説明

フォーク装置

【課題】チェーン部材が摺動台に対してたすき掛けされるフォーク装置において、カーブドチェーンを必要とせずかつスプロケットの回転抵抗の増加を抑制する。
【解決手段】チェーン部材が、当該チェーン部材の一端側を構成する第1チェーンと、当該チェーン部材の他端側を構成すると共に第1チェーンに対して平行に変位して配置される第2チェーンと、第1チェーンと第2チェーンとが交差する領域を外して第1チェーンと第2チェーンとを連結する連結部とを有し、スプロケットの少なくともいずれかは、第1チェーンに嵌合可能な第1歯60と第2チェーンに嵌合可能な第2歯70とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、例えば自動倉庫においては、フォーク装置を用いて保管対象物の搬送を行っている。
このような保管対象物等の物品を搬送するフォーク装置は、基台とこの基台に対してスライド可能な摺動台とを備えており、摺動台を基台に対してスライドさせることによって物品を水平方向に移動する。
【0003】
ところで、フォーク装置においては、単一のモータによって安定したスライドフォークの移動を実現するために、基台に対してスプロケットを固定し、このスプロケットを介して摺動台に対してチェーン部材をたすき掛けする構成が多く用いられている。
ただし、チェーン部材を摺動台に対してたすき掛けする場合には、チェーン部材の一端部側と他端部側とが交差するため、この交差領域における一端部側と他端部側との干渉を防止する必要がある。このため、従来は、本来チェーンが湾曲できない方向へ湾曲可能とした、いわゆるカーブドチェーンを用いることによって交差領域における干渉を回避していた。
【0004】
ところが、カーブドチェーンは、通常のチェーンに対して連結点における剛性が弱い。このため、搬送する物品の重量や摺動台の重量に基づいて必要とされる引張強度を得るために、大径のピンを有するカーブドチェーンを用いざるを得なかった。この結果、通常のチェーンを用いる場合と比較して、チェーン部材の厚みが厚くなり、フォーク装置の大型化を招くこととなる。
【0005】
これに対して、特許文献1には、平行に変位して配置される2本のチェーンと、このチェーンを連結する連結部からなるチェーン部材を用いることによって、カーブドチェーンを用いることなく交差領域における干渉を回避する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2985783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において、チェーン部材が噛み合うスプロケットは、2本あるチェーンのいずれかのみに嵌合する歯のみを有している。このため、連結部で連結された領域が当該スプロケットに掛かった場合には、チェーン部材が幅方向の片側のみで支えられることとなり、チェーン部材が傾いてしまう。
このようにチェーン部材が傾くと、スプロケットの歯の側面にチェーンが強く押し付けられることとなり、スプロケットの回転抵抗が増し、スムーズな物品の搬送が困難となる虞がある。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、チェーン部材が摺動台に対してたすき掛けされるフォーク装置において、カーブドチェーンを必要とせずかつスプロケットの回転抵抗の増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、基台と、該基台に対して摺動可能とされる摺動台と、上記基台に固定されるスプロケットと、両端が上記摺動台に固定されると共に複数の上記スプロケットを介して上記摺動台にたすき掛けされるチェーン部材とを備えるフォーク装置であって、上記チェーン部材は、当該チェーン部材の一端側を構成する第1チェーンと、当該チェーン部材の他端側を構成すると共に上記第1チェーンに対して平行に変位して配置される第2チェーンと、上記第1チェーンと上記第2チェーンとが交差する領域を外して上記第1チェーンと上記第2チェーンとを連結する連結部とを有し、上記スプロケットの少なくともいずれかは、上記第1チェーンに嵌合可能な第1歯と上記第2チェーンに嵌合可能な第2歯とを有するという構成を採用する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、互いの間で上記連結部が移動するスプロケット同士であって、上記チェーン部材に沿った距離が最も離間するスプロケット同士が、上記第1歯及び上記第2歯を有するという構成を採用する。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記スプロケットとして駆動スプロケットを備え、該駆動スプロケットが、上記第1歯及び上記第2歯とを有するという構成を採用する。
【0013】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記第1チェーンと上記第2チェーンとの両方が到達する全てのスプロケットが上記第1歯及び上記第2歯を有するという構成を採用する。
