酸化剤は好ましくはフェリシアン化カリウムすなわちKFe(CN)(IV)である。
【0008】
ガランタミン (I)はReminyl(登録商標)(ガランタミンヒドロブロミド)として市販されていて、軽度ないし中度のアルツハイマー病の治療に承認され、そして血管性痴呆、脳血管障害を伴うアルツハイマー病、軽度の認識機能障害、統合失調症、パーキンソン病および認識機能が障害されている他の疾患などの他の適応に開発中のものである。
【0009】
本格規模製造時には、このフェロシアン化物すなわちKFe(CN)(V)の水相廃液流は、焼却しなければならないが、最終生成物のガランタミン (I)のコストに大きな影響を及ぼす。現在まで、フェロシアン化物(V)水性廃液に対する回収手法は入手できていない。ほかに、フェリシアン化物(IV)は少数の供給者があるのみで比較的高価な試剤であり、このことが回収を経済的に価値のあるものとしていることを注目しなければならない。
【0010】
フェロシアン化物(V)を含んでなる水相のフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相への再循環は、再酸化により理論的に可能である。例えば式(II)の中間体を式(III)の中間体に酸化するのに、水相中での副生成物の蓄積がフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相の再使用にマイナスの影響を及ぼし得るために、再酸化の化学的方法は実際的には実行不可である。更には、副生成物の前記蓄積は再使用サイクルの回数を制限し得る。
【特許文献1】WO−96/12692
【特許文献2】WO−96/31458
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ、解決を要する問題は、酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相をフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相に再酸化する実際的方法を見い出す一方で他の酸化的フェノールカップリング反応において、特にガランタミン (I)の全合成における中間体(II)の中間体(III)への反応において(a)この水相中に副生成物を導入する化学的な工程を回避し、(b)フェリシアン化物(IV)を含んでなる水相の繰り返しの再循環を可能とすることに関する。スキームとして、スキーム1に図示するようなガランタミン の全合成の特別な例を用いて、この問題を例示することができる。
【0012】
【化4】

【0013】
本発明者らは、酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相をフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相に酸化する実際的な方法であって水相中に副生成物を導入する化学的な工程を使用せず、他の酸化的フェノールカップリング反応においてフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相の繰り返しの再循環を可能とし、そして工業的規模に容易に適用可能である方法を本明細書で提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相をフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相に分割された電解槽中で電解酸化する方法であって、酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相をデカンテーションまたは抽出または濾過により前処理することを含んでなる陽極液を製造すること;この陽極液をこの分割された電解槽の陽極と接触させること;陰極液をこの分割された電解槽の陰極と接触させること;そしてこの分割された電解槽に電力を印加し、この場合にこの電力が所定の電流または電圧を有し、そしてこの印加がこのフェロシアン化物(V)をフェリシアン化物(IV)に酸化するのに充分な時間のものであることを含んでなる方法を提供する。フェロシアン化物(V)のフェリシアン化物(IV)への酸化は可逆的な工程であるので、分割された電解槽、すなわち陽極液と陰極液が膜により分離されている槽を使用することによってのみ、高い転化速度を得ることができる。この電解槽を分割する膜は、好ましくは化学的および機械的に高い耐久性を有するカチオン選択膜である。カチオンに透過性であるが、反応物と生成物に極めて不透過性である材料が電気化学的に分割された電解槽の膜に使用される。この膜は電解槽中でセパレーターおよび固体電解質として機能し、膜は電解槽のジャンクションを通してカチオンを選択的に移送することが要求される。このような膜の例は、ペルフルオロポリエチレンスルホン酸(ナフィオン(登録商標)、Du Pont)などのペルフッ素化ポリマー膜である。他の膜材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PFTE、例えばテフロン(登録商標))、ポリプロピレン(例えばセルガード(登録商標))膜を含む。フェロシアン化物(V)もフェリシアン化物(IV)もこの膜を通って陰極まで泳動することはできないが、Kなどのカチオンはこの膜を通過し、陽極液から陰極液へのK移動を生じる。
