説明

フラーレン誘導体、組成物及び有機光電変換素子

【課題】開放端電圧(Voc)が十分に高い有機光電変換素子を作製することが可能なフラーレン誘導体及びそれを用いた有機光電変換素子を提供する
【解決手段】下記一般式(1)で表されるフラーレン誘導体。




[式(1)中、環Iは炭素数60以上のフラーレン骨格を、環IIはフラーレン骨格中の隣接する2個の炭素原子と共に環を形成する窒素原子を含んでいてもよい3〜6員環を、Raaは2価の有機基、Rbbはアルキル基、R、R、R及びRはそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基をそれぞれ示す。また、nは1〜4の整数を、w及びyはそれぞれ独立に0〜6の整数を、rは0〜4の整数を、q、u及びvはそれぞれ独立に0〜2の整数を、tは0又は1をそれぞれ示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体、組成物及び有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷(電子、ホール)輸送性を有する有機半導体材料は、有機光電変換素子(有機太陽電池、光センサー等)への適用が期待され、近年、フラーレン誘導体を用いた有機光電変換素子の作製が検討されている。フラーレン誘導体としては、例えば、[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(以下、「[60]−PCBM」ということがある。)が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Advanced Functional Materials,Vol.13(2003),p85〜88
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、[60]−PCBMを含む有機光電変換素子は、開放端電圧(Voc)が必ずしも十分でないという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、開放端電圧(Voc)が十分に高い有機光電変換素子を作製することが可能なフラーレン誘導体、これを含む組成物及びこれらを用いた有機光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式(1)で表されるフラーレン誘導体を提供する。
【0007】
【化1】


[式(1)中、環Iは炭素数60以上のフラーレン骨格を、環IIは窒素原子を含んでいてもよい3〜6員環(ここで、環IIはフラーレン骨格中の隣接する2個の炭素原子と共に環を形成する)を、Raaは2価の有機基を、Rbbはアルキル基を、R、R、R及びRはそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基(ここで、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)を、それぞれ示す。なお、Raa、R、R又はRが複数存在する場合、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nは1〜4の整数を、w及びyはそれぞれ独立に0〜6の整数を、rは0〜4の整数を、q、u及びvはそれぞれ独立に0〜2の整数を、tは0又は1を、それぞれ示す。]
【0008】
上記フラーレン誘導体を用いることで、開放端電圧(Voc)が十分に高い有機光電変換素子を作製することが可能となる。
【0009】
本発明のフラーレン誘導体は、下記一般式(2)で表されることが好ましい。このようなフラーレン誘導体は、各種溶媒への溶解性に優れる点で、有機光電変換素子の有機層(活性層)の材料として好適である。
【0010】
【化2】


[式(2)中、環Iは炭素数60以上のフラーレン骨格を、R、R、R及びRはそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基(ここで、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)を、それぞれ示す。なお、Raa、R、R又はRが複数存在する場合、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、w及びyはそれぞれ独立に0〜6の整数を、rは0〜4の整数を、q、u及びvはそれぞれ独立に0〜2の整数を、tは0又は1を、nは1〜4の整数を、mは1〜6の整数を、pは0〜5の整数を、それぞれ示す。]
【0011】
本発明は、上記フラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物を提供する。本発明の組成物において、上記電子供与性化合物が高分子化合物であることが好ましい。このような組成物を有機光電変換素子の有機層(活性層)の材料として使用すれば、開放端電圧(Voc)が十分に高い有機光電変換素子を製造することが可能となる。
【0012】
本発明はまた、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、当該一対の電極間に設けられた有機層とを備え、有機層が本発明のフラーレン誘導体を含む有機光電変換素子を提供する。本発明は更に、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、当該一対の電極間に設けられた有機層とを備え、有機層が本発明の組成物を含む有機光電変換素子を提供する。このような有機光電変換素子は、上述の通り、開放端電圧(Voc)が十分に高い有機光電変換素子である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、開放端電圧(Voc)が十分に高い有機光電変換素子を作製することが可能なフラーレン誘導体、これを含む組成物及びこれらを用いた有機光電変換素子を提供することができる。本発明のフラーレン誘導体を含む層を有する有機光電変換素子は、開放端電圧(Voc)が十分に高くなるため、有機薄膜太陽電池用又は有機光センサー用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る有機光電変換素子の模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機光電変換素子の模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機光電変換素子の模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機光電変換素子の模式断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機光電変換素子の模式断面図である。
【図6】実施例2で調整した塗布溶液から形成された有機薄膜の吸光度の測定結果を示すグラフである。
【図7】比較例1で調整した塗布溶液から形成された有機薄膜の吸光度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は、図示された比率に限られるものではない。本発明を詳細に説明する。
【0016】
<フラーレン誘導体>
本発明のフラーレン誘導体は、上記一般式(1)で表されるものである。
【0017】
式(1)中、環Iは炭素数60以上のフラーレン骨格を示し、環IIは窒素原子を含んでいてもよい3〜6員環を示すものである。ここで、環IIは、フラーレン骨格中の隣接する2個の炭素原子と共に環を形成している。
【0018】
フラーレン骨格(炭素クラスター)の炭素数は、好ましくは960以下、より好ましくは240以下、更に好ましくは96以下である。炭素数60〜96のフラーレン骨格としては、例えば、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84、C86、C88、C90、C92、C94又はC96のフラーレン骨格が挙げられる。原料の入手性の点から、環Iは、C60フラーレン又はC70フラーレンであることが好ましい。
【0019】
環IIは、下記式(IIa)で表される炭素環、又は下記式(IIb)若しくは(IIc)で表される複素環であることが好ましく、下記式(IIb)で表される複素環であることがより好ましい。
【化3】

