説明

フラットパネルディスプレイの製造方法

【課題】本発明は、基板上に形成した電極や誘電体などを正確な温度で加熱処理しつつ、表示品質を維持できるフラットパネルディスプレイの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、基板を支持材31に搭載し加熱処理を行うフラットパネルディスプレイの製造方法であって、前記基板と前記支持材との間に、加熱処理温度以下で揮発する液体32を配置することを特徴とした、フラットパネルディスプレイの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示デバイスとして用いられるフラットパネルディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(以下、FPDと称する)は電極や誘電体などの微細な素子を形成した二枚のガラス基板を対向させて張り合わせることにより製造されている。FPDの微細素子を形成する方法として、パターニングした電極や誘電体などを加熱処理する技術が知られている。
【0003】
加熱処理の方法として、電極や誘電体などのパターンを形成したガラス基板を、セッターと称される板状の支持材に搭載し、高温の炉内を通過させる技術が知られている。
【0004】
ガラス基板をセッター上の正確な位置に搭載することにより、電極や誘電体などは正確な温度で加熱処理される。
【0005】
一方で、微細な素子を均一な大きさで形成するために、FPDに用いるガラス基板の形状は平滑である必要がある。平滑なガラス基板をセッター上に搭載する際には、ガラス基板とセッターとの間に空気層が形成され、搭載後のガラス基板がセッター上を移動し、結果として正確な温度で加熱処理できないという問題があった。
【0006】
空気層の形成によるガラス基板の移動を抑制する方法として、セッターに空気を透過する多孔質セラミックス焼結体を用いる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−227564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、セッターに多孔質セラミックス焼結体を用いる技術では、ガラス基板をセッター上に搭載する際に、ガラス基板に傷が発生する場合がある。よって、ガラス基板の傷によりFPDの表示品質を低下させるといった課題があった。
【0009】
ここに開示された技術は、上記課題を解決するためになされたもので、ガラス基板上に形成した電極や誘電体などを正確な温度で加熱処理しつつ、表示品質を維持できるFPDの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のFPDの製造方法は、電極や誘電体などのパターンを形成したガラス基板と、セッターとの間に、加熱処理温度以下の温度で揮発する液体を配置する。
【0011】
上記の方法によれば、ガラス基板とセッターとの間に空気層が形成されないので、ガラス基板のセッター上での移動を抑制できる。また、セッターに多孔質セラミックス焼結体を用いないので、ガラス基板に傷が発生することがない。
【発明の効果】
【0012】
上記の方法によれば、ガラス基板上に形成した電極や誘電体などを正確な温度で加熱処理しつつ、表示品質を維持できるFPDの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態にかかるFPDの構造を示す斜視図
【図2】同FPDの製造方法を示すフローチャート
【図3】同FPDの背面板の製造過程を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態)
ここでは、FPDの例として、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPとする)を挙げて説明する。焼成工程を含むFPDの製造方法に適用ができる。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置される。前面板2と背面板10の外周部がガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入される。
【0015】
前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対のストライプ状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置される。前面ガラス基板3上には、表示電極6と遮光層7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成される。さらに、誘電体層8の表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が形成される。
【0016】
また、背面ガラス基板11上には、前面板2の表示電極6と直交する方向に、複数のストライプ状のアドレス電極12が互いに平行に配置される。さらに、アドレス電極12を覆うように下地誘電体層13が形成される。さらに、アドレス電極12の間に形成された下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成される。隔壁14の間には、紫外線によって赤色に発光する蛍光体層15と、青色に発光する蛍光体層15および緑色に発光する蛍光体層15が順番に形成される。
【0017】
表示電極6とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成される。赤色に発光する蛍光体層15を有する放電セルと、青色に発光する蛍光体層15を有する放電セルと、緑色に発光する蛍光体層15を有する放電セルとによりカラー表示をする画素が形成される。
【0018】
