説明

フルオロオレフィンの水素化のための触媒

フルオロオレフィンの水素化においてに有用な金属ベースの水素化触媒のための金属オキシフッ化物又は金属ハロゲン化物の担体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンを水素化するための触媒に関する。より詳しくは、本発明は、フルオロオレフィンを水素化するための担持触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
有用な生成物及び/又は中間体としてのヒドロフルオロカーボンの製造においては、フルオロオレフィンの接触水素化がしばしば用いられている。基材上に担持されているPdのような種々の金属は、非常に有効な水素化触媒と長く認識されている。これらの触媒は気相反応において特に有効である。
【0003】
幾つかの反応においては、これらの触媒の有効性は、担持基材上に少なくとも1種類の0価の金属を導入することによって増大させることができる。アルミナ、シリカ、チタニア、及びジルコニア、並びに酸化チタン、酸化マグネシウム、及び酸化ジルコニウムのような材料は、幾つかの水素化触媒反応のための公知の基材である(US−5,089,454)。Knunyantsら(Izv. Akad. Nauk. SSSR (1960) 1412-1418を参照)は、CFCF=CF(HFP)のCFCHFCHF(236ea)への、及びCFCF=CHF(1225ye)のCFCHFCHF(245eb)への水素化を触媒するために用いるPd/Al触媒を報告した。しかしながら、炭素/フッ素結合の水素化分解開裂が起こるために、反応中に少量のHFが生成し、これがパラジウムの標準的な担体として知られているアルミナ、シリカ、チタニア、及びジルコニアを攻撃して、触媒構造の変化及び触媒の失活が引き起こされる。日本国特許3543863においては、HFPを236aに水素化するためにHFの攻撃に対して抵抗性であるPd/炭素触媒を使用することが教示されている。米国特許5396000においては、1225yeを245ebに水素化するためにPd/炭素触媒を用いることが教示されている。しかしながら、これらの炭素担持金属触媒は、失活したら再生することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US−5,089,454
【特許文献2】日本国特許3543863
【特許文献3】米国特許5396000
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Izv. Akad. Nauk. SSSR (1960) 1412-1418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、HFの攻撃に対して抵抗性であるだけでなく、失活したら再生することができるフルオロオレフィンの水素化のための新しいタイプの触媒に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人らは、予期しなかったことに、金属オキシフッ化物及び特定の金属フッ化物上に担持した金属触媒はフルオロオレフィンの水素化に関して安定した活性を与え、一方で金属酸化物上に担持されているものは不安定な活性を示すことを見出した。
【0008】
したがって、本発明の一形態においては、(a)金属オキシフッ化物、又はCrF、TiF、及びZrFからなる群から選択される金属フッ化物を含む固体担体;及び(b)担体上又はその中に配置されている少なくとも1種類の元素状金属;を含み、好ましくは元素状金属が金属及び担体の合計重量を基準として約0.05〜約10重量%の量で存在する製造物品が提供される。幾つかの好ましい態様においては、触媒の担体は、Al、Cr、Ti、Zr、Mg等のオキシフッ化物、或いはCrF、TiF、及びZrFからなる群から選択される金属フッ化物からなる群から選択される。元素状金属の非限定的な例としては、Pd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、Au、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0009】
