説明

フタロシアニン化合物及びそれを用いた光記録媒体

【課題】 高速記録、高密度記録においても感度が高く、記録特性良好で、精度のよいピット形成が可能な、光記録媒体を提供しうる色素を供給する。
【解決手段】 下記式(1)で示されるフタロシアニン化合物。
【化1】


〔式(1)中、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価または4価の置換金属原子、またはオキシ金属を表し、L1,L2,L3及びL4は、それぞれ独立に式(a)、式(b)、
【化2】


(式(a)または式(b)中、X1,X2はC1-10のアルキル基、C1-15のアルコキシ基、C1-10のアルキルチオ基を表わし、Y1,Y2は水素原子、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、(A)は金属系化合物残基を表し、(B)はフタロシアニン化合物と(A)とを結合する基を表す。)を表し、L1〜L4のうち、少なくとも1つが(a)を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ディスク記録材料、情報記録、表示センサー、光カード等のオプトエレクトロニクス関連に有用である新規なフタロシアニン化合物と、それを記録層に含有して形成される光ディスク等の光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】コンパクトディスク(以下CDと略す)規格に対応した追記型光記録媒体としてCD−R(CD-Recordable)が提案・開発されていることは公知であり、情報記録用として広く普及している。
【0003】このCD−Rの記録、再生には一般に780nmの近赤外線半導体レーザーが用いられており、基板上の有機色素等からなる記録層に、ヒートモードで信号記録が行われる。すなわち、記録層にレーザー光が照射されると、有機色素は光吸収により熱を発生し、この発生した熱により記録層にピットが形成される。信号記録は、レーザー光を照射したときの、当該ピットが形成された部分とされていない部分との反射率の違いによって検知される。CD−Rはレッドブックや、オレンジブック等のCD規格に準拠しているため、CDプレーヤーやCD−ROMプレーヤーと互換性を有するという特徴を有し、かつ近年急速に安価に提供されていることから、パソコンの画像保存やバックアップ用、及び音楽用として爆発的に広く普及してきた。現在、CD−Rプレーヤーのレーザーパワーの向上と共に、12倍速、16倍速記録が可能となり、当初ディスク1枚に70分以上必要とされていたものが5分以下に短縮されてきている。高速記録では、短時間にピットを形成させることから、高パワーのレーザーを照射する必要があるが、高パワーのレーザー照射には、プレーヤーの負担も大きく、より高速記録を可能とするためには、低パワーでも良好に分解する色素、つまり高感度な色素が望まれている。
【0004】光ディスクや光カード等の記録媒体の記録層にフタロシアニン化合物を利用する技術は、特開昭61−154888号公報、同61−197280号公報、61−246091号公報、62−39286号公報、63−37991号公報、63−39388号公報等により広く知られているが、これらのフタロシアニン類は感度、屈折率、記録特性等の面から光記録媒体用としては不十分であった。それを改良した化合物が特開平3−62878号公報に記載されているが、レーザー光による書き込み時の記録特性に問題があり、未だ実用上十分ではなかった。また、特開平4−214388号公報、同5−238150号公報には、フッ素原子が導入されたフタロシアニン化合物が開示されているが、フッ素基の導入では基板樹脂との密着性が改良されるものの感度が低く、同5−247363号公報に記載された、フタロシアニン環に臭素原子を導入した化合物では、高速、高密度記録においては、充分な性能を有するとは言えず、同7−90186号公報に開示された、アルキル基に臭素、ヨウ素基を導入した場合、溶解性が低下し、記録媒体作成時のスピンコート溶剤への溶解性が低下する問題があった。
【0005】また、WO 98/14520には、フタロシアニン化合物にホルミル基、カルボキシル基等の置換基を修飾した化合物が記載されているが、金属系化合物の記載はなく、有機基の結合では感度の向上は十分ではなかった。
【0006】CD−Rへの書き込み及び読み出しは、780nm近傍のレーザー光を利用するので、レーザー発振波長近傍における吸収係数、屈折率等の制御及び書き込み時における精度のよいピット形成が重要である。このことは、高速記録、高密度記録において特に重要である。そのため、構造安定性が高く、レーザー発振波長近傍の光に対して屈折率が高く、分解特性が良好で、かつ感度の高い光記録媒体用色素の開発が必要となる。しかし、従来の開発された色素は、記録媒体に用いたとき、特に高速、高密度記録の感度(C/N比、最適記録パワー)、記録特性(ジッター、デビエーション)について、十分ではないという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題を改善し、高速記録、高密度記録においても感度が高く、記録特性良好で、精度のよいピット形成が可能な、光記録媒体を提供しうる色素を供給することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前項の課題を解決すべく鋭意検討の結果、本願の新規なフタロシアニン化合物が、上述の目的に合う特性を有することを見出した。即ち本発明は、■下記式(1)
【0009】
【化4】


