説明

フラッシュ構造体

【課題】寸法許容性が大きく、所定の寸法(長さ)の芯材を準備しておけば異なる寸法の扉や区画にも兼用できる汎用性があり、しかも強度的にも優れた新規な構成のフラッシュ構造体を提供する。
【解決手段】左右縦框2a,2bおよび上下框3a,3bの框材からなる四周框内を横桟4a,4bおよび縦桟5a〜5fで仕切って骨組6を形成し、この骨組の表裏に面材7a,7bを貼着してなるフラッシュドア1において、框材と桟材との間または桟材同士の間に仕切られた平面視矩形状区画8a〜8i内に、骨組と略同一の幅寸法を有する長尺帯状の芯材9a〜9iが、その両端を該区画の面積を略2等分する対角位置で固定されると共に該区画の2本の対角線の交点を通過するように湾曲状に配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物のドア、引き戸、襖扉などの扉体、パーティション、家具用板材、テーブル天板などに用いられるフラッシュ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
框材や桟材で構成した骨組の表裏に面材を貼着してなるフラッシュ構造体は公知であり、建物のドア、引き戸、襖扉などの扉体、パーティション、家具用板材、テーブル天板などに広く用いられている。このフラッシュ構造体における骨組の一例が図7に示されており、左右縦框A1,A2および上下框B1,B2の框材からなる四周框内に、上下(高さ)方向に3等分する2本の横桟C1,C2を配すると共に、これら横桟C1,C2で区切られた3つの区画に各々2本の縦材と1本の横材からなる格子状の芯材D1〜D3を配して骨組Eを構成している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フラッシュ構造体は表裏の面材が骨組の框材や桟材などにわずかな面積で接合されることになり、骨組の空間が大きすぎると該空間位置で面材を押したときに面材に凹みや割れが生じやすくなり、強度的に劣るものとなる。たとえば、図7において、左右縦框A1,A2および上下框B1,B2の框材からなる四周框内に上下(高さ)方向に3等分する2本の横桟C1,C2を配しただけの骨組とした場合には、これら横桟C1,C2で区切られた各区画の面積が大きく、この区画の中央付近で面材を押したときに面材に凹みや割れが生じやすいものとなり、また、面材の接着強度も不十分になることから、該区画に格子状の芯材D1〜D3を配して骨組Eとして、骨組に所要の強度を与えている。
【0004】
しかしながら、この芯材D1〜D3は2本の縦材と1本の横材を格子状に組んでなるものであるため、横桟C1,C2で区切られた区画に対して厳密な寸法精度が要求される。また、扉の寸法や区画の大きさが異なる場合にはそれらに応じた寸法の格子状芯材Dを準備しておかなければならず、汎用性がなく、結果としてコスト増を招く。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、寸法許容性が大きく、所定の寸法(長さ)の芯材を準備しておけば異なる寸法の扉や区画にも兼用できる汎用性があり、しかも強度的にも優れた新規な構成のフラッシュ構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、請求項1に係る本発明は、左右縦框および上下框の框材からなる四周框内を縦および/または横の桟材で任意に仕切って骨組を形成し、この骨組の表裏に面材を貼着してなるフラッシュ構造体において、框材と桟材との間または桟材同士の間に仕切られた平面視矩形状区画内に、骨組厚さと略同一の幅寸法を有する長尺帯状の芯材が、その両端を該区画の面積を略2等分する対角位置で固定されると共に該区画の2本の対角線の交点を通過するように湾曲状に配されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載のフラッシュ構造体において、前記芯材が、前記平面視矩形状区画の対角線の長さより大きい長さ寸法を有し、各平面視矩形状区画の略対角位置で固定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載のフラッシュ構造体において、前記芯材が、上下および/または左右に隣接する前記平面視矩形状区画において線対称に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る本発明は、請求項1または2記載のフラッシュ構造体において、2本の前記芯材が交差した状態で各平面視矩形状区画内に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、フラッシュ構造体の骨組において框材と桟材との間または桟材同士の間に仕切られた平面視矩形状区画内に、骨組厚さと略同一の幅寸法を有する長尺帯状の芯材が、その両端を該区画の面積を略2等分する対角位置で固定されると共に該区画の2本の対角線の交点を通過するように湾曲状に配されるので、従来技術(図7)と同様に、該区画内に配される芯材が面材と接触する面積が大きくなって面材を押したときに凹みや割れが生ずることを抑制すると共に、面材の接着強度を増大させる。