説明

フォークリフト

【課題】リフトフォークを前後動してコンテナ等の掬い取りを行うときの、リフトフォーク及びリフトマスト等の前後回動、揺動を簡単な構成によって緩やかに行わせて、リフトフォークによる作業を安定した状態に行わせるものである。
【解決手段】リフトフォーク1を昇降案内するリフトマスト2底部前後に配置のフロントガイドロール3とリヤガイドロール4を、フォークリフト車体5の左右両側部において前後方向に亘って設け、各ガイドロール3,4の下側を支持案内する下部レール6と、上側を案内する上部レール7とから断面コ字状形態のガイドレール8に前記各ガイドロール3,4を嵌合支持させて前後に移動案内するように構成し、このガイドレール8の前部のフロントレール9を、前後方向水平状に形成の後部のリヤレール10の前端に、前下り傾斜の屈曲形態にして連設したことを特徴とするフォークリフトの構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォークリフトに関し、掬い取り作動時のリフトフォーク、及びこのリフトフォークを支持するリフトマストの傾斜回動、揺動等を緩やかに行わせて、安定したコンテナ等の掬い取り作業を行わせるものである。
【背景技術】
【0002】
リーチ形態のフォークリフトにおいて、リフトマスト底部に前後一対のガイドロールを設けて、このガイドロールを、下部レールと上部レールとからなるガイドレールに支持案内させて前後移動させると共に、この上部レールには階段状の段部(カムガイド面)を形成し、前記後部のガイドロールをこの上部レールの階段状部に摺接させることにより、リフトマスト等を前記ガイドロールの周りに前後回動揺動させる技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭34−21431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リフトフォークを有したリフトマストを車体に対して前後方向へ移動させながら、リフトフォークの掬い角をコントロールしながらコンテナ等の掬い取りを行うリーチ形態のフォークリフトにおいては、これらリフトフォーク、及びリフトマストの前後方向の傾斜角度が前記ガイドレールの階段状案内面や、突上作動カムによる案内等によって、急激に変更されると、リフトフォーク上面の掬い角や、リフトマストの昇降角度が前後等に回動揺動されて、リフトフォーク上面の掬い取り姿勢や、昇降姿勢を不安定にする。このため、この発明は、リフトフォークを前後動してコンテナ等の掬い取りを行うときの、リフトフォーク及びリフトマスト等の前後回動、揺動を簡単な構成によって緩やかに行わせて、リフトフォークによる作業を安定した状態に行わせるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、リフトフォーク1を昇降案内するリフトマスト2底部前後に配置のフロントガイドロール3とリヤガイドロール4を、フォークリフト車体5の左右両側部において前後方向に亘って設け、各ガイドロール3,4の下側を支持案内する下部レール6と、上側を案内する上部レール7とから断面コ字状形態のガイドレール8に前記各ガイドロール3,4を嵌合支持させて前後に移動案内するように構成し、このガイドレール8の前部のフロントレール9を、前後方向水平状に形成の後部のリヤレール10の前端に、前下り傾斜Aの屈曲形態にして連設したことを特徴とするフォークリフトの構成とする。
【0006】
フォークリフト車体5をリフト対象物であるコンテナ等の掬い取り位置へ移動させて、リフト作業を行う場合は、リフトフォーク1をリフトマスト2に対してコンテナ掬い取り高さ位置へ昇降させて、このリフトマスト2を、このフロントガイドロール3とリヤガイドロール4をガイドレール8に案内させながら前側へ移動させて、床面等に積載されているコンテナの底面にリフトフォーク1を差込んで掬い込み、このリフトフォーク1をこの掬い込み位置からリフトマスト2に沿わせて若干上昇させることによって、このリフトフォーク1上面に掬い込んだコンテナを床面や、コンテナ積載面等から若干持上げて掬い取ることができ、リフト搬送の態勢へ移行することができる。