本発明の他の形態によれば、(a)少なくとも1種類の金属塩、少なくとも1種類の溶媒、及び金属フッ化物又は金属オキシフッ化物を接触させてスラリーを形成し;(b)スラリーから溶媒を除去して溶媒を含まない粉末を形成し;(c)場合によっては粉末をか焼し;(d)粉末を担持触媒に変換し;そして(e)担持触媒を、Hを含む気体状組成物と接触させて担持触媒を活性化し、ここで、活性化担持触媒は、約90〜約99.95重量%の金属フッ化物又は金属オキシフッ化物、並びに約0.05〜約10重量%の金属塩から誘導される0価の金属を含む;ことを含む触媒の製造方法が提供される。好ましい態様においては、かかる方法は、(a)金属成分の塩(例えば、Pdに関しては、Pd(NO、PdCl)を好適な溶媒中に溶解して溶液を形成し;(b)溶液中に好適な量の金属オキシフッ化物又は金属フッ化物を加えてスラリーを形成し;(c)スラリーから溶媒を除去してペーストを形成し;(d)ペーストを乾燥して溶媒を含まない粉末を形成し;(e)溶媒を含まない粉末を、N流中300〜500℃において2〜8時間か焼し;(f)か焼した粉末を微粉砕状態に粉砕し;(g)微細粉末を錠剤にペレット化し;そして(h)触媒ペレットを、使用前に、H又は希釈H流中150〜250℃において2〜4時間還元する;工程を含む。
【0010】
本発明の更に他の形態によれば、少なくとも1つの炭素−フッ素結合を有するオレフィンを含む反応物質を、オレフィンの水素化誘導体を含む反応生成物を形成するのに有効な反応条件下で担持水素化触媒と接触させることを含み、担持水素化触媒が、(a)Pd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、Au、及びこれらの任意の組合せから選択される元素状金属;及び(b)少なくとも約75重量%の、CrF、TiF、及びZrFからなる群から選択される金属フッ化物、又はオキシフッ化マグネシウム(II)、オキシフッ化アルミニウム(III)、オキシフッ化クロム(III)、オキシフッ化チタン(IV)、及びオキシフッ化ジルコニウム(IV)からなる群から選択される金属オキシフッ化物を含む担体;を含む、化合物を水素化する方法が提供される。この方法の好ましい態様は、(a)水素化触媒を含む反応容器に水素及びフルオロオレフィンを加え;そして(b)水素化触媒上でフルオロオレフィンを水素と反応させてヒドロフルオロカーボンを生成させる;工程を含む。特定のフルオロオレフィンの水素化によって製造することができるヒドロフルオロカーボンの非限定的な例としては、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(236ea)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(245eb)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)、1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(254fa)、及び1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(254eb)が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、フルオロオレフィンのヒドロフルオロカーボンへの水素化において、選択された担持金属触媒を用いる。金属成分の非限定的な例としては、Pd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、Au等が挙げられる。金属の装填量は、大きな範囲、例えば0.05〜10重量%の範囲内で変化させることができる。しかしながら、Ru、Ph、Pd、Pt、Ir等のような貴金属に関しては、金属の装填量は好ましくは5重量%より低く、より好ましくは1重量%より低い。本発明において有用な2種類の触媒担体:(i)金属オキシフッ化物、及び(ii)CrF、TiF、及びZrFから選択される金属フッ化物;が存在する。
【0012】
幾つかの好ましい態様においては、触媒担体は、金属、好ましくは二価、三価、及び四価金属、より好ましくは三価及び四価金属、最も好ましくは三価金属のオキシフッ化物である。金属成分としては、Mg2+、Al3+、Cr3+、Ti4+、及びZr4+が挙げられるが、これらに限定されない。一態様においては、金属オキシフッ化物は、フルオロオレフィンの水素化の反応温度よりも高い温度において十分に長い時間、対応する金属酸化物をHFによってフッ素化することによって製造される。したがって、金属オキシフッ化物中のフッ素含量は、主としてフッ素化プロセスにおいて採用される温度によって定められる。フルオロオレフィンの接触水素化中においては、かかる製造された金属オキシフッ化物とHFとの間に更なる反応は起こらない。
【0013】
