説明

フライホイールハウジング及びその製作方法

【課題】従来よりも型投資を抑制し得るフライホイールハウジング及びその製作方法を提供する。
【解決手段】個別に分割構成されたタイミングギヤケース12とフライホイールハウジング本体13とを備え、前記タイミングギヤケース12をコアモジュールとして複数種類のフライホイールハウジング本体13を着脱し得るようにしてフライホイールハウジング11を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイールハウジング及びその製作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4はトラック等の商用車に搭載されるエンジンの一例を模式的に示したもので、このエンジン1のシリンダブロック2の後面側には、エンジン1のクランクシャフト3後端に装備されるフライホイール4を被包し得るようフライホイールハウジング5が取り付けられているが、ここに図示している例のように、前記エンジン1のシリンダブロック2の後面にタイミングギヤ6(図4中には説明の便宜上から一つだけ図示しているが実際には複数のギヤによりギヤトレーンが構成されている)が配設されている場合には、前記フライホイールハウジング5の前面側に、前記タイミングギヤ6を収容する空間を画成し得るようタイミングギヤケース7が一体的に形成されている。
【0003】
即ち、エンジン1に装備される燃料ポンプ等の補機部品や動弁系には、クランクシャフト3のトルクが伝達されて駆動されるようになっているが、耐久性が重視される商用車においては、タイミングベルトに替えてタイミングギヤ6によるトルク伝達が行われるようになっている。
【0004】
尚、この種のタイミングギヤ6は、シリンダブロック2の前面に装備された例も存在するが、シリンダブロック2の後面にタイミングギヤ6が配設されている場合において、前述の如きタイミングギヤケース7の前面側にタイミングギヤケース7を一体形成する措置が採られており、このようにタイミングギヤケース7を一体的に備えたフライホイールハウジング5では、クランクシャフト3の貫通部にオイルシールを施してタイミングギヤケース7側のみを潤滑環境としている。
【0005】
前記フライホイールハウジング5の具体的な構成は図5に示す通りであり、シリンダブロック2後面のタイミングギヤ6を被包するタイミングギヤケース7と、フライホイール4を被包するフライホイールハウジング本体8とが鋳造により一体形成されて単一部品のフライホイールハウジング5を成すようになっている。
【0006】
尚、この種のフライホイールハウジング5に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−254413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来におけるフライホイールハウジング5の設計思想では、部品の多機能化を図ることで低コスト化を実現するとの設計思想に立脚して、タイミングギヤケース7とフライホイールハウジング本体8との鋳造による一体形成が行われてきたが、エンジン1後方にクラッチ9と共に組み付けられるトランスミッション10側の仕様(例えば、クラッチサイズ、マニュアル用とオートマチック用、トラック用とバス用、国内用と海外用等の違いによる規格差)に合わせて、トランスミッション10側とは無関係なタイミングギヤケース7まで含めた全体構造を新設しなければならず、高額な鋳造型が多く必要となって型投資が高騰してしまっていた。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、従来よりも型投資を抑制し得るフライホイールハウジング及びその製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、個別に分割構成されたタイミングギヤケースとフライホイールハウジング本体とを備え、前記タイミングギヤケースをコアモジュールとして複数種類のフライホイールハウジング本体を着脱し得るように構成したことを特徴とするフライホイールハウジング、に係るものである。
【0011】
更に、本発明は、フライホイールハウジングをタイミングギヤケースとフライホイールハウジング本体とに分割構成し、その分割構成したタイミングギヤケースをコアモジュールとし、複数種類のフライホイールハウジング本体のうちからトランスミッション側の仕様に合うフライホイールハウジング本体を選定し、その選定したフライホイールハウジング本体を前記タイミングギヤケースに組み付けてフライホイールハウジングとすることを特徴とするフライホイールハウジングの製作方法、に係るものでもある。
【0012】
而して、このようなフライホイールハウジング及びその製作方法を採用すれば、トランスミッション側の仕様に関わらず同じタイミングギヤケースをコアモジュールとして共通使用することが可能となり、トランスミッション側の仕様に合わせてフライホイールハウジング本体側だけを種類分けすれば済むため、タイミングギヤケースを除いたフライホイールハウジング本体だけの鋳造型を新たに起こすだけで済んでタイミングギヤケースの型投資分が削減され、フライホイールハウジングにかかる型投資が大幅に抑制されることになる。
【0013】
また、これまではトランスミッション側の仕様を確認してから一体鋳造品のフライホイールハウジングを組み付けて複数種類のエンジンとして管理していたため、エンジンの管理工数が多くなり、市場へエンジンを供給するのにも時間を要していたが、トランスミッション側の仕様が未だ決まらない段階からタイミングギヤケースを組み付けた状態まで完成させて一種類のエンジンとして管理しておけるので、エンジンの管理工数が著しく削減され、市場へのエンジンの供給時間も大幅に短縮されることになる。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明のフライホイールハウジング及びその製作方法によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0015】
(I)トランスミッション側の仕様に関わらず同じタイミングギヤケースをコアモジュールとして共通使用することができるので、トランスミッション側の仕様に応じフライホイールハウジング本体側の鋳造型だけを新たに起こして対応することができ、これによりタイミングギヤケースの型投資分を削減できて、フライホイールハウジングにかかる型投資を大幅に抑制することができ、トランスミッション側の様々な仕様に合わせてフライホイールハウジングを製作するのに必要なトータルコストを大幅に削減することができる。
【0016】