このようにしてコンテナを掬い取ったリフトフォーク1を、このリフトマストの後側への戻り移動位置で、このリフトマスト2に沿って昇降することができる。そして、このリフトフォーク1及びリフトマスト2が、ガイドレール8のリヤレール10部に支持されてる状態では、このリフトマスト2底部のフロントガイドロール3とリヤガイドロール4が、共に前後方向水平状のリヤレール10部に、しかも車体5の重心近傍位置に支持案内されて、リフトフォーク1の上面に掬い取ったコンテナを安定した姿勢に支持して、運搬することができる。
【0007】
又、前記リフトフォーク1を車体5に対して前側へ推進させて、コンテナ等の底部に差込むときは、前記リヤレール10に支持されているフロントガイドロール3が前にフロントレール9へ移動されて、これらリフトマスト2及びリフトフォーク1がこのフロントレール9の前下り傾斜Aに応じた角度に順次前傾チルト作動し、リフトフォーク1の前端部をコンテナの掬い込み床面Yに接近させて、掬い込み姿勢位置Eとすることができる。
【0008】
又、前記リフトマスト2のガイドロール3,4をガイドレール8に案内させて後方の車体5重心位置側へ移動させるときは、前記とは逆にリヤガイドロール4、及びフロントガイドロール3がリヤレール10側へ移動されて、両ガイドロール3,4が、水平状のリヤレール10に支持される状態になり、リフトフォーク1は上面に掬い込んでいるコンテナを後側上部へ持上げるようにチルトして掬い取るものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記リフトフォーク1のフォーク上面を、各ガイドロール3,4がリヤレール10に支持案内されるリフト姿勢位置Dでは、前上り傾斜B状態を維持し、フロントレール9に支持案内される掬い込姿勢位置Eでは、床面に接近した略水平状態Cとなり、又、リフト姿勢位置Dと掬い込み姿勢位置Eとの間の掬い取り姿勢位置Fでは、これら各ガイドロール3,4をフロントレール9、及びリヤレール10に支持案内させることにより、リフトフォーク1の前端を上、下に移動させながら前、後移動させて、フォーク上面の掬い角を順次緩やかに変更することを特徴とする。
【0010】
リフトフォーク1は、前記のようにリフトマスト2底部に配置のフロントガイドロール3とリヤガイドロール4が、車体5のガイドレール8に支持案内されて前後方向へ移動することにより、床面上等のコンテナ等の掬い取り乃至昇降等を行うことができる。そして、前記ガイドレール8は後部に前後方向水平状のリヤレール10を設け、前部に前下り傾斜Aのフロントレール9を連設して、前記前後方向へ移動されるフロントガイドロール3とリヤガイドロール4を、これらフロントレール9、又はリヤレール10に支持案内させて、リフトフォーク1等の作動姿勢を支持するものである。そして、リフトフォーク1をリフトマスト2に沿って上昇、及び下降させるリフト姿勢位置Dでは、リフトマスト2の底部が水平状のリヤレール10に支持されていて、このリフトフォーク1の上面が前上り傾斜Bの状態を支持して、車体5の重心位置に近い位置において、垂直状のリフトマスト2と、このリフトマスト2に支持案内される前上り傾斜Bのリフトフォーク1上面とにより支持されて昇降され、コンテナがリフトフォーク1の前端部から脱落したり、車体5が左右等に傾斜するのを防止することができる。又、これらフロントガイドロール3とリヤガイドロール4を共に前下り傾斜Aのフロントレール9に支持案内させる状態、もしくはフロントガイドロール3のみをフロントレール9の前端部に移動させて、フロントガイドロール3をリヤガイドロール4よりも低位にした状態となるリフトフォーク1の掬い込み姿勢位置Eでは、リフトフォーク1の上面を床面に接近した略前後方向に水平状態Cにすることができ、リフトフォーク1の前端側を前下り傾斜に下げないようにして掬い込んだコンテナを前端側から脱落しないようにして、掬い取ることができる。
【0011】
