説明

フラックスゲート式磁気センサ

【課題】 温度補償を容易に行うことが可能なフラックスゲート式磁気センサを提供する。
【解決手段】 磁気センサ素子10及び磁気センサ素子10の温度を測定するための温度センサ12を内蔵する磁気センサ1と、一端が磁気センサ1に接続され、他端が磁気センサ1の外部に導出されて磁気センサ1の外部に配置される温度調節器30に接続されるヒートパイプ32とを備える。ヒートパイプ32は非磁性体からなり、温度調節器30は全体が磁気シールド31で覆われている。温度センサ12からの測定温度に基づいて、温度調節器30によりヒートパイプ32を介して磁気センサ1に熱を供給したり、磁気センサ1から熱を奪取することにより、磁気センサ1の温度補償を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温度補償を可能にしたフラックスゲート式磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
フラックスゲート式磁気センサを温度補償するためには、
a)その磁気センサの温度特性を測定し、その温度特性に基づき補償する。
b)磁気センサ内部に温度調節器を内蔵させる。
のいずれかの方法が行われている。
【0003】
上記a)の磁気センサの温度特性を測定する方法としては、恒温槽内に磁気シールドケースを設置し、その磁気シールドケース内で磁気センサの温度特性を測っている。この種の被温度特性測定装置を恒温槽内に入れて温度特性を測定するものとして、磁気シールド筐体の開口部に対して着脱可能な送風管、筐体内の温度センサから内部空間の温度を示す電気信号を受信する温度測定器、筐体の内部空間の温度を設定する温度入力器、所定の恒温槽温度に達するまで送風管を通じて内部空間に温風又は冷風を強制対流させる送風機を備えた温度制御装置により、電磁シールド筐体内の温度を制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、上記b)の温度調整器を内蔵するものとして、電熱線ヒータを内蔵したり、ペルチニ素子を使用している。またホール素子を用いた磁気センサにおいて、第2のホール素子により温度補償を行うようにした磁気センサも開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11―134039号公報
【特許文献2】特開2004−53505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の方法では次のような問題点がある。
a)の場合、従来技術では、恒温槽内に磁気シールドケースを設置し、その磁気シールドケース中で磁気センサの温度特性を測っていたが、温度特性の誤差要因として、恒温槽及び磁気シールドケースの温度特性が加わるため、正確な磁気センサの温度特性を計測することは不可能であった。
【0007】
b)の場合、従来技術では、磁気センサに電熱線ヒータを内蔵させるか、ペルチェ素子を用いるか、のいずれかが考えられるが、電熱線ヒータ、ペルチェ素子のいずれも、それ自体が磁気を発生するため、温度特性を計測する対象である磁気センサに対しては、それらを磁気センサの近傍に配置することは出来ない。さらにフラックスゲート式磁気センサは磁気検出にホール素子を用いるものでないので、温度補償にホール素子を使い辛いという問題がある。
【0008】
また、従来の磁気センサでは、地磁気観測のために野外に設置する場合、温度変化が比較的少ない場所に設置する必要から、地中に数mの穴を掘り、この穴の中に磁気センサを設置していた。しかも、この場合、磁気センサの温度が周囲温度と同じになるまで測定ができなかった。つまり、測定開始までのウォーミングアップ時間が長かった。
【0009】
本発明は、そのような問題点に着目してなされたものであって、温度補償を容易に行うことが可能なフラックスゲート式磁気センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、この発明のフラックスゲート式磁気センサは、磁気センサ素子及び磁気センサ素子の温度特性を測定するための温度センサを内蔵するセンサ部と、一端がセンサ部に接続され、他端がセンサ外部に導出されてセンサ外部に配置される温度調節器に接続される熱媒体とを備えることを特徴とする。
【0011】
この磁気センサにおいて、熱媒体は非磁性体からなるヒートパイプであり、温度調節器は全体が磁気シールドで覆われていることが好ましい。
【0012】
またセンサ部内に熱伝導性ブロックが配置され、この熱伝導性ブロックに磁気センサ素子が配置されるとともに、この熱伝導性ブロックに温度センサが磁気センサ素子に近接して配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、次の効果が得られる。
(1)温度補償可能であるため、地磁気観測用途の場合、例えばそのまま地上に設置すればよく、地中に掘った穴の中に設置しなくてもよいため、野外での測定を簡単かつ容易に行うことができる。
(2)温度補償可能であることにより磁気センサ自身の温度を一定に保つことができるため、地磁気観測の場合、磁気センサの温度を周囲温度に直ぐに保持でき、測定開始までのウォーミングアップ時間を大幅に短縮できる。
