説明

フライアッシュの造粒システム

【課題】フライアッシュから、迅速、簡便に、品質が適正で安定した造粒製品を製造することができるフライアッシュの造粒システムを提供する。
【解決手段】フライアッシュを原料とするフライアッシュの造粒システムであって、原料の水分量を測定する赤外線水分計1と、原料の質量を測定する原料計量装置2と、原料への水の添加を行う加水装置3と、原料への固化剤の添加を行う固化剤添加装置4と、原料、加水装置3により添加された水、および、固化剤添加装置4により添加された固化剤を混合して造粒する混合造粒装置5と、赤外線水分計1で測定した原料の水分量、および、原料計量装置2で測定した原料の質量に基づいて、加水装置3により原料に添加する最適加水量、および、固化剤添加装置4により原料に添加する最適固化剤添加量を算出する制御装置6と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライアッシュを原料とする造粒製品を生産するためのフライアッシュの造粒システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
砕石プラントの製砂設備では、製品品質向上のために付着泥分や、不要微細石粒子等を除去すべく破砕品を水で洗浄するようにしている。特にコンクリート用細骨材(砕砂)では、製品中に含まれる粒径75μm以下の微細石粒子の含有量が制限されており、細骨材生産の際には、前記微細石粒子を除去する等のために粒径5mm以下の破砕品の水洗が行われる。この水洗を行う湿式の設備での使用後の洗浄水は、粒径75μm以下の微細な石粒子および/または泥分を質量で5〜10%程度含む泥水であり、「濁水」と呼ばれている。この濁水は、シックナとフィルタプレス等の濃縮・脱水用の機械設備、あるいは沈殿池式設備により、水と分離された泥分が濃縮・脱水されて、水分を含む脱水ケーキ(濁水ケーキ)にされる。このような濁水の処理による脱水ケーキ(砕石汚泥)は、例えばコンクリート用細骨材(砕砂)を生産する場合、質量で砂生産量の約10%程度発生する。
【0003】
また、製砂設備では、粒径5mm以下の破砕品について、前述した粒径75μm以下の微細石粒子を除去するためにエアセパレータ等の乾式分級機で分級する設備もある。このような製砂工程の場合、前記エアセパレータ等による分級によって粒径75μm以下の微細石粒子が砕石副産物として発生する。この微細石粒子は「石粉(乾燥石粉)」と呼ばれており、コンクリート用細骨材(砕砂)を生産する場合、石粉は質量で砂生産量の約10%程度発生する。
【0004】
これら砕石副産物である濁水ケーキや石粉を資源化し、その利用を図る技術として、例えば、特許文献1には、濁水ケーキおよび/または石粉を原料とし、コンクリート用細骨材等として利用しうる水熱処理された固化品と、路盤材や埋戻し材等として利用しうる水熱処理しない安定化処理品とを製造する砕石副産物処理装置および砕石副産物処理方法が開示されている。
【0005】
これら砕石副産物処理装置および砕石副産物処理方法は、原料の含水率(水分量)測定値に基づいて、該原料へのカルシウム化合物の添加量と含水率不足時の水添加量とを適正値に自動的に設定することにより、品質が適正で安定した固化品と安定化処理品とを製造することができるようにしたものである。
【0006】
また、他の原料として、フライアッシュを利用する試みもなされている。フライアッシュは、石炭を燃料とするボイラーから発生する微粉末状の石炭灰で、電力会社等から、膨大な量が発生しており、フライアッシュを造粒固化することによる土木資材等へのリサイクルが期待されている。
【特許文献1】特開2002−220264号公報(段落0016〜0030)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術においては、以下に示す問題があった。
特許文献1の技術では、混合造粒機(混合造粒装置)内に設置されたロードセルで原料の質量を測定してから、その質量および含水率測定結果に基づいてカルシウム化合物の添加量を演算して造粒混合機にカルシウム化合物を添加しているため、1バッチの処理時間(原料投入から次の原料投入までのサイクル時間)が長くかかるという問題があった。
【0008】
また、特許文献1の技術は、対象となる原料が濁水ケーキや石粉といった砕石副産物に限定されており、近年、リサイクルの需要が高まっているフライアッシュを原料として利用することを想定したものではない。
【0009】
