説明

フラーレン誘導体

【課題】開放端電圧が十分に高い有機光電変換素子を作製することが可能なフラーレン誘導体を提供する。
【解決手段】式(1)で表される構造を有するフラーレン誘導体。式(1)で表される構造を1〜4個有することが好ましい。また、式(2a)で表されるフラーレン誘導体、又式(2b)で表されるフラーレン誘導体が好ましい。該フラーレン誘導体は、電子供与性化合物と混合し、組成物として用いてもよい。


(1)
[式中、Rは1価の有機基を表す。rは0〜4の整数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体及びそれを用いた有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷(電子、ホール)輸送性を有する有機半導体材料は、有機光電変換素子(有機太陽電池、光センサー等)等への適用が検討されており、例えば、フラーレン誘導体を用いた有機太陽電池が検討されている。フラーレン誘導体としては、例えば、[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(以下、[60]−PCBMということがある。)が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Advanced Functional Materials Vol.13 (2003) p85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、[60]−PCBMを含む有機光電変換素子は、Voc(開放端電圧)が必ずしも十分でないという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、Voc(開放端電圧)が高い有機光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は第一に、式(1)で表される構造を有するフラーレン誘導体を提供する。

(1)
[式中、Rは1価の有機基を表す。rは0〜4の整数を表す。]
【0007】
本発明は第二に、前記フラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物を提供する。
【0008】
本発明は第三に、電子供与性化合物が高分子化合物である前記組成物を提供する。
【0009】
本発明は第四に、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に前記フラーレン誘導体を含む層を有する有機光電変換素子を提供する。
【0010】
本発明は第五に、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に前記組成物を含む層を有する有機光電変換素子を提供する。
【0011】
本発明は第六に、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に活性層を有する有機光電変換素子であって、前記フラーレン誘導体と溶媒とを含む溶液を該陽極又は該陰極上に塗布して有機層を形成し、次いで、該有機層を加熱して該活性層を形成することを特徴とする有機光電変換素子を提供する。
【0012】
本発明は第七に、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に活性層を有する有機光電変換素子であって、前記組成物と溶媒とを含む溶液を該陽極又は該陰極上に塗布して有機層を形成し、次いで、該有機層を加熱して該活性層を形成することを特徴とする有機光電変換素子を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフラーレン誘導体を含む層を有する有機光電変換素子は、Voc(開放端電圧)が高くなるため、本発明は極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
<フラーレン誘導体>
本発明のフラーレン誘導体は式(1)で表される構造を有する。前記式(1)中のRは、1価の有機基を表す。1価の有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン基、1価の複素環基、式(3)で表される基であるか又はエステル構造を有する基であることが好ましい。
【0016】
式(1)中、Rで表されるアルキル基は、炭素数が通常1〜20であり、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基でもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、3−メチルブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基が挙げられる。前記アルキル基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、具体的には、モノハロメチル基、ジハロメチル基、トリハロメチル基、ペンタハロエチル基があげられる。ハロゲン原子の中では、フッ素原子で置換されていることが好ましい。フッ素原子で水素原子が置換されたアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられる。
【0017】
式(1)中、Rで表されるアルコキシ基は、炭素数が通常1〜20であり、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルオキシ基であってもよい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ラウリルオキシ基が挙げられる。前記アルコキシ基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子の中では、フッ素原子で置換されていることが好ましい。フッ素原子で水素原子が置換されたアルコキシ基の具体例としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基が挙げられる。
【0018】
式(1)中、Rで表されるアリール基は、炭素数が通常6〜60であり、置換基を有していてもよい。アリール基が有している置換基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基があげられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基がより好ましい。前記アリール基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子の中では、フッ素原子で置換されていることが好ましい。
【0019】
式(1)中、Rで表されるハロゲン基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。
【0020】
式(1)中、Rで表される1価の複素環基としては、1価の芳香族複素環基が好ましい。具体的には、チェニル基、ピリジル基、フリル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピロリル基が挙げられる。
【0021】
式(1)中、Rで表されるエステル構造を有する基としては、具体的には、酪酸メチルエステルを有する基、酪酸n−ブチルエステルを有する基、酪酸イソプロピルエステルを有する基、酪酸3−エチルチオフェンエステルを有する基が挙げられる。
エステル構造を有する基の一態様は、式(4)で表される基である。