幾つかの好ましい態様においては、触媒担体は、金属、好ましくは二価、三価、及び四価金属、より好ましくは三価及び四価金属、最も好ましくは三価金属のフッ化物である。金属成分としては、Cr3+、Ti4+、及びZr4+が挙げられる。一態様においては、金属フッ化物は、金属水酸化物をフッ化水素酸と反応させることによって製造される。金属が完全にフッ素化されるので、フルオロオレフィンの水素化中においては、金属フッ化物担体と副生成物として生成するHFとの間の反応は起こらない。
【0014】
幾つかの態様においては、本発明の触媒は、好ましくは、金属触媒成分の塩(例えば、Pdに関してはPd(NO又はPdCl)を、金属塩を実質的に溶解又は可溶化するのに十分な量の溶媒に加えることによって製造される。好ましい溶媒は、金属塩がその中に易溶性のものである。溶媒の選択は、特定の金属塩によって変化する可能性がある。本発明の触媒組成物を製造するために用いることができる溶媒の例としては、水、アルコール、エーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。有用なアルコールとしては、一価又は多価アルコールが挙げられる。最も好ましいアルコールは、一価であり、1〜5個の炭素原子を有するものである。最も好ましい溶媒は水である。
【0015】
次に、金属オキシフッ化物(例えばAlO)又は金属フッ化物(例えばAlF)を金属塩の溶液に加えてスラリーを形成する。スラリーが形成された後、溶媒の実質的に全部を除去して、金属塩及び金属オキシフッ化物(又は金属フッ化物)の混合物の固体塊を形成する。溶媒は1工程で除去することができるが、好ましい方法は、スラリーから溶媒の一部を除去してペーストを形成し、次にペーストを乾燥して固体塊を形成することである。溶媒を除去するために任意の通常の技術を用いることができる。かかる技術の例としては、室温又は昇温下での激しい撹拌、蒸発、沈降及び吸い出し、遠心分離、及び濾過が挙げられる。ペーストを形成するのに所望の量の溶媒を蒸発除去することが好ましい。次に、ペーストを任意の公的な方法によって乾燥して、自由流動の実質的に溶媒を含まない粉末を形成する。好ましい乾燥方法としては、最も好ましくは約110℃〜約120℃の温度におけるオーブン乾燥、及び噴霧乾燥が挙げられる。溶媒を含まないとは、溶媒除去/乾燥の後に、粉末に1重量%未満、好ましくは約0.5重量%以下、より好ましくは約0.1重量%以下の溶媒が残留し、最も好ましくは溶媒が残留しないことを意味する。溶媒を除去すると、粉末は金属塩及び金属オキシフッ化物(又は金属フッ化物)の粒子の混合物の固体塊(又は粉末)の形態をとる。
【0016】
場合によっては、金属塩及び金属オキシフッ化物(又は金属フッ化物)の混合物の固体塊を次にか焼する。か焼は、好ましくは約100℃〜約750℃の温度、より好ましくは約200℃〜約600℃の温度、最も好ましくは約300℃〜約500℃の温度で行う。か焼は、更に場合によっては、窒素又はアルゴンのような不活性ガスの存在下で行うことができる。
【0017】
か焼の後、粉末は、場合によってはより微粉砕された状態になるように更に粉砕する。粉末は、更に場合によっては、ペレットを形成するためにペレット化する。
次に、触媒ペレットを反応器中に装填し、使用の前に、水素又は希釈水素中、約50〜約500℃の温度、より好ましくは約100〜約300℃の温度、最も好ましくは約150〜約250℃の温度で2〜4時間還元する。
【0018】
また、長時間の使用後に、触媒を反応器内に配置した状態で周期的に再生することも有利である可能性がある。触媒の再生は、当該技術において公知の任意の手段によって行うことができる。1つの方法は、酸素又は窒素で希釈した酸素を、約200℃〜約600℃(好ましくは約350℃〜約450℃)の温度で約0.5時間〜約3日間触媒の上に通し、次に水素又は希釈水素中、約50℃〜約500℃(好ましくは約100℃〜約300℃)の温度で2〜4時間還元処理することによるものである。
【0019】
フルオロオレフィンの水素化はバッチ運転で行うことができると意図されるが、水素化反応は実質的に連続的な運転で行うことが好ましい。更に、幾つかの態様においては水素化反応は液相反応を包含することができるが、好ましい態様においては、水素化反応は、少なくとも2つの気相反応段階を含み、更により好ましくはこれらから構成されると意図される。
【0020】
