説明

フェンダ支持部構造

【課題】フェンダパネルとフードとの見切り部に衝突体が車両上方側から衝突した場合に、ブラケットが折曲部以外の部分で曲げ変形するのを防止又は抑制することができるフェンダ支持部構造を得る。
【解決手段】ブラケット20の支持脚部上部32には、補強ビード38Aが設けられて高剛性部38が形成されており、補強ビード38Aが折曲部36に近接して配設されることで、車両上方側からの衝突荷重Fに対して折曲部36に比べて支持脚部上部32の剛性が高くなっている。衝突体が車両上方側から衝突した場合には、脆弱部37となる折曲部36に応力が集中し、ブラケット20の支持脚部30は、衝突荷重Fの入力により折曲部36が起点となって曲げ変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンダパネルの上部の内側端部を、エネルギー吸収用のブラケットを介してボデーパネル側に支持するフェンダ支持部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フェンダ支持部構造においては、歩行者保護対策の一環として、フロントフェンダパネルの上部の内側端部を、エネルギー吸収用のブラケットを介してエプロンアッパメンバの頂壁部に取り付けている場合がある(例えば、特許文献1参照)。このようなブラケットは、側面視で略ハット形状とされ、ブラケットの縦壁部となる脚部の高さ方向中間部には、折曲部が形成されている。
【0003】
しかし、この従来構造では、フェンダパネルとフードとの見切り部に衝突体が車両上方側から衝突した場合、脚部の板厚や形状によっては、ブラケットが折曲部以外の部分で曲げ変形する可能性がある。
【特許文献1】特開2002−178953公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、フェンダパネルとフードとの見切り部に衝突体が車両上方側から衝突した場合に、ブラケットが折曲部以外の部分で曲げ変形するのを防止又は抑制することができるフェンダ支持部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明のフェンダ支持部構造は、フェンダパネルの上部の内側端部を、エネルギー吸収用のブラケットを介してボデーパネル側に支持するフェンダ支持部構造であって、前記ブラケットは、前記フェンダパネルの上部の内側端部が固定されるフェンダ取付部と、前記ボデーパネル側に固定されるボデーパネル側取付部と、前記フェンダ取付部と前記ボデーパネル側取付部とを車両上下方向に繋ぐと共に高さ方向中間部で折り曲げられた折曲部を備え、車両上方側からの衝突荷重に対して前記折曲部に比べて剛性が高い高剛性部が設けられ、前記折曲部には前記衝突荷重の入力により当該折曲部を起点として曲げ変形させる脆弱部が設けられた支持脚部と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明のフェンダ支持部構造によれば、フェンダパネルの上部の内側端部を、エネルギー吸収用のブラケットを介してボデーパネル側に支持するので、衝突体が車両上方側からフェンダパネルの上部に衝突した場合、その際の衝突荷重はフェンダパネルの内側端部を介してブラケットに入力された後、ボデーパネルに伝達される。この過程で、ブラケットが車両上下方向に塑性変形する(潰れる)ことにより、衝突時のエネルギー吸収がなされる。
【0007】
ここで、ブラケットにおいて折曲部を備えた支持脚部には、車両上方側からの衝突荷重に対して折曲部に比べて剛性が高い高剛性部が設けられ、折曲部には前記衝突荷重の入力により当該折曲部を起点として曲げ変形させる脆弱部が設けられているので、フェンダパネルとフードとの見切り部に衝突体が車両上方側から衝突した場合には、ブラケットの支持脚部は、高剛性部が殆ど変形せず、脆弱部によって折曲部が起点となって曲げ変形する。
【0008】
請求項2に記載する本発明のフェンダ支持部構造は、請求項1記載の構成において、前記支持脚部に補強部が設けられて前記高剛性部が形成され、前記補強部が前記折曲部に近接して配設されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載する本発明のフェンダ支持部構造によれば、支持脚部に補強部が設けられて高剛性部が形成され、補強部が折曲部に近接して配設されるので、フェンダパネルとフードとの見切り部に衝突体が車両上方側から衝突した場合には、ブラケットの支持脚部は、補強部によって剛性の高められた高剛性部が殆ど変形せず、補強部が設けられずに剛性の高められない脆弱部となる折曲部に応力が集中する。これによって、ブラケットの支持脚部は、折曲部が起点となって曲げ変形する。
