説明

フラックス塗布方法、実装基板の製造方法およびフラックス塗布装置

【課題】プリント配線板の高背の電子部品が実装された領域に対しても十分にフラックスを供給することができるフラックス塗布方法を提供する。
【解決手段】フラックス塗布方法は、第1のフラックス塗布領域が形成される工程と、第2のフラックス塗布領域が形成される工程とを備え、第2のフラックス塗布領域が形成される工程では、第1のフラックス塗布領域を覆うように第2のフラックス塗布領域が形成され、第2のフラックス塗布領域が形成される工程では、第1のフラックス塗布領域を形成する工程において第1のスプレーノズル60が移動する向きとは異なる向きに第2のスプレーノズル70が移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス塗布方法、実装基板の製造方法およびフラックス塗布装置に関するものであり、より特定的には、フローはんだ付け工法に用いられるフラックス塗布方法、この塗布方法を用いた実装基板の製造方法およびこの塗布方法に用いることが可能なフラックス塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板に電子部品をはんだ付けする方法の一つとして、溶融したはんだにプリント配線板を接触させてはんだ付けするフローはんだ付け工法がある。このフローはんだ付け工法においては、プリント配線板にフラックスが塗布された後、プリント配線板に溶融したはんだを接触させることによりはんだ付けが達成される。このとき、良好なはんだ付け性を得るためには、フラックスを塗布する工程において、プリント配線板のはんだ付け対象面の全域に対して未塗布領域を生ずることなく十分にフラックスが供給されることが重要となる。
【0003】
これに対して、たとえば噴射されたフラックスを、溶液状態を保持した状態にてプリント配線板に塗布するために、フラックスを噴射するスプレーノズルとプリント配線板との距離を約30〜60mmとするフラックス塗布方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−100857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に提案されているフラックス塗布方法を含む従来のフラックス塗布方法では、プリント配線板において高背の表面実装部品が実装された領域に対しては十分にフラックスが供給されず、そのためフラックスの未塗布領域を生ずるという問題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、プリント配線板の高背の電子部品が実装された領域に対しても十分にフラックスを供給することができる、フラックス塗布方法、この塗布方法を用いた実装基板の製造方法およびこの塗布方法に用いることが可能なフラックス塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従ったフラックス塗布方法は、プリント配線板上にフラックスを塗布するためのフラックス塗布方法であって、第1のスプレーノズルがプリント配線板に面する領域を相対的に移動しつつフラックスを噴射して第1のフラックス塗布領域が形成される工程と、第2のスプレーノズルが前記プリント配線板に面する領域を相対的に移動しつつフラックスを噴射して第2のフラックス塗布領域が形成される工程とを備えている。第2のフラックス塗布領域が形成される工程では、第1のフラックス塗布領域を覆うように第2のフラックス塗布領域が形成される。また、第2のフラックス塗布領域が形成される工程では、第1のフラックス塗布領域を形成する工程において第1のスプレーノズルがフラックスを噴射しつつ移動する向きとは異なる向きに第2のスプレーノズルがフラックスを噴射しつつ移動する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従ったフラックス塗布方法によれば、プリント配線板の高背の電子部品が実装された領域に対しても十分にフラックスを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係る実装基板の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る実装基板の製造方法を示すフロー図