説明

フルオロアルキルニトリルを調製する方法

本発明は、フッ素化カルボキサミドをハロゲン化物およびフッ素化カルボン酸と反応させることによってフルオロアルキルニトリルを調製する方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロアルキルカルボキサミドから出発してフルオロアルキルニトリルを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロアルキルニトリルは、活性農薬成分を調製するための重要な中間体である。
【0003】
US2939878には、フルオロニトリルが、500−750℃の温度でクロロジフルオロメタンおよび塩化シアンから出発して得られることが開示されている。この非選択的反応は、トリフルオロアセトニトリル、クロロジフルオロアセトニトリル、2−クロロテトラフルオロプロピオニトリルおよびさらなるフッ素化低沸点物の混合物をもたらす。
【0004】
さらなる特許出願(JP59118751A)には、800℃の温度での式RFCClのクロロフルオロアルカンとアンモニアとの反応が記載されている。同じ方法が、HellbergおよびMassonne(Chemiker−Ztg./Chem.Apparatur/Verfahrenstechnik、第93巻(1969年)第6号、209−211頁)に記載されている。R113aは、アンモニアと500−800℃で反応させる。ここでも、生成物の混合物が得られる(CFCN、CFCl、CFH、CFCCl、CCl、CCl、CCl、CFCl)。
【0005】
Grunewaldら(J.Med.Chem.2006年、49、2939−2952頁)およびまたSwarts(Bulletin Societes Chemiques Belges、1922年、第31巻、364−365頁)は、ジフルオロアセトアミドと五酸化リンとから出発してジフルオロアセトニトリルを調製することについて記載している。これは、2種の固体を加熱し、揮発性ニトリルを−78℃で凝縮させることを伴う。しかし、反応容器にそのまま残る固体反応残渣は、除去することが困難である。
【0006】
さらなる方法には、アセトニトリルの電気化学的フッ素化が記載されている(Masatake HarutaおよびNobuatus Watanabe、J.Fluorine Chemistry、7(1976年)159−177頁)。この反応は非選択的に進行し、反応生成物の混合物がここでも得られる。
【0007】
Foulletier(EP55651B1)は、400℃でのトリクロロアセトニトリルの気相フッ素化について記載している。ここでも、混合物が得られる。
【0008】
Parkerは、Synthetic Communications(第34巻、2004年、903−907頁)において、ピリジン中トリフルオロアセトアミドとトリフルオロ酢酸無水物から出発してトリフルオロアセトニトリルを調製することについて記載している。この方法における不利点は、化学量論的に使用されなければならない高価なトリフルオロ酢酸無水物の使用である。
【0009】
上記方法はすべて、特殊な装置、非常に高い温度、高価で有害な反応剤が必要とされることを特徴とし、所望の生成物は、複雑な単離によってのみ生成物の混合物から単離され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第2939878号明細書
【特許文献2】特開昭59−118751号公報
【特許文献3】欧州特許第55651号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Chemiker−Ztg./Chem.Apparatur/Verfahrenstechnik、第93巻(1969年)第6号、209−211頁
【非特許文献2】J.Med.Chem.2006年、49、2939−2952頁
【非特許文献3】Bulletin Societes Chemiques Belges、1922年、第31巻、364−365頁
【非特許文献4】Masatake HarutaおよびNobuatus Watanabe、J.Fluorine Chemistry、7(1976年)159−177頁
【非特許文献5】Parker、Synthetic Communications(第34巻、2004年、903−907頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この従来技術から出発して、本発明の目的は、好ましくは簡単で低価格な仕方で行われ得る、フッ素化アルキルニトリルを調製する方法を提供することである。この望ましい方法によって得られるフッ素化アルキルニトリルは、好ましくは高収率および高純度で得られなければならない。より詳細には、この望ましい方法は、望ましい目標化合物が、複雑な精製方法の必要性なしに得られることを可能にしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、一般式(I)
【0014】
【化1】

(式中、
およびXは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、水素、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキル、C5−18−アリール、C7−19アルキルアリールまたはC7−19−アリールアルキルである。)
のフルオロアルキルニトリルを調製する方法であって、
式(II)
【0015】
【化2】

(式中、
およびXは、それぞれ上に定義された通りである。)
のフッ素化カルボキサミドを、塩基および式(III)
【0016】
【化3】

(式中、
およびYは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、水素、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキル、C5−18−アリール、C7−19−アルキルアリールまたはC7−19−アリールアルキルである。)
のフッ素化カルボン酸の触媒量の存在下で、
式(IV)
【0017】
【化4】

