説明

フラットケーブル、複合ケーブル及び吐出装置。

【課題】フラットケーブル間及びフラットケーブル内のクロストークノイズをより軽減すること。
【解決手段】FFC10a,10bの信号線11よりグランド線12の幅が太いので、信号線11とグランド線12とが同じ幅のものに比して信号線11上の信号によってグランド線12上に誘起される電圧が低くなる。また、FFC10aにFFC10bが重なっている状態であっても、FFC10aの複数の突起部14がスペーサとなってフラットケーブル同士の間隔は200μm以上となる。その結果、一方のフラットケーブルの配線と他方のフラットケーブルの配線との間の干渉が突起部14の無いものに比して小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブル、複合ケーブル及び吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、片側に突起を設けたフラットケーブルが知られている。例えば、特許文献1に記載のフラットケーブルでは、ケーブルの片面に複数の突起を設けている。こうすることで、重ねて使用する時にフラットケーブル間の間隔を十分確保し、フラットケーブル間で発生するクロストークノイズを軽減している。
【特許文献1】特開2006−309961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のフラットケーブルでは、フラットケーブル同士の間隔が確保されることでフラットケーブル間でのクロストークノイズは軽減されるものの、フラットケーブル内の隣の導線との間のクロストークノイズについては考慮されていないため、改良の余地があった。
【0004】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、フラットケーブル間及びフラットケーブル内のクロストークノイズをより軽減することのできるフラットケーブル、複合ケーブル及び吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明のフラットケーブルは、
絶縁体被覆で覆われているフラットケーブルであって、
信号線と、
前記信号線の隣に配列され該信号線よりも幅の太いグランド線と、
前記信号線と前記グランド線とが配列された側の前記絶縁体被覆の表面である配列面に形成されている複数の突起部と、
を備えたものである。
【0007】
このフラットケーブルでは、信号線よりグランド線の幅が太いので、信号線とグランド線とが同じ幅のものに比して信号線上の信号によってグランド線上に誘起される電圧が低くなる。また、他のフラットケーブルが重なっている状態であっても、複数の突起部がスペーサとなってフラットケーブル同士の間隔は一定間隔以上となる。その結果、一方のフラットケーブルの配線と他方のフラットケーブルの配線との間の干渉が突起部の無いものに比して小さくなる。したがって、フラットケーブル間及びフラットケーブル内のクロストークノイズを軽減することができる。ここで、「幅」とは、信号線及びグランド線と直角な方向のフラットケーブルの扁平方向の長さをいう。また、配列面は、例えば、信号線とグランド線とが配列された面に平行なものとしてもよい。
【0008】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記突起部は、前記グランド線の前記絶縁体被覆上に設けられているものとしてもよい。こうすれば、突起部に近い線はグランド線であるためフラットケーブルに隣接する物体との間の干渉の影響の増大を抑えられ、配列面に隣接した物体との間のクロストークノイズをより軽減することができる。ここで「物体」とは、信号を伝えることの可能なもの、例えば、電気信号線や金属筐体などをいう。
【0009】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記突起部は、前記配列面に隣接する他のフラットケーブルの前記グランド線と自己の前記信号線とが隣あう位置関係となるよう、該他のフラットケーブルの窪み部に接触する位置に設けられているものとしてもよい。こうすれば、信号線より幅の広いグランド線によって外来ノイズの影響を受けにくくして、一層クロストークノイズを軽減することができる。
