説明

フライヤー

【課題】調理油の局部加熱及び局部加熱による揚げ滓の炭化等による調理油の劣化を抑制することができるフライヤーを提供する。
【解決手段】調理油を満たし食材を揚げる油槽11と、加熱部31,91と、加熱部31,91内の熱媒体によって調理油を加熱するフライヤー10を提供する。フライヤー10は、熱媒体を加熱するための加熱装置41を備え、その熱媒体として熱交換用油を用い、加熱部31,91と油槽11とは境界壁12,93を介して区画され、油槽11内の調理油と加熱部31,91内の熱交換用油とを、境界壁12,93を介して熱交換させることによって、調理油を加熱することを特徴とする。また、加熱装置41は、熱交換用油を加熱して、調理油を直接加熱しないものとし、熱交換用油が食用油であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主に業務用として食材を天ぷらやフライ等の揚げ物に調理するフライヤーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、揚げ物調理を行うための、調理油を満たした油槽と、その調理油を加熱するためのガスバーナーやヒーター、熱交換器等の加熱装置とを備えたフライヤーが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−295558号公報
【特許文献2】特開2001−095694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1では、調理油を満たした油槽の底部をガスバーナーで直接加熱することによって調理油を加熱し、特許文献2では、調理油を満たした油槽内に備えられたヒーターによって調理油を加熱している。このような加熱方法を用いると、調理油は局部加熱され、その局部に調理中に発生した揚げ滓が存在すると、その揚げ滓をろ紙やフィルター、人の手によるすくい取り等によって濾過除去する前に、その揚げ滓が炭化してしまうなどの調理油の劣化を早める恐れがあった。
また、ろ紙やフィルター等の濾過部を備えた油槽と、熱交換器を備えた循環部とを備えたフライヤーが知られている。油槽と循環部とを循環している調理油と、熱交換器内の高温の熱媒体とを、熱交換器のパイプ等の1枚の金属板を介して熱交換器させることによってその熱を調理油に伝達するため、調理油は高温の金属板に接触することになり、調理油の劣化が促進される恐れがあった。また、濾過部によって濾過除去できなかったわずかな揚げ滓が熱交換器のパイプに溜まり、熱交換器の熱媒体と連続的に接触することによって、その揚げ滓が炭化する恐れがあった。その結果、調理油の劣化を早め、調理品質の低下につながることが懸念された。上記のフライヤーの熱交換器として蒸気式熱交換器を用いた場合であっても、200℃近くに加熱された蒸気の熱をパイプ等の1枚の金属板を介して調理油を直接加熱する方式には変わりがない。
【0005】
本願発明はこのことに鑑み、油槽に満たした調理油をガスバーナーやヒーター、熱交換器等の加熱装置によって直接加熱するのではなく、調理油と、加熱装置によって加熱された熱交換用油とを熱交換させることによって調理油を加熱することで、調理油の局部加熱及び局部加熱による揚げ滓の炭化等による調理油の劣化を抑制することができるフライヤーの提供を目的とする。より望ましくは、維持管理が容易で、かつ経済性、安全性、環境性に優れたフライヤーの提供を図らんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本願発明は、調理油を満たし食材を揚げる油槽と、加熱部と、上記加熱部内の熱媒体によって上記調理油を加熱するフライヤーにおいて、上記フライヤーは、上記熱媒体を加熱するための加熱装置を備え、上記熱媒体は熱交換用油であり、上記加熱部と上記油槽とは、境界壁を介して区画され、上記調理油と、上記熱交換用油とを、上記境界壁を介して熱交換させることによって、上記調理油を加熱することを特徴とするフライヤーを提供する。
また、本願発明は、上記加熱装置は、上記熱交換用油を加熱し、上記調理油を直接加熱しないものであり、上記熱交換用油が食用油であるものとして実施することができる。
また、本願発明は、上記加熱部には複数のヒートパイプを備え、上記複数のヒートパイプが上記油槽内に配設され、上記複数のヒートパイプの外周壁が上記境界壁であるものとして実施することができる。
また、本願発明は、上記加熱部が上記油槽の下方に配設され、上記油槽の底部が上記境界壁であるものとして実施することができる。
また、本願発明は、上記油槽の底部には複数の起伏を備え、上記複数の起伏は、上記油槽の底部から上記加熱部に向けて突出しているものとして実施することができる。
【発明の効果】
【0007】
本願の請求項1の発明では、フライヤーにあって、加熱部と油槽内とが境界壁を介して区画され、加熱装置で加熱された加熱部内の熱交換用油と調理油とを境界壁を介して熱交換させることによって調理油を加熱するため、調理油の局部加熱及び局部加熱による揚げ滓の炭化を防止し、ひいては調理油の劣化を抑制することができたものである。また、調理油を加熱機器で直接加熱する場合の、調理開始時の調理油と加熱機器との温度差と比べて、調理開始時の調理油と熱交換用油との温度差が小さいことから、加熱温度の管理が行いやすい。
本願の請求項2の発明では、請求項1の発明の効果に加え、加熱装置で加熱される熱交換用油に食用油を用いることによって、安全性の高いフライヤーを提供することができたものである。また、食用油同士を境界壁を介して熱交換させることによって、調理油と熱交換用油との比熱が近いまたは等しいために調理中の両者の温度差を小さく又はゼロとすることができることから、調理温度等の管理が行いやすい。さらに、揚げ滓を濾過除去した調理油を熱交換用油として用いることができるため、調理油の再利用が可能である。
本願の請求項3又は4の発明では、請求項1又は2の発明の効果に加え、請求項3においては油槽内に配設された複数のヒートパイプの外周壁を境界壁として用い、請求項4においては油槽の底部を境界壁として用いて、加熱部内の熱交換用油と油槽内の調理油とを境界壁を介して熱交換させることによって、調理油と熱交換用油との効率的な熱交換を行うことができることから、調理油を効率よく加熱することができたものである。
本願の請求項5の発明では、請求項4の発明の効果に加え、油槽の底部に複数の起伏を備え、その複数の起伏が油槽の底部から油槽の下方に配設された加熱部に向けて突出していることによって、油槽内部に揚げ物調理に必要な調理空間を確保しつつ、調理油と熱交換用油との効率的な熱交換を行うことができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明に係るフライヤーの第1実施形態を側面視した構造説明図である。
