説明

フライ油の劣化度評価用容器及びフライ油の劣化度評価方法

【課題】フライ油の使用限度の基準変更が容易で、フライ油の劣化度を定量的に評価することが可能なフライ油の劣化度評価用容器及びフライ油の劣化度評価方法を提供する。
【解決手段】上部に開口部18を有してフライ油を収容する容器本体12と、容器本体の内面16の一部に設けられ、内面の色とは異なり緑色、青色又は紫色に着色されたマークとを備えるフライ油の劣化度評価用容器10を用いる。容器本体の内面に対してマークが識別できなくなるまでフライ油を容器本体に注入し、注入後のフライ油の液面からマークまでの深さでフライ油の劣化度を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ調理等に使用されるフライ油の劣化度評価用容器及びフライ油の劣化度評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の安全に対する意識が高まる中で、食材そのものに対する品質だけでなく、食品に使用されている添加物や調理方法にも関心が向けられている。フライ調理に使用されるフライ油が劣化すると、フライ油の色が濃くなってフライ食品の見栄えや風味が損なわれるばかりでなく、胸焼けなどを引き起こす原因となる。そのため、従来からフライ食品の製造業界では、フライ油の劣化度を評価し、使用限度を超えたフライ油を交換してきた。
【0003】
従来のフライ油の劣化度評価方法としては、以下の方法が知られている。
すなわち、フライ油を収容可能な容器として、樹脂製の透明なものを用意する。容器の外側側面には基準となる色に着色された色部材を設けておく。基準となる色とは対象となるフライ油おいて、使用限度となった時のフライ油の色に略等しい色を有するものであり、使用限度となったフライ油を予めロビボンド法により測定し設定される。ロビボンド法とはフライ油等の被測定物質の色を測定する方法であり、被測定物質が有する色を赤色、黄色及び青色に分解して、各色に対する色度であるR、Y及びBを得る方法である。
そして、この容器にフライ油を入れて、透明な容器を通して内部のフライ油を観察する。つぎに収容されたフライ油の色と色部材の色とを比較して、その濃淡の差により使用限度か否かを評価する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−139720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のフライ油の劣化度評価方法では、対象となるフライ油で使用限度のものの色度を予め測定し、略等しい色の色部材を用意して色部材とフライ油との濃淡の比較により評価するので、定性的な評価に限られていた。また、フライ油の使用限度となる条件を変えたり、対象となるフライ油の種類が変わった場合には、色の異なる他の色部材を用意する必要があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、フライ油の使用限度の基準変更が容易で、フライ油の劣化度を定量的に評価することが可能なフライ油の劣化度評価用容器及びフライ油の劣化度評価方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、上部に開口部を有してフライ油を収容する容器本体と、該容器本体の内面の一部に設けられ、該内面の色とは異なり緑色、青色又は紫色に着色されたマークとを備えることを特徴としている。
また本発明は、内面に、該内面の色とは異なり緑色、青色又は紫色に着色されたマークが設けられた容器本体に、該マークを該容器本体の開口部を通じて上方から見た場合に、該マークが識別できなくなるまでフライ油を注ぐ注入工程と、該フライ油の液面から前記マークまでの深さを測定する評価工程とを有することを特徴としている。
【0007】
この発明に係るフライ油の劣化度評価用容器及びフライ油の劣化度評価方法によれば、容器本体の内面に対してマークが識別できなくなるまでフライ油を容器本体に注入し、その深さによりフライ油の劣化度を評価する。フライ油は主に黄色及び赤色からなる色を呈していて、マークは緑色、青色又は紫色に着色されているので、注がれたフライ油に対して明確にマークを識別することができる。そしてマークを容器本体の開口部を通じて上方から見た場合に、マークが識別できなくなるまでフライ油を注入した時点での、フライ油の液面からマークまでの深さがより大きな値となる。このため、フライ油の深さの測定誤差の影響が小さくなり、測定した深さに基づいてフライ油の劣化度を定量的に正確に評価することができる。
