説明

フリーアクセス床用床パネル

【課題】パーティクルボードを基材として採用し、長期にわたり変形を生じないで安定的に使用することができ、材料費や加工費がより安価であるフリーアクセス床用床パネルを提供すること。
【解決手段】上下面に近接した部位が高密度をなす方形のパーティクルボード1と、該パーティクルボードに略同形をなすと共に抜け止め加工を施され且つ尖端を有する多数の切起し突片7を立設した金属板5とよりなり、該パーティクルボード下面に該金属板を圧接することにより該金属板における多数の該切起し突片が該パーティクルボードに圧入された状態で該パーティクルボード下面に該金属板が一体的に接合されているフリーアクセス床用床パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物におけるコンクリート床等の床版上に空間を保持して多数の床パネルを敷設し、この床パネルと床版との間に形成される空間を、情報通信や電力等のケーブルを配置したり、空調用のダクトに利用したりすることのできるフリーアクセス床に使用する床パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
方形で4隅を脚柱で支持されるこの種の床パネルは、従来、軽金属鋳造により製造されるものや、内部空間を保持するように鋼板を成形加工して外皮を構成すると共に内部空間にセメントモルタルを注入固化させたもの等が提案されている。このような床パネルは一般的に材料費や加工費が高額であり、より安価な床パネルが提供されることが要望されている。発明者は安価で加工も容易な木質系材料であるパーティクルボードの採用を検討してきた。この種の床パネルでは、その上面にタイルカーペット等を敷設して使用するために、パーティクルボードを採用しても摩耗等の危惧は少ないが、パーティクルボード単体を床パネルとして使用すると、板厚の割りに剛性が低く、即ちパーティクルボード上面に載荷した場合に撓みが過大となり、そのままでは床パネルとしては不適当と判断された。そしてこの撓みは載荷時にパーティクルボードの上側、即ち圧縮側での変形は少ないが、パーティクルボードの下側、即ち引張り側では、可成りの伸び変形がみられることによって生じることが判明した。
【0003】
そこでパーティクルボードの下側に引張り応力に対して変形の僅少な金属板を接合することによってパーティクルボードにおける引張り側の伸び変形を制限した床パネルを開発するに至った。接合方法としてパーティクルボードと金属板とを接着剤を施して接合する場合には、接着剤固化のために可成りの養生時間を必要とするばかりか、繰り返し載荷等によってパーティクルボードの接着面側が脆くなり破損して両者が剥離する危惧が生じることが判明した。そこで両者の接合をパーティクルボードの内部に向けた立体的な接合手法によるものとすることを検討した。立体的な接合手法に関して、多数の係合突起を立ち上げた補強板上に軽量コンクリートを流し込み固化した建築用パネル(例えば、特許文献1参照。)が知られているが、パーティクルボードは打設前のコンクリートのような流動体ではないので、このような技術を直ちに採用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−333874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、パーティクルボードを基材として採用し、長期にわたり変形を生じないで安定的に使用することができ、材料費や加工費がより安価であるフリーアクセス床用床パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のフリーアクセス床用床パネルは、上下面に近接した部位が高密度をなす方形のパーティクルボードと、該パーティクルボードに略同形をなすと共に抜け止め手段を施され且つ尖端を有する多数の切起し突片を立設した金属板とよりなり、該パーティクルボード裏面に該金属板を圧接することにより該金属板の該多数の切起し突片が該パーティクルボードに圧入された状態で該パーティクルボード裏面に該金属板が一体的に接合されていることを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、次のような効果を奏する。
A.下側の引張り応力による伸び変形が大きいパーティクルボードの下面に、引張り応力による変形が僅少な金属板を接合することにより、全体として剛性が大きく撓みの少ないフリーアクセス床用床パネルを得ることができる。
B.パーティクルボードと金属板との接合は、金属板の切起し突片をパーティクルボードに圧入して行われるために、接着剤による接合よりも安定した機械的な接合が完成し、パーティクルボード下側の引張り応力を金属板に十分に伝達することができ、より有効に撓みを防止をすることができる。
C.金属板の切起し突片には抜け止め手段が施されているので、永年の使用にもパーティクルボードと金属板とが分離することなく、一体的な接合を保持することができる。