【0020】
式(1)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示す。ここで、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。なお、Raa、R、R又はRが複数存在するときは、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0021】
上記アルキル基は、炭素数が通常1〜20であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基でもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、3−メチルブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基が挙げられる。これらのアルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部はハロゲン原子で置換されていてもよく、ハロゲン原子で置換されたアルキル基の具体例として、モノハロメチル基、ジハロメチル基、トリハロメチル基、ペンタハロエチル基が挙げられる。また、ハロゲン原子の中でも、フッ素原子が好ましく、フッ素原子で置換されたアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられる。
【0022】
上記アルコキシ基は、炭素数が通常1〜20であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基であってもよい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ラウリルオキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基に含まれる水素原子の一部又は全部はハロゲン原子で置換されていてもよく、ハロゲン原子の中でも、フッ素原子で置換されていることが好ましい。フッ素原子で置換されたアルコキシ基の具体例としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられる。
【0023】
上記アリール基は、炭素数が通常6〜60である。アリール基の具体例としては、フェニル基、C〜C12アルコキシフェニル基(「C〜C12アルコキシ」は、アルコキシ部分の炭素数が1〜12であることを意味する。以下、同様である)、C〜C12アルキルフェニル基(「C〜C12アルキル」は、アルキル部分の炭素数が1〜12であることを意味する。以下、同様である)、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、C〜C12アルコキシフェニル基、C〜C12アルキルフェニル基がより好ましい。これらのアリール基に含まれる水素原子の一部又は全部はハロゲン原子で置換されていてもよく、ハロゲン原子の中でも、フッ素原子で置換されていることが好ましい。これらのアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、又は、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基が挙げられる。
【0024】
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。変換効率の観点からは、フッ素原子が好ましい。
【0025】
式(1)中、Raaは2価の有機基を示し、Rbbはアルキル基を示す。2価の有機基としては、例えば、下記式(5)で表される基及びアリーレン基が挙げられる。アリーレン基として、具体的には、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基及びフルオレンジイル基が挙げられる。また、アルキル基としては、上述した基と同様の基を挙げることができる。
【化4】


[式(5)中、mは1〜6の整数を示す。]
【0026】
式(1)中、nは1〜4の整数を、w及びyはそれぞれ独立に0〜6の整数を、rは0〜4の整数を、q、u及びvはそれぞれ独立に0〜2の整数を、tは0又は1をそれぞれ示す。
【0027】
上記一般式(1)において、溶解性の観点から、Raaは式(1a)で表される基であり、Rbbは直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。すなわち、式(1)で表されるフラーレン誘導体は、上記一般式(2)で表されるフラーレン誘導体であることが好ましい。
【0028】
式(2)中、mは1〜6の整数を示し、原料の入手の行いやすさの観点から、2であることが好ましい。pは0〜5の整数を示し、電荷輸送性の観点から、0〜3の整数であることが好ましい。
【0029】
上記一般式(2)で表されるフラーレン誘導体において、環IがC60フラーレンである場合、その具体例として、下記式(2−1)〜(2−7)で表される化合物を挙げることができる。
【0030】
【化5】

【0031】
また、上記一般式(2)で表されるフラーレン誘導体において、環IがC70フラーレンである場合、その具体例として、下記式(2−8)で表される化合物を挙げることができる。
【0032】
【化6】


式(2−8)中、C70は、炭素数70のフラーレン環を示す。
【0033】
変換効率の観点から、式(2)中、rは0であることが好ましい。すなわち、上記一般式(2)で表されるフラーレン誘導体は、下記一般式(3)で表されるフラーレン誘導体であることが好ましい。
【0034】
【化7】