又、これらリフト姿勢位置Dと掬い込み姿勢位置Eとの間の掬い取り姿勢位置F(チルト位置)では、各ガイドロール3,4をフロントレール9、及びリヤレール10に支持案内させるから、リフトフォーク1の前端部を下動、又は上動させながら、この下動時には前側へ移動させてフォーク1上面の掬い角を前上り傾斜Bから水平状態Cへ順次に変化し、上動時には後側へ移動させて、掬い角を水平状態Cから前上り傾斜B状態に順次に変化して、リフトフォーク1の掬い角はもとよりリフトマスト2の垂直姿勢をも緩やかな速度で揺動させる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、フォークリフト車体5の左右両側部のサイドフレーム11を、断面コ字状の剛板部材12,13の両側の接合縁14,15の接合によってロ字形中空の断面形態に形成し、これら剛板部材12,13の接合部の一辺には、適宜幅の接合縁14,15相互を重合接合する重合部16を形成し、この重合部16の外側面に沿って前記下部レール6を接合させたことを特徴とする。
【0013】
前記フォークリフト車体5は、左右両側に前後方向に沿うサイドフレーム11を構成して、このサイドフレーム11の内側に沿ってリフトマスト2底部のフロントガイドロール3とリヤガイドロール4を支持案内するガイドレール8を取付ける。これら左右一対のサイドフレーム11が、前記のように上下に対向する断固コ字状の剛板部材12,13の接合によってロ字形中空断面形態(ロ形チューブ材)に構成される。このような比較的薄い剛板部材12,13からロ字形中空断面形態のサイドフレーム11を形成するが、このサイドフレーム11の一側辺部には、適宜幅の接合縁14,15相互を重合接合する重合部16を形成して、この重合部16をリフトフォーク1等の前後方向移動通路側に対向させて、車体5の左右両側部にサイドフレーム11を平行状に配置する。前記リフトマスト2底部のガイドロール3,4を支持案内するガイドレール8は、これら両側のサイドフレーム11の対向側面部に形成して、下部レール6を前記接合縁14,15相互の重合部16に沿って一体的に接合させている。又、前記サイドフレーム11の前端部には、車体5後部に搭載のモータ24によって伝動回転される前輪19を軸装して、このサイドフレーム11の中空部内に設ける伝動機構のチェンを介して連動される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明は、前記前後一対のフロントガイドロール3とリヤガイドロール4を配置したリフトフォーク1及びこのリフトマスト2を前後方向へ移動案内するガイドレール8は、前部のフロントレール9を、後部の前後方向水平状に形成のリヤレール10の前端に、前下り傾斜Aの屈曲形態にして連設構成するものであるから、リフトフォーク1をコンテナの底部へ差込む掬い込み姿勢位置E、及びこのコンテナを救い込んだ掬い込み姿勢位置Eからリフトフォーク1上面に支持して床面上に持上げる掬い取り姿勢位置F等の、リフトフォーク1上面のチルト角度が変化する作動行程において、前記フロントガイドロール3、又はリヤガイドロール4毎、リヤレール10からフロントレール9へ移動案内し、又はフロントレール9からリヤレール10へ移動案内するもので、前記リフトフォーク1等のチルト角度のためのフロントレール9の前下り傾斜A角度を小さく設定して、下部レール6と上部レール7との間に形成のロールガイド面の凹凸変化をなくして簡潔に、小さく屈曲形成して、リフトマスト2やリフトフォーク1の揺動を少なくして、円滑に、緩速に行わせることができ、車体5の揺動、振動等を軽減して、安定したリフト作業を行うことができる。