反応段階の数に関し、本出願人らは、驚くべきことに且つ予期しなかったことに、少なくとも2つの反応段階を用いて、反応の第1段階を第1の比較的低い転化率を達成するのに有効な条件下で行って第1段階反応流出流を生成させ、反応の少なくとも第2の段階に第1段階流出流の少なくとも一部を供給して、これを第1の転化率よりも高い第2の転化率を達成するのに有効な条件下で行うことによって、全反応転化率及び選択率を比較的高いレベルで達成することができることを見出した。好ましくは、本発明にしたがって所望の転化を達成するように、第1及び第2段階のそれぞれにおいて反応条件を制御する。ここで用いる「反応条件」という用語は、ここに含まれる教示事項にしたがって供給材料の転化を得るために反応の操作者によって変化させることができる任意の1以上の処理パラメーターの特異制御及び手段制御を包含するように意図される。一例として(限定ではないが)、供給材料の転化は、以下の事項:反応温度、反応物質の流速、希釈剤の存在、反応容器中に存在する触媒の量、反応容器の形状及び寸法、反応圧力、及びこれらの任意の組合せ、並びにここに含まれる開示事項を考慮して当業者が利用することができ且つ彼らに公知の他のプロセスパラメーター:の任意の1以上を制御又は調節することによって制御又は調節することができる。
【0021】
本出願人らは、好ましい態様においては、水素化反応の第1段階において転化を制御する工程は、1種類以上の反応物質の供給速度に対する反応の第1段階において存在する触媒の量の慎重な選択及び制御、及び/又は反応温度の慎重な選択及び制御、並びに好ましくはこれらのプロセスパラメーターの両方の慎重な選択及び制御によって達成されることを見出した。反応の第1段階において用いる触媒の量を慎重に選択する工程は、供給材料の100%を転化するのに理論的に必要な触媒の量を見積もる工程を包含する。このような見積もりは、ここに含まれる教示事項を考慮すれば当業者に明らかな見積もりを行うための任意及び全ての公知の方法によって得ることができる。更に、触媒の量を慎重に選択する工程は、そうでなければ選択された他のプロセスパラメーターにおける供給速度下で供給材料の100%を転化するのに必要な用いる特定の触媒の量を求めるためにベンチ試験、パイロット試験、又は同様の試験を行うことを包含することもできる。これらの見積もりに基づいて、本発明の好ましい態様は、100%の転化率のために必要な量よりも相当に低く、更により好ましくは約10%〜約60%、より好ましくは約10%〜約40%、更により好ましくは約10%〜25%の供給オレフィンの転化率が得られるように十分に低い量の触媒を反応の第1段階において供給する工程を包含する。ここでも、当業者であれば、触媒の量を慎重に選択する工程に、減少した量の触媒を用いて更なるベンチ試験、パイロット試験、又は他の試験を行い、それにしたがって触媒の量を調節することを更に含ませることができることを認識するであろう。かかる全ての試験及び見積もりは、ここに含まれる教示事項を考慮して過度の実験を行わずに達成することができると意図される。
【0022】
本出願人らは、反応の第1段階において本発明にしたがって反応物質の比較的低い転化率を維持する工程は、所望のヒドロフルオロカーボンへの反応の選択率に対して有利な効果を有することを見出した。言い換えれば、本出願人らは、反応の第1段階において起こる転化の量は全水素化工程に関して所望の量よりも十分に低く制御されるが、ここに記載するように転化を制御することによって、第1反応段階において向上したより高い割合の供給材料が所望のヒドロフルオロカーボンに転化する(即ち向上した選択率が達成される)ことを見出した。より具体的には、第1反応段階における所望のヒドロフルオロカーボンへの選択率は、多くの態様において、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、多くの好ましい態様においては約97%以上であることが好ましい。
【0023】
幾つかの好ましい態様においては、第1反応段階において転化を制御する工程は、反応混合物の少なくとも一部を冷却することによって反応から熱を除去することを更に含む。当業者であればここに含まれる教示事項を考慮してかかる冷却を達成するための多くの手段及びメカニズムを過度の実験を行うことなく想到することができ、かかる手段及びメカニズムは全て本発明の範囲内であると意図される。
【0024】