【0010】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記配列面に隣接する他のフラットケーブルの突起部が接触する前記絶縁体被覆上の位置に形成されている窪み部を備えているものとしてもよい。こうすれば、配列面と平行な方向への移動が抑制され、隣り合うフラットケーブル間の干渉の度合いが安定するため、クロストークノイズをより軽減することができる。このとき、前記窪み部は、前記配列面に隣接する他のフラットケーブルの前記グランド線と自己の前記信号線とが隣りあう位置関係となるよう、該他のフラットケーブルの突起部に接触する位置に設けられているものとしてもよい。こうすれば、信号線より幅の広いグランド線によって外来ノイズの影響を受けにくくして、一層クロストークノイズを軽減することができる。または、前記窪み部は、前記絶縁体被覆上に前記信号線及び前記グランド線と同じ方向の溝として設けられているものとしてもよい。こうすることにより、配列面に隣接する他のフラットケーブルと自らとが、絶縁体被覆上に設けられた溝を案内溝として信号線及びグランド線と同じ方向に摺動可能であるので、より干渉の度合いが安定するため、より一層クロストークノイズを軽減することができる。このとき、前記窪み部は、前記信号線と前記グランド線との間に形成されている溝であるとしてもよい。こうすれば、信号線とグランド線との間の溝はフラットケーブルの作成時に形成されるものであるため、専用の窪み部を設けなくて済む。
【0011】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記突起部は、前記絶縁体被覆の表面と隣接する物体とを200μm以上離間させることの可能な高さに形成されているものとしてもよい。絶縁体被覆の表面と隣接する物体とが200μm以上離間する場合は、離間する距離の変化に対する干渉の変化の度合いが比較的小さくなるため、クロストークノイズをより一層軽減することができる。
【0012】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記信号線、前記グランド線及び前記絶縁体被覆は可撓性を有しているものとしてもよい。こうすれば、フラットケーブル自身も可撓性を有し、このようなフラットケーブルは摺動するようにして用いられる場合があるため本発明を適用する意義が高い。
【0013】
本発明の複合ケーブルは、上述したいずれかの第1のフラットケーブルと、絶縁体被覆で覆われ、信号線と該信号線の隣に配列され該信号線よりも幅の太いグランド線と配列面に隣接する前記第1のフラットケーブルの突起部が接触する前記絶縁体被覆上の位置に形成されている複数の窪み部とを備えている第2のフラットケーブルとを備えたものである。この複合ケーブルでは、上述したいずれかの第1のフラットケーブルを備えるから、本発明のフラットケーブルが奏する効果と同様の効果、例えば、フラットケーブル間及びフラットケーブル内のクロストークノイズを軽減することができるという効果や、配列面と平行な方向への移動が抑制され、隣り合うフラットケーブル間の干渉の度合いが安定するため、クロストークノイズをより軽減することができる効果などを奏する。なお、第2のフラットケーブルは、上述したいずれかの第1のフラットケーブルの態様を採用してもよい。このとき、前記信号線、前記グランド線及び前記絶縁体被覆は可撓性を有しているものとしてもよい。こうすれば、複数のフラットケーブルからなる複合ケーブルも可撓性を有し、このような複合ケーブルは摺動するようにして用いられる場合が多いため本発明を適用する意義が高い。
【0014】
本発明の吐出装置は、上述したいずれかのフラットケーブルを備え、流体をターゲットへ吐出するものである。この吐出装置では、上述したいずれかのフラットケーブルを備えるから、本発明のフラットケーブルが奏する効果と同様の効果、例えば、フラットケーブル間及びフラットケーブル内のクロストークノイズを軽減することができるという効果などを奏する。また、吐出装置にはフラットケーブルが用いられることが多いため、本発明を適用する意義が高い。ここで、「流体」とは、液体、気体及び固体であり、例えばインクなどが挙げられる。また、「ターゲット」とは、流体が吐出される対象であり、例えば、印刷媒体(紙など)などが挙げられる。更に、「吐出装置」としては、例えばプリンタなどが挙げられる。
【0015】
あるいは、本発明の吐出装置は、主走査方向に移動可能であり、複数のノズルから流体をターゲットへ吐出する吐出ヘッドと、筐体に固定され、前記ノズルから前記流体を吐出させるよう制御する制御部と、前記吐出ヘッド側と前記制御部とを接続する可撓性を有している上述のフラットケーブルとを備えるものとしてもよい。吐出装置は、可撓性を有するフラットケーブルにより、移動する吐出ヘッドと、筐体に固定された制御部とを接続することが多いため、本発明を適用する意義が高い。
【0016】
本発明の吐出装置は、上述したいずれかの複合ケーブルを備え、流体をターゲットへ吐出するものである。この吐出装置では、上述したいずれかの複合ケーブルを備えるから、本発明の複合ケーブルが奏する効果と同様の効果、例えば、フラットケーブル間及びフラットケーブル内のクロストークノイズを軽減することができるという効果などを奏する。また、プリンタには複合ケーブルが用いられることが多いため、本発明を適用する意義が高い。
【0017】