さらに、使用限度の基準やフライ油の種類を変更した場合には、使用限度と判定する深さを変更するだけで、容易に対応することができる。
【0008】
また、上記のフライ油の劣化度評価用容器において、前記マークは、JISZ8721の規定による色相環上にて、1GYから5Bを経て10RPまでの色相(H)であって、かつ、明度(V)3以上8未満、彩度(C)が4以上14以下の範囲の色に着色されていることがより好ましいとされている。
この発明に係るフライ油の劣化度評価用容器によれば、注がれたフライ油に対してマークをより明確に識別することができ、したがってフライ油の劣化度をより正確に評価することができる。
【0009】
また、上記のフライ油の劣化度評価用容器において、前記容器本体の前記内面は、白色又は白系の色に着色されていることがより好ましいとされている。
この発明に係るフライ油の劣化度評価用容器によれば、容器本体の内面に対してマークをより明確に識別することができ、フライ油の劣化度を正確に評価することができる。
【0010】
また、上記のフライ油の劣化度評価用容器において、前記容器本体の前記内面は、JISZ8721の規定による明度(V)が5以上10以下の無彩色、又は明度(V)が8以上10以下の有彩色に着色されていることがより好ましいとされている。
この発明に係るフライ油の劣化度評価用容器によれば、容器本体の内面に対してマークをより明確に識別することができる。このためフライ油の劣化度をより正確に評価することができる。
【0011】
また、上記のフライ油の劣化度評価用容器において、前記容器本体の高さをh、該容器本体の前記開口部面積をSとしたとき、(h/√S)で求められる値が0.7以上に設定されていることがより好ましいとされている。
この発明に係るフライ油の劣化度評価用容器によれば、容器本体の高さに対して容器の開口部の面積が小さくなるので、容器本体の開口部周辺から内面に設けられたマークに向けて斜めに差し込まれる外乱光や周囲の照度の影響を抑えてマークを観察することができる。これにより、フライ油の劣化度をより安定して測定できる。
【0012】
また、上記のフライ油の劣化度評価用容器において、前記容器本体の前記内面に、前記フライ油の液面から前記マークまでの深さと対応する目盛りを備えることがより好ましいとされている。
この発明に係るフライ油の劣化度評価用容器によれば、劣化度評価用容器とは別に、深さを測定するための物差し等を用意する必要が無く、フライ油の液面からマークまでの深さを容易に測定することができる。
【0013】
また本発明は、内面に、該内面の色とは異なり緑色、青色又は紫色に着色されたマークが設けられた容器本体に、該マークを容器本体の開口部を通じて上方から見た場合に、該マークが識別できなくなるまでフライ油を注ぐ注入工程と、ロビボンド法で規定した色のフライ油を基準とした目盛りから、油の劣化の程度を判別する評価工程とを有することを特徴としている。
この発明に係るフライ油の劣化度評価方法によれば、色の基準値をロビボンド法で評価し、マークを容器本体の開口部を通じて上方から見る。このため色の基準を定量的に評価することができ、フライ油の劣化度を定量的に正確に評価することができる。
【0014】
また、上記のフライ油の劣化度評価方法において、前記注入工程は、前記マークとして、JISZ8721の規定による色相環上にて、1GYから5Bを経て10RPまでの色相(H)であって、かつ、明度(V)3以上8未満、彩度(C)が4以上14以下の範囲の色に着色されたものを用いることがより好ましいとされている。
この発明に係るフライ油の劣化度評価方法によれば、マークを容器本体の開口部を通じて上方から見て、注がれたフライ油に対してマークを識別する。このため、より明確にマークを識別することができ、フライ油の劣化度をより正確に評価することができる。
【0015】
また、上記のフライ油の劣化度評価用容器において、前記マークは、前記容器本体の内側底面に設けられていることがより好ましいとされている。