【0015】
電解酸化は陽極で起こるので酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相が陽極液である。陰極ではプロトンの電解還元は水素を生じる。したがって、半電池の式は次の通りである。
陽極:Fe(CN)4−→Fe(CN)3−+e
陰極:2H+2e→H
(あるいは:2HO+2e→H+2OH
この方法を開発する場合の主要な課題は
−フェロシアン化物(V)のフェリシアン化物(IV)への転化を最適化すること;
−副反応を抑制すること;そして
−中間体(II)を中間体(III)に酸化するのに有効に再使用可能なフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相を得ること
を含むものであった。
【0016】
酸化的フェノールカップリング反応から回収されたフェロシアン化物(V)を含んでなる水相についての多数回の実験は、新鮮な相または未処理の相の電解酸化が不定な結果をもたらすことを本発明者らに教示した。
【0017】
未処理の水相は約2%〜約4%の有機物材料および鉄水酸化物の形の懸濁した遊離の鉄を含有する。この電解酸化法に及ぼすこの有機物材料の影響を現状では理解することはできないが、この懸濁した遊離の鉄は、分割された電解槽の膜上および電極上に沈澱することにより、電解酸化工程を妨害するように見える。
【0018】
概念的には容易で、実行不可能でないとしても実際には困難な方法は、酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相を60℃以上で懸濁粒子を沈澱させるのに十分な時間貯蔵し、上澄み水相をデカンテーションして沈澱粒子から分離する前処理に関する。60℃以上の温度はこのフェロシアン化物(V)の水相からの沈澱を防止することが示されている。この方法は実行可能であるが、フェロシアン化物(V)を含んでなる水相を入れた大きな貯蔵タンクを懸濁粒子を沈澱させるに充分な時間60℃以上の温度で占有しなければならないために、本格規模の製造においては実際には受け入れられないものである。
【0019】
前段で概述した問題点に更に実際的な解決法を見出す試みによって、本発明者らは、我々の主な関心事である酸化的フェノールカップリング反応で使用される溶媒である有機溶媒、好ましくはトルエンなどの芳香族炭化水素により抽出することにより、酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相を前処理するに至った。このような前処理された水相は未処理の水相で経験する問題点を起こさない。このことは2つの理由のために極めて顕著である。
【0020】
第1に、トルエンなどの有機溶媒による抽出により前処理された水相は懸濁粒子をなお含有するが、これらはこの電解酸化反応をもはや妨害しないことを本発明者らは観察した。
【0021】
第2に、科学的な観点から、この抽出手順は有機物材料を除去するが、遊離の鉄をあまり除去しないであろうことを概念として説明することができる。この方法の現時点での理解は、懸濁した有機物材料の除去が電解酸化法に影響を及ぼさないが、遊離の鉄の除去は電解酸化法に影響を及ぼすと予測されるということである。本発明者らの実験は逆のことを教示するように思われ、そして観察される現象に対する理論的解釈は現時点では得られていない。
【0022】
前段で概述した問題点に対するもう一つの実際的な解決法は、酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相を濾過により前処理することを含んでなる。実験室規模ではこれは、例えば冷濾過助剤、例えばディカライト(dicalite)により充填されたブフナー濾過器を用いる濾過である。製造規模ではこの濾過段階は濾過助剤をこの水層に加え、そしてこれを予熱した単板あるいは多板の濾過器で濾過することを含んでなる。
【0023】
この陰極液は電流の移動を可能とするものでなければならず、そして電導性でなければならない。これは副反応に著しく寄与するものであってはならない。好ましい態様においては、陰極液は、アルカリ金属水酸化物(例えばKOH)またはアルカリ金属塩(例えばKCO、KHCO、KCl、KCN)を水に溶解して、0.0001M〜1M溶液とすることにより製造される。この陰極液はアルカノール、例えばメタノールまたはエタノールなどの混和性有機溶媒を更に含んでなってもよい。
【0024】
この工程時、この陰極液のpHはプロトンが除去されるのにしたがって上昇するが、一般にこのことはこの工程に影響を及ぼさない。
【0025】
実施には、ElectroCell N.V.(Sweden)のMPタイプ膜電解槽を選択した。
【0026】
