説明

フランジの締結構造

【課題】 第1、第2部材のフランジどうしをボルトおよびナットで締結する際に、そのフランジの歪みを防止しながら確実な締結を可能とする。
【解決手段】 金属製のスロットルボディ13の第1フランジ14と樹脂製の吸気マニホールド11の第2フランジ12とを突き合わせてボルト15およびナット16で締結する際に、第2フランジ12に挿入されるナット16は、第2フランジ12に当接する大径部16aと第1フランジ14に当接する小径部16bとを有する段付き形状をなしており、かつ大径部16aに対向する第2フランジ12の面には樹脂製の凸状部12eが形成されるので、締結時にナット16の小径部16bが金属製の第1フランジ14に当接することで、ボルト15およびナット16の締結位置が規制されて第2フランジ12の変形が防止されるだけでなく、前記締結位置においてナット16の大径部16aに押圧された凸状部12eが所定量変形することで、第2フランジ12のガタつきが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材に設けられた金属製あるいは樹脂製の第1フランジと第2部材に設けられた樹脂製の第2フランジとを突き合わせ、前記第1フランジおよび前記第2フランジをボルトおよびナットで締結するフランジの締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気マニホールドのフランジとシリンダヘッドの取付面との間にタンブルコントロールバルブの合成樹脂製のハウジングを挟持してボルトで締結する際に、前記ハウジングに金属製のカラーを埋設するとともに、吸気マニホールドのフランジに当接するハウジングの端面にカラーの外周に臨むように環状の凸状座部を形成し、フランジおよびカラーを貫通してシリンダヘッドの取付面に螺合するボルトの締結力で前記凸状座部を押し潰しながら、吸気マニホールドおよびハウジングをシリンダヘッドに共締めするものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また内燃機関の合成樹脂製の吸気マニホールドのフランジの合わせ面と、金属製のスロットルボディの端面とをボルトで締結する際に、吸気マニホールドのフランジに形成した凹部にナットと保持するとともに、フランジの合わせ面とナットとの間にカラーを埋設し、スロットルボディ側から挿入したボルトをカラーを貫通させてナットに螺合するものが、下記特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−232039号公報
【特許文献2】特許第4065270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記特許文献1に記載された発明は、タンブルコントロールバルブのハウジングの端面に形成された凸状座部がボルトの締結力で吸気マニホールドのフランジに押し付けられて潰れるため、ハウジングの端面の平坦度が低下して吸気マニホールドのフランジとの間のシール性を確保するのが難しいという問題があった。
【0006】
また上記特許文献2に記載された発明は、ボルトの締結力が吸気マニホールドのフランジおよびスロットルボディのフランジに直接作用してしまい、そのフランジの変形によりスロットルボディや吸気マニホールド内の吸気通路に歪みが生じ、吸入空気量の制御精度が低下する可能性があった。
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、第1、第2部材のフランジどうしをボルトおよびナットで締結する際に、そのフランジの歪みを防止しながら確実な締結を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、第1部材に設けられた金属製の第1フランジと第2部材に設けられた樹脂製の第2フランジとを突き合わせ、前記第1フランジおよび前記第2フランジをボルトおよびナットで締結するフランジの締結構造において、前記第2フランジに挿入される前記ナットは、前記第2フランジに当接する大径部と、前記大径部から延びて前記第1フランジに当接する小径部とを有する段付き形状をなし、前記大径部に対向する前記第2フランジの面には樹脂製の凸状部が形成され、前記締結時に前記小径部が前記第1フランジに当接することで前記ボルトおよび前記ナットの締結位置が規制されるとともに、前記締結位置において前記大径部に押圧された前記凸状部が所定量変形するように該凸状部の高さが設定されることを特徴とするフランジの締結構造が提案される。