さらに、フライアッシュを造粒固化する試みがなされてはいるが、フライアッシュは、造粒水分に非常に敏感な原料であり、造粒に際しては、造粒水分をシビアに管理する必要がある。すなわち、造粒製品は、造粒水分が高い場合には大きな塊状となり、一方、造粒水分が低い場合には微粉末状となり、いずれの場合も土木資材等への利用ができなくなる。そのため、造粒時の水分(造粒水分)を非常に狭い範囲にコントロールしなければならず、この造粒水分の調整が難しいという問題があった。
【0010】
具体的に説明すると、フライアッシュには、積出方法により、「乾灰」と「湿灰」の2種類があり、「乾灰」は、フライアッシュサイロからそのまま積み出しするもので、輸送コストが高いものの、水分は、絶乾に近く安定している。
【0011】
一方、「湿灰」は、飛散防止のため、フライアッシュサイロから加湿しながら積み出しするものであり、ダンプ車で運搬が可能で、輸送コストが削減できるメリットがある。しかし、積み出す際の加湿の調整は、オペレータが手動で行っているケースが多く、また、運搬・保管時の水分蒸発等により、水分は大きくばらつく傾向にある。よって、「湿灰」を原料とした場合、水分のばらつきが大きいため、オペレータが頻繁に水の添加量を調整する必要があり、また、品質が適正で安定した造粒製品が得られにくい。
【0012】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、フライアッシュから、迅速、簡便に、品質が適正で安定した造粒製品を製造することができるフライアッシュの造粒システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係るフライアッシュの造粒システムは、フライアッシュを原料とするフライアッシュの造粒システムであって、赤外線水分計と、原料計量装置と、加水装置と、固化剤添加装置と、混合造粒装置と、制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
このように構成すれば、赤外線水分計により、原料の水分量が測定され、原料計量装置により、1バッチ分の原料の質量が測定される。また、加水装置により、原料へ添加する水が測定されて原料へ添加され、固化剤添加装置により、原料へ添加する固化剤が測定されて原料へ添加される。さらに、混合造粒装置により、原料、加水装置により添加された水、および、固化剤添加装置により添加された固化剤が混合されて造粒される。そして、制御装置により、赤外線水分計で測定した原料の水分量、および、原料計量装置で測定した原料の質量に基づいて、加水装置により原料に添加する最適加水量、および、固化剤添加装置により原料に添加する最適固化剤添加量が算出される。
【0015】
請求項2に係るフライアッシュの造粒システムは、前記原料を搬送するためのベルトコンベヤを、前記原料計量装置の直前に備え、前記赤外線水分計により、前記ベルトコンベヤ上で前記原料の水分量の測定を行うことを特徴とする。
このように構成すれば、ベルトコンベヤ上に原料が載置されて搬送され、原料が原料計量装置に投入されながら、当該ベルトコンベヤ上で、赤外線水分計により、原料の水分量が測定される。
【0016】
請求項3に係るフライアッシュの造粒システムは、前記ベルトコンベヤの搬送路中で、かつ、前記赤外線水分計の手前に、前記原料を通過させることで前記原料の層厚を一定に調整する層厚調整部を有することを特徴とする。
このように構成すれば、ベルトコンベヤが層厚調整部を有することで、ベルトコンベヤ上の原料の層厚が一定となり、赤外線水分計と原料との距離が一定となる。
【0017】
請求項4に係るフライアッシュの造粒システムは、前記ベルトコンベヤの搬送路中で、かつ、前記赤外線水分計の手前に、前記ベルトコンベヤ上の原料の荷切れを検出する荷切れ検出器を有し、前記制御装置が、前記荷切れ検出器により検出した荷切れの部位における原料の水分量の値を除いて平均水分量を算出することを特徴とする。
【0018】
このように構成すれば、制御装置での平均水分量の算出に用いるデータから、赤外線水分計により測定された、荷切れの部位の原料の水分量の値を除くことができるため、制御装置で算出される平均水分量がより正確となる。
【0019】
請求項5に係るフライアッシュの造粒システムにおいては、前記制御装置は、前記赤外線水分計の測定した原料の水分量の値が、予め設定した基準値範囲と比較してその範囲から外れた場合には、当該基準値範囲を外れた値を除いて平均水分量を算出することを特徴とする。
【0020】
