説明

フォトリソグラフィマスクの誤差を補正する方法及び装置

【課題】フォトリソグラフィマスクの誤差を補正する分野に関する技術を提供する。
【解決手段】本発明は、フォトリソグラフィマスクの複数の誤差を補正する方法に関連し、本方法は、フォトリソグラフィマスクの結像変換の第1のパラメータと、フォトリソグラフィマスク上に局所的に向けられるレーザビームの第2のパラメータとを最適化する段階と、最適化された第1のパラメータを用いて結像変換を適用し、かつ最適化された第2のパラメータを用いてレーザビームをフォトリソグラフィマスク上に局所的に向けることによって複数の誤差を補正する段階とを含み、第1及び第2のパラメータは、共同の最適化工程において同時に最適化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィマスクの誤差を補正する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業において絶えず高まる集積密度の結果として、フォトリソグラフィマスクは、益々小さくなる構造を感光層、すなわち、ウェーハ上のフォトレジスト上に投影する必要がある。この要求を満たすために、フォトリソグラフィマスクの露光波長は、電磁スペクトルの近紫外領域から中紫外領域を超えて遠紫外領域に移行された。現時点では、ウェーハ上のフォトレジストの露光において一般的に193nmの波長が使用されている。その結果、高まる解像度を有するフォトリソグラフィマスクの製造は、より一層複雑になってきており、従って、高価にもなってきている。今後、フォトリソグラフィマスクは、電磁スペクトルの極紫外(EUV)波長範囲の有意により短い波長を使用することになる(約13.5nm)。
【0003】
フォトリソグラフィマスクは、透過均一性、平面性、純度、及び温度安定性に関する最も高い要求を満たさなければならない。今後のEUVフォトリソグラフィマスクでは、基板面上の多層構造から反射される電磁波の位相面を大きく乱さないように、これらのマスクの基板の平面性からの許容可能な偏位は、露光波長の僅か数分の1である。フォトリソグラフィマスクの基板の平面性のより大きい偏位は、フォトレジスト内での波面の破壊的加算の構成に起因して、フォトレジスト内に光学強度分布の変動を招く場合がある。ウェーハの更に別の処理においては、光学強度の変動は、製作欠陥を有する半導体素子をもたらす場合がある。より短くなる露光波長は、この問題をより困難にする。製造業者から供給される基板は、EUVフォトリソグラフィマスクにおける平面性条件を満たさない場合さえもあり、1つの面上に微細なパターンを形成するマスクの製造工程は、基板の平面性を劣化させる場合さえもある。
【0004】
透過フォトリソグラフィマスクに対しては、マスク区域にわたる光透過率の均一性が重要なパラメータである。フォトリソグラフィマスクの区域にわたる光透過率の変動は、ウェーハ上のフォトレジストに印加される局所光照射量の対応する変動を招く。局所印加照射量の変動は、現像されたフォトレジストにおいてパターン要素の構造寸法のばらつき又は変動をもたらす。フォトリソグラフィマスクの区域にわたる構造要素の均一性を限界寸法均一性(CDU)と呼ぶ。
【0005】
更に、フォトリソグラフィマスクの基板の曲率もマスクの結像誤差を招く。US 2007/02245222 A1は、製造されたフォトリソグラフィマスクの平面性を改善する方法を説明している。基板の曲率を調節するか又は基板の不均等性を平滑化するために、この文献は、基板の所定の領域内に変形又は膨張部分を形成することを提案しており、この場合、基板は、膨張領域を形成する前に湾曲領域を含む。膨張部分は、基板の結合状態を局所的に修正するフェムト秒レーザパルスをこの領域に集束させることによって生成される。
【0006】
US 7 001 697 B2は、フォトリソグラフィマスクによってウェーハ上のフォトレジスト内に導入された強度差又は光透過誤差を排除する別の方法を提供している。マスクの単一の照明中に誘起されたフォトレジスト内の光学強度の局所差を補償するために、パターン要素を保持する面と対向する基板面である後側基板面上に回折パターンがエッチングされる。
【0007】
文献US 7 241 539 B2及びUS 2007/0065729 A1は、フォトリソグラフィマスクによって又はマスクの照明に使用される光学要素によって導入された光透過誤差又は結像誤差を補正する更に別の方法を開示している。ほぼ均一な強度のパターン形成放射線がマスク基板を通じて透過されるように、ここでもまた、フェムト秒レーザパルスを用いてマスクの基板内に遮光要素のアレイを生成することにより、パターン要素を通じた回折誤差がオフセットされる。遮光要素の間隔、サイズ、及び/又は配置は、試行錯誤を用いて経験的に判断され、及び/又はシミュレーションを用いて判断することができる。
【0008】
通常フォトリソグラフィマスクの基板材料を形成する石英又は溶融シリカに対するフェムト秒レーザパルスの作用は、例えば、S.Oshemkov、V.Dmitriev、E.Zait、及びG.Gen−Zvi著「溶融シリカ誘導超短レーザ放射線におけるDUV減衰構造(DUV attenuation structures in fused silica induced ultrashort laser radiation)」、CELEOE−IQEC会報、ミュンヘン2007年によって研究されている。ここで引用によって全体を本明細書に組み込む本出願人の係属中の米国特許仮出願US 61/324 467及びUS 61 351 056は、フォトリソグラフィマスクにおける限界寸法補正(CDC)の一部の態様を説明している。
【0009】
パターン要素での回折に起因して導入される誤差に加えて、フォトリソグラフィマスクを形成するパターン要素も欠陥を有する場合がある。US 7 459 242は、パターン要素を形成するクロム層内に空隙も有するフォトリソグラフィマスクを修復する方法を開示している。フォトリソグラフィマスクの基板内で空隙の前に回折光学要素又は遮蔽要素(DOE/SE)を導入することにより、DOE/SEの位置での基板の散乱特性が変更され、従って、フォトリソグラフィマスクの基板上のクロム層内の空隙が補正される。
【0010】
更に、フォトリソグラフィマスクは、パターン要素の配置誤差を有する場合もあり、すなわち、パターン要素のうちの一部は、パターンパラメータをフォトレジスト上の所定の位置に正確に結像しない。通常、フォトレジスト内でのパターン要素の配置誤差の影響は、像視野の焦点に対してフォトリソグラフィマスクの線形結像変換を実施することで低減される。フォトレジストと平行な平面内でのフォトリソグラフィマスクの小さいシフトにより、配置誤差の全体的な影響を低減することができる。像平面の焦点に関するマスクの回転もまた、フォトリソグラフィマスクの基板上のパターン要素の配置誤差の和を低減することができる。更に、パターン要素の配置誤差を補正するための更に別の可能性は、ウェーハ上のフォトレジスト内でのフォトリソグラフィマスクのパターン要素の結像のスケール補正を実施することである。線形結像変換の後にパターン要素の配置誤差が依然として過度に大きい場合には、マスクを廃棄すべきである。
【0011】
文献DE 10 2006 054 820 A1は、更に一段階先に進んでいる。この文献は、それぞれのパターン要素をシフトさせるために、マスクの基板の一部分に配置誤差に近い局所密度変動のアレイを導入することを提案している。フォトレジスト上でのフォトリソグラフィマスクの結像誤差を最小にするための方向へのパターン要素のこのシフトは、ここでもまた、マスクの全体的な配置誤差の和を低減し、従って、マスク製作工程の収量を高める。マスク基板内の局所密度変動は、フェムト秒レーザビームを用いて基板材料を局所的かつ一時的に溶解することによって生成される。この工程は、材料が一時的に溶解された範囲で基板密度を局所的に低減する。レーザビームによって局所的に変更されたドットをピクセルと呼ぶ。パターン要素に対して配置誤差の望ましい補正を実施するのに必要なピクセルの形状、密度、及び構成は、パターン要素が配置された複数のサンプルのそれぞれの照明を実行することによって実験的に判断される。この場合、実験結果は、ライブラリに格納される。
【0012】
DE 10 2006 054 820 A1は、フォトリソグラフィマスクの基板上のパターン要素の配置誤差が2段階工程で低減される方法を説明している。第1の段階では、線形結像変換が実施される。第2の段階では、残留配置誤差が、マスクの基板内に密度変動を選択的に導入することによって更に低減される。必要に応じてこのループを繰り返すことができる。しかし、この方式は、多くの場合に許容することができないある一定の量のフォトリソグラフィマスク誤差を依然として保持する。更に、フォトリソグラフィマスクの線形結像変換によって補正することができない配置誤差を補正することができる前に、各基板材料に対して、補正ツールの網羅的なライブラリを実験的に判断する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US 2007/02245222 A1
【特許文献2】US 7 001 697 B2
【特許文献3】US 7 241 539 B2
【特許文献4】US 2007/0065729 A1
【特許文献5】US 61/324 467
【特許文献6】US 61 351 056
【特許文献7】US 7 459 242
【特許文献8】DE 10 2006 054 820 A1
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】S.Oshemkov、V.Dmitriev、E.Zait、及びG.Gen−Zvi著「溶融シリカ誘導超短レーザ放射線におけるDUV減衰構造(DUV attenuation structures in fused silica induced ultrashort laser radiation)」、CELEOE−IQEC会報、ミュンヘン2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の1つの目的は、誤差補正の後に残留する誤差が最小であり、従って、製作されるフォトリソグラフィマスクの収量を高めるようなフォトリソグラフィマスクを補正する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様により、請求項1に記載の方法を提供する。実施形態では、フォトリソグラフィマスクの複数の誤差を補正する方法は、フォトリソグラフィマスクの結像変換の第1のパラメータと、フォトリソグラフィマスク上に局所的に向けられるレーザビームの第2のパラメータとを最適化する段階と、最適化された第1のパラメータを用いて結像変換を適用し、最適化された第2のパラメータを用いてレーザビームをフォトリソグラフィマスク上に局所的に向けることによって複数の誤差を補正する段階とを含み、第1及び第2のパラメータは、共同の最適化工程において同時に最適化される。
【0017】
結像パラメータとレーザビームパラメータの同時変更は、従来技術の段階的な最適化と比較して最適化工程の変動空間の寸法を拡大する。結像パラメータとレーザビームパラメータのための共同の最適化工程において拡大された解空間は、従来技術の最適化工程では取得不能なフォトリソグラフィマスクの全体的な誤差の低減をもたらす。従って、所定の誤差補正方法の適用は、マスク製作工程の収量を大きく高めることになる。
【0018】
更に別の態様により、本発明は、誤差データ、第1の結像変換パラメータ、及び第2のレーザビームパラメータを含む目的汎関数を設定する段階と、第1の結像変換パラメータと第2のレーザビームパラメータを同時に変化させることによって目的汎関数を最小にする段階とを含む。更に別の態様では、目的汎関数を設定するのにラグランジュの変分原理が使用される。更に別の態様では、目的汎関数は、第1及び第2のパラメータによってフォトリソグラフィマスク内に導入されるポテンシャルエネルギ分布を最小にする。更に別の態様では、結像変換は、線形結像変換を含む。
【0019】
本発明の更に別の重要な態様は、レーザビームパラメータと、これらのレーザビームパラメータを有するレーザビームによってフォトリソグラフィマスクの基板内に引き起こされる影響との間の一般的な関係を確立することである。そのような関係の確立は、特定の方式のマスク誤差の補正に必要なレーザビームパラメータの判断を可能にする。更に、レーザビームパラメータとフォトリソグラフィマスクの基板内に引き起こされる影響との間の関係は、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを1回だけ向けることにより、又はレーザビームによってピクセルを書き込む単一の工程において、異なる方式の誤差を同時に補正するようにマスクの基板上にレーザビームを局所的に向けるための最適化されたレーザビームパラメータを判断することを可能にする。
【0020】
別の態様では、線形結像変換は、フォトリソグラフィマスクシフトに関する2つのパラメータ、フォトリソグラフィマスクスケーリングに関する2つのパラメータ、及びフォトリソグラフィマスクの一般化された回転に関する2つのパラメータを含む。
【0021】
更に別の態様により、第2のレーザビームパラメータは、レーザビームのエネルギ、及び/又は開口数、及び/又は焦点サイズ、及び/又はビーム偏光、及び/又は非点収差、及び/又はパルス長、及び/又は繰返し数、及び/又はフォトリソグラフィマスクの1つの位置の上に向けられるパルス数、及び/又はレーザビームがフォトリソグラフィマスク上に向けられる2つの位置の間の距離を含む。
【0022】
別の態様では、レーザビームは、フォトリソグラフィマスクの密度及び/又は光透過率分布を局所的に修正する。一部の態様では、フォトリソグラフィマスクの局所的に修正される密度及び/又は光透過率分布は、フォトリソグラフィマスクの複数の小さい容積内で不連続に修正され、各小さい容積は、ピクセルと呼ばれる。代替の態様では、フォトリソグラフィマスクの局所的に修正される密度及び/又は光透過率分布は、フォトリソグラフィマスクにわたって連続的に修正される。
【0023】
これは、マスク基板内にピクセルを局所的に導入することによってフォトリソグラフィマスクの基板の密度を特定的に修正することができ、かつ異なるレーザビームパラメータセットを用いてマスクを連続的に修正することによって光透過率分布を別々に修正することができることを意味する。従って、位置合わせ誤差の補正と光透過率分布誤差の補正とを本質的に分離することができる。
【0024】
更に別の態様では、フォトリソグラフィマスクの密度及び/又は光透過率分布は、レーザビームによって引き起こされる歪み分布によって導入される応力分布によって修正され、応力分布と歪み分布は、フックの法則によって結びつけられる。
【0025】
更に別の態様では、フォトリソグラフィマスクにわたって延びる矩形格子のノードの変位は、第2のレーザビームパラメータの関数である。
【0026】
別の態様により、第2のレーザビームパラメータは、レーザビームによってフォトリソグラフィマスク内に導入される少なくとも1つの書込密度振幅と、レーザビームに対して垂直な法線方向の少なくとも1つの変形要素とを判断する。更に別の態様では、セルα内でのモードmの少なくとも1つの書込密度振幅:

と、セルα内でのモードmの少なくとも1つの法線方向lの少なくとも1つの変形要素:

とは、

よって与えられるノードiの変位ξiを導入し、この場合、テンソル:

は、複数の誤差を補正する前のポテンシャルエネルギ分布の逆テンソルであり、

は、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを向けた後のポテンシャルエネルギ分布を表すテンソル要素であり、両方のテンソルが、フォトリソグラフィマスクの材料パラメータを含み、Nklは、正規化テンソルである。
【0027】
上述の式は、レーザビームの第2のレーザビームパラメータをフォトリソグラフィマスクに対するこれらのパラメータの影響と結びつける。これは、本発明の方法は、レーザビームの光パルスがフォトリソグラフィマスクの基板材料内に引き起こす影響を判断するために、フォトリソグラフィマスクの材料パラメータと基本的な物理法則を使用することを意味する。
【0028】
別の態様では、レーザビームの書込密度振幅は、フォトリソグラフィマスクの損傷閾値よりも小さい。レーザビームパラメータは、一方ではレーザビームがフォトリソグラフィマスクの基板の密度及び/又は光透過率分布を修正するが、他方ではフォトリソグラフィマスクの基板を局所的に損傷しないように選択すべきである。
【0029】
更に別の態様により、フォトリソグラフィマスク上のある一定の位置における変位は、全ての格子ノードの変位の線形結合から判断される。
【0030】
更に別の態様では、誤差データは、複数の誤差の位置を示すデータを含む。別の態様により、誤差データは、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの測定値、及び/又はフォトリソグラフィマスクを用いて照明されるウェーハの少なくとも1つの測定値から判断され、及び/又はフォトリソグラフィマスクの基板の製造業者から供給される。別の態様では、結像変換から発する複数の誤差うちの一部分は、フォトリソグラフィマスクを用いて照明されるウェーハの少なくとも1つの測定値から判断される。
【0031】
別の態様により、フォトリソグラフィマスクは、フォトリソグラフィマスク上に配置された少なくとも1つの吸光材料の複数のパターン要素を含む。
【0032】
別の態様では、誤差データは、フォトリソグラフィマスクのパターン要素の判断された位置とパターン要素の所定の位置の間の差を含む。別の態様により、誤差データは、フォトリソグラフィマスクを用いて照明されるウェーハ上のパターン要素の判断された位置と、ウェーハ上のパターン要素の所定の位置の間の差を含む。代替の態様では、誤差データは、フォトリソグラフィマスクの判断された光透過率分布と、フォトリソグラフィマスクの所定の光透過率分布の間の差を含む。更に別の態様では、誤差データは、フォトリソグラフィマスクの判断された光透過率分布とフォトリソグラフィマスクの所定の光透過率分布との間の差、及びフォトリソグラフィマスク上又はフォトリソグラフィマスクを用いて照明されるウェーハ上のパターン要素の判断された位置とフォトリソグラフィマスク上又はフォトリソグラフィマスクを用いて照明されるウェーハ上のパターン要素の所定の位置との間の差を含む。
【0033】
更に別の態様では、誤差データは、フォトリソグラフィマスクを用いて照明されるウェーハ上のパターン要素の計算位置とウェーハ上のパターン要素の所定の位置の間の差を含む。別の態様により、第1の方式の複数の誤差を補正するためにフォトリソグラフィマスク上にレーザビームを局所的に向けることからパターン要素の計算位置が判断される。更に別の態様では、誤差データは、フォトリソグラフィマスクの計算光透過率分布とフォトリソグラフィマスクの所定の光透過率分布の間の差を含む。更に別の態様では、計算光透過率分布は、第2の方式の複数の誤差を補正するためにフォトリソグラフィマスク上にレーザビームを局所的に向けることから判断される。
【0034】
誤差を測定するのに加えて、例えば、位置合わせ誤差を補正する際にフォトリソグラフィマスクの基板内に新しく導入される誤差を計算することができる。計算誤差は、第2の書込工程においてフォトリソグラフィマスクの基板上にレーザビームを再度向けることによって補正することができる。
【0035】
更に別の態様では、目的汎関数は、ティホノフの正則化を用いて残留変位の二乗平均として最小にされる。
【0036】
別の態様により、セルα内でのモードmのm個の書込密度振幅:

と法線方向lの変形要素:

とを有する目的汎関数は、

の形式のものであり、この場合、φiは、フォトリソグラフィのパターン要素の判断された位置とパターン要素の所定の位置の間の差を含み、フォトリソグラフィマスクの任意の位置における変位ζiは、

によるノードξiにおける変位からの線形変換によって判断され、Mijは、ζi及びξiの間の変換行列であり、更に、ノードiにおける変位ξiと、書込密度振幅:

及びレーザビームによって導入される法線方向の変形要素:

との接続は、先行するページ上で定義されており、更に、第3の項は、線形結像変換を表し、ここで、ベクトルs={mx,my,sx,sy,rx,ry}は、線形結像係数を含み、テンソルTikは、線形結像係数skをノード平面の変位ξiに変換し、最後に、最後の2つの和は、ティホノフの正則化の項である。
【0037】
有益な態様により、目的汎関数は、フォトリソグラフィマスクの活性区域及び/又は不活性区域内の拘束条件として少なくとも1つの重み付け関数を含む。別の態様では、少なくとも1つの重み付け関数は、フォトリソグラフィマスクの活性区域の中心の周りにレーザビームを局所的に向けることが好ましい。更に別の態様では、少なくとも1つの重み付け関数は、パターン要素の区域にレーザビームを向けることを制限する。更に別の態様では、少なくとも1つの重み付け関数は、パターン要素の区域の周囲にレーザビームを向けることを制限する。更に別の態様により、ピクセルの密度は、パターン要素からの距離の増大と共に低下する。更に別の態様では、少なくとも1つの重み付け関数は、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを局所的に向ける際に異なる方式の誤差の補正を含む。更に有益な効果により、少なくとも1つの重み付け関数は、フォトリソグラフィマスクの第1の区域上にレーザビームを局所的に向けることによって導入される誤差をフォトリソグラフィマスクの第2の区域上にレーザビームを局所的に向けることによって均衡化する。
【0038】
別の態様では、複数の誤差は、異なる方式の複数の誤差を含む。更に別の態様により、異なる方式の複数の誤差は、位置合わせ誤差、及び/又は光透過率分布誤差、及び/又は平面性誤差を含む。別の態様では、ピクセル及び/又は連続的に修正された密度は、フォトリソグラフィマスク内の基板の高さにある少なくとも1つの単層に配置される。有益な態様により、ピクセル及び/又は連続的に修正された密度は、フォトリソグラフィマスク内の基板の高さにある少なくとも2つの層に配置される。更に別の態様では、少なくとも2つの層に配置されるピクセルは、異なるレーザビームパラメータを用いて生成される。更に別の態様では、補正されなかった誤差、及び/又はフォトリソグラフィマスクの基板上にレーザビームを局所的に向けて、複数の誤差を補正するためのピクセルを第1の層内に生成する際に導入された誤差は、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを再度向けて、フォトリソグラフィマスクの第2の層内にピクセルを生成することによって補正される。
【0039】
更に有益な態様では、フォトリソグラフィマスクは、透過フォトリソグラフィマスクを含む。代替の態様では、フォトリソグラフィマスクは、反射フォトリソグラフィマスクを含む。更に別の態様では、フォトリソグラフィマスクは、ナノインプリントリソグラフィのためのテンプレートを含む。
【0040】
別の態様により、重み付け関数は、複数の誤差のうちの位置合わせ誤差と平坦性誤差とを同時に補正するように構成される。
【0041】
更に別の態様では、レーザビームは、フォトリソグラフィマスクの活性区域上に向けられない。
【0042】
フォトリソグラフィマスクの活性区域上にレーザビームを向けないことにより、識別された誤差を補正する最中にいかなる新しい又は付加的な誤差もフォトリソグラフィマスクの活性区域内に導入されないことが保証される。その一方、欠陥を有する区域から更に遠い場合がある誤差補正区域を制限することにより、影響の低い補正工程が生じるのは明らかである。この欠点は、より高いパルスエネルギを用いてマスクの不活性区域上にレーザビームを向けることによって少なくとも部分的に補償することができる。
【0043】
別の態様は、2つの垂直方向、特にx方向及びy方向の変位を制御するために目的汎関数内に少なくとも2つの重み付け関数を導入する段階と、重み付け関数を変化させることによる反復工程において目的汎関数を解く段階とを含む。更に別の態様では、重み付け関数wiを有する単一の書込密度振幅aαに関する目的汎関数は、

の形式のものであり、この場合、

かつ

であり、更に、w0=0、及び変動限界が、

及び

である時に、インデックスkを有する反復工程に対する重み付け関数は、

及び

であり、フォトリソグラフィマスクの活性区域内でaα=0である。更に別の態様では、反復工程は、生じた変位が所定の閾値を上回った場合に反復を停止する段階と、所定の閾値に対して最大差を有する方向を判断する段階と、判断された方向への生じた変位が閾値を上回った場合に反復を停止する段階と、x方向が所定の閾値に対して最大の差を有する場合に、

を選択し、変動限界を



に修正する段階と、y方向が所定の閾値に対して最大の差を有する時に、

を選択し、変動限界を



に修正する段階と、この反復工程を繰返し、それぞれの方向に関する解として最後の重み付け関数を取る段階とを含む。
【0044】
更に別の態様により、レーザビーム及び/又はフォトリソグラフィマスクは、レーザビームがフォトリソグラフィマスク上に向けられる期間の一部分にわたってレーザビームと平行な軸の回りにある一定の角度だけ回転される。
【0045】
通常、レーザビームは、ビーム方向に対して垂直な平面内で完全には対称ではないので、単一のレーザビームパラメータセットのピクセルは、レーザビームに対して垂直な平面内で非対称性を生じる。ビーム方向の回りに互いに対して回転された2つのレーザビームの印加は、レーザビームによって導入される非対称性を少なくとも部分的に補償する簡単な手段を提供する。
【0046】
別の態様では、レーザビーム及び/又はフォトリソグラフィマスクの回転角は90°である。更に別の態様では、フォトリソグラフィマスク及び/又はレーザビームの回転なしにレーザビームがフォトリソグラフィマスク上に向けられる期間は、レーザビームがフォトリソグラフィマスク上に向けられる全体の期間の50%である。
【0047】
別の態様では、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを向ける段階は、フォトリソグラフィマスクの露光波長のレーザビームに対する光透過率分布の変動を導入しない。
【0048】
本発明の方法のこの態様は、識別された誤差の補正がマスクの活性区域内に新しい誤差を導入しないことを保証する。
【0049】
更に別の態様により、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを向ける段階は、フォトリソグラフィマスクにわたって露光波長のレーザビームに対する光透過率の一定の修正を導入する。更に別の態様では、フォトリソグラフィマスクにわたって露光波長のレーザビームに対する光透過率分布の変動を導入しないために、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを向ける段階は、第1の書込密度振幅:

を有する第2のレーザビームパラメータから構成された少なくとも1つの第1のセットと、第2の書込密度振幅:

を有する第2のレーザビームパラメータから構成された少なくとも1つの第2のセットとを用いて実施される。更に別の態様では、第1の書込密度振幅と第2の書込密度振幅の間の分割を最適化するための目的汎関数は、

の形式のものであり、この場合、cが任意の定数である時に、セルα内で一定の光透過率という条件は、

であることを必要とする。
【0050】
別の態様により、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを向ける段階は、フォトリソグラフィマスクの露光波長のレーザビームに対する光透過率分布の所定の変動をフォトリソグラフィマスクにわたって付加的に導入する。
【0051】
フォトリソグラフィマスクの基板上に上述の条件を満たすパラメータを有するレーザビームを局所的に向けることにより、位置合わせ誤差と光透過率分布誤差又はCDU誤差の両方をマスク基板内にピクセルを書き込む単一の工程において同時に補正することができる。
【0052】
更に別の態様では、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを向ける段階は、フォトリソグラフィマスクにわたって露光波長のレーザビームに対する光透過率の所定の変動を付加的に導入するために、第2のレーザビームパラメータから構成された少なくとも1つの第1のセットと、第2のレーザビームパラメータから構成された少なくとも1つの第2のセットとを用いて実施される。更に別の態様では、上記に定めた目的汎関数は、Tmodが活性区域内の光透過率分布の所定の変動である時に、各セルαに対する追加条件、すなわち、フォトリソグラフィマスクの活性区域内のセル内では

であり、活性区域の外側のセル内ではaα=一定である

という条件の下で、第1の書込密度振幅:

と第2の書込密度振幅:

の間の分割を最適化するのに使用される。
【0053】
更に別の態様では、本発明の方法は、フォトリソグラフィマスクの活性区域内の光透過率分布誤差を補正することによってフォトリソグラフィマスク内に新しく導入される誤差を補正するために、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを向ける段階を含む。
【0054】
マスク基板上にレーザビームを向けるか又はフォトリソグラフィマスクの基板内にピクセルを書き込むことによる光透過率分布誤差又はCDU誤差の補正が、CDU補正工程の前には観察されなかった位置合わせ誤差を導入する場合があることは既に公知である。目的汎関数を最小にする際に目的汎関数内に適切な拘束条件を考慮することにより、本発明の方法は、これらの位置合わせ誤差を補正することを可能にする。
【0055】
別の態様では、新しく導入される誤差は位置合わせ誤差であり、これらの位置合わせ誤差は、レーザビームを第1のレーザビームパラメータセットを用いてフォトリソグラフィマスクの活性区域上に向け、第2のレーザビームパラメータセットを用いて不活性区域上に向けることによって補正される。更に別の態様では、位置合わせ誤差は、レーザビームをフォトリソグラフィマスクの不活性区域上に向けることによって補正される。本発明の方法の更に別の態様では、フォトリソグラフィマスクの不活性区域上にレーザビームを向ける段階は、不活性区域にわたって単一の第2のレーザビームパラメータセットのみを使用する段階を含む。別の態様では、フォトリソグラフィマスクの不活性区域上にレーザビームを向ける段階は、フォトリソグラフィマスクの活性区域を取り囲む少なくとも2つのフレームを含み、各フレームは、1つの第2のレーザビームパラメータセットを有し、導入される密度修正は、レーザビームをこれらのフレーム上に向ける段階がフォトリソグラフィマスクの境界に向けて低下する場合に低下する。更に別の態様では、活性区域内の光透過率誤差を補正するために書込密度振幅acdcjを有し、位置合わせ誤差を補正するために不活性区域内に書込密度振幅aapojを有する目的関数は、

の形式のものであり、この場合、第1の項は、フォトリソグラフィマスクの活性区域内での光透過率分布補正によって導入される変位を考慮し、第2の項は、レーザビームを不活性区域上に向ける際にレーザビームによって導入される変位を定め、書込密度振幅:

は、フォトリソグラフィマスクの不活性区域内でのみ定義される。
【0056】
本発明の方法の更に別の態様では、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを向ける段階は、フォトリソグラフィマスクにわたって光透過率分布誤差を補正する段階が、フォトリソグラフィマスク内に位置合わせ誤差を導入しないように、少なくとも2つのレーザビームパラメータセットを含む。
【0057】
マスク基板内に異なる影響をもたらす少なくとも2つの異なるレーザビームパラメータセット又は書込モードを有するレーザビームをフォトリソグラフィマスクの基板上に局所的に向けることにより、いかなる新しい位置合わせ誤差も導入することなく光透過率分布誤差又はCDU誤差を補正することができる。
【0058】
別の態様により、第2のレーザビームパラメータの第1のセットは、第1のレーザビームを含み、第2のレーザビームパラメータの第2のセットは、第2のレーザビームを含み、第2のレーザビームは、第1のレーザビームに対してビーム方向の回りに回転される。別の態様では、フォトリソグラフィマスクは、レーザビームと平行な軸の回りに回転される。更に別の態様では、レーザビーム及び/又はフォトリソグラフィマスクは、90°回転される。別の態様により、フォトリソグラフィマスクにわたって第1及び第2のレーザビームを向ける段階の時間的及び/又は空間的分布は、フォトリソグラフィマスクにわたる光透過率の変動を除去し、フォトリソグラフィマスク内に新しい誤差を導入する段階を最小限に止める。第1の回転されていないレーザビームに対する書込密度振幅:

と、第2の回転されたレーザビームに対する書込密度振幅:

の間の分割を最適化するための本発明の方法の別の態様では、目的汎関数は、フォトリソグラフィマスクの活性区域内のセルjに対する追加条件:

下で

の形式のものである。
【0059】
別の態様により、第2のレーザビームパラメータの第1のセットは、第2のレーザビームパラメータの第2のセットよりも数倍高いエネルギを有するレーザパルスを含み、及び/又は第2のレーザビームパラメータの第1のセットは、フォトリソグラフィマスク上で、第2のレーザビームパラメータの第2のセットにおけるものよりも数倍低いパルス密度を有する。
【0060】
マスク基板の異なる部分における異なるパルスエネルギを有するレーザビームの印加は、フォトリソグラフィマスクの活性区域内での新しい誤差、特に位置合わせ誤差の生成なしに光透過率誤差の補正を可能にする。
【0061】
更に別の態様では、第2のレーザビームパラメータの第1のセットのエネルギと第2のセットのエネルギの間の比は、1.5〜10、好ましくは、1.8〜7、及び最も好ましくは、2〜4の範囲を含む。更に別の態様では、レーザビームパラメータの第1のセット又は標準エネルギモード(std)と第2のセット又は低エネルギモード(le)の間の最適な分割は、フォトリソグラフィマスクの活性区域内のセルjに対する第2のレーザビームパラメータの第1のセットの標準エネルギ密度書込振幅:

と、第2のレーザビームにおける低エネルギ密度書込振幅:

に関する追加条件:

の下で

の形式を有する目的汎関数から判断され、第2のレーザビームパラメータの第1のセットの低エネルギ密度書込振幅は、高いパルス密度によって補償される。
【0062】
更に別の態様では、パルスエネルギは0.05μJから5μJであり、パルス長は、0.05psから100psであり、繰返し数は、1kHzから10MHzであり、パルス密度は、1000パルス毎mm2から10 000 000パルス毎mm2であり、対物系のNAは、0.1から0.9であり、対物系の倍率は、5×から40×である。別の態様により、第2のレーザビームパラメータの第1のセットは、0.45μJ〜0.55μJのパルスエネルギ、5〜10psのパルス持続時間、10kHz〜100kHzの繰返し数、0.3〜0.4の対物系のNA、10×〜20×の対物系の倍率、及び1000〜100 000パルス毎mm2のパルス密度を含み、第2のレーザビームパラメータの第1のセットは、0.27μJ〜0.37μJのパルスエネルギ及び5000〜500 000パルス毎mm2のパルス密度を有する。
【0063】
更に別の態様では、フォトリソグラフィマスク上にレーザビームを向ける段階は、レーザビームを活性区域上に向けるための異なるパルスエネルギを有する第1のセット及び第2のセット、並びにフォトリソグラフィマスクの不活性区域上にレーザビームを向けるための第3のセットという第2のレーザビームパラメータの少なくとも3つのセットを含む。
【0064】
フォトリソグラフィマスクの基板上に3つの異なるレーザビームパラメータセット又は書込モードを有するレーザビームを局所的に向けることにより、異なる方式の誤差の補正に関して又は基本条件又は境界条件の配慮に関して柔軟性が更に高まる。従って、異なる第2のレーザビームパラメータセットを有するレーザビームをフォトリソグラフィマスク上に向ける段階は、フォトリソグラフィマスクの基板を局所的に修正する柔軟性を高めるので、本発明の方法のこの態様は、位置合わせ誤差と光透過率誤差の同時補正を容易にする。
【0065】
別の態様により、第1のセット又は標準エネルギモード(std)と、第2のセット又は低エネルギモード(le)と、第3のレーザビームパラメータセット(apo)との間の最適な分割は、目的汎関数:

から判断される。
【0066】
別の態様では、目的汎関数は、少なくとも1つの第1のフォトリソグラフィマスクと少なくとも1つの第2のフォトリソグラフィマスクの間の重ね合わせ誤差を最小限に止めるために使用される。
【0067】
半導体素子の製作では、通常、ウェーハ上に複雑な構造を生成するために、製造工程中に一連のフォトリソグラフィマスクが同じウェーハに対して連続して適用される。多くの用途では、光軸に対するマスクパターンの絶対位置は、重ね合わせ限界構造をウェーハ上に印刷することができるような2つ又はそれよりも多くのマスクの互いに対する向き程には重要ではない。従って、目的は、第1のフォトリソグラフィマスクを所定の設計との最良適合に向けることではなく、第2のマスクとの最良適合を得ることである。本発明の方法は、2つ又はそれよりも多くのフォトリソグラフィマスクのそのような重ね合わせ誤差を補正するのに使用することができる。特に、両方のマスクの第1のパラメータと第2のパラメータとを同時に変化させることができる場合には、2つのマスクの相対的な向きを低い残留位置合わせ誤差しか持たずに最適化することができる。
【0068】
更に別の態様では、目的汎関数は、少なくとも第1のフォトリソグラフィマスクと少なくとも第2のフォトリソグラフィマスクの間に複数の位置合わせ差を含み、重ね合わせ誤差は、目的汎関数を最小にすることによって最大にされる。更に別の態様では、第1のフォトリソグラフィマスクの位置合わせは固定され、第2のフォトリソグラフィマスクの位置合わせは、目的汎関数によって変更される。更に別の態様により、第1及び第2のフォトリソグラフィマスクの位置合わせは、目的汎関数によって変更される。更に別の態様では、10ページに提供している目的汎関数のパラメータφiは、第1のフォトリソグラフィマスクの位置合わせを表し、上述の目的汎関数のパラメータζiは、第2のフォトリソグラフィマスクの位置合わせを表し、上述の目的汎関数は、条件:

の下に使用され、この場合、書込密度振幅:

の正の部分は、第1のフォトリソグラフィマスク上に補正され、負の部分は、第2のフォトリソグラフィマスク上に補正される。
【0069】
最後に、更に別の態様において、フォトリソグラフィマスクの複数の誤差を補正するための装置は、フォトリソグラフィマスクの結像変換の第1のパラメータと、フォトリソグラフィマスク上に局所的に向けられるレーザビームの第2のパラメータとを同時に最適化するように作動可能な少なくとも1つのコンピュータ手段と、最適化された第2のレーザビームパラメータに従って光パルスのレーザビームを生成するための少なくとも1つのレーザ源と、最適化された第1の線形結像パラメータに従って結像変換を実施するための少なくとも1つの走査手段とを含む。
【0070】
本発明の更に別の態様は、更に別の従属請求項に記載されている。
【0071】
本発明をより明快に理解し、その実用的な用途を把握するために、以下の図を提供して以下に参照する。これらの図は、単に例示的に提供するものであり、本発明の範囲を限定するわけでは決してないことに注意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】透過フォトリソグラフィマスクの概略断面図である。
【図2a】反射フォトリソグラフィマスクの概略断面図である。
【図2b】ナノインプリントリソグラフィに使用されるテンプレートの概略断面図である。
【図3】図1及び図2のフォトリソグラフィマスクの基板の修正のための装置の略ブロック図である。
【図4】フォトリソグラフィマスクの初期位置合わせ問題を図式的に示す図である。
【図5】線形結像変換を実施した後の図3の位置合わせ問題の概略図である。
【図6】図5に示す位置合わせ問題に対して計算された補正マップの図である。
【図7】それぞれの目的汎関数を最適化した後の図4のマスクの残留位置合わせ誤差の予測図である。
【図8】それぞれの目的汎関数を最小にすることから得られるレーザビームパラメータを用いて誤差補正を実施した後の図4のフォトリソグラフィマスクの計測残留位置合わせ誤差の図である。
【図9】図4の位置合わせ誤差を補正し、線形結像変換を実施した後の計測誤差補正と模擬誤差補正との比較図である。
【図10】フォトリソグラフィマスクの活性区域内にレーザビームを向けずに位置合わせ誤差を補正する方法の流れ図である。
【図11a】フォトリソグラフィマスクの活性区域内にピクセルを書き込最初に補正される位置合わせ問題の概略図である。
【図11b】線形結像変換の実行後の図11aの位置合わせ問題の概略図である。
【図12】最適化ループを1回通過した後の図10の最適化ループを用いて得られた補正書込マップの図である。
【図13】図12の補正書込マップを用いた後、更に線形結像変換を実施した後の図11の模擬残留位置合わせ問題の図である。
【図14】図10の最適化流れ図を数回通過した後の補正書込マップの図である。
【図15】図14の補正書込マップを用いた後、更に線形結像変換を実施した後の図11の模擬残留位置合わせ問題の図である。
【図16】図14の補正書込マップを図11のフォトリソグラフィマスクの基板に適用した後、更に線形結像変換を実施した後の図11の計測残留位置合わせ問題の図である。
【図17】図3のレーザビームの0°書込モード署名(左)及び90°書込モード署名(右)の概略図である。
【図18a】2つの異なる書込モードの図3のレーザビームを用いて補正される位置合わせ問題の概略図である。
【図18b】線形結像変換を実施した後の図18aの位置合わせ問題の概略図である。
【図19a】0°書込モード署名に対する補正書込マップの図である。
【図19b】90°書込モード署名に対する補正書込マップの図である。
【図20】図19aと図19bの組合せ補正書込マップの図である。
【図21a】図19aの補正書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図21b】図19bの補正書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図21c】図19a及び図19bの補正書込マップによって生じる位置合わせ変化の和の概略図である。
【図22a】図20の書込補正マップを用いた図18aの位置合わせ補正の予測結果の概略図である。
【図22b】線形結像変換を実施した後の図22aの位置合わせ補正の図である。
【図23】図20の書込補正マップを用いた計測位置合わせ補正の概略図である。
【図24】図3のレーザビームの通常書込モード(左)及び低位置合わせ(LowReg)書込モード(右)の署名の概略図である。
【図25a】第1の書込モードにおける書込補正マップの図である。
【図25b】第2の書込モードにおける書込補正マップの図である。
【図26】CD補正を実施した後の図4の残留位置合わせ問題の概略図である。
【図27a】計測CD均一性マップの図である。
【図27b】図27aのCD均一性問題を補正するのに必要な補正書込マップの図である。
【図28a】位置合わせ問題及び図27aのCD均一性問題に対する第1の書込モードにおける最適化補正書込マップの図である。
【図28b】位置合わせ問題及び図27aのCD均一性問題に対する第2の書込モードにおける最適化補正書込マップの図である。
【図28c】位置合わせ問題及び図27aのCD均一性問題に対する第1(図28a)及び第2(図28b)の書込モードに対して組み合わされた最適化補正書込マップを示す図である。
【図29】図28cの補正書込マップに従ってピクセル書込を実施した後、更に線形結像変換を実施した後の残留位置合わせ問題の概略図である。
【図30】2%の一定の書込密度での標準CDC試験書込マップの図である。
【図31a】図30の書込マップによって生じる計測位置合わせ変化の概略図である。
【図31b】線形結像変換を実施した後の図30の書込マップによって生じる計測位置合わせ変化の概略図である。
【図32a】図30の書込マップによって生じる模擬位置合わせ変化の概略図である。
【図32b】図30のCDC(限界寸法補正)試験書込における模擬位置合わせ変化と計測位置合わせ変化の間の差の概略図である。
【図33a】図30の書込マップによって生じる模擬位置合わせ変化の概略図である。
【図33b】線形結像変換を実施した後の図33aの位置合わせ変化の概略図である。
【図34a】図30のCDC試験書込によって生じる位置合わせ誤差を補正するための計算アポディゼーション書込マップの図である。
【図34b】図33aのアポディゼーション書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図35a】図30及び図34aのCDC補正及びAPO(アポディゼーション)補正の書込の後の位置合わせ変化の図である。
【図35b】線形結像変換を実施した後の図35aの位置合わせ変化の図である。
【図36a】減衰アポディゼーション書込マップの図である。
【図36b】図36aの減衰アポディゼーション書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図37a】図30の試験CD補正と図36aの減衰アポディゼーションとを組み合わせた書込マップの図である。
【図37b】図37aの試験CD補正と減衰アポディゼーションとの書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図37c】線形結像変換の実施後の図37bの位置合わせ変化の概略図である。
【図38a】CD補正のための書込マップの図である。
【図38b】図38aの試験CD補正と減衰アポディゼーションとの書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図38c】線形結像変換の実施後の図38bの位置合わせ変化の概略図である。
【図39a】アポディゼーション書込マップの図である。
【図39b】図39aのアポディゼーション書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図39c】線形結像変換の実施後の図38bの位置合わせ変化の概略図である。
【図40a】CD補正のための更に別の書込マップの図である。
【図40b】図40aのCD補正マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図40c】線形結像変換の実施後の図40bの位置合わせ変化の概略図である。
【図41a】図40aのCDCタスクに対して計算されたアポディゼーション書込マップの図である。
【図41b】フォトリソグラフィマスクの活性区域内に図41aのアポディゼーション書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図42a】図40aのCD補正と図41aの計算アポディゼーションとを組み合わせた書込マップの図である。
【図42b】図42aのCDCとAPOとの書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図42c】線形結像変換を実施した後の図42bの残留位置合わせ変化の概略図である。
【図43a】図40aのフォトリソグラフィマスクにおいて計測された図42aの補正書込マップの図である。
【図43b】図43aの補正マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図43c】線形結像変換の実施後の図42bの位置合わせ変化の概略図である。
【図44a】ピクセルのうちの第1の半分が0°モード署名を用いて書き込まれる場合に図30の試験CD補正マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図44b】ピクセルのうちの第2の半分が90°モード署名を用いて書き込まれる場合に図30の試験CD補正マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図45a】ピクセルのうちの第1の半分が0°モード署名を用いて書き込まれ、ピクセルのうちの第2の半分が90°モード署名を用いて書き込まれる場合に図30の試験CD補正マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図45b】線形結像変換を実施した後の図45aの試験CD補正マップの残留位置合わせ変化の概略図である。
【図46a】0°モード署名を有する書込モードにおける図30の試験CDC書込マップのCD補正書込マップの図である。
【図46b】90°モード署名を有する書込モードにおける図30の試験CDC書込マップのCD補正書込マップの図である。
【図47a】図46aのCD補正書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図47b】図46bのCD補正書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図48a】図46aと図46bとの組合せCD補正書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図48b】線形結像変換を実施した後の図48aの残留位置合わせ変化の概略図である。
【図49a】0°モード署名を有する書込モードにおける図38aのCDC問題に対するCD補正書込マップの図である。
【図49b】90°モード署名を有する書込モードにおける図38aのCDC問題に対するCD補正書込マップの図である。
【図50a】図49aと図49bとの組合せCD補正書込マップによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図50b】線形結像変換を実施した後の図50aの残留位置合わせ変化の概略図である。
【図51a】LowReg(低位置合わせ)書込モードを使用することによって生じる位置合わせ変化の概略図である。
【図51b】線形結像変換を実施した後の図51aの残留位置合わせ変化の概略図である。
【図52a】標準又は通常書込モードにおける図38aのCDC問題に対するCD補正書込マップの図である。
【図52b】LowReg書込モードにおける図38aのCDC問題に対するCD補正書込マップの図である。
【図53a】標準又は通常書込モードにおける図38aのCDC問題に対するCD補正書込マップの図である。
【図53b】LowReg書込モードにおける図38aのCDC問題に対するCD補正書込マップの図である。
【図54a】マスクBの初期位置合わせ問題の概略図である。
【図54b】線形結像変換を実施した後の図54aのマスクBの残留位置合わせ問題の概略図である。
【図55a】マスクCの初期位置合わせ問題の概略図である。
【図55b】線形結像変換を実施した後の図55aのマスクCの残留位置合わせ問題の概略図である。
【図56】図54aのマスクBと図55aのマスクCとの初期重ね合わせ問題の概略図である。
【図57a】マスクBに対する計算補正書込マップの図である。
【図57b】マスクCに対する計算補正書込マップの図である。
【図58】線形結像変換を実施した後に得られるマスクbとマスクCとの重ね合わせ誤差の概略図である。
【図59】マスクBとマスクCの間の重ね合わせを改善する計算補正書込マップの図である。
【図60】マスクBがマスクCに対して最適化された後の残留重ね合わせ誤差の概略図である。
【図61a】マスクBに対する計算重ね合わせ補正書込マップの図である。
【図61b】マスクCに対する計算重ね合わせ補正書込マップの図である。
【図62】線形結像変換を実施した後のマスクBとマスクCとの模擬残留重ね合わせ誤差の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本明細書のこの部分は、以下の通りに編成され、すなわち、フォトリソグラフィマスクに関する一部の技術用語及び一部の問題の紹介で始まり、次に、これらの問題を補正するのに使用される装置を説明する(「フォトリソグラフィマスク及びレーザ系」)。次に、「位置合わせ問題」という名称の第2の部分では、主にフォトリソグラフィマスクの位置合わせ誤差を補正するために本発明の方法を適用する。「CDU問題」という名称の第3の部分は、主に限界寸法均一性(CDU)問題を補正するための本発明の原理の適用を解説する。更に、「重ね合わせ問題」という名称の第4の部分では、マスクのスタック内の異なるフォトリソグラフィマスクの間の重ね合わせ問題を最小にするために本発明の方法を使用する。最後に、この節にある様々な例の解説に必要な本発明の方法の理論的及び/又は数学的な背景を「理論的背景」という名称の独立した節において提供する。
【0074】
5.1.フォトリソグラフィマスク及びレーザ系
以下では、本発明の例示的な実施形態を示している添付の図を参照して本発明をより完全に説明する。しかし、本発明は、異なる形態に実施することができ、本明細書に示す実施形態に限定されると解釈すべきではない。より正確には、これらの実施形態は、本発明の開示が完全になり、本発明の範囲を当業者に伝達するように提供するものである。
【0075】
図1は、透過フォトリソグラフィマスク100の概略断面図を表す。マスク100は、第1の面又は前面130及び第2の面又は後面140を有する基板110を含む。基板110は、ウェーハ上のフォトレジストの照明に使用される波長に対して透過的でなければならない。露光波長は、電磁スペクトルの深紫外(DUV)スペクトル範囲にあるもの、特に、193nm前後のものとすることができる。基板材料は、一般的に石英を含む。基板は、152mm×152mmの一般的な横方向寸法及び基本的に6.35mmの厚み又は高さを有する。フォトリソグラフィマスク100の基板110は、その前面130上に通常はクロムから製作されるパターン要素120を有し、パターン要素120は、フォトレジスト上に所定の構造要素を形成し、この構造要素から半導体素子が製造される。フォトリソグラフィマスク100の基板110のパターン要素120を保持する部分をマスクの活性区域150と呼び、それに対してパターン要素120を持たない境界部分を不活性区域160と呼ぶ。基板110の第2の面又は後面140を通じて、露光波長のレーザビームがマスク100の基板110を照明する。
【0076】
図2aは、電磁スペクトルの極紫外(EUV)スペクトル範囲での将来の使用、特に、約13.5nmの露光波長に使用するための反射フォトリソグラフィマスク200の概略断面図を示している。図1のフォトリソグラフィマスク100とは異なり、マスク200は、多層ミラー構造に基づく反射光学要素である。フォトリソグラフィマスク200の多層ミラー系は、溶融シリカ基板のような適切な基板210の基板前面230上に堆積される。例えば、ZERODUR(登録商標)、ULE(登録商標)、又はCLEARCERAM(登録商標)のような他の透過誘電体、ガラス材料、又は半導体材料をEUVフォトリソグラフィマスクのための基板として適用することができる。
【0077】
多層ミラー系は、交替するモリブデン(Mo)層250とシリコン(Si)層260との40個の対を含む。各Mo層250の厚みは、4.15nmであり、Si層260の厚みは、2.80nmである。多層構造を保護するために、深さ7nmの自然酸化物を有するシリコンのキャップ層270が、構造の最上位に配置される。この多層ミラー系では、Mo層250は散乱層として機能し、それに対してシリコン層260は、分離層として機能する。フォトリソグラフィマスク200は、多層系の最上位に、シリコンのキャップ層270、パターン要素としてのバッファ構造280、及び吸収構造290を有する。
【0078】
図2bは、ウェーハ上にパターン要素を転写するナノインプリントリソグラフィに使用されるテンプレート295を略示している。テンプレート295は、UV及びDUVスペクトル範囲で透過的な材料を含み、多くの場合に、テンプレート材料として溶融シリカが使用される。テンプレート前側296上のパターン要素は、図1のフォトリソグラフィマスク100のパターン要素120の製作と非常に類似した工程において製作される。従って、本発明の原理は、ナノインプリントリソグラフィに使用されるテンプレートの様々な種類の誤差を補正するために適用することができる。テンプレート295は、テンプレート後側297を通じて電磁放射線298によって照明される。
【0079】
図3は、図1及び図2aのフォトリソグラフィマスク100及び200の誤差、更には図2bのテンプレート295の誤差を補正するのに使用することができる装置300の略ブロック図を示している。装置300は、3次元で可動とすることができるチャック320を含む。フォトリソグラフィマスク310は、例えば、圧着のような様々な技術を用いてチャック320に固定することができる。フォトリソグラフィマスク310は、基板後面140又は240が対物系340に向くように構成されたフォトリソグラフィマスク100又は逆さまに装着されたフォトリソグラフィマスク200とすることができ、又は図2bのテンプレート295とすることができる。
【0080】
装置300は、パルス又は光パルスのビーム又は光ビーム335を生成するパルスレーザ源330を含む。レーザ源330は、可変持続時間の光パルスを生成する。パルス持続時間は、10fs程度の短いとすることができるが、100psまで連続して増加させることができる。パルスレーザ源330によって生成された光パルスのパルスエネルギも、パルス当たり0.01μJからパルス当たり10mJに至るまで広い範囲にわたって調節することができる。更に、光パルスの繰返し数は、1Hzから100MHzまでの範囲を含む。好ましい実施形態では、光パルスは、800nmの波長で作動するTi:サファイアレーザによって生成することができる。しかし、以下に説明する方法は、このレーザ方式に限定されず、原理的に、フェムト秒範囲の持続時間を有するパルスを生成することができて、フォトリソグラフィマスク310の基板に対するバンドギャップよりも小さい光子エネルギを有する全てのレーザ方式を使用することができる。従って、例えば、Nd−YAGレーザ系又は色素レーザ系を適用することができる。
【0081】
装置300は、1つよりも多くのパルスレーザ源330(図3には示していない)を含むことができる。
【0082】
以下の表は、本発明の方法の実施形態に使用される周波数二倍化Nd−YAGレーザ系のレーザビームパラメータの概要を表す。
【0083】
(表1)

【0084】
以下の表は、フォトリソグラフィマスク100の基板110の密度及び/又は光透過率分布に個別に影響を与えるパラメータを示している。表2は、標準プロセスウィンドウ(std PW)と呼ぶピクセルを導入又は書き込むモードにおいて周波数二倍化Nd−YAGレーザ系を使用する実施形態のパラメータを提供している。
【0085】
(表2)

【0086】
表3は、ここでもまた、周波数二倍化Nd−YAGレーザ系を使用する実施形態の低位置合わせプロセスウィンドウ(LowReg PW)と呼ぶモードのパラメータを要約している。レーザ系330のこの動作モードは、std PWよりも低いエネルギを有する光パルスを使用するが、より高いピクセル密度を導入する。
【0087】
(表3)

【0088】
以下の表は、レーザ系330の光パルスのエネルギを更に低減することによって特徴付けられる位置合わせなしプロセスウィンドウ(NoReg PW)と呼ぶモードにおけるパラメータを列記している。
【0089】
(表4)

【0090】
表5は、ピクセルなしプロセスウィンドウ(pixelless PW)と呼ぶモードのパラメータを提供している。この場合、Ti:サファイアレーザ系は、密度及び/又は光透過率分布の修正に使用される。このレーザ系は、約800nmの放出波長のフェムト秒レーザパルスを生成する。pixelless PWのパルス密度は非常に高い。
【0091】
(表5)

