説明

フォトマスク及び露光装置

【課題】人為的な設定ミスにより、マスクパターンが異なる複数種のパターン領域から狙いと違うパターン領域が選択されるのを防止する。
【解決手段】同一のマスク基板9上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域10を並べて設けたフォトマスク8であって、前記各パターン領域10の外側に、前記マスクパターンを識別するための複数種の識別マーク11を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクパターンが異なる複数種のパターン領域をその中心軸が互いに平行となるように並べて設けたフォトマスクに関し、特に上記複数種のパターン領域から人為的な設定ミスにより、狙いと違うパターン領域が選択されるのを防止しようとするフォトマスク及び露光装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のフォトマスクは、同一のマスク基板上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域を並べて設けており、基板上に異種のパターンを露光する場合には、シャッタの開閉動作により複数種のパターン領域から露光されるパターンのパターン領域を選択して露光するものとなっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−310217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のフォトマスクは、露光装置に備える制御手段のプログラムに基づいて制御されるシャッタの開閉動作により、上記複数種のパターン領域から露光されるパターンのパターン領域を選択するもので、パターン領域が正しく選択されたか否かを確認する手段を備えていなかった。したがって、人為的なミスにより上複数種のパターン領域の選択情報を間違って入力設定してしまったり、露光しようとするフォトマスクと異なるフォトマスクをセットしてしまったりした場合には、上記ミスを検出することができず、正規のパターンと異なるパターンを露光してしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、人為的な設定ミスにより、マスクパターンが異なる複数種のパターン領域から狙いと違うパターン領域が選択されるのを防止しようとするフォトマスク及び露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によるフォトマスクは、同一のマスク基板上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域を並べて設けたフォトマスクであって、前記各パターン領域の外側に、前記マスクパターンを識別するための複数種の識別マークを形成したものである。
【0007】
このような構成により、同一のマスク基板上に並べて設けられ、マスクパターンが異なる複数種のパターン領域の外側に形成した複数種の識別マークにより、複数種のマスクパターン領域の各マスクパターンを識別する。
【0008】
また、前記複数種の識別マークは、互いに形状が異なるものである。これにより、互いに形状が異なる複数種の識別マークにより、複数種のマスクパターン領域の各マスクパターンを識別する。
【0009】
さらに、前記複数種の識別マークは、メインマークと該メインマークを取り囲む円周上の異なる位置に形成されたサブマークとから成るものである。これにより、メインマークと該メインマークを取り囲む円周上の異なる位置に形成されたサブマークとから成る複数種の識別マークにより、複数種のマスクパターン領域の各マスクパターンを識別する。
【0010】
そして、前記サブマークは、前記マスクパターンのパターン情報を記録したバーコードである。これにより、サブマークとして設けたバーコードにマスクパターンのパターン情報を記録する。
【0011】
また、本発明による露光装置は、被露光体に対向して設けられ、マスクパターンが異なる複数種のパターン領域を並べて設け、前記各パターン領域の外側に前記マスクパターンを識別するための複数種の識別マークを形成したフォトマスクを保持して移動可能なマスクステージと、前記フォトマスクの複数種のパターン領域のうち、選択された一つのパターン領域に光源光を照射して該選択されたパターン領域のマスクパターンを前記被露光体上に転写する露光光学系と、前記フォトマスクの識別マークを検出する検出手段と、前記マスクステージの移動を制御して前記複数種のパターン領域から一つのパターン領域を選択させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、予め設定して保存されている露光情報から読み出したマスクパターン情報と、前記各識別マークに対応して予め保存されているマスクパターン情報のうち、前記検出手段により検出された前記識別マークに対応したマスクパターン情報とを比較し、前記選択されたパターン領域の正否を判定するものである。