上記に概述した電解酸化法を実際的な方法で実施するために、作動条件−特に最適の作動条件を見出すのに種々の実験を行った。
【0027】
一連の陽極を試験し、そしてこれら実験の結果として寸法の安定した陽極などの極めて高価な電極も同等に機能することが期待されるが、最良の経済的な選択は黒鉛電極を使用することであると結論した。
【0028】
一連の陰極も試験し、そしてこの実験の結果として種々の他の電極、例えば銅、ニッケル、ステンレススチールおよび黒鉛電極の群から選択される陰極は機能するが、一部の電極、例えば鉛電極は機能しないと結論した。銅陰極または黒鉛陰極を用いて最良の結果を得た。
【0029】
この実験は作動条件−特に最適の作動条件を見出すことに関し−また、所望の目標を達成するのに必要とされる分割された電解槽に印加される電力パラメーターを特定することに関するものであった。一方では、2V未満の電圧を印加した場合、フェロシアン化物(V)のフェリシアン化物(IV)への転化速度は実用的には遅すぎることが観察された。他方では、2.8V以上の電圧は安全性の観点から明らかに許容できない現象である、陽極におけるガス状酸素の生成を引き起こすことが判明した。転化速度を最大とし、そして酸素生成を最少とする最適のバランスは、ほぼ2.2V〜2.6V、特に2.6+/−0.1Vの電圧で見出された。電流密度は約20mA/cm〜約80mA/cmの範囲であることができ、好ましくは約40mA/cmである。陽極液の組成に依って、電力を調整することができる。
【0030】
フェロシアン化物(V)の沈澱を回避するために、60℃以上の温度でこの方法が優先的に行なわれることが更に観察された。しかしながら、更なる実験は、50℃の低い温度でこの方法を同等に良好に行うことができることを示した。
【0031】
70℃などの高い温度を試験したが、この方法の結果に著しい影響を及ぼさないことが判明した。したがって、陽極液および陰極液の約50℃の温度がこの時点では本発明による方法を運転する最適の温度であるように思われる。
前述の方法が時としてうまくいかないこともある。この方法がうまくいかないことを回避するために、工程制御系に1つ以上のモニター段階を付加することもできる。
【0032】
第1に、この電解酸化時に、フェロシアン化物(V)のフェリシアン化物(IV)への転化は、膜または電極上への外来材料の沈澱により妨害されることがある。このような不測の出来事はこの電解槽を流れる電流を記録し、そして電流が低下した時は工程を中断することによりモニター可能である。
【0033】
第2に、陽極液中のフェロシアン化物(V)濃度は減衰しないこと、あるいはフェリシアン化物(IV)の濃度はこの工程時に上昇しないことに気がつくかもしれない。それゆえ、陽極液中のフェロシアン化物(V)およびフェリシアン化物(IV)の濃度を工程時に記録することが有利である。
【0034】
第3に、遊離のシアン化物(CN)がこの工程時に生成し始めることを回避しなければならず、そして明らかにこの発生の恐れがある場合には、この工程を直ちに中断しなければならない。
【0035】
前記の不測の出来事を適時に処理するためには、本発明の方法は前述の現象のすべてを記録するモニター段階を含み、該段階を工程の休止等適切な結果のきっかけとするのが有利である。
【0036】
電解槽電圧、電流、温度およびpHを予め設定した間隔でこの工程を停止するまで記録する、コンピューター制御されたデータロガー(Grant Co.(UK))を用いて電力条件を記録することができる。
【0037】
この電解酸化反応時のフェロシアン化物(V)のフェリシアン化物(IV)への転化をモニターするためには、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を使用することができる。この手法は、前記転化率および電解酸化の終点のみならず、遊離のシアン化物(CN)の望まれない生成のモニターも可能とする。2115cm−1のフェリシアン化物(IV)ピークの吸光度、2035cm−1のフェロシアン化物(V)の吸光度、および2080cm−1の遊離のシアン化物(CN−)の吸光度;各ピークは相互に充分に分離され、明瞭に判別可能である。
【0038】
陽極液のサンプリングを回避し、そして分析の速度も改善するATR(減衰全反射)プローブに赤外分光光度計を結合することにより、オンライン測定を行うことができる。バックアップとして、レドックス滴定
【0039】
【数1】

【0040】
(ここで、フェロイン指示薬は橙赤色から緑色に変化する)
を含むセリウム定量法による滴定を準備してもよい。
【0041】
更なる態様においては、本発明は、本明細書で前述した方法により得ることができるフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相に関する。なお更には、本発明は、このような反応に感受可能な基質に対して酸化的フェノールカップリング反応を行うのに本明細書で前述した方法により得ることができるフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相を再使用することに関する。前記の再使用は、式(II)の基質をガランタミン (I)に更に転化することができる式(III)の中間体に環化するのに特に興味がある。