次にPDP1の製造方法について説明する。図1に示す前面板2は、以下のように製造される。前面ガラス基板3上に、走査電極4および維持電極5と遮光層7とが形成される。表示電極6は、走査電極4および維持電極5を有する。走査電極4および維持電極5は、導電性を確保するための銀(Ag)を含む白色電極(図示せず)を有する。また、走査電極4および維持電極5は、画像表示面のコントラストを向上するため黒色顔料を含む黒色電極(図示せず)を有する。白色電極(図示せず)は、黒色電極(図示せず)に積層される。
【0019】
次に、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストがダイコート法などにより塗布される。これにより、誘電体ペースト層(図示せず)が形成される。その後、所定の時間が経過すると、誘電体ペースト層(図示せず)の表面が平坦になる。その後、誘電体ペースト層が焼成されることにより、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆う誘電体層8が形成される。
【0020】
なお、誘電体ペーストは、ガラス粉末などの誘電体ガラス、バインダおよび溶剤を含む塗料である。
【0021】
次に、誘電体層8上に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が真空蒸着法により形成される。
【0022】
以上の工程により前面ガラス基板3上に走査電極4、維持電極5、遮光層7、誘電体層8、保護層9が形成され、前面板2が完成する。
【0023】
図1に示す背面板10は、以下のように形成される。背面ガラス基板11上に、アドレス電極12が形成される。次に、背面ガラス基板11上にアドレス電極12を覆うように下地誘電体層13が形成される。次に、下地誘電体層13上に隔壁14が形成される。次に、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に蛍光体層15が形成される。
【0024】
以上の工程により、背面ガラス基板11上にアドレス電極12、下地誘電体層13、隔壁14、蛍光体層15が形成され、背面板10が完成する。
【0025】
次に、表示電極6とアドレス電極12とが直交するように、前面板2と背面板10とが対向配置される。次に、前面板2と背面板10の周囲がガラスフリットで封着される。次に、放電空間16にNe、Xeなどを含む放電ガスが封入されることによりPDP1が完成する。
【0026】
背面板10の製造方法について、図2に示すフローチャートに沿って、より詳細に説明する。
【0027】
ステップ1では、感光性電極ペースト膜(図示せず)が背面ガラス基板11上に形成される。感光性電極ペーストは、感光性樹脂を含有する有機バインダと銀などの金属粒子を主成分としガラスフリットが添加された無機物との混合物である。
【0028】
一例として、感光性電極ペーストは、平均粒径2.0μmの銀粉末を70重量部、酸化ビスマス69重量%、酸化ケイ素24重量%、酸化アルミニウム4重量%、酸化硼素3重量%の組成からなる平均粒径2.2μmのガラス粉末2重量部、アクリル酸、メチルメタクリレート、スチレンの共重合ポリマー8重量部、トリメチルアクリレート7重量部、ベンゾフェノン3重量部、ブチルカルビトールアセテート7重量部、ベンジルアルコール3重量部からなる。ここに開示された感光性電極ペーストに含まれる感光性樹脂は、紫外線などの活性光線が照射されると、光架橋、光重合、光解重合などの反応が誘起され化学構造が変化し、現像液に対して非溶解性になる。
【0029】
感光性電極ペーストは、スクリーン印刷法などにより、背面ガラス基板11上に所定の膜厚になるように塗布される。
【0030】
なお、感光性電極ペーストの塗布には、スクリーン印刷法の他にもダイコート法、ディスペンス法などが用いられる。
【0031】
次に感光性電極ペースト膜を背面ガラス基板11ごとIR(Infra Red)乾燥炉などで処理する。具体的には、IR乾燥炉は、背面ガラス基板11を100°C〜150°Cの温度範囲で、5分〜10分加熱する。IR乾燥炉は、感光性電極ペースト膜に含まれる溶剤成分などを蒸発させる。なお、感光性電極ペースト膜の乾燥には、IR乾燥炉の他にも熱風乾燥炉、ホットプレートなどが用いられる。
【0032】
ステップ2では、アドレス電極パターン(図示せず)が形成される。具体的には、所定のパターンが形成されたフォトマスクを介して感光性電極ペースト膜に活性光線が照射され、感光性電極ペースト膜の所定の領域が露光される。活性光線としては、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線などが用いられるが、紫外線が最も好ましい。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。
【0033】
次に、現像により感光性電極ペースト膜の露光された部分以外が除去される。現像後に残留した領域が、アドレス電極パターンになる。アドレス電極パターンの幅は、20〜200μmが好ましい。アドレス電極パターンの厚みは、1〜10μmが好ましい。
【0034】
本実施の形態においては、感光性電極ペースト膜の露光には、超高圧水銀灯を光源とした紫外線を用いた。感光性電極ペースト膜の現像には、炭酸ナトリウム水溶液を用いた。このようにして線幅75μm、厚み5.0μmのアドレス電極パターンが形成された。
【0035】
ステップ3では、アドレス電極パターンがキュアされる。本実施の形態においては、紫外線の照射によりアドレス電極パターンがキュアされる。ここで、紫外線ランプとしては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。
【0036】