また、上記のフライ油の劣化度評価方法において、前記注入工程は、前記マークを前記容器本体の内側底面に配置した状態で該マークを容器本体の開口部を通じて上方から見て、該マークの識別を行うことがより好ましいとされている。
この発明に係るフライ油の劣化度評価用容器によれば、容器本体の内側底面に配置されたマークの識別を容器本体の開口部を通じて上方から見て行うことができるので、マークが観察しやすく、フライ油の劣化度をより正確に評価することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るフライ油の劣化度評価用容器及びフライ油の劣化度評価方法によれば、フライ油の劣化度を定性的のみならず、定量的にも評価することができる。また、フライ油の種類や使用限度の基準の変更に容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に従って詳細に説明する。図1は本発明のフライ油の劣化度評価用容器の実施形態の平面図であり、図2は本発明のフライ油の劣化度評価用容器のA−A線で一部を破断した側面図である。
本実施形態の劣化度評価用容器10は、フライ油を収容する容器本体12と、容器本体12の内面16の一部に設けられ、内面16の色とは異なり緑色、青色又は紫色に着色されたマーク11とを備えている。そして容器本体12は、上部に略円形に開口した開口部18と、外側の側面に設けられた把持するための取手13と、開口部18の取手13と反対側に設けられたフライ油を注ぎだす注ぎ口14とを有している。
【0018】
本発明に使用するマーク11の色は、緑色、青色又は紫色に着色されているものであるが、緑色、青色又は紫色は、JISZ8721の規定による色相環上では、1GYから5Bを経て10RPまでの色相(H)であって、かつ、明度(V)3以上8未満、彩度(C)が4以上14以下の色である。
具体的には、緑色は、1GYから5Gを経て2BG未満までの色相(H)であって、かつ、明度(V)3以上8未満、彩度(C)が4以上14以下の色であり、青色は、2BGから5Bを経て8PB未満までの色相(H)であって、かつ、明度(V)3以上8未満、彩度(C)が4以上14以下の色であり、紫色は、8PBから10Pを経て10RPまでの色相(H)であって、かつ、明度(V)3以上8未満、彩度(C)が4以上14以下の色である。
この中でも特に、油の劣化度をより識別しやすいという点で、青色、すなわちJISZ8721の規定による色相環上では、2BGから5Bを経て8PB未満までの色相(H)であって、かつ、明度(V)3以上8未満、彩度(C)が4以上14以下の色を使用することが最も好ましい。
【0019】
また、本発明の劣化度評価用容器10の内面16の色は、白色又は白系の色であることが好ましい。
ここで、白色又は白系の色とは、JISZ8721の規定において、明度(V)が好ましくは5以上10以下、より好ましくは6以上10以下、最も好ましくは8以上10以下の無彩色、又は明度(V)が好ましくは8以上10以下、より好ましくは9以上10以下、最も好ましくは10の有彩色である。
特に、本発明の劣化度評価用容器10の内面16の色で好ましい色は、白色であり、具体的に、JISZ8721の規定で示すと、明度(V)が8以上10以下の無彩色、又は9以上10以下の有彩色である。
【0020】
また、マーク11は、容器本体12の内面16において、内側側面16bよりも内側底面16aに設けられていることがより好ましい。
また容器本体12は、高さをh、開口部18の面積をSとしたとき、(h/√S)で求められる値(以下、「(h/√S)値」と称する)が0.7以上に設定されていることがより好ましい。
また、容器本体12の内面16に、収容されるフライ油の液面から前記マーク11までの深さを表示する目盛り15aを備えることがより好ましい。
【0021】
つづいて劣化度評価用容器10を使用してフライ油の劣化度を評価する方法について説明する。図3は本実施形態のフライ油の劣化度評価方法を説明するフローチャートである。
まずステップS10の注入工程において、開口部18を通じて上方から容器本体12を見て、容器本体12の内面16に対してマーク11が識別できなくなるまで、フライ油を容器本体12に注ぎ入れ、ステップS20に移行する。
【0022】