(II)トランスミッション側の仕様が未だ決まらない段階からタイミングギヤケースを組み付けた状態まで完成させて一種類のエンジンとして管理しておくことができるので、これまでのようにトランスミッション側の仕様を確認してから一体鋳造品のフライホイールハウジングを組み付けて複数種類のエンジンとして管理している状況と比較して、エンジンの管理工数を著しく削減することができ、しかも、市場へのエンジンの供給時間も大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のフライホイールハウジング本体の別の例を示す斜視図である。
【図3】図1のフライホイールハウジング本体の更に別の例を示す斜視図である。
【図4】トラック等の商用車に搭載されるエンジンの一例を示す概略図である。
【図5】従来のフライホイールハウジングの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、説明に使われている用語のうちで図1中に符号のないものについては先の図4を参照することとする。
【0020】
図1に示す通り、本形態例においては、フライホイールハウジング11をタイミングギヤケース12とフライホイールハウジング本体13とに分割構成し、夫々を個別に鋳造部品として製造するようにしており、前記タイミングギヤケース12をコアモジュールとして複数種類のフライホイールハウジング本体13を着脱し得るように構成してある。
【0021】
例えば、図2に示すように、同じタイミングギヤケース12に対し異なる外径寸法のクラッチ9(図4参照)に対応させたフライホイールハウジング本体13を着脱し得るようになっており、更には、図3に示すように、同じタイミングギヤケース12に対しハイブリット自動車用の電動モータのケーシングを兼ねたフライホイールハウジング本体13も着脱し得るようになっている。
【0022】
要するに、これら三種類のフライホイールハウジング本体13は、その主要部のサイズや形状こそ違っていても、タイミングギヤケース12に対する前端側の締結位置が揃えてあり、該タイミングギヤケース12の同じ位置に同じ形式で締結できるようになっている。
【0023】
尚、ここでは、異なる外径寸法のクラッチ9(図4参照)に対応させたフライホイールハウジング本体13と、ハイブリット自動車用の電動モータのケーシングを兼ねたフライホイールハウジング本体13とを例示しているが、これらに限定されることなく様々な規格違いのフライホイールハウジング本体13を着脱し得るように構成して良いことは勿論である。
【0024】
そして、このような構造を採用したフライホイールハウジング11を実際に製作するにあたっては、タイミングギヤケース12をコアモジュールとし、複数種類のフライホイールハウジング本体13のうちからトランスミッション10(図4参照)側の仕様に合うフライホイールハウジング本体13を選定し、その選定したフライホイールハウジング本体13を前記タイミングギヤケース12に組み付けてフライホイールハウジング11とすれば良い。
【0025】
而して、このようにすれば、トランスミッション10(図4参照)側の仕様に関わらず同じタイミングギヤケース12をコアモジュールとして共通使用することが可能となり、トランスミッション10(図4参照)側の仕様に合わせてフライホイールハウジング本体13側だけを種類分けすれば済むため、タイミングギヤケース12を除いたフライホイールハウジング本体13だけの鋳造型を新たに起こすだけで済んでタイミングギヤケース12の型投資分が削減され、フライホイールハウジング11にかかる型投資が大幅に抑制されることになる。
【0026】
また、これまではトランスミッション10(図4参照)側の仕様を確認してから一体鋳造品のフライホイールハウジング11を組み付けて複数種類のエンジン1(図4参照)として管理していたため、エンジン1(図4参照)の管理工数が多くなり、市場へエンジン1(図4参照)を供給するのにも時間を要していたが、トランスミッション10(図4参照)側の仕様が未だ決まらない段階からタイミングギヤケース12を組み付けた状態まで完成させて一種類のエンジン1(図4参照)として管理しておけるので、エンジン1(図4参照)の管理工数が著しく削減され、市場へのエンジン1(図4参照)の供給時間も大幅に短縮されることになる。
【0027】
従って、上記形態例によれば、トランスミッション10(図4参照)側の仕様に関わらず同じタイミングギヤケース12をコアモジュールとして共通使用することができるので、トランスミッション10(図4参照)側の仕様に応じフライホイールハウジング本体13側の鋳造型だけを新たに起こして対応することができ、これによりタイミングギヤケース12の型投資分を削減できて、フライホイールハウジング11にかかる型投資を大幅に抑制することができ、トランスミッション10(図4参照)側の様々な仕様に合わせてフライホイールハウジング11を製作するのに必要なトータルコストを大幅に削減することができる。
【0028】
また、トランスミッション10(図4参照)側の仕様が未だ決まらない段階からタイミングギヤケース12を組み付けた状態まで完成させて一種類のエンジン1(図4参照)として管理しておくことができるので、これまでのようにトランスミッション10(図4参照)側の仕様を確認してから一体鋳造品のフライホイールハウジング11を組み付けて複数種類のエンジン1(図4参照)として管理している状況と比較して、エンジン1(図4参照)の管理工数を著しく削減することができ、しかも、市場へのエンジン1(図4参照)の供給時間も大幅に短縮することができる。
【0029】
尚、本発明のフライホイールハウジング及びその製作方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 エンジン
10 トランスミッション
11 フライホイールハウジング
12 タイミングギヤケース
13 フライホイールハウジング本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に分割構成されたタイミングギヤケースとフライホイールハウジング本体とを備え、前記タイミングギヤケースをコアモジュールとして複数種類のフライホイールハウジング本体を着脱し得るように構成したことを特徴とするフライホイールハウジング。
【請求項2】
フライホイールハウジングをタイミングギヤケースとフライホイールハウジング本体とに分割構成し、その分割構成したタイミングギヤケースをコアモジュールとし、複数種類のフライホイールハウジング本体のうちからトランスミッション側の仕様に合うフライホイールハウジング本体を選定し、その選定したフライホイールハウジング本体を前記タイミングギヤケースに組み付けてフライホイールハウジングとすることを特徴とするフライホイールハウジングの製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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