【0012】
このような構成により、被露光体に対向して設けられたマスクステージでマスクパターンが異なる複数種のパターン領域を並べて設け、各パターン領域の外側にマスクパターンを識別するための複数種の識別マークを形成したフォトマスクを保持し、制御手段で制御して上記マスクステージを移動して、フォトマスクの複数種のパターン領域のうちから一つのパターン領域を選択し、検出手段で選択されたパターン領域に対応する識別マークを検出する。さらに、制御手段により、予め設定して保存されている露光情報から読み出したマスクパターン情報と、上記各識別マークに対応して予め保存されているマスクパターン情報のうち、上記検出手段により検出された識別マークに対応するマスクパターン情報とを比較して上記選択されたパターン領域の正否を判定する。その結果、選択されたパターン領域が正しい場合に、露光光学系で上記選択された一つのパターン領域に光源光を照射して該選択されたパターン領域のマスクパターンを被露光体上に転写する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1又は5に係る発明によれば、マスクパターンが異なる複数種のパターン領域の外側に形成した複数種の識別マークにより、複数種のマスクパターン領域の各マスクパターンを識別することができる。したがって、人為的なミスにより上複数種のパターン領域の選択情報を間違って入力設定してしまったり、露光しようとするフォトマスクと異なるフォトマスクをセットしてしまったりした場合にも、上記識別マークにより選択されたパターン領域の正否を判定して、狙いと違うパターン領域が選択されるのを防止することができる。これにより、正規のマスクパターンとは違うマスクパターンが被露光体上に露光されるのを回避することができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明によれば、識別マークの形状の違いから選択されたパターン領域の正否を判定することができる。
【0015】
さらに、請求項3に係る発明によれば、メインマークとサブマークとの位置関係から選択されたパターン領域の正否を判定することができる。
【0016】
そして、請求項4に係る発明によれば、バーコードに記録された選択情報により、選択されたパターン領域の正否を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による露光装置の実施形態の概略構成を示す正面図である。
【図2】本発明による露光装置の要部を拡大して示す平面図である。
【図3】本発明によるフォトマスクの一構成例を示す平面図である。
【図4】上記フォトマスクに設けた識別マークの形状例を示す平面図である。
【図5】上記露光装置の制御手段を示すブロック図である。
【図6】上記露光装置の動作を説明するフローチャートであり、識別マークがメインマークとサブマークとから成る場合を示す。
【図7】上記露光装置の別の動作を説明するフローチャートであり、識別マークがメインマークとサブマークとから成ると共にサブマークが二次元バーコードである場合について示す。
【図8】上記露光装置のさらに別の動作を説明するフローチャートであり、識別マークの形状が異なる場合を示す。
【図9】板面上に複数の露光領域が予め設定された液晶表示用基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による露光装置の実施形態の概略構成を示す正面図である。この露光装置は、同一のマスク基板上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域を並べて設けたフォトマスクを使用し、上記複数種のパターン領域から選択されたパターン領域のマスクパターンを被露光体上に転写して露光するもので、搬送手段1と、マスクステージ2と、露光光学系3と、検出手段4と、制御手段5(図5参照)とからなる。なお、以下の説明においては、被露光体が例えば液晶表示用基板6の場合について述べる。
【0019】
上記搬送手段1は、図示省略の搬送機構により、液晶表示用基板6の両端縁部を保持して図1に示す矢印A方向に搬送するものであり、例えば液晶表示用基板6の搬送方向(以下「X方向)という)に一定間隔で並べられた複数のステージ7の上面に複数のエア噴出口とエア吸引口とを備え、該エア噴出口及びエア吸引口から噴出及び吸引されるエアの圧力をバランスさせて液晶表示用基板6をステージ7上に一定量だけ浮上させた状態で搬送するようになっている。また、液晶表示用基板6の移動距離を計測する図示省力の位置センサー及びを液晶表示用基板6の搬送速度を検出する図示省略の速度センサーを備えている。
【0020】
上記搬送手段1の上面に対向してマスクステージ2が設けられている。このマスクステージ2は、フォトマスク8の縁部を保持して、図示省略のステージ移動機構によりX方向にステップ移動するものであり、ステージ7の上面に平行な面内にてX方向と略直交する方向(以下「Y方向」という)に複数のフォトマスク8を保持する図2に示すような第1のマスクステージ2Aと第2のマスクステージ2BとをX方向に一定距離Lだけ離して備えた構成となっている。そして、上記第1及び第2のマスクステージ2A,2Bは、保持した複数のフォトマスク8がY方向に一定の配列ピッチで互い違いに並ぶように設けられている。さらに、第1及び第2のマスクステージ2A,2Bは、保持した各フォトマスク8を個別にX,Y方向に微動させると共にXY面内で回転させて、各フォトマスク8を予め定められた所定位置に位置付けるための図示省略のアライメント機構も備えている。
【0021】
ここで、上記フォトマスク8は、図3に示すように、同一のマスク基板9上にマスクパターンが異なる複数種(例えば4種類)のパターン領域10をその長手中心軸が互いに平行となるように並べて設けたもので、各パターン領域10を間にしてその側方の各長手中心軸の略軸線上に、上記マスクパターンを識別するための複数種の一対の識別マーク11を形成して本発明のフォトマスク8となるものである。そして、上記複数種のパターン領域10の並び方向がX方向と合致するように上記マスクステージ2に保持される。
【0022】
上記複数種の識別マーク11の具体例は、図4(a)に示すように、メインマーク12と該メインマーク12を取り囲む円周上の異なる位置に形成されたサブマーク13とから成っている。又は、同図(b)に示すように、互いに形状が異なるものであってもよい。同図(a)の場合、サブマーク13は、各マスクパターンのID等のパターン情報を記録した、例えば同図(c)に示すような1次元バーコードや、同図(d)に示すようなマスクパターンIDとその他の情報を記録した2次元バーコード(QRコード)であってもよい。サブマーク13が上記バーコードの場合には、サブマーク13は、メインマーク12を取り囲む円周上のいずれかの位置に形成されていればよい。なお、上記メインマーク12は、フォトマスク8を予め定められた所定位置に位置付けるためのアライメントマークの機能をも果たし、同図(b)に示すように形状が異なっていてもよい。また、マスクパターンIDは、マスク内のパターン位置情報、例えば“1” “2” “3” “4”のようなパターン情報だけでなく、露光対象となる基板に対するID情報であってもよい。
【0023】
上記マスクステージ2の上方には、露光光学系3が設けられている。この露光光学系3は、マスクステージ2上に保持された各フォトマスク8の複数種のパターン領域10から選択された一つのパターン領域10に光源光を照射して該選択されたパターン領域10のマスクパターンを液晶表示用基板6上に転写するものであり、紫外線を含む光源光を放射する光源14と、光源光を上記フォトマスク8まで導くと共に、光源光の輝度分布を均一化し平行光にして上記フォトマスク8に照射させるカップリング光学系15と、光源光の光路を開閉するシャッタ16とを含んで構成されており、各フォトマスク8に対応して設けられた複数の単位露光光学系から成っている。
【0024】
上記マスクステージ2の下方にて、上記隣接するステージ7の隙間には、図2に示すように各フォトマスク8の一対の識別マーク11に対応してY方向に複数の検出手段4が設けられている。この複数の検出手段4は、各フォトマスク8の一対の識別マーク11を夫々検出するものであり、二次元カメラである。
【0025】
