説明

フラット回路体組付け構造

【課題】フラット回路体とフラット回路体が巻かれる巻き付け部との間にゆるみが発生することを防止でき、それに加えて、防水性を高めることができる。
【解決手段】貫通孔22を設けた基壁21と、基壁の裏側面に設けられ、貫通孔22を互いの間に位置付ける一対の凸部23a、23bと、基壁の表側面に設けられ相手方ハウジング8を嵌合させる周壁24と、を有するハウジング2と、周壁内に突出する巻き付け部31と、一対の凸部に嵌る円孔42aと長孔42bとで成る一対の孔42a、42bが長手方向に間隔をあけて設けられ、凸部23aから凸部23bに巻き付け部に沿って架け渡されるフラット回路体としてのFPC4と、を備え、巻き付け部はFPC4を突出方向に付勢する弾性体で構成され、FPC4が引っ張られた状態で凸部23bに長孔42bが引っ掛けられる構成のフラット回路体の組付け構造1を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラット回路体をハウジングに組み付けてコネクタを構成するフラット回路体組付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば絶縁性フィルム上に電気導体を焼き付けて形成するフレキシブル・プリント・配線基壁(以下、FPCと記す)や、互いに平行配置された複数本の導体を絶縁被覆して成るフレキシブル・フラット・ケーブル等のフラット回路体は、その構造から狭い箇所での配策を可能にするとともに、可撓性を有する特性から可動部位に使用できるものとして、自動車の電装品を繋ぐワイヤハーネスや、電算機など各種機器類に多用されている。
【0003】
ところで、これらフラット回路体は回路自体が可撓性を有するため、コネクタ接続する場合に、その端末がリジットな状態に端子化される必要がある(特許文献1、特許文献2参照)。図16は、従来のコネクタ構造を示す断面図である。図16に示すように、特許文献1に記載された従来のコネクタ構造100は、複数の接続端子125と、これら接続端子125を収容する複数の端子収容室126を有するコネクタハウジング121と、該端子収容室126内に嵌装される複数の平板部151を有するホルダ105と、該ホルダ105に保持されるフラット回路体としてのFPC101と、を備えている。
【0004】
上記ホルダ105は、複数の基体部150と、各基体部150からコネクタハウジング121に向かって延びた複数の平板部151と、を備えている。上記複数の平板部151それぞれには一対の固定ピン110が設けられている。上記一対の固定ピン110は、平板部151の基体部150側の端部(付根)に設けられている。また、一対の固定ピン110は、平板部151の表側面、及び、裏側面に設けられ、互いに離れる方向に凸である。
【0005】
上記FPC101は、所定回路を構成する複数の導体(図示しない)が絶縁性フィルム(図示しない)上に焼き付けられており、複数の導体は絶縁性シート(符号101で代用)によって覆われている。また、FPC101には導体が互いに所定間隔を有して平行配置された導電部が形成されている。この導電部における導体間の絶縁性フィルムには、各平板部151の一対の固定ピン110に挿通される一対の取付孔102が形成されている。FPC101は、各平板部151の各固定ピン110にFPC101の各取付孔102が挿通されることにより、ホルダ105に組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−68189号公報
【特許文献2】特開2002−124326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来のコネクタ構造100には以下に示す問題点があった。即ち、従来のコネクタ構造100は、ホルダ105の各固定ピン110と、FPC101の各取付孔102と、の位置ずれによって、FPC101と該FPC101が巻かれるホルダ105との間にゆるみが生じてしまう虞れがあるという問題があった。