(4)
[式中、sは0〜10の整数を表す。qは0〜10の整数を表す。]
【0022】
式(1)中、Rで表される1価の有機基は、式(3)で表される基であってもよい。フラーレン誘導体の溶解性の観点からは、Rは式(3)で表される基が好ましい。

(3)
[式中、mは1〜6の整数を、nは1〜4の整数を、pは0〜5の整数を表す。−(CH−)−O−で表される構造が複数個ある場合、それらの構造におけるmは、同一の数値であっても相異なる数値であってもよい。]
【0023】
式(3)において、原料の入手の行いやすさの観点からは、mは2が好ましい。電荷輸送性の観点からは、pは0〜3の整数が好ましい。
【0024】
式(1)において、rは0〜4の整数を表す。
【0025】
本発明のフラーレン誘導体は、式(1)で表される構造を1〜4個有することが好ましい。合成の容易さの観点からは、式(1)で表される構造を1個又は2個有することがより好ましい。
【0026】
本発明のフラーレン誘導体において、C60フラーレンの誘導体の具体例としては、下記化合物があげられる。

上記化合物中、C60環は、炭素数60のフラーレン環を表す。
【0027】
本発明のフラーレン誘導体において、C70フラーレンの誘導体の具体例としては、下記化合物があげられる。

上記化合物中、C70環は、炭素数70のフラーレン環を表す。
【0028】
本発明のフラーレン誘導体としては、式(2a)又は式(2b)で表されるフラーレン誘導体が好ましい。


(2a)
[式中、A環は炭素数60以上のフラーレン骨格を表す。R及びrは、前述と同じ意味を表す。]

(2b)
[式中、A環は炭素数60以上のフラーレン骨格を表す。R及びrは、前述と同じ意味を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。複数個あるrは、同一でも相異なってもよい。]
【0029】
式(2a)及び式(2b)において、原料の入手性の観点からは、A環はC60フラーレン、C70フラーレンであることが好ましい。
【0030】
本発明のフラーレン誘導体を用いて製造した有機光電変換素子は、光電変換効率が高くなる。
【0031】
本発明のフラーレン誘導体の合成方法は、例えば、グリシン誘導体とアルデヒド類から生成するイミンから脱炭酸して生じるイミニウムカチオンと、フラーレンとの1,3−双極子環化付加反応(Prato反応、Accounts of Chemical Research Vol.31 1998 519-526ページ)により合成することができる。
ここで用いられるグリシン誘導体としては、N−メトキシメチルグリシン、N−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)グリシンなどが例示される。
該グリシン誘導体の使用量は、フラーレン1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜3モルの範囲である。
もう一つの原料であるアルデヒド類としては、式(5)で表されるアルデヒドなどが例示される。
該アルデヒド類の使用量は、フラーレン1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜4モルの範囲である。
通常、本発明のフラーレン誘導体の合成反応は、溶媒中で行なわれる。該溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン、クロルベンゼンなど、該合成反応に対して不活性な溶媒が用いられる。該溶媒の使用量は、フラーレンに対して通常1〜100000重量倍の範囲である。
反応に際しては、例えば溶媒中でグリシン誘導体とアルデヒド類とフラーレンとを混合し加熱反応させればよく、反応温度は、通常50〜350℃の範囲である。反応時間は、通常、30分間から50時間である。
加熱反応後、反応混合物を室温まで放冷し,溶媒をロータリーエバポレーターで減圧留去し、得られた固形物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製して目的とするフラーレン誘導体を得ることができる。

(5)
【0032】
式(1)中に含まれるベンゾシクロブテン基は熱架橋性を有するため、本発明のフラーレン誘導体を加熱して架橋させることができる。有機光電変換素子の熱安定性を増す観点からは、本発明のフラーレン誘導体を加熱して架橋させることが好ましい。
【0033】
<組成物>
本発明の組成物は、前記フラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む。
【0034】
前記電子供与性化合物は、塗布性の観点からは、高分子化合物であることが好ましい。高分子化合物としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0035】
有機光電変換素子に用いる電子供与性化合物は、変換効率の観点からは、式(10)及び式(11)からなる群から選ばれる繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましく、式(10)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることがより好ましい。