式(3)中、環I、R、R、R、R、m、n、p、q、u、v、t、y及びwは上記と同義である
【0035】
上記式(3)において、変換効率の観点から、m及びnは2でありpは0であることが好ましい。また、q、u及びvはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、tは0であり、w及びyはそれぞれ独立に1〜4の整数であることが好ましい。さらに、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましい。なお、該アルキル基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0036】
式(3)において、環Iは炭素数60以上のフラーレン骨格を示すが、原料の入手性の点ではC60のフラーレン環又はC70のフラーレン環であることが好ましい。
【0037】
本発明のフラーレン誘導体の合成方法として、例えば、環IIが窒素原子を含む複素環である場合、グリシン誘導体及びアルデヒド化合物から生成するイミンから脱炭酸して生じるイミニウムカチオンと、フラーレンとの1,3−双極子環化付加反応(Prato反応、Accounts of Chemical Research Vol.31 1998 519−526頁)を用いることができる。
【0038】
上記グリシン誘導体としては、N−メトキシメチルグリシン、N−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)グリシンが例示される。グリシン誘導体の使用量はフラーレン1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜3モルの範囲である。
【0039】
アルデヒド化合物としては、5−(4−(チオフェン−2−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール−7−イル)チオフェン−2−カルボアルデヒドが例示される。アルデヒド化合物の使用量はフラーレン1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜4モルの範囲である。
【0040】
上記反応は、通常、溶媒中で行なわれる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン、クロルベンゼン等のこの反応に対して不活性な溶媒を用いることができる。溶媒の使用量は、フラーレン1質量部に対して、1〜100000質量部であることが好ましい。
【0041】
具体的には、まず、上記溶媒中、グリシン誘導体とアルデヒド化合物とフラーレンとを混合し加熱反応させる。反応温度は、通常50〜350℃であり、反応時間は、通常30分間〜50時間である。加熱反応後、反応混合物を室温まで放冷し、溶媒をロータリーエバポレーターで減圧留去し、得られた固形物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、目的とするフラーレン誘導体を得ることができる。
【0042】
また、環IIが上記式(IIa)で表される炭素数3の環である場合、フラーレンとジアゾ化合物とを反応させて本実施形態のフラーレン誘導体を合成することができる。例えば、下記式(Ia)で表されるフラーレンと、下記式(6)で表されるジアゾ化合物とを反応させることで、下記式(4)で表されるフラーレン誘導体が得られる。反応は、窒素雰囲気下、1,2−ジクロロベンゼンを溶媒として用い、ナトリウムメトキシドの存在下、65〜70℃程度の条件で行うことが好ましい。
【0043】
【化8】


【化9】


式(Ia)及び式(4)中、環Iは炭素数60以上のフラーレン骨格を示す。
【0044】
<組成物>
本発明の組成物は、上記本発明のフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む。
【0045】
電子供与性化合物は、塗布性の観点から、高分子化合物であることが好ましい。高分子化合物として、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0046】
有機光電変換素子に用いる電子供与性化合物は、変換効率の観点から、下記式(10)及び下記式(11)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましく、下記式(10)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることがより好ましい。
【0047】
【化10】


