説明

フューエルリッド部構造

【課題】燃料キャップの着脱を不要としたキャップレス機構を採用する場合にも、給油作業者の人体に帯電した静電気をアース可能とするフューエルリッド部構造を提供する。
【解決手段】ヒンジ6を介して車体2に支持されるフューエルリッド5と、該フューエルリッド5により開閉可能に覆われる車体凹部4と、該車体凹部4内に配置される給油口3と、該給油口3に設けられて燃料キャップの着脱無しに給油作業を可能とするキャップレス機構15とを備え、前記フューエルリッド5から車体2に至る導電経路を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両のフューエルリッド部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記フューエルリッド部構造において、給油口に取り付ける燃料キャップを導電性材料で形成し、該燃料キャップの開閉操作により給油作業者の人体に帯電した静電気を車体に放電可能とする技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、近年の車両においては、給油作業の簡略化のために、燃料キャップの着脱を不要としたキャップレス機構を採用することもある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特許第3389850号公報
【特許文献2】米国特許第7011121号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記キャップレス機構を採用する場合には、上記燃料キャップを介したアース対策を併用できないという課題がある。
そこでこの発明は、燃料キャップの着脱を不要としたキャップレス機構を採用する場合にも、給油作業者の人体に帯電した静電気をアース可能とするフューエルリッド部構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、ヒンジ(例えば実施例のヒンジ6)を介して車体(例えば実施例の車体2)に支持されるフューエルリッド(例えば実施例のフューエルリッド5)と、該フューエルリッドにより開閉可能に覆われる車体凹部(例えば実施例の車体凹部4)と、該車体凹部内に配置される給油口(例えば実施例の給油口3)と、該給油口に設けられて燃料キャップの着脱無しに給油作業を可能とするキャップレス機構(例えば実施例のキャップレス機構15)とを備えるフューエルリッド部構造であって、前記フューエルリッドから車体に至る導電経路を設けたことを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載した発明は、前記フューエルリッドの少なくとも裏面端部(例えば実施例の裏面端部5a)が導電性樹脂からなることを特徴とする。
【0006】
請求項3に記載した発明は、前記車体凹部を形成するアダプタ(例えば実施例のアダプタ9)が前記車体とは別体に設けられ、該アダプタが導電性樹脂からなることを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載した発明は、前記給油口とアダプタとの間に介在するパッキン(例えば実施例のパッキン23)が導電性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、フューエルリッドのロック解除後にこれに手をかけて手動で開くことで、給油作業者の人体に帯電した静電気が車体に放電されるため、燃料キャップの着脱を不要としたキャップレス機構を採用する場合にも、給油作業者の人体に帯電した静電気を確実にアースすることができる。
【0009】
請求項2に記載した発明によれば、フューエルリッドを成形性等で有利な樹脂製とした上で、給油作業時のアース対策を実現できる。また、鋼板製のフューエルリッドであっても塗装により導電性を得られない場合があるが、そのような場合でも、給油作業者が確実に触れるフューエルリッドの裏面端部を導電性樹脂で構成し、該裏面端部から車体に至る導電経路を確保することで、給油作業時の確実なアースが可能となり、かつリッド開操作時の触感も向上できる。
【0010】
請求項3に記載した発明によれば、アダプタを成形性等で有利な樹脂製とすると共に、該アダプタをフューエルリッドとのアッセンブリとした上で、給油作業時のアース対策を実現できる。
【0011】
請求項4に記載した発明によれば、パッキンを通じて給油口と車体とを同電位にでき、より確実なアース対策を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、車両1の車体2の例えば後部左側には、給油口3を配置した車体凹部4を覆うフューエルリッド5が設けられる。