(10) (11)
[式中、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14及びR15は、同一又は相異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。]
【0036】
式(10)中、R6及びR7がアルキル基である場合の具体例としては、前述のRの例示と同じアルキル基があげられる。R6及びR7がアルコキシ基である場合の具体例としては、前述のRの例示と同じアルコキシ基があげられる。R6及びR7がアリール基である場合の具体例としては、前述のRの例示と同じアリール基があげられる。
【0037】
式(10)中、変換効率の観点からは、R6及びR7の少なくとも一方が、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜8のアルキル基であることがより好ましい。
【0038】
式(11)中、R8〜R15がアルキル基である場合の具体例としては、前述のRの例示と同じアルキル基があげられる。R8〜R15がアルコキシ基である場合の具体例としては、前述のRの例示と同じアルコキシ基があげられる。R8〜R15がアリール基である場合の具体例としては、前述のRの例示と同じアリール基があげられる。
【0039】
式(11)中、モノマーの合成の行いやすさの観点からは、R10〜R15は水素原子であることが好ましい。また、変換効率の観点からは、R8及びR9は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数5〜8のアルキル基又は炭素数6〜15のアリール基であることがより好ましい。
【0040】
本発明の組成物に含まれるフラーレン誘導体は、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、50〜500重量部であることがより好ましい。
【0041】
<有機光電変換素子>
本発明の有機光電変換素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に本発明に用いられるフラーレン誘導体を含む層を有する。本発明に用いられるフラーレン誘導体は、電子受容性化合物として用いることも電子供与性化合物として用いることもできるが、電子受容性化合物として用いることが好ましい。
【0042】
次に、有機光電変換素子の動作機構を説明する。透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーが電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物で吸収され、電子とホールの結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0043】
本発明の有機光電変換素子の具体的としては、
1.少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物として本発明のフラーレン誘導体を含有する第一の層と、該第一の層に隣接して設けられた電子供与性化合物を含有する第二の層とを有することを特徴とする有機光電変換素子、
2.少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物として本発明のフラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する層を少なくとも一層有することを特徴とする有機光電変換素子、
3.少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に設けられ本発明のフラーレン誘導体を加熱して架橋させて形成した第一の層と、該第一の層に隣接して設けられた電子供与性化合物を含有する第二の層とを有することを特徴とする有機光電変換素子、
4.少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に設けられフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む本発明の組成物を加熱し、該フラーレン誘導体を架橋させて形成した層を少なくとも一層有することを特徴とする有機光電変換素子、
のいずれかが好ましい。
【0044】
ヘテロ接合界面を多く含むという観点からは、前記2の有機光電変換素子が好ましい。また、本発明の有機光電変換素子には、少なくとも一方の電極と本発明に用いられるフラーレン誘導体を含む層との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、例えば、ホール又は電子を輸送する電荷輸送層が挙げられる。
【0045】
前記2の有機光電変換素子おいて、フラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する有機層におけるフラーレン誘導体の割合が、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、50〜500重量部であることがより好ましい。
【0046】
前記2の有機光電変換素子おいて、フラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する有機層は、フラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物を用いて製造することができる。
【0047】
本発明の有機光電変換素子に用いることができるフラーレン誘導体を含む層は、該フラーレン誘導体を含む有機薄膜から形成されていることが好ましい。該有機薄膜の厚さは、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0048】
前記3、4の有機光電変換素子に用いられるフラーレン誘導体を架橋させて形成した層の一つの製造方法は、本発明のフラーレン誘導体と溶媒とを含む溶液を一方の電極上(陽極上又は陰極上)に塗布して有機層を形成し、次いで、該有機層を加熱する方法である。また、他の製造方法としては、本発明の組成物と溶媒とを含む溶液を一方の電極上に塗布して有機層を形成し、次いで、該有機層を加熱する方法がある。これらの有機光電変換素子の一態様において、フラーレン誘導体を架橋させて形成した層は活性層として機能する。
フラーレン誘導体を架橋させて形成した層は、架橋したフラーレン誘導体を含む有機薄膜から形成されていてもよい。該有機薄膜の厚さは、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0049】
本発明の有機光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板の材料は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0050】
透明又は半透明の電極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。 また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0051】
電極材料としては、好ましくは一対の電極のうち一方の電極は仕事関数の小さい材料が好ましい。仕事関数の小さい材料を含む電極は、透明又は半透明であってもよい。該材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
【0052】
電極と本発明に用いられるフラーレン誘導体を含む層との間に設けてもよい付加的な層は、バッファ層であってもよく、バッファ層として用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化チタン等の酸化物等が挙げられる。また、無機半導体を用いる場合、微粒子の形態で用いることもできる。
【0053】
<有機薄膜の製造方法>
前記有機薄膜の製造方法は、特に制限されず、例えば、本発明に用いられるフラーレン誘導体を含む溶液からの成膜による方法が挙げられる。
【0054】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、本発明に用いられるフラーレン誘導体を溶解させるものであれば特に制限はない。この溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベゼン、tert−ブチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が挙げられる。前記フラーレン誘導体は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0055】
前記溶液は、さらに高分子化合物を含んでいてもよい。該溶液に用いられる溶媒の具体例としては、前述の溶媒があげられるが、高分子化合物の溶解性の観点からは、芳香族の炭化水素系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレンがより好ましい。
【0056】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0057】
有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0058】
また、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
合成に用いた試薬及び溶媒は、市販品をそのまま使用するか、乾燥剤存在下で蒸留精製した品を使用した。C60フラーレンはフロンティアカーボン社製を使用した。NMRスペクトルはJEOL社製 MH500を用いて測定し、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準に使用した。赤外吸収スペクトルは島津製作所社製 FT−IR 8000を用いて測定した。 MALDI−TOF MSスペクトルはBRUKER社製 AutoFLEX−T2を用いて測定した。
【0061】
実施例1(フラーレン誘導体Aの合成)
(ベンジル[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ]アセテートの合成)