このように構成すれば、制御装置での平均水分量の算出に用いるデータから、赤外線水分計の測定エラーによる異常値(予め設定した基準値範囲と比較してその範囲から外れた値、すなわち、基準値範囲と比較して大きい値または小さい値)を除くことができるため、制御装置で算出される平均水分量がより正確となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に係るフライアッシュの造粒システムによれば、原料としてフライアッシュ、特に、水分のばらつきの大きい湿灰を用いることができ、製造コストの削減を図ると共に、フライアッシュの土木資材等へのリサイクルが可能となる。また、水分調整や固化剤添加量の調整を自動制御することができるため、迅速、簡便に造粒製品を製造することができ、品質が適正で安定した造粒製品を得ることができる。さらに、原料計量装置、加水装置および固化剤添加装置において、それぞれの専用の計量器(計量槽)で、原料、水および固化剤を計量(測定)することができるため、測定の精度が向上する。
【0022】
本発明の請求項2に係るフライアッシュの造粒システムによれば、原料の搬送や水分測定を迅速かつ簡便に行うことができる。本発明の請求項3に係るフライアッシュの造粒システムによれば、赤外線水分計とベルトコンベヤ上の原料の距離を一定に保つことができるため、測定する水分量の誤差を減らすことができる。
【0023】
本発明の請求項4に係るフライアッシュの造粒システムによれば、赤外線水分計により測定された、荷切れの部位の原料の水分量の値を除くことができるため、より正確な平均水分量を算出することができる。本発明の請求項5に係るフライアッシュの造粒システムによれば、赤外線水分計の測定エラーによる異常値(予め設定した基準値範囲と比較して大きな、または小さな原料の水分量の値)を除くことができるため、より正確な平均水分量を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係るフライアッシュの造粒システムについて、詳細に説明する。
参照する図面において、図1は、フライアッシュの造粒システムの構成を示す模式図、図2は、制御装置による制御について説明するフローチャートである。
【0025】
≪フライアッシュの造粒システム≫
図1に示すように、フライアッシュの造粒システム(以下、適宜、造粒システムともいう)10は、フライアッシュを原料とするものであり、赤外線水分計1と、原料計量装置2と、加水装置3と、固化剤添加装置4と、混合造粒装置5と、制御装置6と、を主に備える。また、フライアッシュの原料計量装置2までの搬送のため、原料搬送用のベルトコンベヤ7を備える。
以下、各構成について説明する。
【0026】
<ベルトコンベヤ>
原料は、原料受入れホッパ8に収納され、必要量が後記する原料計量装置2に投入される。
ここで、原料受入れホッパ8から原料計量装置2までの原料の搬送は、原料計量装置2の直前、かつ、上方に設けられたベルトコンベヤ7を用いるのが好ましい。原料搬送用のベルトコンベヤ7を用いることで、原料の搬送を迅速かつ簡便に行うことができる。また、ベルトコンベヤ7上に原料を載置することで、後記する原料の水分測定を迅速かつ簡便に行うことができる。
なお、ベルトコンベヤ7の代わりに、上部を開口したスクリューコンベヤ等を用いることもできる。
【0027】
ここで、ベルトコンベヤ7は、このベルトコンベヤ7の搬送路中で、かつ、後記する赤外線水分計1の手前に、原料を通過させることで原料の層厚(原料の厚み)を一定に調整する層厚調整部7aを有することが好ましい。
【0028】
この層厚調整部7aは、原料の層厚を調整できるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示すように、ベルトコンベヤ7の原料の載置面に平行で、その下側を原料が通過する棒状に形成された層厚の調整部7bと、この調整部7bの両端に支持された脚部7c、7cを備えている。この層厚調整部7aは、ベルトコンベヤ7の横方向の両端側を脚部7c、7cがまたぐように、ベルトコンベヤ7に設置することができる。そして、ベルトコンベヤ7の原料を載置する載置面と、層厚調整部7aの層厚を調整する調整部7bが、ベルトコンベヤ7上に載置された原料の層厚が一定に調整されながら通過できるように、一定の間隔ができるようにベルトコンベヤ7の搬送路中に設置する。この層厚の調整部7bと載置面との間隔は、所望する原料の層厚により適宜調整すればよく、また、層厚調整部7aの赤外線水分計1からの距離も、必要に応じて、適宜調整すればよい。なお、調整部7bと載置面との間隔は、調整部7bを脚部7c、7cに対して所定角度に傾斜させるか、あるいは、脚部7c、7cの長さを調節できるようにすることでも設定することが可能である。