【0010】
請求項3に記載する本発明のフェンダ支持部構造は、請求項2記載の構成において、前記補強部が、前記折曲部の車両上方側に設けられて前記支持脚部の一般面に対して一方側へ凸状に突出する上側ビードと、前記折曲部の車両下方側に設けられて前記支持脚部の一般面に対して他方側へ凸状に突出する下側ビードと、を備えており、前記支持脚部が前記折曲部を起点として曲げ変形した状態で前記上側ビード及び前記下側ビードが互いに重なってその一方が他方に入り込む形状に当該上側ビード及び当該下側ビードが形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載する本発明のフェンダ支持部構造によれば、支持脚部が折曲部を起点として曲げ変形した状態で上側ビード及び下側ビードが互いに重なってその一方が他方に入り込む形状に当該上側ビード及び当該下側ビードが形成されるので、フェンダパネルとフードとの見切り部に衝突体が車両上方側から衝突した場合には、支持脚部が折曲部を起点として曲げ変形して上側ビード及び下側ビードが互いに重なってその一方が他方に入り込む。このため、ビードを設定したことによる潰れストロークの減少を抑制することができる。
【0012】
請求項4に記載する本発明のフェンダ支持部構造は、請求項1から3のいずれか一項に記載の構成において、前記ブラケットは、当該ブラケットと前記ボデーパネルとで形成される多角形の上部の辺長和と下部の辺長和とが略同一となるように寸法設定がなされていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載する本発明のフェンダ支持部構造によれば、ブラケットは、当該ブラケットとボデーパネルとで形成される多角形の上部の辺長和と下部の辺長和とが略同一となるように寸法設定がなされているので、フェンダパネルとフードとの見切り部に衝突体が車両上方側から衝突してブラケットが折曲部を起点として曲げ変形した場合には、ブラケットは、前記多角形の上部側と下部側とが重なるまで曲げ変形する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のフェンダ支持部構造によれば、フェンダパネルとフードとの見切り部に衝突体が車両上方側から衝突した場合に、ブラケットが折曲部以外の部分で曲げ変形するのを防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項2に記載のフェンダ支持部構造によれば、折曲部に近接して配設された補強部が折曲部自体の剛性を高めないことで、衝突体が車両上方側から衝突した場合に脆弱部となる折曲部に効果的に応力を集中させることができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項3に記載のフェンダ支持部構造によれば、支持脚部にビードを設けても、衝突体が車両上方側から衝突した場合に、ブラケットの変形ストローク(変形可能なストローク)を充分に確保することができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項4に記載のフェンダ支持部構造によれば、衝突体が車両上方側から衝突した場合に、ブラケットが曲げ変形してブラケットとボデーパネルとで形成される多角形の上部側及び下部側が線長余りなく互いに重なることで、ブラケットの変形ストロークを最大限確保することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1実施形態]
本発明におけるフェンダ支持部構造の第1の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは車両の上方向、矢印FRは車両の前方向、矢印OUTは車幅方向外側をそれぞれ示す。
【0019】
図1には、本実施形態に係るフェンダ支持部構造をエンジンルームの内側から見た側面図が示されている。また、図2には、当該フェンダ支持部構造を車幅方向に沿って切断した状態を車両前方側から見た縦断面図が示されている。これらの図に示されるように、車体前部の側面には、フロントフェンダパネル10が配設されている。フロントフェンダパネル10は、前輪の上方側を覆い意匠面を構成する外側縦壁部10Aと、この外側縦壁部10Aの上端部から垂下されてエンジンルーム12側へ屈曲(延出)された内側縦壁部10Bと、を含んで構成されている。
【0020】
