説明

フッ化キラル分子を生成するための立体選択的方法

本発明はキラルフッ化分子を調製するための立体選択的方法に関する。その方法は、C−OSOFユニットを有するクロロ亜硫酸塩化合物を反応機に導入することと、求核触媒存在下において前記分子を熱分解することと、最初のC−OSOFユニットに対して反対の立体配置のC−Fを有する得られたフッ化分子を回収することから構成される。発明は、フッ化分子の生成に特に関連し、前記フッ化分子は、化学式(S又はR)のエステル又はケトン基がα位に位置する(R)又は(S)の立体配置の不斉炭素によって支持されるフッ素原子を有する。前記方法は、例えば2−フッ化プロピオン酸メチル(R)の生成を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化キラル分子、特に(R)又は(S)の立体配置を有し、α位にエステル又はケトン基を有する不斉炭素原子によって支持されるフッ素原子を有するフッ化分子を生成するための方法に関する。それは特に2−フッ化プロピオン酸メチル(R)(methyl(R)-2-fluoropropionate)(R2F)の調製に関連する。
【0002】
そのような化合物は、特に植物防疫剤又は殺虫剤の合成用中間物として工業的価値が高い。
【背景技術】
【0003】
米国特許第3,100,225号は、3級アミン存在下で対応するフッ化亜硫酸塩化合物を熱分解することによって、含フッ素有機化合物を生成する方法を記載する。その文献は、立体選択的方法は教示しない。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許第4,131,242号は、R2F合成の立体選択的経路を記載し、それは以下の二つの段階を含む。
・スルホメチル化段階


・フッ化カリウムによる交換段階

【0005】
R2Fを得るための経路は、化学的観点からすると上手く機能するものの、大量の廃液を生じ、それに伴い巨額の再処理費用を要するという大きな欠点を有する。
【0006】
それ故に本発明の筆者は、そのようなフッ化分子を得るための新規立体選択的方法であって、安価な試薬を基にして十分な収率を達成し、大量の廃液を生じない方法を開発することを目的に定めた。
【特許文献1】米国特許第3,100,225号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許第4,131,242号明細書
【発明の開示】
【0007】
筆者は、その目的を達成でき、所定の立体配置を有する光学活性のある産物、特に95%以上の光学純度を有する産物を得る方法の開発を進めた。
【0008】
従って、発明はフッ化キラル分子を調製するための立体選択的方法に関し、
(i)C−OSOFユニットを含む分子(これ以降フッ化亜硫酸塩化合物と呼ぶ)を反応機へと導入する。
(2i)その分子の熱分解は、求核触媒の存在下において行われる。
(3i)得られたフッ化分子が回収され、該フッ化分子は、開始のC−OSOFユニットに対して反対の立体配置をとるC−Fユニットを含む。
【0009】
「求核」は、電子対をもたらすことができる原子を有する触媒を意味すると解される。3級窒素原子、フッ化物アニオン源、及びそれらの混合物又は複合物を含む化合物はよく適している。
【0010】
触媒は3級アミンであろう。例えば触媒は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N、N−ジエチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−n−ブチルピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1,2−ジメチルピロリジン、ジメチルアニリン、ピコリン及びそれらの混合物から選択することができる。
【0011】
例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドを例とする3級窒素原子を含むアミド又はホルムアミドを用いることも可能である。
【0012】
例えば、テトラメチルウレアのようなアルキル基によって置換されたウレアを例とするウレア誘導体を用いることも可能である。
【0013】
フッ化物アニオン源として、KFと、テトラブチルアンモニウムフッ化物を例とする4級アンモニウムフッ化物と、テトラブチルホスホニウムフッ化物を例とするホスホニウムフッ化物と、それらの混合物とを例とする塩基性フッ化物が記載されるであろう。
【0014】
nが1から10であるピリジン/(HF)又はEtN/(HF)を例とするHF/4級アミン類の複合体を用いることも可能である。
【0015】
好適な実施形態においては、触媒はピリジンである。
【0016】
特に以下の(I)→(II)の反応が起こる。


上記の反応式において、
・R、R及びRそれぞれは、水素原子、又は官能基が直鎖又は分岐鎖であることが可能なアルキル、アルケニル若しくはアルキニル基、又はアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、−CO、−(CH−CO、−COR、−SOR若しくは−SO基のいずれかである。
nが好ましく1から12の整数である。
は水素、又は官能基が直鎖又は分岐鎖であることが可能なアルキル、アルケニル若しくはアルキニル基、又はシクロアルキル、アルキルシクロアルキル若しくはアリール基、特に置換されたアリール基である。
更に、Rは一つ以上の炭素原子の代わりに酸素、硫黄及び窒素から選択される一つ以上のヘテロ原子を含む芳香族又は非芳香族の複素環基を形成することも可能である。
・R、R及びRは全て異なる。
【0017】
以下の反応(Ia)→(IIa)


又は以下の反応(Ib)→(IIb)のいずれかが起こる。

【0018】
好適な実施形態によると、発明はフッ化分子を調製するための方法に関し、フッ化分子は、α位にケトン又はエステル基を有する所定の立体配置の不斉炭素原子によって支持されるフッ素原子を有する。方法において、
(i)フッ化亜硫酸基を支持するCで所定の立体配置を有するフッ化亜硫酸基を含む化学式(III)の化合物を反応機へ導入する。


(2i)フッ化亜硫酸塩化合物の熱分解は、求核触媒、好ましくは4級窒素原子を含む触媒の存在下で行われる。
(3i)反対の立体配置をとるところの、得られた反応式(IV)のフッ化分子が回収される。


・Rは、官能基が直鎖又は分岐鎖であることが可能なアルキル、アルケニル、アルキニル基、又はアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、−CO、−(CH−CO、−COR、−SOR、−SO基を表す。
nは好ましくは1から12の整数である。
は水素又は、官能基が直鎖又は分岐鎖であることが可能なアルキル、アルケニル、アルキニル基又は、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、特に置換されたアリール基である。
更にRは、一つ以上の炭素原子の代わりに酸素、硫黄及び窒素から選択された一つ以上のヘテロ原子を含む芳香族又は非芳香族の複素環基を形成することができる。
・Rは水素又はRに与えられた定義に対応する官能基を表す。
・RとRは異なる。
・Rは、水素又は、Rの官能基又は−ORを表し、RはRに与えられたリストから選択され、R及びRは、同一になる又は異なることが可能である。
【0019】
発明においては、アルキル、アルケニル及びアルキニル基は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から6個の炭素原子を含み得る。アリール、シクロアルキル及びアルキルシクロアルキル基は、3から8個の炭素原子、好ましくは5又は6個の炭素原子を含み得る。複素環化合物は、環構造中に3から8個、好ましくは5又は6個の原子を含み得る。
は特に水素であることができる。
は特に−ORであることができる。
は特にメチル基を例とするCからC12のアルキル基(C1-C12-alkyl group)、好ましくはCからCのアルキル基であることができる。
は特にメチル基を例とするCからC12のアルキル基、好ましくはCからCのアルキル基であり得る。
【0020】
発明の特定の変形例によると、方法は、Rがメチル基、Rが水素及びRが−Oアルキル基(−Oalkyl)である乳酸類の化学式(III)の化合物に用いられる。
【0021】
発明の特定の実施形態においては、Rがメチル基、Rが水素及びRが−OMe基であり、フッ化分子の立体配置が(R)体の立体配置である。
【0022】
特に好ましくは、用いられるフッ化亜硫酸塩化合物(I)、好ましくは反応式(III)の化合物が、ほぼ又は全くHF及びHClを含んでいない。
【0023】
発明の条件下においてフッ化亜硫酸塩化合物の分解は、不斉炭素原子における立体配置の反転に影響を与える(立体選択的反応)。
【0024】
分解は、混合物の温度を徐々に上昇させる、又は固定の温度で操作することのいずれによっても起こるであろう。
【0025】
従って触媒は、好ましくは化学式(III)のフッ化亜硫酸塩化合物(I)中に導入され、その後に、温度が例えば60から180℃、好ましくは100から150℃の分解を開始するのに十分な値まで上げられるであろう。それ故に触媒は、SOの除去を引き起こす分解温度より低い温度であるフッ化亜硫酸塩化合物に添加される。従って、フッ化亜硫酸塩化合物は、例えば外気温(約20から25℃)で用いられるであろう。溶媒をその反応に用いることが可能であり、触媒と同様にフッ化亜硫酸塩化合物は溶媒へと入れられ、その後、温度が上げられる(溶媒の定義は以下に記載される)。
【0026】
固定温度での方法においては、好ましくは反応式(III)の分解されるべきフッ化亜硫酸塩化合物(I)が、例えば60から180℃、好ましくは100から150℃の分解に適した温度に上げられて維持されている反応ベースに徐々に添加される。触媒はベース中にあるか、フッ化亜硫酸塩と共に又はその後に加えられる。ベースは溶媒を含む、又は好ましくは化学式(III)のフッ化亜硫酸塩化合物の一部、若しくは前段階でフッ化亜硫酸塩を生成する反応物の一部を含むであろう。本実施形態は、分解されるフッ化亜硫酸塩化合物の添加及び反応物の除去を調節することによって、この段階が連続的に起こるのを可能にする。
【0027】
それら二つの実施形態において用いることのできる溶媒としては以下が挙げられる、
・脂肪族炭化水素及び特にペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、アンデカン、テトラデカン、石油エーテル及びシクロヘキサンを例とするパラフィンと、特にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、クメン、シュードクメン(pseudocumene)及びアルキルベンゼンの混合物から成る石油の留分、特にソルベッソ(登録商標)(Solvesso(R))類の留分を例とする芳香族炭化水素
・脂肪族又は芳香族のハロゲン化炭化水素であり、ジフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、フルオロベンゼン、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン又はそれらの混合物から作られるものが挙げられる。
・脂肪族、脂環式又は芳香族のエーテルオキシド(ether oxides)及び、とりわけメチルタートブチルエーテル(methyltert-butyl ether)、ジペンチルオキシド、ジイソペンチルオキシド、エチレングリコールジメチルエーテル(又は1,2−ジメトキシエタン)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(又は1,5−ジメトキシ−3−オキサペンタン)、又はジオキサン、テトラハイドロフランを例とする環状エーテル
・脂肪族又は芳香族ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、ブタンニトリル、イソブタンニトリル、ベンゾニトリル、シアン化ベンジル
・N−メチルピロリドン
であろう。
【0028】
連続的な方法においては、フッ化亜硫酸塩化合物が所望される温度で維持される媒質中に供給される実施形態が、好適な形態である。
【0029】
用いられる触媒の量がフッ化亜硫酸塩化合物に対して0.1から10モル%、好ましくは0.1から2モル%であることが有益である。操作は、好ましくは50ミリバールから10バール、より好ましくは1から10バールの圧力下で行われる。
【0030】
分解が終了した時(それは通常、例えば1から5時間のように数十分から数時間かかる)、媒質は冷却されるであろう。その後に、水による一回以上の洗浄段階を経ることができ、そして精製産物が回収される前に、例えば減圧蒸留によって洗浄済みの粗製産物を精製することができる。
【0031】
フッ化亜硫酸塩化合物(III)は、HFを、化学式(III)のOSOF基の代わりにOSOCl基を含む化学式(V)に対応するクロロ亜硫酸塩化合物(当然クロロ亜硫酸塩基を含む化合物)と反応させることによって得ることができる。


、R及びRは化学式(III)及び(IV)の場合と同じ意味を有する。
【0032】
反応はHFの液状媒質中で起こる。
【0033】
本実施形態によると、クロロ亜硫酸塩化合物に対して1から10倍量、好ましくは1から5倍量のHFが一般に用いられる。クロロ亜硫酸塩化合物にHFを添加するのが好ましい。同様に、不活性な雰囲気、好ましくは窒素雰囲気下で操作することが好ましい。都合の良いことに、絶対圧力は温度条件下においてHFを液相に十分維持することができる。その圧力は、例えば大気圧から10バールであろう。それ故に、操作は−30から50℃、好ましくは−10から+20℃の温度で都合よく行われる。
【0034】
液体HFの導入後、媒質は所望される温度で反応を終了させるのに十分な時間攪拌されることが有益である。一般にその時間は、反応温度に依存して1から10時間の間で変更することが可能である。
【0035】
次の分解段階を考慮すると、生じた残存HF及びHClを除去することが好ましい。それは、例えば反応中に窒素吹込み(又は異なる不活性ガスでの吹込み)を伴って操作をすることによって達成される。HF及びHClは、反応の終わりに例えば(窒素を例とする)不活性ガスを吹込むことによって好ましく除去される。それは好ましくは、ある温度へ媒質を数時間加熱することと共に行われ、その温度は(例えば、ほぼ50℃程度を例とする20から80℃の温度であり、)溶解したHF及びHClの除去を促進する温度である。HF及びHClは、同様に減圧下で除去することもできる。
【0036】
この段階中に(例えば上述したような)溶媒の使用は除外されていないが、溶媒を用いずに操作することが好ましいことが理解されよう。
【0037】
クロロ亜硫酸塩化合物は、SOClをクロロ亜硫酸塩化合物のOSOCl基の代わりにOH基を有する対応する水酸化前駆体(VI)と反応させることによって得ることができる。


、R及びRは、化学式(III)及び(IV)の場合と同じ意味を有する。
【0038】
用いられるSOClの量が、水酸化前駆体に対して1から10倍量、好ましくは1から2倍量のSOClであることが有益である。温度は−30から+50℃、好ましくは−10から+20℃であることが有益である。実際に、前駆体をSOClのベースへと徐々に(通常は1から10時間の期間内で)添加することが好ましい。窒素吹込み下で操作することも好ましい。塩化チオニルのベースは、前駆体を添加する間好ましく攪拌され、その後に、攪拌は終了する時間(通常1から10時間)まで維持されることが有益である。
【0039】
この段階における(例えば上述したような)溶媒の使用は除外されていないが、溶媒を用いずに操作することが好ましいことが理解されよう。
【0040】
一方でフッ化亜硫酸塩及び他方でクロロ亜硫酸塩を生成するそれらの方法は、化学式(I)のフッ化亜硫酸塩化合物全てを得るために用いることができ、それは所望される化学式(I)に対応する水酸化前駆体又はクロロ亜硫酸塩から開始される。
【0041】
特定の実施形態においては、以下の一連の反応が起こり、2−フッ化プロピオン酸メチル(R)の生成が可能になる。

【0042】
一連の反応は同じ反応機又は異なる反応機中で行うことができる。
【0043】
フッ化亜硫酸塩化合物及び、特にフッ化亜硫酸塩化合物(III)を得るための様々な経路が想定できる。これらの内、以下の段階を含む経路が挙げられる。
(i)ここまでに定義された化学式(VI)の化合物が化学式(VII)の化合物SOXと反応することで、同一の立体配置を有する化学式(VIII)のハロ亜硫酸塩化合物を生成することができ、置換基Xは、好ましくはCl、Br及びFから選択される同一の又は異なるハロゲン原子を表す。


(2i)一つ又は両方の置換基XがF以外である時、化合物(VIII)がHFと反応することによって化学式(III)のフッ化亜硫酸塩化合物を生成することができる。
【0044】
化学式(VII)の置換基XがClである時、詳しく上述されている水酸化前駆体→クロロ亜硫酸塩化合物→フッ化亜硫酸塩化合物の連続的な段階が認められる。
【0045】
化学式(VII)の置換基XがFである時、フッ化亜硫酸塩化合物は、水酸化前駆体(VI)を基にする一つの段階によって得られる。
【0046】
SOFClと共にフッ化亜硫酸塩化合物は主に及び直接得られる。
【0047】
XがF又はCl以外のハロゲンであるSOXを用いてフッ化亜硫酸塩化合物(III)を得るための実施形態において、SOCl及びその後にHFを用いる経路と同じ反応条件が用いられることが注目される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
発明はこれより、非限定的な例としての実施形態の記載によってより詳細に説明されるであろう。
段階1:塩化亜硫酸塩化合物の形成


100グラムのSOCl(2倍量)が20℃の反応機のベースに入れられる。43.8グラムの乳酸メチル(S)(methyl(S)-lactate)が、攪拌及び窒素吹込みと共に1時間以内で添加される。脱気された塩化水素は水酸化ナトリウム水溶液中に捕捉される。
添加の終了から6時間後に、混合物はNMRによって決定される以下の分子組成を有する(残存SOClは分析されない)。
・残存乳酸メチル:0.1%(CR=99.9%)
・クロロ亜硫酸塩:89.5%(収率=80.9%)
・亜硫酸塩:10.5%
段階2:フッ化亜硫酸塩化合物の獲得


段階3:フッ化亜硫酸塩化合物の分解

【0049】
段階2及び3は、段階1で調製されたクロロ亜硫酸塩化合物の溶液から連続的に行われる。
【0050】
フッ素化は、導入されたクロロ亜硫酸塩化合物に対して1.5倍量のHFを用いて、10℃で6時間経過する間に起こる。窒素吹込みをしながら50℃で15時間ストリッピングをした後に、最初のクロロ亜硫酸塩に対して1.5モル%に相当する量のピリジンが導入される。その後反応機の温度は140℃に上げられ、その温度で3時間維持される。分解の間、反応機内の圧力は2バールに制御される。そして混合物は冷却され、ジクロロメタンが添加されて、その後に水による洗浄が二度行われる。定量分析及びキラル分析がガスクロマトグラフィによって行われる。
【0051】
それらの条件下においては、用いたクロロ亜硫酸塩化合物に対するフッ化プロピオン酸メチルの収率は47%であった。
【0052】
(R)のエナンチオマに関する光学純度は96.3%である。
【0053】
付随の請求項によって規定される発明は、ここまでの記載において示された特定の実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲又は精神のいずれかから逸脱しないそれらの変形体を含むことが理解されなければならない。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
キラルフッ化分子を調製するための立体選択的方法であって、
(i)C−OSOFユニットを有するフッ化亜硫酸塩化合物が反応機に導入され、
(2i)その分子の熱分解が求核触媒存在下で行われ、
(3i)最初のC−OSOFユニットに対して反対の立体配置を有するC−Fユニットを含む結果的に生じたフッ化分子を回収する
方法。
【請求項2】
以下の反応


が起こり、
上の反応式において、
・R、R及びRそれぞれは、水素原子又は、官能基が直鎖若しくは分岐鎖であることができるアルキル、アルケニル、アルキニル基又は、アリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、−CO、−(CH−CO、−COR、−SOR、若しくは−SO基のいずれかを表し、
nが好ましくは1から12の整数であり、
が水素、又は官能基が直鎖又は分岐鎖であることができるアルキル、アルケニル若しくはアルキニル基、又はシクロアルキル、アルキルシクロアルキル若しくはアリール基、特に置換されたアリール基であり、
更にRが、一つ以上の炭素原子の代わりに酸素、硫黄及び窒素から選択される一つ以上のヘテロ原子を含む芳香族又は非芳香族の複素環基を形成することができ、
・R、R及びRが全て異なる
請求項1の方法。
【請求項3】
以下の反応


が起こる請求項2の方法。
【請求項4】
以下の反応


が起こる請求項2の方法。
【請求項5】
フッ化分子を調製するための方法であって、前記フッ化分子は、α位にエステル又はケトン基が位置する(R)又は(S)の立体配置を有する不斉炭素原子によって支持されるフッ素原子を有し、
(i)フッ化亜硫酸塩基を支持するCで所定の立体配置を有する化学式(III)のフッ化亜硫酸塩化合物を反応機に導入し、


(2i)フッ化亜硫酸塩化合物の熱分解が求核触媒存在下において行われ、
(3i)反対の立体配置を有するところの、得られた化学式(IV)のフッ化分子を回収する


方法であって、
・Rが、官能基が直鎖又は分岐鎖であることができるアルキル、アルケニル若しくはアルキニル基、又はアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、−CO、−(CH−CO、−COR、−SOR若しくは−SO基であり、
nが好ましくは1から12の整数であり、
が、水素、又は官能基が直鎖又は分岐鎖であることができるアルキル、アルケニル若しくはアルキニル基、又はシクロアルキル、アルキルシクロアルキル若しくはアリール基、特に置換されたアリール基であり、
更にRが、一つ以上の炭素原子の代わりに酸素、硫黄及び窒素から選択される一つ以上のヘテロ原子を含む芳香族又は非芳香族の複素環基を形成することができ、
・Rが水素又はRの定義に対応する官能基であり、
・RとRとが異なり、
・Rが水素又はR若しくは−OR基であり、RはRに対するリストから選択され、R及びRが同一又は異なることが可能である請求項1から4のいずれかの方法。
【請求項6】
が−ORである請求項5の方法。
【請求項7】
が、メチル基を例とするCからC12のアルキル基、好ましくはCからCのアルキル基である請求項5又は6の方法。
【請求項8】
がメチル基であり、Rが水素であり、Rが−Oアルキル基、好ましくは−OMe基である請求項5から7のいずれかの方法。
【請求項9】
が水素である請求項1から8のいずれかの方法。
【請求項10】
が、メチル基を例とするCからC12のアルキル基、好ましくはCからCのアルキル基である請求項1から9のいずれかの方法。
【請求項11】
触媒が、3級窒素原子、フッ化物アニオン源又はそれらの混合物若しくは複合物を含む化合物である請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項12】
触媒が、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−n−ブチルピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1,2−ジメチルピロリジン、ジメチルアニリン、ピコリン及びそれらの混合物から選択される請求項11の方法。
【請求項13】
触媒が、3級窒素原子、ウレア誘導体、塩基性フッ化物、フッ化アンモニウム又はフッ化ホスホニウムを含むアミド及びホルムアミドから選択される請求項11の方法。
【請求項14】
触媒がピリジンである請求項11の方法。
【請求項15】
用いるフッ化亜硫酸塩化合物が、HF及びHClをほぼ又は完全に含まない請求項1から14のいずれかの方法。
【請求項16】
触媒がフッ化亜硫酸塩化合物に導入され、その後に温度が60から180℃、好ましくは100から150℃まで上げられる請求項1から15のいずれかの方法。
【請求項17】
フッ化亜硫酸塩化合物が、60から180℃、好ましくは100から150℃の温度に加熱された溶媒に徐々に添加され、触媒は溶媒中に入っている又はフッ化亜硫酸塩化合物と同時又はその後に添加される請求項1から9のいずれかの方法。
【請求項18】
用いる触媒の量が、フッ化亜硫酸塩化合物に対して、0.1から10モル%、好ましくは0.1から2モル%である請求項1から17のいずれかの方法。
【請求項19】
操作が、50ミリバールから10バール、好ましくは1から10バールの圧力下で行われる請求項1から18のいずれかの方法。
【請求項20】
フッ化亜硫酸塩化合物を、OSOF基の代わりにOSOCl基を含む対応するクロロ亜硫酸塩化合物とHFとを反応させることによって得る請求項1から請求項19のいずれかの方法。
【請求項21】
クロロ亜硫酸塩化合物に対して、1から10倍量、好ましくは1から5倍量のHFが用いられる請求項20の方法。
【請求項22】
HFがクロロ亜硫酸塩化合物に添加される請求項20又は21の方法。
【請求項23】
操作が不活性雰囲気下で行われる請求項20から22のいずれかの方法。
【請求項24】
操作が、−30から+50℃、好ましくは−10から+20℃の温度で行われる請求項20から23のいずれかの方法。
【請求項25】
HF及びHClが、HFとクロロ亜硫酸塩化合物との反応の終了時に除去される請求項20から24のいずれかの方法。
【請求項26】
クロロ亜硫酸塩化合物を、クロロ亜硫酸塩化合物のOSOCl基の代わりにOH基を含む対応する水酸化前駆体とSOClとを反応させることによって得る請求項20から25のいずれかの方法。
【請求項27】
SOClの用いられる量が、水酸化前駆体に対して1から10倍量、好ましくは1から2倍量である請求項26の方法。
【請求項28】
操作が−30から+50℃、好ましくは−10から+20℃の温度で行われる請求項26又は27の方法。
【請求項29】
前駆体がSOClのベースに徐々に添加される請求項26から28のいずれかの方法。
【請求項30】
操作が窒素吹込みと共に行われる請求項26から29のいずれかの方法。
【請求項31】
以下の一連の反応


が起こる請求項26から30のいずれかの方法。
【請求項32】
一連の反応が、同一の反応機又は異なる反応機で行われる請求項31の方法。
【請求項33】
フッ化亜硫酸塩化合物(III)を、R、R及びRが化学式(III)及び(IV)の場合と同じ意味を有する化学式(VI)の水酸化前駆体と


SOFとを反応させることによって得る請求項5から7のいずれかの方法。

【公表番号】特表2008−515789(P2008−515789A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534052(P2007−534052)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002434
【国際公開番号】WO2006/037887
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】