【実施例】
【0042】
実施例1
1.1装置および手順
電解槽および補助的な装置のスキームを図1に示す。MP電解槽(ElectroCell)は各々100cmの面積の2つの電極を有するものであった。この陽極室および陰極室はナフィオン(登録商標)膜により分離され、そして電極と膜の間の間隔は5mmであった。均一な流れのために2つの入口および出口を電解槽に設けた。制御された流速のダイアフラムポンプ(テフロン(登録商標)ポンプヘッド、Cole−Parmer(USA))Pa、Pcを使用して、陽極液と陰極液を循環した。電極室を出る流体をサンプリングおよびセンサー(例えばpH電極)の導入のための開口部を備えたガラス貯蔵容器Sa、Scに導いた。この貯蔵容器からこの液体を同一の加熱−冷却サーモスタット(Cole−Parmer(USA))中に置いた熱交換コイルに入れた。このコイルからこれらの液体をポンプに導入した。テフロン(登録商標)配管のみを適用した。電源は制御された電解槽電圧モードで運転される40A容量のポテンシオスタットP.S.であった。コンピューター制御されたデータロガーD.L.(GrantCo.、UK)はデータ収集の役割をした。これは読みを停止するまで電解槽電圧、電流、温度およびpHを予め設定した間隔で読み取った。
1.2電解前の手順
サーモスタットを必要とされる温度まで加熱し、次に陰極貯蔵容器を500mlの0.5M NaCl溶液により充填した。温度計、温度プローブおよびpH電極を取り付け、そして陰極液の循環を開始して、必要とされる温度に達せしめた。約70℃まで加熱した250mlのプロセス水を陽極貯蔵容器Saに入れ、そしてその循環を開始した。ポテンシオスタットとデータロガープログラムを設定し、そして液体温度が平衡化するにしたがってデータロガーによる読みを開始し、そして必要とされる電解槽電圧で電流をスイッチオンした。250mlのプロセス水の電解を概ね40分間行った。10、20、30、50、70分で1mlの陽極液および陰極液の試料をフェロシアン化物およびK分析に採取した。40分後電解を停止し、pH電極を取り除き、そして洗浄した。
1.3電解槽のクリーニング
電解に続いて、MP電解槽を次の手順によりクリーニングした:最初に、陽極液をポンプ送液により除去した。電解槽の陽極室から貯蔵容器Saへの配管を取り外し、そして陽極液をこの出口から捨てた。250mlの水を貯蔵容器に導入し、そして電解槽からポンプ送液することにより、陽極室を洗浄した。この液体が無色になるまで、洗浄を継続した。この液体がpH=7に達するまで、陰極室を類似の方法で洗浄した。陽極室のクリーニングは更に困難なものであった。それは陰極室と比較して約3−4倍の水を必要とした。この試験においては、本発明者らは放置され、デカンテーションされたプロセス水により開始した。この水を「古い」水と呼ぶ。2つの他のタイプのプロセス水も供給した。一つは「新鮮な」水または未処理の水であり、そしてもう一つは「トルエンで抽出された」水であった。両方の水とも9.3近傍のpHを有していた。「新鮮な」水または未処理のプロセス水による実験時には、褐色層が貯蔵容器Saの壁上に形成され、そして各電解により同一の電解槽電圧で小さい電流が観察された。この層は5%HCl溶液により容器から容易に溶解するものであった。得られた溶液の分析は鉄−水酸化物/酸化物の形成が起こったことを示した。陽極室の類似の酸性処理は青色液体を生じ、電極室の内壁上の層がヘキサシアノ鉄酸イオンを含有するものであることを示した。酸性処理時にこの鉄−水酸化物/酸化物は溶解し、そしていずれも青色のKFe[Fe(CN)]あるいはFe(Fe(CN)沈澱が生成した。これらの沈澱は可溶であり、そして洗い流し可能であった。残った粘着性の部分はアルカリ性溶液での処理により分解可能であった。酸性−アルカリ性のシーケンスを3−4回繰り返すと、堆積層が陽極室から除去され、そして作動条件が再び得られた。酸化物層の蓄積は電解槽中でも起こり、そして数回のランの後、作業は再現性を示さなくなった。100mlの5%HCl、250mlの水、100mlの5%NaOHおよび250mlの水を165ml/分の流速で3回シーケンスでポンプ送液することにより電解槽をクリーニングした場合のみ、再現性を回復した。前述の層形成のほかに、「新鮮な」プロセス水の使用によって別の困難な問題も生じた。電解の開始後、褐色沈澱が陰極液中に現れることが観察され、これはFe(OH)/Fe(OH)であることが判明した。これはカチオン伝導性酸性ナフィオン(登録商標)膜から到来する遊離のFeイオンから生成したものである。これらがアルカリ性の陰極液に入ると、沈澱を起こした。電解の初期の数分にのみ沈澱の形成が観察された。陰極液を新しい溶液により置き換えると、更なる汚染は現れなかった。膜から陰極液の中へのFeイオンの移動がなく、そして陽極室中の層形成が妨害性でないように見えるので、トルエンで抽出されたプロセス水は更に「好ましい」ものであった。「古い」水においては、褐色粉末様の沈澱が放置時に蓄積し、Fe酸化物であることが判明した。この堆積物を390mlの水から濾別し、それをアルカリ性溶液により洗浄し、そして乾燥することにより定量して、0.251g/dmすなわち0.00157モル/lの鉄酸化物を得た。この滴定の始めには、青色が現れ、遊離のFeイオンが使用可能である場合にのみ形成可能である紺青沈澱の形成を示した。この量の定量はうまくいかなかった。「新鮮な」水および「トルエンで抽出された」水でpHは実用的に同一であった(「新鮮な」水:pH=9.37および「トルエンで抽出された」水:pH=9.43)。
