説明

フォトマスク

【課題】
基板での露光ムラの発生を抑制することができるフォトマスクを提供する。
【解決手段】
露光光源3からの露光光を遮る遮光部11と前記露光光を透過させる透光部12とを備え、一定方向Aに搬送中の露光対象物2の露光に使用されるフォトマスク1であって、
前記透光部12を介して露光される露光対象部分21の、前記露光対象物2の搬送方向Aと垂直な方向Bの全幅Wに渡って露光量Eが等しくなるように、前記透光部12の各部の前記搬送方向Aの長さlが決定されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定方向に搬送中の露光対象物の露光に使用されるフォトマスクに関し、詳しくは、露光光を透過させる透光部の搬送方向の長さを基板の露光量が等しくなるように決定することにより、前記基板での露光ムラの発生を抑制することができるフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、露光対象物の露光には所定の透光部を有するフォトマスクが使用されていた(例えば特許文献1参照)。そして、このフォトマスクを使用して露光対象物の露光を行う際に、複数の露光光源を使用することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−102555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数の露光光源を使用して露光を行う場合、隣り合う露光光源からの露光光が重複した領域とそれ以外の領域との間で照度が異なり、基板に露光ムラが発生するおそれがあった。
【0005】
そこで、このような問題点に対処し、本発明が解決しようとする課題は、基板での露光ムラの発生を抑制することができるフォトマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明によるフォトマスクは、露光光源からの露光光を遮る遮光部と前記露光光を透過させる透光部とを備え、一定方向に搬送中の露光対象物の露光に使用されるフォトマスクであって、前記透光部を介して露光される露光対象部分の、前記露光対象物の搬送方向と垂直な方向の全幅に渡って露光量が等しくなるように、前記透光部の各部の前記搬送方向の長さが決定されたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるフォトマスクによれば、透光部を介して露光される露光対象物の露光対象部分の搬送方向と垂直な方向の全幅に渡って露光量が等しくなるように、透光部の各部の搬送方向の長さが決定されるため、露光光源からの露光光の照度にムラがある場合であっても、基板の露光量を前記全幅に渡って等しくすることができる。したがって、基板での露光ムラの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明によるフォトマスクの実施形態を示す説明図であり、(a)は露光光源、(b)はフォトマスクの実施形態、(c)は基板、(d)は基板上での露光光の照度、(e)は基板の露光量を示す。
【図2】前記フォトマスクの第2実施形態と照度との関係を示す説明図であり、(a)はフォトマスク、(b)は基板上での露光光の照度を示す。
【図3】前記フォトマスクの第3実施形態と照度との関係を示す説明図であり、(a)はフォトマスク、(b)は基板上での露光光の照度を示す。
【図4】前記フォトマスクの第4実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるフォトマスク1の実施形態を示す説明図である。露光光源3は、後述する基板2の搬送方向(以下単に「搬送方向」という。)Aと垂直な方向(以下単に「垂直方向」という。)Bに並べられた3つの光源3a,3b,3cからなり、図1(a)に示すように、隣り合う光源から照射された露光光の照射領域の少なくとも一部が重複するように配置されている。
【0010】
この露光光源3により露光される基板2は、フォトマスク1を介して露光される露光対象物であり、ガラスやシリコン等からなる。基板2は、半導体素子、ディスプレイパネル、プリント基板等として使用される。この基板2の表面には、露光によりパターニングが行われる露光対象部分21が形成されている。露光対象部分21には、ポジ型のフォトレジストやネガ型のフォトレジストが塗布されている。なお、露光対象物は、フィルムであってもよい。
【0011】
この基板2は、一定の搬送方向Aに搬送されながら露光対象部分21を露光される。基板2の露光中の搬送速度V(m/s)は一定である。露光対象部分21上の各部における露光量E(J/m)は、前記各部での露光光の照度I(W/m)に露光光の照射時間T(s)を積算して求められる(E=I×T)。
【0012】
露光光源3と基板2との間には、フォトマスク1が配置されている。フォトマスク1は、ガラスや石英等からなり、図1(b)に示すように、垂直方向Bに長い長方形に形成されている。なお、フォトマスク1の形状は長方形に限られず任意の形状から選択される。このフォトマスク1は、露光光源3からの露光光を遮る遮光部11と、露光光を透過させる透光部12とを備える。遮光部11には、クロム等の金属が塗布されている。
【0013】
透光部12は、垂直方向Bに平行な長辺13と搬送方向Aに平行な短辺14とからなる略長方形に形成されている。この透光部12は、前記露光対象部分21の垂直方向Bの全幅W(m)に渡って形成されている。すなわち、透光部12の長辺13の長さL(m)は、露光対象部分21の垂直方向Bの全幅W以上の長さとなる。なお、長辺13の長さL及び短辺14の長さL(m)は、用途に応じて適宜決定される。