【図2】同フライヤーを平面視した構造説明図である。
【図3】同フライヤーの油槽と加熱部と濾過部との関係を示す構造説明図である。
【図4】(A)は同フライヤーの濾過部を側面視した構造説明図であり、(B)は濾過部を平面視した構造説明図である。
【図5】同濾過部のフィルターの要部拡大図である。
【図6】本願発明に係るフライヤーの第2実施形態を側面視した構造説明図である。
【図7】同フライヤーを平面視した構造説明図である。
【図8】実施例1において、調理油の温度及び熱交換用油の温度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態の一例をとりあげて説明する。なお、本願の各請求項並びに明細書における上下前後左右の表現は、相対的な位置関係を示すにとどまり、絶対的な位置を特定するものではない。また、説明の便宜上、図面の各図において、Uは上方を、Dは下方を、Fは前方を、Bは後方をそれぞれ示す。
【0010】
本願発明に係るフライヤー10は、図1〜3に示すように、調理油を満たし食材81を揚げる油槽11と、油槽11の下方に配設される加熱部31と、加熱部31内の熱媒体を加熱する加熱装置41と、調理油を濾過し調理油と調理中に生じる揚げ滓とを分離する濾過部51とを備える。
【0011】
油槽11は、上面を開口した平面視略矩形の容器形状に形成され、油槽の底部12には、その底部12から下方に向けて突出した複数の起伏13が、油槽11の長手方向に沿って連続して備えられている。本実施形態においては、図3に示すように、油槽11の長手方向と交わる方向(以下、幅方向とする)の断面が油槽の底部12から下方に向けて正三角形の頂点が突出した逆正三角形形状の連続した起伏となっている。上記の複数の起伏13は、油槽11の幅方向に沿って連続して設けられていてもよく、その起伏13の形状は、油槽の底部12から上方または下方に向けて突出した凹凸形状の起伏であれば、逆三角形形状の他に、波形や台形形状等であってもよい。また、上記の複数の起伏13は、本願発明の目的を逸脱しない範囲において、油槽の底部12の一部にのみ備えられていてもよく、油槽11の長手方向または幅方向に沿って連続して備えられていなくてもよい。なお、油槽の底部12は、フラットにしてもよく、油槽11の長手方向の前方側端部から後述する導入路15に向けて徐々に低くなるように傾斜させたものであってもよい。油槽の底部12に複数の起伏13を設ける場合には、調理油と加熱された加熱部31内の熱媒体とを油槽の底部12を介して熱交換させる際の接触面積を増やすために、その底部12に起伏を有しないフラットなものと比較して、複数の起伏13を備えた油槽の底部12の面積を1.5〜3倍となるように設定することが望ましく、2〜3倍となるように設定することがより望ましい。本実施形態においては、油槽の底部12に起伏を有しないフラットなものと比較して、複数の起伏13を備えた油槽の底部12の面積が2倍となっている。
また、図1に示すように、油槽11の外側であって、その長手方向の後方側端部(図面右側)には、濾過部51が設けられており、この濾過部51には後述するフィルター71等が配置されている。そして、油槽11の長手方向の後方側端部には、油槽11内の調理油を濾過部51に導くための導入路15と、後述する濾過部51にて濾過された調理油を油槽11に吐出するための吐出部16とが、油槽11の長手方向を横切るように設けられている。この導入路15と吐出部16とは、油槽11の他の部分の底部よりも低く、油槽11の幅方向に伸びる溝状となっている。図1の油槽11の長手方向の後方側端部において、前方側に配設されているのが吐出部16であり、後方側に配設されているのが導入路15である。吐出部16の底部中央には吐出管60が接続されている。また、油槽内11において、油槽の底部12に備えられた複数の起伏13の、前方側端部を除くほぼ全てを上方から覆うように還流板17が配設されている。還流板17が、油槽の底部12に備えられた、前方側端部を除くほぼ全ての複数の起伏13を覆うことによって、油槽11の上下方向を、還流板17を隔てて上層aと下層bとの2層に分けることができるほか、調理中に生じる比較的大きな揚げ滓が還流板17に落下し油槽の底部12に落下することを防ぐことができる。その他、油槽の両側部14,14の上端には、油槽の両側部14,14に沿って油槽の両側部14,14に対して外側上方に突出したフランジ18,18が設けられている。本実施形態においては、導入路15、吐出部16及び濾過部51を油槽11の長手方向の後方側端部に設けているが、それぞれを油槽11の長手方向の中央や前方側端部に設けてもよい。
油槽11に満たされた調理油は、この油槽11と濾過部51とを循環しており、図1〜図3に示すように、油槽11内において、油槽11の長手方向の後方側端部に配設された吐出部16から還流板17で覆われた油槽の底部12に備えられた複数の起伏13(下層b)を通って油槽11の長手方向の前方側端部に向かう往路の流れと、油槽11の長手方向の前方側端部と還流板17の隙間から還流板17の上方(上層a)に導かれ、油槽11の長手方向の前方側端部から油槽11の後方側端部に配設された導入路15に向かう復路の流れの、調理油の往復の流れが発生する。
【0012】
導入路15には、送り装置が配設されている。この実施の形態では、送り装置として、導入路15内の調理油と揚げ滓との双方を濾過部51へ送ることができるスクリューコンベア58が用いられており、スクリューコンベヤ58を回転するための動力源(図示省略)と動力伝達手段(図示省略)とが別途備えられている。上記の送り装置は、スクレーパ付きのネットコンベアなど、他の送り手段に変更することができる。また、調理油は、後述する移送ポンプ61によって循環させられるものであるため、送り装置を設けずに実施することも可能である。
【0013】