フロントフェンダパネル10の上部の内側端部としての内側縦壁部10Bの下方には、ボデーパネルとしてのエプロンアッパメンバ14が配設されている。エプロンアッパメンバ14は下向きに開放された略コ字状断面とされており、車両前後方向を長手方向として配設されている。左右一対のフロントフェンダパネル10の内側縦壁部10Bの上端部間には、エンジンルーム12を開閉するフード16(図2参照)が配設されている。フード16の幅方向両端部の下縁側には弾性材料(ゴム)によって構成された図示しないシール材が配設されており、フロントフェンダパネル10の内側縦壁部10Bの垂直部10B1に弾性変形した状態で圧接されるようになっている。
【0021】
フロントフェンダパネル10の内側縦壁部10Bは、車両前後方向に所定の間隔で配置された複数(本実施形態では前後一対)のエネルギー吸収用のブラケット20を介してエプロンアッパメンバ14に取り付けられて当該エプロンアッパメンバ14側に支持されている。ブラケット20は、車両側面視で略ハット形状を成しており、エプロンアッパメンバ14の頂壁部14Aと平行に配置されてフロントフェンダパネル10の内側縦壁部10B(水平部10B2)が固定されるフェンダ取付部26と、エプロンアッパメンバ14の頂壁部14Aに面接触状態で載置されてスポット溶接等によって当該頂壁部14Aに固定される前後一対のボデーパネル側取付部としてのエプロン側取付部28と、平板状のフェンダ取付部26と平板状のエプロン側取付部28とを車両上下方向に繋ぐ前後一対の支持脚部30と、によって構成されている。
【0022】
図3及び図4に示されるように、ブラケット20の頂壁部とされるフェンダ取付部26には、ボルト挿通孔40が貫通形成されており、さらにその裏面側にはウエルドナット42が予め溶着されている(図4では図示省略)。図2に示されるように、ブラケット20のフェンダ取付部26の上面に、フロントフェンダパネル10の内側縦壁部10Bの水平部10B2が載置された状態で、ボルト44が水平部10B2の上方側から挿入されて、ウエルドナット42に螺合されることにより、フロントフェンダパネル10の内側縦壁部10Bがブラケット20を介してエプロンアッパメンバ14の頂壁部14Aに取り付けられている。なお、必ずしもウエルドナット42を使用する必要はなく、通常のナットを用いてもよい。
【0023】
ブラケット20は、歩行者保護対応のために歩行者保護性能上要求される必要ストロークを考慮して嵩高に構成されており、歩行者保護対応フェンダ嵩上げブラケットとして機能する。図3及び図4に示されるように、フェンダ取付部26とエプロン側取付部28とを繋ぐ支持脚部30は、高さ方向中間部で折り曲げられた折曲部36を備えている。すなわち、支持脚部30は、フェンダ取付部26の前後端部から所定の傾斜角度で下方へ屈曲されて車両側面視でハの字状に(車両下方側へ向けて互いに離反する方向へ延在するように)形成された一対の支持脚部上部32と、前側のエプロン側取付部28の後端部及び後側のエプロン側取付部28の前端部から所定の傾斜角度で上方へ略直角に屈曲されて形成された一対の支持脚部下部34と、によって構成されている。換言すれば、支持脚部下部34は、一対の支持脚部上部32から所定の傾斜角度で屈曲垂下されてエプロン側取付部28の端部まで延在している。
【0024】
本実施形態では、ブラケット20は、フェンダ取付部26と前後一対の支持脚部上部32との三個の板部でブラケット上部22が構成され、前後一対の支持脚部下部34と前後一対のエプロン側取付部28との四個の板部でブラケット下部24が構成されており、上下非対称形状でかつ左右対称形状に形成されている。
【0025】
なお、図2に示されるように、折曲部36が支持脚部上部32や支持脚部下部34と同様の車幅方向寸法となっているので、例えば、折曲部付近が切り欠かれて折曲部が幅狭になっているような対比例に比べて、ブラケット20は、車幅方向に対する剛性が高い。このため、フロントフェンダパネル10を車幅方向外側から車幅方向内側へ押圧した場合に、ブラケット20は容易には変形しないようになっている。
【0026】
図1に示されるように、ブラケット20がエプロンアッパメンバ14の頂壁部14Aに組付けられた状態を側面から見ると、ブラケット20の一般面とエプロンアッパメンバ14とが多角形状(本実施形態では六角形状)を形成している。ここで、図4に示されるように、ブラケット20は、フェンダ取付部26の長さをX、支持脚部上部32の(一般面32Aの)長さをA1、A2、支持脚部下部34の長さをB1、B2、一対のエプロン側取付部28間の距離(隙間)の長さをYとすると、ブラケット20とエプロンアッパメンバ14の頂壁部14Aとで形成される多角形(本実施形態では六角形)の上部の辺長和(=A1+A2+X)と、下部の辺長和(=B1+B2+Y)とが略同一となるように寸法設定(線長長さの設計)がなされている。なお、本実施形態では、支持脚部上部32の長さA1、A2、支持脚部下部34の長さB1、B2の関係は、A1>B1、A2>B2、A1=A2、B1=B2に設定されている。