【0092】
誘導ミラー390は、パルスレーザビーム335を集束対物系340内に向ける。対物系340は、パルスレーザビーム335を基板後面を通じてフォトリソグラフィマスク310の基板内に集束させる。適用される対物系のNA(開口数)は、焦点の所定のスポットサイズ、及び基板後面に対するフォトリソグラフィマスク310の基板内の焦点の位置に依存する。表1に示しているように、対物系340のNAは、0.9までのものとすることができ、その結果、基本的に1μmの焦点直径及び基本的に1020W/cm2の最大強度がもたらされる。
【0093】
装置300は、(x方向及びy方向)の平面内でのサンプルホルダ320の2軸位置決め台の平行移動を管理するコントローラ380及びコンピュータ360も含む。コントローラ380及びコンピュータ360は、対物系340が固定された1軸位置決め台350によるチャック320の平面に対して垂直な(z方向)対物系340の平行移動も制御する。装置300の他の実施形態では、フォトリソグラフィマスク310を目標位置に移動させるためにチャック320に3軸位置決め系を装備することができ、対物系340を固定することができ、又はチャック320を固定することができ、対物系340を3次元で可動とすることができることに注意すべきである。経済的ではないが、対物系340とチャック320の両方に3軸位置決め系を装備するように考えることができる。フォトリソグラフィマスク310のパルスレーザビーム335の目標位置へのx、y、及びz方向の移動のために手動位置決め台を使用することができ、及び/又は対物系340は、3次元移動のための手動位置決め台を有することができることに注意すべきである。
【0094】
コンピュータ360は、マイクロプロセッサ、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、CPU(中央演算処理装置)、GPU(グラフィック処理ユニット)などとすることができる。コンピュータ360は、コントローラ380に配置することができ、又はPC(パーソナルコンピュータ)、ワークステーション、メインフレームのような別々のユニットとすることができる。更に、コンピュータ360は、キーボード、タッチパッド、マウス、ビデオ/グラフィックディスプレイ、プリンタのようなI/O(入力/出力)ユニットを含むことができる。更に、コンピュータ360は、揮発性及び/又は不揮発性のメモリを含むことができる。コンピュータ360は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、又はこれらのあらゆる組合せで達成することができる。更に、コンピュータ360は、レーザ源330を制御することができる(図3には示していない)。
【0095】
更に、装置300は、チャック320に配置された光源からダイクロイックミラー345を通じて光を受光するCCD(電荷結合デバイス)カメラ365を含む閲覧系を設けることができる。閲覧系は、フォトリソグラフィマスク310の目標位置へのナビゲーションを容易にする。
【0096】
更に、閲覧系は、レーザ源330のパルスレーザビーム335によるフォトリソグラフィマスク310の基板後面上の修正区域の形成を観察するのに使用することができる。
【0097】
以下では、様々な誤差又は欠陥を図1の透過フォトリソグラフィマスク100に基づいて解説する。当業者は、この解説を図2の反射フォトリソグラフィマスク200及び図2bのテンプレート295に適応させることができることを認めるであろう。小さいパターン要素120と、所定の構造要素をフォトリソグラフィマスク100からウェーハ上のフォトレジスト内に変換するのに使用される短い露光波長とに起因して、フォトリソグラフィ工程は誤差を受け易い。いくつかの誤差発生源が存在する。フォトリソグラフィマスク100の基板110は、欠陥を有する場合があり、例えば、基板は、僅かに湾曲している場合があり、又は基板110のDUV放射線に対する透過性は、マスク100の区域又はその像視野にわたって僅かに異なる場合がある。これらの影響は、フォトレジスト上に入射する光学強度の変動をフォトリソグラフィマスク100の像視野にわたってもたらす。フォトレジストに局所的に印加される光子数の変動は、現像されたフォトレジスト内のパターン要素120の像の変動を像視野にわたってもたらす。既に上述のように、そのような変化を限界寸法均一性(CDU)と呼ぶ。
【0098】
CDUの増大をもたらすフォトリソグラフィマスク100の活性区域150にわたる光学強度変化の影響を定量化するために、基本的に2つの量が使用される。パターン要素120のその所定の公称寸法に対する最大偏位は、示すことができる。最大偏位は、適切な統計基盤を生成するために多くの測定値(通常は数百)から判断される。代替的に、生成されたパターン要素寸法の偏位又は限界寸法(CD)変化は、ガウス分布に従うように考えられている。この場合、CDUを定量化するのにガウス分布の標準偏差σ、特に、その3σ値が使用される。
【0099】
フォトリソグラフィマスク100の誤差は、パターン要素120のうちの一部が、正確にそれらの所定の位置にない場合にも生じる場合がある。これらのパターン要素によってウェーハ上のフォトレジスト内に生成される構造は、正確に所定の構造に対応しない場合があり、及び/又は正確にフォトレジスト内の所定の位置に生成されない場合がある。この方式の誤差を位置合わせ誤差と呼ぶ。位置合わせ誤差の量を示す上で、前の段落で説明した量(最大偏位又は分布の3σ値)を使用することができる。フォトリソグラフィマスク100の活性区域150にわたる位置合わせ誤差の分布は、通常は矢印の2次元(2D)マップによって例示され、この場合、矢印の方向は、パターン要素がその公称位置に対してシフトされる方向を示し、矢印の長さはシフト量を示している。
【0100】
フォトリソグラフィマスク100をフォトレジスト上に結像する光学系は、その解像度限界の近くで作動するので、完全なフォトリソグラフィマスク100にわたって歪曲、強度変化を生成し、更には結像誤差を生成する場合もある。フォトリソグラフィ系の光学要素の欠陥は、フォトリソグラフィマスク100の誤差に加算される。更に、ウェーハ上のフォトレジストは、完全ではない場合もあり、フォトリソグラフィマスク100の問題及びフォトリソグラフィ照明系の構成要素の問題を拡大する場合がある。
【0101】
以下では、フォトリソグラフィマスク100に関する結像誤差及びフォトリソグラフィ照明系の光学要素の結像誤差を最小にする本発明の方法の適用に関する数々の例を説明する。しかし、当業者は、本発明の方法を反射フォトリソグラフィマスク200及びそれぞれのフォトリソグラフィ照明系の誤差を補正するために適用することができることを認めるであろう。更に、当業者は、本発明の方法を図2bのテンプレート295の誤差を補正するのに使用することができることを認めるであろう。
【0102】
本発明の方法の理論的及び/又は数学的な背景を「理論的背景」という後の節に提供する。様々な例の解説中には、その節で定める式を参照する。
【0103】
5.2.位置合わせ問題
図4は、初期のマスク位置合わせ問題をパターン要素120のそれらの所定の位置からの変位セットとして矢印の2Dマップの形態で提供している。変位問題は、フォトリソグラフィマスク100の活性区域150、すなわち、ウェーハ上に配置されたフォトレジスト内に印刷されるパターン要素120を含む区域内でのみ定義される。数学的問題の一般的な定式化は、目的汎関数にあらゆる位置を含めることを可能にする。この目的汎関数は、「理論的背景」という後の節の式38にその一般的な形式で定義している。その節で解説するように、目的汎関数は、最適化工程内に線形結像変換を含めるために6つのパラメータを含む。
【0104】
図4の初期位置合わせ問題は、パターン要素120の判断された位置のそれらの目標位置に対する偏位(ガウス分布の3σ数値)によって特徴付けることができる。図4のフォトリソグラフィマスクでは、その所定の位置からの偏位の3σ数値は、15.8nmである。これは、フォトリソグラフィ工程においてマスクの適用を大きく困難にする場合がある大きい値である。「理論的背景」という後の節で解説しているように、スキャナは、フォトリソグラフィマスク100の照明の前に線形結像変換を実施することによって位置合わせ問題を部分的に解決することができる。最良のスキャナ補正の適用後の残留位置合わせ問題を特徴付けるためには、線形結像変換を仮想的に実施した後に位置合わせ問題のマグニチュードを計算する必要がある。以下では線形結像変換をスケーリング及び直交性(S/O)補正とも呼ぶ。図4の例では、ここでもまた、偏位の3σ数値で示されるS/O補正の後の残留位置合わせ誤差は、10.9nmである。
【0105】
図5は、線形結像変換又はS/O補正によって補正された位置合わせ誤差を除去した後の残留位置合わせ誤差を提供している。11nm程度の位置合わせ問題を有するフォトリソグラフィマスクは、限界3xノード層に関する一般的な仕様を満たさず、恐らくは拒否されることになり、この場合、3xは、30〜39nmノード、特に32nmノードの一般的な表記である。
【0106】
本発明の方法によって得られる改善を明らかにするために、ここで、式38の目的汎関数(ζiに式31を用いて)を単一のレーザビームパラメータセット又は単一の書込モード:

に対して解く。この場合、式38は、次式のように書き直すことができる。

又は、

【0107】
レーザビームによってフォトリソグラフィマスクの基板内に誘起される全ての変形特性は、行列Φに要約される。
【0108】
式41の数学的問題は、2次形式の最適化問題である。最適な収束は、共役勾配法を使用することによって得ることができる。書込密度振幅に対する式39の拘束条件(0<am<(athresm)は、立方体ドメイン内で最良の解を求めるように強制する。式41の最適化手順中に式39の拘束を考慮するために、修正を加えなければならない。下降方向の計算及び反復が、外向きドメイン区域を招く場合には、ドメインの境界に対して垂直な方向に成分を切断すべきである。しかし、これは、計算時間に影響を与えない高速な演算である。
【0109】
式41の最適化の実行は、レーザビーム335をフォトリソグラフィマスクの基板上に局所的に向けるための提案補正マップをもたらす。この補正マップを図5に示している。レーザビーム335は、マスク基板内にピクセルを「書き込む」ので、以下では、レーザビーム335のための補正マップを補正書込マップとも呼ぶ。
【0110】
フォトリソグラフィマスクの基板内に書き込まれるピクセルの密度は、フォトリソグラフィマスクを照明するために使用される光学強度の光透過率変化のパーセントで表されるか、又はより厳密には、マスク基板内に導入された又は書き込まれたピクセルによってもたらされる照明減衰率のパーセントで表される。位置合わせ誤差の補正のために書き込まれるピクセルによって可能になる最大減衰率は3%である。図6の補正書込マップに必要とされる照明波長における光学強度の平均減衰率は、1.3%である。図6から分るように、フォトリソグラフィマスクの活性区域と不活性区域の両方が、図4の位置合わせ問題の補正のために使用される。
【0111】
シミュレーションを実施することにより、線形結像変換によって補正することができる位置合わせ誤差の除去の後に得られる偏位の3σ数値が6.4nmになることを予測することができ、これは、図5に対して約41%の改善率である。図5では、図4の位置合わせ誤差の一部分は、線形結像変換を実施することによって補正済みである。
【0112】
最適化された線形結像変換に関するパラメータは、式41の最適化から同時に得られる。6つの線形結像変換パラメータにおける数値を以下の表に提供する。
【0113】
(表6)

【0114】
図7は、表6に示すパラメータを用いて線形結像変換を実施することによって補正することができる位置合わせ誤差を除去した後に得られる模擬位置合わせ誤差を示している。
【0115】
次の段階では、図4のフォトリソグラフィマスクの位置合わせ誤差が最小にされるようにフォトリソグラフィマスクの基板内にピクセルを局所的に書き込むために、式41の最適化手順から判断されたレーザビームパラメータがレーザ源330によって使用される。既に示すように、最適化されたレーザビームパラメータは、補正書込マップに配置することができる。
【0116】
図8は、図6の補正書込マップの最適化済みレーザビームパラメータを使用することによって図4のマスクの誤差問題を補正した後の計測位置合わせ誤差を示している。分布の3σ数値で示す計測残留位置合わせ誤差は、7.1nmであり、これは、線形結像変換のみを実施するのに対して(図5を参照されたい)約35%の改善率である。
【0117】
図9は、予測位置合わせ誤差補正と計測位置合わせ誤差補正の間の差を示している。この比較は、式41の最適化から得られる誤差補正の改善率を実際に達成することができることを明らかにしている。得られた図4の位置合わせ問題の改善率は、フォトリソグラフィマスクを限界3xノード層に関する一般的な仕様範囲内に収める。
【0118】
本発明の方法の適用に関する第2の例では、フォトリソグラフィマスク内の位置合わせ誤差は、フォトリソグラフィマスク100の基板110の活性区域150内にレーザビーム335を向けることなしに補正される。この拘束条件は、位置合わせ誤差の補正が、マスク100の活性区域150内に新しいCDU誤差を招くことを阻止する。レーザビーム335を向けることなしに、又はフォトリソグラフィマスク100の活性区域150内にピクセルを書き込むことなしに、位置合わせ問題の可能な最良の改善率を得るように目的を定式化することができる。式41に定義される最適化問題の項では、いくつかの最適化パラメータalmにゼロ値を割り当て、これらの項を最適化アルゴリズムから排除することは問題ではない。誤差補正手順においてレーザビーム335をマスク基板110の限られた区域内にのみ向けることが上述の拘束条件を持たないことよりも影響が低いことは明らかである。更に、ピクセルを書き込むことができる区域は、欠陥を有する区域から遠い場合があるから、誤差補正も同様に影響が低い。一方、レーザビーム335をフォトリソグラフィマスク100の不活性区域160上に向けることによって生じる光透過率変化にはいかなる制限も存在しない。この利点は、上述の欠点を部分的に補償することができる。
【0119】
先の例では、合計変位の3σ数値を最適化した。殆どの場合、フォトリソグラフィマスクの製造業者は、線形結像変換を実施した後に、x方向又はy方向の最大許容偏位(3σ数値)を示すことによって自らのマスクの特性を指定する。以下では、この仕様をX/Y仕様と呼ぶことにする。X/Y仕様特性の最適化は、目的汎関数内に不連続条件を含めることを必要とし、それによって最適化問題の解はより複雑になる。従って、ここでは、フォトリソグラフィマスク100の活性区域150内にピクセルを書き込まないという条件を満たすために、別の方法を提供することにする。所定の方法は、式41の目的汎関数内の

変位の異なる成分に異なる重みパラメータwiを割り当てることになる。偶数のインデックスiを有する重み付けパラメータw2*iは、パターン要素のx方向の変位を制御することを可能にし、奇数のインデックスiを有する重み付けパラメータw2*i+1は、パターン要素のy方向の変位を制御する。式41の目的汎関数は、重み付けパラメータwiの導入の後に次式に変形される。

【0120】
iを判断するのに必要とされる最適化手順を実行する方法を図10に提供する。本方法は、ブロック1000で始まる。ブロック1010では、重み付けパラメータw0=0及びその変動限界:

及び

並びに

及び

が定義される。ブロック1020で反復インデックスkを定めた後に、1030においてx方向及びy方向における重み付けパラメータの一般的な形式が定義される。ブロック1040では、式42内に定義される目的汎関数が最小にされる。判断ブロック1050では、生じる変位φiが、所定の仕様制限φthresを超えたか否かが判断される。この条件が満たされた場合には、ブロック1060において、この時点での重み付けパラメータ:

及び

が、重み付けパラメータwx及びwyに対する解とされ、本方法は、ブロック1070で終了する。この条件が満たされなかった場合には、ブロック1080において、どの方向が線形結像変換によって補正することができる誤差の補正の後に得られる変位変化の最大偏位(3σ数値)を有するかが判断される。次に、判断ブロック1090において、この方向が、同様に判断ブロック1050の変位条件を満たすか否かが判断される。この判断が真である場合には、ブロック1100において、この時点での重み付けパラメータ:

及び

が、重み付けパラメータwx及びwyに対する解とされ、本方法は、ブロック1070で終了する。この判断が正しくなかった場合には、判断ブロック1110において、最大3σ値を有する方向(最悪の方向)がx方向又はy方向のいずれであるかが判断される。ブロック1120では、最悪の方向がx方向であった場合の反復インデックスk+1に対する重み付けパラメータが定義され、ブロック1130では、最悪の場合の方向がy方向であった場合の反復インデックスk+1に対する重み付けパラメータが定義される。次に、本方法は、ブロック1030に戻り、ブロック1040において、修正された重み付けパラメータを用いて式42の目的汎関数が再度解かれる。
【0121】
図11aは、マスク100の活性区域150内の位置合わせ誤差の補正のために使用されるレーザビーム335を向けずに位置合わせ誤差を補正することに関するこの第2の例の根底にある位置合わせ問題を示している。図11bは、線形結像変換を実施した後の残留位置合わせ問題を表す。図11aの位置合わせ問題の計測3σ数値は、x方向において9.73nm、y方向において8.52nmであり、絶対xy変位では12.9nmである。線形結像変換を実施することによって位置合わせ誤差の一部分を補正した後に、残留位置合わせ問題の3σ数値は、x方向において6.9nm、y方向において8.1nmであり、それによってxy変位において10.6nmが得られる。位置合わせ誤差のこのマップを図11bに示している。
【0122】
レーザビーム335は、フォトリソグラフィマスクの基板の不活性部分内にしかピクセルを書き込まないので、ピクセルによって基板内に生じる光学強度のより大きい減衰率を許容することができる。図12に表す補正書込マップでは、光透過率変化が10%に制限されている。図12は、この第2の例の問題の解を書込密度マップの形式で示している。図12の書込密度マップは、図10の最適化ループを1回だけ通過することによって得られたものである。
【0123】
図13は、線形結像変換と、補正ピクセルを書き込むためにフォトリソグラフィマスクの不活性区域上にレーザビーム335を向ける段階との両方の適用後の図11aの模擬残留位置合わせ問題を示している。得られる3σ数値によって特徴付けられる推定残留位置合わせ問題は、x方向において5.9nm、y方向において7.3nmであり、絶対変位において9.37nmである。この結果は、x方向において14.5%の改善率をy方向の変位において9.9%の位置合わせ誤差の改善率をもたらし、従って、X/Y仕様では9.9%の改善率しかもたらされず、絶対変位では11.8%の改善率をもたらす。この補正は、x方向においてより良好な結果を生み、X/Y仕様の改善率を決めることに注意すべきである。
【0124】
図14は、最適化ループを数回通過することによる書込密度マップに対する解を示している。図14は、図12に対して、特にy方向に関して有意な書込密度マップ変化を示している。
【0125】
図15は、線形結像変換を実施した後の図10に記載の繰返し最適化工程における残留位置合わせ誤差を表す。最適化された補正工程を実施した後に残留するここでもまた3σ数値によって特徴付けられる推定残留位置合わせ誤差は、x方向において6.8nm、y方向において6.8nmであり、絶対変位では9.7nmである。この結果は、x方向において1%の改善率、及びy方向において15.5%の変位誤差の改善率をもたらし、従って、X/Y仕様において15.0%の改善率、及び絶対XY変位では9%の改善率をもたらす。この場合、得られる残留位置合わせ誤差に関する3σ数値は、x方向とy方向の両方において同じ数値を有する。これは、図10の方法が、x方向における位置合わせ誤差を劣化することなく、図11の例ではy方向である最悪の方向を大きく改善することを明らかにしている。
【0126】
フォトリソグラフィマスクの不活性区域内にピクセルを書き込むだけで、場合として15%のX/Y仕様の改善率が得られることに注意すべきである。この結果は、書込レーザビームによってもたらされる高レベルの許容減衰率の結果である。10%に達する光透過率変化は、マスクの基板内にいくつかの局所亀裂を誘起する場合があるから、比較的過激である。マスク損傷の危険性を回避するために、ピクセルは、各々が必要な数の2分の1のピクセルを含む2つの異なる層でマスク基板内に書き込まれる。
【0127】
図16は、線形結像変換と、マスク基板の不活性区域内に2層でピクセルを書き込む段階との両方の適用後の図11の計測残留位置合わせ問題を提供している。計測結果は、X/Y仕様において10.1%の改善率を示しており、これは、図15の状況で解説したように15%であるシミュレーションによって予測された値よりも小さい。計測結果の分析は、マスク基板内にピクセルを書き込むために適用されたレーザビームパラメータとシミュレーションに使用されたものとが大きく異なっていたことを示している。実験は、レーザビーム335に関する書込条件と環境条件とが完全には維持されない実験室条件の下に実施された。レーザビーム335の較正から位置合わせ誤差の補正のためのピクセル書込までにかなりの期間が経過した。それによって較正されたレーザビームパラメータと実際に適用されたレーザビームパラメータの間に偏位が向けられた。産業環境では、レーザビームパラメータは、より良好に制御されることになる。産業環境では、レーザビームパラメータ又は書込モード署名を更新するために、補正ピクセル書込のあらゆる結果を使用することができる。レーザビームパラメータは、レーザビーム335を用いてマスク基板内に書き込まれるピクセルの方式に独特のものであるから、以下では、レーザビームパラメータを書込モード署名又はモード署名を略してMSとも呼ぶ。MSは、式29の垂直方向の変形要素:

によって表される。
【0128】
X/Y仕様を最適化する方法は、例えば、1つだけの位置合わせ限界方向又は得られる変位の最大値のようなあらゆる特定の目的に対して最適化する手法を示している。この最適化工程は、式42の形式にある目的汎関数の反復解により、更に付加的に重みパラメータの最適化工程の制御によって実施することができる。
【0129】
1つだけのレーザビームパラメータセット又は1つだけの書込モードを用いた位置合わせ誤差の補正は、限られた効率しか持たない。1つの書込モードは、マスク基板のあらゆる点において1つだけの種類又は1つだけの方式の変形しか生じず、その振幅しか変化させない。いくつかの書込モードセット又は異なるレーザビームパラメータセットを使用することにより、マスク基板のあらゆる点において異なる種類又は方式の変形を得るように異なる書込モードを組み合わせることが可能になる。
【0130】
レーザビーム335のパラメータ値は、例えば、レーザ源330の老朽化、レーザビーム335の本質的な時間的ばらつきに起因して、更にはこれらのばらつきの温度、圧力、及び湿度のような環境パラメータへの依存性の理由から絶えず変化するので、レーザビームパラメータ又は書込モードは厳密に制御することができない。これらのばらつきは、誤差補正の精度及びピクセル書込工程の再現性を制限する。数学的な観点からは、それによって最適化空間における自由度が制限される。
【0131】
書込モードセットが利用可能であり、いずれかの書込モードが、ピクセルがマスク基板内にもたらす変形において異なる場合には、個々のピクセルによってもたらされる全体的な変形を制御することにおいて得られる効率は、有意に高いとすることができる。この影響を非常に簡単な例を用いて明らかにする。
【0132】
個々のピクセルの生じた変形の本来の非対称性を有利に使用することができる。この目的のために、同じ書込条件が使用されることになるが、フォトリソグラフィマスクは、個々のピクセルの変形の異なる向きを実質的に得るために、ある一定の角度だけ回転されることになる。フォトリソグラフィマスクを90°だけ回転するのは非常に簡単であり、その結果、レーザビーム又はレーザビームパラメータのいかなる修正もなしに、レーザビームの1つの付加的な書込モードが実質的に得られる。2つの書込モードは明確に定義され、従って、マスク基板上に明確に定義された書込モード署名を有する。
【0133】
図17は、それぞれ0°モード署名及び90°モード署名を有する非回転レーザビーム335及び90°回転されたレーザビームとが使用されるこの例に関するモード署名を示している。この図は、レーザビーム335のMS(モード署名)を提供している。既に上述のように、2Dモデルでは、変形要素:

は、5つが独立成分である8つの成分を有する。5つの独立成分のうちの3つのみがバルクポテンシャルエネルギに影響を与え、従って、レーザビーム335によって生じる変形の本説明において重要である。