FPC101と該FPC101が巻かれるホルダ105との間にゆるみが生じてしまうと、FPC101と相手方の接続端子125との接触不良が生じてしまったり、FPC101が接続端子125で傷んでしまう虞れがあるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題にかかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、フラット回路体と該フラット回路体が巻かれる巻き付け部との間にゆるみが発生することを防止でき、それに加えて、防水性を高めることができるフラット回路体組付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、貫通孔が設けられた基壁と、該基壁の裏側面に設けられ、前記貫通孔を互いの間に位置付ける一対の凸部と、該基壁の表側面に設けられ、相手方ハウジングを嵌合させる周壁と、を有するハウジングと、前記周壁内に突出する巻き付け部と、前記一対の凸部に嵌る長孔を含む一対の孔部が長手方向に間隔をあけて設けられ、一方の凸部から他方の凸部に前記巻き付け部に沿って架け渡されるフラット回路体と、を備え、前記巻き付け部は、前記フラット回路体を突出方向に付勢する弾性体で構成され、前記フラット回路体が引っ張られた状態で前記他方の凸部に前記長孔が引っ掛けられることを特徴とするフラット回路体組付け構造である。
【0010】
上記構成により、フラット回路体が引っ張られ、弾性体で構成された巻き付け部が圧縮され、該圧縮反力でフラット回路体を引張反対方向に押圧する。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記巻き付け部の前記基壁側の端部に当接し、前記貫通孔を塞ぐ弾性の栓部を備え、該栓部は、前記貫通孔よりも断面積が大きいことを特徴とする。
【0012】
上記構成により、弾性の栓部が貫通孔に圧入されて密着する。
【0013】
請求項3記載の本発明は、請求項2記載の本発明において、前記基壁には、前記貫通孔及び前記一対の凸部を囲うようにリブが立設され、該リブの内側にシリコーンが流し込まれることを特徴とする。
【0014】
上記構成により、液状のシリコーンが枠状のリブ内に充填されて、常温設置で硬化される。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記巻き付け部の周囲に鍔部が設けられ、フラット回路体挿通用のスリットが該鍔部における前記巻き付け部の両側に一対設けられ、前記鍔部が前記基壁の表側面に当接することを特徴とする。
【0016】
上記構成により、ハウジングの表側から巻き付け部が組み付けられ、フラット回路体の引っ張り時に鍔部が基壁に当接して引っ張り力を受け止める。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、前記巻き付け部は、前記フラット回路体を突出方向に付勢する弾性体で構成され、前記フラット回路体が引っ張られた状態で前記他方の凸部に前記長孔が引っ掛けられるので、フラット回路体と巻き付け部との間にゆるみが発生することを防ぎ、フラット回路体と相手方の端子との接触不良を防止することができるとともに、フラット回路体が傷んでしまうことを防止することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、前記巻き付け部の前記基壁側の端部に当接し、前記貫通孔を塞ぐ弾性の栓部を備え、該栓部は、前記貫通孔よりも断面積が大きいので、水などの液体が貫通孔から基壁の表側、及び、基壁の裏側に侵入することを、確実に防止できる。
【0019】
請求項3の本発明によれば、前記基壁には、前記貫通孔及び前記一対の凸部を囲うようにリブが立設され、該リブの内側にシリコーンが流し込まれるので、水などの液体が貫通孔から基壁の表側、及び、基壁の裏側に侵入することを、より一層、確実に防止できる。
【0020】