また、この芯材は湾曲状に配されるので、寸法許容性が大きく、所定の寸法(長さ)の芯材を準備しておけば異なる寸法の扉や区画にも兼用できる汎用性がある。また、フラッシュ構造体は骨組を組み立てた後に表裏面材を貼着することによって製造されるが、芯材の両端は固定されているので、組み立てた骨組を表裏面材貼着工程に運搬する際に芯材が脱落することがなく、取扱が容易である。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、請求項1記載のフラッシュ構造体において、平面視矩形状区画の対角線より長い芯材が各平面視矩形状区画の略対角位置で固定されているので、面材に対する接着面積がさらに大きくなって面材を押したときに凹みや割れを生ずることを抑制する効果がより大きくなる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、請求項1または2記載のフラッシュ構造体において、上下および/または左右に隣接する平面視矩形状区画において線対称に配置された湾曲心材が直線状に戻ろうとする応力が上下左右の矩形状区画同士で互いに打ち消し合うことになるため、骨組の変形を有効に防止することができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、請求項1または2記載のフラッシュ構造体において、2本の湾曲芯材が交差した状態で各平面視矩形状区画内に配置されているので、これら2本の湾曲芯材が直線状に戻ろうとする応力により、各区画を矩形状に保持する効果が得られ、骨組の変形をより効果的に防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の幾つかの実施形態について添付図面を参照して詳述する。
【実施例1】
【0015】
図1に示す実施例1によるフラッシュドア1は、左右縦框2a,2bおよび上下框3a,3bの框材からなる四周框内に、上下(高さ)方向に3等分する2本の横桟4a,4bを配すると共に、これら横桟4a,4bで区切られた各区画を左右(幅)方向に3等分する各2本の縦桟5a,5b;5c,5d;5e,5fを配して骨組6を形成し、この骨組6の表裏に面材7a,7bを貼着してなるフラッシュ構造において、四周框内においてこれら横桟4a,4bおよび縦桟5a,5b;5c,5d;5e,5fによって仕切られた計9個の同一寸法の平面視矩形状区画8a〜8iの各々に、長尺帯状の芯材9a〜9iを湾曲状に挿入配置し、それらの両端を略対角線位置にして、縦框2a,2bまたは縦桟5a,5b;5c,5d;5e,5fのいずれかに固定したものである。
【0016】
骨組6を構成する左右縦框2a,2b、上下框3a,3b、横桟4a,4bおよび縦桟5a,5b;5c,5d;5e,5fはいずれも木質材(無垢材、LVL、繊維板、パーティクルボード、合板など)からなる棒材である。表裏の面材7a,7bには、合板や繊維板などの木質板の少なくとも表面に天然突板、人工突板、合成樹脂シート、表面に木目模様などの印刷を施した合成樹脂シートなどの化粧シート状物を貼着した化粧板が一般に用いられる。
【0017】
芯材9a〜9iは、骨組6の厚さすなわち各框材2a,2b;3a,3bおよび各桟材4a,4b;5a,5b;5c,5d;5e,5fの厚さと略同一の幅寸法を有し、各平面視矩形状区画8a〜8iの対角線の長さより大きい長さ寸法を有する帯状の板材であり、主として繊維板、合板、樹脂板、段ボール紙、厚紙などを用いることができる。このような寸法の芯材9a〜9iは、各平面視矩形状区画8a〜8i内に、それらの両端を略対角線位置にして、縦框2a,2bまたは縦桟5a,5b;5c,5d;5e,5fのいずれかにタッカーなどによって固定されるので、図に示されるような湾曲状を呈することとなる。
【0018】
この実施例では、横桟4a,4bにより上下方向に3等分されたうちの上部に位置する3つの矩形状区画8a〜8cおよび下部に位置する3つの矩形状区画8g〜8iでは、芯材9a〜9c,9g〜9iが図1(b)において右上と左下の略対角線位置で両端が固定されており、中間高さ位置の3つの矩形状区画8d〜8fでは、これらとは対称的に、芯材9d〜9fが図1(b)において左上と右下の略対角線位置で両端が固定されている。このように芯材9a〜9iの配置パターンを選定することにより、芯材の形状復元力(芯材が元の直線形状に戻ろうとする力)が各框材2a,2b;3a,3bおよび各桟材4a,4b;5a,5b;5c,5d;5e,5fに対して略均等に働き、骨組6の変形を有効に防止する。芯材9a〜9iの厚さは、この形状復元力が効果的に働くように選定され、材質によって異なるが一般的に1〜8mm程度である。