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るフラックス塗布方法を示すフロー図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るフラックス塗布方法および塗布装置を説明するための概略上面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るフラックス塗布方法を説明するための概略上面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るフラックス塗布方法を説明するための概略上面図である。
【図7】比較例における実装基板の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図8】比較例におけるフラックス塗布方法を説明するための概略側面図である。
【図9】比較例におけるフラックス塗布方法を説明するための概略上面図である。
【図10】比較例におけるフラックス塗布方法を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
まず、図7〜図10に基づいて、一般的なフローはんだ付け工法である比較例のフローはんだ付け工法について説明する。図7を参照して、比較例のフローはんだ付け工法は、以下に示す工程により実施される。はじめに、プリント配線板200および電子部品260を準備する工程が実施される。電子部品260としては、表面実装部品240や挿入実装部品210が用いられる。表面実装部品240には、低背の表面実装部品220と高背の表面実装部品230とが含まれる。
【0012】
次に、プリント配線板200に電子部品260を載置する工程が実施される。次に、フラックス塗布装置100にて、プリント配線板200に活性化成分および溶剤を含むフラックスを塗布する工程が実施される。フラックスは、フラックス塗布装置100に備えられたスプレーノズル110より破線110aで示すように噴射され、プリント配線板200に塗布される。次に、コンベア120により搬送されたプリント配線板200は、プリヒータ300にて予備加熱される。最後に、はんだ槽400にて、フラックスが塗布されたプリント配線板200を、噴流している溶融したはんだ420に接触させることにより、電子部品260がプリント配線板200にはんだ付けされる工程が実施され、プリント配線板200への電子部品260のフローはんだ付けが完了する。
【0013】
次に、上記のフローはんだ付け工法にて実施されるフラックス塗布方法について、図7〜図9を参照して説明する。まず、フラックスを塗布する対象となるプリント配線板200が、フラックス塗布装置100に搬入される。このとき、プリント配線板200の一の端面部800と、一の端面部800と反対側の他の端面部810とは、図8に示すように搬送爪500により支持される。フラックスを塗布する工程では、図8および図9に示すように、スプレーノズル110は、プリント配線板200の搬送方向Dに対して垂直な方向D´にプリント配線板200の一の端面部800と他の端面部810との間を往復するように移動しつつ、フラックスを噴射する。これにより、プリント配線板200の一の端面部800から他の端面部810に渡り直線状のフラックス塗布領域110aが連続して形成される。
【0014】
このような比較例のフラックス塗布方法では、図10を参照して、プリント配線板200において低背の表面実装部品220や挿入実装部品210が実装された領域に対しては、十分にフラックスを供給することが可能である。しかし、高背の表面実装部品230が実装された領域に対しては十分にフラックスが供給されず、そのためフラックスの未塗布領域250を生ずるという問題がある。
【0015】
これに対し、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る実装基板の製造装置および実装基板の製造方法は、プリント配線板20に電子部品26をはんだ付けして作製される実装基板27の製造装置および実装基板の製造方法であって、以下に示す構成を有している。
【0016】