式(10)及び(11)中、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示す。
【0048】
アルキル基の具体例としては、上述のR〜Rで例示した基と同様のアルキル基が挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、上述のR〜Rで例示した基と同様のアルコキシ基が挙げられる。アリール基の具体例としては、上述のR〜Rで例示した基と同様のアリール基が挙げられる。
【0049】
式(10)中、変換効率の観点から、R及びRの少なくとも一方は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜8のアルキル基であることがより好ましい。
【0050】
式(11)中、モノマーの合成の容易性の観点から、R10〜R15は水素原子であることが好ましい。また、変換効率の観点から、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数5〜8のアルキル基又は炭素数6〜15のアリール基であることがより好ましい。
【0051】
本実施形態の組成物に含まれるフラーレン誘導体の配合割合は、電子供与性化合物100質量部に対して、10〜1000質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましく、60〜400質量部であることが更に好ましい。
【0052】
<有機光電変換素子>
本発明の有機光電変換素子(太陽電池、光センサー等)は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、当該一対の電極間に設けられた有機層とを備えるものであり、有機層が、本発明のフラーレン誘導体又は本発明の組成物を含むものである。このような特徴を有することによって、本発明の有機光電変換素子は、十分に高い開放端電圧を有する。
【0053】
本発明のフラーレン誘導体は、電子受容性化合物として用いることも電子供与性化合物として用いることもできるが、電子受容性化合物として用いることが好ましい。
【0054】
図1は、第1実施形態に係る有機光電変換素子の模式断面図である。第1実施形態に係る有機光電変換素子10は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極3aと、第1の電極3a上に形成された有機層(活性層)2と、有機層2上に形成された第2の電極3bと、を備える。
【0055】
図2は、第2実施形態に係る有機光電変換素子の模式断面図である。第2実施形態に係る有機光電変換素子20は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極3aと、第1の電極3a上に形成された有機層(活性層)2と、有機層2上に形成された電荷輸送層4と、電荷輸送層4上に形成された第2の電極3bと、を備える。
【0056】
図3は、第3実施形態に係る有機光電変換素子の模式断面図である。第3実施形態に係る有機光電変換素子30は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極3aと、第1の電極3a上に形成された電荷輸送層4と、電荷輸送層4上に形成された有機層(活性層)2と、有機層2上に形成された第2の電極3bと、を備える。
【0057】
図4は、第4実施形態に係る有機光電変換素子の模式断面図である。第4実施形態に係る有機光電変換素子40は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極3aと、第1の電極3a上に形成された有機層(活性層)2と、有機層2上に形成されたバッファー層5と、バッファー層5上に形成された第2の電極3bと、を備える。
【0058】
図5は、第5実施形態に係る有機光電変換素子の模式断面図である。第5実施形態に係る有機光電変換素子50は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極3aと、第1の電極3a上に形成されたバッファー層5と、バッファー層5上に形成された有機層(活性層)2と、有機層2上に形成された第2の電極3bと、を備える。
【0059】
第1〜第5実施形態に係る有機光電変換素子10、20、30、40及び50において、基板1は、電極3a、3b及び有機層2の形成に影響しないものであればよい。基板1の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。
【0060】
有機層2は、通常1nm〜100μmの厚さを有する層であるが、有機層2としては有機薄膜が好ましく、その厚さは、有機光電変換素子の小型化の観点から、好ましくは2nm〜1000nm、より好ましくは5nm〜500nm、更に好ましくは20nm〜200nmである。
【0061】
有機層2は、本発明のフラーレン誘導体を含む溶液から形成することができる。有機層2の製造方法は、特に制限されず、例えば、本発明のフラーレン誘導体を含む溶液を電極上に成膜する方法が挙げられる。
【0062】
上記溶液から成膜する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法又は印刷法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法及びディスペンサー印刷法が好ましい。
【0063】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、本発明のフラーレン誘導体を溶解させるものであれば特に制限されない。溶媒として、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、s−ブチルベゼン、t−ブチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が挙げられる。フラーレン誘導体は、通常、上述の溶媒に0.1質量%以上溶解させることが好ましい。
【0064】
上記溶液が電子供与性化合物として高分子化合物を含む場合、高分子化合物の溶解性の観点から、上述した溶媒の中でも芳香族の炭化水素系溶媒を用いることが好ましく、トルエン、キシレン及びメシチレンを用いることがより好ましい。
【0065】
有機層2は、本発明のフラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する層を少なくとも一層有するものであることが好ましい。また、有機層2は、本発明のフラーレン誘導体を含有する第一の層と、該第一の層に隣接して設けられた電子供与性化合物を含有する第二の層とを有するものであってもよい。
【0066】
本実施形態の有機光電変換素子は、有機層2が本発明のフラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する溶液、すなわち、本発明の組成物を用いて形成されたものであることが好ましい。これにより、有機層2は、フラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する層を有することができ、ヘテロ接合界面を多く含むことができる。
【0067】
第1の電極3a及び第2の電極3bの少なくとも一方は透明又は半透明である。透明又は半透明の電極としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウムスズオキサイド(ITO)、インジウム亜鉛オキサイド、アンチモンドープ酸化スズ(NESA)等からなる導電性金属酸化物や、金、白金、銀、銅等の金属が用いられ、ITO、インジウム亜鉛オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機透明導電膜を用いてもよい。更に、電極材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができる。一対の電極のうちの一方は、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属;それらのうちの2種以上の合金;それらのうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金;グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。基板1が不透明である場合、基板から遠い方の電極、すなわち第2の電極10bは、透明又は半透明であることが好ましい。
【0068】
電荷輸送層4は、電子供与性物質又は電子受容性物質を含有し、有機光電変換素子の電荷(ホール又は電子)輸送性を高める機能を有する。電子供与性物質としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、等が挙げられる。また、電子受容性物質としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン及びその誘導体、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体が挙げられる。
【0069】
バッファー層5は、正孔ブロック層又は電子ブロック層としての機能を有し、また、開放端電圧の上昇等を介して有機光電変換素子の光電変換効率を向上させる機能を有する。バッファー層5の材料としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物(フッ化リチウム等)、酸化物等;酸化チタン等の無機半導体の微粒子が挙げられる。
【0070】
本発明の有機光電変換素子は、上述の第1〜第5実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の有機光電変換素子は、必ずしも基板1を備えていなくてもよい。
【0071】
また、第2及び第3実施形態に係る有機光電変換素子20及び30では、電荷輸送層4が第1の電極3a及び第2の電極3bのいずれか一方と有機層2との間に設けられているが、本発明の有機光電変換素子は、有機層2の両側に電荷輸送層を1層ずつ備えていてもよい。例えば、第1の電極3aと有機層2との間に電子輸送層を、また、第2の電極3bと有機層2との間にホール輸送層を備えていてもよい。
【0072】
また、第4及び第5実施形態に係る有機光電変換素子40及び50では、バッファー層5が第1の電極3a及び第2の電極3bのいずれか一方と有機層2との間に設けられているが、本発明の有機光電変換素子は、有機層2の両側にバッファー層を1層ずつ備えていてもよい。
【0073】
本発明の有機光電変換素子において、透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーは電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物で吸収され、電子とホールの結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物とが隣接しているヘテロ接合界面に達すると界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0074】
本発明の有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0075】
また、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
合成に用いた試薬及び溶媒は、市販品をそのまま使用するか、乾燥剤存在下で蒸留精製したものを使用した。C60フラーレンはフロンティアカーボン社製を使用した。NMRスペクトルはJEOL社製、商品名「MH500」を用いて測定し、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準に使用した。赤外吸収スペクトルは、島津製作所社製、商品名「FT−IR 8000」を用いて測定した。 MALDI−TOF MSスペクトルは、BRUKER社製、商品名「AutoFLEX−T2」を用いて測定した。
【0078】
(合成例1)
ベンジル[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ]アセテートの合成
【化11】