また、油槽11には、図1に示すように、食材81を一定時間調理油に浸漬させながら搬送する搬送コンベヤ19と、調理中の食材の浮き上がりを押さえる押えコンベヤ20とが配設されている。搬送コンベヤ19は、油槽の底部12に配設された還流板17と油槽11に満たされた調理油の油面82との間に、油槽11の長手方向に沿って配設され、押えコンベヤ20は調理油の油面82近くに、搬送コンベヤ19に沿って上下方向に所定の間隔をおいて配設されている。搬送コンベヤ19は、油槽11内に複数台配設して食材81を搬送してもよい。また、油槽11の長手方向の後方側端部と押えコンベヤ20との間に隙間を設け、食材81を投入する投入部21を設けている。その他、油槽11の長手方向の前方側に配設された搬送コンベヤ19及び押えコンベヤ20は、その一部が上向きに傾斜しており、搬送コンベヤ19の前方側端部には調理した食材81を取り出す取出部22が設けられている。本実施形態においては、食材81を油槽11の長手方向の後方側から前方側へ搬送して揚げ物調理しているが、食材81を油槽11の長手方向の前方側から後方側へ搬送してもよい。
【0014】
加熱部31は油槽11の下方に配設され、複数の起伏13を備えた油槽の底部12を下方から覆うように油槽11と連設されており、加熱部31と油槽11とは、油槽の底部12を介して区画されている。図3に示すように、本実施形態においては、その底部32が、油槽の底部12に備えられた逆正三角形形状の複数の起伏13の正三角形の頂点と接触しているが、油槽の底部12と加熱部の底部32とは接触していなくてもよい。そして、加熱部31の長手方向の後方側端部(図面右側)には、熱媒体を加熱部31に流入するための流入部33が設けられており、加熱部31の他の部分の底部よりも低く、加熱部31の長手方向と交わる方向(以下、幅方向とする)に伸びる溝状となっており、その中央には流入管45が接続されている。また、加熱部31の長手方向の前方側端部(図面左側)には、加熱部31から流出させた熱媒体を加熱装置41へ送り出すための流出部34が設けられている。流出部34は、加熱部31の長手方向において油槽11よりも前方に設けられ、上方が開放されている。本実施形態においては、その上方には埃等が入らないようツバ35が設けられている。また、流出部34における加熱部31の長手方向の中央には、その底部32から上方に伸びるように、かつ幅方向に連続した仕切り板36が設けられており、その仕切り板36の高さは、加熱部の底部32から油槽の底部12までの上下方向の距離、すなわち加熱部31の高さh1よりも高く設定するものとする。流出部34において、仕切り板36よりもさらに前方側に位置する底部は、加熱部31の他の部分の底部よりも低く、加熱部31の幅方向に伸びる溝状となっており、その中央には流出管46が接続されている。
熱媒体は、加熱部31と加熱装置41とを循環しており、図1〜図2に示すように、加熱部31内において、加熱部31の長手方向の後方側端部(図面右側)に配設された流入部33から加熱部31の前方側端部に配設された流出部34に向かって熱媒体の一方向の流れが発生する。本実施形態においては、図3に示すように、加熱部内31において、油槽の底部12と加熱部の底部32とが接触していない部分cに熱媒体の流れが発生する。
【0015】
本実施形態においては、加熱部31内の熱媒体として、熱交換用油を用いるものとする。そして、加熱部31内の熱交換用油として、油槽11に満たされる調理油と同様の食用油を用いることが望ましい。熱交換用油に用いられる食用油の種類には特に制限はなく、大豆油、菜種油、オリーブ油、ラード等の揚げ物調理に用いられる種々の食用油を用いることができる。熱交換用油に食用油を用いることによって、熱交換用油が調理油に混入するなどの万が一の場合においても、調理される食材や油(調理油と熱交換用油)を含めたフライヤー10の安全性を高めることができる。また、熱交換用油として揚げ滓を濾過除去した調理油を再利用することも可能である。
【0016】
油槽11や還流板17、加熱部31の素材は特に制限されるものではないが、さびにくく手入れがしやすいステンレスを用いることが好ましい。調理油は、調理油自体や食材81、油槽11や還流板17、加熱部31に含まれる金属によっても劣化が促進されるため、上記の点においてもさびにくい素材を用いることが好ましい。また、油槽11や加熱部31の形状や大きさは、本願発明の目的を逸脱しない範囲において、自由に設定することができる。
【0017】
加熱装置41は、図1示すようには油槽の底部12や加熱部の底部32よりも下方に設けられ、熱源42と、熱交換器43と、循環ポンプ44と、流入管45と、流出管46とから構成される。熱源42と熱交換器43とは接続され、熱源42によって熱交換器43の熱媒体を加熱する。また、流出管46は、循環ポンプ44を介して加熱部31の流出部34と熱交換器43とを接続するものであり、流入管45は熱交換器43と加熱部31の流入部33とを接続するものである。熱源42は、熱交換器43の熱媒体を加熱できるものであれば特に制限はなく、電気ヒーターやガスバーナー等を用いることができる。必要に応じて排気煙突(図示省略)を設けてもよい。熱交換器43は、熱源42で加熱された熱媒体と、加熱部31と加熱装置41とを循環している熱交換用油との間で熱交換を行わせて、熱交換用油を加熱する。熱交換器43及びその熱媒体の種類には特に制限はなく、種々の食品用の熱交換器及び熱媒体を用いることができる。また、熱交換器43の他に、電気ヒーターやガスバーナー、ボイラー等を用いて熱交換用油を加熱してもよい。中でもボイラーは稼働コストが高く維持管理が煩わしいが、熱交換用油の劣化を抑えつつ、安全かつ効率良く熱交換用油を加熱することができる。その他、図示は省略するが、熱交換用油の温度を調整するための温度調整装置を備えるものとする。
【0018】
本実施形態においては、油槽11に満たされた調理油と、加熱装置41で加熱された加熱部31内の熱交換用油とを、境界壁として油槽の底部12を介して熱交換させることによって、調理油を加熱するものとする。より詳しくは、図1〜図3に示すように、油槽11の長手方向の後方側端部に配設された吐出部16から還流板17で覆われた油槽の底部12に備えられた複数の起伏13(下層b)を通って油槽11の前方側端部に向かって流れる調理油と、加熱部31の長手方向の後方側端部に配設された流入部33から加熱部31の前方側端部に配設された流出部34に向かって流れる熱交換用油とを、複数の起伏13を備えた油槽の底部12を介して熱交換させることによって、調理油を加熱する。なお、熱交換用油の最低温度は、調理油を食材に応じた目的の調理温度に加熱することができるよう、少なくとも調理油の調理温度と同温度もしくは調理油の調理温度よりも高くなるよう設定するものとし、調理油の劣化を防止する観点から、その最高温度は240度以下とする。調理油が目的の調理温度にまで加熱された後には、調理油の温度と熱交換用油の温度とが、ほぼ一定となり、調理中に消費された調理油の熱消費エネルギーは、熱交換用油の加熱エネルギーによって補うように運転することができる。この加熱エネルギーは、熱交換用油の温度やその送り量(加熱部31及び加熱装置41の循環量)の増減によって調整することができる。