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、第1部材に設けられた樹脂製の第1フランジと第2部材に設けられた樹脂製の第2フランジとを突き合わせ、前記第1フランジおよび前記第2フランジをボルトおよびナットで締結するフランジの締結構造において、前記第1フランジを貫通する前記ボルトの外周には、前記第1フランジの厚さと略同じ長さの金属製のカラーが嵌合し、前記第2フランジに挿入される前記ナットは、前記第2フランジに当接する大径部と、前記大径部から延びて前記カラーに当接する小径部とを有する段付き形状をなし、前記大径部に対向する前記第2フランジの面には樹脂製の凸状部が形成され、前記締結時に前記小径部が前記カラーに当接することで前記ボルトおよび前記ナットの締結位置が規制されるとともに、前記締結位置において前記大径部に押圧された前記凸状部が所定量変形するように該凸状部の高さが設定されることを特徴とするフランジの締結構造が提案される。
【0010】
また請求項3に記載された発明によれば、第1部材に設けられた樹脂製の第1フランジと第2部材に設けられた樹脂製の第2フランジとを突き合わせ、前記第1フランジおよび前記第2フランジをボルトおよびナットで締結するフランジの締結構造において、前記第1フランジを貫通する前記ボルトは、前記第1フランジの厚さと略同じ長さの太軸部と、前記太軸部に連なって前記ナットに螺合する細軸部とを有する段付き形状をなし、前記第2フランジに挿入される前記ナットは、前記第2フランジに当接する大径部と、前記大径部から延びて前記太軸部に当接する小径部とを有する段付き形状をなし、前記大径部に対向する前記第2フランジの面には樹脂製の凸状部が形成され、前記締結時に前記小径部が前記太軸部に当接することで前記ボルトおよび前記ナットの締結位置が規制されるとともに、前記締結位置において前記大径部に押圧された前記凸状部が所定量変形するように該凸状部の高さが設定されることを特徴とするフランジの締結構造が提案される。
【0011】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記第2フランジは前記ボルトの挿入方向に対して略直交する方向に延びて前記ナットが挿入されるスリットを備え、前記ナットの前記大径部は多角形状に形成されて前記スリット内での回転が規制されることを特徴とするフランジの締結構造が提案される。
【0012】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項4の構成に加えて、前記凸状部は前記ナットの挿入方向に延び、前記小径部を挟むように複数形成されることを特徴とするフランジの締結構造が提案される。
【0013】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項4または請求項5の構成に加えて、前記第2フランジには、前記スリットに挿入された前記ナットと係合する抜け止め手段が形成されることを特徴とするフランジの締結構造が提案される。
【0014】
また請求項7に記載された発明によれば、請求項6の構成に加えて、前記小径部は円筒状に形成され、前記スリットには前記小径部が嵌合する開口部が形成され、前記開口部の入口の幅は前記小径部の直径よりも小さいことを特徴とするフランジの締結構造が提案される。
【0015】
また請求項8に記載された発明によれば、請求項1〜請求項7の何れか1項の構成に加えて、前記第1部材および前記第2部材の一方は内燃機関の吸気マニホールドであり、他方は内燃機関のスロットルボディであることを特徴とするフランジの締結構造が提案される。
【0016】
尚、実施の形態の吸気マニホールド11は本発明の第2部材に対応し、実施の形態の取付フランジ12は本発明の第2フランジに対応し、実施の形態の第1スリット12cおよび第2スリット12dは本発明のスリットに対応し、実施の形態のスロットルボディ13は本発明の第1部材に対応し、実施の形態の取付フランジ14は本発明の第1フランジに対応し、実施の形態の円形部bは本発明の開口部に対応し、実施の形態の係止部c、凸状部12eおよび係止突起12fは本発明の抜け止め手段に対応する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の構成によれば、第1部材の金属製の第1フランジと第2部材の樹脂製の第2フランジとを突き合わせてボルトおよびナットで締結する際に、第2フランジに挿入されるナットは、第2フランジに当接する大径部と第1フランジに当接する小径部とを有する段付き形状をなしており、かつナットの大径部に対向する第2フランジの面には樹脂製の凸状部が形成されるので、第1、第2フランジの締結時にナットの小径部が金属製の第1フランジに当接することで、ボルトおよびナットの締結位置が規制されて第1フランジおよび第2フランジの変形が防止されるだけでなく、前記締結位置においてナットの大径部に押圧された凸状部が所定量変形することで、樹脂製の第2フランジのガタつきが防止されて確実な締結が可能になる。