【0079】
[第1ステップ]:Dean−Starkトラップを装着した2口フラスコにブロモ酢酸(20.8g、150mmol)、ベンジルアルコール(16.2g、150mmol)、p−トルエンスルホン酸(258mg、1.5mmol)及びベンゼン(300mL)を加え120℃で24時間脱水縮合した後、溶媒をエバポレーターで減圧留去した。次いで、残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/エチルアセテート=10/1、5/1)で精製し、黄色油状のブロモ酢酸ベンジルエステル(34.3g、150mmol)を定量的に得た。
【0080】
Rf 0.71(ヘキサン/エチルアセテート=4/1);
H NMR(500Hz,ppm,CDCl,J=Hz)δ3.81(s,2H),5.14(s,2H),7.31(s,5H);
13C NMR(125MHz,ppm,CDCl)δ25.74,67.79,128.27,128.48,128.54,134.88,166.91;
IR(neat,cm−1)2959,1751,1458,1412,1377,1167,972,750,698
【0081】
[第2ステップ]:アルゴン雰囲気下、上記ブロモ酢酸ベンジルエステル(13.7g、60mmol)のジクロロメタン(90mL)溶液を0℃に保ち、トリエチルアミン(17mL、120mmol)を加え、20分間同温度で混合した。次いで、得られた混合液に2−(2−アミノエトキシ)エタノール(12mL、120mmol)のジクロロメタン(40mL)溶液を加え、室温で4時間攪拌し反応を行った。次に、得られた反応液の有機層を3回水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターで溶媒を減圧留去した。そして、残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/メタノール=1/0、10/1、5/1)で精製し、無色油状のベンジル[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ]アセテート(12.2g、48.0mmol)を収率80%で得た。
【0082】
Rf 0.48(エチルアセテート/メタノール=2/1);
H NMR(500MHz,ppm,CDCl,J=Hz)δ2.83(t,2H,J=5.1Hz),3.50(s,2H),3.52(t,2H,J=4.6Hz),3.58(t,2H,J=5.0Hz),3.65(t,2H,J=4.6Hz),5.11(s,2H),7.28-7.30(m,5H);
13C NMR(125MHz,ppm,CDCl)δ48.46,50.25,61.29,66.38,69.80,72.23,126.63,128.12,128.37,135.30,171.78;
IR(neat,cm−1)3412,2880,1719,1638,1560,1508,1458,1067,669
【0083】
(合成例2)
[2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミノ]酢酸の合成
【化12】

