説明

フックの構造

【課題】荷室内に荷物を搬入する際にフックに掛けた荷物が邪魔にならないようにし、車室内の見栄えを良くする。
【解決手段】本発明は、車両1のリアシート2の後方に形成された荷室3に搬入された荷物Bを固定するためのフック5の構造であって、荷室3には、同荷室3を上下2段に分割可能なデッキボード30が設置されており、フック5は、デッキボード30を荷室3内で立て掛けた状態としたときに、デッキボード30の上端部に配置され、かつ、デッキボード30の表面から突出しない態様で設けられている構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリアシートの後方に形成された荷室に搬入された荷物を固定するためのフックの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフックの構造としては、例えば下記特許文献1の記載のものが知られている。このものは、荷室の左右両側壁にリアシェルフを載置支持するためのサポータを設け、このサポータの後方部分にフックを一体に形成し、このフックに手提げ袋を引っ掛ける構成である。
【特許文献1】実開平5−44696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、バックドアの開口部付近の荷室両側壁にフックが設けられているため、そのフックに荷物を掛けてから別の荷物(特に大きな荷物)を荷室奥に搬入する際に掛けた荷物が邪魔になる。また、サポータが荷室両側壁に備え付けになっているため、フックを使用しない際に他の動作の邪魔となり、また見栄えも悪い。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、荷室内に荷物を搬入する際にフックに掛けた荷物が邪魔にならないようにし、車室内の見栄えを良くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、車両のリアシートの後方に形成された荷室に搬入された荷物を固定するためのフックの構造であって、荷室には、同荷室を上下2段に分割可能なデッキボードが設置されており、フックは、デッキボードを荷室内で立て掛けた状態としたときに、デッキボードの上端部に配置され、かつ、デッキボードの表面から突出しない態様で設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0005】
このような構成によると、フックを使用せずデッキボードとして使用するときには、フックが裏面となるようにデッキボードを載置することにより、車室内の見栄えが良くなる。また、フックを使用するときには、リアシートのシートバックの背面付近にデッキボードを立て掛けた状態とすることで、荷室内に別の荷物を搬入する際に既にフックに掛けてある荷物が邪魔にならない。さらに、フックがデッキボードの表面から突出していないため、フックが他の部品などと干渉することがない。
【0006】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
複数のフックが車幅方向に沿って設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、複数のフックによって車幅方向に複数の荷物を積載することができる。
【0007】
フックは、デッキボードに凹設された凹部内に取付固定されている構成としてもよい。
このような構成によると、デッキボードの凹部内にフックが取付固定されているので、フックが他の部品と干渉することを確実に規制することができる。
【0008】
フックは、凹部の奥面に対してデッキボードの板厚方向にねじ止めされている構成としてもよい。
このような構成によると、フックがデッキボードの板厚方向に引っ張られる等しても、フックがデッキボードの板厚方向にねじ止めされているから、効率良く引っ張りに耐えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、荷室内に荷物を搬入する際にフックに掛けた荷物が邪魔にならないようにすることができ、車室内の見栄えを良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図7の図面を参照しながら説明する。図1ないし図4及び図6の図面は、ミニバンやステーションワゴンなどバックドア(図示せず)を有する車両1を斜め後上方から見た斜視図である。車両1のリアシート2の車両後方には、荷室3が形成されている。さらに荷室3の車両後方には、後部ドアを開放することにより後部開口4が形成されるようになっており、この後部開口4を通じて荷室3内に荷物Bが搬入される。
【0011】
リアシート2は6:4の分割可倒式シートであって、着座者(図示せず)が着座する座面を有するシートクッション21と、着座者の背中や腰を受けるシートバック22とを備えている。シートバック22は、シートクッション21の座面後部から上方に立ち上がる形態をなしている。シートバック22の上部には、着座者の頭部を受けるためのヘッドレスト23が設けられている。また、リアシート2には、シートバック22の傾きを自在に調整するためのリクライニング装置(図示せず)が設けられている。シートバック22は、通常は、後方にやや傾けた状態で使用される。
【0012】