上記の加熱方式を採用することによって、揚げ滓を含む調理油をガスバーナーや電気ヒーター、熱交換器等の加熱機器で直接加熱しないため、調理油の局部加熱及び局部加熱による揚げ滓の炭化を防止することができる。また、調理油を加熱機器で直接加熱する場合の調理開始時の調理油と加熱機器との温度差と比べて、調理開始時の調理油と熱交換用油との温度差が小さいことから、加熱温度の管理が行いやすい。また、熱交換用油として食用油を用い、食用油同士を油槽の底部12を介して熱交換させることによって、調理油と熱交換用油との比熱が近いまたは等しいために調理中の両者の温度差を小さく又はゼロとすることができることから、調理温度の管理が行いやすい。さらに、油槽の底部12に複数の起伏13を備え、調理油と熱交換用油との接触面積を増やすことによって、調理油と熱交換用油との効率的な熱交換を行うことができることから、調理油を効率よく加熱することができる。その他、油槽の底部12に備えられた複数の起伏13を油槽の底部12から油槽11の下方に配設された加熱部31に向けて突出させるとともに還流板17でその複数の起伏13のほぼ全てを覆うことによって、油槽11内に揚げ物調理に必要な調理空間を確保しつつ、調理中に発生した比較的大きな揚げ滓が還流板17に落下し油槽の底部12に落下しないため、揚げ滓によって調理油と熱交換用油との熱交換時の油槽の底部12の熱伝導率を低下させずに調理油と熱交換用油との熱交換を効率的に行うことができる。以上のことから、本願発明に係るフライヤー10にあっては、調理油の劣化を抑制し、調理油の使用期間を長くすることができる。なお、還流板17に落下した比較的大きな揚げ滓は調理油の循環による調理油の流れと搬送コンベヤ19の復路の動きによって導入路15まで運ばれ、最終的に油槽11の外へ排出される。
【0019】
本願発明に係るフライヤー10の加熱方式と、底部に複数の起伏を有しない底部が平らな油槽(以下、平なべという)の底部をガスバーナーで直接加熱して調理油を加熱する加熱方式において、調理油と加熱方式との関係を比較する。なお、前者と後者の油槽の容量は、ほぼ同量とした。
前者の加熱方式を用いて油槽11に満たされた調理油の温度を180〜185℃に加熱する場合は、熱交換用油の温度は少なくとも180℃以上とし、望ましくは180〜230℃に設定すればよく、油槽の底部12の温度が熱交換用油の温度よりも高くなることはない。一方、後者の加熱方式を用いて平なべに満たされた調理油の温度を180〜185℃に加熱する場合は、炎の温度が約800℃のガスバーナーで加熱される平なべの底部の温度(満たされた調理油と接している底部の温度)は240〜260℃となる。よって、後者の加熱方式を用いた平なべにおいては、調理油が局部加熱され、揚げ滓が炭化するなどの、その局所加熱によって調理油が劣化する恐れがあるほか、均一な揚げ物調理が難しくなる。
【0020】
濾過部51は、図4(A)(B)に示すように、油槽31に満たされた調理油が導き入れられる上流室52と、上流室52の周壁(内壁)に配置され調理油を濾過して調理油と調理中に生じる揚げ滓とを分離する筒状のフィルター71と、筒状のフィルター71の内部で回転する回転部材とを備える。この例では、回転部材は、フィルター71に付着した揚げ滓を掻き落とすスクレーパ75を兼ねるものとして実施されている。
【0021】
フィルター71の下方には上流室52内の揚げ滓を集める集積部53が配置されており、この集積部53には揚げ滓を外部に搬出する揚げ滓排出部62が設けられている。フィルター71の外周側には環状の下流室54が設けられている。この下流室54は、筒状のフィルター71の外側を取り巻くように環状に形成されたもので、フィルター71を通過した調理油が、流出する。この下流室54には導出管59が接続され、導出管59は後述する移送ポンプ61を介して吐出管60に接続されている。
【0022】
以下、濾過部51の各部についてより詳しく説明する。
まず、上流室52は、フィルター71を備えた筒状の上部と、この上部の下方に設けられた集積部53とを備える。集積部53は、下方に向かうに従ってその平面積が減少する略逆円錐形状をしており、調理油中の揚げ滓を下方中央に集まるようにしている。集積部53は、上流室52の下部を構成するもので、集積部53の上端部分は上流室52の下部の外壁に密閉状態で接続されている。この上流室52の上端の開口は、フィルター71の内径と等しいか、これよりも大きいことが望ましいが、これに限らずフィルター71の内側と導通してフィルター71内の揚げ滓を受け入れることができるものであればよい。
【0023】
この集積部53には導入管57が接続され、導入管57は油槽11の壁を貫通し、前述の導入路15に接続されている。導入路15内に配置されたスクリューコンベア58の終端は、導入管57内にまで達しており、さらに、集積部53にまで突出しているものであってもよい。これにより、油槽11内の調理油と揚げ滓は、導入路15から導入管57を経て集積部53内に運ばれる。
【0024】
さらに、この集積部53には、揚げ滓排出部62の縦方向コンベヤ63の始端が接続されている。この縦方向コンベヤ63は、集積部53から斜め上方に揚げ滓を運び出すもので、本実施形態では、縦方向コンベヤ63として、スクリューコンベヤを用いている。また、揚げ滓排出部62には、縦方向コンベヤ63を回転するための動力源である縦方向コンベヤモータ(図示省略)と動力伝達手段(図示省略)とを備える。縦方向コンベヤ63のスクリューは搬送中の揚げ滓を周囲に落とさないよう密閉されている。縦方向コンベヤ63の上方の終端には、排出シュート64が設けられ、そこから揚げ滓が排出される。縦方向コンベヤ63の上方の端部を油槽11に満たされた調理油の油面82よりも高く設けることで、揚げ滓のみを油槽11の内から外に搬出し除去することができる。フィルター71で分離した揚げ滓を、この揚げ滓排出部62によって自動かつ連続して油槽11の外へ除去することで、調理油の劣化を抑制することができる。
【0025】
次に、上流室52の上部を構成するフィルター71について説明する。このフィルター71は、調理油を通過させて、調理油中の揚げ滓を濾し取るものであればよく、濾紙や濾布、各種素材の多孔質体など、その材質や濾過構造は適宜変更して実施することができるが、本実施形態においては、線状部材72として断面が楔形のステンレス製ウエッジワイヤーで形成されたフィルター71を用いている。
【0026】
