説明

フッ素化された化合物の製造方法

本発明は、アルミニウムに基づく担体上の、クロムおよびニッケルに基づく混合触媒上の選択的脱ハロゲン化水素方法に関する。本発明は、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンおよび1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンの合成に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化された化合物、特にフッ素化された化合物1225yeおよび1234yfの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロフルオロカーボン(HFC)、特に、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)のようなハイドロフルオロオレフィンは、冷媒、熱伝達流体、消火剤、推進薬、発泡剤、膨潤剤、ガス誘電性化合物、重合もしくはモノマー媒体、キャリア流体、研磨剤、乾燥剤およびエネルギー製造ユニット用流体としての、その特性で知られている化合物である。オゾン層に危険である可能性がある、CFC(クロロフルオロカーボン)およびHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)と異なり、HFOは塩素を含有しないので、オゾン層に対する問題を与えない。
【0003】
1234yfの製造について、いくつかの方法が知られている。WO2008/002499は、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)の熱分解による、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)および1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234ze)の混合物の製造方法を記載する。使用される温度は、450℃〜900℃であると記載され、そして通常は、例で用いられている600℃〜750℃である。50%より大きい245ebの転換率に対して、生成物1234yf:1234zeの比は約1.3〜1.4である。
【0004】
WO2008/002500は、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)の脱フッ化水素触媒上での接触転換による、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)および1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234ze)の混合物の製造方法を記載する。好適な脱フッ化水素触媒は、フッ素化されたアルミナまたはフッ化アルミニウム(オキシフッ化またはフッ化アルミニウム)であり、例で使用されている触媒はオキシフッ化アルミニウムである。種々の金属、とりわけクロムおよびニッケル、の酸化物、フッ化物およびオキシフッ化物から選ばれる脱フッ化水素触媒も記載されている。これらの触媒の例は示されていない。使用される温度は、200℃〜500℃であると記載され、そして通常は300℃〜450℃であり、比較的高い転換率は、例において400℃以上で得られている。50%より大きい245ebの転換率に対して、生成物1234yf:1234zeの比は約1.9〜2.0である。
【0005】
したがって、これらの2つの出願は、生成物1234zeの実質的な部分を含む混合物の製造に関する。
【0006】
WO2007/056194は、式(I)CFCHXCHXの化合物の、式(II)CFCZCHZの化合物への転換によるHFOの調製(Xは、独立に、ClまたはFであり、Zは、独立に、HまたはFである)を記載する。ある化合物、たとえば特にテトラフルオロプロペン、特に選択的にHFO−1234yfおよび/またはHFO−1234ze、の選択率は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、であることが示されている。反応は気相で触媒の存在下に起こる。この出願で記載される触媒は、たとえばFeCl、オキシフッ化クロム、Ni(Niメッシュを含む)、NiCl、CrFおよびそれらの混合物、のような触媒である。他の記載されている触媒は、アンチモン触媒、アルミニウム系触媒(たとえば、AlFおよびAl)、パラジウム系、白金系、ロジウム系およびルテニウム系触媒である。好適な態様は、特にニッケル系触媒、炭素系触媒またはこれらの組み合わせ上での245ebの脱ハロゲン化水素による1234yfの調製である。適切であると示されている温度は、450℃〜600℃の間に含まれる。少なくとも50%の転換率、ならびに少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、およびもっと好ましくは少なくとも90%の選択率も示されている。WO2007/056194の例1〜16は、反応のために、いくつかの触媒と温度条件を与え、変動し得る転換率および選択率が得られる。同一の触媒を用いて、温度の増加は転換率の増加をもたらすが、選択率の減少を伴い、したがって1234yfの収率に影響する。
【0007】
WO2008/030440は、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)への1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン(1225ye)の水素化の第1ステージを含む方法を記載し、ついで目的とする2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を製造するために、脱フッ化水素される。脱フッ化水素反応に使用される触媒は、フッ化アルミニウム;ガンマアルミナ;フッ化アルミナ;フッ化アルミニウム上の金属、フッ化アルミナ上の金属;マグネシウム、亜鉛ならびにマグネシウム、亜鉛および/またはアルミニウムの混合物の酸化物、フッ化物およびオキシフッ化物;酸化ランタンおよびフッ化酸化ランタン;酸化クロム、オキシフッ化クロムおよび立方晶三フッ化クロム;炭素、酸洗炭素、活性炭、3次元炭素質材料;金属化合物担持炭素;ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、クロム、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、銅、亜鉛ならびにそれらの混合物、からなる群から選ばれる少なくとも1つの金属の酸化物、フッ化物およびオキシフッ化物の形態である金属;からなる群から選ばれる。例は、金属として、Cr/Coの混合物に言及する。得られる転換率は、温度250℃および接触時間30秒で約50%である。
【0008】
文献WO2007/056128は、式(I)CFCFCHa−mの化合物の、式(II)CFCZ=CHZの化合物への脱ハロゲン化水素反応を記載する。反応は、還元剤である水素の存在下に特に実施される。
【0009】
同様に、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC236ea)の、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン−1(1225ye)への脱ハロゲン化水素反応も知られている。
【0010】
文献US−P−5396000は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC236ea)の、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン−1(1225ye)への接触脱ハロゲン化水素反応による1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの調製を記載し、続いて目的化合物を得るために水素化する。236eaの1225yeへの脱ハロゲン化水素反応は、フッ素化されたアルミナに基づく触媒上で気相で実施されている。1225yeの選択率は示されていない。
【0011】
文献US−P−5679875は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC236ea)の、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン−1(1225ye)への接触脱ハロゲン化水素反応による1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの調製を記載し、続いて目的化合物を得るために水素化する。反応は、気相で実施されている。脱ハロゲン化水素触媒は、酸化もしくはオキシフッ化クロム(III)または炭素である。酸素は、ずっと触媒活性を維持するために1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの流れに添加され得る。選択率は高いが、転換率は非常に高いとは限らない。
【0012】
EP−A−974571は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの1,1,1,3−テトラフルオロ−2−プロペンへの脱ハロゲン化水素方法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2008/002499
【特許文献2】WO2008/002500
【特許文献3】WO2007/056194
【特許文献4】WO2008/030440
【特許文献5】WO2007/056128
【特許文献6】US−P−5396000
【特許文献7】US−P−5679875
【特許文献8】EP−A−974571
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、236ebおよび236eaから、それぞれ1234yfおよび1225yeへの、高転換率で高選択率、したがって高収率の調製方法に対する要請が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、アルミニウムに基づく担体上の、クロムおよびニッケルに基づく混合触媒上の選択的脱ハロゲン化水素方法を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、式(I)CF−CHF−CHFX(Xは水素またはフッ素)の化合物の、式(II)CF−CF=CHXの化合物への、アルミニウムに基づく担体上の、クロムおよびニッケルに基づく混合触媒上の脱ハロゲン化水素方法を提供する。
【0017】
その態様によれば:
−式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物CF−CHF−CHFであり、式(II)の化合物は、式(IIa)CF−CF=CHFの化合物である。
−式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物CF−CHF−CHFであり、式(II)の化合物は、式(IIb)CF−CF=CHの化合物である。
−混合触媒は、ニッケルの酸化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物との混合で、クロムの酸化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物を含む。
−混合触媒は、ニッケルのフッ化物またはオキシフッ化物との混合で、クロムのフッ化物またはオキシフッ化物を含む。
−アルミニウムに基づく担体は、アルミニウムのハロゲン化物またはオキシハロゲン化物である。
−アルミニウムに基づく担体は、アルミニウムのフッ化物またはオキシフッ化物である。
−触媒は、0.5〜20wt%のクロムおよび0.5〜20wt%のニッケルを含み、これらの元素はモル比0.5〜5で存在する。
−方法は気相で実施される。
−方法は、150℃〜600℃、好ましくは300℃〜500℃、さらに有利には300℃〜400℃の温度で実施される。
−方法は、0.1〜100秒、好ましくは1〜50秒、さらに有利には2〜20秒の接触時間で実施される。
−方法は、水素の存在下で実施され、H/1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンのモル比は、0.3〜30、特に0.5〜20、有利には1〜10の範囲である。
【0018】
さらに、本発明は、選択的脱ハロゲン化水素反応のための触媒として、アルミニウムに基づく担体上の、クロムおよびニッケルに基づく混合触媒の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、クロムおよびニッケルの混合触媒を使用する。この混合触媒は、クロムおよびニッケルの両方を含む。モル比Cr:Niは、金属元素に関して、0.5〜5、たとえば0.7〜2、特に1に近いのが通常である。触媒は、0.5〜20wt%のクロムおよび0.5〜20wt%のニッケルを含み得、好ましくは各金属が2〜10wt%である。
【0020】
金属は、金属の形態、または誘導体の形態、特に酸化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物、これらの誘導体、特にハロゲン化物またはオキシハロゲン化物、で存在し得、それらは触媒金属の活性化により得られる。触媒金属の活性化は必要ではないが、好適である。
【0021】
担体は、アルミニウムに基づく。いくつかの可能な担体としては、アルミナ、活性アルミナまたはアルミニウム誘導体が挙げられる。これらのアルミニウム誘導体は、特にハロゲン化またはオキシハロゲン化アルミニウムであり、US−P−4902838に記載され、または下記の活性化方法により得られる。
【0022】
触媒は、金属の活性化にさらに供されるか、または供されない担体上で、非活性化形態または活性化形態の、クロムおよびニッケルを含み得る。
【0023】
触媒は、アルミナ(通常、いわゆる活性アルミナ;この活性アルミナは、高多孔度を有するアルミナであり、金属の活性化処理に供されたアルミナとは異なる)から調製され得る。第1のステージで、アルミナは、空気およびフッ化水素酸を用いるフッ素化により、フッ化アルミニウムに、またはフッ化アルミニウムとアルミナの混合物に転換され、アルミナからフッ化アルミニウムへの転換速度は、アルミナのフッ素化が実行される温度(通常、200℃〜450℃、好ましくは250℃〜400℃)に本質的に依存する。ついで、担体は、クロムおよびニッケル塩の水性溶液を用いて、またはクロム酸、ニッケル塩およびメタノール(クロム還元剤として働く)の水性溶液を用いて、含浸される。クロムおよびニッケル塩として、塩化物が使用され得、たとえばシュウ酸ニッケル、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル、および硫酸ニッケル、または重クロム酸塩のような、他の塩も、これらの塩が担体により吸収され得る水の量に可溶である限り使用され得る。さらに、触媒は、上述のクロムおよびニッケル化合物の溶液を用いて、アルミナ(通常、活性化された)の直接含浸により調製され得る。この場合、アルミナの少なくとも一部(たとえば70%以上)の、フッ化アルミニウムまたはオキシフッ化アルミニウムへの転換が、触媒金属の活性化段階の間に実行される。
【0024】
触媒の調製に使用され得る活性アルミナは周知の製品であり、商業的に入手し得る。それらは300℃〜800℃に含まれる温度でアルミニウム水和物(水酸化アルミニウム)のか焼により調製されるのが通常である。アルミナ(活性もしくは非活性)は、触媒性能を害さない限り、有意の含量(1000ppm以下)のナトリウムを含んでいてもよい。
【0025】
好適には、しかし必要ではないが、触媒は条件づけされ、または活性化、すなわち活性化と呼ばれる従来の操作によって活性で安定な成分(反応条件下で)に転換、される。この処理は「その場」で(脱フッ化水素反応器内で)、または活性化条件に耐えるように設計された、適した装置内で、のいずれかで実行され得る。
【0026】
この活性化段階は、通常、次の段階からなる:
−乾燥段階。この乾燥段階は、通常、窒素もしくは空気の流れの下で、高温(250℃〜450℃、好ましくは300℃〜350℃)で実行される。この段階は、窒素もしくは空気の存在下で、低温(100℃〜150℃、好ましくは110℃〜120℃)での第1乾燥段階により第1相を任意に先行され得る。乾燥段階の時間は1〜50時間の範囲に含まれ得る。
−フッ素化段階。このフッ素化段階は、フッ化水素酸と窒素の混合物を用いて低温(180℃〜350℃)で実施され、温度が350℃を超えないようにHF含量を調節する。フッ素化段階の時間は1〜50時間の範囲に含まれ得る。
−450℃までの範囲であり得る温度で、純粋または窒素で希釈された、フッ化水素酸の流れの下で、任意に仕上げ段階。
【0027】
操作の間、触媒前駆体(たとえば、ハロゲン化ニッケルもしくはクロム、クロム酸もしくは重クロム酸ニッケル、酸化クロム)は、対応するフッ化物および/またはオキシフッ化物に転換され、水および/または塩酸の遊離をもたらす。元素(クロム、ニッケル、フッ素、アルミニウム、酸素)の化学分析は、この活性化の後に、触媒の無機質組成を実証することを可能にする。
【0028】
このような触媒は、EP−A−486333,特に3頁、11〜48行、例1A,2A,および4Aに記載され、ここに引用される。この触媒は、この文献では、フッ素化触媒として、テトラフルオロ−1,1,1,2−エタン(134a)を製造するためにガス状HFとのクロロ−1−トリフルオロ−2,2,2−エタン(133a)の接触フッ素化反応において使用されている。
【0029】
脱フッ化水素反応は、HFが出発化合物から消去され、最終化合物に二重結合の創出をもたらす反応である。この反応は、出発化合物(典型的には、4以下の炭素原子を有するハイドロフルオロカーボン化合物)が立体化学を有し、HFの消去が少なくとも2つの位置の異性体をもたらという意味で、選択的である。出発フルオロカーボン化合物は特にトリフルオロメチル末端基を含む化合物である。
【0030】
この脱フッ化水素反応は、特に、式(I)CF−CHF−CHFX(Xは水素またはフッ素)の化合物の、式(II)CF−CF=CHXの化合物への、脱ハロゲン化水素反応である。
【0031】
第1の態様によれば、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物CF−CHF−CHF(236ea)であり、式(II)の化合物は、式(IIa)CF−CF=CHF(1225ye)の化合物である。
【0032】
第2の態様によれば、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物CF−CHF−CHF(245eb)であり、式(II)の化合物は、式(IIb)CF−CF=CH(1234yf)の化合物である。
【0033】
脱フッ化水素反応は、通常、気相で実施される。
【0034】
触媒は、適切な形態、たとえば固定床もしくは流動床の形態で、好ましくは固定床で、存在し得る。流れの方向は、頂部から底部、または底部から頂部であり得る。
【0035】
温度は、150℃〜600℃、好ましくは300℃〜500℃、有利には300℃〜400℃、の範囲に含まれ得る。圧力は、大気圧、またはこの大気圧より低くても高くてもよい。
【0036】
接触時間(触媒容量と充填物の総流量の間の比)は、通常0.1〜100秒、好ましくは特に236eaに対して1〜50秒、有利には特に245ebに対して2〜20秒、に含まれる。
【0037】
希釈ガス(窒素、ヘリウムまたはアルゴン)が反応に使用され得る。水素も、たとえば連続的に、または非連続的に注入され得る。モル比H/245ebは、大きな範囲で変動でき、特に0.3〜30、特に0.5〜20、有利には1〜10の範囲である。
【0038】
反応は、ハロゲンを含む反応に適した反応容器内で実施される。そのような反応容器は、当業者に知られており、たとえばHastelloy(登録商標)、Inconel(登録商標)、Monel(登録商標)またはフルオロポリマーに基づく内部被覆を含み得る。さらに、これらの反応容器は、必要ならば、熱交換手段を含み得る。
【0039】
試薬の供給は、連続的に実行され得るのが通常であるが、適切であれば段階的であってもよい。
【0040】
反応性生物は、特に目的1234yfもしくは1225ye、HFおよび可能な副生物ならびに未反応の出発化合物を含むが、標準法で分離される。反応しなかった、可能な試薬は、方法に循環されるのが有利である。
【0041】
方法において、転換率は50%より高く、好ましくは70%より高く、そして有利には80%より高い。選択率は非常に高く、通常80%より高く、好ましくは90%より高く、そして有利には95%より高い。収率は、通常80%より高い。
【0042】
次のことが想起されるであろう:
−転換率は、反応した出発物質の%である(反応した出発物質のモル数/導入された出発物質のモル数);
−目的生成物の選択率は、生成された目的生成物のモル数/反応した出発物質のモル数、の比である;
−目的生成物の収率は、生成された目的生成物のモル数/導入された出発物質のモル数、の比であり、さらに目的生成物の収率は、転換率と選択率の積としても定義され得る;
−接触時間は、空間速度(すなわち、ガス空間速度(GHSV))の逆である;
−空間速度は、標準温度および圧力条件下における、総容量流速と触媒床容量の間の比である。
【実施例】
【0043】
次の例は、本発明を制限することなく、本発明を説明するものである。
例1 触媒の調製
使用される触媒は、次のように調製されたNi−Cr/AlF触媒である。空気およびフッ化水素酸(空気中の酸濃度5〜10容量%)を用いて固定床で約280℃でGRACE HSAアルミナのフッ素化により、予め得られた担体343gが、回転蒸発器内に入れられた。出発GRACE HSAアルミナは、次の物理化学的特性を有する:
−形態:径0.5〜2mmのビーズ
−BET表面積:220m2/g
−細孔容積:1.3cm/g
さらに、2つの別々の水性溶液が調製される:
(a)塩化ニッケルを添加されたクロム酸溶液:
−クロム酸無水物 55g
−塩化ニッケル・6水和物 130g
−水 63g
(b)メタノール溶液
−メタノール 81g
−水 8g
これらの2つの溶液は、撹拌しながら担体上に、温度40℃で、大気圧下で約2時間にわたって同時に導入される。窒素の下での熟成段階後に、触媒は窒素の下で、ついで真空下、65℃で、さらに約90℃で6時間乾燥される。
【0044】
含浸された固体500gがInconel(登録商標)製の管状反応容器に充填される。まず、触媒は低温で、ついで320℃までで窒素掃引下に大気圧で乾燥される。ついで、320℃、さらに390℃までで、フッ化水素酸/窒素混合物(窒素中の酸濃度5〜10容量%)の存在下にフッ素化される。ついで、HFの供給が停止される。窒素掃引は390℃で15分間維持され、ついで触媒は窒素掃引しながら60℃に冷却される。
【0045】
活性化後の触媒の特性は次のとおりである。
【0046】
−BET表面積:40m2/g
−細孔容積:0.4cm/g
−化学組成:
Al: 25wt%
F: 58wt%
Cr: 5.3wt%
Ni; 6.4wt%
例2 245ebの脱ハロゲン化水素
容量50cmで、内径2.1cmの反応容器が使用され、高さ6.5cmの固定床の形態で、例1の触媒20gが充填される。圧力は1気圧である。試薬は水素と混合され、予め反応温度に加熱された反応容器に注入される。ついでガス流出物がガスクロマトグラフィーにより分析される。
【0047】
ついで、次の結果が得られる(MRはモル比を意味する)。
【0048】
温度:377℃、接触時間:8.8秒、MR(H2/245eb):1.4、
転換率:99.8%、選択率1234yf:89.6%、選択率1234ze:9.1%、生産性1234yf Kg/h/m 触媒:773
混合触媒での生産性は非常に高いが、非常に高い転換率および選択率も確保していることが注目されるべきである。
例3 245ebの1234yfへの脱フッ化水素
容量25cmの反応容器が使用され、固定床の形態で、例1の触媒10gが充填される。圧力は1気圧である。
【0049】
ついで、次の結果が得られる(MRはモル比を意味する)。
【0050】
温度:373℃、接触時間:8.9秒、MR(H2/245eb):3、
転換率:87%、選択率1234yf:90%、選択率1234ze:9%、生産性1234yf Kg/h/m 触媒:436
混合触媒での生産性は非常に高いが、非常に高い転換率および選択率も確保していることが注目されるべきである。
例4 236eaの1225yeへの脱フッ化水素
例2と同一量の触媒を充填した、同一の反応容器が使用される。圧力は1気圧である。ついで、次の結果が得られる(MRはモル比を意味する)。
【0051】
温度:375℃、接触時間:10.4秒、MR(H2/245eb):2.14
転換率:50.1%、選択率1225ye:97.6%、生産性1234ye Kg/h/m 触媒:3.19
さらに、同一の結果が100時間の操作後にも得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムに基づく担体上の、クロムおよびニッケルに基づく混合触媒上の選択的脱ハロゲン化水素方法。
【請求項2】
アルミニウムに基づく担体上の、クロムおよびニッケルに基づく混合触媒上における、式(I)CF−CHF−CHFX(Xは水素またはフッ素)の化合物の、式(II)CF−CF=CHXの化合物への、請求項1に記載の脱ハロゲン化水素方法。
【請求項3】
式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物CF−CHF−CHFであり、そして式(II)の化合物は、式(IIa)CF−CF=CHFの化合物である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物CF−CHF−CHFであり、そして式(II)の化合物は、式(IIb)CF−CF=CHの化合物である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
混合触媒は、ニッケルの酸化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物との混合で、クロムの酸化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物を含む請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
混合触媒は、ニッケルのフッ化物またはオキシフッ化物との混合で、クロムのフッ化物またはオキシフッ化物を含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アルミニウムに基づく担体は、アルミニウムのハロゲン化物またはオキシハロゲン化物である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
アルミニウムに基づく担体は、アルミニウムのフッ化物またはオキシフッ化物である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
触媒は、0.5〜20wt%のクロムおよび0.5〜20wt%のニッケルを含み、これらの元素はモル比0.5〜5で存在する請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
方法は気相で実施される請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
方法は、150℃〜600℃、好ましくは300℃〜500℃、さらに有利には300℃〜400℃の温度で実施される請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
方法は、0.1〜100秒、好ましくは1〜50秒、さらに有利には2〜20秒の接触時間で実施される請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
方法は、水素の存在下で実施され、H/1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンのモル比は、0.3〜30、特に0.5〜20、有利には1〜10の範囲である請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
選択的脱ハロゲン化水素反応のための触媒としての、アルミニウムに基づく担体上の、クロムおよびニッケルに基づく混合触媒の使用。

【公表番号】特表2011−515456(P2011−515456A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501315(P2011−501315)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005092
【国際公開番号】WO2009/118630
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】