図1を参照して、本実施の形態における実装基板の製造装置は、プリント配線板20にフラックスを塗布するためのフラックス塗布装置10と、フラックスが塗布されたプリント配線板20を予備加熱するためのプリヒータ30と、予備加熱されたプリント配線板20に溶融したはんだを接触させることにより電子部品26をプリント配線板20にはんだ付けするためのはんだ槽40とを備えている。フラックス塗布装置10、プリヒータ30およびはんだ槽40は、コンベア12などの搬送装置により接続されている。この実装基板の製造装置を用いて、本実施の形態における実装基板の製造方法は以下のように実施される。
【0017】
まず図2を参照して、プリント配線板20および電子部品26を準備する工程が実施される(S10)。プリント配線板20としては、たとえばガラスクロスにエポキシ樹脂を含有させた基材が用いられるが、これに限定されるものではない。たとえば、絶縁性の基材が用いられてもよく、より具体的には、ガラス不織布、紙基材などにポリイミド樹脂、フェノール樹脂などを含有させた基材が用いられてもよい。電子部品26としては、プリント配線板20の表面に載置される表面実装部品24、プリント配線板20に形成された穴部分に挿入される挿入実装部品21などが用いられる。表面実装部品24には、低背の表面実装部品22および高背の表面実装部品23が含まれる。
【0018】
次に、電子部品26がプリント配線板20上に載置される工程が実施される(S20)。このようにして電子部品26が載置されたプリント配線板20は、たとえばコンベア12などの搬送装置に搬送されて、フラックス塗布装置10に搬入される。そして、フラックス塗布装置10において、電子部品26が載置されたプリント配線板20にフラックスが塗布される工程が実施される。この工程では、スプレーノズル11より図中の破線11aで示すようにフラックスが噴射され、噴射されたフラックスがプリント配線板20の電子部品26がはんだ付けされるべき領域全体に塗布される。フラックスとしては、標準的なRMA(Rosin Mildly Activated)タイプのものを用いることが好ましい。この工程は、プリント配線板20上において第1のフラックス塗布領域が形成される工程(S30)と、第1のフラックス塗布領域を覆うように第2のフラックス塗布領域が形成される工程(S40)とを含んでおり、各々の工程にて実施されるプロセスの詳細については後に説明する。
【0019】
次に、プリヒータ30にて、上記の工程によりフラックスが塗布されたプリント配線板20を予備加熱する工程が実施される(S50)。この工程では、コンベア12により搬送されるプリント配線板20がプリヒータ30に面する領域を通過することにより予備加熱される。
【0020】
次に、フラックスが塗布され、予備加熱されたプリント配線板20が、はんだ槽40にて溶融したはんだ42に接触することにより、電子部品26がプリント配線板20にはんだ付けされる工程が実施される(S60)。はんだ42としては、たとえば一般的な鉛フリーはんだであるSn−Ag−Cu系のはんだを用いることができるが、これに限定されるものではない。たとえば、Sn−Cu系はんだ、Sn−Bi系はんだ、Sn−In系はんだ、Sn−Sb系はんだおよびSn−Pb系はんだのうち、いずれかが用いられてもよい。また、この工程において、プリント配線板20への溶融したはんだ42の接触は、たとえば250℃の温度条件にて実施されることが好ましい。以上に示した工程により、プリント配線板20上への電子部品26のはんだ付けが完了し、プリント配線板20上にはんだ付けされた電子部品26を備える実装基板27が作製される。
【0021】
以下、上記の実装基板の製造方法にて実施されるフラックス塗布方法および塗布装置について、図3〜図6に基づいて説明する。
【0022】
図4を参照して、本実施の形態に係るフラックス塗布装置10は、プリント配線板20にフラックスを塗布するためのフラックス塗布装置である。このフラックス塗布装置10は、プリント配線板20に面する領域を相対的に移動しつつフラックスを噴射してプリント配線板20に第1のフラックス塗布領域を形成する第1のスプレーノズル60と、プリント配線板20に面する領域を相対的に移動しつつフラックスを噴射して、第1のフラックス塗布領域を覆うように第2のフラックス塗布領域を形成する第2のスプレーノズル70とを備えている。そして、第2のスプレーノズル70は、第1のスプレーノズル60が第1のフラックス塗布領域を形成する際の移動の向きとは異なる向きに相対的に移動しつつ第2のフラックス塗布領域を形成することが可能に構成されている。このフラックス塗布装置10を用いて、以下のように本実施の形態におけるフラックス塗布方法が実施される。