上記搬送手段1と、マスクステージ2と、光源14と、シャッタ16と、検出手段4とに電気的に接続して制御手段5が設けられている。この制御手段5は、マスクステージ2の移動を制御して複数種のパターン領域10から一つのパターン領域10を選択させるものであり、予め設定して保存されている露光情報から読み出したマスクパターン情報(例えば、パターン番号)と、上記各識別マーク11に対応して予め保存されているマスクパターン情報(例えば、パターン番号)のうち、上記検出手段4により検出された識別マーク11に対応したマスクパターン情報とを比較し、選択されたパターン領域10の正否を判定するようになっている。そして、図5に示すように、搬送手段駆動コントローラ17と、マスクステージ駆動コントローラ18と、光源駆動コントローラ19と、シャッタ駆動コントローラ20と、画像処理部21と、演算部22と、メモリ23と、データ入力部24と、制御部25とを備えて構成されている。
【0026】
ここで、搬送手段駆動コントローラ17は、搬送手段1の移動機構を制御して液晶表示用基板6を矢印A方向に予め定められた速度で移動させるものである。また、マスクステージ駆動コントローラ18は、ステージ移動機構の駆動を制御してフォトマスク8をX方向に所定量だけ移動させてフォトマスク8の複数種のパターン領域10から選択された一つのパターン領域10を露光光学系3の照射領域IA(図2参照)内に位置付けると共に、マスクステージ2に設けられた図示省略のアライメント機構の駆動を制御してフォトマスク8をX及びY方向並びに回転(θ)方向に微動させて液晶表示用基板6に対して位置合わせさせるものである。さらに、光源駆動コントローラ19は、光源14の点灯及び消灯を制御するものである。さらにまた、シャッタ駆動コントローラ20は、シャッタ16の開閉を制御するものである。そして、画像処理部21は、各検出手段4により取得された識別マーク11の画像を入力して画像処理し、識別マーク11に対応するマスクパターン情報を読み取ると共に検出手段4の視野内における識別マーク11の中心位置座標を検出するものである。また、演算部22は、画像処理部21で検出された識別マーク11の中心位置座標と、予め登録されたアライメントマークの中心位置座標とのずれ量を演算するものである。さらに、メモリ23は、上記演算部22における演算結果を一時的に保存すると共に後述のデータ入力部24により入力されたデータを保存するものであり、露光レシピを記録した記録媒体を含むものである。さらにまた、データ入力部24は、フォトマスク8の複数種のマスクパターン(パターン領域10)から一つのマスクパターン(パターン領域10)を選択するための選択情報、例えばパターン領域10のX方向の位置情報を入力するためのものであり、例えばキーボードやテンキー等である。そして、制御部25は、上記各構成要素が適切に駆動するように全体を統合して制御するものである。
【0027】
次に、このように構成された露光装置の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。ここでは、図4(a)に示すように、複数種の識別マーク11がメインマーク12と該メインマーク12を取り囲む円周上の異なる位置に形成されたサブマーク13とから成る場合について説明する。
先ず、ステップS1においては、第1及び第2のマスクステージ2A,2Bに夫々フォトマスク8をセットする。
【0028】
次に、ステップS2においては、露光レシピを制御手段5のメモリ23、例えばHDD等の記録媒体に記録すると共に、マスクステージ2にセットされたフォトマスク8の複数種のパターン領域10から選択されるパターン領域10の選択情報、例えばX方向の位置情報を、データ入力部24を操作して入力しメモリ23に保存する。
【0029】
メモリ23に保存する上記マスクパターンの選択情報は、具体的には、例えば図3に示す4種類のパターン領域10a,10b,10c,10dから二番目のパターン領域10bを選択して該パターン領域10bのマスクパターンを液晶表示用基板6に転写して露光しようとする場合には、上記各パターン領域10のX方向の位置情報xa,xb,xc,xdのうち、パターン領域10bの位置情報xbである。
【0030】
なお、上記露光レシピには、液晶表示用基板6のサイズやセルサイズ等のパネル情報、露光中の被露光体の搬送速度や露光開始位置情報及び露光終了位置情報や露光エネルギー等の露光情報、及びフォトマスク8の識別マーク11のIDやその中心位置座標及び使用するマスクパターンのパターン番号(例えば、“1”,“2”,“3”,“4”)等のマスク情報等を含むものである。ここでは、使用するマスクパターンのパターン番号として、パターン番号“2”が露光レシピに登録されているものとする。
【0031】