【0027】
図3及び図4に示されるように、支持脚部30において、支持脚部下部34に比べて側面視長さが長い支持脚部上部32には、補強部としての補強ビード38Aが設けられている。補強ビード38Aは、支持脚部幅方向の中央部において、折曲部36に近接して配設されて支持脚部上部32の長手方向(車両側断面視での延在方向(図4参照))のほぼ全長に亘って延在しており、補強ビード38Aの下端は、折曲部36の手前ぎりぎりまで近付けた位置(折曲部36の折れ線(稜線)に近接する位置)に設定されている。また、本実施形態では、補強ビード38Aは、支持脚部上部32の一般面32Aに対してハット型断面外側へ凸状に突出しており、車両正面視(及び車両背面視)で略矩形状とされると共に車両側面視で台形状となっている。支持脚部上部32には、補強ビード38Aが設けられることで車両上方側からの衝突荷重Fに対して折曲部36に比べて剛性が高い高剛性部38が形成されている。
【0028】
また、折曲部36には、補強ビード38Aが設けられずに剛性が高められないことによって、相対的に高剛性部38に比べて剛性が低い脆弱部37が設けられている。さらに、補強ビード38Aが折曲部36に近接して配設されることで、補強ビード38Aの終端と脆弱部37との境界部、換言すれば、高剛性部38から脆弱部37への剛性変化部は、折曲部36の位置とほぼ一致している。このため、脆弱部37は、車両上方側からの衝突荷重Fの入力により折曲部36を起点としてブラケット20を曲げ変形させるようになっている。これにより、ブラケット20が安定的に潰れる最適化構造となっている。
【0029】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0030】
図2に示されるように、フロントフェンダパネル10の上部の内側縦壁部10Bを、エネルギー吸収用のブラケット20を介してエプロンアッパメンバ14側に支持するので、衝突体46が車両上方側からフロントフェンダパネル10とフード16との見切り部48に衝突した場合、その際の衝突荷重Fはフロントフェンダパネル10の内側縦壁部10Bを介してブラケット20に入力された後、エプロンアッパメンバ14に伝達される。この過程で、ブラケット20が車両上下方向に塑性変形する(潰れる)ことにより、衝突時のエネルギー吸収がなされる。
【0031】
ここで、図4に示されるように、ブラケット20の支持脚部上部32には、補強ビード38Aが設けられて高剛性部38が形成されており、補強ビード38Aが折曲部36に近接して配設されることで、車両上方側からの衝突荷重Fに対して折曲部36に比べて支持脚部上部32の剛性が高くなっている。図2に示されるフロントフェンダパネル10とフード16との見切り部48に衝突体46が車両上方側から衝突した場合には、図4に示されるブラケット20の支持脚部30は、補強ビード38Aによって剛性の高められた高剛性部38が殆ど変形せず、補強ビード38Aが設けられずに剛性の高められない脆弱部37となる折曲部36に応力が集中する。これによって、ブラケット20の支持脚部30は、衝突荷重Fの入力により確実に折曲部36を起点として(折曲部36での)曲げ変形をする。なお、図4では、曲げ変形途中のブラケット20を二点鎖線で示している。
【0032】
このように、折曲部36に近接して配設された補強ビード38Aが折曲部36自体は剛性を高めないことで、図2に示されるフロントフェンダパネル10とフード16との見切り部48に衝突体46が車両上方側から衝突した場合に、図4に示される脆弱部37となる折曲部36に効果的に応力を集中させ、ブラケット20が折曲部36以外の部分で曲げ変形するのを防止又は抑制することができる。
【0033】
補足すると、ブラケット20の板厚が薄い場合や折曲部36のハット型断面内側の折れ角度Cが大きい場合であっても、ブラケット20は、狙った折れ線上(折曲部36)の位置で適切に(折れモードで)曲げ変形し、変形ストロークを確保できると共に変形荷重を低下させることが可能となる。
【0034】
また、ブラケット20は、当該ブラケット20とエプロンアッパメンバ14の頂壁部14Aとで形成される六角形の上部の辺長和(=A1+A2+X)と、下部の辺長和(=B1+B2+Y)とが略同一となるように寸法設定がなされているので、ブラケット20が折曲部36を起点として曲げ変形した場合には、ブラケット20は、前記六角形の上部側と下部側とが線長余りなく互いに重なるまで、換言すれば、支持脚部上部32と支持脚部下部34とが重なるまで曲げ変形する。このため、模式的なG−S線図である図5に示されるように、上部の辺長和と下部の辺長和とが略同一でない対比構造(二点鎖線のG−S線図)に比べて、本実施形態の構造(実線のG−S線図)では、ブラケット20の変形ストロークがより確保されることになり、ブラケット20は、最後まで低荷重で完全に潰れ切る(又は、ほぼ潰れ切ったと判断できる程度まで潰れる)。