[第1ステップ]:Dean−Starkトラップを装着した2口フラスコにブロモ酢酸(20.8g、150mmol)、ベンジルアルコール(16.2g、150mmol)、パラ−トルエンスルホン酸(258mg、1.5mmol)、ベンゼン(300mL)を加え120℃ で24時間脱水縮合した。溶媒をエバポレーターで減圧留去し、ついでシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/エチルアセテート=10/1、5/1)で精製し、ブロモ酢酸ベンジルエステル(34.3g、150mmol)を黄色油状物として定量的に得た。
【0062】
0.71(ヘキサン/エチルアセテート=4/1);
H NMR(500MHz,ppm,CDCl) δ 3.81 (s, 2H), 5.14 (s, 2H), 7.31 (s, 5H);
13C NMR(125MHz,ppm,CDCl) δ 25.74, 67.79, 128.27, 128.48, 128.54, 134.88, 166.91;
IR(neat,cm−1) 2959, 1751, 1458, 1412, 1377, 1167, 972, 750, 698。
【0063】
[第2ステップ]: アルゴン雰囲気下、ブロモ酢酸ベンジルエステル(13.7g、60mmol)のジクロロメタン(90mL)溶液にトリエチルアミン(17mL、120mmol)を0℃で加え、得られた混合液を20分同温度で攪拌し、ついで、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(12mL、120mmol)のジクロロメタン(40mL)溶液を加え、室温で4時間攪拌した。ついで、有機層を水洗(3回)後,無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターで溶媒を減圧留去後、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/メタノール=1/0、10/1、5/1)で精製し、グリシンエステル2(12.2g、48.0mmol)を収率80%で無色油状物として得た。
【0064】
0.48(エチルアセテート/メタノール=2/1);
H NMR(500MHz,ppm,CDCl) δ 2.83 (t, 2H, J=5.1Hz), 3.50 (s, 2H), 3.52 (t, 2H, J=4.6Hz), 3.58 (t, 2H, J=5.0Hz), 3.65 (t, 2H, J=4.6Hz), 5.11 (s, 2H), 7.28-7.30 (m, 5H);
13C NMR(125MHz,ppm,CDCl) δ 48.46, 50.25, 61.29, 66.38, 69.80, 72.23, 126.63, 128.12, 128.37, 135.30, 171.78;
IR(neat,cm−1) 3412, 2880, 1719, 1638, 1560, 1508, 1458, 1067, 669。
【0065】
([2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミノ]酢酸(1)の合成)