又、前記ガイドレール8は、上部レール7と下部レール6とを平行形態に構成して、リヤレール10の前側にフロントレール9を、前下り傾斜Aの屈曲形態にして単に屈曲角度を設定して連設構成するものであるから、構成を簡単にし、安価にすることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記のようなリフトフォーク1を昇降案内するリフトマスト2の底部に配置のフロントガイドロール3とリヤガイドロール4とを支持案内して前後方向へ移動させてコンテナ等の掬い取り、昇降等を行うフォークリフトにおいて、前記ガイドロール3,4を案内するガイドレール8のリヤレール10に対するフロントレール9の連設を、前下り傾斜Aに屈曲形態にして形成し、前記リフトマスト2に対するリフトフォーク1上面の掬い角を前上り傾斜Bに設定することによって、前記リフトフォーク1の掬い込み姿勢位置Eではこのリフトフォーク1上面の掬い角を前後水平状態Cにし、又、このリフトフォーク1のリフトマスト2による昇降のリフト姿勢位置Dにおいては掬い角を前上り傾斜Bに維持して、リフトフォーク1の前端部からコンテナが脱落し難く、安定した安全姿勢のリフト作業を行うことができる。しかも、これらリフト姿勢位置Dと掬い込み姿勢位置Eとの間の掬い取り姿勢位置Fでは、各ガイドロール3,4をフロントレール9、及びリヤレール10に支持案内させて前後揺動させるものであるから、リフトフォーク1の前端を下動、又は上動させながら、この下動時には、前側へ移動させて、このリフトフォーク1上面の掬い角を前上り傾斜Bの姿勢から前後方向水平状態Cに順次偏倚して掬い込み姿勢位置Eとなり、又、上動時には、後側へ移動されて、掬い角を水平状態Cから前上り傾斜B状態に順次偏倚してリフト姿勢位置Dとなる等の掬い取り姿勢位置Fのリフトフォーク1等のチルト作動を緩やかに行わせることができ、従って、コンテナ等の掬い取り姿勢、及び昇降姿勢の揺動、振動等を軽減することができ、正確で、円滑な安定した掬い取り昇降作業を行うことができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記フォークリフト車体5のサイドフレーム11を比較的薄い剛板部材12,13からなるロ字形中空の断面形態に形成するため、単なる接合により簡単で軽量な構成とすることができ、しかもこの剛板部材12,13の接合縁14,15相互の重合部16に下部レール6を接合するものであるから、荷重負荷の大きい下部レール6の取付支持構成の剛性、強度を高くして、リフトフォーク1、及びリフトマスト2等の掬い取り作動、及び昇降作動等を円滑に安定した姿勢で行わせることができ、前記電動モータ等の駆動による車体5移動を軽快に行わせて、リフト作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一部の作動状態を示すフォークリフトの側面図。
【図2】その平面図。
【図3】その平面図。
【図4】そのリフトフォーク前後移動状態を示す拡大側面図。
【図5】そのガイドレール部の側面図。
【図6】そのサイドフレーム部の側面図(イ)と、そのフレーム線断面図(ロ)、ハ−ハ線断面図(ハ)、及びニ−ニ線断面図(ニ)。
【図7】リフトマスト底部のガイドローラ部の平面図(イ)と、側面図(ロ)。
【図8】リフトフォークを上昇させてからの前後移動状態を示す一部側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面に基づいて、リーチ形態のフォークリフトは、バッテリ23によって電動のモータ24を搭載する車体5の前部に、左右両側部に沿う前後方向のサイドフレーム11を設け、このサイドフレーム11の前端部に前輪19を軸29装して、前記モータ24から伝動機構、及び前記サイドフレーム11内の伝動チェン等を経て連動回転させる。この前輪19の駆動と、車体5後部に配置のキャスタ輪20とによって床面Y上を走行移動することができる。前記車体5の後部上のボンネット17内に、バッテリ23や、モータ24、前記前輪19を伝動するための伝動機構を有した伝動ケース、リフトマスト2を前後へ移動する油圧シリンダ28や、リフトマスト2に対してリフトフォーク1を昇降作動するための油圧装置、及びこれら各部を作動制御するためのコントローラ等を配置している。又、ボンネット17の上側部には、左右両側に張出すバーハンドル18を有し、このハンドル18の把持操作によってロードセルを介して左右前輪19の駆動回転方向や、駆動力等を制御して、ハンドル18操作に伴った走行速、及び操向の駆動走行を行わせるものである。又、前記ハンドル18の近傍には、操作レバー30や、操作スイッチ40等が配置されていて、リフトフォーク1の昇降操作や油圧シリンダ28への伝動の入り切り、作動方向等の切替等を操作できる。