【0023】
図3を参照して、まず電子部品26が載置されたプリント配線板20をフラックス塗布装置10に搬入する工程が実施される(S25)。
【0024】
次に、フラックス塗布装置10に備えられた二本のスプレーノズル、具体的には第1のスプレーノズル60および第2のスプレーノズル70によりフラックスが噴射され、噴射されたフラックスがプリント配線板20に塗布される工程が実施される(S31〜34およびS41〜44)。図3および図4を参照して、この工程では、工程(S31〜34)と工程(S41〜44)とが並行して実施される。工程(S31〜34)では、第1のスプレーノズル60がプリント配線板20の下方において、その近傍であってプリント配線板20に面する領域を相対的に移動しつつフラックスを噴射して、プリント配線板20上に第1のフラックス塗布領域が形成される。工程(S41〜44)では、第2のスプレーノズル70がプリント配線板20の下方において、その近傍であってプリント配線板20に面する領域を相対的に移動しつつフラックスを噴射して、第1のフラックス塗布領域を覆うように第2のフラックス塗布領域が形成される。ここで、第1のスプレーノズル60と第2のスプレーノズル70とは、プリント配線板20の搬送方向DにおいてノズルピッチPに相当する距離を隔てて位置しており、また第1のスプレーノズル60は第2のスプレーノズル70に対して搬送方向Dの上流側に位置している。また、搬送されるプリント配線板20の一の端面部80、および一の端面部80と反対側の他の端面部81は、搬送爪50により支持されている。なお、これらの工程(S31〜S34およびS41〜S44)が実施される間、プリント配線板20は搬送速度Vpで搬送される。たとえばVpはVp=1m/minに設定されるが、これに限られるものではない。
【0025】
そして、上記の工程(S31〜34およびS41〜S44)が実施された後に、プリント配線板20はフラックス塗布装置10より搬出され(S45)、プリント配線板20上にフラックスを塗布する工程が完了する。
【0026】
次に、第1のフラックス塗布領域が形成される工程(S31〜S34)および第2のフラックス塗布領域が形成される工程(S41〜44)にて実施される各々プロセスの詳細について説明する。
【0027】
はじめに、第1のフラックス塗布領域が形成される工程(S31〜S34)について説明する。図3および図5を参照して、まず第1のスプレーノズル60が、一の端面部80から一の端面部80とは反対側の他の端面部81まで、速度Vv1にて移動距離Lに相当する距離を移動しつつフラックスを塗布する(S31)。これにより、プリント配線板20上の一範囲において第1のフラックス塗布領域60aが形成される。たとえば、速度Vv1および移動距離Lは、それぞれVv1=5m/min、L=0.5mに設定されるが、これに限られるものではない。なお、速度Vv1の向きは、プリント配線板20の搬送方向に対して垂直方向であることが好ましい。
【0028】
また、第1のスプレーノズル60は、上記のように速度Vv1で移動し、かつプリント配線板20の搬送速度Vpに等しい速度Vh1で移動する。すなわち、第1のスプレーノズル60は、速度Vh1で移動することによりプリント配線板20の搬送動作を追従しつつ、速度Vv1でプリント配線板20に対し相対的に移動してフラックスを塗布する。これにより、プリント配線板20上の一領域には、図中X軸方向に延びる直線状の第1のフラックス塗布領域60aが形成される。
【0029】
上記のプロセスが完了すると、第1のスプレーノズル60の動作は、他の端面部81の近傍の搬送爪50に面する領域にて一旦停止する(S32)。第1のスプレーノズル60の動作が停止している間にプリント配線板20は搬送速度Vpにて搬送され、第1のスプレーノズル60に対して相対的に塗布ピッチP´に相当する距離だけ移動する。
【0030】
次に、第1のスプレーノズル60が、他の端面部81から一の端面部80まで、速度−Vv1にて移動距離Lに相当する距離を移動しつつフラックスを塗布する(S33)。これにより、S31のプロセスにて形成された第1のフラックス塗布領域60aと隣り合う(部分的に重なる)、第1のフラックス塗布領域60bが形成される。
【0031】
