説明

フッ化炭素シリコーンエラストマー含有フッ化プラスチック

フッ化プラスチック組成物が開示され:
(i) フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース
(ii) フッ化プラスチック樹脂
(iii)フッ化炭素エラストマー硬化剤
を混合することからの反応生成物を含んでいる。該フッ化プラスチック組成物およびこれから調製された製造品は、向上したインパクト(効果)もしくは柔軟性を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、米国特許出願第60/584,305号、2004年6月30日出願、に対する優先権を請求する。
【0002】
本発明は、フッ化プラスチック組成物を提供し、これは:
(i) フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース
(ii) フッ化プラスチック樹脂
(iii)フッ化炭素エラストマー硬化剤
を混合することからの反応生成物を含んでいる。
【背景技術】
【0003】
フッ化プラスチックは、過酷な化学的および/または熱的条件における使用のための種々の熱可塑性品を調製するのに、よく選択される。例えば、多くの自動車ホース、ガスケット、およびシールが、フッ化プラスチックから調製される。しかしながら、これらの適用のうちの幾つかにおいて、該フッ化プラスチックの衝撃耐性を向上させ、あるいは、該フッ化プラスチックの柔軟性を向上させる必要がある。
【0004】
該フッ化プラスチックの衝撃耐性を向上させていく1つの可能なアプローチは、ラバーもしくはエラストマー材料を、該フッ化プラスチック中に取り込むことである。例えば、フッ化炭素エラストマーが、該フッ化プラスチック中に取り込まれ得る。しかしながら、このアプローチは高く付く可能性があり、比較的高価な原料の、もう1つ別の原料への添加に頼るからである。代わりのアプローチは、シリコーンエラストマーの、フッ化プラスチック中への取り込みのようなものが考えられてきており、該フッ化プラスチックの衝撃耐性を向上させる。しかしながら、シリコーンエラストマーの、該フッ化プラスチック中への取り込みは、このような2相間での固有な不相容性のために、容易には達成されない。
【0005】
シリコーンを含有しているフッ化プラスチックが、米国特許出願第60/476767号明細書において記載される。これらのフッ化プラスチックは、まずフッ化炭素樹脂を相容化剤と混合していき、次いで硬化可能な有機ポリシロキサンをラジカルイニシエーター(開始剤)と共に加えていき、この混合物中の該有機ポリシロキサンを加硫していくことにより、調製される。本明細書において教示されるフッ化プラスチックは、種々の手法により加工され得、押し出し、真空形成、射出成型、ブロー成型、もしくは圧縮成型のような手法であり、プラスチック部品を製造する。結果得られてくる製造部品は、再加工(リサイクル)され得、機械特性の崩壊は僅かであるか、もしくは、全くない。
【0006】
シリコーンを含有しているフッ化プラスチックは、米国特許第6,015,858号明細書においても記載され、これは、白金触媒の使用を教示し、その組成物のシリコーン部分を、動的加硫手法により硬化させる。
【0007】
本発明者らは、シリコーンを含有しているフッ化プラスチック組成物が、向上もしくは比肩可能な物性を、その非修飾フッ化プラスチック組成物に比較すると持っていることを発見している。該組成物のシリコーン部分は、シリコーンを含有しているフッ化炭素エラストマーベースの添加により与えられ、米国特許第4,942,202号明細書、米国特許第4,985,483号明細書、米国特許第5,010,137号明細書、米国特許第5,171,787号明細書、および米国特許第5,350,804号明細書、ならびに、WO2003/104322およびWO2003/104323において記載されるようなものである。結果的に得られてくるフッ化プラスチック組成物は、その非修飾フッ化プラスチック単独に比較すると、ある幾つかの場合、向上した物性を持つ。結果的に得られてくるフッ化プラスチック組成物は、該組成物中のフッ化ポリマー濃度の抑制のために、典型的なフッ化プラスチックよりも経済的である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フッ化プラスチック組成物を提供し、これは:
(i) フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース
(ii) フッ化プラスチック樹脂
(iii)フッ化炭素エラストマー硬化剤
を混合することからの反応生成物を含んでいる。
【0009】
該フッ化炭素−シリコーンエラストマーベースは、硬化可能な有機ポリシロキサンを、フッ化炭素エラストマーと混合していき、次いで、該有機ポリシロキサンを加硫し、該フッ化炭素−シリコーンエラストマーベースを形成させることを含んでいるプロセスにより、調製され得る。
【0010】
本発明は、本明細書において教示される組成物を含んでいる製造品にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の成分(i)は、フッ化炭素−シリコーンエラストマーベースである。本明細書において使用される場合、<<フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース>>とは、離散硬化シリコーンラバー粒子を含有しているフッ化炭素エラストマー組成物を言い、ここで、そのフッ化炭素エラストマー部分が硬化され得、フッ化炭素−シリコーンエラストマーラバーを形成する。該フッ化炭素エラストマーは、如何なるフッ化炭素エラストマーたり得、よくFKMと言われ、もしくは、命名される。該シリコーンラバーは、如何なる有機ポリシロキサンでもあり、硬化されて、シリコーンラバーを形成する。該フッ化炭素−シリコーンエラストマーベースは、如何なる既知のプロセスによっても調製され得、硬化シリコーン粒子をフッ化炭素エラストマー中でブレンドしていくようなプロセスであり、米国特許第4,985,483号明細書および米国特許第5,350,804号明細書において記載されるようであり、これらは、本明細書において援用される。好ましくは、該フッ化炭素−シリコーンエラストマーベースは、硬化可能な有機ポリシロキサンを、フッ化炭素エラストマー(FKM)と混合していき、次いで、該有機ポリシロキサンを加硫し、該フッ化炭素−シリコーンエラストマーベースを形成させることを含んでいるプロセスにより調製され、米国特許第4,942,202号明細書、米国特許第5,010,137号明細書、および米国特許第5,171,787号明細書、ならびに、WO2003/104322およびWO2003/104323において記載されるようなものであり、これらは、本明細書において援用される。
【0012】
典型的には、該フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース組成物(i)は:
(I) (A)フッ化炭素エラストマー

(B)任意の相容化剤
(C)任意の触媒
(D)硬化可能な有機ポリシロキサンを含んでいるシリコーンベース
(E)任意の架橋剤
(F)該有機ポリシロキサンを硬化させるに充分量の硬化剤
と混合し;
(II)該有機ポリシロキサンを、動的加硫していくこと
を含んでいる方法により調製され得、ここで、該エラストマーベース組成物中でのシリコーンベースに対するフッ化炭素エラストマーの重量比が、95:5〜30:70の範囲である。
【0013】
該フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース組成物中の成分(A)は、室温を下回る、あるいは、23℃を下回る、あるいは、15℃を下回る、あるいは、0℃を下回るガラス転移温度(Tg)を持っており、<<ガラス転移温度>>とは、ポリマーが、ガラス状態からプラスチック状態に変化する温度を意味する。該ガラス転移温度は、動的機械的分析(DMA)および示差カロリー計(DSC)のような従来法により求められ得る。フッ化炭素エラストマーは、当業界においてよく知られ、多くが、市販されている。フッ化炭素エラストマーはよく、FKMと命名される。このように、本明細書において、該フッ化炭素エラストマーたる成分(A)は、FKMと略される。FKMエラストマーの代表的な非限定例であり、本発明中の成分(A)として有用なものが、このクラスの材料の要約記事中において見出され得、Kirk-Othmer著<<Encyclopedia of Chemical Technology>>、第4版、第8巻、990〜1005頁、John Wiley&Sons、NY;J. C. Salamone著<<Polymeric Materials Encyclopedia>>、第4巻、2495〜2498頁、CRC出版、NY;<<Encyclopedia of Polymer Science and Engineering>>、第2版、第7巻、257〜269頁;ならびに、K.-L. Ring, A. Leder, およびK. Sakota著<<Fluoroelastomers>>、Chemical Economics Handbook−SRI International 2000、Elastomers−Specialty 525.6000A中におけるようなものであり、これらの全てが、本明細書において援用される。
【0014】
これゆえ、該フッ化炭素エラストマーは、以降のフッ素含有モノマーの組み合わせから構成されてもよい。
フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、過フッ化(メチルビニルエーテル)、および過フッ化(プロピルビニリデン)
これらのモノマーは、共重合可能なモノマーとも、共重合され得、これらは、アクリレートエステルのようなビニル化合物、プロピレンのようなオレフィン化合物、およびジエン化合物も包含している。こうして生成されるフッ素ラバーの例は、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(コポリマー)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレンターポリマー、テトラフルオロエチレン−プロピレンコポリマー、およびテトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−プロピレンターポリマーも包含する。
【0015】
あるいは、該フッ化炭素エラストマーは、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、およびテトラフルオロエテンのターポリマー、または、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエテン、および過フッ化メチルビニルエーテルのターポリマーを含む。
【0016】
成分(A)として有用な、代表的な、非限定的な、市販材料は:
VITON(登録商標)、Dupont−Dow Elastomers(Wilmington、DE);DyneonTM、Dyneon LLC(Oakdale、MN);Tecnoflon(登録商標)、Solvay Solexis,Inc.(Bollate、Italy);AflasTM、Asahi Glass Co.Ltd.(Ichihara、千葉県);および、Dai−elTM、Daikin Industries Ltd.(Settsu、大阪府)
の商品名の下に販売されているフッ化炭素エラストマーも包含する。
【0017】
相容化剤(B)は、如何なる炭化水素、有機シロキサン、フッ化炭素、もしくはこれらの組み合わせからでも選択され得、FKMエラストマー(A)とのシリコーンベース(D)の混合を促進するものと期待される。一般的に、該相容化剤は、2タイプのうちの1タイプたり得る。第1実施形態において、本明細書において物理的相容化剤と言うが、該相容化剤は、如何なる炭化水素、有機シロキサン、フッ化炭素、もしくはこれらの組み合わせからでも選択され、FKM(A)と反応するが尚、FKMの該シリコーンベースとの混合を促進するものと期待される。第2実施形態において、本明細書において化学的相容化剤と言うが、該相容化剤は、如何なる炭化水素、有機シロキサン、フッ化炭素、もしくはこれらの組み合わせからでも選択され、FKMと化学的に反応し得るものと考えられる。しかしながら、いずれの実施形態においても、該相容化剤は、下記の有機ポリシロキサン成分の動的硬化を妨げてはならない。
【0018】
該物理的相容化剤の実施形態において、相容化剤(B)は、FKMエラストマーとのシリコーンベースの混合を促進すると当業界において知られている如何なる相容化剤からも選択され得る。典型的には、このような相容化剤は、有機ポリシロキサンとフッ化炭素ポリマーとの反応生成物である。このような相容化剤の代表的非限定例が、米国特許第5,554,689号明細書および米国特許第6,035,780号明細書ならびにWO2003/104322およびWO2003/104323において記載され、本明細書において援用される。あるいは、該相容化剤は、触媒(C)もしくは硬化剤(F)と、本混合プロセス中に反応し得るフッ化炭素から選択され得る。
【0019】
該化学的相容化剤の実施形態において、典型的には、相容化剤(B)は、(B)2つ以上のオレフィン基を含有する有機(つまり、非シリコーン)化合物、(B’’)少なくとも2つのアルケニル基を含有している有機ポリシロキサン、(B’’’)少なくとも1つの加水分解可能な基もしくは少なくとも1つのヒドロキシル基(水酸基)も、そのシリコン(硅素)原子に結合して含有するオレフィン官能基を有するシラン、(B’’’’)アミン、アミド、イソシアヌレート、フェノール、アクリレート、エポキシ、およびチオール基から選択される少なくとも1種の有機官能基を持っている有機ポリシロキサン、ならびに、(B)、(B’’)、(B’’’)、および(B’’’’)のいずれかの組み合わせから選択され得る。
【0020】
有機相容化剤(B)は、フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、トリアリルトリメサート、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、2,2’−ジアリルビスフェノールA、N,N’−ジアリル酒石酸ジアミド、ジアリルウレア(尿素)、琥珀酸ジアリル、およびジビニルスルホンのような化合物により、中でも例示され得る。
【0021】
相容化剤(B’’)は、直鎖、分岐、もしくは環状有機ポリシロキサンから選択されてよく、少なくとも2つのアルケニル基を、その分子中に持っている。このような有機ポリシロキサンの例は、ジビニルテトラメチルジシロキサン、シクロトリメチルトリビニルトリシロキサン、シクロテトラメチルテトラビニルテトラシロキサン、ヒドロキシ末端封鎖ポリメチルビニルシロキサン、ヒドロキシ末端化ポリメチルビニルシロキサン−コ−ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端化ポリジメチルシロキサン、テトラキス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、およびトリス(ジメチルビニルシロキシ)フェニルシランも包含する。あるいは、相容化剤(B’’)は、ヒドロキシ末端化ポリメチルビニルシロキサン[HO(MeViSiO)xH]オリゴマーであり、約25〜100mPa.sの粘度を持ち、25〜35%のビニル基および2〜4%のシリコン結合水酸基を含有している。
【0022】
相容化剤(B’’’)はシランであり、少なくとも1つのアルキレン基を含有し、典型的には、ビニル不飽和部分を含んでおり、同様に、加水分解可能な基もしくはヒドロキシル基(水酸基)から選択される少なくとも1つのシリコン結合部分を含有する。適切な加水分解可能な基は、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、もしくはアミド基も包含する。このようなシランの例は、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシ(シラン)、メチルビニルジシラノール、オクテニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−エトキシエトキシ)シラン、メチルビニルビス(N−メチルアセトアミド)シラン、メチルビニルジシラノールである。
【0023】
相容化剤(B’’’’)は有機ポリシロキサンであり、アミン、アミド、イソシアヌレート、フェノール、アクリレート、エポキシ、およびチオール基から選択される少なくとも1つの有機官能基を持っている。
【0024】
下記のシリコーンベース成分(D)の硬化可能な有機ポリシロキサンの一部も、相容化剤として機能し得ることがあり得る。例えば、触媒(C)が、シリコーンベース(D)の硬化可能な該有機ポリシロキサンの一部を、FKMエラストマーと反応させるのに使用され得、修飾FKMエラストマーを生成する。この修飾されたFKMエラストマーが次いで更に、硬化可能な該有機ポリシロキサンを含有している残っているシリコーンベース(D)と混合され、該有機ポリシロキサンが、下記のように、動的加硫される。
【0025】
FKMエラストマー100部につき使用される相容化剤の量は、通常の実験により求められ得る。典型的には、0.05〜10重量部、あるいは、0.05〜15重量部、あるいは、0.1〜5(重量)部の該相容化剤が、FKMエラストマー各100部につき使用される。
【0026】
任意成分(C)は、触媒である。典型的にはラジカルイニシエーターであり、当業界において、上昇した温度においてフリーラジカルを発生させるものと知られている如何なる有機化合物からも選択される。該イニシエーターは特に限定されず、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルのような、既知のアゾもしくはジアゾ化合物のうちのいずれであってもよいが、好ましくは、過酸化水素、ジアシルペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、過酸化ジカーボネート、過酸化ケタール、過酸、アシルアルキルスルホニルペルオキシド、およびアルキルモノペルオキシジカーボネートのような有機過酸化物から選択される。しかしながら、鍵となる要件は、該イニシエーターの半減寿命が充分短いことであり、それで、反応ステップ(I)のフッ化炭素−シリコーンエラストマーベース組成物(i)に関する時間および温度の拘束内で、FKMエラストマー(A)との相容化剤(B)の反応を促進させる。今度は、その修飾温度が、FKMエラストマーおよび選ばれた相容化剤のタイプに依存し、典型的には、成分(A)〜(C)の一様な混合と整合するほど実際には低い。本発明の方法により使用されてよい適切な過酸化物の特定例は、中でも:
2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン;
過酸化ベンゾイル;
過酸化ジクミル;
t−ブチルペルオキシ−O−トルエン酸;
環状ペルオキシケタール;
t−ブチルヒドロペルオキシド;
t−ブチルペルオキシピヴァレート;
ラウロイルペルオキシド;
t−アミルペルオキシ2−エチルヘキサノエート(ヘキサン酸);
ジ−t−ブチルペルオキシド;
1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
2,2,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロペルオキシド;
2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキシン−3;
t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート;
クメンヒドロペルオキシド;
t−ブチルペルオキシベンゾエート(安息香酸);および
ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド
を包含する。FKMエラストマー100部につき、2重量部未満の過酸化物が、典型的には使用される。あるいは、0.05〜1部および0.2〜0.7部も、用いられ得る。
【0027】
成分(D)はシリコーンベースであり、硬化可能な有機ポリシロキサン(D’)および任意に充填剤(D’’)を含んでいる。硬化可能な有機ポリシロキサンは本明細書において、その分子中に存在する少なくとも2つの硬化可能な基を持っている如何なる有機ポリシロキサンとしても定義される。有機ポリシロキサンは当業界においてよく知られ、しばしばいずれかの数の、RSiO0.5(M単位)、RSiO(D単位)、RSiO1.5(T単位)、もしくはSiO(Q単位)を含んでいるものとして命名され、式中、Rは独立に、如何なる1価の炭化水素基でもある。あるいは、有機ポリシロキサンはしばしば、以降の一般式:
[RSi(O)4−m/2
を持っているものとして記述され、式中、Rは独立に、如何なる1価の炭化水素基でもあり、m=1〜3、nは少なくとも2である。
【0028】
シリコーンベース(D)中の有機ポリシロキサンは、その分子中に、少なくとも2つの硬化可能な基を持たなくてはならない。本明細書において使用される場合、硬化可能な基とは、それ自体もしくはもう1つ別の炭化水素基と、または、架橋剤と反応でき、該有機ポリシロキサンを架橋させる如何なる炭化水素基としても、定義される。この架橋は結果的に、硬化有機ポリシロキサンを与える。該シリコーンベース中において使用され得る硬化可能な有機ポリシロキサンのタイプの代表は、硬化していく際、シリコーンラバーを生成すると当業界において知られている有機ポリシロキサンである。このような有機ポリシロキサンの非限定例たる代表が、Kirk−Othmer著<<Encyclopedia of Chemical Technology>>、第4版、第22巻、第82〜142頁、John Wiley&Sons、NYにおいて開示され、本明細書において援用される。典型的には、有機ポリシロキサンは、数多くの架橋メカニズムを介して硬化され得、該有機ポリシロキサン上の種々の硬化基、硬化剤、および任意の架橋剤を用いる。数多くの架橋メカニズムがある一方、硬化可能な有機ポリシロキサンからシリコーンラバーを調製するのに当業界においてより汎用される架橋メカニズムのうちの3つとは、フリーラジカルにより開始される架橋、ヒドロシリル化もしくは付加硬化、および縮合硬化である。これゆえ、この硬化可能な有機ポリシロキサンは、これら上述した架橋メカニズムのいずれか1つを受けられる如何なる有機ポリシロキサンからも選択され得るが、これらに限定されない。成分(D)、(E)、および(F)の選択は、硬化もしくは架橋メカニズムの選択と整合される。例えば、もしヒドロシリル化もしくは付加硬化が選択されれば、その時は、少なくとも2つのビニル基(硬化可能な基)を有する有機ポリシロキサンを含んでいるシリコーンベースが成分(D’)として使用され、有機ヒドリドシリコン化合物が成分(E)として使用され、白金触媒が成分(F)として使用される。縮合硬化に関しては、少なくとも2つのシリコン結合ヒドロキシ基(水酸基、つまり、シラノールが、前記した硬化可能な基と考えられる)を持っている有機ポリシロキサンを含んでいるシリコーンベースが成分(D)として選択され、錫触媒のような当業界において既知の縮合硬化触媒が成分(F)として選択される。フリーラジカルにより開始される架橋に関しては、如何なる有機ポリシロキサンも成分(D)として選択され得、この組み合わせが該有機ポリシロキサンの加硫の時間および温度の拘束内で硬化するのであれば、フリーラジカルイニシエーター(開始剤)が成分(F)として選択される。このようなフリーラジカルにより開始される架橋における成分(F)の選択に依存して、メチルのような如何なるアルキル基も、前記した硬化可能な基として考えることができ、これは、これらがこのようなフリーラジカルにより開始される条件下に架橋するものであるからである。
【0029】
このシリコーンの相の成分、つまり、本発明における使用に適する成分(D)、(E)、および(F)の更なる記述が、米国特許第4,942,202号明細書、米国特許第5,010,137号明細書、および米国特許第5,171,787号明細書、ならびに、WO2003/104322およびWO2003/104323において見出され得、本明細書において援用される。
【0030】
該シリコーン相は、本明細書において、成分(D)、(E)、および(F)の組み合わせとして定義される場合、その使用量は、使用されるFKMエラストマー(A)の使用量に依って変動し得る。しかしながら、成分(A)〜(F)全重量に基づき、FKMエラストマー(A)レベル30〜95重量%、あるいは、50〜90重量%、あるいは、60〜80重量%を使用するのが典型的である。
【0031】
シリコーンベース(D)に対するフッ化炭素エラストマー(A)の重量比で表すのも便利であり、これは典型的に、95:5〜30:70、あるいは、90:10〜40:60、あるいは、80:20〜40:60の範囲である。
【0032】
上述した主要成分(A)〜(F)に加えて、少量(つまり、本組成物全体の50重量%未満)の1種以上の任意の添加剤(G)が、本発明のフッ化炭素−シリコーンエラストマーベース組成物中において取り込まれ得る。これら任意の添加剤は、以降の非限定例:
石英、炭酸カルシウム、および珪藻土のような増量充填剤;
酸化鉄および酸化チタンのような色素;
カーボンブラック(黒鉛)および細分化された金属のような充填剤;
水和した酸化セリウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウムのような熱安定化剤;
ハロゲン化炭化水素、アルミナ3水和物、水酸化マグネシウム、珪灰石(wollastonite)、有機リン化合物、および他の難燃(FR)材料のような難燃剤
取り扱い易くするための添加剤
ならびに
当業界において知られる他の添加剤
により、例示され得る。これら添加剤は典型的に、該シリコーン相硬化後、最終フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース組成物に加えられるが、これらはその調製中のいずれの時点においても添加されてよく、但し、これらはその加硫のメカニズムと干渉しない。
【0033】
該フッ化炭素−シリコーンエラストマーベースは、成分(B)〜(G)を、FKMエラストマー(A)と共に、一様にかつ素速く分散させていくことができる如何なる装置中において混合していくことによっても、調製され得る。典型的には、この混合は、双スクリュー押し出し機で実施されるような押し出しプロセスによりなされる。成分(A)〜(G)を混合していく順序は、変動し得る。1実施形態において、成分(A)、(B)、および(C)がまず混合され、修飾フッ化炭素エラストマーを調製し、WO2003/104322において記載されるようであり、次いで、該シリコーン相成分(D)、(E)、および(F)と混合される。あるいは、この混合は、押し出しプロセスを介して実施され得、WO2003/104323において教示されるようであり、本明細書において援用される。この場合、混合していく順序は、決定的ではない。
【0034】
一旦、成分(A)〜(G)が選択され混合されると、成分(D)の有機ポリシロキサンは、加硫プロセスにより硬化され、フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース組成物(i)を形成する。該加硫は、静的もしくは動的に起こり得る。本明細書において使用される場合、動的加硫とは、該組成物の連続的混合と共に起こる加硫プロセスを言う。この連続的混合は、同一の混合たり得、これら成分の混合を有効にし、つまり、これら成分の混合と同時である。あるいは、該加硫は、静的に起こり得る。静的加硫とは、全成分(A)〜(G)が混合された後、該有機ポリシロキサンを加硫していくことを言う。例えば、成分(A)〜(G)を混合していった生成物が単に、加熱のような、該有機ポリシロキサンを硬化させるプロセスに付され得る。
【0035】
本発明の成分(ii)は、フッ化プラスチック樹脂である。該フッ化プラスチック樹脂は、如何なるフッ化プラスチックでもあり得、室温(RT)もしくは23℃を上回る融点(Tm)および室温(RT)もしくは23℃を上回るガラス転移温度(Tg)を持っている。<<ガラス転移温度>>とは、ポリマーが、ガラス状態からプラスチック状態に変化する温度を意味する。該ガラス転移温度は、動的機械的分析(DMA)および示差カロリー計(DSC)のような従来法により求められ得る。FC樹脂の代表的な非限定例が、このクラスの材料の要約記事中において見出され得、J.S.Humphrey、Jr.著<<Vinylidene Fluoride−Based Thermoplastics(Overview and Commercial Aspects)>>、T.Takakura著<<Tetrafluoroethylene Copolymers(Overview)>>、M.H.Hung、P.R.Resnick、B.E.Smart、W.H.Buckら著<<Fluorinated Plastics Amorphous>>、Polymeric Material Encyclopedia、1996、1.1版、CRC出版、NY;K.-L. Ring, A. Leder, およびM.Ishikawa−Yamaki著<<Fluoropolymers>>、Chemical Economics Handbook−SRI International 2000、Plastics and Resins 580.0700A中におけるようなものであり、これらの全てが、本明細書において援用される。これゆえ、FC樹脂は、フッ素を含んでいる以降のモノマーのホモポリマー、コポリマー、もしくはターポリマーであってよく、リスト:
テトラフルオロエチレン、二フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニル
から選択されるものと意図される。これらのモノマーは、共重合可能なモノマーとも共重合され得:
過フッ化プロピルビニルエーテルのようなビニル化合物、エチレンもしくはヘキサフルオロプロピレンのようなオレフィン化合物、または、ブロモトリフルオロエチレンおよび1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレンのような重合可能なハロゲン含有オレフィンを包含しているが、これらに限定されない。市販の例は:
ポリ(二フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)(E−TEF)、ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン(HFP−PVDF)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン(THV)、およびポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン)(E−CTFE)
により例示されるが、これらに限定されない。フッ化プラスチック樹脂(ii)が、上で議論されたフッ化プラスチック樹脂のいずれの混合物でもあり得ることが、認められる。
【0036】
成分(iii)は、フッ化炭素エラストマー硬化剤である。成分(iii)は、フッ化炭素(FKM)エラストマーの硬化を有効にさせると当業界において知られている如何なる硬化剤からも選択され得る。典型的に、FKMエラストマーは、3種類の架橋メカニズムのうちの1種により硬化され、ジアミン化合物、ビスフェノール−オニウム化合物、もしくは過酸化物から選択される硬化剤を利用している(硬化剤は成分(iii)として加えられ、本明細書においてフッ化炭素エラストマー硬化剤と言い、これらを、本フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース成分(i)中のシリコーンベース成分を硬化させるのに加えられる硬化剤から区別する)。このような硬化手法の代表例、FKM硬化剤、および典型的な添加剤が、Kirk−Othmer著<<Encyclopedia of Chemical Technology>>、第4版、第8巻、第990〜1005頁、John Wiley&Sons、NYにおいて開示され、本明細書において援用される。更に、該硬化手法の代表的な非限定例および典型的な添加剤が使用され得、FKMエラストマーの主要な供給元により提供される技術情報出版物において記載され、例えば、Dyneonによる、Fluoroelastomers;Compounding Fluoroelastomers,and Fluoroelastomers Curing Fluoroelastomersのようなもので、www.dyneon.com(2002年5月)において示されるとおりである。適切な硬化剤の代表的な非限定例は:
塩化ベンジルトリフェニルホスホニウム、ビスフェノールAF(CAS#1478−61−1)、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン(CAS#78−63−7)
を包含する。
【0037】
更なる成分が、成分(iii)と共役して、フッ化炭素−シリコーンベースエラストマーベース成分(i)の硬化を促進させる目的で、加えられ得る。これらの更なる成分も、典型的にFKMエラストマーもしくはFKMエラストマーゴムに、硬化FKMエラストマー組成物を調製していく目的で加えられる如何なる成分でもあり得る。典型的には、これらの成分は、酸受容体、充填剤、加工助剤、および治療薬から選択され得る。多くの市販FKMエラストマーが既に、これらの更なる成分を含んでいる可能性があり、<<マスターバッチ>>FKMエラストマー商品により提供されるようなものである。あるいは、このような更なる成分は、該フッ化プラスチック樹脂と混合していく前に、該フッ化炭素−シリコーンベースエラストマー組成物に加えられ得る。
【0038】
成分(iii)への添加剤として有用な該酸受容体の非限定例は、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛(Litharge)、PbHPO(Dyphos)、酸化カルシウム、および酸化亜鉛を包含する。フッ化炭素エラストマー硬化剤は、如何なる成分とも考えられ得、FKMエラストマーの硬化を促進させるベースFKMエラストマー組成物に加えられる。これゆえ、フッ化炭素エラストマー硬化剤は、FKM硬化剤、硬化促進剤、および酸受容体を含み得る。例は、FKM硬化剤もしくはFKM硬化剤の組み合わせを包含し、ビスフェノールおよび有機オニウム塩加速剤のようなものであり、例えば、ビスフェノールAもしくはビスフェノールAF、塩化トリフェニルベンジルホスホニウム、塩化ジフェニルベンジル(ジエチルアミン)ホスホニウム、多官能基有機アミン、もしくは、カルバメート、例えばヘキサメチレンジアミンカルバメートのような該アミンの誘導体、ならびに有機過酸化物および硬化促進剤であって、当該過酸化物の分解から発生されるフリーラジカルと作用し、より有用な硬化を与えるものである。
【0039】
成分(i)、(ii)、および(iii)の量は変動し得るが、典型的には、フッ化プラスチック樹脂(ii)に対するフッ化炭素−シリコーンエラストマーベース(i)の重量比は、2:98〜70:30、あるいは、5:95〜75:25の範囲である。フッ化炭素エラストマー硬化剤(iii)の添加量は、特定の硬化剤およびその添加方法の選択に依り変動し得る。典型的には、フッ化炭素エラストマー硬化剤の添加量は、本反応混合物中において使用される(i)、(ii)、および(iii)全体の0.5〜20、あるいは、1〜10重量%となる。
【0040】
成分(i)、(ii)、および(iii)は、これらの成分を単に組み合わせていくことにより反応させられ得、当業界において知られているこのような材料を扱うための混合手法を使用する。これらの手法は、バッチもしくは連続的混合も包含する。これゆえ、混合は、ミキサー、Banburyミキサー、ニーダー、ローラー、もしくは押し出しプロセスにおいて、有効にされ得る。好ましくは、成分(i)、(ii)、および(iii)の混合は、押し出しプロセスを経由して実施され、双スクリュー押し出し機によりもたらされるようなものである。この混合プロセスの間にこれら成分を熱していくことにより、該フッ化プラスチックを溶融させ、この混合物を反応させる。加熱温度は、該フッ化プラスチックおよびFKM硬化の化学の選択により、決まる。
【0041】
本発明の方法の1実施形態において、成分(i)および(iii)がまず一様に混合され、FKM化合物を形成する。成分(ii)がFKM化合物と、この混合ステップにおいて混合される。
【0042】
本発明は更に、フッ化プラスチック組成物を調製する方法を提供し、これは:
I) i) フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース
ii) フッ化プラスチック樹脂
iii)フッ化炭素エラストマー硬化剤
を混合していき、次いで
II)該フッ化炭素−シリコーンエラストマーベースを加硫していく
ことを含んでいる。ステップ(I)および(II)は、上で議論された混合加硫ステップにより、有効とされ得る。
【0043】
本発明の方法の1実施形態において、成分(i)および(iii)がまず一様に混合され、FKM化合物を形成する。成分(ii)がFKM化合物と、混合ステップ(I)において混合され、ステップ(II)にいて加硫される。
【0044】
更なる成分が、本発明のフッ化プラスチック組成物に加えられ得る。これらは、他のフッ化プラスチック、フッ化プラスチックシリコーン組成物、もしくは他のフッ化プラスチック組成物を、本発明のフッ化プラスチック組成物中にブレンドしていくことも包含する。これらの更なる成分も、典型的にフッ化プラスチックに加えられる如何なる成分でもあり得る。典型的には、これらの成分は、充填剤および加工助剤から選択され得る。
【0045】
本発明のフッ化プラスチック組成物は、従来手法により加工され得、押し出し、真空形成、射出成型、ブロー成型、もしくは圧縮成型のような手法であり、プラスチック部品を製造する。更に、これらの組成物は、再加工(リサイクル)され得、機械特性の崩壊は僅かであるか、もしくは、全くない。これらの新規なフッ化プラスチックエラストマーは、ワイヤおよびケーブルの絶縁体の製造における有用性を見出し、空気ワイヤ、自動車および装備品、ベルト、ホース、建設用シール、および一般的なラバーへの適用におけるようなものである。
【実施例】
【0046】
以降の実施例が、本発明の組成物および方法を更に例示するのに掲げられるが、本発明を限定するようには解釈されず、添付の請求項において述べられる。本実施例中の全ての<<部>>および<<%>>は重量基準であり、全測定値が、他に指し示されなければ、およそ23℃において得られた。
材料
GP−70はシリコーンラバーベースであり、Dow Corning Corporationにより、Silastic(登録商標)GP−70シリコーンラバーとして上市されている。
LCS−755はシリコーンラバーベースであり、Dow Corning Corporationにより、Silastic(登録商標)LCS−755シリコーンラバーとして上市されている。
TRIG101は2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン(CAS#78−63−7)であり、Akzo Nobel Chemicals,Inc.により、TRIGONOX(登録商標)101として上市されている。
VAROXは不活性充填剤上の2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンであり、R.T.Vanderbilt,Company,Inc.により、VAROX(登録商標)DBPH−50として上市されている。
相容化剤1はヒドロキシ末端封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーであり、粘度約35mPa.sを持っており、−CH=CH基30%およびOH基3%を含有している。
TAICはトリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(CAS#1025−15−6)であり、イソシアヌル酸トリアリルとしても知られ、Aldrich Chemical Company,Inc.により上市されている。
ZnOは酸化亜鉛USP粉末(CAS#1314−13−2、C.P.Hall and the Zinc Corporation of America)である。
VC−20は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペン(CAS#9011−17−0)とのコポリマー67%、ならびに、塩化ベンジルトリフェニルホスホニウム(CAS#1100−88−5)33%から調製されたマスターバッチであり、Dupont−Dow Elastomers,LLCにより、VitonTM治療薬#20として上市されている。
VC−30は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペン(CAS#9011−17−0)とのコポリマー、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとテトラフルオロエテン(CAS#25190−89−0)とのターポリマー、ビスフェノールAF(CAS#1478−61−1)、ならびに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(CAS#80−07−9)から調製されたマスターバッチであり、Dupont−Dow Elastomers,LLCにより、VitonTM治療薬#30として上市されている。
CRI−ACT−45は、フッ化エラストマー上で担持される2/1の比のCa(OH)と酸化マグネシウムとの45%活性分分散体であり、IMMIX Technologies,LLCの一部門たるCri−Techにより供給される。
G902は1−プロペン−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロポリマーであり、1,1−ジフルオロエテンおよびテトラフルオロエテンを有する、沃素修飾フッ化エラストマー(CAS#25190−89−0)であり、Daikin America,Inc.により、DAI−ELTMフッ化エラストマーG−902として上市されている。
B−202は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとテトラフルオロエテン(CAS#25190−89−0)とのターポリマーから調製され、Dupont−Dow Elastomers,LLCにより、VitonTMB−202として上市されている。
シリコーン化合物1はフッ化炭素−シリコーンベースエラストマー組成物であり、40mmのBP加工設備の双スクリュー押し出し機を使用して調製され、その加工断面が150℃および200℃で熱せられ、出力速度82kg/時間ではスクリュースピード300rpmである。このプロセスは、LCS−755(100部)、ZnO(5部)、およびVarox(0.5部)からなるシリコーン化合物の添加と共に始まり、供給速度788g/分であり、次いで、フッ化炭素エラストマー(G902)を、該押し出し機に、供給速度546g/分で添加した。該押し出し機から結果的に得られてきたフッ化炭素ベースエラストマー組成物が、ミル上で、100部のFKMにつき5部のZnO、4部のTAIC、および3部のVAROXと共に一様になるまで、化合された。
シリコーン化合物2はフッ化炭素−シリコーンベースエラストマー組成物であり、40mmのWerner and Pfleidererの双スクリュー押し出し機を使用して調製され、その加工断面が150℃で熱せられ、出力速度80kg/時間ではスクリュースピード400rpmであり、WO2003/104322A1中の実施例1の手順により調製され、B202(100部)、相容化剤1(2.42部)、TRIG101(0.6部)、GP−70(65.76部)、およびTRIG101(1.98部)を使用している。該押し出し機から結果的に得られてきたフッ化炭素ベースエラストマー組成物が、Banburyミキサー中において、次いで、ミル上で、100部のFKMにつき6部の水酸化カルシウムおよび3部の酸化マグネシウムを与えるべく、3部のVC−20、3.8部のVC−30、および20部のCri−Act−45と共に一様になるまで化合された。
シリコーン化合物3はB202であり、Banburyミキサー中において、次いで、ミル上で、100部のFKMにつき6部の水酸化カルシウムおよび3部の酸化マグネシウムを与えるべく、3部のVC−20、3.8部のVC−30、および20部のCri−Act−45と共に一様になるまで化合された。
THV220Gは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニリデンのフッ素化ターポリマーであり、Dyneon,LLCにより、DyneonTMTHV220Gフッ化熱可塑性プラスチックとして上市されている。
KYNAR3150はポリフッ化ビニリデン(PVDF)コポリマーであり、ATOFINA Chemicals,Inc.により、Kynar Flex(登録商標)コポリマーシリーズ3120として上市されている。
【0047】
テスト
本フッ化プラスチック組成物の、引っ張り、伸び、および100%弾性率の特性が、ASTM D 412に基づく手順により、測定された。Shore A Durometerが、ASTM D 2240に基づく手順により、測定された。
【0048】
実施例1
化合物1(211g)およびTHV200G(285g)が、150℃で125回転/分(rpm)のBanburyローラーを備えた310mLのHaakeミキサーに加えられた。トルク上昇後、この材料温度は、約220℃であった。このフッ化プラスチックエラストマー組成物は、9分に除去された。冷やしていくと、圧縮成型により、Shore A Durometer 80、引っ張り強度13.9MPa、伸び419%を与えた。
【0049】
実施例2
化合物2(150g)およびKYNAR3120(285g)が、120℃で125回転/分(rpm)のBanburyローラーを備えた310mLのHaakeミキサーに加えられた。トルク上昇後、この材料温度は、約220℃であった。このフッ化プラスチックエラストマー組成物は、17分に除去された。冷やしていくと、圧縮成型により、Shore D Durometer 46、引っ張り強度4.0MPa、伸び471%を与えた。
【0050】
実施例3
化合物3(150g)およびKYNAR3120(285g)が、120℃で125回転/分(rpm)のBanburyローラーを備えた310mLのHaakeミキサーに加えられた。トルク上昇後、この材料温度は、約220℃であった。このフッ化プラスチックエラストマー組成物は、17分に除去された。冷やしていくと、圧縮成型により、Shore D Durometer 46、引っ張り強度2.9MPa、伸び227%を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化プラスチック組成物であって:
(i) フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース
(ii) フッ化プラスチック樹脂
(iii)FKM硬化剤
を混合することからの反応生成物を含んでいる、組成物。
【請求項2】
前記フッ化炭素−シリコーンエラストマーベースが、硬化可能な有機ポリシロキサンを、フッ化炭素エラストマーと混合し、次いで、該有機ポリシロキサンを加硫していくことを含んでいるプロセスにより調製される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フッ化プラスチック樹脂が、25℃を上回る融点を持つ、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ii)に対するi)の重量比が、2:98〜70:30である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
フッ化プラスチック組成物を調製する方法であって:
I) i) フッ化炭素−シリコーンエラストマーベース
ii) フッ化プラスチック樹脂
iii)フッ化炭素エラストマー硬化剤
を混合していき
II)該フッ化炭素−シリコーンエラストマーベースを加硫していく
ことを含んでいる、方法。
【請求項6】
前記フッ化炭素−シリコーンエラストマーベースおよび前記フッ化炭素エラストマー硬化剤がまず混合される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のフッ化プラスチック組成物を含む、製造物品。

【公表番号】特表2008−505205(P2008−505205A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519227(P2007−519227)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/019023
【国際公開番号】WO2006/007244
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】