【0010】〔式(1)中、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価または4価の置換金属原子、またはオキシ金属を表し、L1,L2,L3及びL4は、それぞれ独立に式(a)、式(b)、
【0011】
【化5】


【0012】(式(a)または式(b)中、X1,X2は置換または無置換の炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜15の直鎖または分岐のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキルチオ基を表わし、Y1,Y2は水素原子、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、(A)は金属系化合物残基を表し、(B)はフタロシアニン化合物と(A)とを結合する基を表す。)を表し、L1〜L4のうち、少なくとも1つが(a)を表す。〕
【0013】■(B)が、下記式(B−1)〜(B−3)で示される結合基から選ばれる■記載のフタロシアニン化合物。
【0014】
【化6】


【0015】[式(B−1)〜(B−3)中、Dは−N=CR5−、−NR6CO−、−CHR7OCO−、−OCO−を表し、R1〜R7は各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜15のアリール基を表し、Q1、Q2は、酸素原子または硫黄原子を表す。]
【0016】■(A)で示される金属系化合物残基がメタロセン化合物及びその誘導体の残基である■又は■記載のフタロシアニン化合物。
【0017】■ 基板、記録層、反射層からなる光記録媒体において、■〜■のいずれかに記載のフタロシアニン化合物を記録層に含有する光記録媒体。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明のフタロシアニン化合物は、650−900nmに吸収を有し、分子吸光係数も高く、長期安定性、耐久性に優れるため、半導体レーザーを用いる光記録媒体(光ディスク、光カード)等の記録材料に好適である。
【0019】以下に、本発明の好ましい態様を詳述する。式(1)中、X1,X2で表される具体例としては、置換または無置換の炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜15の直鎖または分岐のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキルチオ基が挙げられる。
【0020】置換または無置換の総炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、neo-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、シクロヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-iso-プロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2-メチル-1-iso-プロピルプロピル基、1-エチル-3-メチルブチル基、3-メチル-1-iso-プロピルブチル基、2-メチル-1-iso-プロピルブチル基、1-t-ブチル-2-メチルプロピル基、24-ジメチル-3-プロピル基、2−メチルペンチル基、2-エチルヘキシル基等の無置換のアルキル基、2-クロロエチル基、3-ブロモプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル基等のハロゲノ基で置換されたアルキル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-ブトキシエチル基、1-エトキシ-2-プロピル基、3-メトキシプロピル基、3-メトキシ-ブチル基、22-ジメチル-13ジオキソラン-4-メトキシ基、13-ジエトキシ-2-プロポキシ基等のアルコキシ基で置換されたアルキル基、2-ジメチルアミノエチル基、2-ジエチルアミノエチル基、2-ジブチルアミノエチル基、2-ジエチルアミノプロピル基等のアミノ基で置換されたアルキル基、13-ジエチルチオ-2-プロピル基等のアルキルチオ基で置換されたアルキル基等が挙げられる。
【0021】置換または無置換の総炭素数1〜15の直鎖または分岐のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、iso-プロポキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、neo-ペンチルオキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、1-iso-プロピルプロポキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,4-ジメチルペンチルオキシ基、2-メチル-1-iso-プロピルプロポキシ基、1-エチル-3-メチルブトキシ基、3-メチル-1-iso-プロピルブトキシ基、2-メチル-1-iso-プロピルブトキシ基、1-t-ブチル-2-メチルプロポキシ基、24-ジメチル-3-プロポキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基等の無置換のアルコキシ基、2-クロロエトキシ基、3-ブロモプロポキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロポキシ基等のハロゲノ基で置換されたアルコキシ基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-フェニル-2-プロポキシ基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(2,5-ジメチル)フェニル-2-プロポキシ基等のハロゲノ基及びアリール基で置換されたアルコキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-ブトキシエトキシ基、1-エトキシ-2-プロポキシ基、3-メトキシプロポキシ基、3-メトキシブトキシ基、22-ジメチル-13ジオキソラン-4-メトキシ基、13-ジエトキシ-2-プロポキシ基等のアルコキシ基で置換されたアルコキシ基、2-ジメチルアミノエトキシ基、2-ジエチルアミノエトキシ基、2-ジブチルアミノエトキシ基、2-ジエチルアミノプロポキシ基等のアミノ基で置換されたアルコキシ基、13-ジエチルチオ-2-プロポキシ基等のアルキルチオ基で置換されたアルコキシ基等が挙げられる。
【0022】置換または無置換の総炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、iso-プロピルチオ基、sec-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、neo-ペンチルチオ基、1,2-ジメチルプロピルチオ基、シクロヘキシルチオ基、1,3-ジメチルブチルチオ基、1-iso-プロピルプロピルチオ基、1,2-ジメチルブチルチオ基、1,4-ジメチルペンチルチオ基、2-メチル-1-iso-プロピルプロピルチオ基、1-エチル-3-メチルブチルチオ基、3-メチル-1-iso-プロピルブチルチオ基、2-メチル-1-iso-プロピルブチルチオ基、1-t-ブチル-2-メチルプロピルチオ基、24-ジメチル-3-プロピルチオ基、2-メチルペンチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基等の無置換のアルキルチオ基、2-クロロエチルチオ基、3-ブロモプロピルチオ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルチオ基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピルチオ基等のハロゲノ基で置換されたアルキルチオ基、2-メトキシエチルチオ基、2-エトキシエチルチオ基、2-ブトキシエチルチオ基、1-エトキシ-2-プロピルチオ基、3-メトキシ-プロピルチオ基、3-メトキシブチルチオ基、22-ジメチル-13ジオキソラン-4-メチルチオ基、13-ジエトキシ-2-プロピルチオ基等のアルコキシ基で置換されたアルキルチオ基、2-ジメチルアミノエチルチオ基、2-ジエチルアミノエチルチオ基、2-ジブチルアミノエチルチオ基、2-ジエチルアミノプロピルチオ基等のアミノ基で置換されたアルキルチオ基、13-ジエチルチオ-2-プロピルチオ基等のアルキルチオ基で置換されたアルキルチオ基等が挙げられる。
【0023】Y1,Y2で表される具体例としては、水素原子、ニトロ基、およびフッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、好ましくは、水素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0024】Mで表わされる2価金属の例としては、Cu(II)、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)など、1置換3価金属の例としては、Al−Cl、Al−Br、Al−F、Al−I、Ga−Cl、Ga−F、Ga−I、Ga−Br、In−Cl、In−Br、In−I、In−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Tl−F、Al−C65、Al−C64(CH3)、In−C65、In−C64(CH3)、In−C107、Mn(OH)、Mn(OC65)、Mn[OSi(CH33]、FeCl、RuClなどが挙げられる。2置換の4価金属の例としては、CrCl2、SiCl2、SiBr2、SiF2、SiI2、ZrCl2、GeCl2、GeBr2、GeI2、GeF2、SnCl2、SnBr2、SnI2、SnF2、TiCl2、TiBr2、TiF2、Si(OH)2、Ge(OH)2、Zr(OH)2、Mn(OH)2、Sn(OH)2、TiR2、CrR2、SiR2、SnR2、GeR2[Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基およびその誘導体を表わす]、Si(OR’)2,Sn(OR’)2、Ge(OR’)2、Ti(OR’)2、Cr(OR’)2[R’はアルキル基、アルキルカルボニル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基およびその誘導体を表わす]などが挙げられる。オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられる。
【0025】(B)で表される結合基としては、フタロシアニン化合物と、金属系化合物残基(A)を結合する事ができればなんでも良いが、例えば、下記式(B−1)〜(B−3)
【0026】
【化7】