【0018】
また請求項2の構成によれば、第1部材の樹脂製の第1フランジと第2部材の樹脂製の第2フランジとを突き合わせてボルトおよびナットで締結する際に、第1フランジを貫通するボルトの外周には、第1フランジの厚さと略同じ長さの金属製のカラーが嵌合し、第2フランジに挿入されるナットは、第2フランジに当接する大径部とカラーに当接する小径部とを有する段付き形状をなしており、かつナットの大径部に対向する第2フランジの面には樹脂製の凸状部が形成されるので、第1、第2フランジの締結時にナットの小径部が金属製のカラーに当接することで、ボルトおよびナットの締結位置が規制されて樹脂製の第1、第2フランジの両方の変形が防止されるだけでなく、前記締結位置においてナットの大径部に押圧された凸状部が所定量変形することで、樹脂製の第2フランジのガタつきが防止されて確実な締結が可能になる。
【0019】
また請求項3の構成によれば、第1部材の樹脂製の第1フランジと第2部材の樹脂製の第2フランジとを突き合わせてボルトおよびナットで締結する際に、第1フランジを貫通するボルトは、第1フランジの厚さと略同じ長さの太軸部と、太軸部に連なってナットが螺合する細軸部とを有する段付き形状をなし、第2フランジに挿入されるナットは、第2フランジに当接する大径部と太軸部に当接する小径部とを有する段付き形状をなしており、かつナットの大径部に対向する第2フランジの面には樹脂製の凸状部が形成されるので、第1、第2フランジの締結時にナットの小径部がボルトの太軸部に当接することで、ボルトおよびナットの締結位置が規制されて樹脂製の第1、第2フランジの両方の変形が防止されるだけでなく、前記締結位置においてナットの大径部に押圧された凸状部が所定量変形することで、樹脂製の第2フランジのガタつきが防止されて確実な締結が可能になる。
【0020】
また請求項4の構成によれば、第2フランジはボルトの挿入方向に対して略直交する方向に延びてナットが挿入されるスリットを備えるので、ボルトをナットに螺合することで第1、第2フランジを強固に締結することができるだけでなく、ナットの大径部は多角形状に形成されてスリット内での回転が規制されるので、ボルトを回転させたときにナットが連れ回りするのを防止して作業性を高めることができる。
【0021】
また請求項5の構成によれば、第2フランジの凸状部はスリットに対するナットの挿入方向に延びるので、第2部材を合成樹脂で成形したときの型抜きを容易にして金型の構造を簡素化することができるだけでなく、凸状部はナットの小径部を挟むように複数形成されるので、スリット内でのナットの傾きを防止して確実な締結を可能にすることができる。
【0022】
また請求項6の構成によれば、第2フランジのスリットには、そこに挿入されたナットと係合する抜け止め手段が形成されるので、ナットにボルトを螺合する作業を行う際にスリットからナットが脱落するのを防止して作業性を高めることができる。
【0023】
また請求項7の構成によれば、第2フランジのスリットにはナットの小径部が嵌合する開口部が形成され、その開口部の入口の幅はナットの小径部の直径よりも小さいので、一旦開口部に嵌合したナットが脱落し難くなり、ボルトおよびナットの螺合時の作業性が向上する。
【0024】
また請求項8の構成によれば、第1部材および第2部材の一方が内燃機関の吸気マニホールドで他方が内燃機関のスロットルボディであるので、ボルトおよびナットで締結される第1、第2フランジの歪みを防止することで、第1、第2フランジの合わせ面のシール性を高めるとともにスロットルボディの変形を抑制して吸入空気量の制御精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】内燃機関の吸気マニホールドとスロットルボディとの結合部の斜視図。(第1の実施の形態)
【図2】図1の2−2線断面図。(第1の実施の形態)
【図3】図2の3−3線断面図。(第1の実施の形態)
【図4】第1、第2フランジの締結後の状態を示す作用説明図。(第1の実施の形態)
【図5】第2フランジに対するナットの支持構造の説明図。(第2の実施の形態)