つぎにステップS20の評価工程において、容器本体12の開口部18を通じて上方から見た場合に、マーク11が識別できなくなったときのフライ油の液面から前記マーク11までの深さ(以下、「マーク識別不能深さ」と称する)を目盛り15aから読み取る。
ここで、目盛り15aは、容器の底からの距離(cm)を示したものであり、マーク識別不能深さ(cm)を測定できるようにしたものである。
そして、例えばフライ油の使用限度をマーク識別不能深さで6.0cmと決めているとする。この場合、読み取ったマーク識別不能深さが6.0cm以下であればフライ油を交換する。また読み取ったマーク識別不能深さが8.0cmであれば、使用限度のマーク識別不能深さ6.0cmとの差である2.0cmを目安にして、そのフライ油をさらに使い続ける。
【0023】
このように、本発明の劣化度評価用容器に付ける目盛りは、容器本体の内側底面からの距離(cm)を示したものでも良いが、特にそれには限定されず、例えば、評価者が劣化したと判断する油を、本発明の容器に入れたときに、マークの識別ができなくなるときの油面部分に目盛りを付けても良く、また、ロビボンド法で規定した色のフライ油を基準として目盛りを付けても良い。前者の目盛りを用いた場合には、評価対象のフライ油が、劣化しているか否かを判別することができることから、フライ油の劣化を定性的に判別することができ、後者の目盛りを用いた場合には、評価対象のフライ油が、ロビボンド法で示される色度として、どの程度の色度のフライ油であるかを判別することができることから、フライ油の劣化を定量的に判別することができる。
【0024】
ここで、ロビボンド法で規定した色のフライ油を基準とした目盛りを付けた本発明の劣化度評価用容器について説明をする。
フライ油の劣化度を表すためのフライ油の色度の測定法として、ロビボンド法があり、例えば、ティントメーター社製のロビボンド比色計E型計測器(セル長さ:1/2インチ)を用い、フライ油の色度を測定することができる。
一般に劣化する過程におけるフライ油は主に黄色及び赤色からなる色を呈し、さらに黄色の色度よりも赤色の色度の方が劣化度への影響が10倍大きいと見なされている。そのためフライ油の劣化度は、黄色に対する色度Yと赤色に対する色度Rを用いて、(Y+10R)の式で求められる値(以下、「(Y+10R)値」と称する)で数値化できる。フライ油のこの数値は、先に説明をしたロビボンド法で測定することができる。フライ油の劣化が進むにつれて色度Y及びRの値が大きくなり、その結果(Y+10R)値も大きくなる。
【0025】
一般的な揚げ種における劣化したフライ油(交換することが望ましいフライ油)の色の目安は、(Y+10R)値で100程度であるが、劣化したフライ油の(Y+10R)値を100に限定する必要はなく、天ぷらなど薄めの揚げ色が好まれる揚げ種の場合には、100以下の値を劣化したフライ油と設定することができ、具体的には、(Y+10R)値が50の値を、劣化したフライ油の色度と設定してもよい。また、ごま油、オリーブ油、やし油等のフライ油の種類に合わせて、劣化したフライ油の(Y+10R)値を設定することができ、この場合にも(Y+10R)値を、100以外の値を設定することができる。
さらに、劣化したフライ油の色は、(Y+10R)値以外の値、例えば、(Y+5R)の式で求められる値のように、色度Y及びRの比率を変化させた値を用いて設定することもできる。
【0026】
ロビボンド法で規定した色のフライ油を基準とした目盛りの作成方法としては、例えば、菜種油(日清オイリオグループ(株)製、商品名:日清菜種サラダ油)で、フライをしてフライ油を劣化させることで、ロビボンド比色計E型計測器で測定した(Y+10R)値が50、100及び150になるフライ油を調製する。得られた(Y+10R)値が50のフライ油を、本発明の劣化度評価用容器10へ入れていき、容器本体12の開口部18を通じて上方から見た場合に、マーク11が識別できなくなったときの液面に、50の目盛りを付ける。また、(Y+10R)値が100、及び150のフライ油についても、同様の操作を行い、それぞれ100、150の目盛りを付ける。
【0027】