【0035】
[第2実施形態]
次に、フェンダ支持部構造の第2の実施形態を図6及び図7に基づき説明する。なお、第2の実施形態は、支持脚部下部34にも、補強ビード38Aと同様の補強部としての補強ビード38Bが設けられている点が特徴であり、他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるので、実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。また、図7では、曲げ変形途中のブラケット20を二点鎖線で示す。
【0036】
図6及び図7に示されるように、下側の補強ビード38Bは、支持脚部幅方向の中央部において、折曲部36に近接して配設されて支持脚部下部34の長手方向(車両側断面視での延在方向(図7参照))のほぼ全長に亘って延在しており、下側の補強ビード38Bの上端(終端)は、折曲部36の手前ぎりぎりまで近付けた位置(折曲部36の折れ線(稜線)に近接する位置)に設定されている。また、本実施形態では、下側の補強ビード38Bは、支持脚部下部34の一般面34Aに対してハット型断面外側へ凸状に突出しており、車両正面視(及び車両背面視)で略矩形状とされると共に車両側面視で台形状となっている。支持脚部下部34には、補強ビード38Bが設けられることで車両上方側からの衝突荷重Fに対して折曲部36に比べて剛性が高い高剛性部38が形成されている。
【0037】
これにより、上側の補強ビード38Aと下側の補強ビード38Bとの間(分割部)が脆弱部37となっている。このように、折曲部36(折れ線)の上下に補強ビード38A、38Bを設ける構造にすることで、折曲部36の折れ位置がより明確になり、応力がより一層集中し易くなる。このため、ブラケット20は、低荷重での曲げ変形が可能になる。
【0038】
[第3実施形態]
次に、フェンダ支持部構造の第3の実施形態を図8及び図9に基づき説明する。なお、第3の実施形態は、折曲部36の車両上方側に設けられた上側ビード(補強部)としての補強ビード38Aの突出方向と、折曲部36の車両下方側に設けられた下側ビード(補強部)としての補強ビード38Cの突出方向と、が反対方向(互い違い方向)とされている点、すなわち、上下の補強ビード38A、38Cの凹凸を逆転させた点が特徴であり、他の構成については、第2の実施形態とほぼ同様の構成であるので、第1、第2の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。また、図9では、曲げ変形途中のブラケット20を二点鎖線で示す。
【0039】
図8及び図9に示されるように、ブラケット20の高剛性部38は、折曲部36の車両上方側に設けられて支持脚部上部32の一般面32Aに対してハット型断面外側(一方側)へ凸状に突出する補強ビード38Aと、折曲部36の車両下方側に設けられて支持脚部下部34の一般面34Aに対してハット型断面内側(他方側)へ凸状に突出する補強ビード38Cと、で形成されている。これにより、上側の補強ビード38Aと下側の補強ビード38Cとの間(分割部)が脆弱部37となっている。
【0040】
上側の補強ビード38A及び下側の補強ビード38Cは、支持脚部30が折曲部36を起点として曲げ変形した状態で、上側の補強ビード38A及び下側の補強ビード38Cが互いに重なってその一方(本実施形態では、下側の補強ビード38C)が他方(本実施形態では、上側の補強ビード38A)に入り込む形状に形成されている。
【0041】
このような構成によれば、図2に示されるフロントフェンダパネル10とフード16との見切り部48に衝突体46が車両上方側から衝突した場合には、図9に示されるように、支持脚部30が折曲部36を起点として曲げ変形して折り畳まれることで上側の補強ビード38A及び下側の補強ビード38Cが互いに上向きに凸の状態で(上向き凸同士で)重なり、下側の補強ビード38C(凸形状部分)が上側の補強ビード38Aの凹状内側に入り込む(嵌り込む)。これにより、上下の補強ビード38A、38Cの凸同士が対向して相互干渉する現象を回避できる。その結果として、補強ビード38A、38Cを設定したことによる潰れストロークの減少を抑制すること、換言すれば、ブラケット20の変形ストロークを充分に確保することができる。