【0027】[式(B−1)〜(B−3)中、Dは−N=CR5−、−NR6CO−、−CHR7OCO−、−OCO−を表し、R1〜R7は各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜15のアリール基を表し、Q1、Q2は、酸素原子または硫黄原子を表す。]
【0028】R1〜R7で表される置換基の具体例としては、置換または無置換の総炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、neo-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、シクロヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-iso-プロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2-メチル-1-iso-プロピルプロピル基、1-エチル-3-メチルブチル基、3-メチル-1-iso-プロピルブチル基、2-メチル-1-iso-プロピルブチル基、1-t-ブチル-2-メチルプロピル基、24-ジメチル-3-プロピル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-クロロエチル基等のハロゲノ基で置換されたアルキル基が挙げられ、
【0029】置換または無置換の総炭素数6〜15のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基等の無置換のアリール基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3--ジメチルフェニル基、26-ジメチルフェニル基、24-ジメチルフェニル基、24-ジイソプロピルフェニル基、26-ジtブチルフェニル基、3,4--ジメチルフェニル基、3,6-ジメチルフェニル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2-エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、オクチルフェニル基、2-メチル-1-ナフチル基、8-メチル-1-ナフチル基、1-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-2-ナフチル基、8-メチル-2-ナフチル基、2-エチル-1-ナフチル基等のアルキル基で置換されたアリール基、2-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,3-ジメトキシフェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,6-ジメトキシフェニル基、2,3,4-トリメトキシフェニル基、2,4,6-トリメトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、ブトキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基等のアルコキシ基で置換されたアリール基等が挙げられる。
【0030】(A)で表される、金属系化合物残基としては、金属を含む化合物の残基であればいずれでも良いが、好ましくはメタロセン化合物残基が挙げられる。このような金属を含む化合物の具体例としては、Fe(Cp)2(但しCpはシクロペンタジエニル基を表す。以下同様)、Co(Cp)2、Ni(Cp)2、Ru(Cp)2、Os(Cp)2、Mn(Cp)2、Cr(Cp)2、W(Cp)2、V(Cp)2、Sc(Cp)3、Y(Cp)3、La(Cp)3、Ce(Cp)3、Pr(Cp)3、Nd(Cp)3、Sm(Cp)3、Gd(Cp)3、Er(Cp)3、Tm(Cp)3、Yb(Cp)3、シクロペンタジエニルマンガノセントリカルボニル等のメタロセン化合物、チタノセンジフェノキシド、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニルチタニウム、シクロペンタジエニルマンガノセントリカルボニル等の置換金属を有するメタロセン化合物などが挙げられ、これらのメタロセン化合物は、アルキル基、アリール基、アシル基により置換されていてもよい。
【0031】結合基とメタロセン化合物の結合は、シクロペンタジエニル環との結合、金属との直接結合などが挙げられるが、例えばシクロペンタジエニル環との結合が挙げられる。
【0032】一般式(1)で示される化合物は、例えば下記(i)〜(iii)(Pcはフタロシアニン化合物を表し、Pcのβ位に表記の基は結合している。M’はメタロセンの金属原子、Halはハロゲンを示す。)のようにして製造することができるが、なんらこれらに限定されるものではない。
【0033】例えば、(i)ホルミルフタロシアニン化合物(I)と、メタロセンアルデヒド(II)を、ヒドラジンを用いて脱水縮合し、化合物(III)を合成する方法、
【0034】
【化8】


【0035】(ii)ハロゲンを有するフタロシアニン化合物(IV)とヒドロキシメチルフェノール(V)を用いてエーテル化し、化合物(VI)を合成した後、メタロセンカルボン酸(VII)とエステル化し、化合物(VIII)を合成する方法、
【0036】
【化9】


【0037】(iii)J.Am.Chem.Soc.,77,3012(1955)記載の方法でアミノフェノール(IX)を直接メタロセン化合物(X)と結合し、化合物(XI)を合成した後、フタロシアニン化合物とエーテル化を行い、化合物(XII)を合成する方法、等が挙げられる。
【0038】
【化10】


【0039】また、フタロシアニン化合物は、公知の様に構造異性体が存在し、得られる化合物はこれらの混合物である。さらに、本願では、金属系化合物を結合させることから、多くの構造異性体が生成する他に、置換数の異なる化合物の混合物として得られる。本願記載の化合物は、構造式で示される化合物を主に含む混合物であり、構造式に示される化合物に限定されるものではない。
【0040】表−1に本発明の一般式(1)で示されるフタロシアニン化合物の具体例を示す。
【0041】
【表1】