【0084】
[第1ステップ]:アルゴン雰囲気下、ベンジル[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ]アセテート(6.58g、26mmol)のジクロロメタン(50mL)溶液を0℃に保ち、トリエチルアミン(4.3mL、31mmol)及び4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(32mg、0.26mmol)を加え混合した。得られた混合液を20分間攪拌した後、そこへジ−tert−ブチルジカルボネート(6.77g、31mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液を滴下した。次いで、反応混合液を室温で4時間攪拌後、水を入れた3角フラスコ中に注ぎ入れて反応を停止し、ジエチルエーテル抽出を3回行った。有機層を乾燥後、減圧濃縮し、ついでシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=3/1、2.5/1、2/1)で精製を行い、無色油状のベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(5.83g、16.5mmol)を収率63%で得た。
【0085】
Rf 0.58(エチルアセテート/メタノール=20/1);
H NMR(500MHz,ppm,CDCl,J=Hz)δ1.34(d,9H,J=54.5Hz),2.19(brs,1H),3.38-3.45(m,4H),3.50-3.60(m,4H),3.99(d,2H,J=41.3Hz),5.09(d,2H,J=4.1Hz),7.25-7.30(m,5H);
13C NMR(125MHz,ppm,CDCl)δ27.82,28.05,47.90,48.20,49.81,50.39,61.23,66.42,69.92,72.12,80.08,127.93,128.14,135.25,154.99,155.19,169.94,170.07;
IR(neat,cm−1)3449,2934,2872,1751,1701,1458,1400,1367,1252,1143;
Anal.Calcd for C1827NO:C,61.17;H,7.70;N,3.96,Found:C,60.01;H,7.75;N,4.13
【0086】
[第2ステップ]:アルゴンガス雰囲気下,水素化ナトリウム(1.2g、24.8mmol、50% in meneral oil)のテトラヒドロフラン(THF)(10mL)溶液にベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(5.83g、16.5mmol)のTHF(20mL)溶液を0℃で滴下し、同温度で20分間攪拌後、ヨードメタン(1.6mL、24.8mmol)を0℃で加えた。次いで、反応混合液を室温で20時間攪拌した後、アイスバスで冷却しながら水を加えて反応を停止した。エーテル抽出を3回し、有機層を乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1、3/1)で精製して、無色油状のベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(3.02g、8.21mmol)を収率50%で得た。
【0087】
Rf 0.54(ヘキサン/エチルアセテート=1/1)
H NMR(500MHz,ppm,CDCl,J=Hz)δ1.34(d,9H,J=51.8Hz),3.28(d,3H,J=2.7Hz),3.37-3.46(m,6H),3.52(dt,2H,J=5.4Hz,16.5Hz),4.02(d,2H,J=34.8Hz),5.09(d,2H,J=4.5Hz),7.24-7.30(m,5H)
13C NMR(125MHz,ppm,CDCl)δ 24.93,25.16,44.68,45.00,46.70,47.40,55.78,63.30,67.22,68.60,76.95,124.98,125.14,125.36,132.49,151.99,152.31,166.84,166.96;
IR(neat,cm−1)2880,1751,1701,1560,1458,1400,1366,1117,698,617;
Anal.Calcd for C1929NO:C,62.11;H,7.96;N,3.81,Found:C,62.15;H,8.16;N,3.83
【0088】
[第3ステップ]:アルゴン雰囲気下、ベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(3.02g、8.21mmol)のジクロロメタン(17mL)溶液にトリフルオロ酢酸(TFA)(9.0mL)を加え室温で7時間攪拌した。次いで、10%炭酸ナトリウム水溶液を加えてpH10に調整し、ジクロロメタン抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して、黄色油状のベンジル[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチルアミノ]アセテート(2.18g、8.19mmol)を定量的に得た。
【0089】
Rf 0.32(エチルアセテート/メタノール=20/1);
H NMR(500MHz,ppm,CDCl,J=Hz)δ1.99(brs,1H),2.83(t,2H,J=5.3Hz),3.38(s,3H),3.50(s,2H),3.54(t,2H,J=4.6Hz),3.60-3.62(m,4H),5.17(s,2H),7.32-7.38(m,5H);
13C NMR(125MHz,ppm,CDCl)δ48.46,50.66,58.76,66.20,70.00,70.44,71.64,128.09,128.33,135.44,171.84;
IR(neat,cm−1) 3350,2876,1736,1560,1458,1117,1030,698,619;
Anal.Calcd for C1421NO:C,62.90;H,7.92;N,5.24,Found: C,62.28; H,8.20; N,5.05
【0090】
[第4ステップ]:ベンジル[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチルアミノ]アセテート(2.19g、8.19mmol)のメタノール(27mL)溶液に、パラジウムを10質量%担持させた活性炭(219mg)を室温で加え、水素ガスをパージした後、水素雰囲気下、室温で7時間攪拌した。セライトパッドをしきつめたグラスフィルターでPd/Cを除去し、セライト層をメタノールで洗浄し、濾液を減圧濃縮し、黄色油状の[2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミノ]酢酸(1.38g、7.78mmol)を収率95%で得た。
【0091】
H NMR(500MHz,ppm,MeOD,J=Hz)δ 3.21(t,2H,J=5.1Hz),3.38(s,3H),3.51(s,2H),3.57(t,2H,J=4.4Hz),3.65(t,2H,J=4.6Hz),3.73(t,2H,J=5.1Hz);
13C NMR(125MHz,ppm,MeOD)δ48.13,50.49,59.16,67.08,71.05,72.85,171.10;
IR(neat,cm−1)3414,2827,1751,1630,1369,1111,1028,851,799;
Anal.Calcd for C15NO:C,47.45;H,8.53;N,7.90,Found:C,46.20;H,8.49;N,7.43
【0092】
(合成例3)
5−[4−(チオフェン−2−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール−7−イル]チオフェン−2−カルボアルデヒドの合成
【化13】