【0042】
なお、第1の実施形態で説明したように、ブラケット20は、支持脚部上部32と支持脚部下部34とが重なるまで曲げ変形できる設定とされており、これによって、本実施形態のような補強ビード38A、38Cの重なり配置の効果が増している。
【0043】
[第4実施形態]
次に、フェンダ支持部構造の第4の実施形態を図10に基づき説明する。なお、第4の実施形態は、支持脚部上部32及び支持脚部下部34における淵部、すなわち支持脚部幅方向の両サイドに、補強ビード38D、38Eを設けた点が特徴である。他の構成については、第3の実施形態とほぼ同様の構成であり、第1〜第3の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図10に示されるように、支持脚部上部32の支持脚部幅方向の両サイドには、支持脚部上部32の一般面32Aに対してハット型断面内側へ凸状に突出した上側ビード(補強部)としての補強ビード38Dが設けられ、支持脚部下部34の支持脚部幅方向の両サイドには、支持脚部下部34の一般面34Aに対してハット型断面外側へ凸状に突出した下側ビード(補強部)としての補強ビード38Eが設けられている。補強ビード38D、38Eは、配設位置や突出方向が第3の実施形態の補強ビード38A、38C(図8参照)と異なるが、他の点については第3の実施形態の補強ビード38A、38Cとほぼ同様であるので、詳細な説明を省略する。このように、支持脚部上部32及び支持脚部下部34に補強ビード38D、38Eが設けられることで車両上方側からの衝突荷重F(図9等参照)に対して折曲部36に比べて剛性が高い高剛性部38が形成されている。このような構成によっても、第3の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0045】
[第5実施形態]
次に、フェンダ支持部構造の第5の実施形態を図11に基づき説明する。なお、第5の実施形態は、第4の実施形態の変形例であり、支持脚部上部32及び支持脚部下部34における支持脚部幅方向の両サイドに、フランジ形状とされた補強部としての補強ビード38H、38Iを設けた点が特徴である。他の構成については、第2〜第4の実施形態とほぼ同様の構成であり、第1〜第4の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
図11に示されるように、支持脚部上部32の支持脚部幅方向の両サイドには、支持脚部上部32の一般面32Aに対してハット型断面内側へ凸状に突出してフランジ状とされた補強ビード38Hが設けられ、支持脚部下部34の支持脚部幅方向の両サイドには、支持脚部下部34の一般面34Aに対してハット型断面内側へ凸状に突出してフランジ状とされた補強ビード38Iが設けられている。補強ビード38H、38Iは、例えば、第2の実施形態の補強ビード38A、38B(図6参照)と配設位置や突出方向は異なるが、他の点については、第2の実施形態の補強ビード38A、38Bとほぼ同様であるので、詳細な説明を省略する。このように、支持脚部上部32及び支持脚部下部34に補強ビード38H、38Iが設けられることで車両上方側からの衝突荷重F(図7等参照)に対して折曲部36に比べて剛性が高い高剛性部38が形成され、上側の補強ビード38Hと下側の補強ビード38Iとの間が折曲部36と一致する脆弱部37となっている。このような構成によっても、他の実施形態と同様に衝突荷重F(図7等参照)の入力により折曲部36を起点として曲げ変形する。なお、各補強ビード38H、38Iの突出方向は、前述した突出方向の反対方向でもよい。また、図11では、折曲部36を挟んで上下に補強ビード38H、38Iが連続しているが、補強ビード38H、38Iは、(折曲部36から僅かに離れて)折曲部36に近接して配設されていてもよい。
【0047】
[第6実施形態]
次に、フェンダ支持部構造の第6の実施形態を図12に基づき説明する。なお、第6の実施形態は、補強部としての補強ビード38Fの形状が略半球形状で車両正面視(及び車両背面視)での形状が略楕円形状とされる点が特徴である。他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であり、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