【図6】第2フランジに対するナットの支持構造の説明図。(第3の実施の形態)
【図7】第1、第2フランジの締結後の状態を示す作用説明図。(第4の実施の形態)
【図8】第1、第2フランジの締結後の状態を示す作用説明図。(第5の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1〜図4に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0027】
図1に示すように、内燃機関の合成樹脂製の吸気マニホールド11に一体に形成された略四角形の取付フランジ12と、アルミニウム合金製のスロットルボディ13に一体に形成された略四角形の取付フランジ14とが、4本のボルト15…および4個のナット16…で締結される。スロットルボディ13は取付フランジ14から延びる筒状部17を備えており、取付フランジ14および筒状部17を貫通する吸気通路18の内部に、弁軸19に支持されたスロットル弁20が配置される。スロットルボディ13に設けた電動モータ21で弁軸19を回転駆動することで、スロットル弁20が回転して吸気通路18の開度が変化する。吸気マニホールド11の取付フランジ12を貫通する吸気通路22はスロットルボディ14の吸気通路18に連通する。スロットルボディ13の取付フランジ14の平坦な合わせ面14aに当接する吸気マニホールド11の取付フランジ12の平坦な合わせ面12aには吸気通路22を囲む環状溝12bが形成されており、この環状溝12bにOリング23が装着される。
【0028】
次に、図1〜図3に基づいて吸気マニホールド11の取付フランジ12にナット16…を支持する構造を説明する。4個のナット16…の支持構造は同一であるため、その一つについて説明する。
【0029】
ナット16は正方形の板状の大径部16aと、大径部16aの一辺よりも小さい直径を有して大径部16aから突出する円筒状の小径部16bと、大径部16aおよび小径部16bを貫通する雌ねじ部16cとを備えており、大径部16aの正面側(小径部16b側)には平坦な押圧面16dが形成され、背面側(小径部16bと反対側)には凹部16eが形成される。
【0030】
一方、吸気マニホールド11の取付フランジ12の側面には、ナット16を挿入するためのスリットが開口する。このスリットは、ナット16の大径部16aが緩く嵌合する第1スリット12cと、第1スリット12cおよび合わせ面12aの両方に連通してナット16の小径部16bが嵌合する第2スリット12dとで構成される。図3から明らかなように、第2スリット12dは、小径部16bの直径Dよりも若干大きい幅を有する平行部a,aと、平行部a,aに連通して小径部16bの直径と略等しい直径を有する円形部bとを備える。円形部bは180°を僅かに超える周長を有しており、円形部bが平行部a,aに接続する部分に形成された一対の係止部c,c間の距離D′は、小径部16bの直径Dよりも若干小さくなっている。
【0031】
第1スリット12cの第2スリット12dに近い側の壁面、つまりナット16の押圧面16dに対向する壁面には、第1、第2スリット12c,12dの方向と平行に延びる2本の直線状の凸状部12e,12eが突設される。
【0032】
ナット16…を挿入した吸気マニホールド11の取付フランジ12にスロットルボディ13の取付フランジ14を当接させたとき、ナット16…の雌ねじ16c…の軸線上に整列するように、スロットルボディ13の取付フランジ14にボルト孔14b…が形成される。
【0033】
次に、上記構成を備えた本発明の第1の実施の形態の作用を説明する。
【0034】
吸気マニホールド11の取付フランジ12にスロットルボディ13の取付フランジ14を締結するには、先ず吸気マニホールド11の取付フランジ12に4個のナット16…を挿入する。各ナット16の大径部16aおよび小径部16bはそれぞれ取付フランジ12の第1スリット12cおよび第2スリット12dに沿って挿入されるが、小径部16bが第2スリット12dの平行部a,aから円形部bに移動するときに係止部c,cを弾性変形させながら乗り越えることで、小径部16は円形部bに嵌合した状態に保持される(図3参照)。よって4個のナット16…にボルト15…を螺合する作業を行う際に、吸気マニホールド11の取付フランジ12からナット16…が落下するのを防止して組付作業性を高めることができる。
【0035】