1.4分析
1ml容積の陽極液試料を採取して、酸性の0.05M Ce(SO溶液およびフェロイン指示薬で滴定することにより、Fe(CN)4−イオンの濃度を求めた。このCe(IV)イオンがFe(CN)4−イオンをFe(CN)3−に酸化した。
【0043】
膜を通してのKイオンの移動を追跡するために、1mlの陰極液試料を採取し、そしてK含量をイオン感応電極(RADELKISZ,Hungary)により分析した。各分析の前に0.1、0.01および0.001MのKCl溶液中で飽和カロメル電極(sce)に対する電位を測定することにより、この電極を較正した。これらのデータは較正曲線を提供した。
1.5電解槽の電極の置き換え
本発明者らの研究によればCu陰極と黒鉛陽極が最も好適な対であるので、これらを電解槽に設置した。これらの電極のほかに、ステンレススチール陰極と黒鉛フェルトで被覆した黒鉛陽極およびNi陽極も試験した。この電極は困難なしに置き換え可能であった。
1.6基本的な運転の特徴
Cu陰極および黒鉛陽極を使用することにより、この酸化の基本的な特徴を確立した。これらの材料は以前の研究により最も有望であった。かなりの過電圧を必要とするが、黒鉛は酸化に対して熱力学的にかなり安定である。酸化が起こったとしても、黒鉛酸化の生成物は、再循環フェリシアン化物(IV)溶液を再使用しようと考えている有機反応においては金属陽極のイオンよりも妨害が少ないと予期される。
運転パラメーターの範囲
電解槽電圧:2.00−2.80V。2.00V以下では転化速度は低すぎて実用的でなく、そして2.80V以上では強いガス発生が陽極で起こる。事実、2.80V電解槽電圧で電解の約20分後にガス発生が起こった。電解槽電圧の運転範囲は2.20V−2.60Vであった。
【0044】
温度:60−70℃。更に低い温度では、Fe(CN)3−/Fe(CN)4−錯体の溶解性が低い。上限値は電解槽材料の熱安定性により決められる。大部分の実験を60℃で行った。
【0045】
ポンプ速度:100−500ml/分。更に小さい流速では、流体流れによる電解槽への熱移動はこの温度を維持するのに充分でなく、そして更に速い流速では高い圧力および震動が系中で発生した(配管の内径が速いポンプ送液には充分でなかった)。一時的な速い流速はこの電流に影響しなかった。通常の流速は405ml/分であった。
実施例2
2.1種々の電極についての観察
2.1.1Cu陰極と黒鉛陽極
2.1.1.1「古い」プロセス水
MP電解槽についての初期の研究は「古い」プロセス水について行われたものである。この水は約1年間貯蔵されたものであった。この電解酸化工程の再現性はきわめて良好であった。初期の期間においては、反応速度の増加を維持するのに充分な量のFe(CN)4−が存在するので、電流は電解槽電圧と共に増加した。電流の減少にしたがって電流はイオン移動により支配されるので電解槽電圧と無関係となったが、最終の期間においては電流は電解槽電圧と共に再度増加した。この変化は、電解槽電圧は一定であるので、Fe(CN)4−の酸化速度の減少と共に新しい反応が始まり、そしてこの寄与が電解時間と共に大きくなるという事実によるものであった。これらの反応は、(i)この水中での有機汚染物の酸化、(ii)黒鉛陽極の酸化または(iii)酸素発生であったのかもしれない。2.80Vの電解槽電圧では、すべての実験においてガス発生が約20分の電解時間で始まり、そして電解槽から貯蔵容器に入る陽極液がますます泡立つようになることが観察された。滴定データから計算されるFe(CN)4−の転化は60−70分の電解で80%以上であった。
2.1.1.2「新鮮な」水
2.00Vでの実験は低電流のために早期に中止された。この実験時に、膜および陽極上の沈澱が電流を減少させること、そして1.3に述べたクリーニング手順を適用した場合にのみ再現性のある実験が可能であることが明らかになった。
2.1.2トルエンで抽出された水
2.1.2.1Cu陰極と黒鉛陽極
この水については、微細分散した堆積物が水を貯蔵した各容器の底に見出されたが、本発明者らは「新鮮な」水について上述した困難を経験することはなかった。
【0046】
時間と共の電流変化は前の場合と類似のパターンに従った。流速は405ml/分であった。この電解槽電圧の増加は初期電流の増加を引き起こしたが、短期間であった。2.40Vにおいては90分および2.60Vにおいては70分で約80%の転化率を得た。初期の期間においては電解槽電圧依存の変動が存在するが、転化率は通過電荷に比例した。酸化された錯体の滴定により計算される通過電荷と電流による通過電荷の比をプロットした場合、最も好適な条件は2.40Vにおけるものであるように見える。