荷室3は、通常は、図1に示すように、デッキボード30によって上下2段に分割されている。デッキボード30は、車両前側ボード30Aと車両後側ボード30Bとに分割されている。デッキボード30は、両ボード30A,30Bを互いに重ね合わせた状態で後述する収納溝部33に収納される。尚、荷室3の底面34は平坦面とされており、ボデーの一部分として構成されていたり、合成樹脂材料または木質材料からなる板材によって形成されている。
【0013】
荷室3内の車幅方向における左右両側壁35には、図2に示すように、両ボード30A,30Bの車幅方向両側縁部を支持する一対の支持部31が車室内側に突出して設けられている。両支持部31はリブ状をなし、車両前後方向に延びて形成されている。両ボード30A,30Bが支持部31によって支持された状態では、両ボード30A,30Bが荷室3の底面34と略平行姿勢に保持される。支持部31の車両前後方向略中央には、収納凹部32が下方に凹んで設けられている。これにより、荷室3は、図6に示すように、両ボード30A,30Bを互いに重ね合わせた状態で収納凹部32に収納することにより前後2列に分割される。
【0014】
支持部31の前端部には、同支持部31を上下方向に切り欠くことにより溝状をなす収納溝部33が形成されている。デッキボード30は、図3に示すように、両ボード30A,30Bを互いに重ね合わせた状態で収納溝部33に収納されるようになっている。収納溝部33に収納された両ボード30A,30Bは、シートバック22の背面に沿って配置されている。
【0015】
さて、本実施形態におけるデッキボード30の長辺側の端部には、3個のフック5が設けられている。詳細には、デッキボード30を使用しない場合において、両ボード30A,30Bを互いに重ね合わせた状態で収納溝部33に挿入し立て掛けた状態としたときに、車両後側ボード30Bの上端部に各フック5が等間隔で車幅方向に配置されている。
【0016】
フック5は、図7に示すように、車両後側ボード30Bの上端部に凹部36を設け、この凹部36内にフック5を配置し、車両後側ボード30Bの板厚方向にねじ止めすることにより凹部36の奥面37に取付固定されている。このため、フック5は、凹部36の奥面37から離間する方向への力に対して強固な取付強度を発揮することができる。尚、デッキボード30はブロー成形により形成されているものの、凹部36の奥面37においてはデッキボード30の左右両面が密着して成形されることにより板厚2枚分の厚みに形成されているため、フック5の取付強度をより高めることができる。
【0017】
また、フック5は鈎状をなし、車両後側ボード30Bを立て掛けた状態としたときに上方に突出する形態をなしている。このとき、フック5の上部は、凹部36の奥面37側に突出した形状をなし、凹部36の奥面37との間が狭く形成されているため、フック5に引っ掛けられた荷物Bがフック5から外れにくい。
【0018】
フック5の右側面は、車両後側ボード30Bの右側面より内側に引っ込んだ位置に設定されており、フック5の上面は、車両後側ボード30Bの上面と面一となるように設定されている。つまり、フック5は、車両後側ボード30Bの表面から突出しない態様で設けられているから、他の部品と干渉することがない。
【0019】
本発明は以上のような構造であって、続いてその作用を説明する。まず、通常の使用状態では、図1に示すように、両ボード30A,30Bの車幅方向両側縁部を両支持部31で支持することにより、両ボード30A,30Bの上面からなるフラット面を形成することができる。このとき、フック5は、車両後側ボード30Bの下面側に向けられているから、同上面側には表れず、荷室3内の見栄えが良くなるとともに、後部開口4から荷室3内に別の荷物Bを搬入する際に既に積載されている荷物Bと干渉することがない。
【0020】
次に、荷室3内に大きな荷物Bを積載したい場合には、図2に示すように、まず両ボード30A,30Bを外した状態とし、図3に示すように、両ボード30A,30Bを互いに重ね合わせた状態で収納溝部33に立て掛けた状態で収納する。この状態では、両ボード30A,30Bがシートバック22の背面に近い位置で立て掛けた状態に配置されているため、荷室3内に広い収納スペースを形成することができる。
【0021】
そして、コンビニなどで買い物をした場合には、図4に示すように、フック5に買い物袋などの荷物Bを引っ掛けることにより荷室3内に荷物Bを積載することができる。このとき、荷室3の底面34は、デッキボード30使用時の底面(デッキボード30の上面)より下方となるため、フック5に対する荷物Bの引っ掛かりがよくなり、安定して荷物Bを積載することができる。
【0022】
ここで、シートバック22は通常、やや後方に傾けた状態で使用されるため、シートバック22の背面下方領域はデッドスペースとなりやすい。しかしながら本実施形態では、図5に示すように、このデッドスペースを利用して両ボード30A,30Bを互いに重ね合わせた状態で配置することができる。さらに、両ボード30A,30Bも後方に傾けた状態で配置されているため、両ボード30A,30Bの背面下方領域はデッドスペースとなりやすい。しかし、その場合であっても、フック5に引っ掛けられた荷物Bをデッドスペースに積載することができるため、荷室3内における収納スペースが有効に利用されている。
【0023】
以上のように本実施形態では、フック5を使用せずデッキボード30として使用するときには、フック5がデッキボード30の上面側に表れないから見栄えを良くすることができる。また、フック5を使用するときには、リアシート21のシートバック22の背面付近にデッキボード30を立て掛けた状態とすることで、荷室3内に荷物Bを搬入する際に荷物Bがフック5と干渉することがない。さらに、フック5がデッキボード30の表面から突出していないため、フック5が他の部品と干渉することがない。
【0024】
また、車幅方向に複数のフック5が設けられているから、車幅方向に複数の荷物Bを積載することができる。また、フック5は、車両後側ボード30Bの凹部36内に取付固定されているから、フック5が他の部品と干渉することを確実に規制することができる。さらに、フック5は、凹部36の奥面37にねじ止めされているから、凹部36の奥面37から離間する方向への力に対して強固な取付強度を発揮することができる。
【0025】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図8の図面を参照しながら説明する。本実施形態は、実施形態1におけるフック5の取付構造を一部変更したものであって、共通する構成については同一の符号を付すものとし、その他の共通する構成、作用、及び効果については説明を省略する。
【0026】
本実施形態におけるフック6は、車両後側ボード30Bを立て掛けた状態としたときに、車両後側ボード30Bの上端部に配置されている凹部36の下面38にタップねじなどで取付固定したものである。このようにすると、車両後側ボード30Bの表裏両面にねじ止め部分が露出しないため、フック6の見栄えを良くすることができる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態ではフック5が車両後側ボード30Bのみに形成されているものの、本発明によると、フック5が車両前側ボード30Aに形成されていてもよい。また、デッキボード30は、1枚板状に形成してもよいし、あるいは、車両前後方向に3分割し、それぞれにフック5を設けてもよい。
(2)本実施形態ではフック5がデッキボード30と別体で形成されているものの、本発明によると、フック5がデッキボード30と一体に成形されていてもよい。
【0028】
(3)本実施形態ではフック5が凹部36内に配置された状態で荷物Bが引っ掛けられるものの、本発明によると、フック5使用時にフック5が凹部36内から引き出された状態となって荷物Bを引っ掛けるようにしてもよい。
(4)本実施形態ではフック5が車両後側ボード30Bの上端に露出する形態とされているものの、本発明によると、フック5が車両後側ボード30Bの上端に露出しなくてもよい。
【0029】
(5)本実施形態ではフック5が上方に突出する鈎状に形成されているものの、本発明によると、フック5が上下左右のいずれに突出する形態であってもよいし、あるいは、全周方向に突出する円盤状をなしていてもよい。
(6)本実施形態ではフック5が車両後側ボード30Bの一方の面に形成されているものの、本発明によると、車両後側ボード30Bの上端縁を下方に切り欠くことによりフック5を形成し、車両後側ボード30Bの両面から使用可能としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1において荷室がデッキボードにより上下2段に分割された状態を示した斜視図
【図2】実施形態1においてデッキボードを外した状態の荷室を示した斜視図
【図3】実施形態1において両ボードを互いに重ね合わせた状態で収納溝部に収納した状態を示した斜視図
【図4】実施形態1においてデッキボードを収納溝部に収納したときにおけるフックの使用状態を示した斜視図
【図5】その側面図
【図6】実施形態1においてデッキボードを収納凹部に収納したときにおけるフックの使用状態を示した斜視図
【図7】実施形態1におけるフックの取付構造を示した断面図
【図8】実施形態2におけるフックの取付構造を示した断面図
【符号の説明】
【0031】
1…車両
2…リアシート
3…荷室
4…後部開口
5,6…フック
21…リアシート
30…デッキボード
30B…車両後側ボード
36…凹部
37…奥面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のリアシートの後方に形成された荷室に搬入された荷物を固定するためのフックの構造であって、
前記荷室には、同荷室を上下2段に分割可能なデッキボードが設置されており、
前記フックは、前記デッキボードを前記荷室内で立て掛けた状態としたときに、前記デッキボードの上端部に配置され、かつ、前記デッキボードの表面から突出しない態様で設けられていることを特徴とするフックの構造。
【請求項2】
複数の前記フックが車幅方向に沿って設けられている請求項1に記載のフックの構造。
【請求項3】
前記フックは、前記デッキボードに凹設された凹部内に取付固定されている請求項1又は請求項2に記載のフックの構造。
【請求項4】
前記フックは、前記凹部の奥面に対して前記デッキボードの板厚方向にねじ止めされている請求項3に記載のフックの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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