の関連する独立成分を提供するために、これらの成分を基本区域αの実質的な変形を実際に示す

を用いて変形する。図17は、要素区域α(黒色の正方形)上にレーザビームを向ける前の初期要素区域αを示している。赤い平行四辺形は、

の3つの成分だけがゼロとは異なる数値を有する得られる正規化要素区域を表す。灰色の平行四辺形は、独立パラメータセットの全ての5つのパラメータを用いた得られる正規化要素区域である。
【0134】
図18aは、誤差補正工程において2つの異なる書込モードのレーザビーム335を使用する影響を明らかにするために適用した計測初期マスク位置合わせ問題を示している。図18aに提供した位置合わせ問題は非常に無秩序な性質を有し、1つのピクセル書込モードしか用いない補正は、この無秩序な性質を22%よりも大きく改善することを可能にしない。これは、このフォトリソグラフィマスクを限界3x層に対する一般的な仕様範囲に収めるには十分ではない。図18bは、線形結像変換を実施した後の図18aのマスク位置合わせ問題を示している。
【0135】
式38を解くことにより、0°書込モード署名及び90°書込モード署名を有する書込モードにおける2つのマップが得られる。
【0136】
図19aは、0°書込モード署名に対する提案補正書込マップを示し、図19bは、90°書込モード署名に対する提案補正書込マップを示している。書込ピクセル密度の和又は両方の書込モードにおける光学強度の減衰率を5%に制限する条件が式38に付加されている。図20は、図19aと19bの両方のモードが加算された場合の補正書込マップを示している。両方のモードにおいて、ピクセルがマスク基板の活性区域、並びに不活性区域内に書き込まれていることに注意すべきである。
【0137】
図21aは、図19aに示している0°書込モード署名を適用することによる位置合わせ補正によって生じる変化を示している。更に、図21bは、図19bの90°書込モード署名を用いた場合の誤差補正によって生じる変化を示している。最後に図21cは、図20の組合せ書込補正マップを用いて模擬した位置合わせ補正変化を提供している。
【0138】
図21aは、0°書込補正マップがy方向により大きいシフトを生じることを示しており、それに対して図22bは、90°書込補正マップがx方向により大きく生じたシフトをもたらすことを示している。この発見は、図17のこれらのモードにおける書込モード署名の図と一致する。
【0139】
図22aには、図18aの位置合わせ問題に対する両方のレーザ書込モードの組合せ作用の予測を表しており、図22bは、線形結像変換を実施した後の図18aの残留位置合わせ誤差を示している。
【0140】
シミュレーション結果は、光学強度の最大許容減衰率が5%に制限された場合に、43%の位置合わせ誤差の低減を得ることができることを示している。これは単一モードの代わりに2つの書込モードのレーザビームを用いた場合に、位置合わせ誤差補正の量をほぼ二倍にすることができることを意味する。この改善率は、フォトリソグラフィマスクを確実にX/Y仕様範囲内に収める。
【0141】
図23には、図18bの位置合わせ問題の計測改善率を示している。図18bの位置合わせ誤差は、35%だけ減少しており、これは、前節で解説した模擬改善率よりもやや小さい。
【0142】
この例は、位置合わせ誤差の補正のためにピクセルを書き込む場合のマルチモード方式の高い効率を証明している。フォトリソグラフィマスク及び/又はレーザビームの90°の回転は、通常の限界寸法補正(CDC)ツール上に実施することができるマルチモード補正の有利な簡素化である別の有利な方式を定めることを可能にする。いくつかの書込モードの導入もまた、誤差補正機能の有意な拡張をもたらすことができるが、この拡張は、レーザビーム335に対する高度な制御系を有する専用位置合わせ制御(RegC)ツールの開発を必要とする。
【0143】
以下では、位置合わせ補正のためにマスク基板内にピクセルを導入する場合に、CD又は光学減衰率を制御することができることを明らかにする。第1の例は、いかなる有意なCD問題も存在しないか、又はCD情報が利用可能ではない場合に有利である。CD制御の理論から、ピクセル書込がフォトリソグラフィマスクの基板内に一定の遮蔽密度を導入する場合はCD分布は変化しないことになることは公知である。従って、複数のレーザビームパラメータ又は複数の書込モードでピクセルを書き込むために、全ての書込モードにおける全ての書込密度の和がフォトリソグラフィマスクの活性区域にわたって一定であることを保証する1つの追加条件又は拘束条件を添えてレーザビーム335を使用するのが計画である。異なるパルスエネルギを有するレーザビームを集束条件を変化させることなく印加することにより、異なる書込密度を有するが、同時に同じ書込モード署名を有するレーザビーム335の書込モードがもたらされることは既に公知である。
【0144】
この影響を明らかにするために、以下の例では簡略化の理由から2つの書込モードのみを使用する。2つの異なる書込モードを導入する場合には、式41の目的汎関数は次式に変化する:(式43)

一定の書込密度という条件は次式によって表される。

ここで、cは任意の定数である。ここでもまた、簡素化の理由から、ここでCDC比が両方の書込モードにおいて等しいと仮定し、そうでなければ、CD書込の中立性を保証するために、式44内に、例えば、

のような書込密度に対する比例係数を導入することが必要になる。定数cの数値は、照明レベルによって定められ、それによってフォトリソグラフィマスクの基板内にいかなる劣化も誘起されないことが保証される。パラメータcが大きくなることができる程、位置合わせ補正とCD補正の両方においてより良好な改善率に達することができるが、一方、照明波長における光学強度の減衰率はより有意になる。
【0145】
式44を使用することにより、式43の目的汎関数は、1つの書込モードの問題に変形することができる。

式45は、単一の書込モードに関する式41の目的汎関数と同じ手法で解くことができる。
【0146】
以下の例では、図4の位置合わせ問題を前と同様に使用することにする。式45の最適化工程では、ピクセルは、フォトリソグラフィマスクの基板内に導入され、又は書き込まれ、レーザビーム335は、2つの異なるパルスエネルギを有するか又は2つの異なるレーザビームパラメータセットを用いて印加される。0.52μJのパルスエネルギを有するレーザビーム335を通常又は標準書込モードと呼び、0.36μJのパルスエネルギを有するレーザビーム335を低位置合わせ(LowReg)書込モードと呼ぶことにする(表2及び表3を参照されたい)。両方の書込モードにおけるパルス長は、8psである。パルス繰返し数は50kHzである。焦点は、両方の書込モードにおいて920〜950μmである。これらの電力密度において有意な量の自己集束が存在するので、焦点サイズの数値は公称値である。単一のピクセルを書き込むのに印加されるパルス数は1である。
【0147】
x方向及びy方向に隣接するピクセルの間の距離は、1〜10μmである。前に解説した例に加えて本明細書に提供する更に別の例では、フォトリソグラフィマスクの基板内にピクセルを書き込むために、約800nmの波長を有するTi:サファイアレーザ系又は周波数二倍化レーザパルスを有するNd−YAGレーザ系を使用することができる。
【0148】
LowReg書込モードの位置合わせ変化は、通常書込モードのものよりも約4倍小さいことに注意すべきである。前の段落で既に示したように、LowReg書込モードは、通常書込モードにおけるものよりも小さいピクセル当たりのパルスエネルギを有するレーザビーム335によるピクセルの書込を定める。従って、LowReg書込モードは、同じ書込密度において通常書込モードの適用よりも小さいマスク基板の膨張をもたらす。通常書込モードとLowReg書込モードの間のマスク基板の膨張におけるこの大きい差異に関する理由は、LowRegパルスエネルギは、光学破壊の閾値に近く、それに対して通常モードのパルスエネルギは、この閾値を大きく超えることである。
【0149】
図24は、通常書込モードの署名(左の部分)及びLowReg書込モードの署名(右の部分)を正規化表現で示している。
【0150】
通常書込モードの署名とLowReg書込モードの署名とにおけるこれらの異なるパルスエネルギは、レーザビーム335の2つの書込モードにおいて明確な役割を有するように選択される。強い変形を生じる通常書込モードは、位置合わせ補正のための役割を受け持ち、それに対してLowReg書込モードは、照明波長における光学強度の遮蔽又は減衰をフォトリソグラフィマスクの像視野にわたって保つために通常書込モードによるマスク基板の遮蔽を補完する。
【0151】
通常書込モードの計算補正書込マップを図25aに提供しており、図25bは、LowReg書込モードにおける補正書込マップを示している。図25a及び図25bから、書込密度マップの和が、フォトリソグラフィマスクの基板の活性区域の一定の遮蔽をもたらすことが容易に認識される。図25a及び図25bでは、マスクの照明波長における光学ビームの減衰レベルは、3%であるように選択される。3%の光学減衰率をもたらすピクセルの書込は、網羅的な研究により、この数値がフォトリソグラフィマスクに対する印刷に影響を与えないことが明らかになったことから選択される。3%の一定の減衰率の影響は、フォトリソグラフィマスクの照明に使用される光学強度の照射量の対応する増大によって補償すべきである。
【0152】
図4の位置合わせ誤差の補正の計算改善率は39%である。この百分率は、41%である単一モード補正工程における計算改善率よりも僅かに低い。
【0153】
図25aの補正書込マップは、図6の補正書込マップに類似する。この類似性は、2つの書込モードの役割の選択された作為的な分離という事実を反映している。通常書込モードは、図4の位置合わせ問題の補正に特化され、それに対してLowReg書込モードは、フォトリソグラフィマスクにわたって遮蔽均一性を維持するように機能する。図4の位置合わせ問題の補正のために使用される模擬変化又は予測変化を図26に示している。図6及び図25aの書込補正マップから予想されるように、ピクセル書込によってフォトリソグラフィマスクの基板内に生じるパターン要素のシフトも図7と図26とにおいて類似する。
【0154】
以下の例では、本発明の方法の更に別の用途を提供する。ここで、フォトリソグラフィマスクが図4の位置合わせ問題を有し、付加的にCD均一性(CDU)問題を有すると仮定する。図27aには、CD均一性問題を提供している。図27bは、図27aのCD均一性問題を補正するのに必要なCD補正書込マップを示している。CD補正マップは、既知の限界寸法補正(CDC)比係数及び所定の目標CD値によって判断される。以下では、目標CDは最小のCDであり、CDC比は、光学減衰率のパーセント当たり1.2nmであると仮定する。得られるCD補正マップMCDC(x,y)を図27bに提供している。
【0155】
既に上述のように、図27aのマスクは付加的に図4の位置合わせ問題を有すると仮定する。ここでもまた、簡略化の目的で、異なる書込モードが等しいCDC比を有すると更に仮定する。この仮定により、式44では単純に定数であった目標密度での値の要素区域α内へのCD補正の書込のために使用される書込モードの平均値としての指定が可能になる。フォトリソグラフィマスクの活性区域の外側では、書込密度のあらゆる挙動を選択することができる。簡略化の理由から、積算書込密度に対して、5%である目標減衰率に対して選択されたものと同じ条件を同様に選択する。
活性区域内:

不活性区域内:aα=5 (46)

【0156】
ここで式45の目的汎関数を式46の拘束条件を用いて解く。この最適化の結果をレーザビーム335の第1の書込モードに対して図28aに提供し、第2の書込モードに対して図28bに提供しており、図28cは、図28aと図28bとの組合せ補正書込マップを示している。
【0157】
これらの図から、第1の書込モードの書込密度と第2の書込モードの書込密度との和が、CD補正に必要な活性区域内へのピクセル書込に正確に必要とされることを容易に認めることができる。式45及び46の最適化工程からもたらされる位置合わせ誤差の改善率推定値は、36%であり、これは、ここでもまた、単一書込モードを用いた場合に可能な最良の改善率(図7の解説を参照されたい)に非常に類似する。この発見は、レーザビーム335に対する第2の書込モードを使用することにより、最適化空間における自由度が増大することから理解可能である。この例では、この機能は、CD均一性を改善するのに特化される。得られるCDUは、入力CDUデータの精度を有し、ピクセル書込工程の安定性の範囲にあって完全でなければならない。
【0158】
シミュレーションからもたらされた図4の残留位置合わせ問題を図29に示している。予想通りに、図28の残留位置合わせ問題は、図7におけるものと同じ特徴を有する。しかし、一方で図28a及び図28bの補正の書込と、他方で図6の補正の書込とは、図28a及び図28bの書込補正マップを用いて図27bのCD均一性を同時に補正するという付加的な問題の理由からより大きく異なる。
【0159】
マルチモード方式を用い、かつ位置合わせ誤差の80%を潜在的に除去することが可能である。使用する書込モードの可能な選択肢は、0°モード署名を有する通常書込モード及び90°モード署名を有する更に別の通常書込モードの適用、並びに第3の書込モードとしてのLowReg書込モードの適用とすることができる。通常書込モード及びLowReg書込モードにおけるパラメータ値を表2及び表3に要約している。位置合わせ誤差とCD均一性誤差の両方の改善率に関する高い可能性は、図4の非常に系統的な初期位置合わせ問題の結果である。
【0160】
当業者は、フォトリソグラフィマスクの位置合わせ問題に関しての本発明の方法の適用が上記に解説した例に限定されないことを認めるであろう。これらの例は、フォトリソグラフィマスクの位置合わせ問題の解決のための本発明の原理の有益な態様のうちの一部を示すためだけに提供したものである。
【0161】
5.3.CDU問題
以下の例では、本発明の方法を関連の限界寸法均一性(CDU)問題に適用することにする。「理論的背景」の部分の式29は、書込密度振幅:

及び垂直方向lの変形要素:

を有するレーザビーム335の適用によって生じるノード変位ξiを表す。上記に解説した位置合わせ問題の補正と同様に、CD補正のために、ピクセルがフォトリソグラフィマスクの基板内に同様に書き込まれる。従って、あらゆる所定のCDC問題に対して、ピクセル書込から生じる変位を計算するために、式29を使用することができる。CDC工程から生じる変位は、フォトリソグラフィマスクのパターン要素の位置を変化させる場合があり、恐らくはマスクの性能を劣化させる可能性がある。以下では、パターン要素の位置に悪影響を与えることなく、又は言い換えれば、CD均一性問題を補正する間に位置合わせ誤差を導入することなく、如何にCDCを実施することができるかに対して解説する。
【0162】
一般的なCDC工程は、レーザビーム335に対する複数の書込モードの適用を必要としない。それとは逆に、CDC工程は、プロセスウィンドウ(PW)とも呼ぶ単一書込モードのみを用いて実施される。式29及び32を使用することにより、CD補正における書込モードにより、重要な位置にあるパターン要素の位置に生じる変化を予測することができる。単一のCDC書込モードでは、変位は、次式によって与えられる。

ここで、行列Φijは、式40及び41に定義されている。
【0163】
一般的なCDCタスクは、フォトリソグラフィマスク100の活性区域150であるフォトリソグラフィマスクの像視野にわたるレーザビーム335によるピクセル書込を包含する。通常は、フォトリソグラフィマスク100の基板110の不活性区域160内にはいかなるピクセルも書き込まれない。CD補正では、ピクセルは、一般的にパターン要素から約3.175mmの距離を有するフォトリソグラフィマスクの基板の深さ又は高さの中間部に書き込まれる。この例では、マスク基板の深さ又は高さは6.35mmであると仮定している。照明のために使用される対物系は、空気中で0.25のNAを有し、フォトリソグラフィマスク100の基板110内で約0.17のNAを有する。簡単な幾何学形状の考察から、フォトリソグラフィマスクの照明の全てを均一に遮蔽するために、生成される遮蔽要素は、パターン要素区域よりも約0.5mm幅広でなければならないことを示すことができる。照明CD補正の均一な遮蔽を保証するために、一般的に、ピクセルは、パターン要素区域を1mmだけ超える区域内に書き込まれる。
【0164】
以下では、式47及びフォトリソグラフィ照明系のスキャナ又はステッパによって実行される線形結像変換との組合せで、より小さい量の生じた位置合わせ変化しか残さない変形を生成するために、ピクセルは、不活性区域内にも書き込まれる。言い換えれば、生じた位置合わせ変化のアポディゼーションを生成することが目的である。この方式をスマートアポディゼーション(smart APO)と呼ぶ。この名称は、単純な減衰周縁部に従うピクセル書込を既にアポディゼーションとして使用することができることから選択したものである。式47に類似して、アポディゼーションピクセルの書込によって生じる位置合わせ変化は、次式になる。

【0165】
ここでは、CDC工程に使用されるものとは異なるアポディゼーションタスクのためのレーザビーム335の書込モードを選択することができると仮定する。以下では、この書込モードをアポディゼーション書込モードと呼ぶ。通常、この書込モードは、レーザビーム335の高電力パルスを使用する。異なる書込モードを使用する理由は、例えば、アポディゼーション書込収量の増大、又はアポディゼーション補償のための最適化手段である。従って、目的は、次式の目的汎関数を最小にするアポディゼーション振幅:

と線形結像変換パラメータ又はスキャナ補償パラメータsjとを求めることである。

【0166】
式49は、簡単な最適化問題である。アポディゼーション振幅:

は、フォトリソグラフィマスク100の基板110の不活性区域160のセル内でのみ定義される。ここでスマートアポディゼーション手順の効率をいくつかの例に基づいて明らかにする。
【0167】
第1の例では、標準試験書込から生じるアポディゼーションを示している。標準試験書込は、指定されたPW(プロセスウィンドウ)における書込均一性及び生じた変形を制御するように設計される。図30は、矩形の灰色区域内で、光学強度の2%の減衰率を生じる一定の書込密度を示している。
【0168】
図31aは、試験CDC書込によって生じる計測位置合わせ変化を示しており、図31bは、線形結像変換を実施した後の残留位置合わせ変化を示している。図31aでは、位置合わせ誤差の3σ数値は、x方向において41.5nmであり、y方向において69.2nmである。線形結像変換(S/O補正)を実施した後に、x方向において5.4nm、y方向において14.9nmの残留誤差が残る。実証目的で、代表的な試験書込を非常に過激であるように選択し、この書込は、明確に有意な位置合わせ変化を生じる。試験ピクセルは、フォトリソグラフィマスクの活性区域にわたって均一に書き込まれるので、得られる位置合わせ変化の大部分は、フォトリソグラフィ照明系のスキャナによって(又はステッパにおいて)実施される線形結像変換によって補償することができる。
【0169】
CDC書込モード署名は、式47から既知であるから、図30の標準試験書込マップから生じる位置合わせ変化を模擬することができる。このシミュレーションの結果を図32a及び図32bに提供している。シミュレーション結果は、図31a及び図31bの計測位置合わせ変化との非常に良好な一致を示している。この一致は、それぞれの測定を実施せずに生じた位置合わせ変化を予測することができることを明確に明らかにしている。
【0170】
この結果により、残留位置合わせ誤差を最小にするのに必要とされるアポディゼーションの量を計算することができ、すなわち、CDC工程によって生じる位置合わせ変化は測定されず、代替的に、位置合わせ変化は模擬され、得られた結果は、最良のアポディゼーションパラメータの計算のために使用される。この目的のためには、フォトリソグラフィマスクの活性区域内の位置合わせ変化を考慮するだけでよい。
【0171】
図33aは、フォトリソグラフィマスクの活性区域内の模擬位置合わせ変化を示している。3σ数値によって特徴付けられるマスクの活性区域内の模擬位置合わせ変化は、x方向において22.5nmであり、y方向において47.1nmである。図33bは、フォトリソグラフィ照明系のスキャナによって線形結像変換が実施された後の残留位置合わせ誤差を提供している。残留位置合わせ誤差は、x方向において2.1nmであり、y方向において6.2nmである。
【0172】
このデータを用いて、CD補正によって生じる位置合わせ変化を低減することになるアポディゼーション書込マップを計算することができる。図34aは、計算アポディゼーション書込マップを示している。フォトリソグラフィマスクの不活性区域内での5%の光学強度変化が、このアポディゼーション書込マップの計算において許容された。
【0173】
図34bは、不活性マスク区域内へのアポディゼーションピクセル書込によって生じるフォトリソグラフィマスクの活性区域内の位置合わせ変化を示している。
【0174】
図35aは、CD補正(図33a)の位置合わせ変化及びアポディゼーション書込(図34)の位置合わせ変化から生じた位置合わせ変化を提供しており、図35bは、線形結像変換を実施した後の図35aの残留位置合わせ変化を示している。
【0175】
CDC書込マップ及びAPO書込マップがマスク基板に書き込まれた後に、活性区域内の模擬位置合わせ変化(3σ数値)は、合計でx方向において27.3nm、及びy方向において54.3nmになる。線形結像変換(S/O補正)が実施された後に、x方向において1.72nm、y方向において1.78nmの残留位置合わせ誤差が残る。これは、図31の状況に対して71%の改善率である。従って、フォトリソグラフィの区域内の残留位置合わせ誤差は、3倍から4倍だけ低減される。すなわち、アポディゼーション工程は、CD補正工程によって導入される位置合わせ誤差を大幅に低減することができる。
【0176】
次に、更に別の例において、標準アポディゼーション手順の影響を明らかにする。標準アポディゼーション手順は、フォトリソグラフィマスクの不活性区域内へのCDCレベルからゼロ書込密度を有するレベルに減衰するピクセル書込を含む。
【0177】
図36aには、この減衰アポディゼーションの書込を示している。図36bは、図36aの減衰アポディゼーション書込マップによって生じる位置合わせ変化のシミュレーション結果を示している。図36bは、活性区域の角における位置合わせ変化の図34bと類似の補償を示している。
【0178】
以下では、CDC書込によって生じる位置合わせ誤差に対する減衰アポディゼーションの影響を分析することにする。図37aは、図30の試験CDC書込と図36aの減衰アポディゼーションの両方を組み合わせた書込マップを提供している。図37bは、図37aの書込マップの得られる位置合わせ変化を示している。対応する模擬を実行することによって得られたフォトリソグラフィマスクの活性区域内で得られる位置合わせ変化(3σ数値)は、x方向において26.3nmであり、y方向において52.3nmである。図37cに示しているように、線形結像変換(S/O補正)を実施した後に、残留位置合わせ誤差は、x方向において2.1nmであり、y方向において3.8nmである。それによって図33aに例示しているフォトリソグラフィマスクの活性区域内の模擬位置合わせ変化と比較して38%の改善率がもたらされる。
【0179】
すなわち、減衰アポディゼーションを適用することにより、フォトリソグラフィマスクの活性区域内の位置合わせ誤差の1.5倍の低減を得ることができる。この結果は、非常に対称的で均一な試験CDC書込が使用されたことに起因して並外れて良好である。一般的な場合には、得られる改善率は5%から30%まで変化するが、この改善率でさえも、減衰アポディゼーションを実行する手法を正当化するには十分な意味を有する。減衰アポディゼーションに関する書込モード署名の正確な値を把握する必要はなく、いかなる付加的な計算も必要ではない。これらの項目は、呈示した方式の重大な利点である。フォトリソグラフィマスクの不活性区域内の均一な減衰アポディゼーションを書き込むことのみが必要である。一方、スマートアポディゼーション方式は、より有効であり、かつ書込時間をそれ程必要としない補償法を確かに提供する。
【0180】
次に、第2の例において、スマートアポディゼーションを実際のCDCタスクに如何に適用することができるかを明らかにする。図38aは、フォトリソグラフィマスクの活性区域に対するCD補正書込マップを示している。図38bは、CD補正ピクセルの書込によって生じる位置合わせ変化を提供しており、図38cは、線形結像変換(S/O補正)が実施された後の図38bの残留生じた位置合わせ変化を示している。
【0181】
CD補正書込密度は比較的低く、僅か2.1%の最大光学強度減衰率しか持たず、平均減衰率は1%未満である。CDCタスクは、フォトリソグラフィマスクの活性区域内でx方向15.2nm、y方向に35.7nmの位置合わせ変化を生じる。下記の図40aのCDCタスクと比較してこの小さい書込密度しか持たないが、図38aのCDCタスクは、比較的有意な位置合わせ変化を生じる。線形結像変換(S/O補正)の実施後は、残留位置合わせ変化は、合計でx方向において4.6nm、y方向において8.4nmになる。
【0182】
図39aは、図38aのCDCタスクに対応するアポディゼーションマップを示している。図39bは、フォトリソグラフィマスクの活性区域内に図39aのアポディゼーションマップによって生じる位置合わせ変化を示しており、図39cは、線形結像変換を実施した後の残留位置合わせ変化を示している。図39aのアポディゼーションタスクと組み合わされた図38aのCDCタスクの得られる残留位置合わせ変化は、x方向において3.15nm、y方向において3.54nmの残留位置合わせ変化(3σ数値)をもたらす。改善率は58%であり、これは、図38bに提供しているCD補正によって生じる位置合わせ変化の約半分である。
【0183】
次に、第3の例として、別の一般的なCDCタスクに対してスマートアポディゼーション方式の影響を明らかにすることにする。図40aは、一般的なCDC問題におけるフォトリソグラフィマスクの活性区域に対するCD補正書込マップを示している。図40bは、CD補正ピクセルの書込によって生じる位置合わせ変化を提供しており、図40cは、線形結像変換(S/O補正)が実施された後の図40bの残留生じた位置合わせ変化を示している。
【0184】
CDC書込密度によって生じる最大減衰率は、2.8%であり、平均してCDC書込密度は、露光波長において光学強度の1.7%の減衰率を導入する。この減衰率変化は、図38aのCDCタスクのものよりもかなり大きい。活性区域内の模擬位置合わせ変化(3σ数値)は、x方向において12.2nmであり、y方向において53.4nmである。CD補正の書込によって生じる位置合わせ変化も、図38aのCDCタスクのものよりもかなり大きい。線形結像変換(S/O補正)の実施後に、x方向において2.3nm、y方向において7.0nmの位置合わせ変化が残る。図40aのCDCタスクにおける残留位置合わせ変化が、図40aのタスクにおけるものよりも小さいことが分る。これは、より均一なCDC書込マップに起因する。
【0185】
図41aは、図40aのCDCタスクに対して計算されたアポディゼーションマップを示している。図41bは、図41aのアポディゼーションマップによってフォトリソグラフィマスクの活性区域内に生じる位置合わせ変化を提供している。
【0186】
図42aは、図40aのCDCタスクと図41aの計算アポディゼーションタスクの両方を組み合わせた書込マップを提供している。図42bは、図42aの書込マップの得られる位置合わせ変化を示し、図42cは、線形結像変換(S/O補正)を実施した後の残留位置合わせ変化を示している。活性区域へのCDC及びAPO書込の適用後の模擬位置合わせ変化は、x方向において15.6nmであり、y方向において15.6nmである(3σ数値)。S/O補正のための線形結像変換の実施後に、残留位置合わせ変化は、x方向において1.5nmであり、y方向において1.95nmである。このデータは、図40aのCDCタスクによって生じる位置合わせ変化の69%の改善率を示している。図40aのCDCタスクの改善率は、図38aのCDCタスクにおけるものよりも高く、従って、得られる標準偏差(3σ)も有意に小さい。従って、図40aのCDCタスクによって向けられる残留位置合わせ変化を3倍だけ低減することができる。
【0187】
図43では、模擬によって得られた図42の結果を実験的に検査する。図43aは、図41aのフォトリソグラフィマスクに実際に適用される図40aのCDCタスクの両方を組み合わせた書込マップを提供している。図43bは、図43aの書込マップから向けられる計測位置合わせ変化を示しており、図43cは、図43bの位置合わせ問題に対して線形結像変換(S/O補正)を実施した後の残留位置合わせ変化を示している。
【0188】
CDCとAPOとの補正書込マップがマスク基板内に書き込まれた後の位置合わせ変化の測定は、x方向において15.1nm、y方向において65.0nmの位置合わせ変化(3σ数値)をもたらす(図43b)。線形結像変換(S/O補正)の実施後に、残留位置合わせ変化は、x方向において1.45nmであり、y方向において2.31nmである(図43c)。このデータは、図40aのCDCタスクによって生じる位置合わせ変化の67%の改善率を示している。
【0189】
次の例は、必要とされるマグニチュードの光学減衰率を与え、同時にCD補正によって導入される位置合わせ劣化を最小にするマルチモードCDC書込の適用を明らかにする。以下の推定を簡素化するために、位置合わせ変化の最適化のために2つの書込モードだけを適用する。
【0190】
図30のCDCタスクに関する例を再度使用する。フォトリソグラフィマスクの活性区域内に得られる位置合わせ変化を図33aに示している。この図から、S/O補正のための線形結像変換を実施した後の残留位置合わせ変化が対称ではないことに注意すべきである。位置合わせ誤差(3σ数値)は、x方向には2.1nmであり、それに対してy方向には6.2nmである。この極端な場合には、選択される書込モードは、x方向と比較してy方向により大きい膨張を生成する。5.2部(「位置合わせ問題」)と同様に、ここでは標準のマスクの向きを用いてピクセルのうちの半分に書込み、次に、フォトリソグラフィマスクを90°だけ回転させ、それによってこのマスクの向きでピクセルうちの残りの第2の半分を書き込むことにより、得られる劣化を最小にする。上記で導入した用語を使用することにより、この状況をピクセルのうちの第1の半分は、0°モード署名で書き込まれ、ピクセルのうちの第2の半分は90°モード署名で書き込まれると説明することによって表すことができる。
【0191】
図44aは、試験CDC書込マップのピクセルのうちの半分が、0°モード署名を有するレーザビーム335を用いて書き込まれた場合に生じる位置合わせ変化を示しており、図44bは、試験CDC書込マップのピクセルのうちの半分が、90°モード署名を有するレーザビーム335を用いて書き込まれた場合に生じる位置合わせ変化を示している。図44a及び図44bは、予測可能な結果を示している。独自のモード署名を有する全てのモードは、同じ変位を生成するが、図44bは、図44aに対して90°回転されている。図44aの図と図44bの図は、選択された格子がx方向及びy方向に関して非対称であったことに起因して完全には同一に見えない。2つの書込モードに分割されたCDCタスクの全ての書込の後により良好な結果が予想される。
【0192】
図45aは、ピクセルのうちの第1の半分が0°モード署名を用いて書き込まれ、ピクセルのうちの第2の半分が90°モード署名を用いて書き込まれる場合に、図30の試験CDC書込によって生じる位置合わせ変化を示している。図45bは、S/O補正のために線形結像変換が実施された後の残留位置合わせ変化を示している。
【0193】
図45bの残留位置合わせ変化は、図34bのものよりも小さい。残留変位(3σ数値)は、x方向において2.9nmであり、y方向において3.0nmである。予想通り、前のページで解説したように単一書込モードを用いたCD補正と比較して2倍の改善率が存在する。
【0194】
図44の例では、2つの書込モードの間の分割は50:50であった。以下では、生じる位置合わせ変化に対するCD補正の最小の影響を得るために、0°モード署名を用いたCD補正における書込モードと90°モード署名を用いたCD補正における書込モードの間の最適な分割を計算する。2つの書込モードの適用ための式47の拡張は、次式である。

あらゆる要素区域α内で要求CDC書込密度を得るための拘束条件は、次式で表される。

得られる式50の変位及び式51の密度条件は、次式の形式の目的汎関数をもたらす。

【0195】
式52の目的関数の最適化は、非常に興味深い解を与える。0°モード署名を有する書込モードにおけるCD補正書込マップを図46aに表す。図46bは、90°モード署名を有する書込モードにおけるCD補正書込マップを示している。図46aのCD補正書込マップによって生じる得られる位置合わせ変化を図47aに示しており、それに対して図47bは、図46bのCD補正書込マップに関するこの結果を示している。
【0196】
計算された組合せ位置合わせ変化を図48aに提供しており、図48bは、S/O補正のための線形結像変換の実施後の残留位置合わせ変化を表す。図48bにおける残留変位(3σ数値)は、x方向において2.3nmであり、y方向において2.3nmである。この結果は、2つの書込モードの単純な50:50分割よりも33%良好である。
【0197】
0°及び90°のモード署名を有する2つの書込モードへの最適な分割は、通常CDC書込と比較して3倍だけ位置合わせの劣化を低減することを可能にすると要約することができる。一方、この方式は、通常CDC書込とほぼ同じ収量を有する。
【0198】
更に、改善率の全ては、実際には書込モード署名の非対称性から生じることに注意すべきである。従って、書込モード署名が対称である場合には、改善率はかなり低い可能性がある。一般的に、通常のCD補正は、非対称のモード署名を有し、従って、0°及び90°のモード署名を有する2つの書込モードへの上記に解説した分割の適用を可能にする。実際、結果は上記に提供したものよりも実際に広範囲にわたる。CDC工程は、書込モードの異なる対に分割することができる。提供する例は、根底にある原理を示すためにのみ選択したものである。
【0199】
次の例では、前の例を用いて解説した方式を今度は図38aのCDC問題に適用する。0°及び90°のモード署名を有する2つの書込モードへの最適な分割に起因して得ることができる改善率を調べることにする。
【0200】
図49aは、図38aのCDC問題に対する0°モード署名を有する書込モードにおけるCD補正書込マップを示しており、図49bは、同様に図38aのCDC問題に対する90°モード署名を有する書込モードにおけるCD補正書込マップを提供している。両方の図における補正書込マップは、式52の目的汎関数を最小にすることによって計算したものである。
【0201】
図50aは、2つの書込モードの間の最適な分割によって生じる位置合わせ変化を示しており、図50aは、線形結像変換を実施した後の残留位置合わせ変化を表す。得られる生じた位置合わせ変化(3σ数値)は、x方向において18.2nmであり、y方向において17.3nmである。線形結像変換を実施した後に、残留位置合わせ変化は、x方向において4.1nmであり、y方向において3.8nmである。従って、CDC書込タスクを2つの異なる書込モードに分割することにより、残留位置合わせ変化を単一書込モードを用いてCD補正を実施するのに対してほぼ4倍だけ低減することができる。
【0202】
以下では、再度図38aのCDC問題を今度は異なる書込モードセットを用いて解く。前の5.2部「位置合わせ問題」において既に解説したように、異なるパルスエネルギは、レーザビーム335の異なるモード署名をもたらす。異なるモード署名は、主にその生じた変形のマグニチュードにおいて異なる。極小の位置合わせ変化しか持たないCDCタスクを実行する場合には、一般的に、いわゆるLowReg書込モードが使用される。一般的に、LowReg書込モードは、通常書込モードを使用する場合よりも2倍から4倍小さいマスク基板の膨張を生じるが、同じCDC遮蔽をもたらす。LowReg書込モードにおける収量はかなり低く、従って、一方で必要とされる生産率と、他方で位置合わせ変化の容認レベルとの間で常に妥協点を見出さなければならない。以下では、二重モードの組合せが更に良好な結果をもたらすことができることを示すことにする。
【0203】
図51aは、全体的なCD補正がLowReg書込モードを使用することによって実施される場合に生じる位置合わせ変化を示している。図51bは、線形結像変換が実施された後の残留位置合わせ変化を示している。得られる位置合わせ変化は、標準PW(プロセスウィンドウ)から生じるものよりも小さい。位置合わせ変化は、x方向において9.6nmであり、y方向において11.1nmであると定量化され、線形結像変換(S/O補正)の実施後に、x方向において3.7nm、y方向において4.9nmの残留位置合わせ誤差が残る。これは、標準PWにおけるものよりも約2倍小さい。式52と類似の最適な分割は、次式の目的汎関数から定義される。

【0204】
演算子:



及び振幅:



は、それぞれ標準又は通常PW及びLowRegPWにおける式の成分を表す。標準PW及びLowRegPWにおけるレーザビームのパラメータを表2及び表3に提供している。
【0205】
図52は、標準又は通常書込モードとLowReg書込モードとに分割された図38aのCDC問題に対する式53の解を提供している。図52aは、標準又は通常書込モードにおけるCD補正書込マップを示しており、図52bは、LowReg書込モードにおけるCD補正書込マップを示している。
【0206】
線形結像変換を実施した後に、2つの書込モードの間で最適化された分割は、x方向において1.4nm、y方向において1.6nmの残留位置合わせ誤差をもたらす。この誤差は、単純にLowReg書込モードを用いた場合の残留位置合わせ誤差よりも60%小さい。標準書込モードにおける高い収量という事実を考慮すると、標準書込モードとLowReg書込モードとの組合せを用いた場合に、CD補正工程の全体的な生産率のある程度の増大を得ることが更に可能である。この例は、標準書込モード及びLowReg書込モードの適用が、生じた位置合わせ変化を制御するための強力なツールでもあることを明確に明らかにしている。これは、CDCタスクが非常に小さい位置合わせ変化を必要とする場合に使用することができる。
【0207】
次に、第3の方式において、スマートアポディゼーションと安全なCDCとの組合せを提供することにする。安全なCDC手順上へのスマートアポディゼーション手順の単純な実施は、ある程度の改善率を与えることができる。しかし、CDC書込タスクと不活性区域内へのピクセル書込との分割の最適化は、より良好な結果を得ることを可能にする。標準書込モードとLowReg書込モードとへの分割は、不活性区域内の書込に向けては最適ではないことは明らかである。しかし、この選択は、計算労力を低く保つために、更には得られた結果を過去の結果と比較することができるように行ったものである。最も一般的な観点からは、残留位置合わせ変化を最小にするために、フォトリソグラフィマスクの不活性区域内への書込における振幅を得て、マスクの活性区域に比例してこれらの振幅を分割する必要がある。
【0208】
この方式のための式53の拡張は、次式の目的汎関数をもたらす。

この方式に関する例として、再度図38aのCDC問題を式54の最適化のために使用する。図53は、得られた書込モードの分割を提供している。図53aは、標準又は通常書込モードにおけるCD補正書込マップを示しており、それに対して図53bは、LowReg書込モードにおけるCD補正書込マップを示している。書込モードのこの分割は、理論的には、結果としてx方向において0.36nm、及びy方向において0.38nm程度まで小さい位置合わせ変化(3σ数値)を得ることを可能にする。
【0209】
これは、完全な達成であり、事実上いかなる位置合わせ変化も誘起しない。上記に解説した全ての異なる方式から得られた図38aのCDC問題に対する結果を以下の表に要約する。
【0210】
(表7)