ステップ4では、下地誘電体ペースト膜(図示せず)が形成される。具体的には、アドレス電極パターン上に、ガラス粉末と有機バインダとを主成分とするガラスペーストが塗布される。次に、乾燥炉で、下地誘電体ペースト膜を背面ガラス基板11ごと乾燥する。これにより、下地誘電体ペースト膜中の溶剤成分が除去される。ガラスペーストは、酸化ビスマス78重量%、酸化ケイ素14重量%、酸化アルミニウム3重量%、酸化亜鉛3重量%、酸化硼素2重量%からなる低融点ガラス粉末を60重量部、平均粒径0.3μmの酸化チタン粉末を10重量部、エチルセルロースを15重量部、テルピネオールを15重量部からなる。ガラスペーストを塗布する方法としては、スクリーン印刷法、ディスペンサー法、バーコート法などを用いることができる。下地誘電体ペースト膜の乾燥には、IR炉、熱風乾燥炉、ホットプレートなどを用いることができる。下地誘電体ペースト膜の厚みは、3〜30μmが好ましい。
【0037】
ステップ5では、隔壁パターン(図示せず)が形成される。具体的には、低融点ガラスやセラミックスなどの無機成分と感光性樹脂を含有する有機バインダとを主成分とする隔壁ペーストを塗布・乾燥する。その後、フォトマスクを介して所望のパターンを露光し、未硬化部分を現像除去する。また、塗布・乾燥した隔壁ペースト上にレジスト膜を形成し、レジストの露光・現像除去後にサンドブラストを実施する手法を用いることもできる。隔壁パターンは格子状であることが好ましいが、ストライプ状であってもよい。隔壁パターン幅としては、10〜150μmで形成するのが好ましく、厚みとしては、80〜200μmで形成するのが好ましい。
【0038】
ステップ6では、アドレス電極パターン、下地誘電体ペースト膜、隔壁パターンが焼成される。焼成炉としては、バッチ処理式や連続搬送式の炉を使用することができる。空気中、窒素、水素等の雰囲気中で400〜800℃で同時に焼成する。
【0039】
具体的には、図3(a)に示すように、結晶化ガラスからなるセッター(支持体)31の上に、液体32を配置する。セッター31は背面ガラス基板11よりも大きいことが好ましい。アドレス電極パターン、下地誘電体ペースト膜、隔壁パターンを形成した背面ガラス基板11を、液体32の配置されたセッター31上に搭載する。背面ガラス基板11はセッター31と液体32を介して接触するため、背面ガラス基板11とセッター31との間には空気層が形成されない。
【0040】
これにより、背面ガラス基板11とセッター31を焼成炉内に投入するために移動させた際にも、背面ガラス基板11のセッター31上での移動を抑制することができる。よって、背面ガラス基板11をセッター31上の正確な位置で焼成し、アドレス電極パターン、下地誘電体ペースト膜、隔壁パターンを正確な温度で焼成することができる。これによりアドレス電極12、下地誘電体層13、隔壁14が形成される。
【0041】
液体32としては、加熱処理温度以下の温度で揮発する、例えば純水やエタノールなどを用いることができる。本実施の形態においては、液体32として純水を配置した。
【0042】
また、図3(b)に示すように、背面ガラス基板11のセッター搭載面側に液体32を付着させた後、セッター31上に搭載しても良い。また、図3(c)に示すように、液体32は複数個所に配置しても良い。要するに背面ガラス基板11とセッター31との間に空気層が形成されなければよい。
【0043】
ステップ7では、隔壁14間に蛍光体層15を形成する。蛍光体粉末と有機バインダを主成分とする蛍光体ペースト(図示せず)を、スクリーン印刷法やディスペンサー法を使用して所定の部位に塗布する。蛍光体ペースト(図示せず)の乾燥には、IR炉、熱風乾燥炉、ホットプレートなどを用いることができる。蛍光体ペーストを塗布・乾燥した後400〜550℃で焼成する。これにより蛍光体層15が形成される。
【0044】
本実施の形態のFPDの製造方法は、基板である背面ガラス基板11上に電極ペースト膜である感光性電極ペースト膜を形成するステップ1と、感光性電極ペースト膜を露光および現像することにより電極パターンであるアドレス電極パターンを形成するステップ2と、アドレス電極パターンをキュアするステップ3と、アドレス電極パターンを覆う誘電体膜である下地誘電体ペースト膜を形成するステップ4と、隔壁ペーストを塗布・乾燥し露光・現像することにより隔壁パターンを形成するステップ5と、アドレス電極パターン、下地誘電体ペースト膜、隔壁パターンを焼成するステップ6と、を含む。アドレス電極パターン、下地誘電体ペースト膜、隔壁パターンを焼成するステップ6は、背面ガラス基板11とセッター31との間に、加熱処理温度以下の温度で揮発する液体32を配置する。
【0045】
このような方法によれば、背面ガラス基板11とセッター31との間に空気層が形成されないので、背面ガラス基板11のセッター31上での移動を抑制できる。また、セッター31に多孔質セラミックス焼結体を用いないので、背面ガラス基板11に傷が発生することがない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ガラス基板上に形成した電極や誘電体などを加熱処理する際に、正確な温度で加熱処理しつつ、FPDの表示品質を維持できるのでFPDの製造などに有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
31 セッター
32 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持材に搭載し加熱処理を行うフラットパネルディスプレイの製造方法であって、
前記基板と前記支持材との間に、
加熱処理温度以下で揮発する液体を配置することを特徴とした、
フラットパネルディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−11640(P2013−11640A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142563(P2011−142563)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】