かかる目盛りのついた劣化度評価用容器10を使用し、劣化したフライ油の(Y+10R)値を100と設定した場合のフライ油の劣化判断の方法としては、フライ作業を行いながら、フライ油のサンプリングを行い、サンプリングしたフライ油を劣化度評価用容器10に入れる。そして、マーク11が識別できなくなったときのフライ油の界面が、100の目盛り付近であればフライ油が劣化していることが判るので、フライ油を新しいものに交換すべきであると判断でき、50目盛り付近であればもう暫く使用が可能と判断でき、150の目盛り付近であれば、フライ油の劣化度合いが高く、使用限度を超えているとの判断をすることができる。
【0028】
こうして本発明の実施形態に係るフライ油の劣化度評価用方法は、内面16の色とは異なり緑色、青色又は紫色に着色されたマーク11が識別することができなくなるまで劣化度評価用容器10に注入したフライ油の深さにより評価するので、フライ油の使用限度の判断のみならず、劣化度合いを定量的に正確に評価することができる。
また、使用限度の基準やフライ油の種類を変更した場合には、使用限度とする判定深さを変更するだけで、容易に対応することができる。
【0029】
また、マーク11が、JISZ8721の規定による色相環上にて、1GYから5Bを経て10RPまでの色相(H)であって、かつ、明度(V)3以上8未満、彩度(C)が4以上14以下の色に着色されている場合には、注がれたフライ油に対してマーク11をより明確に識別することができる。したがってフライ油の劣化度をより精度良く正確に評価することができる。
また、内面16が、JISZ8721の規定による明度(V)が5以上10以下の無彩色、又は明度(V)が8以上10以下の有彩色に着色されている場合には、容器本体12の内面16に対してマーク11をより明確に識別することができる。このためフライ油の劣化度をより正確に評価することができる。
また、マーク11が容器本体12の内側底面16aに設けられている場合には、マーク11を上方から見て色の識別を行うことができるので、照明光や反射光等の光の影響を抑えてマーク11を観察することができ、フライ油の劣化度をより正確に評価することができる。
【0030】
また、容器本体12の高さをh、容器本体12の開口部18の面積をSとしたとき、(h/√S)値が0.7以上に設定されている場合には、容器の高さに対して容器の開口部の面積が小さくなるので、容器本体の開口部18周辺から内面16に設けられたマーク11に向けて斜めに差し込まれる外乱光や周囲の照度の影響を抑えてマーク11を観察することができる。これにより、フライ油の劣化度をより正確に評価することができる。
また、容器本体12の内面16に、フライ油の液面からマーク11までの深さを表す目盛り15aを備えている場合には、劣化度評価用容器10とは別に深さを測定するための物差し等を用意する必要が無く、フライ油の液面からマーク11までの深さを容易に測定することができる。
【0031】
また容器本体12の形状の(h/√S)値が0.7以上である場合には、外乱光や周囲の照度の影響を抑えてマークを観察することができ、フライ油の劣化度をより安定して測定できる。
また容器本体12の内面16に、収容されるフライ油の液面からマーク11までの深さを表示する目盛り15aを備える場合には、フライ油の液面からマークまでの深さを容易に測定することができる。
また開口部18から観察することから、容器本体12を透明な材料で形成する必要がない。このため、容器本体12の材料を幅広く選択でき、鋼板にホーロー(琺瑯)を焼き付けたホーロー板を用いた場合には、フライ調理に使用中の200℃近い高温のフライ油の劣化度も測定することができる。なお、鋼板としては、ステンレス、鉄、アルミニウム、及び銅等を使用することができる。
【実施例】
【0032】
次に実施例1〜実施例3によるフライ油の劣化度評価用容器10を用いて、上記方法でフライ油の劣化度を測定した結果について説明する。表1に各実施例の劣化度評価用容器10の仕様を示す。実施例1〜実施例3はマーク11の着色のみ異なり、他の構成は同一となっている。
【0033】
【表1】

【0034】
容器本体12の高さhは17cmであり、開口部18は直径Dが15cmの円形をしている。このため開口部18の面積Sは176.7cm2、(h/√S)値は1.28となっている。そして図2に示すように、内側側面16bには、フライ油の液面からマーク11までの深さを表す0.5cm刻みの目盛り15aが備えられている。