図5に示すように、このフィルター71は、全体が筒状をなしており、その内周側を上流とし、外周側を下流として調理油が通過し、濾過される。具体的な構造としては、複数の線状部材72のそれぞれを環状に形成し、環状の軸方向に微小間隔をおいて配列したものである。これらの環状の線状部材72の配列を複数本の環状の軸方向に伸びるサポートロッド73により支持し円筒状に形成したもので、軸方向の両端部には環状の支持体74を装着している。より詳しくは、複数の線状部材72の配列において、フィルター71の外周面を構成する線状部材72の外側を、複数本の上下方向に伸びるサポートロッド73が支持している。このフィルター71を用いて調理油と揚げ滓とを分離することにより、濾紙や濾布等の濾過材を用いて揚げ滓を分離する場合に比べ、フィルターの定期交換が不要であるためランニングコストを抑えることができる。
【0027】
このウエッジワイヤーの線状部材72の幅は一定のものであってもよいが、この例では、フィルター71の内周面を構成する線状部材72の内側面が最も上下幅が大きく、そこからフィルター71の径外方向(下流方向)に向かうに従って漸次減少するものを用いている。これによって、複数の線状部材72の配列により形成される微小間隔sが、フィルター71の内周面から径外方向に向かうに従って大きくなるため、フィルター71の上流側の開口幅は狭く、下流側の開口幅が広くなり、フィルター71自体の目詰まりが少なく、調理油と揚げ滓とを効果的に分離し調理油のみを濾過することができる。フィルター71の内周面(上流側)の開口幅、つまり、複数の線状部材72の配列によりフィルター71の内周面に形成される微小間隔Sは、揚げ滓よりも小さくなるように設定すれば特に制限はなく、調理油の流れと濾過の完全性のバランスから、望ましくは5〜200μmに設定する。本実施形態においては、スリットを略80μmに設定した。
【0028】
このフィルター71は、後述するように油槽11に満たされた調理油に浸漬されて使用されるものであり、本実施形態のような金属製フィルターのほかに、耐熱性、耐油性及び耐久性を備えた素材、例えば不織布や樹脂製等のフィルターを用いることができる。また、フィルター71の構造としては、例えば、スパイラル構造等、フィルターの自体に目詰まりがしにくく、フィルターの目詰まりやフィルターに付着した揚げ滓を容易に除去でき、かつフィルターの定期交換が不要なものが望ましい。
【0029】
この実施の形態にあっては、フィルター71は、上流室52の上部の約下半分に設けられており、上流室52の上部によって上方から支持されており、上流室52の上部は、円筒状の壁(内壁)が設けられ、内周側の上流室52と外周側の下流室54とを区画しているが、上流室52の周面全体をフィルター71によって構成してもよい。また、例えば、半周のみをフィルター71によって構成したり、複数部分にフィルターを配置したりするなど、上流室52の一部分のみにフィルター71を配置してもよい。
【0030】
次に、上記の回転部材としてのスクレーパ75について説明する。このスクレーパ75は、矩形板状体であり、フィルター71の内周面に当接しつつ、フィルター71の軸方向に沿って上下方向に伸びている。スクレーパ75の上部はアーム状の支持部材76に取り付けられ、支持部材76は回転軸77に支持され、回転軸77は上流室52の上部に配置された電動機などの回転駆動装置78の出力軸に接続されている。この例では、スクレーパ75は2枚設けられているが、1枚であってもよく3枚以上であってもよい。
【0031】
このスクレーパ75はその先端とフィルター71の内周面とをフィルター71の軸方向に沿って当接させ、スクレーパ75が回転することで、フィルター71の内周面に付着した揚げ滓を連続して掻き落とすことができる。スクレーパ75の先端とフィルター71の内周面との当接角度αは、90度未満とされているが、両者が当接しさえすれば特に制限はなく、適宜設定することができる。また、当接角度αを調整可能にしてもよい。さらに、図示は省略するが、スクレーパ75を軸方向に複数の小スクレーパに分割して形成してもよい。これによって、円筒状のフィルター71がひずんでも個々の小スクレーパの先端がフィルター71の内周面に倣い易い。スクレーパ75は、油槽11に満たされた調理油に浸漬されて使用されるものであり、耐油性や耐熱性、耐久性を備えた素材であれば特に制限はなく、金属や樹脂等の種々の素材を用いることができる。スクレーパ75を弾性部材によって付勢し、付勢を受けた状態でフィルター71の内周面に当接させるようにしてもよい。
【0032】
このスクレーパ75は、フィルター71を含む上流室52内で回転することによって、上流室52内の調理油に旋回流を生じさせる。このために、スクレーパ75は、半径方向に5mm以上の適当な幅を有するものとしておくことが望ましい。また、旋回流を効率的に発生させるためには、30〜100rpmで回転させることが望ましい。30rpm未満であると、遅すぎて有効な旋回流が生じにくく、100rpmを越えると早すぎて揚げ滓が暴れ過ぎたりしてしまうおそれがあるが、揚げ滓の大きさや比重や調理油の状態などによって変化するため、装置の全体の状態や種々の実施条件に応じて適宜変更して実施することができる。スクレーパ75の回転軸77はフィルター71の中心軸と同軸上に上下方向に配置することが好ましいが、実質的に同一であればよく数学的な完全同一を求めるものではない。
【0033】
この旋回流を発生させる機構と、上記のスクレーパ75とを別々の部材によって構成することも可能である。例えば、スクレーパとしては機能しないプロペラ状の攪拌羽根を回転させて旋回流を発生させるようにしてもよい。また、導入管57による、フィルター71を含む上流室52内への調理油の導入方向を、筒状のフィルター71の接線方向とすることによって、導入時の調理油の流れによって旋回流を発生させるようにしてもよい。
【0034】
このように、フィルター71内部で旋回流を発生させることによって、フィルター71に付着してスクレーパ75によって落とされた揚げ滓が、旋回流の流れの中心に集まりつつ下方に沈む。そして、下方の集積部53に沈んだ揚げ滓は、前述の揚げ滓排出部62によって系外に排出される。特に、フィルター71の内周面に接触しながらこれに沿ってスクレーパ75が回転することにより、上記旋回流を発生させると共にフィルター71に付着した揚げ滓をフィルター71の内周面から離れさせて旋回流に乗せて渦の中心から下方に沈降させることができる。
【0035】