請求項4の本発明によれば、記巻き付け部の周囲に鍔部が設けられ、フラット回路体挿通用のスリットが該鍔部における前記巻き付け部の両側に一対設けられ、前記鍔部が前記基壁の表側面に当接するので、鍔部を基壁の表側面に当接させる容易な作業で巻き付け部をハウジングに組み付けることができ、組付け作業性の向上を図ることができる。また、フラット回路体の引っ張り時に鍔部が基壁に当接して引っ張り力を受け止めるので、フラット回路体を強く引っ張ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかるフラット回路体組付け構造の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示されたフラット回路体組付け構造におけるコネクタに相手方コネクタが嵌合した状態を示す断面図である。
【図3】図2に示されたコネクタを構成するハウジングの表側を示す斜視図である。
【図4】図3に示されたハウジングの裏側を示す斜視図である。
【図5】図3に示されたハウジングに液状のシリコーンが流し込まれた状態を示す斜視図である。
【図6】図2に示されたコネクタを構成する配策部材を示す斜視図である。
【図7】図5に示された配策部材を別の角度から見た斜視図である。
【図8】図6に示された配策部材がハウジングに配置された状態を示す斜視図である。
【図9】図2に示されたコネクタを構成するFPCを示す斜視図である。
【図10】図9に示されたハウジングにFPCが組み付けられた状態を示す斜視図である。
【図11】図10に示されたハウジングの要部を拡大して示す図である。
【図12】図10中のI−I線に沿う一部断面図である。
【図13】図2に示されたコネクタを構成する栓部を示す斜視図である。
【図14】図10に示されたハウジングに栓部が組み付けられた状態を示す斜視図である。
【図15】図2に示された相手方コネクタを示す斜視図である。
【図16】従来のコネクタ構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施の形態にかかるフラット回路体組付け構造におけるコネクタを図1ないし図15を参照して説明する。上記コネクタ2’は、自動車の電装品である車載用カメラを接続するワイヤハーネスの一部を構成するものである。図1、図2に示すように、コネクタ2’は、該コネクタ2’が嵌合する相手方コネクタ7の後述する相手方ハウジング8を嵌合させる周壁24を有するハウジング2と、該周壁24内に突出する巻き付け部31を有する配策部材3と、該巻き付け部31に沿って配策されるFPC(フレキシブル・プリント・ケーブル)4と、ハウジング2に設けられた後述する貫通孔22を塞ぐ弾性の栓部5と、を備えている。
【0023】
上記ハウジング2は、図3、図4に示すように、貫通孔22が設けられた板状の基壁21と、該基壁21の裏側面から凸に設けられ、FPC4の後述する孔42a、42bに嵌る4つのボス23a、23bと、該基壁21の表側面に立設され、貫通孔22を囲う周壁24と、貫通孔22及び4つのボス23a、23bを囲うように枠状に立設され、内側に液状のシリコーンが流し込まれるリブ26と、基壁21の周縁から立設しリブ26を囲う枠部27と、を備えている。また、本発明において、図1、図2、図12中の基壁21よりも紙面方向における上側を「表」と表現し、基壁21よりも紙面方向における下側を「裏」と表現する。
【0024】
上記貫通孔22は、図3、図4に示すように、互いに相対する一対の第1内面22a、22bと、これら第1内面22a、22bの縁に連なる一対の第2内面22c、22dと、によって構成されている。これら内面22a、22b、22c、22dは、基壁21の表側面と裏側面とに連なっている。各内面22a、22b、22c、22dにおける、基壁21の表側の縁及び基壁21の裏側の縁は、面取りされている。各第1内面22a、22bの矢印Y方向の寸法は、各第2内面22c、22dの矢印X方向の寸法よりも大きく、貫通孔22は平面視が長方形状に形成されている。
【0025】
また、本明細書では、矢印Xは貫通孔22の幅方向を示し、矢印Yは貫通孔22の長手方向を示し、矢印Zは、矢印Y方向及び矢印X方向に対して直交する方向であり、貫通孔22の貫通方向、コネクタ2’の高さ方向、コネクタ2’と相手コネクタ7との嵌合方向、及び、巻き付け部3の突出方向を示している。
【0026】