2.1.2.2ステンレススチール(SS)陰極と黒鉛陽極
SS陰極による最初の電解を2.20Vにおいて行った場合、電流は予期に反して低かった。2.40Vにおける次の電解は予期した範囲の電流を与えたので、この最初の連続運転は陰極の活性化をもたらすものであったように見える。2.60Vにおける電解は予期したように挙動したが、2.80Vにおいては電流は直ちに低下し始めるが、連続運転を中止するまでほぼ一定のままである。強いガス発生はこの電圧においては他の過程が進行していることを証明するものであった。この電解に続いて、2.20Vに戻し、そして観察される電流は予期されたものであった。転化率はCu−黒鉛電極で見られるレベルに達しなかった。70分で転化率は70−80%近傍であった。
2.1.2.3ステンレススチール(SS)陰極と黒鉛フェルト陽極
黒鉛フェルト陽極を試みる目的は電流密度を増加させることであった。黒鉛フェルトを固体黒鉛の表面に接着剤で付け、極めて高い表面積を得た。2.20Vにおいて行った電解は固体黒鉛陽極と比較して大きな電流で進行し、そして電流は電解のほぼ全時間の間一定のままであり、終点に向かって急峻に低下した。これらの特徴は極めて有望なものであった。残念ながら、この電極のクリーニングは有機含有物の吸着のために極めて厄介であった。通常の酸性クリーニング手順の適用によって、洗浄水のピンク・くり茶の着色が生じ、恐らく接着剤の分解のために止まることはなかった。この現象によってこの複合材料はこの目的には無用となり、これについては更なる実験を行わなかった。
2.1.2.4ステンレススチール(SS)陰極とNi陽極
酸化に対するNiの熱力学的安定性は黒鉛のそれに類似であるので、狭い電解槽電圧範囲においてであるがこの金属を陽極として試験することは価値があると推定された。電流は直ちに低下し、そして残念ながらNi溶解が起こった。これらの理由のために陽極材料としては本発明者らはNiを無視した。
2.2結論
これらの実験によって、Cu陰極またはステンレススチール陰極および黒鉛陽極を最も好適な電極として考えることができるという予備的な研究が支持される。陰極材料の変更は転化率に影響するとは予期されないが、ステンレススチール陰極の場合転化率はCu陰極の場合よりも小さかった。この影響は異なる過電圧分布から間接的に起こるのかもしれない。Cu陰極上に微細な表面粗化が観察された。ステンレススチール陰極上には変化は見られず、そして黒鉛陽極も安定であった。
実施例3
3.1流速の影響
陽極液および陰極液流体の流れを制御して、同一の流速を得た。異なる流速(遅い陰極液流れまたは速い陰極液流れ)は電流に影響しなかった。陽極液の容積は250mlであったが、500ml/分の流速では本発明者らは500mlの容積を使用して、急速な吸引による空気の巻き込みを妨げなければならなかった。流速の増加は初期の期間においては電流に影響しなかったが、反応の終わりに向かうと移動が大きいことにより影響を及ぼした。このように、速い陽極液流れは有利であることができる。本発明者らの装置においては、流速を更に増加することはできなかった。この実験においては本発明者らは405ml/分を適用した。
3.2電流に及ぼす有機含有物の影響
種々の配置で同一の、例えば2.20Vの電解槽電圧において観察される酸化速度を比較すると、t=0での初期速度はほぼ同一であると結論することができる。極めて大きな表面積を有する黒鉛フェルトを例外として、電流は4.0−4.5Aの範囲にある。水組成の結果である差異は電流の時間依存性に見ることができる。有機含有物の影響を考慮すると、「古い」水は導入試料として使用されたので無視することができ、そして「新鮮な」水および「トルエンで抽出された」水が重要性を持つ。「新鮮な」水が沈澱層を形成する強い傾向は、電解槽中で再循環する前に水相の廃液流を処理する重要性を例示する。
【0047】
トルエンによる抽出は陽極液として好適な水相を提供する。これは遊離のFeイオン含量を明らかに加減し、そして陰極液中に沈澱は起こらなかった。また、この抽出は有機含有量も加減し、そしてこの水により若干の層形成もあったが、陽極と膜を閉塞することはなかった。別法として、本発明者らは木炭上への吸着により「新鮮な」水から有機物材料を除去することを試みたが、これは成功しなかった。本発明者らの結論は、トルエンによる抽出が閉塞を減少させる有用な手順であるということである。
3.3水素発生
陰極液はNaClのみを含有するので、陰極反応は
2HO+2e=H+2OH
でなければならない。Hの量はファラデーの法則により電流から計算可能である。このように、1秒の時間における1Aの電流(Q=1A*1秒=1A秒)は1/(2*96600)=5.18*10−6モル、すなわち1.24*10−4lのHを生成する。本発明者らの実験においては、250mlのプロセス水のフェロシアン化物(V)含量は約20000A秒を必要とし、そして1.86g(約1.86ml)の水の反応により2.48lのHが生成するものであった。膜を通してのKイオンの移動により水移動も起こり、この損失を過度に補償することを特に考慮すると、この量は少なすぎて500mlの陰極液の容積変化を見ることはできない。