フューエルリッド5は、その前端側がヒンジ6を介して車体2に支持されるもので、その外面を車体2外面と面一にして前記車体凹部4を閉塞する全閉状態と、車体2外面に対して略垂直に起立して前記車体凹部4を開放する全開状態との間で回動可能とされる。
【0014】
フューエルリッド5は、前記全閉状態となった際には、その後端側が不図示のロック機構に係合することで、前記全閉状態を保つべくロックされる。この状態から所定のロック解除操作がなされると、前記ロックが解除されてフューエルリッド5を前記全開状態とするべく回動可能となる。
【0015】
フューエルリッド5は、前記ロック解除操作がなされた際には、前記全閉状態から所定の付勢力により車体凹部4を僅かに開放させた半開状態となり、この状態から該フューエルリッド5の裏面端部5a(図3,4参照)に手をかけてこれを車外側に引き出すことで、該フューエルリッド5を手動により前記全開状態へ回動可能である。
【0016】
図3,4に示すように、前記車体凹部4は、車体2後部左側の外板部材7に形成された開口8と、該開口8から車内側に入り込むように設けられるアダプタ9とを主になる。
アダプタ9は車体2とは別体に設けられるもので、車外側に開口するカップ状をなし、その開口外周にはフランジ部11が形成される。一方、前記外板部材7の開口8の周縁部には、該周縁部を車内側に変位させてなる段差部12が形成され、該段差部12にフランジ部11を車外側から整合、当接させてこれらをビス等により適宜結合することで、アダプタ9が車体2に一体的に取り付けられる。
【0017】
図1,2を参照し、給油口3は、例えば車体2下部に搭載された燃料タンク13から延びる管状のフィラーネック14の先端部と、該先端部に一体的に取り付けられるキャップレス機構15とを主になる。
フィラーネック14の先端部はアダプタ9の底部9a近傍に位置し、該先端部を延長させるように設けられるキャップレス機構15が前記アダプタ9の底部9aを車内側から車外側に貫通する。このキャップレス機構15の外周が、可撓性を有するパッキン23を介してアダプタ9の底部9aの貫通孔に弾性的かつシール状態に支持される。
【0018】
キャップレス機構15は、フィラーネック14の先端部に嵌合装着される筒状の本体16と、該本体16内にその軸線と直交するヒンジ軸17aを介して回動可能に支持される内蓋17とを主になる。
内蓋17は、所定の付勢力により本体16の先端開口18の周縁部に本体16内側から密接してこれをシール状態に閉塞する。この状態から外部給油装置の給油ノズル19を先端開口18に差し込むと、該給油ノズル19の先端が内蓋17を本体16内側に押し開いて先端開口18を開放させ、給油ノズル19からの給油を可能とする。また、前記給油後に給油ノズル19をキャップレス機構15から引き抜けば、前記付勢力により先端開口18が内蓋17で自動的に閉塞される。
すなわち、フューエルリッド5を手動で開いた後には、別途燃料キャップの着脱の必要を無くし、給油ノズル19の出し入れのみで給油作業を行うことが可能である。
【0019】
ここで、フューエルリッド5は、例えばカーボンパウダーやSUSファイバー等により導電性を付与された樹脂により形成される。
また、図3,4に示すように、フューエルリッド5の前端側には、前記ヒンジ6におけるヒンジ軸(不図示)からフューエルリッド5側へ延びるヒンジアーム21がフューエルリッド5と一体に形成される。すなわち、フューエルリッド5とヒンジアーム21とは、同一の導電性樹脂により一体に形成される。
【0020】
また、前記アダプタ9は、例えばフューエルリッド5と同一の導電性樹脂により形成され、その前端部には、前記ヒンジ6における車体2側の固定部であるヒンジベース22がアダプタ9と一体に形成される。すなわち、ヒンジベース22は、アダプタ9の一部としてこれと同一の導電性樹脂により一体に形成される。
【0021】
ヒンジアーム21とヒンジベース22とは、鋼材からなる前記ヒンジ軸を介して一体に連結され、フューエルリッド5、ヒンジ6及びアダプタ9は、一体のアッセンブリとして取り扱われる。そして、前述の如くアダプタ9を車体2に取り付けることで、フューエルリッド5が車体2に開閉可能に取り付けられる。
【0022】
このとき、フューエルリッド5及びアダプタ9が導電性樹脂からなることで、車両1のフューエルリッド部には、フューエルリッド5から車体2に至る導電経路が形成される。
これにより、フューエルリッド5のロック解除後にこれに手をかけて手動で開くことで、給油作業者の人体に静電気が帯電している場合にも、これをフューエルリッド5、ヒンジ6及びアダプタ9を介して車体2に放電できる。