(式中、Rは、C1−12−アルキル、C3−8−シクロアルキル、C1−12−ハロアルキル、C5−18−アリール、C7−19−アリールアルキルまたはC7−19−アルキルアリールであり、Halは、ハロゲンである。)
の酸ハロゲン化物と反応させることを特徴とする方法による本発明によって達成された。
【0018】
上記の一般式(I)に示されるXおよびXの基の好ましい、特に好ましいおよび非常に特に好ましい定義は、以下で説明される。
【0019】
およびXは、好ましくは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、水素、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキルまたはC5−18−アリールであり、
およびXは、より好ましくは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、水素またはC1−12−ハロアルキルであり、
およびXは、最も好ましくは、それぞれ独立して、フッ素、水素またはC1−12−ハロアルキルである。
【0020】
驚くべきことに、式(I)のフッ素化アルキルニトリルは、本発明の条件下で、高純度で良好な収率で調製することができ、それにより、本発明による方法は、従来技術に関連して記載される不利点を有しない。
【0021】
本発明による方法は、以下のスキーム(I)で示すことができる:
【0022】
【化5】

(式中、X、X、R、Halは、それぞれ上に定義された通りである。)。
【0023】
スキーム(I)
一般的な定義
本発明に関連して、別に定義されない限り、「ハロゲン」(Hal)という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される元素を含み、フッ素、塩素および臭素を使用することが好ましく、フッ素および塩素を使用することが特に好ましい。
【0024】
場合によって、置換された基は、一置換または多置換であってもよく、ここで、多置換の場合、置換基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
1個または複数のハロゲン原子(−Hal)で置換されたアルキル基は、例えば、トリフルオロメチル(CF)、ジフルオロメチル(CHF)、CFCH、ClCH、CFCClから選択される。
【0026】
本発明に関連して、異なって定義されない限り、アルキル基は、直鎖、分枝または環状の飽和炭化水素基である。
【0027】
「C−C12−アルキル」という定義は、アルキル基について本発明で定義される最大範囲を包含する。具体的には、この定義は、例えば、メチル、エチル、n−、イソ−プロピル、n−、イソ−、sec−およびt−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、1,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、n−ヘプチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシルの意味を包含する。
【0028】
本発明の文脈において、異なって定義されない限り、アリール基は、O、N、PおよびSから選択される1個、2個またはそれより多いヘテロ原子を有し得る芳香族炭化水素基である。
【0029】
「C5−18−アリール」という定義は、5から18個の骨格炭素原子を有するアリール基について本明細書で定義される最大範囲を包含し、ここで、炭素原子は、ヘテロ原子と交換され得る。具体的には、この定義は、例えば、シクロペンタジエニル、フェニル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクタテトラエニル、ナフチルおよびアントラセニル;2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−イル、1,2,4−チアジアゾール−5−イル、1,2,4−チアゾール−3−イル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−イルおよび1,3,4−トリアゾール−2−イル;1−ピロリル、1−ピラゾリル、1,2,4−トリアゾール−1−イル、1−イミダゾリル、1,2,3−トリアゾール−1−イル、1,3,4−トリアゾール−1−イル;3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イルおよび1,2,4−トリアジン−3−イルの意味を包含する。
【0030】
本発明の文脈において、異なって定義されない限り、アルキルアリール基(アラルキル基)は、アリール基によって置換されているアルキル基であり、C1−8−アルキレン鎖を有していてもよく、アリール骨格中に、O、N、PおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を有していてもよい。
【0031】
「C7−19−アラルキル基」という定義は、骨格中に合計7から19個の原子、およびアルキレン鎖を有するアリールアルキル基について、本明細書で定義される最大範囲を包含する。具体的には、この定義は、例えば、ベンジルおよびフェニルエチルの意味を包含する。
【0032】
本発明の文脈において、異なって定義されない限り、アルキルアリール基(アルカリル基)は、アルキル基で置換されており、C1−8−アルキレン鎖を有し、アリール骨格中にO、N、PおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を有し得るアリール基である。
【0033】
「C7−19−アルキルアリール基」という定義は、骨格中に合計7から19個の原子、およびアルキレン鎖を有するアルキルアリール基について、本明細書で定義される最大範囲を包含する。具体的には、この定義は、例えば、トリル−、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジメチルフェニルの意味を含む。
【0034】
フッ素化カルボン酸(III)
本発明によって使用されるフッ素化カルボン酸は、一般式(III)
【0035】
【化6】