ステップS3において、液晶表示用基板6を搬送手段1のステージ7上に位置決めして載置した後、図示省略の露光開始スイッチを押下すると、上記マスクパターンの選択情報に相当し、メモリ23に保存されているパターン領域10bの位置情報xbに基づいてステージ移動機構がマスクステージ駆動コントローラ18により制御されて起動し、マスクステージ2をX方向に距離xbだけ移動してパターン領域10bを露光光学系3の照射領域IA内に位置付ける。
【0032】
ステップS4においては、複数の検出手段4により夫々取得された上記各フォトマスク8の一対の識別マーク11を画像処理部21で画像処理して各識別マーク11のメインマーク12及びサブマーク13の中心位置座標を検出する。そして、演算部22において、該各メインマーク12の中心位置座標と露光レシピの一内容として予め登録されたアライメントマークの中心位置座標との間のずれ量を各フォトマスク8について演算し、マスクステージ駆動コントローラ18により該ずれ量を補正するようにマスクステージ2のアライメント機構をX,Y,θ方向に微動させて各フォトマスク8を夫々予め定められた所定位置に位置付ける。
【0033】
ステップS5においては、検出手段4により読み取った識別マーク11を画像処理部21で画像処理し、得られた識別マーク11のメインマーク12の中心位置座標(x,y)及びサブマーク13の中心位置座標(x,y)に基づいて選択されたマスクパターンのパターン番号を検出する。
【0034】
具体的には、メインマーク12の中心位置座標(x,y)とサブマーク13の中心位置座標(x,y)とを比較し、x<x及びy>yの場合には、パターン領域10aに対応する識別マーク11aであると判断される。また、x<x及びy<yの場合には、パターン領域10bに対応する識別マーク11bであると判断される。さらに、x>x及びy<yの場合には、パターン領域10cに対応する識別マーク11cであると判断される。そして、x>x及びy>yの場合には、パターン領域10dに対応する識別マーク11dであると判断される。ここでは、選択されたパターン領域10は、パターン領域10bであるため、メインマーク12の中心位置座標(x,y)とサブマーク13の中心位置座標(x,y)との関係は、x<x及びy<yとなるため、検出手段4により検出された識別マーク11は識別マーク11bとなり、選択されたマスクパターンのパターン番号は“2”となる。
【0035】
ステップS6においては、検出手段4で検出した識別マーク11に対応するマスクパターンのパターン番号と露光レシピに予め登録されたマスクパターンのパターン番号(例えば“2”)とを比較し、両者が一致するか否かを判定する。この場合、ステップS5により、選択されたマスクパターンのパターン番号は“2”であり、これは、露光レシピに予め登録された使用するマスクパターンのパターン番号“2”と一致するためステップS6は、“YES”判定となってステップS7に進んでアライメント処理を終了し、露光動作に移行する。
【0036】
一方、作業者が入力手段の操作をミスして、パターン領域10bの位置情報xbを入力すべきところを間違って位置情報xaを入力した場合には、該位置情報xaに基づいてパターン領域10aが選択される。したがって、検出手段4によって読み取られる識別マーク11のメインマーク12の中心位置座標(x,y)とサブマーク13の中心位置座標(x,y)との関係は、x<x及びy>yとなり、ステップS5においては、検出手段4で取得した識別マーク11が識別マーク11aであると判断される。これにより、画像処理部21で検出されるパターン番号は、識別マーク11aに対応するパターン番号“1”となる。それ故、検出手段4で取得した識別マーク11aに対応するパターン番号“1”と露光レシピに予め登録されたパターン番号“2”とは一致せず、この場合、ステップS6は“NO”判定となってステップS8に進み、警報又は警告灯を点灯させてエラーを報知し、露光動作への移行を中止する。
【0037】
次に、図4(d)に示すように、サブマーク13がメインマーク12を取り囲む円周上の位置に形成された二次元バーコードである場合について、図7を参照して説明する。
先ず、ステップS11においては、第1及び第2のマスクステージ2A,2Bに夫々フォトマスク8をセットする。
【0038】
次に、ステップS12においては、露光レシピを制御手段5のメモリ23、例えばHDD等の記録媒体に記録すると共に、マスクステージ2にセットされたフォトマスク8の複数種のパターン領域10a〜10dから選択される例えばパターン領域10bの選択情報、例えばX方向の位置情報xbを、データ入力部24を操作して入力しメモリ23に保存する。
【0039】
