説明

フラットケーブルユニット、ステージ装置、露光装置およびデバイス製造方法

【課題】
静電容量の増加を抑え、耐久性が高いフラットケーブルユニットを提供する。
【解決手段】
動力線、信号線、電源線の少なくとも1つがパターン化された第1のフラットケーブル(3)と、グランドがパターン化された第2のフラットケーブル(1)と、を有するフラットケーブルユニットにおいて、前記第1のフラットケーブル(3)と、前記第2のフラットケーブル(1)との間に、絶縁材シート(2)を挿入したことを特徴とするフラットケーブルユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージの可動部用のフラットケーブルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ロボットなどに使用されている可動ステージには、複数本の電線を束ねた多芯構造のケーブルが使用されている。一般的には、ロボットケーブル又は、屈曲ケーブルなどと呼ばれている。これらのケーブルは、ステージが駆動するとともに、U字型の屈曲を行うことで、可動部との連結を行っている。ところがこれらのケーブルは、ステージ駆動時の耐久性、発塵などの問題があり、特に精密ステージを必要とするような装置には、シート型のフラットケーブルを使用している。フラットケーブルは、値段的に高価であるが、その耐久性、発塵防止性により広く使用され、精密ステージでは、さらに軽量性の理由から用いられている。
【0003】
従来例のフラットケーブルの構造を図5の全体図、図6の正面図に示す。フラットケーブル3は、薄いポリイミドなどの材料からなる絶縁材シートの上に、動力線、信号線、電源線など、用途に合わせた銅箔の真直ぐなパターンを形成し、さらに、それを覆うように薄いポリイミドなどを材料とするシートを張り合わせて製作される。
また、フラットケーブル1は、銅箔をメッシュ上にパターン化し、フラットケーブル3と同様の方法で製作され、グランドの用途で使用される。フラットケーブル1にて、フラットケーブル3を挟み込んでシールドする。フラットケーブル1とフラットケーブル3との間には空気層11が存在する。
【0004】
これらのフラットケーブル1,3は、互いに接着される事は無く、ケーブルの両端にあるコネクタ部分のみで、一括されている。このような構造のフラットケーブルは、動力線などの信号部分を伝送するためのフラットケーブル3と、クランド用途のシールドとされるフラットケーブル1が、コネクタ部以外では、分離することが可能である。
【0005】
フラットケーブルを可動ステージに実装する際は、軽量であるが、上記に示すようにばらばらになるという特徴がある。そこでステージ駆動時に、フラットケーブルが、分離して他のメカ部材に干渉したり、上手く屈曲形を描かないなどの問題が発生しないように、しっかりと固定するように実装されてきた。フラットケーブルユニット製作の際に、コネクタ部分以外も接着することも考えられるが、これを行うとU字屈曲の際のケーブルの自由度が無くなり、結果として断線すると言う耐久的な問題がある。そのため、実装時にフラットケーブルユニットの特徴を生かし、且つ、ステージ駆動に問題とならないような実装が必要とされてきた。
また、近年の液晶露光装置に置いては駆動距離も長くなることで、可動部に使用されるフラットケーブルも長くなってきたために、ステージ駆動時のフラットケーブルユニットの実装は、難しい技術になってきていた。
【0006】
フラットケーブルの磨耗を防ぐ方法としては、特許文献1にカメラ装置の回転する可動部を支持するベース部を中空にし、その中にフラットケーブルを渦巻状に配置する方法が開示されている。
また特許文献2にはフラットケーブルの先端に湾曲する曲面を形成し、曲面の端部まで導電パターンを延設する方法が開示されている。
しかしこれらの特許文献によっても、実装時にフラットケーブルユニットの特徴を生かし、且つ、ステージ駆動に問題とならないような実装方法は見つかっていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−329215号公報
【特許文献2】特開2006−114345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フラットケーブルの特徴は、軽量で、薄く屈曲性に優れているところにある。
ところが、可動ステージに使用する際は、駆動時に上記問題を起こさないようにしっかりと固定する必要がある。
その結果、ステージが駆動し、フラットケーブルが屈曲を繰り返すと、互いに接着されていないフラットケーブルとフラットケーブルの間で、磨耗が発生し薄いポリイミドシートが剥がれてしまうことがある。例えば、パターン化されている信号線が、動力線や電源線の場合は、グランドとショートしてしまうことになる。
また、ステージ駆動に合わせてしっかりと固定されたフラットケーブルは、屈曲の状態により信号線とグランド用途のシールド部分が緊密になり、静電容量が大きくなる。また、大型ステージにおいては、フラットケーブルの使用面積も大きくなり、静電容量はさらに大きくなる。
静電容量が大きくなると、伝送する信号線の周波数特性が変化し、場合により、可動ステージの性能に大幅な影響を与える可能性がある。
そこで、本発明は、静電容量の増加を抑え、耐久性が高いフラットケーブルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明のフラットケーブルユニットは、動力線、信号線、電源線の少なくとも1つがパターン化された第1のフラットケーブルと、グランドがパターン化された第2のフラットケーブルと、絶縁材と、を有するフラットケーブルユニットにおいて、前記第1のフラットケーブルと、前記第2のフラットケーブルとの間に、前記絶縁材を挿入したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、静電容量の増加を抑え、耐久性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の構成を説明する全体図である。