図12に示されるように、支持脚部上部32には、補強ビード38Fが設けられている。補強ビード38Fは、略半球形状(半球形状を支持脚部上部32の長手方向に伸ばしたような形状)とされて第1実施形態の補強ビード38A(図3参照)と形状は異なるが、他の点については第1実施形態の補強ビード38Aとほぼ同様であるので、詳細な説明を省略する。このように、支持脚部上部32に略半球形状の補強ビード38Fが設けられることで車両上方側からの衝突荷重F(図4等参照)に対して折曲部36に比べて剛性が高い高剛性部38が形成されている。このような構成によっても、第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0049】
[第7実施形態]
次に、フェンダ支持部構造の第7の実施形態を図13及び図14に基づき説明する。なお、第7の実施形態は、補強部としての補強ビード38A、38Gの形状が負角成形にならない形状とされる点が特徴である。他の構成については、第2の実施形態とほぼ同様の構成であり、第1、第2の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
図13及び図14に示されるように、一対の支持脚部下部34の一般面34Aは、車両上方側へ向けて互いにやや接近するように傾斜して延在している。支持脚部下部34には、補強部としての補強ビード38Gが設けられている。補強ビード38Gは、車両正面視(及び車両背面視)で略矩形状とされると共に車両側面視で三角形状となっている。一般に支持脚部下部に設けられる補強ビードは、プレス成形上、プレス方向(矢印P方向)に対して負角になりやすいが、本実施形態における下側の補強ビード38Gは、プレス方向に対して負角でない(図14ではプレス方向に直角な方向線Lに対するハット型断面内側の傾斜角度Dが90°以下の)形状となっている。なお、下側の補強ビード38Gは、第2実施形態の下側の補強ビード38B(図7参照)と形状は異なるが、他の点については第2実施形態の補強ビード38Bとほぼ同様であるので、詳細な説明を省略する。また、補強ビード38Aについても、プレス方向に対して負角でない(図14ではプレス方向に直角な方向線Lに対するハット型断面内側の傾斜角度Eが90°以下の)形状となっている。
【0051】
このように、負角成形にならないようにプレス成形性に配慮した構造となっているので、型の簡素化が可能となる。また、上記のような構成によっても、第2の実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【0052】
[第8の実施形態]
上記実施形態では、支持脚部30において折曲部36に近接等して補強ビード38A〜38Iを配設することで、折曲部36に脆弱部37を設けているが、第8の実施形態を図示した図15に示されるように、例えば、支持脚部30に補強部を設けずに折曲部36の支持脚部幅方向の中央部に脆弱部としての貫通孔50を貫通形成することで、折曲部36に脆弱部を設けると共に支持脚部30には車両上方側からの衝突荷重F(図2等参照)に対して折曲部36に比べて相対的に剛性が高い高剛性部38を設ける構成としてもよい。なお、請求項1の「高剛性部」の概念には、(支持脚部30に補強部が設けられていない)本実施形態の高剛性部38のように、補強されていない部分であって車両上方側からの衝突荷重F(図2等参照)に対して折曲部36に比べて相対的に剛性が高い部分も含まれる。
【0053】
[実施形態の補足説明]
なお、フェンダ支持部構造は、補強ビード38Aを支持脚部下部34にのみ設ける構成や、第1〜第7の実施形態における補強ビード38A〜38Iの突出方向を逆にする構造としてもよく、また、第1〜第7の実施形態における補強ビード38A〜38Iやその突出方向を逆にした補強ビード等を適宜組み合わせた他の構造や、さらには、これらの種々形態に第8の実施形態(折曲部36に貫通孔50を貫通形成する形態)を組み合わせたような他の構造としてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、ブラケット20とエプロンアッパメンバ14の頂壁部14Aとで形成される側面視の形状が六角形とされており、このような形状が好ましいが、ブラケットとエプロンアッパメンバ(ボデーパネル)の頂壁部とで形成される側面視の形状は、六角形以外の多角形としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフェンダ支持部構造をエンジンルーム側から見た側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るフェンダ支持部構造を車両前方側から見て示す縦断面図である。図1の2−2線に沿う縦断面図に相当する。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す断面図である。図3の4−4線に沿う断面図に相当(ブラケットに溶着されるウエルドナットは図示省略)する。