【0029】
このように層厚調整部7aにより、ベルトコンベヤ7上の層厚を一定にすることができ、これにより、赤外線水分計1とベルトコンベヤ7上の原料の距離を一定に保つことができる。そのため、測定した水分量の誤差を減らすことができる。
【0030】
なお、ベルトコンベヤ7上の原料の幅は、赤外線水分計1の検出領域(約50mm程度)以上であれば特に問題なく、このような検出領域以上の幅になるように、例えば、調整部7bの幅を調節できるようにすることで、層厚を調整するようにしてもよい。
【0031】
<赤外線水分計>
赤外線水分計1は、原料の水分量を測定する原料用水分計である。
赤外線水分計1は、近赤外領域で、水分に対して高い吸収特性を示す波長の測定光を測定対象物に照射し、該測定対象物からの反射光量を、予め求めてある検量線に基づいて水分値に換算することにより、非接触にて即刻(リアルタイム)に計測定対象物の水分量(含水率)を測定するものである。赤外線水分計1で測定された水分量は、後記するように、アナログ信号として制御装置6に入力される。
【0032】
赤外線水分計1は、原料の搬送にベルトコンベヤ7を用いる場合には、ベルトコンベヤ7の上方に、当該ベルトコンベヤ7に近接して配設する。このようにすることで、原料の水分量の測定(水分測定)をベルトコンベヤ7上で行うことができる。そのため、原料を原料計量装置2に投入しながら、原料の水分測定を行うことができ、水分測定を迅速かつ簡便に行うことができる。
【0033】
ここで、このベルトコンベヤ7の搬送路中で、かつ、赤外線水分計1の手前に、ベルトコンベヤ7上の原料の荷切れを検出する荷切れ検出器9を有することが好ましい。
ベルトコンベヤ7上の原料の水分の測定中に、荷切れ(ベルトコンベヤ7上に原料がない状態)が生ずると、赤外線水分計1により測定したこの部位での原料の水分量の値が不適切なものとなる。そこで、後記するように、荷切れ検出器9を設ける場合には、制御装置6が、荷切れ検出器9により検出した荷切れの部位における原料の水分量の値を除いて平均水分量を算出するようにする。
【0034】
荷切れ検出器9は、ベルトコンベヤ7の上方に、当該ベルトコンベヤ7に近接して、原料に非接触なように配設するか(図1参照)、あるいは、ベルトコンベヤ7上の原料に接触するように配設する。
非接触にて荷切れを検出するものとしては、例えば、特定の波長の測定光を測定対象物に照射し、該測定対象物からの反射光量を、検出することにより、荷切れを検出するもの等が挙げられる。原料に接触することで荷切れを検出するものとしては、例えば、検出レバーが測定対象物に接触している間は、検出回路により測定対象物の存在を検出し、検出レバーが測定対象物に接触しなくなった場合に、検出回路により荷切れを検出するもの等が挙げられる。
【0035】
しかしながら、荷切れ検出器9としては、特に限定されるものではなく、原料の荷切れを検出できるものであれば、どのようなものであってもよい。
なお、ベルトコンベヤ7が層厚調整部7aを有する場合には、荷切れ検出器9は、層厚調整部7aの手前に配置することが好ましい。また、荷切れ検出器9と層厚調整部7aは、赤外線水分計1の手前に近接して配置することが好ましい。
【0036】
ここで、水分値は、制御装置6により設定調整可能な演算周期毎に測定された値を用いる。
当該機能を有することにより、原料の水分のばらつきが大きい場合には、演算周期を短くすることで、多くのデータから平均値を算出することができる。
【0037】
<原料計量装置>
原料計量装置2は、混合造粒装置5の上方に設けられており、赤外線水分計1により水分測定されてベルトコンベヤ7等により運ばれてきた原料を収容し、後記する混合造粒装置5に投入される1バッチ分の質量を測定(計量)するものである。この原料計量装置2は、ベルトコンベヤ7の他端側にホッパの開口を配設して設けられている。
【0038】
後記するように、投入された原料は、原料計量装置2内に備えられたロードセル(図示省略)により、計量槽(図示省略)に蓄えられた原料の質量が測定され、この測定された質量がアナログ信号として制御装置6に入力される。そして、制御装置6において、この原料の質量および前記赤外線水分計1で測定された水分量を基に、原料に添加する最適加水量および最適固化剤添加量が求められる。
【0039】
そして、原料計量装置2内の原料は、質量を測定された後、計量槽の底部に設置された排出ゲート(図示省略)から混合造粒装置5へ投入される。なお、混合造粒装置5による混合、造粒が終わり次第、すぐに次の1バッチ分の混合、造粒が開始できるように、混合造粒装置5により、混合、造粒が行なわれている間に、予め、次に混合、造粒する1バッチ分の質量を測定しておいてもよい。