【図2】本発明の実施形態の構成を説明する正面図である。
【図3】本発明の実施形態の可動ステージへの実装実施例である。
【図4】本発明の実施形態の走査型投影露光装置の全体構成を示す概念図である。
【図5】従来例のフラットケーブルユニットの全体図である。
【図6】従来例のフラットケーブルユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。液晶用のガラス基板のような大型の基板にマスク(原版)のパタ−ンを転写し露光する本発明の実施形態の露光装置について説明する。図4は走査型投影露光装置の全体構成を示す概念図である。投影光学系15を挟んで垂直方向の上側にマスクステージ20が配置され、下側にプレートステージ(被露光基板ステージ)30が配置されている。これらマスクステージ20とプレートステージ30(ステージ装置)は、それぞれ可動部を備えて個別に移動可能であり、これらの移動位置はともにレーザ干渉測長器50により計測制御可能である。
【0013】
プレートステージ30は本体ベース31上に配置したYステージ32およびXステージ33を有する。なお、X方向およびY方向は互いに直交する方向とする。このXYステージ上にθZステージ34が搭載され、この上にプレートチャック35を配置し、それにより露光されるべきプレート36(物体)を支持する。従って、プレート36は、プレートステージ30によりX、YおよびZ方向に移動可能であると共にXY面内でも回転可能に支持されることになる。θZステージ34は、露光時、プレート36の表面を投影光学系15のプレート側焦点面に一致させるためのものである。投影光学系15の下部にはフォーカス検出機構42が複数個配置されている。フォーカス検出機構42はプレート36の高さ、および傾きを検出するためのものである。
【0014】
マスクステージ20は、マスクステージ基板21と、その上に配置されたXYθステージ22とを備え、この上に投影されるべきパタ−ンを有するマスク23を配置される。従って、マスク23はXおよびY方向に移動可能であると共にXY面内で回転可能に支持されることになる。マスクステージ20の上方には、マスク23とプレート36の像を投影光学系15を介して観察できる観察光学系40が配置され、さらにその上方に照明光学系41が配置されている。
【0015】
マスクステージ20およびプレートステージ30は共にレーザ干渉測長器50により位置計測制御される。レーザ干渉測長器50はレ−ザヘッド51、干渉ミラ−52,53、およびθZステージ34に取り付けられた第1の反射ミラー54とマスクステージ基板21に取り付けられた第2の反射ミラー55を有する。ここで、レーザ干渉測長器50のレーザビーム位置は、マスクステージ20については上下方向(投影光学系15の光軸方向)ではほぼ投影光学系15のマスク側焦点面に、水平面内ではほぼ投影光学系15の光軸位置に設定されている。また、プレートステージ30については水平面内ではほぼ投影光学系15の光軸位置に設定されているが、上下方向では投影光学系15のプレート側焦点面から下側に距離Lだけ変位した位置を通るように設定されている。
【0016】
本発明のフラットケーブルユニットの実施形態を図1、図2に示す。図1は全体図、図2は正面図である。グランドがパターン化されたフラットケーブル1(第2のフラットケーブル)と、動力線、信号線、電源線がパターン化されたフラットケーブル3(第1のフラットケーブル)の間に、誘電率の低い絶縁材シート2を挿入する。絶縁材シート2は、ポリイミド又は、フッ素樹脂などを材料とする。グランドがパターン化されたフラットケーブル1が、上下に有る場合は、実施形態のように、絶縁材シート2も動力線、信号線、電源線がパターン化されたフラットケーブル3を挟んで上下二層に挿入する。これら5枚のフラットケーブル1、3および絶縁材シート2を、コネクタ4にて、半田や接着剤にて一括する。一括されたものを、フラットケーブルユニットと呼び、コネクタ一体型のケーブルユニットとなる。
本実施形態の場合は、片側に3個のコネクタを示しているが、コネクタの数や種類には、制約はない。また、5枚のフラットケーブル1、3および絶縁材シート2は、コネクタ部分でのみ接着されており、他の領域では、それぞれのシートを容易に分離することが可能である。
【0017】
静電容量は、グランドがパターン化されたフラットケーブル1と動力線、信号線、電源線がパターン化されたフラットケーブル3の面積と距離に依存する。
一般式として、静電容量Cは、
C=εε0×S/d
で表されている。ここで、ε0は、真空の比誘電率、εは、絶縁材シートの比誘電率、Sは、動力線、信号線、電源線がパターン化されたフラットケーブル3の銅箔の面積、dは、絶縁材シート2の厚さとなる。
静電容量を小さくしたい場合は、上記、ε、S、dの関係で、任意のCを得ることが出来る。但し、装置が大型化しフラットケーブルユニットが全体的に大きく長くなると、Sは必然的に大きくなる。また、Sの信号の性質により、小さくすることが難しくなる。この場合は、dを操作することが考えられる。dは、絶縁材シート2の厚さなので、これの選び方で、Cを任意の値で操作できる。
【0018】
図3に、本実施形態のフラットケーブルユニットの可動ステージ10への実施例を示す。本図では、X方向、Y方向に可動できる可動ステージ10を示す。X方向可動部5(X方向の可動部)は、X方向ガイド支持台12(X方向の固定部)上のX方向ガイド6に沿って、図中X方向に駆動できる。また、X方向ガイド支持台12(Y方向の可動部)は、可動ステージ支持台13(Y方向の固定部)上のY方向ガイド9の上を、図中Y方向に駆動できる。ここで、X方向ガイド支持台12はX方向では固定部として機能し、Y方向では可動部として機能している。それぞれの可動部は、モーターなどの動力部品により電気的に駆動できるものとする。X方向可動部5がX方向に駆動する場合、X方向可動部5とX方向ガイド支持台12を接続するX方向フラットケーブルユニット7はX方向可動部5に沿ってU字に屈曲する。