その後、第1のスプレーノズル60の動作は、一の端面部80の近傍の搬送爪50に面する領域にて一旦停止する(S34)。第1のスプレーノズル60の動作が停止している間にプリント配線板20は搬送速度Vpにて搬送され、第1のスプレーノズル60に対して相対的に塗布ピッチP´に相当する距離だけ移動する。
【0032】
以上に示したプロセス(S31〜S34)が繰り返して実施されることにより、プリント配線板20の全体を覆うように、複数の第1のフラックス塗布領域が連続して形成される。すなわち、これらの複数の第1のフラックス塗布領域である領域60a,60bなどの組み合わせにより、プリント配線板20の全体を覆うような第1のフラックス塗布領域が形成される。
【0033】
次に、第2のフラックス塗布領域が形成される工程(S41〜S44)について説明する。第2のフラックス塗布領域が形成される工程は、基本的には第1のフラックス塗布領域を形成する工程と同様に実施される。
【0034】
まず、S31のプロセスにて第1のフラックス塗布領域60aが形成された後、第2のスプレーノズル70が、他の端面部81から一の端面部80まで、速度Vv2にて移動距離Lに相当する距離を移動しつつフラックスを塗布する(S41)。これにより、第1のフラックス塗布領域60aを覆うような第2のフラックス塗布領域70аが形成される。なお、第2のスプレーノズル70の速度Vv2の速さは、第1のスプレーノズル60の速度Vv1の速さに等しい。なお、速度Vv2の向きは、速度Vv1の向きと同様にプリント配線板20の搬送方向に対して垂直方向であることが好ましい。
【0035】
また、第1のスプレーノズル60と同様に、第2のスプレーノズル70は、速度Vv2で移動し、かつプリント配線板20の搬送速度Vpに等しい速度Vh2で移動する。そのため、第2のフラックス塗布領域70aは、第1のフラックス塗布領域60aと同様に、図中X軸方向に延びる直線状に形成される。
【0036】
上記のプロセスが完了すると、第2のスプレーノズル70の動作は、一の端面部80の近傍の搬送爪50に面する領域にて一旦停止する(S42)。第2のスプレーノズル70の動作が停止している間にプリント配線板20は搬送速度Vpにて搬送され、第2のスプレーノズル70に対して相対的に塗布ピッチP´に相当する距離だけ移動する。
【0037】
次に、第2のスプレーノズル70が、一の端面部80から他の端面部81まで、速度−Vv2にて移動距離Lに相当する距離を移動しつつフラックスを塗布する(S43)。これにより、第1のフラックス塗布領域60bを覆うような第2のフラックス塗布領域70bが形成される。
【0038】
その後、第2のスプレーノズル70の動作は、他の端面部81の近傍の搬送爪50に面する領域にて一旦停止する(S44)。第1のスプレーノズル60の動作が停止している間にプリント配線板20は搬送速度Vpにて搬送され、第1のスプレーノズル60に対して相対的に塗布ピッチP´に相当する距離だけ移動する。
【0039】
以上に示したプロセス(S41〜S44)が繰り返して実施されることにより、S31〜S34に示すプロセスにて形成された複数の第1のフラックス塗布領域の各々を覆うような、複数の第2のフラックス塗布領域が形成される。すなわち、これらの複数の第2のフラックス塗布領域である領域70a,70bなどの組み合わせにより、第1のフラックス塗布領域の全体を覆うような第2のフラックス塗布領域が形成される。
【0040】
上記の第1のフラックス塗布領域が形成される工程(S31〜S34)および第2のフラックス塗布領域が形成される工程(S41〜S44)では、第1のスプレーノズル60および第2のスプレーノズル70は、図中Y軸方向において、ノズルピッチPに相当する距離を隔てつつ移動する。また、このノズルピッチPは、自然数をn、Vv=Vv1=Vv2として、P={(L×Vp/Vv)}×nで表される値に設定されることが好ましい。上記の関係式が成立することにより、第1のスプレーノズル60によって形成される第1の塗布領域60a,60bなどのそれぞれをなぞるように第2の塗布領域70a,70bなどを形成することができる。
【0041】