【0093】
ジムロートコンデンサーを装着した2口フラスコ(30mL)に4,7−ジ(チオフェン−2−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(RBT)(188mg、0.63mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(51mg、0.69mmol)及び1,2−ジクロロエタン2mLを加えた。−10℃で塩化ホスホリル(POCl)(106mg、0.69mmol)を滴下し、60℃で4時間撹拌した。2M−酢酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、エーテルで5回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して濾過した後、分取薄層クロマトグラフィー(展開溶媒 ジクロロメタン)で分離精製を行い、5−[4−(チオフェン−2−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール−7−イル]チオフェン−2−カルボアルデヒド90mg(0.27mmol、収率44%)得た。
【0094】
H NMR(500MHz,ppm,CDCl,J=Hz)δ7.24(1H,dd,J=4.8Hz,3.9Hz),7.52(1H,d,J=5.1Hz),7.85(1H,d,J=4.1Hz),7.96(2H,dd,J=40.8Hz,7.8Hz),8.18(1H,d,J=3.7Hz),8.21(1H,d,J=4.2Hz),9.98(1H,s);
13C NMR(125MHz,ppm,CDCl)δ124.36,125.28,127.40,127.77,127.94,128.06,128.20,128.36,136.79,138.88,143.40,148.59,152.41,152.47,183.00;
IR(KBr,cm−1)1655,1439,1238,833,818,708,511;
MALDI−TOF−MS(matrix:SA)found 327.9797(calcd for C15OS Exact Mass:327.9799)
【0095】
[フラーレン誘導体の合成]
実施例1
[2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミノ]酢酸と、5−[4−(チオフェン−2−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール−7−イル]チオフェン−2−カルボアルデヒドとの反応から生成するイミンから脱炭酸して生じるイミニウムカチオンと、フラーレンとの1,3−双極子環化付加反応(Prato反応)により、N−methoxyethoxyethyl−2−RBT fulleropyrrolidine(KM−RBT)を合成した。以下、これをフラーレン誘導体Aという。
【化14】