D.床パネルの材料として、安価なパーティクルボードと最小限の鋼板等の金属板とを使用するため材料費を節約することができる。
E.製造時にパーティクルボードと金属板との圧接による比較的簡単な乾式工法が採用されるので、接着剤による接合方法と比較して、接着剤の保管、管理、塗布等の設備が不要であると共に接着剤固化のための養生期間も不要であり、全体の加工費を節約することができる。
【0008】
F.4隅で支持されるフリーアクセス床用床パネルにおいて、床パネル下面に最大の引張り応力が作用する金属板の各辺に近接して多数の切起し突片が高密度に立設される場合には、各切起し突片に作用する応力が平均化されることになるので、応力集中を回避することができる。
G.金属板の切起し突片における抜け止め手段を切起し突片の立設方向を軸とする捻れ形状突片により形成されるものとした場合には、パーティクルボードに圧入する際に切起し突片の屈曲を防止すると共に、圧入後はパーティクルボードの接触面で捻れを戻そうとする増加した摩擦力によって大きい抜け止め効果を発揮する。
H.床パネル全体が熱収縮合成樹脂フィルムの収縮加工によって密着被覆されている場合には、パーティクルボードの吸湿を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例における床パネル上面側の斜視図である。
【図2】同様に床パネル下面側の斜視図である。
【図3】同様に床パネルの縦断面図である。
【図4】同様に金属板における切起し突片を示す部分斜視図である。
【図5】同様に床パネル製造における圧接工程を示す説明図である。
【図6】配列の異なる切起し突片を有する床パネルの下面図である。
【図7】他の配列の異なる切起し突片を有する床パネルの下面図である。
【図8】他の配列の異なる切起し突片を有する床パネルの下面図である。
【図9】他の配列の異なる切起し突片を有する床パネルの下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態について、以下実施例において、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
【実施例】
【0011】
本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。
図1、図2および図3に示される本発明に係るフリーアクセス床用床パネルは、建造物の床スラブ上にその4隅を支柱により支持されることにより室内床面を形成するための床部品である。図中符号1は床パネルの主体をなす方形のパーティクルボードを示し、符号5はパーティクルボード1の下面に接合されパーティクルボード1よりも稍小さめの方形をなす金属板を示している。パーティクルボード1は、上下面に近接した部位が高密度をなすように木材小片を結合材の介在のもと熱圧して製造されたものが使用される。4隅には支柱を固定するための凹窪部2が設けられ、またその1辺には配線挿通用の切欠部3が設けられている。切欠部3は図示のように1辺にのみ設けられる場合もあるがその他の辺も含めて複数設けられる場合や切欠部3が存在しない場合もある。図中符号4は配線挿通を行わない場合に切欠部3を閉じるために使用する別体の切欠蓋である。
【0012】
金属板5としては鋼板、アルミニウム板等が使用される。金属板5にはパーティクルボード1の切欠部3に対応する凹部6が設けられると共に多数の切起し突片7が立設されている。切起し突片7は、図4に示されるように、切起し突片7の立設方向を軸とする捻れ形状8に形成されており、その先に尖端9が形成されている。切起し突片7の捻れ形状8は、後述するようにパーティクルボード1内で抜け止め手段として作用するが、例えば切起し突片7側面に鋸歯突起を設ける等の抜け止め手段を用いてもよい。多数の切起し突片7は、図2に示される態様では、板内の数カ所に中心を有する弧に沿って、且つ板の各辺に近接して高密度に配列した状態で立設されている。切起し片7の他の配列については後述する。このようにフリーアクセス床用床パネルの材料として、安価なパーティクルボード1と鋼板等の金属板5とを使用するため材料費を節約することができる。
【0013】
図5に示されるように、パーティクルボード1と金属板5との一体的な接合はプレス機械10によって行われる。即ち、プレス機械10の上盤11と下盤12との間に、金属板5における多数の切起し突片7がパーティクルボード1に向き合うようにパーティクルボード1と金属板5とを介在させ、矢印の方向にプレス加圧すれば、金属板5における多数の切起し突片7がパーティクルボード1に突き刺されて圧入し両者が圧接され一体化された接合が完成する。切起し突片7には尖端9が形成されているためにパーティクルボード1に対する切起し突起7の圧入は容易に行われる。このようにパーティクルボード1と金属板5との一体的な接合は圧接による比較的簡単な乾式工法で行われるために、接着剤による接合方法と比較して、接着剤の保管、管理、塗布等の設備が不要であると共に接着剤固化のための養生期間も不要であり、全体の加工費を節約することができる。金属板5の切起し突片7には抜け止め手段が施されているので、永年の使用にもパーティクルボード1と金属板5とが分離することなく、一体的な接合を保持することができる。特に金属板5の切起し突片7における抜け止め手段を切起し突片7の立設方向を軸とする捻れ形状8に形成されるものとした場合には、パーティクルボード1に圧入する際に切起し突片7の屈曲を防止すると共に、圧入後はパーティクルボード1の接触面で捻れを戻そうとする増加した摩擦力によって大きい抜け止め効果を発揮する。