【0019】
前記リフトフォーク1を昇降可能に装着するリフトマスト2は、前記車体5の前部のサイドフレーム11に支持されて、前後方向へ移動案内される。このリフトマスト2の底部には、左右両側部に沿うスライドブラケット21を形成し、このスライドブラケット21の下縁部に沿って前後一対のガイドロールを、フロントガイドロール3、及びリヤガイドロール4として適宜の前後間隔を有して配置して、ロール軸31の周りに回転自在に設け、これらのガイドロール3,4の下端を前記サイドフレーム11の内側面に沿って形成するガイドレール8に支持案内させて、このリフトマスト2を前後方向へ移動させることができる。又、前記スライドブラケット21の外側には、これらフロントガイドロール3とリヤガイドロール4との間の間隔部に位置して、上下方向のロール軸25の周りに回転自在のサイドロール22を前後一対配置して、このサイドロール22の回転面を前記ガイドロール3,4の外側面よりも若干外側へ突出させて、前記ガイドレール8による移動案内時にこのサイドロール22を外側のサイドフレーム11の内側対向側面に摺接させて、リフトマスト2の前後方向移動を横振れのないように案内するものである。
【0020】
前記リフトフォーク1は、リフトマスト2の前側に沿って立設のバックレスト26と、このバックレスト26の下端部から前方へ突出するフォーク7とからなり、このバックレスト26部がリフトマスト2に沿って昇降するリフトブラケット32の前側に取付けられる。このリフトブラケット32は、リフトマスト2の内側に掛け渡されたリフトチェンの昇降によって、左右のガイドロール33を昇降レール34に案内させて、上下移動される。このようにリフトフォーク1を昇降可能に装着するリフトマスト2は、底部のスライドブラケット21部と車体5後部との間に左右対角線方向に連結した油圧シリンダ28の伸縮によって、このスライドブラケット21部を前方へ移動したり、後方へ引戻し移動して、これらスライドブラケット21と一体的構成のリフトマスト2、及びリフトフォーク1等を、前記ガイドレール8に支持案内させて、前後方向へ移動する形態である。前記リフトフォーク1はバックレスト26に対して若干前上り傾斜Bに設定されて、このリフトフォーク1の昇降時のコンテナの搭載姿勢を安定維持する形態で、リフトフォーク1上面のコンテナが振動等によって前側へ移動して脱落するのを防止している。
【0021】
ここにおいて、リフトフォーク1を昇降案内するリフトマスト2底部前後に配置のフロントガイドロール3とリヤガイドロール4を、フォークリフト車体5の左右両側部において前後方向に亘って設け、各ガイドロール3,4の下側を支持案内する下部レール6と、上側を案内する上部レール7とから断面コ字状形態のガイドレール8に前記各ガイドロール3,4を嵌合支持させて前後に移動案内するように構成し、このガイドレール8の前部のフロントレール9を、前後方向水平状に形成の後部のリヤレール10の前端に、前下り傾斜Aの屈曲形態にして連設したことを特徴とするフォークリフトの構成とする。
【0022】
フォークリフト車体5をリフト対象物であるコンテナ等の掬い取り位置へ移動させて、リフト作業を行う場合は、リフトフォーク1をリフトマスト2に対してコンテナ掬い取り高さ位置へ昇降させて、このリフトマスト2を、このフロントガイドロール3とリヤガイドロール4をガイドレール8に案内させながら前側へ移動させて、床面等に積載されているコンテナの底面にリフトフォーク1を差込んで掬い込み、このリフトフォーク1をこの掬い込み位置からリフトマスト2に沿わせて若干上昇させることによって、このリフトフォーク1上面に掬い込んだコンテナを床面や、コンテナ積載面等から若干持上げて掬い取ることができ、リフト搬送の態勢へ移行することができる。このようにしてコンテナを掬い取ったリフトフォーク1を、このリフトマストの後側への戻り移動位置で、このリフトマスト2に沿って昇降することができる。そして、このリフトフォーク1及びリフトマスト2が、ガイドレール8のリヤレール10部に支持されてる状態では、このリフトマスト2底部のフロントガイドロール3とリヤガイドロール4が、共に前後方向水平状のリヤレール10部に、しかも車体5の重心近傍位置に支持案内されて、リフトフォーク1の上面に掬い取ったコンテナを安定した姿勢に支持して、運搬することができる。