【0040】
<加水装置>
加水装置3は、混合造粒装置5の上方に設けられており、加水装置3内の計量槽(図示省略)の底部に設置されたバタフライバルブ(図示省略)から、混合造粒装置5内の原料への水の添加を行うものである。
後記するように、前記赤外線水分計1により測定された原料の水分量および前記原料計量装置2により測定された原料の質量を基に、制御装置6で予め設定された質量基準により算出された1バッチ分の最適加水量が、加水装置3から混合造粒装置5に注入される。
【0041】
すなわち、加水装置3は、加水装置3内に備えられたロードセル(図示省略)により、計量槽に蓄えられた水を測定(計量)することで、混合造粒装置5内に収容された原料に1バッチ分の水を添加するようになっている。なお、混合造粒装置5による混合、造粒が終わり次第、すぐに次の1バッチ分の混合、造粒が開始できるように、混合造粒装置5により、混合、造粒が行なわれている間に、予め、次に混合、造粒する1バッチ分の加水量を測定しておいてもよい。
【0042】
ここで、原料への水の添加は、原料性状により調整する必要があるが、混合造粒装置5における混合物の水分量(造粒水分量)が、例えば、30±1%の範囲内となるようにするのが好ましい。この例では、水分量が31%を超えると、造粒製品の性状が大きな塊状で軟弱となり、さらに、安定化処理品集積場での保管時に、お互いがくっついて、さらに大きな塊になる。一方、29%未満であると、微粉末状となり、いずれも土木資材として必要な性状を得られなくなるためである。
【0043】
<固化剤添加装置>
固化剤添加装置4は、混合造粒装置5の上方に設けられており、固化剤添加装置4内の計量槽(図示省略)の底部に設置された排出ゲート(図示省略)から、混合造粒装置5内の原料への固化剤の添加を行うものである。
後記するように、前記赤外線水分計1により測定された原料の水分量および前記原料計量装置2により測定された原料の質量を基に、制御装置6で予め設定された質量基準により算出された1バッチ分の最適固化剤添加量が固化剤添加装置4から混合造粒装置5に投入される。
【0044】
すなわち、固化剤添加装置4は、固化剤添加装置4に備えられたロードセル(図示省略)により、計量槽に蓄えられた固化剤を測定(計量)することで、混合造粒装置5内に収容された原料に1バッチ分の固化剤を添加するようになっている。なお、混合造粒装置5による混合、造粒が終わり次第、すぐに次の1バッチ分の混合、造粒が開始できるように、混合造粒装置5により、混合、造粒が行なわれている間に、予め、次に混合、造粒する1バッチ分の質量を測定しておいてもよい。
【0045】
一般的に、フライアッシュには有害重金属が含まれており、造粒製品からこれらの重金属の溶出を防止するためには、固化剤を正確に添加する必要がある。
従来の湿灰の場合、原料水分が正確に把握できなかったため、固化剤の過小添加を心配して、多めに固化剤を添加する傾向にあった。
本発明により、原料水分が変動しても、常に固化剤の最適添加が可能となり、過大添加による固化剤コストの増加および過小添加による重金属の溶出量の増加を防止することができる。
【0046】
なお、固化剤の役割としては、バインダー(粘結剤)として造粒を促進させる、造粒製品の強度を向上させる、造粒製品からの有害重金属の溶出を抑制すること等がある。
また、固化剤の種類としては、セメント、石灰、石膏等が挙げられる。
【0047】
<混合造粒装置>
混合造粒装置5は、ベルトコンベヤ7等によって搬送されてきた原料、加水装置3により添加された水および固化剤添加装置4により添加された固化剤を混合して混合物を造粒するものである。この混合造粒装置5は、円筒状の容器の内部に回転するブレードを備えており、このブレードの回転動作を停止することなく混合に引き続いて造粒を行い、例えば粒径5〜10mm程度の範囲の造粒製品をつくるものである。
【0048】
混合と造粒を行う混合造粒装置5としては、これらの複合機能を備えた高速流動混合装置を用いることが好ましい。高速流動混合装置は、混合時にはそのブレード(回転羽根)を、例えば回転数1250〜3000rpm程度の範囲で回転させ、造粒時にはブレードを、例えば回転数500〜800rpm程度の範囲というように混合時よりも低速にて回転させるように運転される。この高速流動混合装置には、固定された容器(原料が収容されるもの)内において上下方向に延びる垂直回転軸を持つブレードが回転するようにした構造の容器固定型のものと、垂直回転軸を持つブレードが容器中心から偏心した位置に配され、水平回転する容器の中で容器回転方向とは反対の方向に該ブレードが回転するようにした構造の逆流式(容器回転型)のものとがある。混合造粒装置5としては、逆流式高速流動混合装置が特に好ましい。