(式中、
およびYは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、水素、C1−12−アルキル、C1−12ハロアルキル、C5−18−アリール、C7−19−アルキルアリールまたはC7−19−アリールアルキル、好ましくは、水素、フッ素、塩素、C2−8−アルキルまたはC2−8−ハロアルキル、より好ましくは、フッ素、塩素、水素、C3−6−アルキル、CFまたはCFHである。)
の化合物である。
【0036】
本発明によって適切なフッ素化カルボン酸の例は、トリフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、ジフルオロクロロ酢酸、クロロフルオロ酢酸、2,3,3,3−テトラフルオロプロピオン酸、2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸、2,2−ジフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロプロピオン酸、2,3,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタンカルボン酸である。
【0037】
使用される式(II)のフッ素化アルキルアミドに対する式(III)のフッ素化カルボン酸のモル比は、例えば、0.05から1、好ましくは0.11から0.8、より好ましくは0.2から0.7であり得る。フッ素化カルボン酸のより大きい量(1を超えるモル比)の使用は、問題ないが、経済的ではない。
【0038】
酸ハロゲン化物(IV)
上記の式(II)のフッ素化アルキルアミドは、式(IV)
【0039】
【化7】

の酸ハロゲン化物の添加によって変換される。
【0040】
式(IV)において、Rは、C1−12−アルキル、C3−8−シクロアルキル、C1−12−ハロアルキル、C5−18−アリール、C7−19−アリールアルキルまたはC7−19−アルキルアリール、好ましくはC5−18−アリールまたはC2−8−アルキル、より好ましくはC3−6−アルキルまたはC−アリールから選択され、
Halは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素、より好ましくは塩素である。
【0041】
本発明によって適切な酸ハロゲン化物の例は、塩化アセチル、塩化ピバロイル、塩化2,2−ジメチルブチリル、塩化イソバレリルおよび塩化ベンゾイルである。
【0042】
使用される式(II)のフッ素化アルキルアミドに対する式(IV)の酸ハロゲン化物のモル比は、例えば、0.5から5、好ましくは1から3、より好ましくは2から2.5であり得る。
【0043】
塩基
本発明による方法は、塩基の存在下で行われる。適切な塩基は、例えば、置換または非置換のピリジン、および置換または非置換のキノリンである。置換または非置換のピリジン、および置換または非置換のキノリンを使用することが好ましい。
【0044】
塩基の好ましい例は、ピリジン、3−ピコリン、4−ピコリン、キノリン、キナルジン、ハロゲン化ピリジンである。ピリジン、4−ピコリン、2−クロロピリジンを使用することが特に好ましい。
【0045】
使用される式(III)のフッ素化カルボン酸に対する塩基のモル比は、例えば、0.5から10、好ましくは1から8、より好ましくは1.5から6であり得る。
【0046】
塩基のより大きい量の使用は、問題ないが、経済的ではない。
【0047】
一般式(I)の化合物を調製する反応は一般に、減圧下、標準圧下または高圧下で行われ得る。用いられる温度は同様に、使用される基質に応じて変えることができ、当業者による日常的な試験で容易に決定することができる。例えば、一般式(I)の化合物を調製する反応は、−50から250℃、好ましくは0から170℃の温度で行われ得る。10から140℃の温度で反応を行うことが特に好ましい。
【0048】
本発明によって使用される式(II)のフッ素化アルキルアミドは、市販されているまたは文献の方法(WO03/080563)によって容易に調製され得る。
【0049】
溶媒
式(I)を有する化合物を与える式(II)のフッ素化アルキルアミドの反応は、溶媒の存在下で行われ得る。反応中さらなる溶媒なしで済ますことが好ましい。適切な溶媒には、以下が含まれる:ハロ炭化水素および芳香族炭化水素、特にクロロ炭化水素、例えば、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、塩化メチレン、ジクロロブタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ジフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、トリクロロベンゼン;エーテル、例えば、エチルプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテルならびにエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドのポリエーテル;ニトロ炭化水素、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン、クロロニトロベンゼン、o−ニトロトルエン;脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えば、ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、例えば、(例えば、40℃から250℃の)範囲の沸点を有する成分をもつ揮発油、シメン、70℃から190℃の沸点の範囲内の石油留分、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン;エステル、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、および炭酸ジメチル、炭酸ジブチル、炭酸エチレン。好ましい溶媒は、トルエンまたはクロロベンゼンである。
【0050】
一般式(I)の所望の化合物は、例えば、蒸留によって単離され得る。この場合、生成物(I)は、式(IV)の酸クロリドの計量添加の間に同時に留去され得る。さらなる単離の変形は、反応の終了後のみに蒸留またはろ過により式(I)の生成物を除去することである。
【0051】
本発明は、以下に続く実施例によって詳細に説明されるが、これらの実施例は、本発明を限定するというように解釈されるべきではない。
【0052】
調製実施例
【実施例1】
【0053】
【化8】