[第1ステップ]: アルゴン雰囲気下ベンジル[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ]アセテート 2(6.58g、26mmol)のジクロロメタン(50mL)溶液にトリエチルアミン(4.3mL、31mmol)を0℃で加え、ついで4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(32mg、0.26mmol)を加え、得られた混合液を20分攪拌後、これにジ−tert−ブチルジカルボネート(6.77g、31mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液を滴下した。次いで、反応混合液を室温で4時間攪拌後、水を入れた3角フラスコ中に注ぎ入れて反応を停止し、ジエチルエーテル抽出(3回)を行った。有機層を乾燥後、減圧濃縮、ついでシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=3/1、2.5/1、2/1)で精製を行い、ベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(5.83g、16.5mmol)を収率63%で無色油状物として得た。
【0066】
Rf 0.58(エチルアセテート/メタノール=20/1);
1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3) δ 1.34 (d, 9H, J=54.5 Hz), 2.19 (brs, 1H), 3.38-3.45 (m, 4H), 3.50-3.60 (m, 4H), 3.99 (d, 2H, J=41.3 Hz), 5.09 (d, 2H, J=4.1 Hz), 7.25-7.30 (m, 5H);
13C NMR (125 MHz, ppm, CDCl3) δ 27.82, 28.05, 47.90, 48.20, 49.81, 50.39, 61.23, 66.42, 69.92, 72.12, 80.08, 127.93, 128.14, 135.25, 154.99, 155.19, 169.94, 170.07;
IR (neat, cm-1) 3449, 2934, 2872, 1751, 1701, 1458, 1400, 1367, 1252, 1143;
Anal. Calcd for C18H27NO6: C, 61.17; H, 7.70; N, 3.96. Found: C, 60.01; H, 7.75; N, 4.13。
【0067】
[第2ステップ]: アルゴンガス雰囲気下,水素化ナトリウム(1.2g、24.8mmol、50% in meneral oil)のテトラヒドロフラン(THF)(10mL)溶液にベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(5.83g、16.5mmol)のTHF(20mL)溶液を0℃で滴下し、同温度で20分攪拌後、ヨードメタン(1.6mL、24.8mmol)を0℃で加えた。 反応混合液を室温で20時間攪拌し、ついでアイスバスで冷却しながら水を加えて反応を停止した.エーテル抽出(3回)し、有機層を乾燥後、減圧濃縮、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1、3/1)で精製して ベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(3.02g、8.21mmol)を収率50%で無色油状物として得た。
【0068】
Rf 0.54(ヘキサン/エチルアセテート=1/1);
1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3) δ 1.34 (d, 9H, J=51.8 Hz), 3.28 (d, 3H, J=2.7 Hz), 3.37-3.46 (m, 6H), 3.52 (dt, 2H, J=5.4Hz, 16.5 Hz), 4.02 (d, 2H, J= 34.8 Hz), 5.09 (d, 2H, J=4.5 Hz), 7.24-7.30 (m, 5H);
13C NMR (125 MHz, ppm, CDCl3) δ 24.93, 25.16, 44.68, 45.00, 46.70, 47.40, 55.78, 63.30, 67.22, 68.60, 76.95, 124.98, 125.14, 125.36, 132.49, 151.99, 152.31, 166.84, 166.96;
IR (neat, cm-1) 2880, 1751, 1701, 1560, 1458, 1400, 1366, 1117, 698, 617;
Anal. Calcd for C19H29NO6: C, 62.11; H, 7.96; N, 3.81. Found: C, 62.15; H, 8.16; N, 3.83。
【0069】
[第3ステップ]: アルゴン雰囲気下、ベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(3.02g、8.21mmol)のジクロロメタン(17mL)溶液にトリフルオロ酢酸(TFA)(9.0mL)を加え室温で7時間攪拌した。ついで、10%炭酸ナトリウム水溶液を加えて pH10に調整し、ジクロロメタン抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮してベンジル[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチルアミノ]アセテート(2.18g、8.19mmol)を黄色油状物として定量的に得た。
【0070】
Rf 0.32 (エチルアセテート/メタノール=20/1);
1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3) δ 1.99 (brs, 1H), 2.83 (t, 2H, J=5.3 Hz), 3.38 (s, 3H), 3.50 (s, 2H), 3.54 (t, 2H, J=4.6 Hz), 3.60-3.62 (m, 4H), 5.17 (s, 2H), 7.32-7.38 (m, 5H);
13C NMR (125 MHz, ppm, CDCl3) δ 48.46, 50.66, 58.76, 66.20, 70.00, 70.44, 71.64, 128.09, 128.33, 135.44, 171.84;
IR (neat, cm-1) 3350, 2876, 1736, 1560, 1458, 1117, 1030, 698, 619;
Anal. Calcd for C14H21NO4: C, 62.90; H, 7.92; N, 5.24. Found: C, 62.28; H, 8.20; N, 5.05。
【0071】
[第4ステップ]: ベンジル[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチルアミノ]アセテート(2.19g、8.19mmol)のメタノール(27mL)溶液に、パラジウムを10重量%担持させた活性炭(219mg)を室温で加え、水素ガスをパージした後、水素雰囲気下、室温で7時間攪拌した。セライトパッドをしきつめたグラスフィルターでPd/Cを除去し、セライト層をメタノールで洗浄し、濾液を減圧濃縮し[2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミノ]酢酸 1(1.38g、7.78mmol)を収率95%で黄色油状物として得た。
【0072】
1H NMR (500 MHz, ppm, MeOD) δ 3.21 (t, 2H, J=5.1 Hz), 3.38 (s, 3H), 3.51 (s, 2H), 3.57 (t, 2H, J=4.4 Hz), 3.65 (t, 2H, J=4.6 Hz), 3.73 (t, 2H, J=5.1 Hz);
13C NMR (125 MHz, ppm, MeOD) δ 48.13, 50.49, 59.16, 67.08, 71.05, 72.85, 171.10;
IR (neat, cm-1) 3414, 2827, 1751, 1630, 1369, 1111, 1028, 851, 799;
Anal. Calcd for C7H15NO4: C, 47.45; H, 8.53; N, 7.90. Found: C, 46.20; H, 8.49; N, 7.43。
【0073】
アルデヒド類4の合成