ステップS13において、液晶表示用基板6を搬送手段1のステージ7上に位置決めして載置した後、図示省略の露光開始スイッチを押下すると、上記マスクパターンの選択情報に相当し、メモリ23に保存されているパターン領域10bの位置情報xbに基づいてステージ移動機構がマスクステージ駆動コントローラ18により制御されて起動し、マスクステージ2をX方向に距離xbだけ移動してパターン領域10bを露光光学系3の照射領域IA内に位置付ける。
【0040】
ステップS14においては、複数の検出手段4により夫々取得した上記各フォトマスク8の一対の識別マーク11bを画像処理部21で画像処理して各識別マーク11bのメインマーク12の中心位置座標を検出する。そして、演算部22において、該各メインマーク12の中心位置座標と露光レシピの一内容として予め登録されたアライメントマークの中心位置座標との間のずれ量を各フォトマスク8について演算し、マスクステージ駆動コントローラ18により該ずれ量を補正するようにマスクステージ2のアライメント機構をX,Y,θ方向に微動させて各フォトマスク8を夫々予め定められた所定位置に位置付ける。
【0041】
ステップS15においては、画像処理部21で画像処理して得られた識別マーク11bのサブマーク13の画像データに基づいて、二次元バーコードに記録された情報のうちから選択されたマスクパターンのパターン番号“2”を検出する。
【0042】
ステップS16においては、ステップS15で検出されたマスクパターンのパターン番号“2”と露光レシピに予め登録された使用するマスクパターンのパターン番号“2”とを比較する。この場合、両パターン番号は共に“2”で一致するためステップS16は、“YES”判定となってステップS17に進んでアライメント処理を終了し、露光動作に移行する。
【0043】
一方、作業者が入力手段の操作をミスして、パターン領域10bの位置情報xbを入力すべきところを間違って位置情報xaを入力した場合には、該位置情報xaに基づいてパターン領域10aが選択される。したがって、検出手段4によって読み取られる識別マーク11はパターン領域10aに対応した識別マーク11aであり、該識別マーク11aのサブマーク13に基づいて画像処理部21で検出されるパターン番号は、“1”となる。したがって、検出手段4で読み取った識別マーク11aに対応するパターン番号“1”と露光レシピに予め登録されたパターン番号“2”とは一致せず、この場合、ステップS16は“NO”判定となってステップS18に進み、警報又は警告灯を点灯させてエラーを報知し、露光動作への移行を中止する。
【0044】
続いて、フォトマスク8に形成された複数の識別マーク11の形状が図4(b)に示すように異なる場合について、図8のフローチャートを参照して説明する。
先ず、ステップS21においては、第1及び第2のマスクステージ2A,2Bに夫々フォトマスク8をセットする。
【0045】
次に、ステップS22においては、露光レシピを制御手段5のメモリ23、例えばHDD等の記録媒体に記録すると共に、マスクステージ2にセットされたフォトマスク8の複数種のパターン領域10から選択されるパターン領域10の選択情報、例えばパターン領域10bのX方向の位置情報xbを、データ入力部24を操作して入力しメモリ23に保存する。
【0046】
ステップS23において、液晶表示用基板6を搬送手段1のステージ7上に位置決めして載置した後、図示省略の露光開始スイッチを押下すると、上記マスクパターンの選択情報に相当し、メモリ23に保存されているパターン領域10bの位置情報xbに基づいてステージ移動機構がマスクステージ駆動コントローラ18により制御されて起動し、マスクステージ2をX方向に距離xbだけ移動してパターン領域10bを露光光学系3の照射領域IA内に位置付ける。
【0047】
ステップS24においては、複数の検出手段4により夫々読み取った上記各フォトマスク8の一対の識別マーク11bを画像処理部21で画像処理して各識別マーク11bの中心位置座標を検出する。そして、演算部22において、該各識別マーク11の中心位置座標と露光レシピの一内容として予め登録されたアライメントマークの中心位置座標との間のずれ量を各フォトマスク8について演算し、マスクステージ駆動コントローラ18により該ずれ量を補正するようにマスクステージ2のアライメント機構をX,Y,θ方向に微動させて各フォトマスク8を夫々予め定められた所定位置に位置付ける。
【0048】
ステップS25においては、検出手段4により読み取った識別マーク11bを画像処理部21で画像処理し、得られた画像データに基づいて選択されたマスクパターンのパターン番号“2”を検出する。
【0049】