【0023】
また、前記パッキン23は、例えばカーボンパウダーやSUSファイバー等により導電性を付与されたゴム材料で構成されており、キャップレス機構15を含む給油口3が車体2と同電位とされるため、給油時のアース対策がより確実なものされる。
【0024】
以上説明したように、上記実施例におけるフューエルリッド部構造は、ヒンジ6を介して車体2に支持されるフューエルリッド5と、該フューエルリッド5により開閉可能に覆われる車体凹部4と、該車体凹部4内に配置される給油口3と、該給油口3に設けられて燃料キャップの着脱無しに給油作業を可能とするキャップレス機構15とを備えるものであって、前記フューエルリッド5から車体2に至る導電経路を設けたものである。
【0025】
この構成によれば、フューエルリッド5のロック解除後にこれに手をかけて手動で開くことで、給油作業者の人体に帯電した静電気が車体2に放電されるため、燃料キャップの着脱を不要としたキャップレス機構15を採用する場合にも、給油作業者の人体に帯電した静電気を確実にアースすることができる。
【0026】
また、上記フューエルリッド部構造においては、前記フューエルリッド5が導電性樹脂からなることで、フューエルリッド5を成形性等で有利な樹脂製とした上で、給油作業時のアース対策を実現できる。
【0027】
さらに、上記フューエルリッド部構造においては、前記車体凹部4を形成するアダプタ9が前記車体2とは別体に設けられ、該アダプタ9が導電性樹脂からなることで、アダプタ9を成形性等で有利な樹脂製とすると共に、該アダプタ9をフューエルリッド5とのアッセンブリとした上で、給油作業時のアース対策を実現できる。
【0028】
しかも、上記フューエルリッド部構造においては、前記給油口3とアダプタ9との間に介在するパッキン23が導電性を有することで、パッキン23を通じて給油口3と車体2とを同電位にでき、より確実なアース対策を実現できる。
【0029】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、例えば、フューエルリッドが導電性を有さない場合、又は鋼板製のフューエルリッドであっても塗装により導電性を得られないような場合には、導電性樹脂又は金属からなるヒンジを設け、該ヒンジをフューエルリッドの裏面端部まで延出した構成とすれば、フューエルリッドの開操作時に給油作業者の人体に帯電した静電気をヒンジを介して車体にアースすることができる。この場合、前記ヒンジの延出部分がフューエルリッドの一部となる。
そして、上記実施例における構成はこの発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施例における車両の車体後部の斜視図である。
【図2】上記車両の給油口周辺の断面図である。
【図3】上記車両のフューエルリッド周辺の斜視図である。
【図4】上記フューエルリッド周辺の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 車両
2 車体
3 給油口
4 車体凹部
5 フューエルリッド
5a 裏面端部
6 ヒンジ
9 アダプタ
15 キャップレス機構
23 パッキン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジを介して車体に支持されるフューエルリッドと、該フューエルリッドにより開閉可能に覆われる車体凹部と、該車体凹部内に配置される給油口と、該給油口に設けられて燃料キャップの着脱無しに給油作業を可能とするキャップレス機構とを備えるフューエルリッド部構造であって、
前記フューエルリッドから車体に至る導電経路を設けたことを特徴とするフューエルリッド部構造。
【請求項2】
前記フューエルリッドの少なくとも裏面端部が導電性樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のフューエルリッド部構造。
【請求項3】
前記車体凹部を形成するアダプタが前記車体とは別体に設けられ、該アダプタが導電性樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のフューエルリッド部構造。
【請求項4】
前記給油口とアダプタとの間に介在するパッキンが導電性を有することを特徴とする請求項3に記載のフューエルリッド部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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