【0014】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記連結部によって連結される領域のチェーン部材の長手方向における長さが、上記チェーン部材に求められる曲げ強度に応じて設定されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スプロケットの少なくともいずれかが、第1チェーンに嵌合可能な第1歯と第2チェーンに嵌合可能な第2歯とを有する。
このため、第1歯と第2歯とを有するスプロケットに、チェーン部材の連結部で連結された領域が掛かった場合であっても、当該スプロケットにおいてチェーン部材が傾くことを防止することができる。このため、当該スプロケットの回転抵抗が増加することを防止することができる。
【0016】
また、本発明によれば、チェーン部材が、当該チェーン部材の一端側を構成する第1チェーンと、当該チェーン部材の他端側を構成すると共に第1チェーンに対して平行に変位して配置される第2チェーンと、第1チェーンと第2チェーンとが交差する領域を外して第1チェーンと第2チェーンとを連結する連結部とを有する。
このため、カーブドチェーンを用いることなく、交差領域における干渉を回避することができる。
【0017】
したがって、本発明によれば、チェーン部材が摺動台に対してたすき掛けされるフォーク装置において、カーブドチェーンを必要とせずかつスプロケットの回転抵抗の増加を抑制することが可能となる。
【0018】
なお、上述の先行技術文献1においては、スプロケットがどちらか一方のチェーンにしか噛み合うことができないため、摺動台に求められるストローク量を実現するために各チェーンを長く確保する必要があり、この結果、連結部も長くならざるを得なく、チェーン部材の重量化につながる。
これに対して、本発明においては、第1歯と第2歯とを有するスプロケットを採用することによって、当該スプロケットが、第1チェーンと第2チェーンとのいずれに対しても噛み合うことが可能となる。
このため、チェーン部材において、従来2本のチェーンが配列されていた領域の一部を1本のチェーンで構成できる可能性が生まれる。そして、従来2本のチェーンが配列されていた領域の一部を1本のチェーンで構成する場合には、いずれかのチェーンの長さ及び連結部を短くすることができ、チェーン部材の軽量化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態におけるフォーク装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるフォーク装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるフォーク装置が備える中間フォーク駆動部のみを抽出した模式図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるフォーク装置が備えるチェーン部材の平面図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるフォーク装置が備える駆動スプロケット、第2従動スプロケット及び第3従動スプロケットの平面図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるフォーク装置が備える第1従動スプロケットの平面図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるフォーク装置が備える第4従動スプロケットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係るフォーク装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0021】
図1及び図2は本実施形態のフォーク装置の概略構成図であり、図1が平面図、図2が側面図である。なお、視認を容易とするために、図1において後述するチェーン部材66の一部を省略し、図2においてチェーン部材66を省略している。
本実施形態のフォーク装置Sは、例えば自動倉庫に設置されるスタッカクレーンや無人搬送車に搭載され、自動倉庫内において物品の搬送を行うものである。
そして、図1及び図2に示すように、本実施形態のフォーク装置Sは、固定フォーク1(基台)と、中間フォーク2(摺動台)と、先端フォーク3と、駆動部4とを備えている。
【0022】
固定フォーク1は、積層して配置される固定フォーク1と中間フォーク2と先端フォーク3のうち最下段に配置され、中間フォーク2を一方向に摺動可能に支持するものである。そして、固定フォーク1は、図1に示すように、中間フォーク2と先端フォーク3との摺動方向を長辺とする矩形状とされており、フォーク装置Sの設置台等に直接固定される。
【0023】
中間フォーク2は、固定フォーク1と先端フォーク2との間に配置されて、自らの摺動方向と同じ方向に先端フォーク3を摺動可能に支持するものである。そして、中間フォーク2は、図1に示すように、自らと先端フォーク3との摺動方向を長辺とする矩形状とされている。
【0024】