【0014】
完成したフリーアクセス床用床パネルは、載荷時に下側の引張り応力による伸び変形が大きいパーティクルボード1の下面に、引張り応力による変形が僅少な金属板5を接合することにより、全体として剛性が大きく撓みのない製品を得ることができる。またパーティクルボード1と金属板5との接合は、金属板5の切起し突片7をパーティクルボード1に圧入して行われるために、接着剤による接合よりも機械的に安定した接合が完成し、パーティクルボード1下側の引張り応力を金属板5に十分に伝達することができるのでより有効に撓みを防止することができる。金属板5における多数の切起し突片7の配列は、図2に示された態様以外の態様も採用される。図6に示される床パネルでは、多数の切起し突片7は床パネル全体に縦横整列状に且つ一様に配列されており、またこの床パネルの場合には床パネルの対辺に2個の配線挿通用の切欠部3を備えている。そして図7に示される床パネルでは、多数の切起し突片7は床パネル全体に千鳥状に且つ一様に配列されており、図6に示される態様と同様に2個の配線挿通用の切欠部3を備えている。
【0015】
さらに図8に示される床パネルでは、多数の切起し突片7は床パネルの中心から放射状に各辺に近接するに従い高密度に立設される。4隅で支持されるフリーアクセス床用床パネルにおいて、図8に示されるように床パネル下面において最大の引張り応力が作用する金属板5の各辺に近接して多数の切起し突片7が高密度に立設される場合には、各切起し突片7に作用する応力が平均化されることになるので、特定の切起し突片7の応力集中を回避することができる。前記した図2に示される態様についても応力集中回避に関して同様のことが言える。なお図8に示される態様では床パネルに配線挿通用の切欠部3は存在しない。また図9には床パネル中央付近には切起し突片7が存在しない態様が示されている。前述のように床パネル下面の各辺に近接する箇所では最大の引張り応力が作用するために切起し突片7を相当数配置しなければならないが、他方引張り応力の小さい床パネル中心付近では必ずしも切起し突片7を配置する必要性がない。
【0016】
パーティクルボード1に金属板5を接合した状態で床パネルは完成しているが、さらに床パネル全体を熱収縮合成樹脂フィルムの収縮加工によって熱収縮合成樹脂フィルムを密着被覆すれば、床パネルの吸湿、吸水を防止してパーティクルボード1の変形や脆化を防止することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 パーティクルボード
5 金属板
7 切起し突片
8 捻れ形状
9 尖端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下面に近接した部位が高密度をなす方形のパーティクルボードと、該パーティクルボードに略同形をなすと共に抜け止め加工を施され且つ尖端を有する多数の切起し突片を立設した金属板とよりなり、該パーティクルボード下面に該金属板を圧接することにより該金属板における多数の該切起し突片が該パーティクルボードに圧入された状態で該パーティクルボード下面に該金属板が一体的に接合されていることを主な特徴とするフリーアクセス床用床パネル。
【請求項2】
多数の該切起し突片は、該金属板の各辺に近接して高密度に立設されることを特徴とする請求項1記載のフリーアクセス床用床パネル。
【請求項3】
該切起し突片の該抜け止め手段は、該切起し突片の立設方向を軸とする捻れ形状により形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のフリーアクセス床用床パネル。
【請求項4】
全体が熱収縮合成樹脂フィルムの収縮加工によって密着被覆されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフリーアクセス床用床パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−219982(P2011−219982A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90034(P2010−90034)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】