4.6gのトリフルオロ酢酸を48.9gのピリジン中に入れ、13.4gのトリフルオロアセトアミドと混合する。次いで、この溶液に、30.4gの塩化2,2−ジメチルプロパノイルを室温で5時間かけて滴下する。ガス状のトリフルオロアセトニトリルが、滴下の過程で直ちに形成する。これをより低い温度(例えば、−100℃)で凝縮させるまたはさらなる反応に直接導入することができる。収率は92%である。
【実施例2】
【0054】
2gのジフルオロ酢酸を34.8gのピリジン中に入れ、5gのトリフルオロアセトアミドと混合する。次いで、この溶液に、10.9gの塩化2,2−ジメチルプロパノイルを室温で2時間かけて滴下する。ガス状のトリフルオロアセトニトリルが、滴下の過程で直ちに形成する。収率は90%である。
【実施例3】
【0055】
2.4gのトリフルオロ酢酸を34.8gのピリジン中に入れ、5gのトリフルオロアセトアミドと混合する。次いで、この溶液に、12.4gの塩化2,2−ジメチルブチリルを室温で2時間かけて滴下する。ガス状のトリフルオロアセトニトリルが、滴下の過程で直ちに形成する。収率は84%である。
【実施例4】
【0056】
4.6gのトリフルオロ酢酸を48.9gのピリジン中に入れ、13.4gのトリフルオロアセトアミドと混合する。次いで、この溶液に、35.5gの塩化ベンゾイルを室温で5時間かけて滴下する。ガス状のトリフルオロアセトニトリルが、滴下の過程で直ちに形成する。収率は86%である。
【実施例5】
【0057】
【化9】

11.6gのトリフルオロ酢酸を146.7gのピリジン中に入れ、19.2gのジフルオロアセトアミドと混合する。次いで、この溶液に、51.2gの塩化2,2−ジメチルプロパノイルを60℃で3時間かけて滴下する。その後、反応混合物を100℃に加熱し、ジフルオロアセトニトリルを留去する。これにより、ジフルオロアセトニトリルが88%の収率で得られる。
【実施例6】
【0058】
【化10】

5.5gのトリフルオロ酢酸を78gのピリジン中に入れ、16.1gのペンタフルオロプロピオンアミドと混合する。次いで、この溶液に24.4gの塩化2,2−ジメチルプロパノイルを30℃で4時間かけて滴下する。ガス状のペンタフルオロプロピオニトリルが、滴下の過程で直ちに形成する。これをより低い温度(例えば、−80℃)で凝縮させるまたはさらなる反応に直接導入することができる。収率は82%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、
およびXは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、水素、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキル、C5−18−アリール、C7−19アルキルアリールまたはC7−19−アリールアルキルである。)
のフルオロアルキルニトリルを調製する方法であって、
式(II)
【化2】

(式中、
およびXは、それぞれ上に定義された通りである。)
のフッ素化カルボキサミドを、塩基および式(III)
【化3】

(式中、
およびYは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、水素、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキル、C5−18−アリール、C7−19−アルキルアリールまたはC7−19−アリールアルキルである。)
のフッ素化カルボン酸の触媒量の存在下で、
式(IV)
【化4】

(式中、Rは、C1−12−アルキル、C3−8−シクロアルキル、C1−12−ハロアルキル、C5−18−アリール、C7−19−アリールアルキルまたはC7−19−アルキルアリールであり、Halは、ハロゲンである。)
の酸ハロゲン化物と反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
およびXが、それぞれ独立して、フッ素、塩素、水素、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキルまたはC5−18−アリールであり、
およびYが、それぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、C2−8−アルキルまたはC2−8−ハロアルキルであり、
Halが、塩素または臭素であり;
が、C2−8−アルキルまたはC5−18−アリールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
およびXが、それぞれ独立して、フッ素、塩素、水素またはC1−12−ハロアルキルであり、
およびYが、それぞれ独立して、フッ素、塩素、水素、C3−6−アルキル、CFまたはCFHであり、
が、C3−6−アルキルまたはC−アリールであり、
Halが塩素である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
フッ素化カルボン酸が、トリフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、ジフルオロクロロ酢酸、クロロフルオロ酢酸、2,3,3,3−テトラフルオロプロピオン酸、2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸、2,2−ジフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロプロピオン酸、2,3,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタンカルボン酸からなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
酸ハロゲン化物が、塩化アセチル、塩化ピバロイル、塩化2,2−ジメチルブチリル、塩化イソバレリル、塩化ベンゾイルからなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
使用される一般式(II)のフッ素化アルキルアミドに対する一般式(III)のフッ素化カルボン酸のモル比が、0.05から1である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
使用される一般式(II)のフッ素化アルキルアミドに対する一般式(IV)の酸ハロゲン化物のモル比が、0.5から5である、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
塩基が、ピリジン、3−ピコリン、4−ピコリン、キノリン、キナルジン、ハロゲン化ピリジンからなる群から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
使用される一般式(III)のフッ素化カルボン酸に対する塩基のモル比が、0.5から10である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2012−529446(P2012−529446A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514369(P2012−514369)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003209
【国際公開番号】WO2010/142377
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】