【0211】
表7は、スマートアポディゼーション、2つの書込モードに分割されたタスク、及びLowRegPWがほぼ同じ利点をもたらすことを示している。2つの回転された書込モードへの分割は、より時間効率的である。スマートCDC工程は、最も高い改善率を与え、事実上いかなる新しい又は付加的な位置合わせ変化も誘起しない。
【0212】
当業者は、本発明の方法の用途が上記に解説したCDU問題に限定されないことを認めるであろう。それとは逆に、提供した例は、フォトリソグラフィマスクのCDU問題という観点から、本発明の原理の様々な態様のうちの一部を明らかにすることのみを意図したものである。特に、位置合わせ問題とCDU問題とにおける上述の分離は任意のものであり、本発明の方法は、フォトリソグラフィマスクの両方の方式の誤差を同時に補正するために適用することができることを強調しておきたい。
【0213】
5.4.重ね合わせ問題
最後に、本発明の方法は、重ね合わせ問題に適用することができる。本明細書の第2部で既に上述したように、殆どの場合、フォトリソグラフィマスクのパターン要素の絶対設計位置は、層のスタックを通じた隣接層上のパターン要素、又は同じ層上にあるが、2つ又はそれよりも多くの異なるフォトリソグラフィマスクから印刷されたパターン要素の相対位置程には重要ではない。これは、二重パターン化方式を用いて印刷されたパターン要素にも関連する。
【0214】
重ね合わせ補正方式を以下にマスクB及びマスクCと呼ぶ2つの異なるフォトリソグラフィマスクだけを用いて例示する。解説する方式は、2つよりも多くのフォトリソグラフィマスクの重ね合わせ誤差の補正に適用することができることを認めるであろう。
【0215】
図54aは、マスクBの初期位置合わせ問題を提供しており、図54bは、線形結像変換の実施後の図54aの残留位置合わせ問題を示している。図54aのマスクBにおける初期X/Y仕様は、6.59nmである。
【0216】
図55aは、マスクCの初期位置合わせ問題を示しており、図55bは、線形結像変換の実施後の図55aの残留位置合わせ問題を示している。図55aのマスクCにおける初期X/Y仕様は、8.52nmである。
【0217】
図54及び図55から、マスクBの初期位置合わせ問題(図54)とマスクCの初期位置合わせ問題(図55)とが非常に類似して見えることが分る。S/O補正のための線形結像変換の実行は、根底にある位置合わせ問題のこの類似性を低減する。しかし、図54bと図55bは、依然として類似の挙動を示している。
【0218】
図56は、マスクB及びCの初期重ね合わせ問題を提供している。マスクB及びCの重ね合わせ誤差に関する初期X/Y仕様は、14.03nmである。重ね合わせ問題のこの大きい値は、マスクBとマスクCの間に重大な不整合が存在することを示している。残留する有意な差は補正すべきである。
【0219】
両方のマスクにおいて可能な最良の補正を得るために、単一書込モードに関するモード目的汎関数(式40)を最小にすることにする。図57aは、マスクBに対する計算補正書込マップを示しており、図57bは、マスクCに対する計算補正書込マップを提供している。図57aに提供している補正書込マップの平均書込密度又は平均光学強度減衰率は、マスクBにおいて2.35%であり、図57bに示しているマスクCにおいて2.65%である。得られる残留X/Y仕様は、マスクBにおいて4.33nmであり、マスクCにおいて5.28nmである。
【0220】
しかし、これは、マスクBとマスクCの間の重ね合わせ問題を左右するパラメータではない。この目的のためには、マスクB及びマスクCのX/Y仕様又はこれらのマスクの位置合わせ差を把握することが必要である。
【0221】
得られるマスクBとマスクCの重ね合わせX/Y仕様は、8.83nmであり、これは、個々のマスクのXY仕様よりも良好である。しかし、この数値は、依然として過度に大きく、改善すべきである。
【0222】
ここでの目的は、マスクBとマスクCの間の重ね合わせを特に改善することになる補正書込マップを見出すことである。これは、目的が、マスクBを所定の設計と最良に適合するようにもたらすことではなく、マスクCとの最良適合を達成することであることを意味する。
【0223】
図59は、マスクBとマスクCの間の重ね合わせを改善する計算補正書込マップを提供している。書込密度による減衰率の平均値は2.34%であり、これは、マスクB(図57a)、並びにマスクC(図57b)の位置合わせ誤差を補正するのに必要な書込密度の約半分である。マスクBがマスクCに対して最適化される場合に得られる残留重ね合わせ誤差の2Dマップを図60に示している。図60の得られる残留重ね合わせ誤差は、6.53nmのX/Y仕様を有する。この結果は、マスクB(図57a)及びマスクC(図57b)内の位置合わせ誤差を個々に補正する場合よりも26%良好である。
【0224】
上述の方式では、マスクCの補正機能は、この時点まで使われていない。数学的には、重ね合わせは、マスクBとマスクCとの位置合わせの差である。従って、マスクB及びマスクCがいかなる変形を含んでいても、両方のマスク間の変形差のみが関連のあるものである。一見すると、両方のフォトリソグラフィマスクの基板内にピクセルを書き込む機能からは利益を得ることができないように見える。しかし、問題の定式化において考慮すべきである物理的拘束条件が存在する。負の書込密度を用いてピクセルを書き込むことはできず、又はピクセルをフォトリソグラフィマスクの基板内に書き込む際にフォトリソグラフィマスクの光透過率を改善することはできない。これは、式41の目的汎関数を式40によって表した拘束条件の代わりに次式の拘束条件を使用することによって解くことができることを意味する:(式55)

最適な補正書込マップに対してもたらされる解は、2つの異なるマップに分割すべきである。最適な補正書込マップの正の部分である第1のものは、マスクBに対する補正書込マップを形成し、マップの負の部分である第2のものは、マスクCに対する補正書込マップを形成する。
【0225】
図61aは、書込密度振幅:

の正の部分を提供するマスクBに対する計算重ね合わせ補正書込マップを示しており、図61bは、書込密度振幅:

の正の部分を提供する、マスクCに対する計算重ね合わせ補正書込マップを表す。
【0226】
線形結像変換の実施後に得られる模擬残留重ね合わせ誤差を図62に提供している。重ね合わせX/Y仕様(3σ数値)に対して得られる誤差の推定値は、5.5nmであり、これは、図60に提供している補正工程の結果よりも16%良好である。
【0227】
以下の説明は、この部を要約するものである。すなわち、初期重ね合わせ問題は、14.03nmであり、マスクB及びマスクCを設計位置に関して個々に補正した後に、8.83nmの残留重ね合わせ問題が残る(方式1)。マスクBとの最良の重ね合わせを目標とするマスクCの補正は、6.53nmの重ね合わせ誤差をもたらす(方式2)。最後に、両方のマスクの補正の後に、残留重ね合わせ誤差は、5.5nmに低減する(方式3)。
【0228】
異なるフォトリソグラフィマスクが、例えば、電子ビーム書込器の特徴のような位置合わせ問題の類似の補正不能部分を有する場合があることが起こる場合があるから、方式2が方式1よりも良好であることは明らかである。方式3は、共通の重ね合わせ目標を満たすために両方のフォトリソグラフィマスク上で補正が実施されることから更に有効である。
【0229】
この節では、一般的な原理を示すために、ただ1つの単純な重ね合わせ問題への本発明の方法の適用を呈示している。当業者は、本発明の方法が解説した例に限定されないことを認めるであろう。それとは逆に、呈示する例は、この種のフォトリソグラフィマスク問題の解決への本発明の原理の適用性を明らかにすることのみを意図している。
【0230】
6.理論的背景
以下では、前節に提供した本発明の方法の異なる態様の解説の根底にある理論的背景の一部を概説する。
【0231】
フォトリソグラフィマスクの位置合わせ誤差を補正するために、異なる種類のピクセルが使用される。異なる種類のピクセルの適用は、ある一定の種類のピクセルを書き込むことにより、フォトリソグラフィマスクの基板上の光透過率分布の減衰又は変動とパターン要素のシフトとの間の関係を調節することを可能にする。例えば、光透過率分布の同じ減衰又は変動を導入するが、第1の基板面上でパターン要素の異なるシフトを有するか又は異なる位置合わせ変化を有することにより、マスクの基板内に異なる種類のピクセルを導入することができ、又は簡単に表現すると異なる種類のピクセルを書き込むことができる。
【0232】
一般的に、前節で既に概説したように、ピクセルは、フォトリソグラフィマスクの基板材料、通常は溶融シリカ内に基板材料の密度を局所的に変化させることによって応力を導入する。パルス持続時間、パルスエネルギ、及び/又は繰返し数のようなフェムト秒レーザ源のレーザビームのいくつかのパラメータを変化させることにより、膨張ピクセル及び収縮ピクセルを基板内に導入することができ、又は基板内に書き込むことができる。膨張ピクセルを書き込むことにより、基板材料の密度は低減され、それに対して収縮ピクセルを書き込むことにより、基板材料の密度は増大する。
【0233】
異なる物理的条件を用いたフォトリソグラフィマスクの基板内へのピクセルの書込として異なる書込モードが定義され、異なる特性及び/又は異なる形状を有する異なる種類のピクセルが生じる。異なる書き込モードは、以下のパラメータのうちの1つ又はそれよりも多くを変化させることによって実施することができる。
(a)レーザビームパルス電力:レーザ源の光ビームのパルス電力は、ピクセルのサイズを変化させる。レーザパルスエネルギを低減することによって小さいピクセルが生じる。小さいピクセルの影響は、ピクセル密度を高めることによって補償することができる。ピクセル密度を変化させずにピクセルサイズを縮小することにより、フォトリソグラフィマスクの基板上でのパターン要素の小さいシフトがもたらされる。実際には、最小パルスエネルギは、フォトリソグラフィマスクの基板材料の破壊閾値によって制限される。パルス持続時間、光ビームのNA(開口数)、及び/又はビーム発散、並びに1つの位置に入射するパルス数を変化させることにより、基板材料の破壊閾値を制御することができ、従って、フェムト秒レーザ系の光パルスのパルスエネルギを低減することができる。
(b)レーザビームピクセル密度:フォトリソグラフィマスクの基板面と平行な異なる方向への異なる線形ピクセル密度の書込は、マスク基板の非対称膨張を生成することができる。これは、マスク面と平行な異なる2つの直角の方向、例えば、x方向及びy方向に異なる線形ピクセル密度を有するピクセルが書き込まれることを意味する。この影響は、マスク基板上のパターン要素のシフトを制御するための又は位置合わせ制御のための有利なツールを提供する。
(c)レーザビーム均一密度:ピクセルは、レーザビームを用いて書き込むことができ、隣接するピクセルの間の距離は、個々のピクセルのサイズよりもかなり小さい。従って、擬似連続構造がマスク基板内に書き込まれる。この種のピクセルでは、好ましくは、非常に低いレーザパルス電力が使用される。そのような種類のピクセルを使用する利点は、これらのピクセルは、いかなる位置合わせ変化ももたらさないが、フォトリソグラフィマスクの基板の光透過率のみを変化させる点である。可視スペクトル範囲にいかなる可視ピクセルも持たないこの構造は、材料のバルク内で異なる物理特性を有する層により類似する。この層が十分に均一である場合には、この層はUV又はDUVビーム特性に小さい影響しか与えず、いかなる散乱も発生せず、層は、いかなる人工的な周期性も導入せず、従って、いかなる回折効果も生成しない。レーザビームをそのようなレーザビームパラメータを有するフォトリソグラフィマスク上に向けることをピクセルなし書込と呼ぶ。
【0234】
位置合わせ誤差を確実に補正するためには、フォトリソグラフィマスクの基板に対する異なるパラメータを有するフェムト秒光パルスの影響を把握すべきである。この目的のために、異なるパラメータ又は書込モードを有するフェムト秒光パルスとレーザビームのピクセル密度とをフォトリソグラフィマスクの基板全体に対して判断すべきである。更に別の計算を実施するために、マスク基板面が任意の要素に分割される。1つの要素又は1つの基本区域内には、単一書込モード及び単一密度を有するピクセルが書き込まれる。
【0235】
順問題の解は、レーザビームの作用から生じる変形を計算することになり、すなわち、位置合わせ変化を書込モード及びピクセル密度の関数又はレーザビームパラメータの関数として計算することになる。適用される位置合わせ補正を判断するためには、逆問題を解かなければならない。これは、それが、書込モードのマップ及び書込密度、又は位置合わせの望ましい変化及び/又は光透過率分布の又はマスク基板の減衰率の望ましい変動を与えるレーザビームパラメータを計算する問題であることを意味する。
【0236】
通常、フォトリソグラフィマスクの基板は、石英のような非常に硬質の材料で作られる(同じく第2節を参照されたい)。位置合わせ誤差及び/又は光透過誤差の補正に必要な変形は振幅が非常に小さく、基板材料の弾性限界を上回らない。以下の方式では、静的方程式、幾何学方程式、及び物理方程式という3つの異なる方程式群が重要である。静的方程式では、例えば、静的なニュートンの法則等における面力の状態平衡、バルク力、及び応力が、マスクのあらゆる基本要素において作用する。幾何学方程式であるコーシーの式を利用することによって変位場から歪みテンソルを導出することができる。あらゆる歪み場を変位場から生成することができるわけではないので、適合条件を考慮すべきである。熱平衡及び断熱近似において、一般化フックの法則(物理方程式)は、弾性体に対して歪みテンソルと応力テンソルの間に線形接続が存在することを説明している。
【0237】
一般性を失うことなく、フォトリソグラフィマスク本体の完全な基板は、矩形区域又は基本区域の系として表すことができ、この場合、あらゆる基本区域は、一定の書込モード及び均一なピクセル密度を有する。全ての要素又は基本区域は、ヤング率、ポアソン比のようなマスク基板の新しい又は修正された物理パラメータを有する新しい又は修正された平衡形状によって特徴付けることができる。生じる変化は、書込負荷、すなわち、マスク基板の物理パラメータに良好な近似で比例する。
【0238】
得られる変位場をレーザビームパラメータの関数又は書込モード及びピクセル密度の関数として計算するために(すなわち、順問題)、以下の2つの方式の一方を使用することができると考えられる(オイラーのもののような一部の更に別の方式が存在する)。
1.基本区域の境界において作用する全ての内部力/応力を均等化する歪み場の計算、又は、
2.フォトリソグラフィマスクの基板全体に対してポテンシャルエネルギの最小値を求めることによる歪み場の計算。
【0239】
両方の方式は、所定の書込モード分布において変位の書込振幅への線形依存性を与える。両方の方式は、書込モード及び書込密度又はピクセル密度の情報に基づくレーザビームによって生じる変位の計算を可能にする。
【0240】
逆問題は、一般的な場合において定式化することができる。目標変位場をもたらす書込モードにおけるマップ及びピクセル密度を求めなければならない。一般的に、書込モードは、レーザビームの離散パラメータセットであり、問題は、最適化問題として定式化すべきである。望ましい変位場において最小値(又は上限)を有する目的汎関数を設定すべきである。最適化された書込マップ及びピクセル密度マップ又は最適化されたレーザビームパラメータは、目的汎関数を最小にする変位場を生成する。
【0241】
逆問題を解く、すなわち、位置合わせ及び/又は減衰率(又は光透過率変化)の望ましい変化を与える書込モード及び書込密度又はピクセル密度のマップを計算する可能な手法は以下の通りである。
1.MLS方式(移動最小二乗法)を用いて書込密度の最適化を実施することができるが、小さい基本区域の場合は、離散書込モードマップの完全な列挙は非常に困難である場合がある。
2.1つの基本区域が異なる書き込モードの重ね合わせを有することができるという仮定の下に、モードマップの離散パラメータは、連続的なアナログに変換することができる。基本区域の全ての物理特性変化及び形状特性変化が、対応する書込モードの寄与に比例する場合には、目的汎関数は、残留欠陥の二乗である。この場合、変分形式は、線形問題をもたらすことになる。
【0242】
以下では、第2の方式が使用されることになる。殆どの場合、マスク曲げ現象及び基板厚みの修正を無視することができる時には、3次元(3D)問題を2次元のもの(2D)として定式化し直すことができる。あらゆる矩形要素又はあらゆる矩形基本区域は、フォトリソグラフィマスクの基板の矩形の平行六面体を表すことになる。
【0243】
線形弾性を有するマスク基板に対する一般化フックの法則は、次式として2D形式で示すことができる。

ここで、2D微小歪みテンソルε(x,y)は、成分εij(x,y)を有し、応力テンソルσ(x,y)は、成分σij(x,y)を有する。
【0244】
2D近似では、マスク基板面に対して接線及び法線方向にマスク基板面上に作用するいかなる外力も存在しないと仮定する。この仮定の結果として次式が続く。

等方性弾性を有するマスク基板の場合には、歪みテンソルのせん断成分εzx、εxz、εzy、εyzは、同様にゼロでなければならない。成分εzzの値は、σzz=0(式2を参照されたい)という仮定に起因して変形エネルギに寄与しないので、無視することができる。
【0245】
式を簡素化するために、歪みテンソルに対してε0=εxx、ε1=εyy、ε2=2*εxyを定めることによって工学表記を使用することにし、それによって歪みテンソルεijが、成分ε0、ε1、ε2を有する歪みベクトルεiに簡略化される。この手順を応力テンソルσ(x,y)に当て嵌めると、すなわち、σ0=σxx、σ1=σyy、σ2=σxyを導入すると、歪みテンソルσijは、ここでもまた、成分σ0、σ1、σ2を有する歪みベクトルへσiと簡略化される。(変換の観点からは、εi及びσiはベクトルではない。)所定の表記を使用すると、方程式(1)におけるフックの法則は、次式の形式に書き直すことができる。

すなわち、4次の弾性テンソル:

は、2次のテンソル:

に簡略化される。
【0246】
フォトリソグラフィマスクの石英基板のような等方性材料では、弾性テンソルは、2つの独立した成分E及びμしか持たず、次式の形式のものである。

ここで、ヤング率は、E(x,y)と表記され、ポアソン比は、μ(x,y)と表記される。
【0247】
フォトリソグラフィマスクの基板内の変位場は、入射レーザビームに対して垂直な平面内のベクトル関数:

として示すことができる。一般的な場合には、微小歪みテンソル場σij及び2D近似での微小歪みベクトル場σiは、コーシーの式を用いて変位場ui(i=1,2)から導出することができる。この場合、微小歪みベクトル場は、次式の形式を有する。

ここで、行列演算子Aは、次式の偏微分要素から構成される。

【0248】
変形又は変形密度P(x,y,z)の分布の全体ポテンシャルエネルギPは、次式の積分からもたらされる。

2D近似では、変形の分布はzに依存しない。この場合、歪みベクトルεiによって生じる応力ベクトルσiから生じる2Dポテンシャルエネルギ密度は、歪みベクトルから生じる力が、歪みベクトルの方向と平行であるから、両方のベクトルのスカラー積の積分に比例する。従って、歪みベクトル場εi(x,y)から生じる応力ベクトル場σi(x,y)によって生じるポテンシャルエネルギ密度P(x,y)は、次式で与えられる。

式(3)の形式にあるフックの法則を用いて歪みベクトル場σi(x,y)で置換し、式(5)の変位場によって歪みベクトル場εi(x,y)を置き換えることにより、2Dにおけるポテンシャルエネルギ分布又はポテンシャルエネルギ密度は次式の形式を有する。

ポテンシャルエネルギの最小値という基準を満たす変位場u(x,y)を定める理想的な(しかし、唯一ではない)手法は、有限要素のような方式である。一般性を失うことなく、フォトリソグラフィマスクの基板全体を同じサイズを有するM*Mの矩形要素αのセットとして、又はM個の列とM個の行とを有する正方行列として表すことができる。
【0249】
以下のポテンシャルエネルギPの計算では、マスク基板をM*M個の等しいサイズの小さい矩形要素に分割する。合計ポテンシャルエネルギPは、個々の小さい矩形要素αのポテンシャルエネルギPαの和である。