あるいは、本発明の吐出装置は、主走査方向に移動可能であり、複数のノズルから印刷記録液を印刷媒体へ吐出する吐出ヘッドと、筐体に固定され、前記ノズルから流体をターゲットへ吐出させるよう制御する制御部と、前記印刷ヘッド側と前記制御部とを接続する可撓性を有している上述の複合ケーブルとを備えるものとしてもよい。吐出装置は、可撓性を有するフラットケーブルにより、移動する吐出ヘッドと、筐体に固定された制御部とを接続することが多いため、本発明を適用する意義が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるフレキシブルフラットケーブル(FFC)10a,10bを搭載した大判プリンタ20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、FFC10a,10bの説明図であり、図2(a)はFFC10a,10bの全体図であり、図2(b)はFFC10a,10bの拡大図である。大判プリンタ20は、図1に示すように、プラテン21を図中奥から手前へ紙送りローラ22により搬送される用紙Sにインク滴を吐出して印刷を行うプリンタ機構30と、キャリッジ31へ駆動信号を入力する配線としてのフラットケーブル群10と、装置全体の制御を司る制御部50と、を備えている。この大判プリンタ20は、例えばA0などの大きな用紙Sに印刷を実行可能に構成されており、キャリッジ上にカートリッジを搭載しないいわゆるオフキャリッジ型を採用している。
【0019】
プリンタ機構30は、駆動モータ27の駆動によるキャリッジベルト23の移動に伴いガイド24に沿って左右に往復動するキャリッジ31と、各色のインクを個別に収容し図示しない供給チューブを介してキャリッジ31へインクを供給可能な図示しないカートリッジと、キャリッジ31の下部に設けられ図示しないカートリッジから供給された各インクに圧電素子により圧力をかける印刷ヘッド33と、加圧されたインクを用紙Sへ吐出する複数のノズル34とから構成されている。なお、この印刷ヘッド33は、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧して用紙Sへ吐出するものとしてもよい。
【0020】
制御部50は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、外部機器との情報のやり取りを行う図示しないインタフェース(I/F)と、図示しない入出力ポートとを備えている。この制御部50は、印刷ヘッド33を主走査方向(図1参照)に移動させるよう駆動モータ27を制御したり、ノズル34から用紙Sへインクを吐出させたり、紙送りローラ22を制御して用紙Sを副走査方向(図1参照)へ移動させたりする。また、この制御部50は、メカフレーム26に固定されている。制御部50には、ユーザPC60から出力された印刷ジョブなどがI/Fを介して入力される。また、制御部50からは、印刷ヘッド33への制御信号や駆動モータ27への駆動信号などが出力される。ここで、印刷ヘッド33へは、より大きな用紙に印刷する場合やより早く印刷しようとする場合には、単位時間あたりのデータ量の多い制御信号を出力する。
【0021】
フラットケーブル群10は、FFC10aとFFC10bとからなる。このFFC10a,10bは重ねられた位置が異なる以外は同じものであり、図1及び図2に示すように、印刷ヘッド33側であるキャリッジ31と制御部50とに接続され、複数の信号線11と、複数のグランド線12と、これらを覆う絶縁体被覆13と、複数の突起部14と、複数の窪み部15とを備えている。なお、信号線11やグランド線12はキャリッジ31を介して印刷ヘッド33に接続されている。ここで、図2では、説明の便宜のため、FFC10a及びFFC10bの断面の一部を示した。信号線11は、所定の幅(例えば0.3mm)の導体(例えば銅など)であり、可撓性を有している。グランド線12は、複数の信号線11の隣に互い違いに配列され、信号線11よりも太い幅(例えば、1.3mm)の導体(例えば銅など)であり、可撓性を有している。絶縁体被覆13は、複数の信号線11とグランド線12の周りを覆う絶縁体(例えば、ポリエステルやポリエチレンなど)である。この絶縁体被覆13は、複数の信号線11とグランド線12を互いに電気的に絶縁すると共に、それらの距離が変更されないよう支持するものである。更に、この絶縁体被覆13も可撓性を有している。よって、フラットケーブル10a,10b全体として図2の方向Aへの可撓性を有している。突起部14は、信号線11とグランド線12とが配列された側の絶縁体被覆13の表面である配列面16のうち、グランド線12の絶縁体被覆13上にドーム状に形成された絶縁体の突起であり、絶縁体被覆13と同じ材質のものである。この突起部14の高さは、200μm以上2mm以下(本実施形態では500μmとする)である。