また、上記の第2のフラックス塗布領域を形成する工程(S41〜44)において、第2のスプレーノズル70は、第1のフラックス塗布領域を形成する工程において、第1のスプレーノズル60がフラックスを噴射しつつ移動する向きとは異なる向きに移動しつつフラックスを噴射する。より具体的には、第2のフラックス塗布領域を形成する工程において、第2のスプレーノズル70は、第1のフラックス塗布領域を形成する工程において、第1のスプレーノズル60がフラックスを噴射しつつ移動する向きとは逆向きに移動しつつフラックスを噴射することが好ましい。たとえば、プリント配線板20の一領域に第1のフラックス塗布領域を形成する場合に第1のスプレーノズル60が移動する向きと、第2のフラックス塗布領域を形成する場合に第2のスプレーノズル70が移動する向きとは互いに異なる向きである。このとき、第1のフラックス塗布領域を形成する場合に第1のスプレーノズル60が移動する向きと、第2のフラックス塗布領域を形成する場合に第2のスプレーノズル70が移動する向きとは逆向きであることが好ましい。
【0042】
たとえば、プリント配線板20に高背の表面実装部品23が載置された領域にて、第1の塗布領域と、第1の塗布領域を覆うような第2の塗布領域とが形成される場合について説明する。この場合、第1のフラックス塗布領域の形成にて第1のスプレーノズル60が移動する向きと、第2のフラックス塗布領域の形成にて第2のスプレーノズル70が移動する向きとが同じであれば、プリント配線板20において高背の表面実装部品23の陰部となる領域には、フラックスが十分に供給されずに未塗布領域を生ずるおそれがある(図10参照)。これに対し、第1のスプレーノズル60が移動する向きと、第2のスプレーノズルが移動する向きとを互いに異なる向きに、好ましくは逆向きにすることにより、プリント配線板20において高背の表面実装部品23の陰部となる領域においても、十分にフラックスを供給することが可能になる。
【0043】
以上、本実施の形態に係るフラックス塗布方法によれば、プリント配線板20上の全体を覆うようにして第1のフラックス塗布領域が形成され、かつ第1のフラックス塗布領域の全体を覆うようにして第2のフラックス塗布領域が形成される。さらに、第1のフラックス塗布領域の形成にて第1のスプレーノズル60が移動する向きと、第2のフラックス塗布領域の形成にて第2のスプレーノズル70が移動する向きとは、互いに異なる。これにより、プリント配線板20において高背の表面実装部品23の陰部となる領域においても、十分にフラックスを供給することが可能になる。その結果、後に実施されるはんだ付けの工程において、良好なはんだ付け性を得ることが可能になる。
【0044】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のフラックス塗布方法、実装基板の製造方法およびフラックス塗布装置は、プリント配線板の高背の電子部品が実装された領域に対しても十分にフラックスを供給することが要求される、フラックス塗布方法、当該塗布方法を用いた実装基板の製造方法および当該塗布方法にて用いられるフラックス塗布装置において、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0046】
10 フラックス塗布装置、11 スプレーノズル、11a 点線、12 搬送面、20 プリント配線板、21 挿入実装部品、22 低背の表面実装部品、23 高背の表面実装部品、24 表面実装部品、26 電子部品、27 実装基板、30 プリヒータ、31 プリヒート、40 はんだ槽、50 搬送爪、60 第1のスプレーノズル、60a,60b 第1のフラックス塗布領域、70 第2のスプレーノズル、70a,70b 第2のフラックス塗布領域、80,81 端面部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板上にフラックスを塗布するためのフラックス塗布方法であって、
第1のスプレーノズルが前記プリント配線板に面する領域を相対的に移動しつつ前記フラックスを噴射して第1のフラックス塗布領域が形成される工程と、
第2のスプレーノズルが前記プリント配線板に面する領域を相対的に移動しつつ前記フラックスを噴射して第2のフラックス塗布領域が形成される工程とを備え、
前記第2のフラックス塗布領域が形成される工程では、前記第1のフラックス塗布領域を覆うように前記第2のフラックス塗布領域が形成され、
前記第2のフラックス塗布領域が形成される工程では、前記第1のフラックス塗布領域を形成する工程において前記第1のスプレーノズルが前記フラックスを噴射しつつ移動する向きとは異なる向きに、前記第2のスプレーノズルが前記フラックスを噴射しつつ移動する、フラックス塗布方法。