続いて、吸気マニホールド11の取付フランジ12の合わせ面12aにスロットルボディ13の取付フランジ14の合わせ面14aを当接させ、スロットルボディ13の取付フランジ14のボルト孔14b…に挿入したボルト15…をナット16…に螺合する。ボルト15を締め付ける前は、図2に拡大して示すように、ナット16の大径部16aの押圧面16dは取付フランジ12の凸状部12e,12eとの間に隙間を有しており、かつナット16の小径部16bの先端はスロットルボディ13の取付フランジ14の合わせ面14aとの間に隙間を有している。
【0036】
この状態から各ボルト15を締め付けると、ナット16は押圧面16d…で凸状部12e,12eを押し潰しながらスロットルボディ13側に移動し、金属製のナット16の小径部16bの先端が金属製のスロットルボディ13の取付フランジ14の合わせ面14aに当接してメタルタッチが確立したときにボルト15の締め付けが完了する(図4参照)。ボルト15の締め付けが完了したとき、凸状部12e,12eは完全に潰れることなく一部が潰れずに残るように、その凸状部12e,12eの高さが設定されている。
【0037】
以上のように、合成樹脂製の吸気マニホールド11の取付フランジ12と金属製のスロットルボディ13の取付フランジ14とをボルト15…およびナット16…で締結したときに、吸気マニホールド11の取付フランジ12がスロットルボディ13の取付フランジ14に押し付けられる荷重は押し潰された凸状部12e,12eが元の形状に復帰しようとする反発力以上にはならないため、合成樹脂製の吸気マニホールド11の取付フランジ12が過剰な締め付け荷重で変形して両合わせ面12a,14aのシール性が低下したり、スロットルボディ13が歪んで吸気流量の制御精度が低下したりするのを防止することができる。
【0038】
また二つの凸状部12e,12eはナット16の小径部16bを挟んで両側に設けられているため、二つの凸状部12e,12eが均等に押し潰されることでナット16の傾きが防止され、ボルト15との螺合をスムーズに行うことができる。またナット16の四角形の大径部16aが第1スリット12cの内面に僅かな隙間を介して嵌合するため、ボルト15を螺合するときにナット16の角部が第1スリット12cの内面と干渉することで、ナット16の連れ回りを防止してボルト15の螺合作業の作業性を高めることができる。
【0039】
また吸気マニホールド11を合成樹脂で金型成形する際に、第1スリット12cおよび第2スリット12dの延びる方向に対して凸状部12e,12eの延びる方向が平行であるため、金型の構造を複雑化することなく吸気マニホールド11を容易に型抜きすることができる。
【0040】
次に、図5に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0041】
第1の実施の形態では、吸気マニホールド11の取付フランジ12の第2スリット12dに設けた係止部c,cでナット16の脱落が防止されるが、第2の実施の形態では、ナット16の凹部16eに対向する第1スリット12cの内面に形成された係止突起12fでナット16の脱落が防止される。
【0042】
即ち、第1スリット12cにナット16の大径部16aを挿入するとき、大径部16aの縁が係止突起12fを弾性変形させながら乗り越えることで、係止突起12fが凹部16eの内面に係合してナット16の脱落が防止される。
【0043】
次に、図6に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0044】
第1の実施の形態および第2の実施の形態では、ナット16の大径部16aを第1スリット12cに挿入するときに、ナット16の押圧面16dと凸状部12e,12eとの間に隙間が形成されているが、第3の実施の形態では、ナット16の押圧面16dと凸状部12e,12eとが所定の面圧で摺動するようになっており、その摺動部の摩擦力でナット16の脱落が防止される。
【0045】
次に、図7に基づいて本発明の第4の実施の形態を説明する。
【0046】
第1の実施の形態では、吸気マニホールド11が合成樹脂製でスロットルボディ13がアルミニウム合金製であるが、第2の実施の形態では、吸気マニホールド11およびスロットルボディ13が共に合成樹脂製とされる。
【0047】
スロットルボディ13の取付フランジ14には、第1実施の形態のボルト孔14b…(図2参照)の代わりに一定の直径の貫通孔14c…が形成されており、この貫通孔14c…にそれぞれカラー24…が挿入される。各カラー24の長さは、取付フランジ14の厚さ(つまり貫通孔14c…の長さ)と同一に設定されている。
【0048】