【0023】
又、前記リフトフォーク1を車体5に対して前側へ推進させて、コンテナ等の底部に差込むときは、前記リヤレール10に支持されているフロントガイドロール3が前にフロントレール9へ移動されて、これらリフトマスト2及びリフトフォーク1がこのフロントレール9の前下り傾斜Aに応じた角度に順次前傾チルト作動し、リフトフォーク1の前端部をコンテナの掬い込み床面Yに接近させて、掬い込み姿勢位置Eとすることができる。
【0024】
又、前記リフトマスト2のガイドロール3,4をガイドレール8に案内させて後方の車体5重心位置側へ移動させるときは、前記とは逆にリヤガイドロール4、及びフロントガイドロール3がリヤレール10側へ移動されて、両ガイドロール3,4が、水平状のリヤレール10に支持される状態になり、リフトフォーク1は上面に掬い込んでいるコンテナを後側上部へ持上げるようにチルトして掬い取るものである。
【0025】
又、前記リフトフォーク1のフォーク上面を、各ガイドロール3,4がリヤレール10に支持案内されるリフト姿勢位置Dでは、前上り傾斜B状態を維持し、フロントレール9に支持案内される掬い込姿勢位置Eでは、床面に接近した略水平状態Cとなり、又、リフト姿勢位置Dと掬い込み姿勢位置Eとの間の掬い取り姿勢位置Fでは、これら各ガイドロール3,4をフロントレール9、及びリヤレール10に支持案内させることにより、リフトフォーク1の前端を上、下に移動させながら前、後移動させて、フォーク上面の掬い角を順次緩やかに変更することを特徴とする。
【0026】
リフトフォーク1は、前記のようにリフトマスト2底部に配置のフロントガイドロール3とリヤガイドロール4が、車体5のガイドレール8に支持案内されて前後方向へ移動することにより、床面上等のコンテナ等の掬い取り乃至昇降等を行うことができる。そして、前記ガイドレール8は後半部に前後方向水平状のリヤレール10を設け、前半部に前下り傾斜Aのフロントレール9を連設して、前記前後方向へ移動されるフロントガイドロール3とリヤガイドロール4を、これらフロントレール9、又はリヤレール10に支持案内させて、リフトフォーク1等の作動姿勢を支持するものである。そして、リフトフォーク1をリフトマスト2に沿って上昇、及び下降させるリフト姿勢位置Dでは、リフトマスト2の底部が水平状のリヤレール10に支持されていて、このリフトフォーク1の上面が前上り傾斜Bの状態を支持して、車体5の重心位置に近い位置において、垂直状のリフトマスト2と、このリフトマスト2に支持案内される前上り傾斜Bのリフトフォーク1上面とにより支持されて昇降され、コンテナがリフトフォーク1の前端部から脱落したり、車体5が左右等に傾斜するのを防止することができる。又、これらフロントガイドロール3とリヤガイドロール4を共に前下り傾斜Aのフロントレール9に支持案内させる状態、もしくはフロントガイドロール3のみをフロントレール9の前端部に移動させて、フロントガイドロール3をリヤガイドロール4よりも低位にした状態となるリフトフォーク1の掬い込み姿勢位置Eでは、リフトフォーク1の上面を床面に接近した略前後方向に水平状態Cにすることができ、リフトフォーク1の前端側を前下り傾斜に下げないようにして掬い込んだコンテナを前端側から脱落しないようにして、掬い取ることができる。
【0027】
又、これらリフト姿勢位置Dと掬い込み姿勢位置Eとの間の掬い取り姿勢位置F(チルト位置)では、各ガイドロール3,4をフロントレール9、及びリヤレール10に支持案内させるから、リフトフォーク1の前端部を下動、又は上動させながら、この下動時には前側へ移動させてフォーク1上面の掬い角を前上り傾斜Bから水平状態Cへ順次に変化し、上動時には後側へ移動させて、掬い角を水平状態Cから前上り傾斜B状態に順次に変化して、リフトフォーク1の掬い角はもとよりリフトマスト2の垂直姿勢をも緩やかな速度で揺動させる。