【請求項2】
前記第1のフラックス塗布領域が形成される工程では、前記第1のフラックス塗布領域は前記プリント配線板の全体を覆うように形成され、
前記第2のフラックス塗布領域が形成される工程では、前記第2のフラックス塗布領域は前記第1のフラックス塗布領域の全体を覆うように形成される、請求項1に記載のフラックス塗布方法。
【請求項3】
前記第2のフラックス塗布領域が形成される工程では、前記第1のフラックス塗布領域を形成する工程において前記第1のスプレーノズルが前記フラックスを噴射しつつ移動する向きとは逆向きに、前記第2のスプレーノズルが前記フラックスを噴射しつつ移動する、請求項1または2に記載のフラックス塗布方法。
【請求項4】
前記第1のフラックス塗布領域が形成される工程および前記第2のフラックス塗布領域が形成される工程では、前記プリント配線板が速度Vpにて搬送されつつ前記第1のフラックス塗布領域および前記第2のフラックス塗布領域が形成される、請求項1〜3のいずれかに記載のフラックス塗布方法。
【請求項5】
前記第1のフラックス塗布領域が形成される工程および前記第2のフラックス塗布領域が形成される工程では、前記第1のスプレーノズルおよび前記第2のスプレーノズルが速度Vpにて移動しつつ、前記第1のフラックス塗布領域および前記第2のフラックス塗布領域が形成される、請求項4に記載のフラックス塗布方法。
【請求項6】
前記第1のフラックス塗布領域が形成される工程および前記第2のフラックス塗布領域が形成される工程では、前記第1のスプレーノズルおよび前記第2のスプレーノズルは、前記プリント配線板の一の端面部から、前記一の端面部とは反対側の他の端面部まで速度Vvで移動しつつ前記フラックスを塗布した後、前記他の端面部から前記一の端面部まで速度−Vvで移動しつつ前記フラックスを塗布する、請求項1〜5のいずれかに記載のフラックス塗布方法。
【請求項7】
前記第1のフラックス塗布領域を形成する工程および前記第2のフラックス塗布領域を形成する工程では、前記第1のスプレーノズルおよび前記第2のスプレーノズルの前記プリント配線板の搬送方向における間隔であるノズルピッチPが、前記搬送方向に垂直な方向における前記第1のスプレーノズルおよび前記第2のスプレーノズルの移動距離をL、自然数をnとして、P={(L×Vp/Vv)}×nで表される、請求項6に記載のフラックス塗布方法。
【請求項8】
プリント配線板に電子部品をはんだ付けして作製される実装基板の製造方法であって、 前記プリント配線板および前記電子部品を準備する工程と、
前記電子部品が前記プリント配線板上に載置される工程と、
前記電子部品が載置された前記プリント配線板にフラックスが塗布される工程と、
前記フラックスが塗布された前記プリント配線板を溶融したはんだに接触させることにより、前記電子部品が前記プリント配線板にはんだ付けされる工程とを備え、
前記フラックスが塗布される工程では、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフラックス塗布方法により前記フラックスが塗布される、実装基板の製造方法。
【請求項9】
プリント配線板にフラックスを塗布するためのフラックス塗布装置であって、
前記プリント配線板に面する領域を相対的に移動しつつ前記フラックスを噴射して前記プリント配線板に第1のフラックス塗布領域を形成する第1のスプレーノズルと、
前記プリント配線板に面する領域を相対的に移動しつつ前記フラックスを噴射して、前記第1のフラックス塗布領域を覆うように第2のフラックス塗布領域を形成する第2のスプレーノズルとを備え、
前記第2のスプレーノズルは、前記第1のスプレーノズルが前記第1のフラックス塗布領域を形成する際の移動の向きとは異なる向きに相対的に移動しつつ前記第2のフラックス塗布領域を形成することが可能に構成されている、フラックス塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−227343(P2012−227343A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93247(P2011−93247)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】