【0096】
ジムロートコンデンサーを装着した2口フラスコ(100mL)に、フラーレンC60(150mg、0.21mmol)、[2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミノ]酢酸(55mg、0.31mmol)、5−[4−(チオフェン−2−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール−7−イル]チオフェン−2−カルボアルデヒド(217mg、1.39mmol)及びクロロベンゼン(50mL)を入れ、3時間加熱還流した。室温まで放冷後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(二硫化炭素、トルエン/酢酸エチル=50/1 to 30/1)、分取薄層クロマトグラフィー(ジクロロメタン)の順で精製し、褐色粉末56mg(0.05mmol、収率23%)を回収した。この粉末をメタノールで5回洗浄した後、減圧乾燥し、KM−RBT得た。
【0097】
H NMR(500MHz,ppm,CDCl,J=Hz)δ3.01-3.06(1H,m),3.45(3H,s),3.65-3.73(4H,m),3.80-3.87(2H,m),4.03-4.09(1H,m),4.12-4.16(1H,m),4.35(1H,d,J=9.6Hz),5.25(1H,d,J=10.1Hz),5.55(1H,s),7.45(1H,dd,J=5.1Hz,0.9Hz),7.51(1H,d,J=4.1Hz),7.86(q,2H,),8.10(1H,dd,J=3.7Hz,0.9Hz),8.13(1H,d,J=4.1Hz);
13C NMR(125MHz,ppm,CDCl)δ52.41,58.81,67.71,68.70,70.48,70.60,71.94,75.90,77.96,125.29,125.36,125.86,126.63,127.27,127.63,127.82,128.95,135.26,135.66,136.37,136.91,139.11,139.46,139.69,139.89,140.23,141.33,141.38,141.61,141.71,141.74,141.81,141.85,141.94,141.98,142.03,142.28,142.39,142.69,142.84,144.05,144.08,144.32,144.42,144.82,144.89,144.92,144.97,145.10,145.18,145.25,145.35,145.46,145.61,145.75,145.80,145.89,145.95,146.00,146.55,146.97,152.12,152.29,152.81,153.75,155.80;
IR(Neat,cm−1)2918,2866,1726,1667,1578,1537,1487,1462,1427,1211,1182,1118,828,816,698,527;
MALDI−TOF−MS(matrix:SA)found 1163.0777(calcd for C7721NO,exact mass:1163.0784)
【0098】
[有機薄膜太陽電池の作製]
実施例2
電子供与性化合物としてレジオレギュラーポリ3−ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、ロット番号:09007KH)を1質量%の濃度でクロロベンゼンに溶解させた。そこへ、電子供与性化合物と等量の電子受容性化合物であるフラーレン誘導体Aを加え溶解させた。次いで、得られた溶液100質量部に対し吸着剤としてシリカゲル(和光純薬社製、商品名:Wakogel C−300、粒径45〜75μm)を1質量部添加し、12時間攪拌した後、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液を得た。
【0099】
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。得られた表面処理済みガラス基板上に、上記塗布溶液をスピンコートして、有機層(活性層)(膜厚約100nm)を得た。その後、真空中90℃の条件で60分間ベークを行った。その後、有機層上に、真空蒸着機でフッ化リチウム4nm、次いでアルミニウム100nmを蒸着(真空度:いずれも1〜9×10−3Pa)することにより、有機薄膜太陽電池(形状:2mm×2mmの正四角形)を作製した。
【0100】
比較例1
フラーレン誘導体Aに変えて、[60]−PCBM(Phenyl C61−butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製、商品名:E100、ロット番号:8A0125A)を用いて塗布溶液を得た以外は、実施例2と同様の操作を行い有機薄膜太陽電池を作製した。
【0101】
(吸光度の測定)
実施例2及び比較例1において調整した塗布溶液をガラス基板上にスピンコートにより塗布し、大気中ホットプレート120℃で10分間乾燥させ、膜厚約100nmの有機薄膜を形成させた。形成した有機薄膜の吸光度を分光光度計(日本分光社製、商品名:V−670)で測定した。図6は実施例2で調整した塗布溶液から形成された有機薄膜の吸光度の測定結果を示すグラフであり、図7は比較例1で調整した塗布溶液から形成された有機薄膜の吸光度の測定結果を示すグラフである。500nmにおける吸光度を表1に示す。
【0102】
(有機薄膜太陽電池の評価)
実施例2及び比較例1で作製した有機薄膜太陽電池の開放端電圧(Voc)を、ソーラシミュレーター(分光計器社製、商品名OTENTO−SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して求めた。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
表1からわかるように、フラーレン誘導体Aを用いて形成した有機薄膜太陽電池の活性層は、高い吸光度を示しており、実施例2で作製した有機薄膜太陽電池は、開放端電圧(Voc)が高いことが確認された。
【符号の説明】
【0105】
10,20,30,40,50…有機光電変換素子、1…基板、2…有機層、3a…第
1の電極、3b…第2の電極、4…電荷輸送層、5…バッファー層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフラーレン誘導体。
【化1】


[式(1)中、環Iは炭素数60以上のフラーレン骨格を、環IIは窒素原子を含んでいてもよい3〜6員環(ここで、環IIはフラーレン骨格中の隣接する2個の炭素原子と共に環を形成する)を、Raaは2価の有機基を、Rbbはアルキル基を、R、R、R及びRはそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基(ここで、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)を、それぞれ示す。なお、Raa、R、R又はRが複数存在する場合、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nは1〜4の整数を、w及びyはそれぞれ独立に0〜6の整数を、rは0〜4の整数を、q、u及びvはそれぞれ独立に0〜2の整数を、tは0又は1を、それぞれ示す。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表される請求項1記載のフラーレン誘導体。
【化2】


[式(2)中、環Iは炭素数60以上のフラーレン骨格を、R、R、R及びRはそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基(ここで、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)を、それぞれ示す。なお、Raa、R、R又はRが複数存在する場合、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、w及びyはそれぞれ独立に0〜6の整数を、rは0〜4の整数を、q、u及びvはそれぞれ独立に0〜2の整数を、tは0又は1を、nは1〜4の整数を、mは1〜6の整数を、pは0〜5の整数を、それぞれ示す。]
【請求項3】
請求項1又は2記載のフラーレン誘導体と、電子供与性化合物とを含有する組成物。
【請求項4】
前記電子供与性化合物が高分子化合物である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、当該一対の電極間に設けられた有機層と、を備え、
前記有機層が、請求項1又は2記載のフラーレン誘導体を含む、有機光電変換素子。
【請求項6】
少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、当該一対の電極間に設けられた有機層と、を備え、
前記有機層が、請求項3又は4記載の組成物を含む、有機光電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−254587(P2010−254587A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103687(P2009−103687)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】