また、貫通孔22の長手方向(矢印Y方向)の寸法は、後述するFPC4の幅方向(矢印X方向)よりも僅かに大きくなるように形成されている。このFPC4は、貫通孔22の長手方向とFPC4の幅方向とが平行となるように配索され、貫通孔22の幅方向とFPC4の長手方向とが平行となるように配索される。
【0027】
上記4つのボス23a、23bは、図4に示すように、貫通孔22を互いの間に位置付ける位置に各一対設けられている。また、各一対のボス23a、23bは、互いに間隔をあけて貫通孔22の長手方向(矢印Y方向)に並んでいる。各ボス23a、23bは、基壁21の裏側面から凸の円柱状に形成されている。各一対のボス23a、23bは、特許請求の範囲に示された「一対の凸部」に相当する。2つボス23bは、特許請求の範囲に示された「一方の凸部」に相当し、2つのボス23aは、特許請求の範囲に示された「他方の凸部」に相当する。各一対のボス23a、23bは、貫通孔22を互いの間に位置付ける位置に、少なくとも一対設けられていれば良い。
【0028】
上記周壁24は、図3に示すように、貫通孔22を互いの間に位置付ける一対の第1壁部24a、24bと、これら壁部24a、24bを互いに連ねる一対の第2壁部24c、24dと、によって枠状に形成されている。上記各第1壁部24a、24bの矢印Y方向の寸法は、上記各第2壁部24c、24dの矢印X方向の寸法よりも大きく、周壁24は平面視が長方形状に形成されている。また、一対の第1壁部24a、24bのうち一方の第1壁部24aの外面には、相手方ハウジング8の後述する係止孔83に係止する係止突起25が設けられている。
【0029】
上記リブ26は、図4に示すように、4つの隔壁26aを備えている。これら隔壁26aはその形状が等しく形成され、リブ26は平面視が矩形状に形成されている。このリブ26内に、図5に示すように、液状のシリコーンが流し込まれることにより該液状のシリコーンがリブ26内に充填されて、該液状のシリコーンが弾性的に硬化されることにより、ボス23などを埋設した覆い部6が形成される。この覆い部6は、栓部5によって塞がれた基壁21の貫通孔22をさらに覆うので、水などの液体が貫通孔22から基壁21の表側、及び、基壁21の裏側に侵入するのを、確実に防止できる。
【0030】
上記枠部27は、図4に示すように、4つの外壁27aを備えている。これら外壁27aはその形状が等しく形成され、リブ26は平面視が矩形状に形成されている。
【0031】
上記配策部材3は、図6、図7に示すように、ゴムなどの弾性体で構成された巻き付け部31と、該巻き付け部31を保持する一対の保持部32と、を有する巻き付け部材30と、該一対の保持部32それぞれに連なり、該巻き付け部材30の周囲に延在する板状の鍔部33と、を一体に備えている。
【0032】
上記巻き付け部材30は、図6に示すように、後述する鍔部33の表面から突出している。また、巻き付け部材30は、該巻き付け部材30の鍔部33から離れた先端部3aが断面半円状に形成されている。この巻き付け部材30は、その基端3bが平坦に形成されている。
【0033】
上記一対の保持部32は、鍔部33の表面から突出している。また、一対の保持部32は矢印Y方向に間隔をあけて設けられ、巻き付け部31の両端に連なっている。
【0034】
上記巻き付け部31と各保持部32との間に突出方向(図6中の矢印Z方向)に延び、巻き付け部31の先端を切り欠いた切込み(図示しない)が設けられていてもよい。この切込みが設けられていることにより、切込みが設けられていない場合よりも、巻き付け部31は大きく変形できる。
【0035】
上記鍔部33には、図7に示すように、FPC挿通用の一対のスリット34が、巻き付け部31の矢印X方向の両側に設けられている。各スリットは、貫通孔22の長手方向に延びている。一対のスリット34は貫通孔22に重ねられる。
【0036】
この配策部材3をハウジング2に配置する際には、図1、図8に示すように、鍔部33の裏側面を基壁21の表側面における周壁24内に重ねることにより、巻き付け部31を周壁24内に突出させるとともに、一対のスリット34を貫通孔22に重ねる。この際、巻き付け部材30の先端は、図1に示すように、周壁24よりも低い位置、即ち、下方に位置している。
【0037】