窒素雰囲気下、50mlナスフラスコにブロモ体 3 3.0g(16.3mmol)、無水テトラヒドロフラン(THF)50mlを仕込み、窒素気流下−78℃に冷却し、n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.59M)11.3ml(18.0mmol)を滴下し、同温度で30分撹拌した。次いで、ナスフラスコ中に無水ジメチルホルムアミド2.40gを滴下し、同温度でさらに30分攪拌した後、室温まで昇温し、さらに1時間攪拌した。反応液を水100ml中に注ぎ、酢酸エチル50mlを用いて油相を2回抽出した後、無水硫酸マグネシウムを用いて油相を乾燥した。マグネシウム化合物を濾別後、エバポレータを用いて油相を減圧濃縮し得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(WakosilC−300、展開液:ヘキサン/酢酸エチル=3:1(容積比))にて精製することで、目的物であるアルデヒド類 4を1.54g(収率71.1%)得た。
【0074】
1H−NMR(270MHz/CDCl3):
δ3.24(s、4H)、7.21(d、1H)、7.57(s、1H)、7.72(d、1H)、9.93(s、1H)
【0075】
実施例1
フラーレン誘導体A及びフラーレン誘導体Bの合成


窒素雰囲気下、50mlナスフラスコにアルデヒド類 4 0.19g(1.40mmol)とグリシン誘導体 1 0.19g(1.04mmol)、C60 0.50g(0.69mmol)、クロロベンゼン30mlを仕込み、窒素気流下130℃にて6時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却後、反応液をエバポレータを用いて減圧濃縮した。次いで、シリカゲルクロマトグラフィー(WakosilC−300)を用いて、得られた残渣からフラーレン誘導体の分離を行った。フラーレン誘導体の分離において、シリカゲルクロマトグラフィーの展開液として、二硫化炭素(CS)を用い、未反応のC60を分離し、回収した。次いで、展開液をトルエンと酢酸エチルの混合溶媒に切り替え、混合溶媒の比率を100:0(トルエンと酢酸エチルの体積比)から90:10(トルエンと酢酸エチルの体積比)とし、フラーレン誘導体を含む結晶を分離した。該結晶をメタノール10mlで洗浄し、減圧乾燥することで目的物である5(フラーレン誘導体A)を80mg(収率11.9%)得た。
次いで、展開液の混合溶媒の比率をトルエン/酢酸エチル=1:1(体積比)として分画を行った。分画した溶液を濃縮し、残渣をメタノール10mlで洗浄し、その後、減圧乾燥することで、式(12)で表される構造を2個以上有するフラーレン誘導体を合計116mg得た。式(12)で表される構造を2個以上有するフラーレン誘導体としては、例えば、6(フラーレン誘導体B)が挙げられる。