好ましい態様においては、第1反応段階からの流出流の少なくとも一部を、直接か又は場合によっては幾つかの更なる処理の後に第2反応段階に供給して、ここで第1反応段階後の流出流中に残留する未反応のフルオロオレフィンを本発明にしたがってヒドロフルオロカーボンに転化する。より具体的には、第2反応段階又は存在する場合には後段の反応段階は、第2反応段階への供給流中に含まれるフルオロオレフィンを、第1反応段階における転化率よりも大きく、好ましくは相当に大きい転化率で転化させるのに有効な条件下で運転する。例えば、幾つかの好ましい態様においては、第2反応段階における転化率は、主として全転化工程に影響を与えるために用いられる反応段階の全数によって約20%〜約99%である。例えば、2段階反応システムから構成される態様においては、第2反応段階における転化率は好ましくは95%より大きく、更により好ましくは約100%であると意図される。しかしながら、ここに含まれる教示事項から当業者が認識するように、かかる2段階反応はヒドロフルオロカーボンへの所望の選択率を得るためには十分ではない可能性がある。かかる場合においては、転化工程に2より多い反応段階、例えば幾つかの態様においては10以上の多さの反応段階を含ませることができることは、本発明の範囲内である。
【0025】
反応容器それ自体の寸法及び形状並びに他の特徴は、本発明の範囲内において広範に変化させることができ、それぞれの段階に関係する容器は、上流及び下流の反応段階に関係する容器と異なるか又は同一であってよいと意図される。更に、転化を制御するのに必要な手段及びメカニズムが与えられるならば、全ての反応段階を単一の容器の内部で行うことができると意図される。例えば、幾つかの態様においては、それぞれの反応段階に関して単一の管状反応器を用いて、管状反応器全体にわたる触媒の量及び/又は分配を慎重に選択することによって転化の制御を与えることが望ましい。かかる場合においては、管状反応器の異なるセクションから除去されるか又はそれに加えられる熱の量を制御することによって、同じ管状反応器の異なるセクションにおける転化を更に制御することが可能である。
【0026】
本発明において開示する触媒組成物は、フルオロオレフィンのヒドロフルオロカーボンへの転化において有用である。本発明において開示する1種類以上の水素化触媒を、本発明による反応段階の1以上のために用いることができる。幾つかの好ましい態様においては、触媒は、好ましくはオキシフッ化アルミニウム上に担持されているパラジウムを含む。
【0027】
而して、本方法の幾つかの態様は、フルオロオレフィン及びHのような水素化剤を、第1反応段階において第1の量の触媒と接触させて、1種類又は複数のヒドロフルオロカーボン、未反応のフルオロオレフィン、及び水素を含む反応流を生成させ;この第1の流出流の少なくとも一部を、反応の第2段階において第2の量の触媒と接触させてヒドロフルオロカーボンを生成させる;ことを含み、触媒の第2の量は触媒の第1の量よりも多く、フルオロオレフィンへの転化率は反応の第2段階においてより高い。
【0028】
表1は、ヒドロフルオロカーボン、及びそれらをそれから得ることができるフルオロオレフィンの例(フルオロオレフィンは左欄、対応するヒドロフルオロカーボンは右欄)を示す。
【0029】
【表1】

【実施例】
【0030】
以下は本発明の例であり、限定するように解釈すべきではない。
実施例1:Pdを担持したフッ素化金属酸化物及び金属フッ化物の触媒上での1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンの水素化:
実施例1においては、3種類の担持Pd触媒を、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン(HFP)の水素化における転化率に関して比較する。より詳しくは、本発明による1重量%Pd/AlOを、1重量%Pd/AlF及び1重量%Pd/MgFに対して比較した。20mLのMonel充填材で希釈した2gの触媒を3/4インチのMonel管反応器中に充填し、10%−H/N流中200℃において2時間、その場で還元した。HFPを10g/時の速度で反応器中に供給し、1.5に等しいH/HFPのモル比にしたがってHを共供給した。表2に示すように、1重量%Pd/AlO触媒は100℃において約98%のHFP転化率及び約99%の236ea選択率を与え、1%Pd/AlF触媒は100℃において約80%のHFP転化率及び約99.5%の236ea選択率を示し、1%Pd/MgFは150℃において40%付近の活性及び約97%の236ea選択率を示し、3種類の触媒は全て236eaを形成するのに高度に選択性であることが示された。
【0031】
【表2】

【0032】