なお、この突起部14は、本実施形態では、絶縁体被覆13を信号線11やグランド線12の周りに形成する際に一体形成されるものとする。また、FFC10aの突起部14は、FFC10aの信号線11とFFC10bのグランド線12とが隣り合う位置関係となるよう、FFC10bの窪み部15と接触する絶縁体被覆13上の位置に設けられている。窪み部15は、絶縁体被覆13上に突起部14が係合することの可能な深さ(本実施形態では250μm)に形成された窪みである。FFC10bの窪み部15は、FFC10bの信号線11とFFC10aのグランド線12とが隣り合う位置関係となるよう、FFC10aの突起部14と接触する絶縁体被覆13上の位置に設けられている。本実施形態では、このFFC10bの窪み部15は、複数の信号線11及びグランド線12の配線間の絶縁体被覆上にそれらの配線に平行に形成された溝である。これは、製造過程において絶縁体被覆13が収縮する際に形成されるものである。こうして、2枚のFFC10aと10bとが重ねられた状態では、FFC10aの突起部14とFFC10bの窪み部15とが係合し、FFC10aの絶縁体被覆13の上面の突起以外の部分とFFC10bの絶縁体被覆13の下面の窪み以外の部分との間隔が所定間隔以上離れて間に空気の層ができると共に、図のB方向の移動が抑制された状態となっている。ここで、2つの導体を離間して空気の層を作ったものについてシミュレーションの結果を示す。図3は、その2つの導体の離間距離と特性インピーダンスとの関係を示す図である。この図において、グランド線は幅が1.3mmの導線であり、信号線は幅が0.3mmの導線である。この結果から200μm以上あると、離間距離の変化に対するインピーダンスの変化の度合いが比較的少なくなるため、クロストークノイズをより抑制することことができる。よって、配列面同士の間隔は、好ましくは200μm以上であり、より好ましくは300μm以上であり、最も好ましくは500μm以上である。また、配列面同士の間隔は、FFCの突起部の作成の都合上、例えば、2mm以下とするのが好ましい。ここでは、突起部14の高さが500μmで、窪み部15の深さが250μmに形成されているので、250μm以上の間隔を確保可能となっている。
【0022】
次に、こうして構成された本実施形態の大判プリンタ20の動作、特に、印刷の際にキャリッジ31が主走査方向に移動するときの動作について説明する。図4は、キャリッジ31が移動可能な範囲の一端から他端まで移動する様子の説明図である。図4(a)が、移動開始時の図、図4(b)が移動中の図、図4(c)が移動完了時の図である。キャリッジが移動すると(図4(a)〜(b)〜(c))、FFC10a,10bの曲がっている部分が徐々に移り、それに伴ってFFC10aと10bは互いに溝(窪み部15)に従って摺動する。このとき、FFC10a,10bの配列面16の間隔は、突起部14の高さと窪み部15の深さの差以上の間隔が確保されている。また、溝に従って摺動するため、配列面16に平行且つ信号線11及び信号線11より幅の太いグランド線12と直角な方向(図2の方向B)への移動も抑制される。なお、印刷ヘッド33が逆向きに移動する場合も同様である。大判プリンタ20は、印刷の際に、印刷ヘッド33が往復移動を繰り返しながら、その移動中にインクをノズル34から用紙へ吐出すると共に、いずれかの端に到達した時点で紙送りローラ22により用紙Sを副走査方向へ送りだす。このようにして用紙Sの全体への印刷を実行する。
【0023】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の窪み部15が本発明の溝に相当し、インクが印刷記録液に相当し、用紙Sが印刷媒体に相当し、印刷ヘッド33が印刷ヘッドに相当し、メカフレーム26が筐体に相当し、インクが流体に相当し、用紙Sがターゲットに相当し、印刷ヘッド33が吐出ヘッドに相当し、大判プリンタ20が吐出装置に相当する。
【0024】
以上詳述した本実施形態の大判プリンタ20のFFC10a,10bによれば、FFC10a,10bの信号線11よりグランド線12の幅が太いので、信号線11とグランド線12とが同じ幅のものに比して信号線11上の信号によってグランド線12上に誘起される電圧が低くなる。また、FFC10aにFFC10bが重なっている状態であっても、FFC10aの複数の突起部14がスペーサとなってフラットケーブル同士の間隔は200μm以上となる。その結果、一方のフラットケーブルの配線と他方のフラットケーブルの配線との間の干渉が突起部14の無いものに比して小さくなる。したがって、FFC10a,10b間及びFFC10a,10b内のクロストークノイズを軽減することができる。
【0025】