(3)請求項2の構成とすることで、熱媒体や温度調節器からの磁気の影響を受けないので、磁気センサを利用した各種測定をより正確に行うことができる。
【0014】
4)請求項3の構成とすることで、磁気センサ素子の温度を応答性良く補償することができるだけでなく、磁気をより正確に測定できる
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施の形態により、この発明を更に詳細に説明する。
【0016】
その実施形態に係るフラックスゲート式磁気センサの要部断面図を図1に示す。
【0017】
このフラックスゲート式磁気センサ1は、内部にアルミブロック11が配置され、このアルミブロック11上に磁気センサ素子10が設けられている。磁気センサ1は外部に導出されたケーブル21を有し、ケーブル21の一端は磁気センサ素子10に接続され、他端は当該磁気センサ(センサ部)1の外部に設けられるセンサ駆動回路20に接続される。
【0018】
アルミブロック11には磁気センサ素子10の温度を測定するための温度センサ12が取り付けられている。但し、磁気センサ素子10の温度を温度センサ12により応答性良く測定できるのであれば、必ずしもアルミブロック11である必要はなく、他の良熱伝導性のもので代替可能である。また、磁気センサ素子10の温度を正確に計る意味から、温度センサ12は磁気センサ素子10にできるだけ接近させて設ける方がよい。
【0019】
また、磁気センサ1は外部に導出された熱媒体としてのヒートパイプ32とケーブル33を有する。ヒートパイプ32の一端はアルミブロック11に接続され、他端は磁気センサ1の外部に配置された温度調節器30に接続される。温度調節器30は、例えば冷熱発生源からなるものであり、磁気センサ1と磁気的に影響のない程度に離して配置されるとともに、磁気の影響が磁気センサ1に及ばないように全体が磁気シールド31で覆われている。また、ヒートパイプ32も、磁気の影響が磁気センサ1に及ばないように非磁性体で構成されている。ケーブル33の一端は温度センサ12に接続され、他端は温度調節器30に接続される。
【0020】
この磁気センサ1では、温度センサ12により磁気センサ素子10の温度を測定し、この測定値に基づいて磁気センサ1の外部の温度調節器30からヒートパイプ32を介して熱を磁気センサ1に供給したり、反対に磁気センサ1から熱を奪取したりして、磁気センサ1の温度を調整することで磁気センサ1の温度を一定に維持することができる。すなわち、この磁気センサ1は温度補償が可能なものである。なお、温度調節器30による温度調整範囲は例えば−10〜50℃である。
【0021】
この磁気センサ1によれば、ヒートパイプ32の他端を温度調節器30に接続することにより温度調節器30より温度補償が可能であるため、磁気センサ1の温度を周囲温度と同一温度に短時間で調整することができるだけでなく、その温度に容易に保持することができる。このため、特に地磁気観測の場合、例えばそのまま地上に設置すればよく、地中に掘った穴の中に設置しなくてもよいため、野外での測定を簡単かつ容易に行うことができる。また、地磁気観測の場合、磁気センサの温度を周囲温度と同じ温度に直ぐに保持できるので、測定開始までのウォーミングアップ時間を大幅に短縮できる。更に、ヒートパイプ32や温度調節器30からの磁気の影響を受けないので、磁気センサ1を利用した各種測定をより正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係るフラックスゲート式磁気センサの要部断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 (磁気センサ)センサ部
10 磁気センサ素子
11 アルミブロック
12 温度センサ
20 センサ駆動回路
30 温度調節器
31 磁気シールド
32 ヒートパイプ(熱媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサ素子とこの磁気センサ素子の温度を測定するための温度センサとを内蔵するセンサ部と、一端が前記磁気センサ素子に接続され、他端がセンサ外部に導出されてセンサ外部に配置される温度調節器に接続される熱媒体と、を備えることを特徴とするフラックスゲート式磁気センサ。
【請求項2】
前記熱媒体は非磁性体からなるヒートパイプであり、前記温度調節器は全体が磁気シールドで覆われていることを特徴とする請求項1記載のフラックスゲート式磁気センサ。
【請求項3】
前記センサ部内に熱伝導性ブロックが配置され、この熱伝導性ブロックに前記磁気センサ素子が配置されるとともに、この熱伝導性ブロックに温度センサが磁気センサ素子に近接して配置されたことを特徴とする請求項1または2記載のフラックスゲート式磁気センサ。

【図1】
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【公開番号】特開2007−304026(P2007−304026A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134599(P2006−134599)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】