次に、下流室54について説明する。この下流室54は、フィルター71の外周に間隔を置いて設けられた外壁と、フィルター71及び上流室52の内壁との間に形成された空間であり濾過済の調理油が一時的に溜められている。この下流室54は環状をなしており、その上端は蓋体55によって下端は底部56によって、それぞれ閉じられている。前述のようにこの下流室54(この例では底部56)には導出管59が接続されており、導出管59からの調理油が移送ポンプ61によって油槽11に戻されて循環させられる。
【0036】
なお、上流室52及び下流室54の高さは、油槽11に満たされた調理油の油面82よりも高く設定されており、その上方には空気抜き(図示せず)が設けられている。フィルター71は、油面82よりも低い位置に配置されている。上流室52及び下流室54は、空気抜きなどで開放することにより、真空状態とならないようにし、適度な吸引力を保つ。これにより、移送ポンプ61により調理油を吸引する際に、細かな揚げ滓がフィルター71を通過しないようにした。
【0037】
また、導出管59は、移送ポンプ61を介して、吐出管60と接続されている。濾過部51によって濾過された調理油が、吐出管60から油槽11に戻されることになる。
【0038】
前述のように、調理油は、移送ポンプ61によって、油槽11の長手方向を横切るように設けられた導入路15から吸引され、濾過部51のフィルター71によって濾過され、濾過された調理油が油槽11の後方側端部に設けられた吐出部16から吐出して、油槽11の下層bにおいては後方側から前方側へ、その後油槽11の上層aにおいては前方側から後方側へと油槽11を往復して油槽11と濾過部51とを循環するものであり、調理油の流れは油槽11の全幅に渡って発生する。この調理油の送り量としては、調理油と熱交換用油との熱交換によって調理油を適切な調理温度に加熱でき、かつ、搬送コンベヤ19で搬送する食材81が逆流しない程度の流量であれば特に制限はなく、本実施形態においては、調理油が油槽11及び濾過部51を循環する際の調理油の1回あたりの循環量を送り量とすると、その送り量は、後述する熱交換用油が加熱部31及び加熱装置41を循環する際の熱交換用油の1回または複数回の循環量と同じになるよう設定するものとする。そして、調理油の送り量は、吐出管60に設けられたバルブ(図示省略)で調整している。
【0039】
また、熱交換用油は、循環ポンプ44によって、加熱部31の長手方向を横切るように設けられた流出部34から吸引され、熱交換器43によって加熱され、加熱された熱交換用油が加熱部31の後方側端部に設けられた流入部33から吐出して加熱部31と加熱装置41とを循環するものであり、熱交換用油の流れは加熱部31の全幅に渡って発生する。その際、流出部34の上方が開放されていることによって熱交換用油が膨張するのを防ぐことができ、また、仕切り板36の高さを加熱部31の高さh1よりも高くすることによって、熱交換用油を一度仕切り板36でオーバーフローさせたのち循環ポンプ44によって吸引させることで、循環させる熱交換用油を脱気することができる。この熱交換用油の送り量としては、調理油と熱交換用油との熱交換によって調理油を適切な調理温度に加熱できる程度の流量であれば特に制限はなく、本実施形態においては、熱交換用油の1回または複数回の循環量を送り量とすると、その送り量は調理油の送り量(調理油の1回あたりの循環量)とを同じになるよう設定するものとし、かつ0.5〜3分間に1回熱交換用油が加熱部31及び加熱装置41を循環する程度とする。例えば、容量X[L]の油槽11に対し調理油をX/2[L/min]の流速で調理油を循環させた場合、容量X/4[L]の加熱部31に対し熱交換用油をX/2[L/min]の流速で2回循環させると、調理油の循環量と熱交換用油の循環量とが同じとなる。そして、熱交換用油の送り量は流入管45に設けられたバルブ(図示省略)で調整している。
【0040】
調理中に発生した揚げ滓は、調理油の循環による調理油の流れと搬送コンベヤ19の復路の動き、導入路15に配置された送り装置とによって油槽11から濾過部51へ送られる。そして、濾過部51で、揚げ滓を含んだ調理油がフィルター71を通過することによって、調理油と揚げ滓とが分離される。フィルター71で濾過された調理油は、上述の通り、油槽11と濾過部51とを循環する。濾過部51で、分離された揚げ滓は、揚げ滓排出部62により油槽11から外へ搬出される。
【0041】
次に、本願発明に係るフライヤー10の第2実施形態について説明する。加熱部91の一部として油槽11内に複数のヒートパイプ92…92を配設し、その複数のヒートパイプ92…92内の熱交換用油と油槽11内の調理油とを複数のヒートパイプの外周壁993…93を介して熱交換させることを除いては、上述した第1実施形態と同じ構成である。よって、同じ部材には同じ番号を付すことにより、詳細な説明は省略する。また、第2実施形態においては、濾過部51について、図示を省略する。
【0042】
油槽11は、図6〜図7に示すように、上面を開口した平面視略矩形の容器形状に形成され、油槽の底部12は起伏を有しない平らな構造となっている。また、図6〜図7には示していないが、油槽11の外側であって、その長手方向の後方側端部(図面右側)には、図2〜図5に示す濾過部51が設けられている。そして、油槽11の長手方向の後方側端部には、油槽11内の調理油を濾過部51に導くための導入路15が、油槽11の長手方向を横切るように、油槽11の幅方向に伸びる溝状に設けられている。油槽11の長手方向において、この導入路15と後述する油槽11内に備えられる複数のヒートパイプ92…92の後方側端部との間の油槽の底部12の中央には、吐出管60が接続されている。また、油槽11内において、後述する油槽11内に備えられる複数のヒートパイプ92…92の、前方側端部を除くほぼ全てを上方から覆うように還流板17が配設されている。還流板17が複数のヒートパイプ92…92のほぼ全てを上方から覆うことによって、油槽11の上下方向を、還流板17を隔てて上層dと下層eとの2層に分けることができるほか、調理中に生じる比較的大きな揚げ滓が還流板17に落下し複数のヒートパイプ92…92と接触することを防ぐことができる。
油槽11に満たされた調理油は、この油槽11と濾過部51とを循環しており、図6〜図7に示すように、油槽11内において、油槽11の長手方向の後方側端部に接続された吐出管60から調理油が吐出され、還流板17で覆われた下層eを通って油槽11の長手方向の前方側端部に向かう往路の流れと、油槽11の長手方向の前方側端部と還流板17の隙間から還流板17の上方に位置する上層dに導かれ、油槽11の長手方向の前方側端部から油槽11の後方側端部に配設された導入路15に向かう復路の流れの、調理油の往復の流れが発生する。