【0028】
更には、フォークリフト車体5の左右両側部のサイドフレーム11を、断面コ字状の剛板部材12,13の両側の接合縁14,15の接合によってロ字形中空の断面形態に形成し、これら剛板部材12,13の接合部の一辺には、適宜幅の接合縁14,15相互を重合接合する重合部16を形成し、この重合部16の外側面に沿って前記下部レール6を接合させたことを特徴とする。
【0029】
前記フォークリフト車体5は、左右両側に前後方向に沿うサイドフレーム11を構成して、このサイドフレーム11の内側に沿ってリフトマスト2底部のフロントガイドロール3とリヤガイドロール4を支持案内するガイドレール8を取付ける。これら左右一対のサイドフレーム11が、前記のように上下に対向する断固コ字状の剛板部材12,13の接合によってロ字形中空断面形態(ロ形チューブ材)に構成される。このような比較的薄い剛板部材12,13からロ字形中空断面形態のサイドフレーム11を形成するが、このサイドフレーム11の一側辺部には、適宜幅の接合縁14,15相互を重合接合する重合部16を形成して、この重合部16をリフトフォーク1等の前後方向移動通路側に対向させて、車体5の左右両側部にサイドフレーム11を平行状に配置する。前記リフトマスト2底部のガイドロール3,4を支持案内するガイドレール8は、これら両側のサイドフレーム11の対向側面部に形成して、下部レール6を前記接合縁14,15相互の重合部16に沿って一体的に接合させている。又、前記サイドフレーム11の前端部には、車体5後部に搭載のモータ24によって伝動回転される前輪19を軸装して、このサイドフレーム11の中空部内に設ける伝動機構のチェンを介して連動される。
【0030】
前記サイドフレーム11の構成において、上、下側から突合せる剛板部材12,13の突合せ縁14,15の高さを適宜に設定して、車体5の外側に対向する接合縁14,15は、図6(ロ)のように、ロ字形断面の上下中間位置にて突合せて接合部35を形成し、この接合部35を溶接する。この接合部35とは反対側のサイドフレーム11の内側面に、上下から接合縁14,15を延設して重合部16を形成し、この重合部16を溶接して一体構成する。この重合部16の高さ(乃至幅)は、ロ字形断面の内側面高さの下半部に設定しているが、接合縁15を上側の接合縁14と同程に広く形成して、内側面全高さに亘って重合部16を形成することもできる。前記サイドフレーム11の前端部には、ガイドレール8側とは反対側の外側面にプレートブラケット36を取付けて、このプレートブラケット36に前輪軸9の軸受けメタルを装着している。前記サイドフレーム11の内側面に取付けるガイドレール8は、断面方形状の角無垢材により下部レール6、及び上部レール7を形成している。図例ではこの下部レール6の取付位置を重合部16としているが、前記のように重合部16の高さを広くして上部レール7をも重合部16に取付けることもできる。
【0031】
前記ガイドレール8は、サイドフレーム11の内側面に沿って設けられる上部レール7と下部レール6とによって形成されるが、これら上部レール7と下部レール6は、前後途中位置で前部のフロントレール9を、前後水平状態にある後部のリヤレール10に対して前下り傾斜Aに屈曲させて、この屈曲位置Kを上部レール7、下部レール6共に同位相位置に揃えて設定して、フロントレール9部からリヤレール10部に至る全長に亘って平行状に構成している。そして、この水平なリヤレール10の前端部でのリフトフォーク1の支持高さH1に対して、フロントレール9の前端部でのフォーク1の支持高さH2を低くするように(H2<H1)設定して、このフロントレール9に支持案内されるリフトフォーク1の前端部を床面Y上に接近させて、コンテナの掬い込みを行い易く構成するものである。又、このリフトフォーク1の掬い込み姿勢位置Eでのフォーク上面の掬い角は、前後方向略水平状態Cに設定するから、前記フロントレール9の前下り傾斜Aの角度は、前記リフトフォーク1の前上り傾斜Bの角度と略同じ角度となるように設定され、フロントレール9の屈曲位置Kでの前下り傾斜A角度を小さくして、各ガイドロール3,4の移動案内において、上下揺動や、振動等を少なくし円滑に案内させる構成としている。