先端フォーク3は、積層して配置される固定フォーク1と中間フォーク2と先端フォーク3のうち最上段に配置され、搬送対象である物品を載置可能に構成されている。そして、先端フォーク3は、図1に示すように、自らと中間フォーク2との摺動方向を長辺とする矩形状とされている。
【0025】
なお、本実施形態の中間フォーク2と先端フォーク3とは、固定フォーク1の直上に積層された状態から図2に示す左右方向のどちらにも摺動できるように構成されている。
そして、以下の説明においては、説明の便宜上、図2に示す左側を前方、図2示す右側を後方として説明する。
【0026】
駆動部4は、中間フォーク2及び先端フォーク3を摺動するものであり、モータ5と、中間フォーク2を摺動する中間フォーク駆動部6と、先端フォーク3を摺動する先端フォーク駆動部7とを備えている。
【0027】
モータ5は、中間フォーク2及び先端フォーク3を摺動するための駆動力を発生するものであり、図2に示すように、後述する駆動スプロケット61に対して回転動力を伝達するものである。
【0028】
図3は、中間フォーク駆動部6のみを抽出した模式図である。そして、この図に示すように、中間フォーク駆動部6は、駆動スプロケット61(スプロケット)と、第1〜第4従動スプロケット62〜65(スプロケット)と、チェーン部材66と、第1チェーンテンショナ67と、第2チェーンテンショナ68とを備えている。
【0029】
駆動スプロケット61は、固定フォーク1に回転可能に固定されており、モータ5から回転動力が伝達されるスプロケットである。
そして、駆動スプロケット61は、図3に示すように、固定フォーク1の後方側に配置されており、第1〜第4従動スプロケット62〜65よりも下方に配置されている。
【0030】
第1〜第4従動スプロケット62〜65は、固定フォーク1に回転可能に固定されており、チェーン部材66を支持してチェーン部材66の移動に伴って回転されるスプロケットである。
【0031】
そして、図3に示すように、第1従動スプロケット62は、チェーン部材66に沿う方向において第1チェーンテンショナ67との間に配置されており、駆動スプロケット61の上方に配置されている。
【0032】
また、第2従動スプロケット63は、チェーン部材66に沿う方向において第1従動スプロケット62と供に駆動スプロケット61を挟んで配置されている。そして、第2従動スプロケット63は、固定フォーク1の後方側であって、水平方向において駆動スプロケット61及び第1従動スプロケット62よりも僅かに前方側、かつ、高さ方向において駆動スプロケット61と第1従動スプロケット62との間に配置されている。
【0033】
また、第3従動スプロケット64は、チェーン部材66に沿う方向において第2従動スプロケット63と第4従動スプロケット65との間に配置されている。そして、第3従動スプロケット64は、固定フォーク1の前方側であって、第2従動スプロケット63と同じ高さに配置されている。
【0034】
また、第4従動スプロケット65は、チェーン部材66に沿う方向において第3従動スプロケット64と第2チェーンテンショナ68との間に配置されている。そして、第4従動スプロケット65は、水平方向において第3従動スプロケット65よりも僅かに前方側、かつ、高さ方向において第3従動スプロケット65よりも僅かに上方に配置されている。
【0035】
なお、図1に示すように、駆動スプロケット61及び第1〜第4従動スプロケット62〜65は、中間フォーク2の摺動方向において重ねて配置されている。
【0036】
チェーン部材66は、図3に示すように、両端が第1チェーンテンショナ67と、第2チェーンテンショナ68を介して中間フォーク2に固定され、駆動スプロケット61及び第1〜第4従動スプロケット62〜65を介して中間フォーク2に対してたすき掛けされている。
より詳細には、チェーン部材66は、図3に示すように、一端66aが中間フォーク2の前方側に固定された第1チェーンテンショナ67に接続され、第1従動スプロケット62の上側に廻し掛けられ、駆動スプロケット61の下側に廻し掛けられ、第2従動スプロケット63の上側に廻し掛けられ、第3従動スプロケット64の上側に廻し掛けられ、第4従動スプロケット65の下側から上側に廻し掛けられ、他端66bが中間フォーク2の後方側に固定された第2チェーンテンショナ68に接続されている。
【0037】
第1チェーンテンショナ67は、チェーン部材66の一端66aが接続されるものであり、上述のように中間フォーク2の前方側に固定されている。
また、第2チェーンテンショナ68は、チェーン部材66の他端66bが接続されるものであり、上述のように中間フォーク2の後方側に配置されている。
そして、これらの第1チェーンテンショナ67及び第2チェーンテンショナ68は、チェーン部材66に掛けるテンションを調節可能に構成されており、固定フォーク1に対する中間フォーク2の摺動に最適なテンションチェーン部材66に対して掛ける。
【0038】
そして、本実施形態のフォーク装置Sにおいてチェーン部材66は、図4に示すように、第1チェーン10と、第2チェーン20と、連結チェーン30(連結部)とを有している。
【0039】