従って、ボルト15…をナット16…に螺合して締め付けると、ボルト15…の頭部とナット16…の小径部16b…との間にカラー24…の両端部がメタルタッチすることで、合成樹脂製のスロットルボディ13の取付フランジ14に過剰な締結荷重が加わって変形するのを防止することができる。合成樹脂製の吸気マニホールド11の取付フランジ12に加わる締結荷重が凸状部12e,12eが潰れることで制限されることは、第1の実施の形態と同じである。
【0049】
この第4の実施の形態によれば、合成樹脂製の吸気マニホールド11の取付フランジ12および合成樹脂製のスロットルボディ13の取付フランジ14の変形を同時に防止することができるので、両取付フランジ12,14の合わせ面12a,14aのシール性が低下したり、スロットルボディ13が歪んで吸気流量の制御精度が低下したりするのを防止することができる。
【0050】
次に、図8に基づいて本発明の第5の実施の形態を説明する。
【0051】
第5の実施の形態は上述した第4の実施の形態の変形であって、第4の実施の形態のボルト15の代わりに、そのボルト15とカラー24とを一体化した段付きのボルト15を用いるものである。段付きのボルト15は一定の直径を有する太軸部15aと、雄ねじが形成された細軸部15bとで構成され、太軸部15aの長さは取付フランジ14の厚さ(つまり貫通孔14c…の長さ)と同一に設定されている。
【0052】
この第5の実施の形態によれば、ボルト15…をナット16…に螺合して締め付けると、ボルト15…の太軸部15aがナット16…の小径部16b…にメタルタッチすることで、カラー24を廃止して部品点数を削減しながら、第4の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0054】
例えば、実施の形態ではスロットルボディ13を第1部材とし、吸気マニホールド11を第2部材としているが、本発明の第1、第2部材はスロットルボディ13および吸気マニホールド11に限定されるものではない。
【0055】
また実施の形態ではボルト15…をスロットルボディ13側から挿入して吸気マニホールド11側に設けたナット16…に螺合しているが、ボルト15…を吸気マニホールド11側から挿入してスロットルボディ11側に設けたナット16…に螺合しても良い。
【0056】
また第1の実施の形態ではスロットルボディ13をアルムニウム合金製としているが、アルムニウム合金以外の任意の金属製とすることができる。
【0057】
また実施の形態では各ナット16に対応して凸状部12e,12eを2本設けているが、その本数は2本に限定されるものではない。
【0058】
また実施の形態では各ナット16に対応して2本の平行な直線状の凸状部12e,12eを2本設けているが、凸状部の形状はコ字状等の他の形状であっても良く、線状でなくて複数の点状の突起の集合であっても良い。
【0059】
また実施の形態ではナット16の大径部16aを四角形にして回り止めしているが、四角形以外の多角形であっても良い。
【符号の説明】
【0060】
11 吸気マニホールド(第2部材)
12 取付フランジ(第2フランジ)
12c 第1スリット(スリット)
12d 第2スリット(スリット)
12e 凸状部(抜け止め手段)
12f 係止突起(抜け止め手段)
13 スロットルボディ(第1部材)
14 取付フランジ(第1フランジ)
15 ボルト
15a 太軸部
15b 細軸部
16 ナット
16a 大径部
16b 小径部
24 カラー
b 円形部(開口部)
c 係止部(抜け止め手段)
D 小径部の直径
D′ 開口部の入口の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材(13)に設けられた金属製の第1フランジ(14)と第2部材(11)に設けられた樹脂製の第2フランジ(12)とを突き合わせ、前記第1フランジ(14)および前記第2フランジ(12)をボルト(15)およびナット(16)で締結するフランジの締結構造において、
前記第2フランジ(12)に挿入される前記ナット(16)は、前記第2フランジ(12)に当接する大径部(16a)と、前記大径部(16a)から延びて前記第1フランジ(14)に当接する小径部(16b)とを有する段付き形状をなし、
前記大径部(16a)に対向する前記第2フランジ(12)の面には樹脂製の凸状部(12e)が形成され、
前記締結時に前記小径部(16b)が前記第1フランジ(14)に当接することで前記ボルト(15)および前記ナット(16)の締結位置が規制されるとともに、前記締結位置において前記大径部(16a)に押圧された前記凸状部(12e)が所定量変形するように該凸状部(12e)の高さが設定されることを特徴とするフランジの締結構造。