【0014】
透光部12の各部の搬送方向Aの長さl(m)は、透光部12を介して露光される露光対象部分21の垂直方向Bの全幅Wに渡って露光量Eが等しくなるように決定される。
【0015】
上記の通り、基板2の露光量Eは照度I×照射時間Tで求められる。そして、露光対象部分21上の各部における照射時間Tは、前記長さlを搬送速度Vで除算して求められる(T=l/V)。したがって、露光対象部分21上の各部での露光量Eは、露光量E=照度I×長さl/搬送速度Vにより求められる。すなわち、露光量Eは長さlに比例する。露光量Eは、長さlを長くすると増加し、短くすると減少する。
【0016】
ここで、搬送速度Vは一定であるから、長さlは、露光対象部分21の各部における照度Eに応じて決定される。基板2を露光光源3により露光した場合、図1(d)に示すように、複数の露光光源3a,3b,3cから照射された複数の露光光が重複した領域(以下「重複領域」という。)Xと、露光光が重複しない領域(以下「非重複領域」という。)Yとでは、照度Iが異なった値となる。照度Iと照度Eとの大小関係は、露光光の重複の度合いによって変化する。
【0017】
例えば、前記非重複領域Y内の露光光により露光される露光対象部分21上の点Pと、前記重複領域X内の露光光により露光される露光対象部分21上の点Pと、について比較すると、点Pは照度Iの露光光を照射され、点Pは照度Iの露光光を照射される。
【0018】
点Pに照射される露光光が透過する透光部12上の部分の長さlは透光部12の短辺14と等しい。したがって、点Pにおける露光量Eは、露光量E=照度I×長さl(短辺L)/搬送速度Vにより求められる。
【0019】
これに対して、点Pにおける露光量Eは、露光量E=照度I×長さl/搬送速度Vにより求められる。ここで、長さlは、露光量E=露光量Eとなるように決定されるから、長さl=短辺L×照度I/照度Iに決定される。
【0020】
本実施例においては、図1(d)に示すように、照度I>照度Iであるから、長さlは、短辺Lよりも長い。透光部12の形状は、例えば、図1(b)に示すような、長方形の長辺の一部が突出した形状とされる。この形状は、長さlが前記条件を満たしていればどのような形状であってもよい。
【0021】
以上のように、透光部12の各部の搬送方向Aの長さlが決定されるため、図1(e)に示すように、基板2の露光対象部分21上の各部で露光量Eが等しくなる。したがって、露光光源3からの露光光の照度Iにムラがあった場合であっても、基板2での露光ムラの発生を抑制することができる。
【0022】
また、図2(b)に示すように、重複領域Xにおける照度Iが非重複領域Yにおける照度Iより大きい場合には、図2(a)に示すように、長さlは長さlより短くなる。
【0023】
さらに、図3(b)に示すように、重複領域Xにおける照度Iが前記照度Iより大きく、重複領域Xにおける照度Iが前記照度Iより小さい場合には、長さlは長さlより短く、長さlは長さlより長くなる。
【0024】
またさらに、透光部12は、図4に示すように、一部が分離して形成されてもよい。この場合、各部の長さlとは、分離して形成された2つの透光部12の各部の長さM(m)及びm(m)の和を意味する(l=M+m)。
【0025】
なお、以上説明したとおり、長さlの決定は、露光対象部分21の各部の照度Iに応じて決定されるが、露光対象部分21の各部を露光する露光光が透過する透光部12の各部における露光光の照度に応じて決定することとしてもよい。
【0026】
また、フォトマスク1には、用途に応じてアライメントマークや露光光を部分的に透過する半透光部分を設けてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…フォトマスク
11…遮光部
12…透光部
13…長辺
14…短辺
2…基板
21…露光対象部分
3…露光光源
A…搬送方向
B…垂直方向
…長辺の長さ
…短辺の長さ
l…透光部の各部の長さ
W…露光対象部分の全幅
V…搬送速度
I…照度
E…露光量
,P…点
X…重複領域
Y…非重複領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光源からの露光光を遮る遮光部と前記露光光を透過させる透光部とを備え、一定方向に搬送中の露光対象物の露光に使用されるフォトマスクであって、
前記透光部を介して露光される露光対象部分の、前記露光対象物の搬送方向と垂直な方向の全幅に渡って露光量が等しくなるように、前記透光部の各部の前記搬送方向の長さが決定されたことを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
前記透光部の各部の前記搬送方向の長さは、前記各部における露光光源からの露光光の照度に応じて決定されることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項3】
前記透光部の各部の前記搬送方向の長さを長くすることにより前記露光量を増加させ、短くすることにより前記露光量を減少させることを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトマスク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−73073(P2013−73073A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212704(P2011−212704)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】