また、FFC10aの突起部14は、グランド線12の絶縁体被覆13上に設けられているから、信号線11とグランド線12との間の干渉の影響を小さくして配列面に隣接したFFC10a,10b間のクロストークノイズをより軽減することができる。更に、FFC10bは、配列面に隣接するFFC10aの突起部14が接触する絶縁体被覆13上の位置に形成された窪み部15を備えているため、配列面と平行な方向への移動が抑制され、隣り合うFFC10a、10b間の干渉の度合いが安定し、クロストークノイズをより軽減することができる。更にまた、FFC10aの突起部14は、配列面に隣接するFFC10bのグランド線12とFFC10aの信号線11とが隣り合う位置関係となるように、FFC10bの窪み部15に接触する位置に設けられているから、信号線11より幅の広いグランド線12によって外来ノイズの影響を受けにくくして、一層クロストークノイズを軽減することができる。そしてまた、FFC10bの窪み部15は、配列面に隣接するFFC10aのグランド線12とFFC10bの信号線11とが隣りあう位置関係となるよう、FFC10aの突起部14に接触する位置に設けられているから、信号線11より幅の広いグランド線12によって外来ノイズの影響を受けにくくして、一層クロストークノイズを軽減することができる。そして更に、FFC10bの窪み部15は、絶縁体被覆13上に信号線11及びグランド線12と同じ方向の溝として信号線11とグランド線12との間に形成されているから、配列面に隣接するFFC10aとFFC10bとが、絶縁体被覆13上に設けられた溝を案内溝として信号線11及びグランド線12と同じ方向に摺動可能であるので、より干渉の度合いが安定するため、より一層クロストークノイズを軽減することができる。信号線11とグランド線12との間の溝はFFC10bの作成時に形成されるものであるため、専用の窪み部を設けなくて済む。そして更にまた、FFC10aの突起部14は、絶縁体被覆13の表面と隣接するFFC10bとを200μm以上離間させることの可能な高さに形成されているから、絶縁体被覆13の表面と隣接する物体とが200μm以上離間する場合は、離間する距離の変化に対する干渉の変化の度合いが比較的小さくなるため、クロストークノイズをより一層軽減することができる。
【0026】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0027】
例えば、上述した実施形態では、FFC10a,10bの配列面16の片側にのみ突起部14を形成するものとしたが、図5(a)に示すように、FFC10a,10bの配列面の両面に突起部14を形成するフラットケーブル群110としてもよい。こうすれば、FFC10bの突起部14がFFC10aの窪み部15と係合することにより、FFC10a,10bのずれがより抑制され、より一層クロストークノイズを軽減することができる。
【0028】
上述した実施形態では、FFC10a,10bは窪み部15を有するものとしたが、窪み部15を有さないものとしてもよい。このとき、FFC10a,10bの間は、FFC10aの突起部14の高さと同じだけの間隔が形成される。なお、このとき、FFC10a,10bを重ねて使用しないとき、例えば、金属製の筐体に這わせるように単独で使用する場合は、突起部14をその筐体側に向けて使用することで、フラットケーブルの表面と筐体との間隔を突起部14の高さ以下の間隔とならないようにすることができる。よって、筐体間との干渉によるノイズを軽減することができる。なお、FFC10a,10bの信号線11,グランド線12及び絶縁体被覆13は可撓性を有さないものとしてもよい。こうした場合でも、例えば、配列面16に隣接するフラットケーブルとの間のクロストークノイズを低減することができる。
【0029】
上述した実施形態では、突起部14をグランド線12の絶縁体被覆13上に設けるものとしたが、グランド線12の絶縁体被覆13上以外の位置に設けるものとしてもよい。例えば、信号線11の絶縁体被覆13上に設けるものとしてもよいし、信号線11及びグランド線12上ではない絶縁体被覆13上に設けるものとしてもよい。
【0030】
上述した実施形態では、FFC10aの信号線11とFFC10bのグランド線12とが隣り合う位置関係となるように、FFC10bの窪み部15に接触する位置にFFC10aの突起部14を設けるものとしたが、FFC10aの信号線11とFFC10bのグランド線12とが隣り合う位置関係とならないように、FFC10bの窪み部15に接触する位置にFFC10aの突起部14を設けるものとしてもよい。例えば、FFC10a,10bの信号線11同士,グランド線12同士が隣り合うような位置関係となるように、FFC10bの窪み部15に接触する位置にFFC10aの突起部14を設けるものとしてもよい。また、FFC10a,10bの信号線11同士,グランド線12同士が隣り合うような位置関係となるように、FFC10aの突起部14に接触する位置にFFC10bの窪み部15を設けるものとしてもよい。