【請求項2】
第1部材(13)に設けられた樹脂製の第1フランジ(14)と第2部材(11)に設けられた樹脂製の第2フランジ(12)とを突き合わせ、前記第1フランジ(14)および前記第2フランジ(12)をボルト(15)およびナット(16)で締結するフランジの締結構造において、
前記第1フランジ(14)を貫通する前記ボルト(15)の外周には、前記第1フランジ(14)の厚さと略同じ長さの金属製のカラー(24)が嵌合し、
前記第2フランジ(12)に挿入される前記ナット(16)は、前記第2フランジ(12)に当接する大径部(16a)と、前記大径部(16a)から延びて前記カラー(24)に当接する小径部(16b)とを有する段付き形状をなし、
前記大径部(16a)に対向する前記第2フランジ(12)の面には樹脂製の凸状部(12e)が形成され、
前記締結時に前記小径部(16b)が前記カラー(24)に当接することで前記ボルト(15)および前記ナット(16)の締結位置が規制されるとともに、前記締結位置において前記大径部(16a)に押圧された前記凸状部(12e)が所定量変形するように該凸状部(12e)の高さが設定されることを特徴とするフランジの締結構造。
【請求項3】
第1部材(13)に設けられた樹脂製の第1フランジ(14)と第2部材(11)に設けられた樹脂製の第2フランジ(12)とを突き合わせ、前記第1フランジ(14)および前記第2フランジ(12)をボルト(15)およびナット(16)で締結するフランジの締結構造において、
前記第1フランジ(14)を貫通する前記ボルト(15)は、前記第1フランジ(14)の厚さと略同じ長さの太軸部(15a)と、前記太軸部(15a)に連なって前記ナットに螺合する細軸部(15b)とを有する段付き形状をなし、
前記第2フランジ(12)に挿入される前記ナット(16)は、前記第2フランジ(12)に当接する大径部(16a)と、前記大径部(16a)から延びて前記太軸部(15a)に当接する小径部(16b)とを有する段付き形状をなし、
前記大径部(16a)に対向する前記第2フランジ(12)の面には樹脂製の凸状部(12e)が形成され、
前記締結時に前記小径部(16b)が前記太軸部(15a)に当接することで前記ボルト(15)および前記ナット(16)の締結位置が規制されるとともに、前記締結位置において前記大径部(16a)に押圧された前記凸状部(12e)が所定量変形するように該凸状部(12e)の高さが設定されることを特徴とするフランジの締結構造。
【請求項4】
前記第2フランジ(12)は前記ボルト(15)の挿入方向に対して略直交する方向に延びて前記ナット(16)が挿入されるスリット(12c,12d)を備え、前記ナット(16)の前記大径部(16a)は多角形状に形成されて前記スリット(12c)内での回転が規制されることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のフランジの締結構造。
【請求項5】
前記凸状部(12e)は前記ナット(16)の挿入方向に延び、前記小径部(16b)を挟むように複数形成されることを特徴とする、請求項4に記載のフランジの締結構造。
【請求項6】
前記第2フランジ(12)には、前記スリット(12c,12d)に挿入された前記ナット(16)と係合する抜け止め手段(c,12e,12f)が形成されることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のフランジの締結構造。
【請求項7】
前記小径部(16b)は円筒状に形成され、前記スリット(12d)には前記小径部(16b)が嵌合する開口部(b)が形成され、前記開口部(b)の入口の幅(D′)は前記小径部(16b)の直径(D)よりも小さいことを特徴とする、請求項6に記載のフランジの締結構造。
【請求項8】
前記第1部材および前記第2部材の一方は内燃機関の吸気マニホールド(11)であり、他方は内燃機関のスロットルボディ(14)であることを特徴とする、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のフランジの締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−241685(P2011−241685A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111834(P2010−111834)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】