【0049】
混合造粒装置5において造粒された造粒製品は、図示しないが、造粒製品搬送用ベルトコンベヤにより搬送され、路盤材や埋戻し材等として利用しうる安定化処理品として、安定化処理品集積場に搬送されるようになっている。
【0050】
<制御装置>
制御装置6は、赤外線水分計1で測定した原料の水分量、および、前記原料計量装置2で測定した原料の質量を基に、加水装置3により原料に添加する最適加水量、および、固化剤添加装置4により原料に添加する最適固化剤添加量を算出するものである。
【0051】
原料の水分量に基づいて、当該原料への水および固化剤の添加量を自動設定する制御装置6は、入力として、赤外線水分計1によって測定された原料の水分量を表すアナログデータ(アナログ信号)と、原料計量装置2で測定された原料の質量を表すアナログデータ(アナログ信号)とが入力され、出力として、加水装置3には最適加水量設定値を、固化剤添加装置4には最適固化剤添加量設定値を指令するようになっている。
【0052】
次に、図1、2を参照しながら、このように構成される造粒システムにおいて、制御装置による制御の一例について説明する。
【0053】
制御装置6には、混合造粒装置5内の混合物の水分量(造粒水分量)が30±1%の範囲内になるように、造粒水分量設定データWDと、固化剤添加量を定めた固化剤添加量設定データRDが予め入力されている(S1)。ここで、前記固化剤添加量は、原料の乾燥質量に対する割合(添加割合(%))として示されている。そして、ベルトコンベヤ7による原料の搬送時に、赤外線水分計1によって測定された原料の水分量を表すアナログ信号が制御装置6に入力される(S2a)。制御装置6は、このアナログ信号を所定サンプリング間隔ごとデジタル信号に変換して所定数のサンプリングデータを得、これらサンプリングデータの平均値をシーケンサで自動算出し、原料の平均水分測定値m(%)として求める(S3)。
【0054】
なお、原料の水分量が多く、水を添加しなくても混合物の水分量が所定範囲を超える場合は、シーケンサからの警報発令により、警報器による警報が鳴るようになっている。そして、このような場合、造粒システム10の稼動を、自動で停止させることができる。そして、その原料は、原料計量装置2から、排出コンベヤ(図示省略)により、系外に排出する。
【0055】
ここで、制御装置6は、荷切れ検出器9を設ける場合には、荷切れ検出器9により検出した荷切れの部位における原料の水分量の値を除いて平均水分量を算出する。
前記したように、ベルトコンベヤ7上の原料の水分の測定中に、荷切れが生ずると、赤外線水分計1により測定したこの部位での原料の水分量の値が不適切なものとなる。そこで、このような荷切れが検出された場合には、制御装置6の制御により、平均水分量の算出に用いるデータから、赤外線水分計1により測定された、荷切れの部位の原料の水分量の値を除くようにする。
なお、このような制御は、赤外線水分計1による水分測定の周期に基づいて、測定された水分量の値が、荷切れ状態の値であるかどうかを判別できるように設定することで行なうことができる。
【0056】
また、制御装置6は、赤外線水分計1の測定した原料の水分量の値が、予め設定した基準値範囲と比較してその範囲から外れた場合には、当該基準値範囲を外れた値を除いて平均水分量(平均水分測定値)m(%)を算出するようにしてもよい。
【0057】
赤外線水分計1における水分量の測定においては、まれに、例えば、赤外線水分計1から原料の表層までの距離の変動、原料の層厚の凹凸、外部光(太陽光、証明光)、水蒸気、粉塵、原料の粒度のばらつき等の外乱等により測定エラーが発生し、制御装置6において、異常値(過大値あるいは過小値)が検出されることがある。そのため、制御装置6において、基準値範囲を予め設定しておき、この基準値範囲を外れた値、すなわち、この基準値範囲と比較して大きな値または小さな値を異常値としてシーケンサにより検出するように設定しておいてもよい。そして、シーケンサがこの水分測定値の異常値を検出したときに、当該異常値(基準値範囲より大きな値または小さな値)を除いて平均水分量(平均水分測定値)m(%)を算出するようにしてもよい。
【0058】