【0031】
上述した実施形態では、FFC10bの信号線11とグランド線12との間の溝をFFC10aの突起部14が係合する窪み部15として用いるものとしたが、信号線11とグランド線12との間の溝以外の溝をFFC10aの突起部14が係合する窪み部として用いるものとしてもよい。例えば、信号線11上やグランド線12上ではない部分に専用に設けた溝を用いるものとしてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、FFC10aの突起部14は、FFC10aの配列面16とFFC10bの配列面16との間隔を200μm以上離間することのできる高さに形成されるものとしたが、この高さに形成されるものに限られない。突起部を有していればこれらの配列面16同士が離間して空気の層が形成され、FFC10a,10b間及びFFC10a,10b内のクロストークノイズを軽減することができる。
【0033】
上述した実施形態では、本発明を信号線11とグランド線12とが互い違いに配置されたFFC10a及びFFC10bに適用することについて説明したが、少なくとも信号線11とグランド線12とが隣り合う配置となっていれば、この配置のフラットケーブルに限られない。例えば、図5(b)に示すように、2本の信号線11a,11bとそれらの信号線の隣に配置されたグランド線12とを有するフラットケーブル群210のフラットケーブル210a,210bに適用してもよい。こうした場合でも、フラットケーブル210a,210b間及びフラットケーブル210a,210b内のクロストークノイズを軽減することができる。また、2本の信号線11a,11b間のクロストークノイズを低減することもできる。
【0034】
上述した実施形態では、ドーム状の突起部14を有するものとしたが、他の形状の突起部を有するものとしてもよい。例えば、円柱状の突起部を有するものとしてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、溝状の窪み部15を有するものとしたが、他の形状の窪み部を有するものとしてもよい。例えば、図5(c)に示すように、長円状の窪み部を有するフラットケーブル群310としてもよい。この図において、フラットケーブル310a,310bは、長円状の窪み部15を有している。
【0036】
上述した実施形態では、FFC10a,10bの2つを重ねるものとしたが、3つ以上のFFCを重ねるものとしてもよいし、1つで用いるものとしてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、FFC10a,10bは同じ構造であるものとしたが、異なる構造としてもよい。このとき、隣接する配列面に形成された突起部と窪み部とが接触する位置となるように各FFCの突起部と窪み部とが形成されているものとしてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、本発明をFFC10a,10bに適用することについて説明したが、コネクタが一体となっており、複数のフラットケーブルからなる複合ケーブルに適用してもよい。例えば、図6に示す複合ケーブル410に適用してもよい。この図において、第2のフラットケーブル410bは、溝のみを有し突起を有しないものである。こうした場合でも、第1のフラットーブル410a及び第2のフラットケーブル410b間並びに第1のフラットケーブル410a及び第2のフラットケーブル410b内のクロストークノイズを軽減することができる。なお、第2のフラットケーブル410bは突起部を有していても構わない。
【0039】
上述した実施形態では、制御部50が印刷ヘッド33の駆動制御を行うものとしたが、制御部50から独立したプリンタASICが印刷ヘッド33を駆動制御するものとしてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、本発明を大判プリンタ20の印刷ヘッドとそれに制御信号を出力する制御部50との間の配線に適用することについて説明したが、大判プリンタ20の他の配線に適用してもよい。例えば、紙送りローラ22と制御部50との間の配線に適用してもよい。
【0041】
上述した実施形態では、本発明を大判プリンタ20に用いるFFC10a,10bに適用することについて説明したが、如何なる機器に用いるフラットケーブルに適用してもよい。例えば、スキャナ装置やコピー機、パーソナルコンピュータ等の電子機器の配線に用いるフラットケーブルに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】大判プリンタ20の概略構成を示す構成図。
【図2】FFC10a,10bの説明図。
【図3】離間距離に対するインピーダンスのシミュレーション結果を表すグラフ。
【図4】FFC10a,10bの動きの説明図。