上記FPC4は、図9に示すように、複数の導体40と、該導体40を被覆する被覆部41と、を有して扁平な帯状に形成されている。導体40は少なくとも銅または銅合金を含んだ導電性を有する金属で構成されている。また、導体40は、断面形状が矩形状に形成されているとともに複数の導体40が互いに平行に延びている。上記被覆部41は、絶縁性の合成樹脂からなり、扁平な帯状に形成されて導体40を被覆している。また、被覆部41は、複数の導体40同士を電気的に絶縁している。また、FPC4は、特許請求の範囲に記載された「フラット回路体」に相当する。「フラット回路体」は、本明細書においては、複数の導体40と該導体40を被覆する被覆部41とを備えて扁平な帯状に形成されているものを意味する。「フラット回路体」として、FPC4の代わりにFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)を用いることもできる。また、図9では導体は省略されている。
【0038】
FPC4には、図9に示すように、L字状に曲げられた2つの曲げ部4a、4bと、2つの曲げ部4a、4b間のU字状の電気接続部43と、が設けられている。また、FPC4には、前述したハウジング2のボス23に嵌る各一対の孔42a、42bが設けられている。各一対の孔42a、42bのうち、一方は正円形の円孔42aであり、他方はFPC4の長手方向に長い長孔42bである。上記円孔42aは、曲げ部4aよりもFPC4の長手方向の一端側に設けられ、長孔42bは、曲げ部4bよりもFPC4の長手方向の他端側に設けられている。即ち、円孔42aは、他方の長孔42bよりもFPC4の長手方向の一端側に設けられている。この一対の孔42a、42bは、前述した導体が設けられていない被覆部41に設けられている。また、一対の孔42a、42bは、特許請求の範囲に記載された「一対の孔部」に相当する。
【0039】
また、上記電気接続部43のうち、後述する相手方コネクタ7の端子9が接触する部分は、導体40が外部に露出している。この電気接続部43は、巻き付け部31に巻かれる。
【0040】
このFPC4をハウジング2及び配策部材3に組み付ける際には、ハウジング2を配策部材3に配置した状態で、図10、図11に示すように、FPC4の一端側の2つの円孔42aを2つのボス23aに嵌めて、FPC4の他端を互いに重ねられた貫通孔22及び一方のスリット34に挿通させ、そして、互いに重ねられた他方のスリット34及び貫通孔22に挿通させ、FPC4の他端を引っ張りながら2つの長孔42bを2つのボス23bに引っ掛ける。こうして、FPC4をボス23aからボス23bに巻き付け部31に沿って掛け渡す。この際、図12に示すように、FPC4が引っ張られることにより巻き付け部31が圧縮され、該圧縮反力でFPC4を引っ張り反対方向に押圧する。即ち、巻き付け部31はFPC4を突出方向(矢印Z方向)に付勢する。また、FPC4の引っ張り時に鍔部33が基壁21に当接して引っ張り力を受け止める。このことにより、FPC4はハウジング2及び配策部材3にゆるみなく組み付けられる。
【0041】
上記栓部5はゴムなどの弾性体から構成されている。また、栓部5は、図13に示すように、互いに相対する一対の第1の面5a、5bと、これら面5a、5bの幅方向の両縁aに連なる一対の第2の面5c、5dと、各面5a、5b、5c、5dの長手方向の両縁bに連なる一対の第3の面5e、5fと、によって、矩形柱状に形成されている。上記各面5a、5b、5c、5dは長方形状に形成されている。この栓部5は、縁aの寸法が貫通孔22の長手方向の寸法よりも大きく、縁bの寸法が、貫通孔22の幅方向の寸法よりも大きく形成されており、第2の面5c、5dの面積は、貫通孔22よりも大きい。上記第2の面5c、5dの面積は、特許請求項の範囲に記載された「栓部の断面積」に相当する。
【0042】
この栓部5は、図14に示すように、基壁21の貫通孔22を塞ぐように該貫通孔22に圧入されて圧縮された状態で、一対の第2の面5c、5dのうち一方の面5cが巻き付け部3の基端3bに当接し、栓部5の圧縮反力で第1の面5a、5bが、貫通孔22の第1内面22a、22bに弾性的に接触し、第3の面5e、5fが、貫通孔22の第2内面22c、22dに弾性的に接触する。栓部5が貫通孔22の内面22a、22b、22c、22dに弾性的に接触することにより、栓部5が22の内面22a、22b、22c、22dに密着する。このことにより、水などの液体が貫通孔22から基壁21の表側、及び、基壁21の裏側に侵入することを、確実に防止できる。