このようにすることで、制御装置6での平均水分量の算出に用いる水分測定値のデータから、赤外線水分計1の測定エラーによる異常値を除くことができるため、より正確な平均水分測定値m(%)を算出することができる。
なお、この予め設定する異常値は、予め求めてある検量線に基づいて、明らかに測定エラーである値を任意に選択すればよい。例えば、下限カットオフ15%、上限カットオフ40%として、15〜40%の水分測定値のみを基準値範囲として演算に使用するようにしてもよい。
【0059】
また、原料計量装置2への原料の投入が終了すると、ロードセルによって測定された原料の質量を表すアナログ信号が制御装置6に入力される(S2b)。制御装置6は、このアナログ信号をデジタル信号に変換して、原料計量装置2内に今回収容されている原料質量値G(kg)として求める(S3)。
【0060】
ついで、原料計量装置2内に今回投入された原料への最適固化剤添加量設定値R1(kg)を、R1(kg)=(原料質量値G(kg))×(1−平均水分測定値m(%))×固化剤添加割合(%)の式から求める(S4a)。例えば、原料質量1000kg、平均水分測定値30%、固化剤添加割合5%であれば、最適固化剤添加量設定値は、「1000kg×(1−0.3)×0.05=35kg」となる。
そして、制御装置6は、この最適固化剤添加量設定値R1(kg)を添加するように、固化剤添加装置4に指令を与え(S5a)、これにより固化剤添加装置4は、混合造粒装置5に投入された原料に固化剤を添加する。
【0061】
同様に、制御装置6は、原料計量装置2内に今回投入された原料への最適加水量設定値R2(kg)を、R2(kg)=造粒水分量WD(%)×((原料質量値G(kg)+最適固化剤添加量設定値R1(kg))−原料水分(kg))÷(1−造粒水分量WD(%))の式から求める(S4b)。なお、原料水分(kg)=原料質量値G(kg)×平均水分測定値m(%)である。例えば、原料質量1000kg、平均水分測定値30%、固化剤質量合計35kg、造粒水分量32%であれば、最適加水量設定値は、「(0.32×(1000kg+35kg)−300kg)÷(1−0.32)≒45.9kg」となる。
そして、制御装置6は、この最適加水量設定値R2を添加するように、加水装置3に指令を与え(S5b)、これにより加水装置3は、混合造粒装置5に投入された原料に水を添加する。
【0062】
その後、混合造粒装置5により、原料と、水と、固化剤と、が混合されて所望の造粒水分量および固化剤添加割合を有する混合物が得られ、ブレードの回転動作を停止することなく引き続いて造粒が行われて造粒製品が製造される。
【0063】
ここで、混合造粒装置5により、1バッチ分の原料等が混合、造粒を行っている間に、次に混合、造粒する1バッチ分の原料の質量、加水装置3により原料に添加する1バッチ分の最適加水量、および、固化剤添加装置4により原料に添加する1バッチ分の最適固化剤添加量の全てを予め測定しておいてもよい。
【0064】
このようにすることで、混合造粒装置5での処理中に、次の1バッチ分の原料、加水量および固化剤添加量の全ての測定(計量)を完了させることができる。そのため、混合造粒装置5での造粒が終わり次第、すぐに次の混合、造粒を開始することができるため、バッチ処理時間の短縮が可能となる。
【0065】
なお、適宜必要に応じて制御装置6において、原料の水分量の測定条件の設定や、原料の種類による原料性状等に合わせ、赤外線水分計1の検量線の選択をすることや、製造される造粒製品の所望の強度や品質に合わせ、加水装置3により添加する水の割合の設定および固化剤添加装置4により添加する固化剤の割合の設定をすることが可能である。このような選択、設定は、手動で行なう他、シーケンサによる算出結果に基づいて、制御装置6におけるコントローラにより、自動設定で行なうことができる。そして、液晶モニタによる表示により、このような条件設定等や、造粒システムの作動状況の確認を行うことができる。
【0066】
このように、原料の水分量の測定条件の設定や原料の種類による原料性状等に合わせ、迅速、簡便に検量線を選択することができ、また、造粒製品における所望の強度や品質に合わせ、原料への加水量および固化剤添加量の条件を迅速、簡便に設定することができる。
【0067】