第1チェーン10は、その長さをチェーン部材66の全長よりも短くかつチェーン部材66の半分の長さよりも長く設定されており、チェーン部材66の一端66a側を構成している。つまり、第1チェーン10の一端は、チェーン部材66の一端66aとして第1チェーンテンショナ67に接続されている。
【0040】
第2チェーン20は、第1チェーン10に対して水平方向に平行に変位して配置されており、チェーン部材66の他端66b側を構成している。つまり、第2チェーン20の一端は、チェーン部材66の他端66bとして第2チェーンテンショナ68に接続されている。なお、第2チェーン20も、上記第1チェーン10と同様に、その長さをその長さをチェーン部材66の全長よりも短くかつチェーン部材66の半分の長さよりも長く設定されている。
【0041】
連結チェーン30は、図4に示すように、第1チェーン10と第2チェーン20との間に配置されており、チェーン部材66の長手方向で第1チェーン10と第2チェーン20とが重なる領域において第1チェーン10と第2チェーン20とを連結している。
なお、連結チェーン30は、チェーン部材66の長手方向において、中間フォーク2が摺動して固定フォーク1に対して最大限に変位した場合であっても、図3に示す交差領域Rに到達しない部位に設けられている。つまり、連結チェーン30は、第1チェーン10と第2チェーン20とが交差する領域(交差領域R)を外して第1チェーン10と第2チェーン20とを連結している。
【0042】
そして、本実施形態のフォーク装置Sにおいては、駆動スプロケット61、第2従動スプロケット63及び第3従動スプロケット64は、図5に示すように、軸部40に対して設けられる、第1チェーン10に嵌合可能な第1歯60と、第2チェーン20に嵌合可能な第2歯70とを有している。
また、第1従動スプロケット62は、図6に示すように、第1チェーン10に嵌合可能な第1歯60のみを有している。また、第4従動スプロケット65は、第2チェーン20に嵌合可能な第2歯70のみを有している。
【0043】
なお、本実施形態のフォーク装置Sにおいては、中間フォーク2が固定フォーク3の直上に位置するホームポジションにおいて、チェーン部材66の連結チェーン30が、第2従動スプロケット63と第3従動スプロケット64との間に配置されるように構成されている。この連結チェーン30は、中間フォーク2の摺動に伴うチェーン部材66の移動により、スプロケット(駆動スプロケット61や第1〜第4従動スプロケット62〜65)同士の間を移動する。
そして、本実施形態のフォーク装置Sにおいて、互いの間で連結チェーン30が移動するスプロケット同士であって、チェーン部材66に沿った距離が最も離間するスプロケット同士である第2従動スプロケット63と第3従動スプロケット64とは、互いに上記第1歯60及び第2歯70を有している。
【0044】
図1に戻り、先端フォーク駆動部7は、中間フォーク2と固定フォーク1に対する摺動を利用して先端フォーク3を中間フォーク2に対して摺動するものであり、先端フォーク3を前方に摺動させる前方駆動部71と、先端フォーク3を後方に摺動させる後方駆動部72とを有している。
【0045】
前方駆動部71は、固定フォーク1の後方側に設置されるチェーンテンショナ71aと、中間フォーク2の前方側に回転可能に設置される従動スプロケット71bと、先端フォーク3の後方側に設置される固定部71cと、一端がチェーンテンショナ71aに接続され他端が固定部71cに接続されて従動スプロケット71bの前方側に廻し掛けられるチェーン71dとを有している。
【0046】
後方駆動部72は、固定フォーク1の前方側に設置されるチェーンテンショナ72aと、中間フォーク2の後方側に回転可能に設置される従動スプロケット72bと、先端フォーク3の前方側に設置される固定部72cと、一端がチェーンテンショナ72aに接続され他端が固定部72cに接続されて従動スプロケット72bの後方側に廻し掛けられるチェーン72dとを有している。
【0047】
このように構成された本実施形態のフォーク装置Sでは、モータ5によって駆動スプロケット61が回転駆動されることによって中間フォーク2及び先端フォーク3が摺動する。
【0048】
より詳細には、図3において駆動スプロケット61が左回転すると、チェーン部材66の他端66bが引っ張られる方向にチェーン部材66が移動し、これに伴って中間フォーク2が前方方向に摺動する。
この際、中間フォーク2の前方方向への摺動により、図1に示す先端フォーク駆動部7の従動スプロケット71bが前方に移動する。この結果、チェーン71dが移動し、先端フォーク駆動部7の固定部71cが引っ張られ、先端フォーク3が前方に摺動する。
【0049】
一方、図3において駆動スプロケット61が右回転すると、チェーン部材66の一端66aが引っ張られる方向にチェーン部材66が移動し、これに伴って中間フォーク2が後方方向に摺動する。
この際、中間フォーク2の後方方向への摺動により、図1に示す先端フォーク駆動部7の従動スプロケット72bが後方に移動する。この結果、チェーン72dが移動し、先端フォーク駆動部7の固定部72cが引っ張られ、先端フォーク3が後方に摺動する。
【0050】