3.4膜を通じてのイオンおよび水移動に及ぼす電解槽電圧の影響
フェロシアン化物を滴定するための陽極液試料と同一時間において採取した陰極液試料中のK濃度を求めるためにイオン感応電極を適用することにより、K移動を各実験において追跡した。
3.5温度の影響
405ml/分の流速で2.20Vの電解槽電圧において温度の影響を測定した。この影響は小さく、そしてプラスの影響は初期の期間においてのみ見ることができ、一方初期の期間には移動する錯体が少ないので、最終の期間には電流は低温度において大きかった。運転温度を70℃までとすることができると考えられる。本発明者らの実験においては60℃を適用した。
【0048】
電流密度が低く(最大40mA/cm)そして5mm厚の電極室中の液体流れが温度の安定化に充分な熱交換をもたらすので、電解電流による熱発生は無視し得るものであった。
3.6陰極液のpHの変化
各実験において陰極液のpHをモニターし、そして記録した。pHは約pH=10.5まで急速に増加し、次に約pH=11までゆっくりと増加した。このパターンはすべての実験に対して典型的であった。電解槽電圧の干渉のために同一のロガーによる陽極液と陰極液の同時測定は可能でなく、そこで本発明者らは陰極液のpHを記録するのみとした。この実験に続いて陽極液のpHを測定した。電解と共に陽極液の初期pH=8.9は事実上変化しなかった。
3.7結論
次のパラメーターが推奨される。
−電極:Cu陰極、黒鉛(固体)陽極(ステンレススチールおよび黒鉛陰極も好適である)
−電解槽電圧の範囲:2.20V−2.60V
−運転温度の範囲:60℃−70℃
−流速:陽極液および陰極液の両方;400ml/分−700ml/分(上限値をSYN電解槽で試験することを要する)
−水前処理予備コンディショニング:トルエンによる抽出
−槽クリーニング:第1:陽極室クリーニング
−陽極室の排水
−脱色するまで脱イオン水による洗浄
−5%HCl溶液による漂白
−脱イオン水による漂白
−5%NaOH溶液による漂白
−脱イオン水による漂白
第2:陰極室クリーニング
−陰極室の排水
−流出液の酸性度がpH=7となるまで脱イオン水による洗浄
4.再使用例
電解酸化からの再循環陽極液を用いる中間体(III)の製造手順:4.5gのKFe(CN)および5.9gのKCOを125mlの陽極液に添加し、電解酸化した結果、次の分析データを得た:174.6mg/mlのKFe(CN)、21.2mg/mlのKFe(CN)、カリウム濃度c(K)=2.38M。228mlのトルエンと7.6gの中間体(II)を入れた機械的攪拌、還流コンデンサーおよび窒素入口を付けた500mlの4つ口丸底フラスコにこの溶液を添加した。この混合物を攪拌し、そして55℃まで9時間加熱し、攪拌せずに室温まで冷却し、そして濾過した。この濾過した固体を44mlのトルエンにより洗浄し、合体した液体を分離した。この水性層を50mlのトルエンにより洗浄し、合体したトルエン相をNaSO上で乾燥し、そして蒸発して、83.3%(定量LC)の中間体(III)を含有する2.6gの固体を得た。
【0049】
別法として、上記の実施例におけるようにKCOを添加する代わりに電解酸化から得られた適量の陰極液溶液を添加することにより、電解酸化から得られた陽極液を塩基性となし得る。
5.フェロシアン化物溶液の電解酸化から出発する多数回の再使用例
次の実施例においては、フェリシアン化物を安価なフェロシアン化物から得、そして5サイクルの電解酸化と酸化的フェノールカップリング反応を行った。
【0050】
50℃の水(359ml)中のフェロシアン化物(1.22g;0.057モル/100g)、KHCO(33g)の溶液を2.6Vにおいてフェリシアン化物に電解酸化した(90%転化率;0.051モル/100g)(ELOX1)。水酸化カリウムと他の成分をこれに添加して、Kの損失およびpHの低下を補償した(表A)。
【0051】
中間体(II)(25g)の中間体(III)(反応1)への酸化的フェノールカップリングでこの溶液を使用した。反応の完結時に、この温かい反応混合物をデカンテーションし、そして水層を有機層から分離するために液体相を分離漏斗に移した。この有機層を乾燥し、共沸蒸留により濃縮し、そして中間体(III)を前述のように単離した。不純物の収率および量を求めた(表B)。
【0052】
この温かい水層をディカライト(decalite)上で濾過し、不純物について分析し(表C)そして減損した試剤(表D)を補充し、次に前述のように電解酸化にかけた(50℃、2.6V)(ELOX2)。電解酸化後、フェリシアン化物とフェロシアン化物の量、KとHの濃度、および有機汚染物の存在を定量し、そしてELOX1後に得られた溶液に戻すのに充分な量の試剤を添加した(表Aを参照)。
【0053】