(12)
【0076】
フラーレン誘導体AをNMRで分析した結果を以下に示す。
1H−NMR(270MHz/CDCl):
δ2.82(m、1H)、3.16(brs、4H)、3.30−3.50(m、1H)、3.45(s、3H)3.65(m、2H)、3.72−3.80(m、2H)、3.90−4.10(m、2H)、4.28(d、1H)、5.10(s、1H)、5.20(d、1H)、7.06(d、1H)、7.40―7.70(brd、1H)。
【0077】
実施例2
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
電子供与体としてレジオレギュラーポリ3−ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、ロット番号:09007KH)を1%(重量%)の濃度でクロロベンゼンに溶解させた。その後、フラーレン誘導体Aを電子供与体の重量に対して等倍重量となるように電子受容体として溶液に混合した。ついで、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液を作製した。
【0078】
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。次に、前記塗布溶液を用い、スピンコートにより塗布し、有機薄膜太陽電池の活性層(膜厚約100nm)を得た。その後、窒素雰囲気下130℃の条件で10分間ベークを行った。その後、真空蒸着機によりフッ化リチウムを4nmの厚さで蒸着し、次いでAlを100nmの厚さで蒸着した。蒸着のときの真空度は、すべて1〜9×10-3Paであった。また、得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた有機薄膜太陽電池の開放端電圧、光電変換効率は、ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して求めた。開放端電圧の結果を表1に示す。また、光電変換効率は3.0%であった。
【0079】
実施例3
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
実施例2におけるフラーレン誘導体Aを実施例1で製造した式(12)で表される構造を2個以上有するフラーレン誘導体にかえた以外は実施例2と同様の操作を行い、開放端電圧を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
比較例1
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
実施例2におけるフラーレン誘導体Aを[60]−PCBM(Phenyl C61-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製、商品名E100、ロット番号:9A0104A)にかえた以外は実施例2と同様の操作を行い、開放端電圧を測定した。開放端電圧の結果を表1に示す。また、光電変換効率は2.6%であった。
【0081】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される構造を有するフラーレン誘導体。

(1)
[式中、Rは1価の有機基を表す。rは0〜4の整数を表す。]
【請求項2】
式(1)で表される構造を1〜4個有する請求項1に記載のフラーレン誘導体。
【請求項3】
式(2a)又は式(2b)で表される請求項1又は2に記載のフラーレン誘導体。

(2a)
[式中、A環は炭素数60以上のフラーレン骨格を表す。R及びrは、前述と同じ意味を表す。]

(2b)
[式中、A環は炭素数60以上のフラーレン骨格を表す。R及びrは、前述と同じ意味を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。複数個あるrは、同一でも相異なってもよい。]
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物。
【請求項5】
電子供与性化合物が高分子化合物である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に請求項1〜3のいずれかに記載のフラーレン誘導体を含む層を有する有機光電変換素子。
【請求項7】
陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に請求項4又は5に記載の組成物を含む層を有する有機光電変換素子。
【請求項8】
陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に活性層を有する有機光電変換素子であって、請求項1〜3のいずれかに記載のフラーレン誘導体と溶媒とを含む溶液を該陽極又は該陰極上に塗布して有機層を形成し、次いで、該有機層を加熱して該活性層を形成することを特徴とする有機光電変換素子。
【請求項9】
陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に活性層を有する有機光電変換素子であって、請求項4又は5に記載の組成物と溶媒とを含む溶液を該陽極又は該陰極上に塗布して有機層を形成し、次いで、該有機層を加熱して該活性層を形成することを特徴とする有機光電変換素子。

【公開番号】特開2011−35116(P2011−35116A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178996(P2009−178996)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】