また、内面16を構成する内側底面16a及び内側側面16bは、全て明度(V)が10の無彩色である白色に着色されている。
【0035】
一方、容器本体12のマーク11は、表1に示すように実施例ごとに異なる色で着色されている。それらの色の一つである青色とは、JISZ8721の規定による色相環上にて、2BGから5Bを経て8PB未満までの色相(H)の色を意味し、実施例1のマーク11は、青色の中でも色の三属性による表示により(色相 明度/彩度)の表示方法で示したとき、(10B 4/14)となる色で着色されている。同様に、実施例2及び実施例3のマーク11は、表1に示すように緑色(2.5G 7.5/8)及び紫色(7.5P 5/12)で着色されている。
【0036】
そして、これら実施例1〜実施例3の劣化度評価用容器10について、予め色度を測定したフライ油を使用して、容器本体12の内面16に対してマーク11が識別できなくなる、マーク識別不能深さを測定した。
また比較例1及び比較例2として、表1に示すように、内側底面のマークが黄色(5Y 8.5/14)及び赤色(2.5R 7/11)で着色されていて、他の構成は実施例と同一である劣化度評価用容器についても測定を行った。
【0037】
フライ油の劣化度を表すためのフライ油の色度の測定には、先述のロビボンド法(セル長さ:1/2インチ)を用い、ティントメーター社製のロビボンド比色計E型計測器を使った。本測定では、菜種油(日清オイリオグループ(株)製、商品名:日清菜種サラダ油)を用いてフライを行い、フライ油を劣化させて、フライ油の(Y+10R)値が50、100及び150になるように調製した。
【0038】
周囲の照度が500lux及び2000luxである環境下で、(Y+10R)値を50、100及び150に調整したフライ油を用いて、マーク11の色を変えてフライ油の劣化度評価試験を行った。通常、フライ食品を製造する調理室の照度は300lux〜500lux程度、細かい視作業を行う事務所でも750lux〜1500lux程度とされる。
周囲の照度が500luxである環境下での測定結果を表2に、2000luxである環境下での測定結果を表3に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
表2及び表3に示すように、本実施形態のフライ油の劣化度評価用容器10によれば、フライ油の劣化度を、目盛り15aの単位と対応した0.5cm刻みの数値として定量的に評価することができる。
また、一般的にはフライ油の使用限度は(Y+10R)値で100とされているので、以下では(Y+10R)値が100のフライ油を用いた測定結果に着目して検討する。
表2に示すように、マーク11の色が青色、緑色及び紫色である実施例1、実施例2及び実施例3については、周囲の照度が500luxである環境下で、マーク識別不能深さが5.0cm以上である。また表3に示すように、周囲の照度が2000luxである環境下ではマーク識別不能深さの値はさらに大きくなり5.5cm以上になる。
特にマーク11の色が青色である実施例1ではマーク識別不能深さの値が大きく、周囲の照度が500luxである環境下で5.5cm以上、周囲の照度が2000luxである環境下では6.5cm以上になる。
【0042】
一方、マークの色が黄色及び赤色である比較例1及び比較例2については、マーク識別不能深さは周囲の照度が500luxである環境下で1.5cm以上、周囲の照度が2000luxである環境下でも2.5cm以上しかない。
マーク識別不能深さの値が大きいほどフライ油の劣化度を精度良く測定できるので、マーク11の色は青色、緑色又は紫色が好ましく、青色が最も好ましいことがわかった。またマーク11の色が青色、緑色又は紫色である場合には、周囲の照度が500lux及び2000luxであるいずれの環境下でもフライ油の劣化度を精度良く測定できることがわかった。
【0043】
つぎに表4に示す実施例4の劣化度評価用容器10を用いて、周囲環境の照度及びフライ油の(Y+10R)値によるマーク識別不能深さの変化を測定した。
【0044】
【表4】

【0045】
(Y+10R)値を50、100及び150に調整したフライ油を用いて、周囲の照度が250、500、750、1000及び2000luxであるそれぞれの環境下でフライ油の劣化度評価試験を行った。測定結果を表5の実施例4(a)〜実施例4(e)に示す。