【実施例2】
【0019】
図2に示す実施例2は図1に示す実施例1の変形例であり、芯材9a〜9iの配置パターンが変更されている点で異なり、その他は実施例1と同様であるので、実施例1と共通または対応する部分・要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0020】
この実施例によるフラッシュドアでは、計9個の平面視矩形状区画8a〜8iのうち、5個の矩形状区画8a,8c,8e,8g,8iでは芯材9a,9c,9e,9g,9iが図2において右上と左下の略対角線位置で両端が固定され、残り4個の矩形状区画8b,8d,8f,8hでは芯材9b,9d,9f,9hが図2において左上と右下の略対角線位置で両端が固定された配置パターンとされている。このような上下及び左右に隣接する区画間において線対称となるような芯材配置パターンとすることにより、芯材の形状復元力が各框材2a,2b;3a,3bおよび各桟材4a,4b;5a,5b;5c,5d;5e,5fに対してより均等に働き、骨組6の変形をより有効に防止する。
【実施例3】
【0021】
図3に示す実施例3によるフラッシュドア11は、左右縦框12a,12bおよび上下框13a,13bの框材からなる四周框内に、上下(高さ)方向に8等分する7本の横桟14a〜14gを配して骨組15を形成し、この骨組15の表裏に面材16a,16bを貼着してなるフラッシュ構造において、四周框内において横桟14a〜14gによって仕切られた計8個の同一寸法の平面視横長矩形状区画17a〜17hの各々に、長尺帯状の芯材18a〜18hを湾曲状に挿入配置し、それらの両端を略対角線位置にして、上下框13a,13bまたは横桟14a〜14gのいずれかに固定したものである。
【0022】
骨組15を構成する左右縦框12a,12b、上下框13a,13bおよび横桟14a〜14gはいずれも木質材(無垢材、LVL、繊維板、パーティクルボード、合板など)からなる棒材である。表裏の面材16a,16bには、合板や繊維板などの木質板の少なくとも表面に天然突板、人工突板、合成樹脂シート、表面に木目模様などの印刷を施した合成樹脂シートなどの化粧シート状物を貼着した化粧板が一般に用いられる。
【0023】
芯材18a〜18hは、骨組15の厚さすなわち各框材12a,12b;13a,13bおよび各横桟14a〜14gの厚さと略同一の幅寸法を有し、各平面視矩形状区画17a〜17hの対角線の長さより大きい長さ寸法を有する帯状の板材であり、主として繊維板、合板、樹脂板、段ボール紙、厚紙などを用いることができる。このような寸法の芯材18a〜18hは、各平面視矩形状区画17a〜17h内に、それらの両端を略対角線位置にして、上下框13a,13bまたは横桟14a〜14gのいずれかにタッカーなどによって固定されるので、図に示されるような湾曲状を呈することとなる。
【0024】
この実施例では、各矩形状区画17a〜17hにおいて、芯材18a〜18hが図2(b)において右上と左下の略対角線位置で両端が固定されている。このように芯材18a〜18hの配置パターンを選定することにより、芯材の形状復元力(芯材が元の直線形状に戻ろうとする力)が各框材2a,2b;3a,3bおよび各横桟14a〜14gに対して略均等に働き、骨組15の変形を有効に防止する。芯材18a〜18hの厚さは、この形状復元力が効果的に働くように選定され、材質によって異なるが一般的に1〜8mm程度である。
【実施例4】
【0025】
図4に示す実施例4は図3に示す実施例3の変形例であり、芯材18a〜18hの配置パターンが変更されている点で異なり、その他は実施例3と同様であるので、実施例3と共通または対応する部分・要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0026】
この実施例によるフラッシュドアでは、横桟14a〜14gで区画された計8個の平面視横長矩形状区画17a〜17hのうち、4個の矩形状区画17a,17c,17e,17gでは芯材18a,18c,18e,18gが図4において左上と右下の略対角線位置で両端が固定され、残り4個の矩形状区画17b,17d,17f,17hでは芯材18b,18d,18f,18hが図4において右上と左下の略対角線位置で両端が固定されていて、これらの対称的パターンが交互に配置されている。このような上下及び左右に隣接する区画間において線対称となるような芯材配置パターンとすることにより、芯材の形状復元力が各框材2a,2b;3a,3bおよび各横桟14a〜14gに対してより均等に働き、骨組15の変形をより有効に防止する。
【実施例5】
【0027】