矩形要素αのポテンシャルエネルギPαは、要素αの面積Vαにわたって2Dポテンシャルエネルギ密度を積分することによって得られる。

2Dポテンシャルエネルギ密度Pα(x,y)は、式(9)から得られる。

インデックスαは、フォトリソグラフィマスクの基板を網羅する全ての矩形要素を計数する。各矩形要素αは非常に小さいので、弾性テンソルの2次テンソル場H(x,y)を矩形要素α内の定数テンソルHαによって置換することができると仮定する。
【0250】
ここでもまた、矩形要素αが小さいという仮定を利用することにより、ベクトル場u(x,y)をその線形近似によって置換することができる。この目的のために、コーナの数に従ってインデックス0、1、2、3を有するコーナ座標Niの線形形状関数を導入する。

インデックスgは、非摂動格子位置、すなわち、フォトリソグラフィマスクの基板上への光パルスの印加、又は基板内へのモードの書込の前の位置を表す。コーナ座標の変位は、次式によって定義される。

【0251】
以下では、あらゆる矩形要素α内で、コーナ座標(ノード)の変位の線形内挿によってベクトル場u(x,y)を表す。

この近似は、実変位場u(x,y)の良好な連続近似を与える。要素αのポテンシャルエネルギPαを矩形要素αのコーナ変位の関数として表すことにする。
【0252】
矩形要素α内の変位ベクトル場u(x,y)によってポテンシャルエネルギPαを表すことにより、式12を次式で書き直すことができる。

直交座標x,yに関する形状関数Nの1次導関数は、次式で与えられる。

この場合、N=1/m2であり、mは、要素又は矩形区域のサイズであり、従って、m=MaskSize/Mである。
【0253】
要素容積又は要素面積にわたって積分を実施すると、変形要素αのポテンシャルエネルギPαを要素のコーナN0、N1、N2、N3の変位値uαiの二乗形式として表すことができる。

近似として、ピクセルによって占有される容積は無視することができると考えられ、ピクセルは、フォトリソグラフィマスクの基板の2D剛性に有意な影響を与えないと考えられる。これは、ポテンシャルエネルギ密度:

が、レーザビームパラメータの関数として要素α内で基本的に変化しないか、又はレーザビーム書込の方式及び量に依存しないことを意味する。従って、式18は次式に変化する。

これは、ここで解説する簡素化方式の重要な説明である。
【0254】
次に、あらゆる矩形要素αが、単独で、レーザビームがフォトリソグラフィマスクのこの部分の上に向けられた後に新しい平衡状態を有すると仮定する。コーナN0、N1、N2、N3の新しい平衡座標を

と呼ぶ。レーザビームによって生じる変形に起因する非変形状態から新しい平衡位置へのポテンシャルエネルギ変化は、逆変化とは反対であることは明らかである。あらゆる要素αが、レーザビームをフォトリソグラフィマスクのこの部分の上に向けた後にポテンシャルエネルギに関する表現において新しい平衡形状を有するので、新しい平衡状態から始まる変位を考慮すべきである。式19は、実際にはフォトリソグラフィマスクの基板内の変形が平面場:

から始まるという仮定を用いて導出したものである。あらゆる矩形要素αの平衡位置からの変形に関してポテンシャルエネルギを定めると、式19を次式に変換することができる。

ここで、ラグランジュの変分原理をフォトリソグラフィマスクの基板のポテンシャルエネルギに適用することにする。ラグランジュの変分原理は、物体の平衡位置が、ポテンシャルエネルギの最小値を有し、あらゆる変位のあらゆる部分変化はゼロに等しいと説明している。本事例では、これは、ノードの全ての座標に対して、以下の1次方程式をもたらす。

この場合、(M+1)×(M+1)個のノードを有するM×M個のセルに対してi=(1...2(M+1)2であり、あらゆるノードは2つの座標を有する。式13から15に定義されているように、座標:

を有するあらゆる内部ノードは、全ての隣接ノードに関する成分内に4回現れる。全ての内部ノードを行で左から右に、下から上に計数し、全てのノードの全ての座標を次式の手法で計数する。

式(17)内の全ての導関数の全和を取り、式(22)の定義を適切な符号と共に使用することにより、式(21)は次式に変換される。

【0255】
式23は、前節で解説した本発明の原理の全ての異なる態様の説明に対する開始点である。フォトリソグラフィマスクの基板全体のポテンシャルエネルギ対回転及び平行移動の不変性に起因して、行列:

の行列式はゼロであることに注意することは重要である。この条件は、フォトリソグラフィマスクの得られる平行移動及び回転に関する条件を追加することによって常に自動的に満たされる。これは、正規化行列:

の逆行列(2次のテンソル):

を計算することが常に可能であることを意味する。従って、矩形要素αの既知の平衡変形に関する式23を使用することにより、マスク基板の一部分の上にレーザビームを局所的に向けることから生じる変形の計算が可能になる。

【0256】
得られる変形を原因レーザビームに関連付けるために、又はより厳密にはレーザビームのレーザビームパラメータ又は書込モードに関連付けるために、得られる変形を書込モードにおける正確な用語で表現する。矩形要素α内の均一な書込の場合には、その平衡変形は、書込ピクセルの量又は数、又は光学強度の生じた減衰率に比例すると仮定する。要素αの書込密度をaαで表し、単位書込密度当たりのコーナ座標変化を

で表す。ここで、上述の書込モードにおいて、すなわち、あらゆる要素αに対して同じレーザビームパラメータを用い、書込密度又は偏微分のみを変化させる書込モードにおいて、式24を次式の形式に書き直すことができると仮定する。

【0257】
kにわたって全和を実施し、

と表すことにより、式25は、次式の形式のものになる。

この式は、内部ノードにおける変形ξiが、あらゆる矩形要素αの書込振幅aαの線形結合であることを説明している。
【0258】
式26は、レーザビームの書込が、固定モードで又は固定のレーザビームパラメータセットを用いて実施されることを仮定している。書込モードの変形特性を単位書込当たりの平衡変形変位ekで符号化する。実際には、要素の2つの仮想変位は固定され、回転も、ポテンシャルエネルギに寄与しないので、上述の8つの変位成分は、5つの独立した成分のみの関数である。これらの5つの独立成分を用いて、単位ベクトルの直交セットを構成することができる。

ここで、

は、基底ejを基底niに変換する行列である。

この単位ベクトルセットへの投影を書込モードの表現、すなわち、レーザビームパラメータセットとして使用することにする。以下では、書込モードを書込ツール署名で表すこととし、TS又はツール署名と略記する。TSは、選択された書込方式又は所定の物理特性及び幾何特性セットを有するレーザビームパラメータセットにおける書込ツール又はレーザ系の特性を表す。式27及び28の表記を用いて、式26を次式に書き直すことができる。

ここで、

は、法線方向の変形要素であり、

は、コーナ要素の変位である。
【0259】
いくつかのパラメータセットを有するレーザビームの繰返し印加によって生じる変形の線形結合という仮定を使用することにより、又は複数の書込工程における異なる書込モードを使用することにより、得られる変形を次式として定めることができる。

ここで、mは、全ての異なる書込モードRを考慮する。
【0260】
既に上述のように、変形は、書込密度振幅:

及び法線方向の変形要素:

の空間内で作動し、生じたノード変位ξiの空間内に非ゼロ値を有する線形演算子によって表すことができる。式27及び28を使用することにより、式29は次式の形式を有する。

ここで、矩形格子ノードの変位ξiは、対x,yで左から右及び下から上に計数され、

は、モードmにおける矩形要素α内の書込密度の振幅であり、

は、モードmにおけるツール署名(又はモード署名)である。
【0261】
ここで、初期位置合わせ問題φjが位置セットXj,Yj、j=1,...,Lとして定義されると仮定する。位置合わせ問題φjは、フォトリソグラフィマスクの基板上にレーザビームを局所的に向けることによって補正する必要がある。上記に解説した近似では、変形は、全ての初期位置合わせ問題に加算的である。しかし、変位は、ノードξiにおいてしか把握されない。矩形要素αの内側の変形は線形挙動を示すという仮定を使用すると、ノードにおける変位ξiのマグニチュードを望ましい位置におけるマグニチュードζiに変換する行列を生成することができる。この変換は、式13及び14を使用することによって実行することができる。

ここで、ζiは、位置Xi,Yiにおける線形内挿又は計算変位ξiの線形結合の結果である。行列Mijは、L×2*(M+1)*(M+1)という次元を有する。既に解説したように、どの位置も要素αの4つのコーナだけを用いて内挿されるので、実際には、この行列は、8つの対角要素のみを有する。
【0262】
従って、フォトリソグラフィマスクの基板上の選択された位置iにおいて得られる位置合わせは次式になる。

フォトリソグラフィマスクがウェーハ上のフォトレジストを照明する前に、スキャナ又はステッパは、マスク上のパターン要素の変位誤差又は光学照明系によって誘起された結像誤差を補正するために、線形結像変換を実施することができる。今日、線形結像変換は、ほぼあらゆるスキャナに実施されている。線形結像変換は、6つのパラメータによって表すことができる。2つのパラメータmx、myは、像のシフトに対処し、2つのパラメータsx、syは、像のスケーリングを表し、2つの更に別のパラメータrx、ryは、一般化された回転を表す。線形結像変換のこれらの6つのパラメータを用いて、像x,yのあらゆる点は、次式に従って変換される。

一般的に、スケーリング及び回転のパラメータは、1ppm(百万分率)を上回らない非常に小さいマグニチュードしか持たず、従って、ζ*s及びζ*rのような高次の成分を無視することができる。これは、純粋な設計位置を用いて全ての像変換を実施することができることを意味する。
【0263】
線形結像変換は、次式の行列形式で表すことができる。

ここで、skは、以下の全てのスキャナ像変換係数のベクトルである。

一部の高度なスキャナは、より一層複雑な非線形結像変換を提供することができるが、結像変換は、それでも式36による幅広い変換パラメータセットを有する式35という形式で表すことができる。
【0264】
所定の位置合わせ問題φを解くために、目的汎関数Φを最小にする矩形要素α内の書込モードmの振幅:

及びスキャナ変換係数skを特定すべきであり、すなわち、次式を解かなければならない。

位置合わせ問題φiを最小にするために、目的汎関数Φを最小にするように、変位ζi及び線形変換パラメータskという両方のパラメータを同時に変化させる。これは、解説する方式に関する重要な説明である。式37は、位置合わせ誤差を最小にするために、フォトリソグラフィマスクの基板内に一部の変形(変位ζiで表される)を生成することが有利である場合があることも示している。従って、式37の解による変位:

を導入し、式37の解による線形結像変換:

を実施することにより、フォトリソグラフィマスクの可能な最良の性能がもたらされる。
【0265】
計算の観点からは、目的汎関数を残留変位の二乗平均として選択することが好ましく、それによって式37は次式に変換される。

結果が物理的に妥当性のある解を定めることになるように、ティホノフの正則化を目的汎関数に追加した。正則化係数λは、解に有意な変化を導入しないように、十分に小さいものを選択すべきである。式38の問題は解析的な解を有する場合があるが、書込密度の全ての振幅:

が全てのモードmにおいて正であるという拘束条件が存在する。書込モードの振幅(athresmが、フォトリソグラフィマスクの基板の何らかの書込モード特定の損傷閾値を超えることができないという点で、更に別の制約条件が存在し、次式の書込モード特定の関係がもたらされる。

【符号の説明】
【0266】
100 透過フォトリソグラフィマスク
110 基板
120 パターン要素
130 基板の第1の面又は前面
140 基板の第2の面又は後面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリソグラフィマスクの複数の誤差を補正する方法であって、
a.フォトリソグラフィマスクの結像変換の第1のパラメータと、該フォトリソグラフィマスク上に局所的に向けられるレーザビームの第2のパラメータとを最適化する段階と、
b.最適化された第1のパラメータを用いて結像変換を適用し、かつ最適化された第2のパラメータを用いて前記レーザビームを前記フォトリソグラフィマスク上に局所的に向けることにより、複数の誤差を補正する段階と、
を含み、
c.前記第1及び前記第2のパラメータは、共同の最適化工程において同時に最適化される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
段階cは、
a.誤差データ、第1の結像変換パラメータ、及び第2のレーザビームパラメータを含む目的汎関数を設定する段階と、
b.前記第1の結像変換パラメータと前記第2のレーザビームパラメータとを同時に変化させることによって前記目的汎関数を最小にする段階と、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ラグランジュの変分原理が、前記目的汎関数を設定するのに使用され、及び/又は該目的汎関数は、前記第1及び前記第2のパラメータによって前記フォトリソグラフィマスク内に導入されるポテンシャルエネルギ分布を最小にすることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記結像変換は、線形結像変換を含み、及び/又は該線形結像変換は、フォトリソグラフィマスクシフトに関する2つのパラメータ、フォトリソグラフィマスクスケーリングに関する2つのパラメータ、及び該フォトリソグラフィマスクの一般化された回転に関する2つのパラメータを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のレーザビームパラメータは、前記レーザビームのエネルギ、及び/又は開口数、及び/又は焦点サイズ、及び/又はビーム偏光、及び/又は非点収差、及び/又はパルス長、及び/又は繰返し数、及び前記フォトリソグラフィマスクの1つの位置上に向けられるパルスの数、及び/又は該レーザビームが該フォトリソグラフィマスク上に向けられる2つの位置の間の距離を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザビームは、前記フォトリソグラフィマスクの密度及び/又は光透過率分布を局所的に修正し、及び/又は
前記フォトリソグラフィマスクの局所的に修正される前記密度及び/又は前記光透過率は、該フォトリソグラフィマスクの複数の小さい容積内で不連続に修正され、各小さい容積は、ピクセルと呼ばれる、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記目的汎関数は、ティホノフ正則化を用いて残留変位の二乗平均として最小にされることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記目的汎関数は、前記フォトリソグラフィマスクの活性区域及び/又は不活性区域における拘束条件として少なくとも1つの重み付け関数を含み、及び/又は
前記重み付け関数は、前記複数の誤差のうちの位置合わせ誤差と平坦性誤差とを同時に補正するように構成される、
ことを特徴とする請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の誤差は、該複数の誤差の異なるタイプを含み、及び/又は
前記複数の誤差の前記異なるタイプは、位置合わせ誤差、及び/又は光透過率誤差、及び/又は平面性誤差を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
補正されなかった及び/又は前記複数の誤差を補正するために前記フォトリソグラフィマスクの前記基板上に前記レーザビームを局所的に向けて該フォトリソグラフィマスクの該基板の第1の層にピクセルを生成する時に導入された誤差が、該フォトリソグラフィマスクの該基板上に該レーザビームを再度向けて、該フォトリソグラフィマスクの該基板の第2の層にピクセルを生成することによって補正されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザビーム及び/又は前記フォトリソグラフィマスクは、該レーザビームが該フォトリソグラフィマスク上に向けられる期間の一部分にわたって該レーザビームと平行な角度だけ回転されることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記フォトリソグラフィマスク上に前記レーザビームを向ける段階は、該フォトリソグラフィマスクの露光波長でのレーザビームに対する光透過率分布の変動を導入しないことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記フォトリソグラフィマスク上に前記レーザビームを向ける段階は、該フォトリソグラフィマスクの露光波長での該レーザビームに対して該フォトリソグラフィマスクにわたって光透過率分布の所定の変動を付加的に導入することを特徴とする請求項1から請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記フォトリソグラフィマスクの前記活性区域における光透過率分布誤差を補正することによって該フォトリソグラフィマスクに新しく導入される誤差を補正するために、前記レーザビームを該フォトリソグラフィマスク上に向ける段階を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記フォトリソグラフィマスク上に前記レーザビームを向ける段階は、該フォトリソグラフィマスクにわたって光透過率分布誤差を補正する段階が該フォトリソグラフィマスク内に位置合わせ誤差を導入しないように、第2のレーザビームパラメータの少なくとも2つのセットを含むことを特徴とする請求項1から請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記パルスエネルギは、0.05μJから5μJであり、前記パルス長は、0.05psから100psであり、前記繰返し数は、1kHzから10MHzであり、パルス密度は、1000パルス毎mm2から10 000 000パルス毎mm2であり、対物系の前記NAは、0.1から0.9であり、該対物系の倍率が、5×から40×であることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
第2のレーザビームパラメータの第1のセットが、0.45μJ〜0.55μJのパルスエネルギ、5〜10psのパルス持続時間、10kHz〜100kHzの繰返し数、0.2〜0.4の前記対物系の前記NA、10×〜20×の該対物系の倍率、及び1000〜100 000パルス毎mm2のパルス密度を含み、該第2のレーザビームパラメータの該第1のセットは、0.27μJ〜0.37μJのパルスエネルギ及び5 000〜500 000パルス毎mm2のパルス密度を有することを特徴とする請求項76に記載の方法。
【請求項18】
前記フォトリソグラフィマスク上に前記レーザビームを向ける段階は、第2のレーザビームパラメータの少なくとも3つのセット、すなわち、異なるパルスエネルギを有する該レーザビームを前記活性区域上に向けるための第1のセット及び第2のセット、及び該レーザビームを該フォトリソグラフィマスクの前記不活性区域上に向けるための第3のセットを含むことを特徴とする請求項1から請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記目的汎関数は、少なくとも1つの第1のフォトリソグラフィマスクと少なくとも1つの第2のフォトリソグラフィマスクの間の重ね合わせ誤差を最小にするために使用されることを特徴とする請求項1から請求項11に記載の方法。
【請求項20】
フォトリソグラフィマスクの複数の誤差を補正するための装置であって、
a.フォトリソグラフィマスクの結像変換の第1のパラメータと、該フォトリソグラフィマスク上に局所的に向けられるレーザビームの第2のパラメータとを同時に最適化するように作動可能な少なくとも1つのコンピュータ手段と、
b.最適化された第2のレーザビームパラメータによる光パルスの前記レーザビームを生成するための少なくとも1つのレーザ源と、
c.最適化された第1の結像パラメータに従って結像変換を実施するための少なくとも1つの走査手段と、
を含むことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図16】
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【図18a】
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【図18b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図19a】
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【図19b】
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【図20】
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【図21a】
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【図21b】
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【図21c】
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【図22a】
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【図22b】
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【図23】
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【図24】
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【図25a】
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【図25b】
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【図26】
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【図27a】
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【図27b】
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【図28a】
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【図28b】
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【図28c】
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【図29】
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【図30】
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【図31a】
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【図31b】
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【図32a】
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【図32b】
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【図33a】
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【図33b】
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【図34a】
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【図34b】
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【図35a】
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【図35b】
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【図36a】
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【図36b】
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【図37a】
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【図37b】
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【図37c】
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【図38a】
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【図38b】
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【図38c】
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【図39a】
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【図39b】
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【図39c】
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【図40a】
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【図40b】
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【図40c】
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【図41a】
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【図41b】
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【図42a】
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【図42b】
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【図42c】
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【図43a】
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【図43b】
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【図43c】
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【図44a】
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【図44b】
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【図45a】
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【図45b】
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【図46a】
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【図46b】
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【図47a】
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【図47b】
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【図48a】
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【図48b】
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【図49a】
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【図49b】
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【図50a】
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【図50b】
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【図51a】
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【図51b】
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【図52a】
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【図52b】
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【図53a】
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【図53b】
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【図54a】
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【図54b】
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【図55a】
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【図55b】
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【図56】
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【図57a】
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【図57b】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61a】
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【図61b】
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【図62】
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【公開番号】特開2012−22323(P2012−22323A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−167641(P2011−167641)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(511186631)カール ツァイス エスエムエス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】