【0042】
【表2】


【0043】
【表3】


【0044】
【表4】


【0045】(A-1):Fe(Cp)2(A-2):Cr(Cp)2(A-3):
【0046】
【化11】


(A-4):Ru(Cp)2(A-5):La(Cp)3(A-6):Sc(Cp)3(A-7):Er(Cp)3(A-8):Y(Cp)3(A-9):Ni(Cp)2
【0047】光記録媒体とは予め情報を記録されている再生専用の光再生専用媒体及び情報を記録して再生することのできる光記録媒体の両方を示すものである。但し、ここでは適例として後者の情報を記録して再生のできる光記録媒体、特に基板上に記録層、反射層を有する光記録媒体に関して説明する。
【0048】基板の材質としては、基本的には記録光および再生光の波長で透明であればよい。例えば、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の高分子材料やガラス等の無機材料が利用される。これらの基板材料は射出成形法等により円盤状に基板に成形される。必要に応じて、基板表面に案内溝やピットを形成することもある。このような案内溝やピットは、基板の成形時に付与することが望ましいが、基板の上に紫外線硬化樹脂層を用いて付与することもできる。
【0049】本発明においては、基板上に記録層を設けるが、本発明の記録層は、λmaxが650nm〜900nm付近に存在する一般式(1)で示されるフタロシアニン化合物を含有する。中でも、780nm近傍の記録および再生レーザー波長に対して適度な光学定数(光学定数は複素屈折率(n+ki)で表現される。式中のn、kは、実数部nと虚数部kとに相当する係数である。ここでは、nを屈折率、kを消衰係数とする。)を有する必要がある。
【0050】一般に有機色素は、波長λに対し、屈折率nと消衰係数kが大きく変化する特徴がある。nが1.8より小さい値になると正確な信号読み取りに必要な反射率と信号変調度は得られ難くなり、kが0.40を越えても反射率が低下して良好な再生信号が得られないだけでなく、再生光により信号が変化しやすく実用に適さない場合がある。この特徴を考慮して、目的とするレーザー波長において好ましい光学定数を有する有機色素を選択し記録層を成膜することで、高い反射率を有し、かつ、感度の良い媒体とすることができる。
【0051】本発明で使用する一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、吸光係数が高く、また中心金属、置換基の選択により吸収波長域を任意に選択できるため、前記レーザー光の波長において記録層に必要な光学定数(nが1.8以上、且つ、kが0.04から0.40であり、好ましくは、nが2.0以上、且つ、kが0.04〜0.20)を満足する極めて有用な化合物である。
【0052】さらに、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤などを併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0053】記録層を基板の上に成膜する際に、基板の耐溶剤性や反射率、記録感度などを向上させるために、基板の上に無機物やポリマーからなる層を設けても良い。
【0054】ここで、記録層における一般式(1)で示されるフタロシアニン化合物の含有量は、30質量%以上、好ましくは60質量%以上である。尚、実質的に100質量%であることも好ましい。
【0055】記録層を設ける方法は、例えば、スピンコート法、スプレー法、キャスト法、浸漬法などの塗布法、スパッタ法、化学蒸着法、真空蒸着法などが挙げられるが、スピンコート法が簡便で好ましい。
【0056】スピンコート法等の塗布法を用いる場合には、一般式(1)で示されるフタロシアニン化合物を1〜40質量%、好ましくは3〜30質量%となるように溶媒に溶解あるいは分散させた塗布液を用いるが、この際、溶媒は基板にダメージを与えないものを選ぶことが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、オクタフルオロペンタノール、アリルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラフルオロプロパノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、乳酸メチルなどのエステル系溶媒、水などが挙げられる。これらは単独で用いても良く、あるいは、複数混合しても良い。
【0057】なお、必要に応じて、記録層の色素を高分子薄膜などに分散して用いたりすることもできる。
【0058】また、基板にダメージを与えない溶媒を選択できない場合は、スパッタ法、化学蒸着法や真空蒸着法などが有効である。
【0059】色素層の膜厚は、特に限定するものではないが、好ましくは50nm〜300nmである。色素層の膜厚を50nmより薄くすると、熱拡散が大きいため記録できないか、記録信号に歪が発生する上、信号振幅が小さくなる。また、膜厚が300nmより厚い場合は反射率が低下し、再生信号特性が悪化する
【0060】次に記録層の上に、好ましくは50nm〜300nmの厚さの反射層を形成する反射層の材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いもの、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、CrおよびPdの金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。この中でもAu、Al、Agは反射率が高く反射層の材料として適している。これ以外でも下記のものを含んでいても良い。例えば、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属および半金属を挙げることができる。また、Auを主成分とするものは反射率の高い反射層が容易に得られるため好適である。ここで主成分というのは含有率が50%以上のものをいう。金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
【0061】反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法などが挙げられる。また、基板の上や反射層の下に反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上などのために公知の無機系または有機系の中間層、接着層を設けることもできる。
【0062】さらに、反射層の上に設けられる保護層の材料としては、反射層を外力から保護するものであれば特に限定されず、有機或いは無機物質から選択される。有機物質としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などを挙げることができる。また、無機物質としては、SiO2、Si34、MgF2、SnO2などが挙げられる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などは適当な溶媒に溶解して塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶媒に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、紫外線を照射して硬化させることによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート樹脂を用いることができる。これらの材料は単独であるいは混合して用いても良く、1層だけでなく多層膜にして用いても良い。
【0063】保護層の形成の方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法などの塗布法やスパッタ法や化学蒸着法などの方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。
【0064】保護層の膜厚は、一般には0.1μm〜100μmの範囲であるが、本発明においては、3μm〜30μmであり、より好ましくは5μm〜20μmである
【0065】保護層の上にさらにレーベルなどの印刷を行うこともできる。また、反射層面に保護シートまたは基板を貼り合わせる、あるいは反射層面相互を内側とし対向させ、光記録媒体2枚を貼り合わせるなどの手段を用いても良い。また、基板鏡面側に、表面保護やごみ等の付着防止のために紫外線硬化性樹脂、無機系薄膜等を成膜しても良い。
【0066】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0067】実施例1特開平3−62878号公報記載の下記構造式(2)で示されるフタロシアニン化合物1.58g(1.0mmol)、J.Am.Chem.,77,3012(1955)記載の方法で合成した下記構造式(3)で示されるp−フェロセンフェノール0.33g(1.2mmol)、炭酸カリウム0.21g(1.5mmol)、ジメチルイミダゾリジニウム(以下DMIと略)20mlを混合し、160℃で4時間反応させた。室温に冷却後、メタノールに排出し、析出した固体を分取し、カラムクロマトグラフィーで精製し、下記構造式(1−1)で示されるフタロシアニン化合物を0.84g (0.46mol)(収率46%)で得た。
【0068】
【化12】