【0043】
加熱部91には複数のヒートパイプ92…92を備え、それら複数のヒートパイプ92…92は油槽11内、より詳しくは油槽11の上下方向においては下方に配設され、油槽11に満たされた調理油に浸漬されている。よって、加熱部91と油槽11とは、複数のヒートパイプの外周壁93…93を介して区画されている。本実施形態においては、断面視円形状の7本のヒートパイプ92…92が、図6〜図7に示すように、油槽11内において油槽11の長手方向に沿って、かつそれぞれが平面視にて油槽11の幅方向に若干の隙間をおいて敷き詰められるように配設され、複数のヒートパイプ92…92の上方は、上述のように還流板17で覆われている。また、複数のヒートパイプ92…92の後方側端部(図面右側)はそれぞれ下方に折り曲げられ、折り曲げられた複数のヒートパイプ92…92の後方側端部の終端は油槽の底部12を突き抜け、油槽11の下方に配設されたヘッダー97と接続されている。ヘッダー97は、加熱装置41の流入管45とも接続されている。一方、複数のヒートパイプ92…92の前方側端部は、油槽11の前方側に配設された流出部94に接続されている。上記の複数のヒートパイプ92…92は、油槽11内において油槽11の幅方向に沿って設けられていてもよく、その断面形状は、円形に限定されず、矩形や多角形、楕円等であってもよい。また、複数のヒートパイプの外周壁93…93に複数の溝を設けるなど起伏を有してもよく、その形状は、直管ではなく蛇行していてもよい。なお、調理油と加熱された加熱部31内の熱交換用油とを複数のヒートパイプの外周壁93…93を介して熱交換させる際の接触面積を増やすために、複数のヒートパイプの外周壁93…93の総面積は、油槽の底部12と比較して、1.5〜4倍となるように設定することが望ましく、2〜4倍となるように設定することがより望ましい。また、継手を介して複数本のヒートパイプをつなげたものを1本のヒートパイプ92として用いてもよい。さらに、本実施形態においては、上述の通り、複数のヒートパイプ92…92を油槽11内の全体に配設しているが、複数のヒートパイプ92…92は、本願発明の目的を逸脱しない範囲において、油槽11内の一部にのみ配設されていてもよい。
また、油槽の11の前方には、複数のヒートパイプ92…92から流出する熱交換用油を加熱装置41へ送り出すための流出部94が設けられている。流出部94は、油槽11の前方側端部と連設されており、上方が開放されている。本実施形態においては、その上方には埃等が入らないようツバ95が設けられている。また、流出部94の長手方向の中央には、その底部から上方に伸びるように、かつ幅方向に連続した仕切り板96が設けられており、その仕切り板96の高さは、油槽11内に配設される複数のヒートパイプ92…92の、油槽11の上下方向における高さh2よりも高く設定するものとする。また、流出部94において、仕切り板96よりもさらに前方側に位置する底部の中央には流出管46が接続されている。
熱交換用油は、加熱部91と加熱装置41とを循環しており、図6〜図7に示すように、加熱部91内において、複数のヒートパイプ92…92の長手方向の後方側端部に配設されたヘッダー97から複数のヒートパイプ92…92内を通って油槽11の前方側端部に連設された流出部34に向かって熱交換用油の一方向の流れが発生する。
【0044】
本実施形態においては、油槽11に満たされた調理油と、加熱装置41で加熱された加熱部91内の熱交換用油とを、境界壁として複数のヒートパイプの外周壁93…93を介して熱交換させることによって、調理油を加熱するものとする。より詳しくは、図6〜図7に示すように、油槽11の長手方向の後方側端部に配設された吐出管60から還流板17で覆われた下層eを通って油槽11の前方側端部に向かって流れる調理油と、複数のヒートパイプ92…92の長手方向の後方側端部に配設されたヘッダー97から複数のヒートパイプ92…92内を通って油槽11の前方側端部に連設された流出部94に向かって流れる熱交換用油とを、複数のヒートパイプの外周壁93…93を介して熱交換させることによって、調理油を加熱する。なお、熱交換用油の最低/最高温度の設定については本願の第1実施形態と同様とし、また、調理油が目的の調理温度にまで加熱された後の、調理油や熱交換用油の温度調整についても、本願の第1実施形態と同様とする。
上記の加熱方式を採用することによって、本願の第1実施形態と同様、揚げ滓を含む調理油をガスバーナーや電気ヒーター、熱交換器等の加熱機器で直接加熱しないため、調理油の局部加熱及び局部加熱による揚げ滓の炭化を防止することができる。また、調理油を加熱機器で直接加熱する場合の調理開始時の調理油と加熱機器との温度差と比べて、調理開始時の調理油と熱交換用油との温度差が小さいことから、加熱温度の管理が行いやすい。また、熱交換用油として食用油を用い、食用油同士を油槽11内に備えられた複数のヒートパイプの外周壁93…93を介して熱交換させることによって、調理油と熱交換用油との比熱が近いまたは等しいために調理中の両者の温度差を小さく又はゼロとすることができることから、調理温度の管理が行いやすい。さらに、調理油と熱交換用油とを油槽11内に備えられた複数のヒートパイプの外周壁93…93を介して熱交換させ、調理油と熱交換用油との接触面積を増やすことによって、調理油と熱交換用油との効率的な熱交換を行うことができることから、調理油を効率よく加熱することができる。
本願の第1実施形態においては、複数の起伏13を備えた油槽の底部12を境界壁とすることによって調理油と熱交換用油との接触面積を増やしたが、本願の第2実施形態においては、加熱部91の一部として油槽11内に複数のヒートパイプ92…92を備え、それら複数のヒートパイプの外周壁93…93を境界壁とすることによって調理油と熱交換用油との接触面積を増やしている。第1実施形態においては、上述の通り、底部12に起伏を有しないフラットなものと比較して、複数の起伏13を備えた油槽の底部12の面積が2倍となったが、第2実施形態においては、複数のヒートパイプ92…92を油槽11の幅方向において隙間なく敷き詰めるように配設した場合には、その外周壁93…93の総面積は、理論上は油槽の底部12の面積の3.14倍となり、第1実施形態と比較してより効率的に調理油を加熱することができる。しかしながら、本願の第2実施形態においては、第1実施形態の構成と比較して、複数のヒートパイプ92…92を油槽11内に配設することによって油槽11内における調理空間が狭くなるため、油槽11内に適切な調理空間を確保できるよう、油槽11の大きさを設定することが望ましい。