【0019】
また、X方向ガイド支持台12は、Y方向ガイド9の上をY方向に駆動する。
この場合、X方向ガイド支持台12と可動ステージ支持台13を接続するY方向フラットケーブルユニット8はX方向ガイド支持台12に沿ってU字に屈曲する。
X方向フラットケーブルユニット7およびY方向フラットケーブルユニット8は複数本同時に使用される場合もあり、その場合は図3のようにケーブルの厚み方向に重ねて使用される。図3は、図1、図2に示すフラットケーブルユニットを、X方向、Y方向共に3枚重ねて使用した場合の例である。
【0020】
このとき、従来例では図5、図6に示すように、動力線、信号線、電源線がパターン化されたフラットケーブル3とグランドがパターン化されているフラットケーブル1との間がU字屈曲により、近接したり離れたりする。
離れた場合は、上記式のdは、空気層11の厚みと考えることが出来る。近接した場合は空気層11がなくなり、フラットケーブル1とフラットケーブル3が隣り合わせとなるため、dが非常に小さくなり、静電容量が非常に大きくなる。この場合、図1、図2のように、誘電率の低い絶縁材シート2を任意に選び挿入することで、近接した際のdの値を品質上必要な最小値以上に確保することが出来る。
【0021】
また、従来例では、U字屈曲により近接したり離れたりするときにフラットケーブル1と3の間で磨耗が発生する。そのため、U字屈曲を複数回行うと、破損してしまうことが考えられる。また、磨耗によりフラットケーブルの薄いポリイミドなどの絶縁部が剥がれ、パターン化されている信号線がグランドとショートすることがある。この場合も、本発明の、フラットケーブル1、3に対してすべりの効果のある絶縁材シート2を任意に選び挿入する実装を行うことで、これら磨耗によるトラブルを防止できる。
【0022】
以上から、本実施形態によれば、フラットケーブル1とフラットケーブル3が近接した場合、絶縁材シート2の厚さdを任意に選ぶことができるため、静電容量が非常に大きくなることが回避できる。また、磨耗に対してすべりの効果のある絶縁材シート2をフラットケーブル1とフラットケーブル3の間に挿入する実装を行うことで、摩擦による破損を防ぐことができる。
また本実施形態のフラットケーブルユニットの使用により、原版ステージおよび基板ステージにおいて、フラットケーブルユニット経由で、電力または信号を供給する固定部と、電力または信号が供給される可動部とが高信頼性と高耐久性で接続される。
これにより、露光装置の安定的稼動および生産性の向上を図ることができる。
【0023】
[デバイス製造方法の実施形態]
次に、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。当該方法において、本発明を適用した露光装置を使用し得る。
半導体デバイスは、ウエハ(半導体基板)に集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程とを経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を用いて、感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、その工程で露光されたウエハを現像する工程とを含み得る。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)とを含み得る。また、液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を用いて、感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、その工程で露光されたガラス基板を現像する工程とを含み得る。
本実施形態のデバイス製造方法は、デバイスの生産性、品質および生産コスト、ならびに安全性の少なくとも一つにおいて従来よりも有利である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1:グランドがパターン化されたフラットケーブル
2:絶縁材シート
3:動力線、信号線、電源線がパターン化されたフラットケーブル




























【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力線、信号線、電源線の少なくとも1つがパターン化された第1のフラットケーブルと、
グランドがパターン化された第2のフラットケーブルと、
を有するフラットケーブルユニットにおいて、
前記第1のフラットケーブルと、前記第2のフラットケーブルとの間に、絶縁材シートを挿入したことを特徴とするフラットケーブルユニット。
【請求項2】
物体を搭載して移動可能な可動部を備えるステージ装置であって、
前記可動部は請求項1に記載のフラットケーブルユニットに接続され、該フラットケーブルユニットを介して電力または信号が供給されることを特徴とするステージ装置。
【請求項3】
原版のパターンを基板に露光する露光装置であって、
請求項2に記載のステージ装置を用いて原版または基板を移動させることを特徴とする露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露光装置を用いて前記基板を露光する工程と、
前記工程で露光された前記基板を現像する工程と、
を有することを特徴とするデバイス製造方法。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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