【0046】
【表5】

【0047】
表5に示すように、マーク11の色が青色である実施例4(a)〜実施例4(e)では、周囲の照度が250lux〜2000luxである環境下で、(Y+10R)値が100のフライ油でのマーク識別不能深さが5.5cm以上で安定していて、フライ油の劣化度を精度良く測定できることがわかった。特に周囲の照度が250lux〜1000luxである環境下では、マーク識別不能深さは周囲の照度の影響を抑えて略一定になるので、より安定して測定できることがわかった。
【0048】
最後に表4に示す、マーク11の色が青色で同一だが容器本体12の形状が異なる実施例4〜実施例9の劣化度評価用容器10を用いて、容器本体12の形状によるマーク識別不能深さの変化を測定した。容器の開口部18の面積Sに対して容器の高さhが低いと、開口部18周辺から光が差し込み、マーク11を観察し難くなる。そこで無次元数である(h/√S)値を、容器本体12の形状を表す指標とした。
(Y+10R)値を50、100及び150に調整したフライ油を用いて、周囲の照度が250、500、750及び1000luxである環境下でフライ油の劣化度評価試験を行った。測定結果を表6に示す。
【0049】
【表6】

【0050】
表6に示すように実施例4〜実施例9の劣化度評価用容器10の全てに対して、(Y+10R)値が100のフライ油でのマーク識別不能深さが5.5cm以上あり、フライ油の劣化度を精度良く測定できる。
特に実施例4〜実施例7のような(h/√S)値が0.7以上となる劣化度評価用容器10では、容器本体12の形状によらず、フライ油の劣化度が同一ならば同一のマーク識別不能深さになるので、より安定してフライ油の劣化度を測定できることがわかった。
なお周囲の照度が250、500、750及び1000luxに変化しても、実施例4〜実施例9のマーク識別不能深さに変化は無く、周囲の照度の影響を抑えてフライ油の劣化度を安定して測定することができることがわかった。
【0051】
以上のように、劣化度評価用容器10は、上部に開口部18を有してフライ油を収容する容器本体12と、容器本体12の内面16の一部に設けられ、内面16の色とは異なり緑色、青色又は紫色に着色されたマーク11とを備えるので、フライ油の劣化度を定量的に正確に評価することができる。
また、使用限度の基準やフライ油の種類を変更した場合には、使用限度と判定する深さを変更するだけで、容易に対応することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記実施例において、以下のような設計変更が可能である。
【0053】
上記実施形態では、内側側面16bに、フライ油の液面からマーク11までの深さを表す0.5cm刻みの目盛り15aが備えられるとしたが、図4に示すように、目盛りを(Y+10R)値、すなわち、ロビボンド法で規定した色のフライ油を基準とした目盛りを付けても良く、また、評価者が劣化したと判断する油を、本実施形態の容器に入れたときに、マークの識別ができなくなるときの油面部分に目盛りを付けても良い。
このようにフライ油の液面からマーク11までの深さと対応する目盛りであれば、同様にフライ油の劣化度を評価できる。
【0054】
また、上記実施形態ではマーク11を内側底面16aに備えたが、マーク11を内側側面16bに備えてもよい。容器本体12において、マーク11から開口部18までの高さがマーク識別不能深さ以上に確保されていれば、フライ油の劣化度の測定は可能だからである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のフライ油の劣化度評価用容器の実施形態の平面図である。
【図2】本発明のフライ油の劣化度評価用容器のA−A線で一部を破断した側面図である。
【図3】本発明のフライ油の劣化度評価方法の実施形態のフローチャートである。
【図4】本発明のフライ油の劣化度評価用容器の他の実施形態のA−A線で一部を破断した側面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 劣化度評価用容器
11 マーク
12 容器本体
15a 目盛り(cm)
15b 目盛り((Y+10R)値)