【図5】他のフラットケーブルの説明図。
【図6】複合ケーブルの説明図。
【符号の説明】
【0043】
10,110,210,310 フラットケーブル群、10a,10b フレキシブルフラットケーブル(FFC)、11,11a,11b 信号線、12 グランド線、13 絶縁体被覆、14 突起部、15 窪み部、16 配列面、20 大判プリンタ、21 プラテン、22 紙送りローラ、23 キャリッジベルト、24 ガイド、26 メカフレーム、27 駆動モータ、30 プリンタ機構、31 キャリッジ、33 印刷ヘッド、34 ノズル、50 制御部、60 ユーザPC、110a,110b,210a,210b,310a,310b,410a,410b フレキシブルフラットケーブル(FFC)、410 複合ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体被覆で覆われているフラットケーブルであって、
信号線と、
前記信号線の隣に配列され該信号線よりも幅の太いグランド線と、
前記信号線と前記グランド線とが配列された側の前記絶縁体被覆の表面である配列面に形成されている複数の突起部と、
を備えたフラットケーブル。
【請求項2】
前記突起部は、前記グランド線の前記絶縁体被覆上に設けられている、請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記突起部は、前記配列面に隣接する他のフラットケーブルの前記グランド線と自己の前記信号線とが隣あう位置関係となるよう、該他のフラットケーブルの窪み部に接触する位置に設けられている、請求項1又は2に記載のフラットケーブル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のフラットケーブルであって、
前記配列面に隣接する他のフラットケーブルの突起部が接触する前記絶縁体被覆上の位置に形成されている窪み部、を備えたフラットケーブル。
【請求項5】
前記窪み部は、前記配列面に隣接する他のフラットケーブルの前記グランド線と自己の前記信号線とが隣りあう位置関係となるよう、該他のフラットケーブルの突起部に接触する位置に設けられている、請求項4に記載のフラットケーブル。
【請求項6】
前記窪み部は、前記絶縁体被覆上に前記信号線及び前記グランド線と同じ方向の溝として設けられている、請求項4又は5に記載のフラットケーブル。
【請求項7】
前記窪み部は、前記信号線と前記グランド線との間に形成されている溝である、請求項6に記載のフラットケーブル。
【請求項8】
前記突起部は、前記絶縁体被覆の表面と隣接する物体とを200μm以上離間させることの可能な高さに形成されている、請求項1〜7のいずれかに記載のフラットケーブル。
【請求項9】
前記信号線、前記グランド線及び前記絶縁体被覆は可撓性を有している、請求項1〜8のいずれかに記載のフラットケーブル。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の第1のフラットケーブルと、
絶縁体被覆で覆われ、信号線と該信号線の隣に配列され該信号線よりも幅の太いグランド線と配列面に隣接する前記第1のフラットケーブルの突起部が接触する前記絶縁体被覆上の位置に形成されている複数の窪み部とを備えている第2のフラットケーブルと、
を備えた複合ケーブル。
【請求項11】
前記信号線、前記グランド線及び前記絶縁体被覆は可撓性を有している、請求項10に記載の複合ケーブル。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載のフラットケーブルを備え、流体をターゲットへ吐出する吐出装置。
【請求項13】
主走査方向に移動可能であり、複数のノズルから流体をターゲットへ吐出する吐出ヘッドと、
筐体に固定され、前記ノズルから前記流体を吐出させるよう制御する制御部と、
前記吐出ヘッド側と前記制御部とを接続する請求項9に記載のフラットケーブルと、
を備えた吐出装置。
【請求項14】
請求項10に記載の複合ケーブルを備え、流体をターゲットへ吐出する吐出装置。
【請求項15】
主走査方向に移動可能であり、複数のノズルから流体をターゲットへ吐出する吐出ヘッドと、
筐体に固定され、前記ノズルから前記流体を吐出させるよう制御する制御部と、
前記吐出ヘッド側と前記制御部とを接続する請求項11に記載の複合ケーブルと、
を備えた吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−235180(P2008−235180A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76680(P2007−76680)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】