【0032】
図8は、パレット上に積載した荷物を掬い込み姿勢位置Eから若干上昇させた後、リフト姿勢位置Dまでリフトフォーク1を後移動させた状態を示したものである。通常のパレット掬い込み動作において、パレット幅は左右各々のガイドレール8の内幅よりも広い場合がほとんどであり、このパレットを掬い込み姿勢位置Eで掬い込む際にはパレット底面をサイドフレーム11上面よりも高位に上昇させた後にリフトフォーク1を後移動させる。これは、パレット及びリフトフォーク1を上昇させずに後移動させると、パレット後端部がサイドフレーム11前端部に接触してしまうことによるものであり、仮にパレット横幅が左右各々のガイドレール8間の幅よりも狭い場合には、掬い込み姿勢位置Eでリフトフォーク1を上昇させなくてもそのままリフトフォーク1を後移動させることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 リフトフォーク
2 リフトマスト
3 ガイドロール(フロントガイドロール)
4 ガイドロール(リヤガイドロール)
5 車体
6 下部レール
7 上部レール
8 ガイドレール
9 フロントレール
10 リヤレール
11 サイドフレーム
12 剛板部材(上)
13 剛板部材(下)
14 接合縁(上)
15 接合縁(下)
16 重合部
A 傾斜
C 水平状態
D リフト姿勢位置
E 掬い込み姿勢位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフトフォーク(1)を昇降案内するリフトマスト(2)底部前後に配置のフロントガイドロール(3)とリヤガイドロール(4)を、フォークリフト車体(5)の左右両側部において前後方向に亘って設け、各ガイドロール(3),(4)の下側を支持案内する下部レール(6)と、上側を案内する上部レール(7)とから断面コ字状形態のガイドレール(8)に前記各ガイドロール(3),(4)を嵌合支持させて前後に移動案内するように構成し、このガイドレール(8)の前部のフロントレール(9)を、前後方向水平状に形成の後部のリヤレール(10)の前端に、前下り傾斜(A)の屈曲形態にして連設したことを特徴とするフォークリフト。
【請求項2】
前記リフトフォーク(1)のフォーク上面を、各ガイドロール(3),(4)がリヤレール(10)に支持案内されるリフト姿勢位置(D)では、前上り傾斜(B)状態を維持し、フロントレール(9)に支持案内される掬い込姿勢位置(E)では、床面に接近した略水平状態(C)となり、又、リフト姿勢位置(D)と掬い込み姿勢位置(E)との間の掬い取り姿勢位置(F)では、これら各ガイドロール(3),(4)をフロントレール(9)、及びリヤレール(10)に支持案内させることにより、リフトフォーク(1)の前端を上、下に移動させながら前、後移動させて、フォーク上面の掬い角を順次緩やかに変更することを特徴とする請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項3】
フォークリフト車体(5)の左右両側部のサイドフレーム(11)を、断面コ字状の剛板部材(12),(13)の両側の接合縁(14),(15)の接合によってロ字形中空の断面形態に形成し、これら剛板部材(12),(13)の接合部の一辺には、適宜幅の接合縁(14),(15)相互を重合接合する重合部(16)を形成し、この重合部(16)の外側面に沿って前記下部レール(6)を接合させたことを特徴とする請求項1、又は2に記載のフォークリフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−49533(P2013−49533A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189044(P2011−189044)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000144980)株式会社アテックス (111)
【Fターム(参考)】