【0069】吸収波長:λmax=721nmグラム吸光係数:εg=135,000(溶剤:トルエン)
元素分析値:C88101Cl7FeN89Pd計算値(%) C:57.91% H:5.58% N:6.14%分析値(%) C:57.78% H:5.41% N:6.29%
【0070】実施例2p−フェロセンフェノール(3)を1.39g(5mmol)、炭酸カリウムを0.83g(6.0mmol)を用いる以外は実施例1と同様にして下記構造式(1−3)で示されるフタロシアニン化合物を1.63g(0.64mol)(収率64%)で得た。
【0071】
【化13】


吸収波長:λmax=724nmグラム吸光係数:εg=96,000(溶剤:トルエン)
元素分析値:C136140Cl4Fe4812Pd計算値(%) C:64.05% H:5.53% N:4.39%分析値(%) C:63.78% H:5.41% N:4.29%
【0072】実施例3実施例1で使用したフタロシアニン化合物(2)1.58g(1.0mmol)、m−アミノフェノール0.13g(1.19mmol)、炭酸カリウム0.21g(1.5mmol)、DMI20mlを混合し、140℃で4時間反応させた。室温に冷却後、メタノールに排出し、析出した固体を分取し、下記構造式(4)で示されるm−アミノフェノキシフタロシアニン化合物を含む混合物を1.41g (0.85mmol)(収率85%)で得、さらにこのm−アミノフェノキシフタロシアニン化合物(4)1.16g (0.7mmol)、トルエン20ml、ピリジン0.1mlを混合し、さらに、フェロセンカルボン酸(Aldrich社製)を用いてJ.Org.Chem.,24,280(1959)に従い合成したフェロセンカルボン酸クロライド0.2g(0.80mmol)を添加し、室温で3時間反応させた。水を加えた後、抽出、水洗浄し、トルエンを留去し、カラムクロマトグラフィーにて精製し、下記構造式(1−14)で示されるフタロシアニン化合物を0.86g(0.46mmol)(収率66%)得た。
【0073】
【化14】


【0074】吸収波長:λmax=721.5nmグラム吸光係数:εg=133,000(溶剤:トルエン)元素分析値:C89102Cl7FeN910Pd計算値(%) C:57.22% H:5.50% N:6.75%分析値(%) C:57.44% H:5.38% N:6.68%
【0075】実施例4特開平3−62878号公報記載の方法で合成した、下記構造式(5)で示されるフタロシアニン化合物1.67g(1.0mmol)、p−アミノチオフェノール0.15g(1.2mmol)、炭酸カリウム0.21g(1.5mmol)、DMI20mlを混合し、120℃で5時間反応させた。室温に冷却後、メタノールに排出し、析出した固体を分取し、下記構造式(6)で示されるp−アミノフェニルチオキシフタロシアニン化合物を1.39g (0.79mmol)(収率79%)で得、さらにこのp−アミノフェニルチオキシフタロシアニン化合物(6)1.23g (0.7mmol)、を用いて実施例3と同様にしてアミド化し、下記構造式(1−18)で示されるフタロシアニン化合物を0.98g(0.50mmol)(収率66%)得た。
【0076】
【化15】


【0077】吸収波長:λmax=725nmグラム吸光係数:εg=132,000(溶剤:トルエン)
元素分析値:C89102Cl7FeN917SZn計算値(%) C:54.23% H:5.22% N:6.39%分析値(%) C:54.54% H:5.32% N:6.48%
【0078】実施例5実施例1で使用したフタロシアニン化合物(2)1.58g(1.0mmol)を、3−ヒドロキシメチルフェノール0.15g (1.21mmol)、炭酸カリウム0.21g(1.5mmol)、DMI20mlを混合し、140℃で4時間反応させた。室温に冷却後、メタノールに排出し、析出した固体を分取し、下記構造式(7)で示される3−(ヒドロキシメチル)フェノキシフタロシアニン化合物を1.39g(0.83mmol)(収率83%)で得、さらにこの3−(ヒドロキシメチル)フェノキシフタロシアニン化合物(7)1.17g(0.7mmol)を用い、実施例3と同様にフェロセンカルボン酸クロライド0.2g(0.8mmol)を用いてエステル化し、下記構造式(1−28)で示されるフタロシアニン化合物を1.07g(0.57mmol)(収率81%)得た。
【0079】
【化16】


【0080】吸収波長:λmax=721.5nmグラム吸光係数:εg=102,000(溶剤:トルエン)
元素分析値:C90103Cl7FeN811Pd計算値(%) C:57.40% H:5.51% N:5.95%分析値(%) C:57.66% H:5.62% N:5.75%
【0081】実施例6乾燥ジメチルホルムアミド(以下DMFと略)4.38g(60mmol)に、水冷下、オキシ塩化リン9.2g(60mmol)を滴下した後、室温で攪拌しVilsmeier試薬を調製し、特開平3−62878号公報記載の方法に従い合成した下記構造式(8)で示されるフタロシアニン化合物12.65g(10mmol)のクロロベンゼン100ml溶液を加え80−90℃で3時間反応させた。反応終了後、室温に冷却したのち、酢酸ナトリウム水溶液を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、水洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤を留去し、カラムクロマトグラフィーにて精製し、下記構造式(9)で示されるホルミルフタロシアニン化合物9.31g(7.2mmol)(収率72%)を得た。
【0082】
【化17】


【0083】一方、乾燥DMF4.38g(60mmol)に、水冷下、オキシ塩化リン9.2g(60mmol)を滴下した後、室温で攪拌しVilsmeier試薬を調製し、ルテノセン6.94g(30mmol)のクロロベンゼン50ml溶液を加え80−90℃で10時間反応させた。反応終了後、室温に冷却したのち、酢酸ナトリウム水溶液を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、水洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤を留去し、カラムクロマトグラフィーにて精製し、下記構造式(10)で示されるホルミルルテノセン4.82g(18.6mmol)(収率62%)を得た。
【0084】ヒドラジン一水和物19.5g(0.39mol)中に、ホルミルルテノセン1.01g(3.9mmol)のメタノール10ml溶液を室温で滴下し反応させた。水中に排出し、析出した固体を濾別水洗し、下記構造式(11)で示されルテノセンアルダゾンを0.79g(2.9mmol)(収率74%)得た。
【0085】
【化18】


【0086】ホルミルフタロシアニン化合物(9)3.88g(3.0mmol)をトルエン50mlに溶解させたのち、ルテノセンアルダゾン(11)1.64g(6.0mmol)を添加し、室温で反応させ、溶剤を留去したのちカラムクロマトグラフィーにて精製し、下記構造式(1−37)で示されるフタロシアニン化合物を含む混合物を3.72g(2.4mol)(収率80%)を得た。
【0087】
【化19】


【0088】吸収波長:λmax=739nmグラム吸光係数:εg=124,000(溶剤:トルエン)
元素分析値:C84106CuN108Ru計算値(%) C:65.16% H:6.90% N:9.05%分析値(%) C:65.08% H:6.72% N:8.88%
【0089】〔実施例7〕実施例1記載のフタロシアニン化合物(1−1)0.2gをジメチルシクロヘキサン10mlに溶解し、色素溶液を調製した。基板は、ポリカーボネート樹脂製で連続した案内溝(トラックピッチ:1.6μm)を有する直径120mm、厚さ1.2mmの円盤状のものを用いた。
【0090】この基板上に色素溶液を回転速度1000〜1500rpmでスピンコートし、70℃で3時間乾燥して記録層を形成した。
【0091】この記録層の上にバルザース社製スパッタ装置(CDI−900)を用いてAuをスパッタし、厚さ100nmの反射層を形成した。スパッタガスには、アルゴンガスを用いた。スパッタ条件は、スパッタパワー2.5kW、スパッタガス圧1.33Pa(1.0×10-2Torr)で行った。
【0092】さらに反射層上に紫外線硬化性樹脂SD−1700(大日本インキ化学工業製)をスピンコートした後、紫外線を照射して厚さ6μmの保護層を形成して、光記録媒体を作製した。
【0093】得られた光記録媒体に、波長780nmでレンズの開口数が0.5の半導体レーザーヘッドを搭載したパルステック工業製光ディスク評価装置(DDU−1000)を用いて、線速14.4m/sの高速で、EFM信号を、レーザーパワー18〜20mWで記録した。評価装置を用いて信号を再生し、最短ピット(長さ0.8μm)のジッター、デビエーションおよびエラーレートを測定した結果、レーザーパワー18mWで、ジッター20ns、デビエーション10ns、エラーレート100以下といずれも良好な値を示した。
【0094】比較例1下記構造式(12)で示されるフタロシアニン化合物を、実施例7と同様にしてCD−R媒体を作製し、同様に評価したところ、レーザーパワー18mWでは、ジッター56%、デビエーション52ns、エラーレート450以上であり、十分な特性ではなかった。
【0095】
【化20】


【0096】比較例2WO98014520記載の下記構造式(13)で示されるフタロシアニン化合物を、実施例7と同様にしてCD−R媒体を作製し、同様に評価したところ、レーザーパワー18mWでは、ジッター78 ns、デビエーション70ns、エラーレート1250以上であり、十分な特性ではなかった。
【0097】
【化21】


【0098】実施例8〜25表−1に記載したフタロシアニン化合物を用いる以外は実施例7と同様にしてCD−R媒体を作製し、レーザーパワー18mWで記録し、最短ピット(長さ約0.8μm)のジッター、デビエーションおよびエラーレートを評価した。結果は表−2に記載したように、いずれも良好な値を示した。
・ジッターの評価は、○が35ns以下、×が35ns以上であることを示す。
・デビエーションの評価は、○が40ns以下、×40ns以上であることを示す。
・エラーレートの評価は、○が220未満、×が220以上であることを示す。
【0099】
【表5】


【0100】
【発明の効果】本発明のフタロシアニン化合物は、金属系化合物が結合しているフタロシアニン化合物である。本願化合物は、金属系化合物が結合していることから分解特性が良好で、かつ、780nm近傍における吸収係数、屈折率が高く、特に高速、高密度記録での感度(最適記録パワー等)、記録特性(ジッター、デビエーション)の向上を可能とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記式(1)で示されるフタロシアニン化合物。
【化1】


〔式(1)中、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価または4価の置換金属原子、またはオキシ金属を表し、L1,L2,L3及びL4は、それぞれ独立に式(a)、式(b)、
【化2】


(式(a)または式(b)中、X1,X2は置換または無置換の炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜15の直鎖または分岐のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキルチオ基を表わし、Y1,Y2は水素原子、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、(A)は金属系化合物残基を表し、(B)はフタロシアニン化合物と(A)とを結合する基を表す。)を表し、L1〜L4のうち、少なくとも1つが(a)を表す。〕
【請求項2】 (B)が、下記式(B−1)〜(B−3)で示される結合基から選ばれる請求項1記載のフタロシアニン化合物。
【化3】


[式(B−1)〜(B−3)中、Dは−N=CR5−、−NR6CO−、−CHR7OCO−、−OCO−を表し、R1〜R7は各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜15のアリール基を表し、Q1、Q2は、酸素原子または硫黄原子を表す。]
【請求項3】 (A)で示される金属系化合物残基がメタロセン化合物及びその誘導体の残基である請求項1又は2記載のフタロシアニン化合物。
【請求項4】 基板、記録層、反射層からなる光記録媒体において、請求項1〜3のいずれかに記載のフタロシアニン化合物を記録層に含有する光記録媒体。

【公開番号】特開2002−188019(P2002−188019A)
【公開日】平成14年7月5日(2002.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−386989(P2000−386989)
【出願日】平成12年12月20日(2000.12.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(000179904)山本化成株式会社 (70)
【Fターム(参考)】