その他、複数のヒートパイプ92…92の上方を還流板17でほぼ全てを覆うことによって、調理中に発生した比較的大きな揚げ滓が還流板17に落下し油槽の底部12に落下しないため、揚げ滓によって調理油と熱交換用油との熱交換時の複数のヒートパイプの外周壁93…93の熱伝導率を低下させずに調理油と熱交換用油との熱交換を効率的に行うことができる。
以上のことから、本願発明に係るフライヤー10にあっては、調理油の劣化を抑制し、調理油の使用期間を長くすることができる。なお、還流板17に落下した比較的大きな揚げ滓は調理油の循環による調理油の流れと搬送コンベヤ19の復路の動きによって導入路15まで運ばれ、最終的に油槽11の外へ排出される。
【0045】
調理油は、移送ポンプ61によって、油槽11の長手方向を横切るように設けられた導入路15から吸引され、濾過部51のフィルター71によって濾過され、濾過された調理油が油槽11の後方側端部に設けられた吐出管60から吐出して、油槽11の下層eにおいては後方側から前方側へ、その後油槽11の上層dにおいては前方側から後方側へと油槽11を往復して油槽11と濾過部51とを循環するものであり、調理油の流れは油槽11の全幅に渡って発生する。この調理油の送り量としては、調理油と熱交換用油との熱交換によって調理油を適切な調理温度に加熱でき、かつ、搬送コンベヤ19で搬送する食材81が逆流しない程度の流量であれば特に制限はなく、本実施形態においても、第1実施形態と同量の送り量とし、その送り量は、吐出管60に設けられたバルブ(図示省略)で調整している。
また、熱交換用油は、循環ポンプ44によって、流出部94から吸引され、熱交換器43によって加熱され、加熱された熱交換用油が複数のヒートパイプ92…92の後方側端部の終端に接続されたヘッダー97から複数のヒートパイプ92…92に吐出して加熱部91と加熱装置41とを循環するものである。その際、流出部94の上方が開放されていることによって熱交換用油が膨張するのを防ぐことができ、また、仕切り板96の高さを油槽11内に配設される複数のヒートパイプ92…92の、油槽11の上下方向における高さh2よりも高く設定することによって、熱交換用油を一度仕切り板96でオーバーフローさせたのち循環ポンプ44によって吸引させることで、循環させる熱交換用油を脱気することができる。この熱交換用油の送り量としては、調理油と熱交換用油との熱交換によって調理油を適切な調理温度に加熱できる程度の流量であれば特に制限はなく、本実施形態においても第1実施形態と同量の送り量とし、その送り量は流入管45に設けられたバルブ(図示省略)で調整している。
【0046】
本願発明においては、調理油の油槽11内の流れ方向と熱交換用油の加熱部31,91内の流れ方向は順方向であっても逆方向であってもよく適宜変更して実施できる。
【0047】
本願発明に係るフライヤー10において、投入部21に揚げムラを防止する撹拌部や取出部22に別のコンベヤを設けたり、新しい調理油を供給する装置を設けるなど本願発明の目的を逸脱しない範囲で、他の部品や装置と組み合わせて使用することができる。
【0048】
本願発明に係るフライヤー10は、業務用として、天ぷらやフライ等の食材に衣がついたもの、肉団子やハンバーグ等の素揚げのもの等揚げ物の種類を問わす種々の食材を揚げるフライヤーとして使用することができる。また、油槽の大きさや熱源の種類に応じて、食品メーカー等の食品加工用、スーパー等の惣菜加工用、レストラン等での調理用フライヤー等として使用することができる。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
調理油として2Lの大豆油を満たした容量2.3Lの油槽Oの底部を、熱交換用油として0.5Lの大豆油を満たした容量2.7Lの油槽Pに浸漬し、油槽Pの底部をガスバーナー(バーナーのガス量 0.11m/Hr)で加熱した。ガスバーナーによって加熱された熱交換用油と調理油とを、油槽Oの底部を介して熱交換させることによって、調理油を加熱した。実験時の室温は13℃であり、油槽Oと油槽Pには、底部に複数の起伏を有しない底部が平らなものを用いた。加熱時間毎の調理油の温度と熱交換用油の温度を測定した。測定結果を図8に示す。
【0050】
図8に示すように、熱交換用油として食用油を用い、加熱された熱交換用油と調理油とを油槽Oの底部を介して熱交換させることによって、調理油を揚げ物調理に必要な温度(少なくとも160℃以上)にまで加熱することができ、かつその温度を維持することができることが分かった。以上のことから、本願発明に係るフライヤー10の加熱方式は、実用に耐えうることが確認された。
【符号の説明】
【0051】
10 フライヤー
11 油槽
12 油槽の底部
13 複数の起伏
31 加熱部
41 加熱装置
91 加熱部
92 ヒートパイプ
93 ヒートパイプの外周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理油を満たし食材を揚げる油槽と、加熱部と、上記加熱部内の熱媒体によって上記調理油を加熱するフライヤーにおいて、
上記フライヤーは、上記熱媒体を加熱するための加熱装置を備え、
上記熱媒体は熱交換用油であり、
上記加熱部と上記油槽とは、境界壁を介して区画され、
上記調理油と、上記熱交換用油とを、上記境界壁を介して熱交換させることによって、上記調理油を加熱することを特徴とするフライヤー。
【請求項2】
上記加熱装置は、上記熱交換用油を加熱し、上記調理油を直接加熱しないものであり、
上記熱交換用油が食用油であることを特徴とする請求項1に記載のフライヤー。
【請求項3】
上記加熱部には複数のヒートパイプを備え、
上記複数のヒートパイプが上記油槽内に配設され、
上記複数のヒートパイプの外周壁が上記境界壁であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフライヤー。
【請求項4】
上記加熱部が上記油槽の下方に配設され、
上記油槽の底部が上記境界壁であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフライヤー。
【請求項5】
上記油槽の底部には複数の起伏を備え、上記複数の起伏は、上記油槽の底部から上記加熱部に向けて突出していることを特徴とする請求項4に記載のフライヤー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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