ここで、本実施形態のフォーク装置Sによれば、駆動スプロケット61、第2従動スプロケット63及び第3従動スプロケット64が、第1チェーン10に嵌合可能な第1歯60と第2チェーン20に嵌合可能な第2歯70とを有する。
このため、駆動スプロケット61、第2従動スプロケット63及び第3従動スプロケット64に、チェーン部材66の連結チェーン30で連結された領域が掛かった場合であっても、チェーン部材66が第1歯60と第2歯70とによって支持される。このため、駆動スプロケット61、第2従動スプロケット63及び第3従動スプロケット64においてチェーン部材66が傾くことを防止することができる。したがって、駆動スプロケット61、第2従動スプロケット63及び第3従動スプロケット64の回転抵抗が増加することを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態のフォーク装置Sによれば、チェーン部材66が、当該チェーン部材66の一端66a側を構成する第1チェーン10と、当該チェーン部材66の他端66b側を構成すると共に第1チェーン10に対して平行に変位して配置される第2チェーン20と、第1チェーン10と第2チェーン20とが交差する領域(交差領域R)を外して第1チェーン10と第2チェーン20とを連結する連結チェーン30とを有する。
このため、カーブドチェーンを用いることなく、交差領域Rにおけるチェーン部材66干渉を回避することができる。
【0052】
以上のように、本実施形態のフォーク装置Sによれば、カーブドチェーンを必要とせずかつ駆動スプロケット61、第2従動スプロケット63及び第3従動スプロケット64の回転抵抗の増加を抑制することが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態のフォーク装置Sにおいては、第1従動スプロケット62が第1歯60のみを有し、第4従動スプロケット65が第2歯70のみを有する構成を採用している。ただし、チェーン部材66の長手方向において第1従動スプロケット62の直近には、第1歯60及び第2歯70を有する駆動スプロケット61が配置され、チェーン部材66の長手方向において第4従動スプロケット65の直近には、第1歯60及び第2歯70を有する第3従動スプロケット64が配置されている。
このため、第1従動スプロケット62に連結チェーン30によって連結された領域が到達した場合であっても、当該連結チェーン30によって連結された領域が駆動スプロケット61によって安定支持されているため、第1従動スプロケット62においてチェーン部材66が傾いてチェーン伝導に影響が及ぶほど回転抵抗が増加することはない。
同じく、第4従動スプロケット65に連結チェーン30によって連結された領域が到達した場合であっても、当該連結チェーン30によって連結された領域が第3従動スプロケット64によって安定支持されているため、第4従動スプロケット65においてチェーン部材66が傾いてチェーン伝導に影響が及ぶほど回転抵抗が増加することはない。
【0054】
また、従来のフォーク装置Sにおいては、スプロケットが第1チェーン10及び第2チェーン20のいずれかにしか噛み合うことができない。このため、チェーン部材のスプロケットからの脱離を防止してチェーン伝導を実現するためには、第1チェーン10と第2チェーン20との長さをそれぞれ中間フォーク2の移動量を確保できる長さに設定する必要が生じる。このため、第1チェーン10と第2チェーン20とが長くなり、これに伴って第1チェーン10と第2チェーン20との重なる領域に設けられる連結チェーン30の長さも長くなるため、チェーン部材66が重量化する。
【0055】
これに対して、本実施形態のフォーク装置Sにおいては、第1歯60と第2歯70とを有するスプロケットを駆動スプロケット61、第2従動スプロケット63及び第3従動スプロケット64として採用することによって、駆動スプロケット61、第2従動スプロケット63及び第3従動スプロケット64が、第1チェーン10と第2チェーン20とのいずれに対しても噛み合うことが可能となる。
このため、第1チェーン10を従来の第2チェーンとして機能させ、第2チェーン20を従来の第1チェーン10として機能させることができ、第1チェーン10と第2チェーン20との長さをそれぞれ中間フォーク2の移動量を確保できる長さに設定する必要がなくなる。よって、従来のフォーク装置Sによりも、第1チェーン10、第2チェーン20及び連結チェーン30の長さを短くすることができ、結果として、従来、第1チェーン10と第2チェーン20との2本のチェーンが配列されていた領域の一部を1本のチェーンで構成できる。
したがって、本実施形態のフォーク装置Sによれば、チェーン部材66の軽量化を図ることが可能となる。
【0056】
なお、第1チェーン10と第2チェーン20との両方が到達する(すなわち連結チェーン30が到達する)全てのスプロケットを第1歯60及び第2歯70を有する構成として全てのスプロケットで第1チェーン10と第2チェーン20の両方に噛み合えるように構成することで、極端には、第1チェーン10と第2チェーンとを連結チェーン30を構成するピン一本で連結することも可能である。