ステップS26においては、検出手段4で読み取った識別マーク11bに対応するマスクパターンのパターン番号“2”と、露光レシピに予め登録された使用するマスクパターンのパターン番号“2”とを比較する。この場合、両パターン番号は共に“2”で一致するためステップS26は、“YES”判定となってステップS27に進んでアライメント処理を終了し、露光動作に移行する。
【0050】
一方、作業者が入力手段の操作をミスして、パターン領域10bの位置情報xbを入力すべきところを間違って位置情報xaを入力した場合には、該位置情報xaに基づいてパターン領域10aが選択される。したがって、検出手段4によって読み取られる識別マーク11はパターン領域10aに対応した識別マーク11aであり、画像処理部21で検出されるパターン番号は、“1”となる。したがって、検出手段4で読み取った識別マーク11aに対応するパターン番号“1”と露光レシピに予め登録されたパターン番号“2”とは一致せず、この場合、ステップS26は“NO”判定となってステップS28に進み、警報又は警告灯を点灯させてエラーを報知し、露光動作への移行を中止する。
【0051】
また、図9に示すように、一枚の液晶表示用基板6上に予め設定された第1〜第4の露光領域26a〜26dに異なるパターンを露光する場合には、使用するマスクパターンのパターン番号を選択順に例えば“1”,“2”,“3”,“4”と言うように露光レシピに予め登録しておくと共に、マスクステージ2にセットされたフォトマスク8の複数種のパターン領域10a〜10dから選択されるパターン領域10の選択情報、例えばX方向の位置情報を、例えば選択順にxa,xb,xc,xdと言うようにデータ入力部24を操作して入力しメモリ23に保存する。
【0052】
この場合、先ず、フォトマスク8のパターン領域10aが選択されて露光光学系3の照射領域IA内に位置付けられる。その後、前述の図6〜8のいずれかの手順に従ってアライメント処理が実行され、露光レシピに予め登録されたパターン番号と、検出手段4により取得された識別マーク11に対応したマスクパターンのパターン番号とが比較され、上記選択されたパターン領域10の正否が判定される。そして、最初に選択されたパターン領域10aが正しいと判定されると、露光が開始される。
【0053】
ここで、露光は、露光レシピに登録された露光情報に基づいて行われる。例えば、液晶表示用基板6が最初の露光開始位置Pに到達するまでは、液晶表示用基板6が高速度で搬送される。そして、液晶表示用基板6が最初の露光開始位置Pに到達し、第1の露光領域26aの先頭領域が露光光学系3の露光位置に達すると、基板の搬送速度は露光のために適切に設定された速度に変わる。同時に、シャッタ16が開かれ光源光がフォトマスク8の最初に選択されたパターン領域10aに照射し、該パターン領域10aのマスクパターンが液晶表示用基板6の第1の露光領域26aに転写される。こうして、液晶表示用基板6を一定速度で搬送しながら第1の露光領域26aに対する露光が実行される。
【0054】
そして、液晶表示用基板6が最初の露光終了位置P2に到達し、第1の露光領域26aの後尾領域が露光光学系3の露光位置に達すると、シャッタ16が閉じるのと同時に基板の搬送速度は露光レシピに従って減速する。そして、液晶表示用基板6が2番目の露光開始位置P3に到達までの間に、フォトマスク8がX方向に移動されて2番目のパターン領域10bが選択され、前述の図6〜8のいずれかの手順に従ってアライメント処理が実行され、上記2番目に選択されたパターン領域10bの正否が判定される。そして、2番目に選択されたパターン領域10bが正しいと判定されると、シャッタ16が開かれ、第2の露光領域26bに対する露光が開始される。なお、液晶表示用基板6が搬送されているときには、識別マーク11は、液晶表示用基板6を透かして検出手段4により検出されることになる。
【0055】
次に、基板の搬送速度は、露光用の速度に戻り、液晶表示用基板6を一定速度で搬送しながら第2の露光領域26bに対する露光が実行される。そして、液晶表示用基板6が2番目の露光終了位置P4に到達し、第2の露光領域26bの後尾領域が露光光学系3の露光位置に達すると、シャッタ16が閉じるのと同時に基板の搬送速度は露光レシピに従って減速する。
【0056】
以後、前述と同様にして、フォトマスク8のパターン領域10を3番目及び4番目のパターン領域10c,10dの各マスクパターンを液晶表示用基板6の第3及び第4の露光領域26c,26dに転写して露光が実行される。そして、液晶表示用基板6が最後の露光終了位置P8に達すると、シャッタ16を閉じると同時に、基板の搬送速度を高速にして液晶表示用基板6を搬出する。