【図5】車両用フードにインパクタが衝突した際の加速度と変位との関係を模式的に示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す断面図である。図6の7−7線に沿う断面図に相当(ブラケットに溶着されるウエルドナットは図示省略)する。
【図8】本発明の第3の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す断面図である。図8の9−9線に沿う断面図に相当(ブラケットに溶着されるウエルドナットは図示省略)する。
【図10】本発明の第4の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す斜視図である。
【図11】本発明の第5の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す斜視図である。
【図12】本発明の第6の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す斜視図である。
【図13】本発明の第7の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す斜視図である。
【図14】本発明の第7の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す断面図である。図13の14L−14L線に沿う断面図に相当(ブラケットに溶着されるウエルドナットは図示省略)する。
【図15】本発明の第8の実施形態におけるエネルギー吸収用のブラケットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
10 フロントフェンダパネル
10B 内側縦壁部(内側端部)
14 エプロンアッパメンバ(ボデーパネル)
20 ブラケット
26 フェンダ取付部
28 エプロン側取付部(ボデーパネル側取付部)
30 支持脚部
32A 一般面
34A 一般面
36 折曲部
37 脆弱部
38 高剛性部
38A 補強ビード(上側補強ビード、補強部)
38B 補強ビード(補強部)
38C 補強ビード(下側補強ビード、補強部)
38D 補強ビード(上側補強ビード、補強部)
38E 補強ビード(下側補強ビード、補強部)
38F 補強ビード(補強部)
38G 補強ビード(補強部)
38H 補強ビード(補強部)
38I 補強ビード(補強部)
50 貫通孔(脆弱部)
F 衝突荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェンダパネルの上部の内側端部を、エネルギー吸収用のブラケットを介してボデーパネル側に支持するフェンダ支持部構造であって、
前記ブラケットは、
前記フェンダパネルの上部の内側端部が固定されるフェンダ取付部と、
前記ボデーパネル側に固定されるボデーパネル側取付部と、
前記フェンダ取付部と前記ボデーパネル側取付部とを車両上下方向に繋ぐと共に高さ方向中間部で折り曲げられた折曲部を備え、車両上方側からの衝突荷重に対して前記折曲部に比べて剛性が高い高剛性部が設けられ、前記折曲部には前記衝突荷重の入力により当該折曲部を起点として曲げ変形させる脆弱部が設けられた支持脚部と、
を有することを特徴とするフェンダ支持部構造。
【請求項2】
前記支持脚部に補強部が設けられて前記高剛性部が形成され、前記補強部が前記折曲部に近接して配設されることを特徴とする請求項1記載のフェンダ支持部構造。
【請求項3】
前記補強部が、前記折曲部の車両上方側に設けられて前記支持脚部の一般面に対して一方側へ凸状に突出する上側ビードと、前記折曲部の車両下方側に設けられて前記支持脚部の一般面に対して他方側へ凸状に突出する下側ビードと、を備えており、
前記支持脚部が前記折曲部を起点として曲げ変形した状態で前記上側ビード及び前記下側ビードが互いに重なってその一方が他方に入り込む形状に当該上側ビード及び当該下側ビードが形成されることを特徴とする請求項2記載のフェンダ支持部構造。
【請求項4】
前記ブラケットは、当該ブラケットと前記ボデーパネルとで形成される多角形の上部の辺長和と下部の辺長和とが略同一となるように寸法設定がなされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフェンダ支持部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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