ただし、第1チェーン10と第2チェーン20とは水平方向に変位しているため、連結チェーン30には斜め方向にテンションが掛かることとなる。このため、連結チェーン30の長さがあまりにも短い場合には、上記テンションにより、連結チェーン30が水平面内で回転し、チェーン部材66自体が曲がってしまい、スプロケットにおける回転抵抗が増加してしまう虞がある。
したがって、連結チェーン30の長さ(すなわち第1チェーン10と第2チェーン20との長さ)は、連結チェーン30に掛かるテンションによってチェーン部材66自体が曲がらない剛性が確保できる長さにすることが好ましい。すなわち、本実施形態のフォーク装置Sにおいて連結チェーン30の長さは、チェーン部材66自体が曲がらない剛性が確保できる範囲で最短の長さとすることが好ましい。
このように、本実施形態のフォーク装置Sにおいては、連結チェーン30によって連結されるチェーン部材66の長手方向の長さは、チェーン部材66に求められる曲げ強度に応じて設定することが好ましい。
【0057】
最も離間してスプロケット間には、最もチェーン部材66の重量による過重が大きく作用することとなり、このようなスプロケットに連結チェーン30が掛かるとチェーン部材66が傾斜しやすくなる。
これに対して、本実施形態のフォーク装置Sにおいては、互いの間で連結チェーン30が移動するスプロケット同士であって、チェーン部材66に沿った距離が最も離間するスプロケット同士である第2従動スプロケット63及び第3従動スプロケット64は、第1歯60及び第2歯70を有する。このため、効率的にチェーン部材66の傾斜を抑制することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態のフォーク装置Sにおいては、駆動スプロケット61が第1歯60及び第2歯70を有する。このため、駆動スプロケット61が第1チェーン10及び第2チェーン20の両方に噛み合うことが可能となるため、確実にモータ5の動力をチェーン部材66に伝達することが可能となる。
【0059】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態においては、いわゆる三段式のフォーク装置について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、五段式等の多段式のフォーク装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1……固定フォーク(基台)、2……中間フォーク(摺動台)、3……先端フォーク、4……駆動部、5……モータ、6……中間フォーク駆動部、61……駆動スプロケット(スプロケット)、62……第1従動スプロケット(スプロケット)、63……第2従動スプロケット(スプロケット)、64……第3従動スプロケット(スプロケット)、65……第4従動スプロケット(スプロケット)、66……チェーン部材、66a……一端、66b……他端、67……第1チェーンテンショナ、68……第2チェーンテンショナ、7……先端フォーク駆動部、60……第1歯、70……第2歯、R……交差領域、S……フォーク装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、該基台に対して摺動可能とされる摺動台と、前記基台に固定されるスプロケットと、両端が前記摺動台に固定されると共に複数の前記スプロケットを介して前記摺動台にたすき掛けされるチェーン部材とを備えるフォーク装置であって、
前記チェーン部材は、当該チェーン部材の一端側を構成する第1チェーンと、当該チェーン部材の他端側を構成すると共に前記第1チェーンに対して平行に変位して配置される第2チェーンと、前記第1チェーンと前記第2チェーンとが交差する領域を外して前記第1チェーンと前記第2チェーンとを連結する連結部とを有し、
前記スプロケットの少なくともいずれかは、前記第1チェーンに嵌合可能な第1歯と前記第2チェーンに嵌合可能な第2歯とを有する
ことを特徴とするフォーク装置。
【請求項2】
互いの間で前記連結部が移動するスプロケット同士であって、前記チェーン部材に沿った距離が最も離間するスプロケット同士は、前記第1歯及び前記第2歯を有することを特徴とする請求項1記載のフォーク装置。
【請求項3】
前記スプロケットとして駆動スプロケットを備え、該駆動スプロケットは、前記第1歯及び前記第2歯とを有することを特徴とする請求項1または2記載のフォーク装置。
【請求項4】
前記第1チェーンと前記第2チェーンとの両方が到達する全てのスプロケットが前記第1歯及び前記第2歯を有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のフォーク装置。
【請求項5】
前記連結部によって連結される領域のチェーン部材の長手方向における長さは、前記チェーン部材に求められる曲げ強度に応じて設定されていることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のフォーク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate