説明

フッ素含有排水の処理方法

【課題】高濃度のフッ素含有排水を低コストで効率的に処理することができるフッ素含有排水の処理方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明のフッ素含有排水の処理方法は、フッ素含有排水に第1の塩化カルシウムを添加してフッ化カルシウムを生成させる工程と、前記フッ化カルシウムを沈殿除去した処理水中のカルシウムイオンを陽イオンとイオン交換するカルシウム回収工程と、からなり、前記イオン交換の再生処理で生成した第2の塩化カルシウムを前記フッ素含有排水に添加することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に、半導体工場などから排出される高濃度のフッ素含有排水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体などの電子材料製造工場では、シリコンウェハの洗浄時にフッ素化合物を使用するため、工業排水に数百mg/Lのフッ酸が含有されている。高濃度のフッ素含有排水は環境基準や水質汚濁防止に関わる排出基準により排水基準値(8mg/L)以下となるように排水処理する必要がある。
【0003】
従来のフッ素含有排水からフッ素を除去する方法としては、原水に水酸化カルシウムを添加して除去する方法がある。図7は従来のフッ素含有排水の処理方法の説明図である。図示のように、反応槽1において原水となるフッ素含有排水に消石灰(Ca(OH))を投入し、フッ化カルシウム(CaF)を生成させる。次いで凝集槽2において生成したフッ化カルシウムに対して、ポリマ(高分子凝集剤)を添加しフロック化させる。そして後段の沈殿槽3において凝集したフッ化カルシウムを沈殿分離する。このようにフッ素イオンと消石灰を反応させて、排水中のフッ素含有率を15mg/L以下とすることができる。さらに、前述の排水基準を満たすために樹脂吸着やアルミ凝集沈殿などの後処理を行うことにより、フッ素含有率を8mg/L以下としてから河川などに放流している。
【0004】
また特許文献1のフッ素含有水の処理方法は、前段で低濃度のフッ素及びカルシウムを含有する排水をイオン交換樹脂塔によりイオン交換して、排水中のカルシウムイオンを除去している。そして後段の逆浸透膜(RO膜)でフッ素イオンを除去している。このとき逆浸透膜の濃縮液とイオン交換樹脂塔の再生排液となる塩化カルシウムを反応させてフッ素を不溶化している。これにより、逆浸透膜の目詰まりなしにフッ素含有水を効率よく処理して水回収率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−221579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記消石灰を用いたフッ素含有排水の処理方法では次のような問題点が挙げられる。
消石灰とフッ素との反応性が緩慢であるため、カルシウムとフッ素の反応当量の3倍以上に相当する消石灰を注入しなければならない。一般に、消石灰は水に溶けにくい。従って沈殿槽ではフッ化カルシウムの沈殿物に加えて未反応の消石灰も排出されることになり、処理しなければならない汚泥量が増加する。汚泥の処理は、濃縮後、加熱乾燥して脱水しているため、エネルギーコストが高くなる。
また、消石灰は強アルカリ性であるため、後処理で中性付近にするpH調整の薬品が必要となる。
【0007】
フッ化カルシウムの沈殿除去後の処理水中には、カルシウムイオンが数百mg/L存在しているため、このままの状態で逆浸透膜などの膜分離処理を行うとスケールが生じてしまい処理できず水の再利用が困難となる。
また取り扱う消石灰の形態は粉末状であるため、空気中に飛散し易く作業環境が劣悪となる。
【0008】
一方、消石灰に換えて、塩化カルシウムをフッ素含有排水に添加してフッ化カルシウムを生成させる排水処理方法がある。しかし、塩化カルシウムは消石灰に比べて薬品コストが高くなり実用的には不利である。
【0009】
また特許文献1では処理の対象となるフッ素含有水のフッ素含有量が20mg/L以下の淡水であり、このような低濃度のフッ素含有水であれば処理することができる。しかし、上記半導体工場から排出される高濃度のフッ素含有排水の場合、大量のフッ素を逆浸透膜で除去処理するとなると原水供給時の加圧や逆浸透膜の洗浄などに負荷がかかり、処理効率が悪いという問題がある。また、再生排液の塩化カルシウムだけではフッ素と反応させる薬品が十分ではないという問題がある。さらに、再生排液の全量を反応槽に添加した場合、排液のカルシウム濃度が薄くなり、フッ素との反応効率が低下するなどの問題もある。
【0010】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため、高濃度のフッ素含有排水を低コストで効率的に処理することができるフッ素含有排水の処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のフッ素含有排水の処理方法は、フッ素含有排水に第1の塩化カルシウムを添加してフッ化カルシウムを生成させる工程と、前記フッ化カルシウムを沈殿除去した被処理水中のカルシウムイオンを陽イオンとイオン交換するカルシウム回収工程と、からなり、前記イオン交換の再生処理で生成した第2の塩化カルシウムを前記フッ素含有排水に添加することを特徴としている。
【0012】
この場合において、前記第2の塩化カルシウムは、イオン交換樹脂の薬品再生排液を濃度検出し、前記フッ化カルシウムを生成させるのに必要な反応当量以上のカルシウムを前記薬品再生排液から回収して使用するとよい。
また前記イオン交換した後、被処理水を膜ろ過処理するとよい。
【0013】
本発明のフッ素含有排水の処理方法は、フッ素含有排水に第1の塩化カルシウムを添加してフッ化カルシウムを生成させる工程と、前記フッ化カルシウムに凝集剤を添加して凝集させる工程と、前記フッ化カルシウムを沈殿させて分離除去する工程と、前記分離除去する工程の被処理水中のカルシウムイオンを陽イオンとイオン交換する工程と、イオン交換した被処理水を膜ろ過処理する工程と、前記イオン交換の薬品再生排液から塩化カルシウムを分取する工程と、からなり、前記イオン交換の再生処理で生成した第2の塩化カルシウムを前記フッ素含有排水に添加することを特徴としている。
【0014】
この場合において、前記第2の塩化カルシウムは、イオン交換樹脂の薬品再生排液をカルシウムイオンモニタで濃度検出し、少なくとも前記フッ化カルシウムを生成させるのに必要な反応当量以上のカルシウムを前記薬品再生排液から回収して使用するとよい。
【0015】
また前記第1の塩化カルシウムの添加量は1.1〜1.3当量であるとよい。
また前記カルシウム回収工程は、並列に配置された複数のイオン交換樹脂塔でイオン交換処理を交互に行うとよい。
【発明の効果】
【0016】
上記記載のフッ素含有排水の処理方法によれば、沈殿物の殆どはフッ化カルシウムであり、従来の消石灰の投入に比べて未反応の消石灰が存在しないため、汚泥処理量を大幅に減量し、排水処理のコスト低減化を図ることができる。
【0017】
またフッ化カルシウムを生成させるのに必要な反応当量以上となる第2の塩化カルシウムを分取して、反応槽に添加することにより、第1の塩化カルシウムの投入量を大幅に低減することができる。
また再生排液中の塩化カルシウムを効率よく回収するため、後段の膜ろ過に対するスケーリングを防止できる付随的な効果もある。
【0018】
フッ素含有排水中のフッ素イオンを沈殿槽と高度処理の2段階で除去することにより、後段の高度処理となる膜ろ過処理の負担を軽減して排水基準の基準値を満たす処理水が得られる。
【0019】
第1及び第2の塩化カルシウムの投入量をフッ素イオンに対して2.1〜2.3倍にすることができる。従って反応後のフッ素濃度を15mg/L以下に必要な溶存カルシウムを数百mg/Lに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のフッ素含有排水の処理方法の説明図である。
【図2】イオン交換樹脂塔のカルシウムイオン回収処理時の説明図である。
【図3】イオン交換樹脂塔の樹脂再生時の説明図である。
【図4】イオン交換樹脂塔の樹脂再生時の流出カルシウムイオン濃度の説明図である。
【図5】イオン交換樹脂塔の運転パターンの説明図である。
【図6】本発明のフッ素含有排水の処理方法の変形例の説明図である。
【図7】従来のフッ素含有排水の処理方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のフッ素含有排水の処理方法の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1は本発明のフッ素含有排水の処理方法の説明図である。本発明のフッ素含有排水の処理方法は、フッ化カルシウムの反応工程と、凝集工程と、沈殿分離除去工程と、カルシウム回収工程と、高度処理工程と、分取工程と、を主な基本構成としている。
【0022】
フッ化カルシウムの反応工程は反応槽10で行なわれる。反応槽10には原水となるフッ素含有排水11が導入され、槽内に第1及び第2の塩化カルシウムの添加手段12,14が接続されている。第1及び第2の塩化カルシウムの添加手段12,14は、いずれもカルシウムイオンを原水中のフッ素イオンと反応させてフッ化カルシウムを生成させるための薬品である。
このとき第1の塩化カルシウムの添加手段12は反応槽10に新規に塩化カルシウムを添加している。
【0023】
第2の塩化カルシウムの添加手段14は、後述するカルシウム回収塔40の再生処理の際に生成した第2の塩化カルシウムを反応槽10に添加している。
ここで反応槽10によりフッ化カルシウムを生成し、フッ化カルシウムを沈殿分離した後のフッ素含有濃度を15mg/L以下とするためには、反応液中に溶存しているカルシウム量を数百mg/Lに保持する必要がある。この溶存カルシウム量を保持するためにはフッ素イオンに対してカルシウムイオンが2.1〜2.3当量必要となる。
【0024】
本実施形態ではカルシウムイオンが2.1〜2.3当量を満たすように稼動初期の時点では第1の塩化カルシウムの添加手段により2.1〜2.3当量の塩化カルシウムを添加している。稼動初期の後は第1の塩化カルシウムの添加手段12による塩化カルシウムの添加量をフッ素イオンに対してカルシウムイオンが1.1〜1.3当量必要となるように添加している。フッ化カルシウムの反応に必要なカルシウムイオンは約1当量であり、残りのカルシウムイオンは溶液中に溶存している。本実施形態では、この溶存カルシウムイオンに相当する塩化カルシウムを第2の塩化カルシウムの添加手段14で添加して補う構成としている。よって後述の高濃度カルシウムの回収水を用いる第2の塩化カルシウムの添加手段14による塩化カルシウムの添加量は、フッ素イオンに対してカルシウムイオンは約1当量となる。
なおフッ素含有排水は、通常、酸性溶液(pHが2〜3)であるため、消石灰を添加してpHが7〜8となる中性にする作業を行うようにしている。
【0025】
凝集工程は凝集槽20で行なわれる。凝集槽20には反応層10からフッ化カルシウムを含む被処理水が導入され、高分子凝集剤などのポリマの凝集剤添加手段22が取り付けられている。このような構成により凝集槽20では、凝集剤添加手段22からフッ化カルシウムのフロック化に必要なポリマが添加される。これによりフッ化カルシウムのフロック化が行われ後段の沈殿槽30で沈殿し易くなり固液分離が容易となる。
【0026】
沈殿分離除去工程は沈殿槽30で行われる。沈殿槽30には、凝集槽20で凝集されたフッ化カルシウムを含む被処理水が導入され、槽内下部に沈殿したフッ化カルシウムを外部へ排出させる固液分離が行われる。排出されたフッ化カルシウムの汚泥は、濃縮処理された後、脱水処理を行って廃棄される。なお沈殿分離工程は沈殿のほか、フッ化カルシウムを固液分離できれば、これに限らず、膜分離などを用いることができる。
【0027】
カルシウム回収工程はカルシウム回収塔40で行われる。固液分離後の被処理水中には溶存カルシウム量が数百mg/Lのカルシウムイオンが含まれているため、カルシウム回収塔40によりカルシウムの回収が行われる。実施形態に係るカルシウム回収塔40はNa型陽イオン交換樹脂塔を用いている。Na型陽イオン交換樹脂塔は塔内にNa型陽イオン交換樹脂が充填されている。
【0028】
図2はイオン交換樹脂塔のカルシウムイオン回収処理時の説明図である。図示のように沈殿槽30からの被処理水(凝集沈殿処理水)がカルシウム回収塔40に導入されると、樹脂塔内部に充填されているナトリウムイオンと被処理水中のカルシウムイオンが置換されて、樹脂官能基にカルシウムが捕捉される。これによりカルシウム回収塔40からはカルシウムイオンが除去されたフッ素含有量15mg/Lの被処理水(カルシウム処理水)が排出される。イオン交換工程は、イオン交換樹脂が飽和に達するとカルシウムイオンが捕捉されなくなる。そこでイオン交換樹脂が飽和に達する前にイオン交換樹脂の再生作業が必要となる。なおカルシウムイオンの回収工程の間は点線に示す後述の再生工程は行われない。
【0029】
図3はイオン交換樹脂塔の樹脂再生時の説明図である。図示のように破線に示すカルシウム回収工程を停止して、樹脂再生薬品となる数%濃度の食塩水(NaCl溶液)をカルシウム回収塔40の下流側(被処理水の導入と反対側)から供給する。樹脂塔内部では、樹脂官能基に捕捉されたカルシウムイオンとナトリウムイオンの置換が行われてNa型官能基に再生される。そしてカルシウムイオンは塩化カルシウムとして再生配管42から排出される。再生配管42上にはカルシウムイオンモニタ44が設置されている。本実施形態のカルシウムイオンモニタ44は原子吸光分析法による吸光度を測定することにより、インラインのカルシウムイオンをモニタしている。この他、インラインの硬度計を用いることもできる。再生配管42は希薄再生水用の配管46と、高濃度カルシウムイオン回収水用の配管48に分かれている。この各配管上には閉止弁47,回収弁49が設けられており、カルシウムイオンモニタ44の測定値に基づいて、希薄再生水用の配管46と、高濃度カルシウムイオン回収水用の配管48を切り替え可能に構成している。高濃度カルシウムイオン回収水用の配管48は第2の塩化カルシウム添加手段14として、反応槽10に接続している。
【0030】
図4はイオン交換樹脂塔の樹脂再生時の流出カルシウムイオン濃度の説明図である。同図縦軸は流出カルシウムイオン濃度を示し、横軸は再生時間を示している。図示のように流出カルシウムイオンの濃度は上向きの放物曲線状に変化している。再生用のNaClを注入すると、開始から僅かの時間で急激に濃度が上昇する。これは樹脂層内でカルシウムイオンとナトリウムイオンの交換が即座に行われて流出するためである。そして所定時間再生水を流し続けると流出カルシウムイオン濃度の極大値に達する。その後徐々に減少する。本発明では、回収するカルシウムイオン量が排水中のフッ素をフッ化カルシウムとする反応当量以上(樹脂再生時のカルシウム回収率90%以上)を満たす濃度以上とし、これを実現するためライン(設定値)Aより上の間の再生処理によって生成した第2の塩化カルシウムを分取して、反応層10に添加するようにしている(分取工程)。流出カルシウムイオン濃度がラインAを超えた時点で、回収弁49を開放し、閉止弁47を閉塞する。また流出カルシウムイオン濃度がラインAより低下した時点で、回収弁49を閉塞し、閉止弁47を開放する。なおカルシウムイオン濃度が希薄の再生水は、フッ素との反応効率が低下するため、添加薬品として用いないようにしている。
【0031】
図5はイオン交換樹脂塔の運転パターンの説明図である。通常のカルシウム回収工程を行うとイオン交換樹脂が飽和に達する。飽和した樹脂塔からはカルシウムイオンがリークするため、再生工程が必要となる。再生工程はまず、樹脂塔の樹脂表面までの水抜きを行い塔内の被処理水を排出する。次に上昇流の水で樹脂層を解きほぐして混合し夾雑物を洗い流す逆洗を行う。そして所定時間沈静した後、水張りを行う。次に再生水となる数%濃度の食塩水を所定時間又は所定量、樹脂塔内に注入する。本発明における回収塩化カルシウムは、この食塩水の流入過程で再生排液に混入してくる。その後、下降流で樹脂塔内に残っている再生水を水でゆっくり押し出しながら排出する。次に下降流でカルシウム回収時と同じ流速で純水を流し、樹脂塔内に残っている少量の再生水を十分に洗い流す(水洗)。このような再生工程はカルシウム回収工程よりも短時間で行うことができる。よって複数のカルシウム回収塔を交互に運転する場合は、再生工程の終了後、次のカルシウム回収工程までの間待機することになる。なお、本実施例は、再生薬品を上向流で流入させる方式で説明しているが、再生薬品を下向流又は上下向流で注入するように構成することもできる。
【0032】
高度処理工程は、高度処理手段50によりイオン交換樹脂工程で処理されたフッ素含有率が15mg/Lの被処理水をフッ素含有率が排水基準となる8mg/L以下となるように処理する工程である。本実施形態では高度処理手段50の一例として逆浸透膜による膜処理を用いて以下説明する。逆浸透膜は、被処理水中のフッ素を除去するもので膜の材質としては酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン等を用い、膜の形状としては、中空子膜、スパイラル膜、チューブラー膜などを用いることができる。
【0033】
上記工程による本発明のフッ素含有排水の処理方法について以下説明する。
フッ素含有排水が反応槽10に導入されると、第1の塩化カルシウム添加手段12により1.1〜1.3当量の第1の塩化カルシウムが添加12される。また第2の塩化カルシウム添加手段14により、後段のカルシウム回収塔40の再生処理によって生成した第2の塩化カルシウムが添加される。
反応槽10で生成されたフッ化カルシウムは、凝集槽20へ導入されて凝集剤添加手段22により高分子凝集剤などのポリマが添加されてフロック化する。
【0034】
次に沈殿槽に導入されたフッ化カルシウムは沈殿分離除去されて、濃縮・脱水工程を経て外部に廃棄される。一方、カルシウムイオンを含む被処理水はカルシウム回収塔40に導入される。
【0035】
カルシウム回収塔40では、樹脂塔内部に充填されているナトリウムイオンと被処理水中のカルシウムイオンが置換されて、樹脂官能基にカルシウムが捕捉される。カルシウム回収塔を通過したフッ素濃度が15mg/Lの被処理水は、高度処理手段50となる逆浸透膜でフッ素イオンが回収される。逆浸透膜で膜分離処理された処理水は、フッ素濃度が8mg/L以下となり再利用される。
【0036】
一方、カルシウム回収塔40では通常のカルシウム回収工程でイオン交換樹脂が飽和に達するとカルシウムイオンが捕捉されなくなるため、カルシウムイオンがリークする前に再生工程に切り替える。再生工程は、樹脂再生薬品となる数%濃度の食塩水(NaCl溶液)をカルシウム回収塔40の下流側(被処理水の導入と反対側)から供給する。このとき再生配管42から排出される薬品再生排液中のカルシウムイオン濃度をカルシウムイオンモニタで測定する。本実施形態では、図4に示す流出カルシウムイオン濃度の濃度曲線に対して、排水中のフッ素をフッ化カルシウムとする反応当量以上(樹脂再生時のカルシウム回収率90%以上)を満たす濃度以上となる、ライン(設定値)Aより上の間の再生処理によって生成した第2の塩化カルシウムを含む高濃度の回収水を反応層10に添加するようにしている。
【0037】
このようなフッ素含有排水の処理方法によれば、従来の消石灰によるカルシウムイオンの投入に比べて汚泥処理量を大幅に減量し、排水処理のコスト低減化を図ることができる。またイオン交換樹脂塔の再生処理水である第2の塩化カルシウムを反応槽に添加することにより、第1の塩化カルシウムの投入量を大幅に低減することができる。
【0038】
図6は本発明のフッ素含有排水の処理方法の変形例の説明図である。
変形例のフッ素含有排水の処理方法は、沈殿槽30と高度処理手段50の間に、複数のカルシウム回収塔40a,40bを並列に配置した構成としている。具体的に図6に示す処理方法は、2基の陽イオン交換樹脂塔を並列に配置している。その他の構成は図1に示す処理方法と同様であり、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。このような構成により、一方の陽イオン交換樹脂塔では、通常のナトリウムイオンとカルシウムイオンとの置換が行われ、処理水中のカルシウムイオンを回収している。他方のイオン交換樹脂塔では、カルシウムイオンの回収作業を中止して待機又は再生処理を行っている。具体的には水抜き、逆洗、沈静、水張りなどの再生準備を行う。そして薬品となる塩化ナトリウム水溶液を樹脂塔の下流側から注入する。所定時間、所定量の薬品を注入して樹脂塔内で捕集されたカルシウムイオンとナトリウムイオンの置換を行う。次に水洗作業を行い、樹脂塔内の塩化ナトリウムの薬品を外部へ排出させる。
【0039】
上記構成による変形例のフッ素含有排水の処理方法は、並列に配置された複数のイオン交換樹脂塔でイオン交換処理を交互に切り替えて行うように構成している。これにより、カルシウム回収塔40の再生工程のためにカルシウム回収工程を停止する必要がなく、カルシウム回収工程を連続的に行うことができる。また図1に示すフッ素含有排水の処理方法と同様に、従来の消石灰によるカルシウムイオンの投入に比べて汚泥処理量を大幅に減量し、排水処理のコスト低減化を図ることができる。またイオン交換樹脂塔の再生処理水である第2の塩化カルシウムを反応槽に添加することにより、第1の塩化カルシウムの投入量を大幅に低減することができる。
【符号の説明】
【0040】
1………反応槽、2………凝集槽、3………沈殿槽、10………反応槽、20………凝集槽、30………沈殿槽、40………カルシウム回収塔、42………再生配管、44………カルシウムイオンモニタ、46………配管、47………閉止弁、48………配管、49………回収弁、50………高度処理手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有排水に第1の塩化カルシウムを添加してフッ化カルシウムを生成させる工程と、
前記フッ化カルシウムを沈殿除去した被処理水中のカルシウムイオンを陽イオンとイオン交換するカルシウム回収工程と、
からなり、
前記イオン交換の再生処理で生成した第2の塩化カルシウムを前記フッ素含有排水に添加することを特徴とするフッ素含有排水の処理方法。
【請求項2】
前記第2の塩化カルシウムは、イオン交換樹脂の薬品再生排液を濃度検出し、前記フッ化カルシウムを生成させるのに必要な反応当量以上のカルシウムを前記薬品再生排液から回収して使用することを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有排水の処理方法。
【請求項3】
前記イオン交換した後、被処理水を膜ろ過処理することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフッ素含有排水の処理方法。
【請求項4】
フッ素含有排水に第1の塩化カルシウムを添加してフッ化カルシウムを生成させる工程と、
前記フッ化カルシウムに凝集剤を添加して凝集させる工程と、
前記フッ化カルシウムを沈殿させて分離除去する工程と、
前記分離除去する工程の被処理水中のカルシウムイオンを陽イオンとイオン交換する工程と、
イオン交換した被処理水を膜ろ過処理する工程と、
前記イオン交換の薬品再生排液から第2の塩化カルシウムを分取する工程と、
からなり、
前記イオン交換の再生処理で生成した前記第2の塩化カルシウムを前記フッ素含有排水に添加することを特徴とするフッ素含有排水の処理方法。
【請求項5】
前記第2の塩化カルシウムは、イオン交換樹脂の薬品再生排液をカルシウムイオンモニタで濃度検出し、少なくとも前記フッ化カルシウムを生成させるのに必要な反応当量以上のカルシウムを前記薬品再生排液から回収して使用することを特徴とする請求項4に記載のフッ素含有排水の処理方法。
【請求項6】
前記第1の塩化カルシウムの添加量は1.1〜1.3当量であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のフッ素含有排水の処理方法。
【請求項7】
前記カルシウム回収工程は、並列に配置された複数のイオン交換樹脂塔でイオン交換処理を交互に行うことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のフッ素含有排水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−130833(P2012−130833A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282977(P2010−282977)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】