図5に示す実施例5によるフラッシュドア21は、図1および図2の実施例1,2におけるフラッシュドア1,1’と同様に左右縦框2a,2b、上下框3a,3b、横桟4a,4bおよび縦桟5a,5b;5c,5d;5e,5fから骨組6が構成され、この骨組6の表裏に面材7a,7bが貼着され、四周框内においてこれら横桟4a,4bおよび縦桟5a,5b;5c,5d;5e,5fによって仕切られた計9個の同一寸法の平面視矩形状区画8a〜8iの各々に、長尺帯状の芯材が湾曲状に挿入配置されてそれらの両端が略対角線位置で固定されている点において共通しているが、この実施例では、各平面視矩形状区画8a〜8iに交差状芯材24a〜24iが湾曲状態で配置されている点に特徴がある。すなわち、既述した芯材9a〜9iと略同様の長尺帯状材22a,22bを2本用いて、それらの長さ方向における略中間に幅寸法の約半分またはそれよりわずかに大きい深さまで嵌合溝23a,23bを形成し、これらを嵌合溝23a,23b同士を嵌合させて交差状芯材24a〜24iに組み立てて、各平面視矩形状区画8a〜8iに湾曲状態で配置される(図6)。
【0028】
この実施例によれば、各平面視矩形状区画8a〜8iにおいて湾曲交差状態で配置されている交差状芯材24a〜24iの形状復元力(長尺帯状材22a,22bが元の直線形状に戻ろうとする力)が各平面視矩形状区画8a〜8iを形状保持しようとする力として働くので、結果として骨組6全体の変形をより有効に防止する。
【0029】
この実施例は、上述のように、各平面視矩形状区画8a〜8iに交差状芯材24a〜24iが湾曲状態で配置されている点を除き、その他は実施例1と同様であるので、実施例1と共通または対応する部分・要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例によるフラッシュドアの正面図(a)、表面の面材を省略した骨組の正面図(b)およびA−A断面図(c)である。
【図2】図1の実施例の変形例によるフラッシュドアから表面の面材を省略した骨組の正面図である。
【図3】本発明の他の実施例によるフラッシュドアの正面図(a)および表面の面材を省略した骨組の正面図(b)である。
【図4】図3の実施例の変形例によるフラッシュドアから表面の面材を省略した骨組の正面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施例によるフラッシュドアの正面図(a)、表面の面材を省略した骨組の正面図(b)およびA−A断面図(c)である。
【図6】図5の実施例によるフラッシュドアにおいて各矩形状区画に挿入配置される交差状芯材の組立前状態斜視図(a)および組立状態斜視図(b)である。
【図7】従来技術によるフラッシュ構造体の骨組の一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 フラッシュドア(フラッシュ構造体)
2a,2b 左右縦框
3a,3b 上下框
4a,4b 横桟
5a〜5f 縦桟
6 骨組
7a,7b 表裏の面材
8a〜8i 平面視矩形状区画
9a〜9i 芯材
11 フラッシュドア(フラッシュ構造体)
12a,12b 左右縦框
13a,13b 上下框
14a〜14g 横桟
15 骨組
16a,16b 表裏の面材
17a〜17h 平面視矩形状区画
18a〜18h 芯材
21 フラッシュドア(フラッシュ構造体)
22a,22b 長尺帯状材
23a,23b 嵌合溝
24 交差状芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右縦框および上下框の框材からなる四周框内を縦および/または横の桟材で任意に仕切って骨組を形成し、この骨組の表裏に面材を貼着してなるフラッシュ構造体において、框材と桟材との間または桟材同士の間に仕切られた平面視矩形状区画内に、骨組厚さと略同一の幅寸法を有する長尺帯状の芯材が、その両端を該区画の面積を略2等分する対角位置で固定されると共に該区画の2本の対角線の交点を通過するように湾曲状に配されることを特徴とするフラッシュ構造体。
【請求項2】
前記芯材が、前記平面視矩形状区画の対角線の長さより大きい長さ寸法を有し、各平面視矩形状区画の略対角位置で固定されていることを特徴とする、請求項1記載のフラッシュ構造体。
【請求項3】
前記芯材が、上下および/または左右に隣接する前記平面視矩形状区画において線対称に配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載のフラッシュ構造体。
【請求項4】
2本の前記芯材が交差した状態で各平面視矩形状区画内に配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載のフラッシュ構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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