【0057】
フォトマスク8のパターン領域10の選択がランダムである場合には、液晶表示用基板6は、各露光領域の切り替え部分で一旦停止させてもよい。
【0058】
上記露光動作中は、露光光学系3による露光位置に対して矢印A方向と反対側に一定距離はなれて設けられ、ステージ7の上面に平行な面内にてY方向に一列に並べて複数の受光素子を備えたラインCCDにより移動中の液晶表示用基板6上のセルを撮像し、該セルのX方向に平行な縁部の位置を検出し、該縁部の位置とラインCCDに予め定められた基準位置との間の距離が一定となるように液晶表示用基板6とラインCCD及びマスクステージ2とを相対的にY方向に微動してアライメントが常時実行される。これにより、Y方向に振れながら搬送されている液晶表示用基板6にフォトマスク8を追従させることができ、露光位置精度を向上することができる。
【0059】
なお、上記実施形態においては、液晶表示用基板6を一方向に一定速度で移動しながら露光する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、液晶表示用基板6又は露光光学系3のいずれか一方をステップ移動させて露光するものであってもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、被露光体が液晶表示用基板6である場合について説明したが、本発明はこれに限られず、被露光体は、プラズマディスプレイ表示用基板や、有機EL表示用基板等、如何なる基板であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
2…マスクステージ
3…露光光学系
4…検出手段
5…制御手段
6…液晶表示用基板(被露光体)
8…フォトマスク
9…マスク基板
10,10a〜10d…パターン領域
11,11a〜11d…識別マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一のマスク基板上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域を並べて設けたフォトマスクであって、
前記各パターン領域の外側に、前記マスクパターンを識別するための複数種の識別マークを形成したことを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
前記複数種の識別マークは、互いに形状が異なるものであることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク。
【請求項3】
前記複数種の識別マークは、メインマークと該メインマークを取り囲む円周上の異なる位置に形成されたサブマークとから成ることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク。
【請求項4】
前記サブマークは、前記マスクパターンのパターン情報を記録したバーコードであることを特徴とする請求項3記載のフォトマスク。
【請求項5】
被露光体に対向して設けられ、マスクパターンが異なる複数種のパターン領域を並べて設け、前記各パターン領域の外側に前記マスクパターンを識別するための複数種の識別マークを形成したフォトマスクを保持して移動可能なマスクステージと、
前記フォトマスクの複数種のパターン領域のうち、選択された一つのパターン領域に光源光を照射して該選択されたパターン領域のマスクパターンを前記被露光体上に転写する露光光学系と、
前記フォトマスクの識別マークを検出する検出手段と、
前記マスクステージの移動を制御して前記複数種のパターン領域から一つのパターン領域を選択させる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、予め設定して保存されている露光情報から読み出したマスクパターン情報と、前記各識別マークに対応して予め保存されているマスクパターン情報のうち、前記検出手段により検出された前記識別マークに対応したマスクパターン情報とを比較し、前記選択されたパターン領域の正否を判定することを特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−242575(P2012−242575A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112068(P2011−112068)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】