【0043】
上記相手方コネクタ7は、図2、図15に示すように、複数(図示例では3つ)の端子9と、これら端子9を収容する端子収容室81と、各端子9に接続された複数の電線10を収容する電線収容室85(図2に示す)と、を有する相手方ハウジング8と、を備えている。
【0044】
上記各端子9は、一対の電線10それぞれに接続される一対の電線接続部91と、該一対の電線接続部91それぞれに連なる各弾性接触片92と、を備えている。上記一対の弾性接触片92は互いの間に前述した巻き付け部31及びFPC4の電気接続部43を挟むことにより、端子9とFPC4とを電気的に接続する。各端子9は矢印Y方向に互いに間隔をあけて並び、各一対の弾性接触片92は、各端子9が並ぶ方向(矢印Y方向)に対して直交する方向(矢印X方向)に設けられる。
【0045】
上記相手方ハウジング8は、図15に示すように、端子収容室81と該端子収容室81に連なる電線収容室85(図2に示す)とを有した相手方ハウジング本体80と、該相手方ハウジング本体80を囲う筒状の外壁82と、を一体に備えている。上記外壁82には、コネクタの周壁24に設けられた係止突起25が係止する係止孔83と、該係止孔83の両側に設けられ、該外壁82の縁を切り欠いた一対のスリット84と、が設けられている。
【0046】
次に、上述した構成のコネクタ2’の組み立て手順について以下に説明する。まず、周知の射出成型によって、ハウジング2を成形する。また、図示しない一次成形型内で巻き付け部31を成形し、該巻き付け部31を図示しない二次成形型内に収容し、溶融された樹脂を二次成形型内に注入することにより、巻き付け部31、一対の保持部32、鍔部33を一体に有する配策部材3を成形する。即ち、2色成形によって配策部材3を一体に成形する。この配策部材3をハウジング2の表側に配置し、そして、FPC4を組み付ける。その後、栓部5を貫通孔内22に圧入し、リブ26内に液状のシリコーンを流し込み、該シリコーンを常温設置により硬化することにより覆い部6を形成する。こうしてコネクタ2’を組み立てる。
【0047】
次に、コネクタ2’と相手方コネクタ7とを嵌合させる手順について、図2を参照して説明する。まず、コネクタ2’の周壁24内に相手方ハウジング本体80を近付ける。相手方コネクタ7の一対の弾性接触片92が巻き付け部31及びFPC4の電気接続部43を挟むとともに、係止孔83が係止突起25を係止する。こうして、FPC4と相手方コネクタ7の端子9とが電気的に接続され、コネクタ2’と相手方コネクタ7とが嵌合する。
【0048】
上述した実施形態によれば、巻き付け部31は、フラット回路体としてのFPC4を突出方向に付勢する弾性体で構成され、FPC4が引っ張られた状態で他方の凸部としてのボス23bに長孔42bが引っ掛けられるので、FPC4が引っ張られることにより巻き付け部31が圧縮され、該圧縮反力でFPC4を引張反対方向に押圧することとなり、FPC4と巻き付け部31との間にゆるみが発生することを防ぎ、そのために、FPC4と相手方の端子9との接触不良を防止することができるとともに、FPC4が傷んでしまうことを防止することができる。
【0049】
また、巻き付け部31の基壁21側の端部31aに当接し、貫通孔22を塞ぐ弾性の栓部5を備え、該栓部5は貫通孔22よりも断面積が大きいので、栓部5が貫通孔22を隙間なく塞ぐこととなり、水などの液体が貫通孔22から基壁21の表側、及び、基壁21の裏側に侵入することを、確実に防止できる。
【0050】
また、基壁21には、貫通孔22及び一対の凸部としてのボス23a、23bを囲うようにリブ26が立設され、リブ26の内側に液状のシリコーンが流し込まれ、液状のシリコーンが枠状のリブ26内に充填されて、常温設置で硬化されるので、水などの液体が貫通孔22から基壁21の表側、及び、基壁21の裏側に侵入することを、より一層、確実に防止できる。