このように得られた溶液を酸化的フェノールカップリング反応(反応2)で再使用し、そしてELOX5と反応5にわたって上述の手順を繰り返した。
【0054】
次の表のAないしDは、本発明の実施例の電解酸化と酸化的フェノールカップリング反応の各々に対して詳細を提供する。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相を分割された電解槽中でフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相に酸化する方法であって、
−酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相をデカンテーションまたは抽出または濾過により前処理することを含んでなる陽極液を製造すること;
−前記陽極液を前記分割された電解槽の陽極と接触させること;
−陰極液を前記分割された電解槽の陰極と接触させること;
−そして前記分割された電解槽に電力を印加し、この場合に前記電力が所定の電流または電圧を有し、そして前記印加が前記フェロシアン化物(V)をフェリシアン化物(IV)に酸化するのに充分な時間のものであること
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記分割された電解槽がカチオン選択膜により分割されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カチオン選択膜がペルフッ素化ポリエチレンスルホン酸膜のナフィオン(登録商標)である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相の前処理が前記水相を60℃以上で懸濁粒子を沈澱させるのに十分な時間貯蔵し、上澄み水相をデカンテーションして沈澱粒子から分離することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相の前処理が前記水相を有機溶媒により抽出することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸化的フェノールカップリング反応から回収されるフェロシアン化物(V)を含んでなる水相の前処理が前記水相を濾過することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記陰極液が0.0001〜1Mの範囲の濃度を有するアルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属塩(例えばKOH、KCO、KHCO、KCl、KCN)溶液を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記陽極が黒鉛であり、そして前記陰極が銅、ニッケル、ステンレススチールおよび黒鉛の群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分割された電解槽に印加される電力が2Vと2.6Vの間の電圧を有する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電圧が2.6V+/−0.1Vである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記陽極液および陰極液が50℃以上の温度に保持される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
−前記分割された電解槽を通る電流の記録;
−前記フェロシアン化物(V)濃度の減衰の記録;
−前記フェリシアン化物(IV)濃度の蓄積の記録;
−遊離のシアン化物(CN−)の出現の記録;および
−前記陰極液の電導度の記録
の群から選択されるモニター段階の1つまたは全部を更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法により得ることができるフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相。
【請求項14】
このような反応に感受可能な基質に対する酸化的フェノールカップリング反応の実施への、請求項13に記載するようなフェリシアン化物(IV)を含んでなる水相の使用。
【請求項15】
前記酸化的フェノールカップリング反応を式(II)
【化1】

の基質に対して行い、式(III)
【化2】

の化合物を生成する請求項14に記載の使用。

【公表番号】特表2006−505390(P2006−505390A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549167(P2004−549167)
【出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050641
【国際公開番号】WO2004/042117
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】