このように、非接触で即刻測定可能な赤外線水分計1により測定した原料の水分量および原料計量装置2により測定した原料の質量に基づいて、当該原料への水添加量と固化剤添加量とを適正値に自動的に設定することができるため、供給される原料の水分量のばらつきが大きい湿灰においても、乾灰と同様に、品質が適正で安定した造粒製品を製造することができる。また、これまでは、輸送コストは高いものの水分の安定している乾灰を原料とするケースが多かったが、原料として湿灰を用いることが可能となり、輸送コストの削減を図ることができる。さらに、従来においては、オペレータが造粒製品の出来を見ながら水の添加量の調整をすることが行なわれていたが、自動制御で水分調整を行なうことでこの作業が不要となり、オペレータの労力を軽減することができる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく本発明の範囲を逸脱しない範囲で変更することができる。
【0069】
例えば、原料の水分量を測定する水分計として、赤外線水分計1を用いたが、ベルトコンベヤ7上を流れてくる水分をオンラインで測定でき、短い周期(例えば、1sec程度)で水分測定が可能であるものなら、他の測定方式の水分計を用いてもよい。
【0070】
また、本発明は、原料としてフライアッシュを用いるものであるが、良好な造粒製品を安定して生産するために、原料水分の把握が必須である焼却灰(ペーパースラッジ灰、都市ごみ焼却灰等)、建設残土、建設汚泥等においても適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】フライアッシュの造粒システムの構成を示す模式図である。
【図2】制御装置による制御について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1 赤外線水分計
2 原料計量装置
3 加水装置
4 固化剤添加装置
5 混合造粒装置
6 制御装置
7 ベルトコンベヤ
7a 層厚調整部
7b 調整部
7c 脚部
8 原料受入れホッパ
9 荷切れ検出器
10 フライアッシュの造粒システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライアッシュを原料とするフライアッシュの造粒システムであって、
前記原料の水分量を測定する赤外線水分計と、
前記原料の質量を測定する原料計量装置と、
前記原料への水の添加を行う加水装置と、
前記原料への固化剤の添加を行う固化剤添加装置と、
前記原料、前記加水装置により添加された水、および、前記固化剤添加装置により添加された固化剤を混合して造粒する混合造粒装置と、
前記赤外線水分計で測定した原料の水分量、および、前記原料計量装置で測定した原料の質量に基づいて、前記加水装置により前記原料に添加する最適加水量、および、前記固化剤添加装置により前記原料に添加する最適固化剤添加量を算出する制御装置と、
を備えたことを特徴とするフライアッシュの造粒システム。
【請求項2】
前記原料を搬送するためのベルトコンベヤを、前記原料計量装置の直前に備え、
前記赤外線水分計により、前記ベルトコンベヤ上で前記原料の水分量の測定を行うことを特徴とする請求項1に記載のフライアッシュの造粒システム。
【請求項3】
前記ベルトコンベヤの搬送路中で、かつ、前記赤外線水分計の手前に、前記原料を通過させることで前記原料の層厚を一定に調整する層厚調整部を有することを特徴とする請求項2に記載のフライアッシュの造粒システム。
【請求項4】
前記ベルトコンベヤの搬送路中で、かつ、前記赤外線水分計の手前に、前記ベルトコンベヤ上の原料の荷切れを検出する荷切れ検出器を有し、
前記制御装置が、前記荷切れ検出器により検出した荷切れの部位における原料の水分量の値を除いて平均水分量を算出することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のフライアッシュの造粒システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記赤外線水分計の測定した原料の水分量の値が、予め設定した基準値範囲と比較してその範囲から外れた場合には、当該基準値範囲を外れた値を除いて平均水分量を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のフライアッシュの造粒システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−289965(P2008−289965A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135959(P2007−135959)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(503245465)株式会社アーステクニカ (54)
【Fターム(参考)】