【0051】
また、巻き付け部31の周囲に鍔部33が設けられ、FPC挿通用のスリット34が該鍔部33における巻き付け部31の両側に設けられ、鍔部33が基壁21の表側面に当接するので、FPC4の引っ張り時に鍔部33が基壁21に当接して引っ張り力を受け止めることとなり、鍔部33を基壁21の表側面に当接させる容易な作業で巻き付け部31をハウジング2に組み付けることができ、組付け作業性の向上を図ることができる。また、FPC4の引っ張り時に鍔部33が基壁21に当接して引っ張り力を受け止めるので、FPC4を強く引っ張ることができる。
【0052】
なお、上述した実施形態では、上記コネクタ2’は、リブ26内に液状のシリコーンが流し込まれることにより形成される覆い部6を備えているが、本発明はこれに限ったものではなく、覆い部6はなくてもよい。即ち、コネクタ2’は、ハウジング2と配策部材3とFPC4と栓部5と、を備えていれば良い。
【0053】
また、上述した実施形態では、上記コネクタ2’は栓部5を備えているが、本発明はこれに限ったものではなく、栓部5はなくてもよい。即ち、コネクタ2’は、ハウジング2と配策部材3とFPC4とを備えていればよい。また、栓部5がない場合は、リブ26内にシリコーンが流し込まれることにより形成される覆い部6はなくても良い。
【0054】
また、上述した実施形態では、コネクタ2’は、自動車の電装品である車載用カメラを接続するワイヤハーネスの一部を構成するものであるが、カメラ以外に、例えば、ワイヤハーネスを構成するコネクタと、機器直付けコネクタとを接続する場合においても適用可能である。
【0055】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 フラット回路体の組付け構造
2 ハウジング
2' コネクタ
4 FPC(フラット回路体)
8 相手方ハウジング
21 基壁
22 貫通孔
23a ボス(他方の凸部)
23b ボス(一方の凸部)
24 周壁
26 リブ
31 巻き付け部
3b 巻き付け部の基端(端部)
33 鍔部
34 スリット
42a、42b 円孔、長孔(一対の孔部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が設けられた基壁と、該基壁の裏側面に設けられ、前記貫通孔を互いの間に位置付ける一対の凸部と、該基壁の表側面に設けられ、相手方ハウジングを嵌合させる周壁と、を有するハウジングと、
前記周壁内に突出する巻き付け部と、
前記一対の凸部に嵌る長孔を含む一対の孔部が長手方向に間隔をあけて設けられ、一方の凸部から他方の凸部に前記巻き付け部に沿って架け渡されるフラット回路体と、を備え、
前記巻き付け部は、前記フラット回路体を突出方向に付勢する弾性体で構成され、前記フラット回路体が引っ張られた状態で前記他方の凸部に前記長孔が引っ掛けられることを特徴とするフラット回路体組付け構造。
【請求項2】
前記巻き付け部の前記基壁側の端部に当接し、前記貫通孔を塞ぐ弾性の栓部を備え、該栓部は、前記貫通孔よりも断面積が大きいことを特徴とする請求項1に記載のフラット回路体組付け構造。
【請求項3】
前記基壁には、前記貫通孔及び前記一対の凸部を囲うようにリブが立設され、該リブの内側にシリコーンが流し込まれることを特徴とする請求項2記載のフラット回路体組付け構造。
【請求項4】
前記巻き付け部の周囲に鍔部が設けられ、
フラット回路体挿通用のスリットが該鍔部における前記巻き付け部の両側に一対設けられ、
前記鍔部が前記基壁の表側面に当接することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のフラット回路体組付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−9505(P2013−9505A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140166(P2011−140166)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】