上記の記載は本発明の例示のみのものであると理解すべきである。本発明から逸脱することなく種々の代替及び修正が当業者によって想到することができる。したがって、本発明は、特許請求の範囲内のかかる代替、修正、及び変更の全てを包含すると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金属オキシフッ化物、又はCrF、TiFからなる群から選択される金属フッ化物を含む固体担体;及び
(b)担体上又はその中に配置されている少なくとも1種類の元素状金属;
を含み、元素状金属が金属及び担体の合計重量を基準として約0.05〜約10重量%の量で存在する製造物品。
【請求項2】
固体担体が、オキシフッ化マグネシウム(II)、オキシフッ化アルミニウム(III)、オキシフッ化クロム(III)、オキシフッ化チタン(IV)、及びオキシフッ化ジルコニウム(IV)からなる群から選択される金属オキシフッ化物から構成され、元素状金属が1種類以上の還元された0価の金属である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
固体担体が金属フッ化物から構成され、元素状金属が1種類以上の還元された0価の金属である、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
元素状金属が、Pd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、Au、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項2又は3に記載の物品。
【請求項5】
元素状金属が金属及び担体の合計重量の約0.05〜約10重量%を構成する、請求項2又は3に記載の物品。
【請求項6】
(a)少なくとも1種類の金属塩、少なくとも1種類の溶媒、及び金属フッ化物又は金属オキシフッ化物を接触させてスラリーを形成し;
(b)スラリーから溶媒を除去して溶媒を含まない粉末を形成し;
(c)場合によっては粉末をか焼して担持触媒を形成し;そして
(d)担持触媒を、Hを含む気体状組成物と接触させて担持触媒を活性化し、ここで、活性化担持触媒は、約90〜約99.95重量%の金属フッ化物又は金属オキシフッ化物、並びに約0.05〜約10重量%の金属塩から誘導される0価の金属を含む;
ことを含む触媒の製造方法。
【請求項7】
少なくとも1つの炭素−フッ素結合を有するオレフィンを含む反応物質を、オレフィンの水素化誘導体を含む反応生成物を形成するのに有効な反応条件下で担持水素化触媒と接触させることを含み、担持水素化触媒が、
(a)Pd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、Au、及びこれらの任意の組合せから選択される元素状金属を含む触媒;及び
(b)少なくとも約75重量%の、CrF、TiF、及びZrFからなる群から選択される金属フッ化物、又はオキシフッ化マグネシウム(II)、オキシフッ化アルミニウム(III)、オキシフッ化クロム(III)、オキシフッ化チタン(IV)、及びオキシフッ化ジルコニウム(IV)からなる群から選択される金属オキシフッ化物を含む担体;
を含む、化合物を水素化する方法。
【請求項8】
オレフィンがC〜C−フルオロオレフィン及びC〜C−ヒドロフルオロオレフィンからなる群から選択され、オレフィンの水素化誘導体がC〜Cヒドロフルオロアルカンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
接触工程が、オレフィンを、フッ素化反応器の第1段階中に、約10%〜約60%の供給オレフィンの転化率を与える速度で供給することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
生成物が未反応のオレフィンを更に含み;方法が、未反応のオレフィンを、フッ素化反応器の1以上の後段において反応させて、約20〜約100%の未反応オレフィンの更なる転化率を与えることを更に含む、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2013−503739(P2013−503739A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527896(P2012−527896)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/045827
【国際公開番号】WO2011/028415
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】