16 内面
16a 内側底面
18 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有してフライ油を収容する容器本体と、
該容器本体の内面の一部に設けられ、該内面の色とは異なり緑色、青色又は紫色に着色されたマークとを備えることを特徴とするフライ油の劣化度評価用容器。
【請求項2】
請求項1に記載のフライ油の劣化度評価用容器において、
前記マークは、JISZ8721の規定による色相環上にて、1GYから5Bを経て10RPまでの色相(H)であって、かつ、明度(V)3以上8未満、彩度(C)が4以上14以下の範囲の色に着色されていることを特徴とするフライ油の劣化度評価用容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフライ油の劣化度評価用容器において、
前記容器本体の前記内面は、白色又は白系の色に着色されていることを特徴とするフライ油の劣化度評価用容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のフライ油の劣化度評価用容器において、
前記容器本体の前記内面は、JISZ8721の規定による明度(V)が5以上10以下の無彩色、又は明度(V)が8以上10以下の有彩色に着色されていることを特徴とするフライ油の劣化度評価用容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のフライ油の劣化度評価用容器において、
前記マークは、前記容器本体の内側底面に設けられていることを特徴とするフライ油の劣化度評価用容器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のフライ油の劣化度評価用容器において、
前記容器本体の高さをh、該容器本体の前記開口部面積をSとしたとき、(h/√S)で求められる値が0.7以上に設定されていることを特徴とするフライ油の劣化度評価用容器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のフライ油の劣化度評価用容器において、
前記容器本体の前記内面に、前記フライ油の液面から前記マークまでの深さと対応する目盛りを備えることを特徴とするフライ油の劣化度評価用容器。
【請求項8】
内面に、該内面の色とは異なり緑色、青色又は紫色に着色されたマークが設けられた容器本体に、該マークを該容器本体の開口部を通じて上方から見た場合に、該マークが識別できなくなるまでフライ油を注ぐ注入工程と、
該フライ油の液面から前記マークまでの深さを測定する評価工程とを有することを特徴とするフライ油の劣化度評価方法。
【請求項9】
内面に、該内面の色とは異なり緑色、青色又は紫色に着色されたマークが設けられた容器本体に、該マークを該容器本体の開口部を通じて上方から見た場合に、該マークが識別できなくなるまでフライ油を注ぐ注入工程と、
ロビボンド法で規定した色のフライ油を基準とした目盛りから、該フライ油の劣化の程度を判別する評価工程とを有することを特徴とするフライ油の劣化度評価方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のフライ油の劣化度評価方法において、
前記注入工程は、前記マークとして、JISZ8721の規定による色相環上にて、1GYから5Bを経て10RPまでの色相(H)であって、かつ、明度(V)3以上8未満、彩度(C)が4以上14以下の範囲の色に着色されたものを用いることを特徴とするフライ油の劣化度評価方法。
【請求項11】
請求項10に記載のフライ油の劣化度評価方法において、
前記注入工程は、前記マークを前記容器本体の内側底面に配置した状態で該マークを容器本体の開口部を通じて上方から見て、該マークの識別を行うことを特徴とするフライ油の劣化度評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−25194(P2009−25194A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189667(P2007−189667)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】