説明

フルオロカーボンエラストマーシリコーン加硫物

硬化性オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン基剤(A)と、任意選択の架橋剤(B)と、硬化剤(C)とを、上記オルガノポリシロキサンを硬化させるのに十分な量で混合する工程(I)、工程(I)の生成物を、フルオロカーボンエラストマー(D)と、任意選択の相溶化剤(E)と、任意選択の触媒(F)と混合する工程(II)、及びオルガノポリシロキサンを動的に加硫する工程(III)を含む、エラストマー基剤組成物を調製する方法であって、エラストマー基剤組成物中のフルオロカーボンエラストマー(D)とシリコーン基剤(A)との重量比が95:5〜30:70である、エラストマー基剤組成物を調製する方法を開示している。ここでエラストマー基剤組成物から得られた硬化ゴム組成物は、良好な耐燃料油特性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロカーボン及びシリコーンを含有するフルオロカーボンエラストマー基剤組成物を製造する方法、該方法によって調製される生成物、及び該生成物から得られる硬化フルオロカーボンゴムに関する。この硬化フルオロカーボンゴム組成物は、その組成物中にシリコーンが組み込まれているにもかかわらず、良好な耐燃料油特性を有している。
【背景技術】
【0002】
フルオロカーボンエラストマー類(米国試験材料協会(ASTM)によりFKM、FEP及びFFKMエラストマーに分類される)は、その特有で本質的な特性により、工業用ポリマーの中の重要な一群となっている。これらのエラストマーは、極めて過酷な化学的及び熱的条件下でその伸び及び引張強度を保持することで特に知られている。フルオロカーボンエラストマーには、そのフルオロカーボンエラストマーを基剤として得られた物品が、高温度での応用分野、及び/又はその物品が過酷な化学環境に曝露される応用分野で使用される、封止用Oリング、成型品、及び押出品としての用途がある。特に、フルオロカーボンエラストマーは、エンジンオイルの封止材、燃料ホース、各種Oリング、動力伝達経路の封止材、及び燃焼機関の運転条件と接している際にもその特性を維持しなくてはならないその他の部品などの自動車部品を作製するのに一般的に使用されている。しかし、フルオロカーボンエラストマーは高価なので、使用が制約される応用分野も多く、また他の例では、現行のフルオロカーボンエラストマーは、低温での可撓性又はモジュラス、及び低温でのデュロメーター硬度など、ある種の物理的固有特性を欠いている。
【0003】
炭化水素又はシロキサンを基剤とするポリマーを添加、又はそれらと組み合わせることによって改質したフルオロカーボンエラストマーを提供しようとする試みはほとんど成功していない。フルオロカーボンとこれらポリマーとの非相溶性のため、安定で均一な混合物を得ることが困難である。さらに、混合物は、相互に架橋可能でなければならない。フルオロカーボン及びシリコーンエラストマー組成物を提供している代表的な例としては、米国特許第4,942,202号、同第4,985,483号、同第5,010,137号、同第5,171,787号及び同第5,350,804号が挙げられる。
【0004】
米国特許第4,942,202号は、フルオロカーボンを含有する、ゴム組成物及び加硫ゴム生成物を教示している。’202号の組成物は、剪断変形下で有機過酸化物を、シリコーンゴム(I)、単独で使用する場合には有機過酸化物と反応できない飽和エラストマー(II)、及び有機過酸化物の存在下でシリコーンゴムと相互に架橋可能な他のエラストマー(III)と反応させることによって調製される。他のエラストマー(III)は、成分(II)と相互に架橋可能でもあるか、又は高度に混和可能である。
【0005】
米国特許第4,985,483号には、硬化したシリコーン材料の粒子を分散させたフッ素ゴム組成物が開示されている。’483号の組成物には、フルオロカーボン100重量部に対し、ゴム、ゲル、又は樹脂状の微細な硬化シリコーン材料が0.1〜30重量部含まれる。まず、シリコーン材料を硬化し、その後にフルオロカーボンと混合する。’483号特許で使用するシリコーン材料は、好ましくは、100マイクロメートル未満の粒径を有するシリコーンゴム粒子が得られる米国特許第4,742,142号に記載の水性分散手法を使用して調製される。
【0006】
米国特許第5,010,137号は、フルオロカーボンを含有するゴム組成物、並びにそれから得られるオイルシール及びゴムホースを教示している。’137号の組成物は、ポリオルガノ水素シロキサン及び第VIII族遷移金属化合物に、ビニル含有ポリオルガノシロキサン(I)及び有機ゴム(II)を含むゴム形成ポリマーを配合すること、及び、剪断変形を加えながら得られた配合物をヒドロシリル化に付すことによって得られる。
【0007】
米国特許第5,171,787号は、フルオロカーボンを含有する、シリコーンを基剤とする複合ゴム組成物、及びその使用を教示している。’787号の組成物は、ポリオルガノシロキサン及び有機ゴムを含有するゴム形成ポリマー(A)、1分子に加水分解性基を少なくとも2つ有するケイ素化合物(B)、並びに、加水分解及び縮合反応を触媒する重金属化合物、アミン、又は第四級アンモニウム塩(C)を配合すること、及び調合物が剪断によって変形するのを避けながら、得られた調合物を加水分解及び縮合反応に付すこと、及び、続いて、架橋剤を添加して前記の有機ゴムを架橋することによって調製される。
【0008】
米国特許第5,350,804号は、100℃で少なくとも70のムーニー(Mooney)粘度を有し、複合ゴム組成物のマトリックス相を形成する有機ゴム状エラストマー組成物(a)、及びそのマトリックス相中の分散相としての硬化シリコーンゴム(b)を含有する複合ゴム組成物を教示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの特許は、この分野における進歩を提供してはいるが、フルオロカーボン本来の物理的特性を維持しながら、高性能のエラストマー系を効果的に提供するフルオロカーボンエラストマーを明確に改質することが今なお求められている。特に、燃料、オイル、排気ガス、又は化学物質に対する耐性と同時に高温及び又は低温特性が要求される各種の用途で使用するためのフルオロカーボンエラストマー組成物を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、動的加硫法を利用して、シリコーンをフルオロカーボンと混合することに基づいたフルオロカーボンエラストマー組成物を提供する。これらのフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、本発明の新規な混合方法によって得られる。これらの新規混合方法は、フルオロカーボンエラストマー中に相当な量のシリコーンゴムを基剤とした組成物が組み込まれた組成物を提供する。それにもかかわらず、本発明のエラストマー基剤組成物から調製される硬化フルオロカーボンゴム組成物は、燃料不浸透性など、フルオロカーボンの多くの望ましい物理的固有特性を維持する。
【0011】
動的加硫手法は、米国特許第6,015,858号で教示されているように、フルオロカーボン樹脂を基にした熱可塑性エラストマー組成物を調製するのに使用されている。しかし、’858号特許の組成物は、室温又はそれ以上のガラス転移温度を有するフルオロカーボン樹脂を使用することに基づいており、フルオロカーボンを基剤とする組成物単独に類似した燃料浸透特性を有する硬化組成物を提供するフルオロカーボン/シリコーンエラストマー組成物を調製する方法は教示していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、フルオロカーボン及びシリコーンの双方を含有するフルオロカーボンエラストマー基剤組成物を調製する方法を提供し、この方法では、硬化オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン基剤をまず硬化剤と混合してシリコーンコンパウンドを形成し、次にフルオロカーボンエラストマーと混合し、引き続き、改質フルオロカーボン内でそのシリコーンコンパウンドを動的に加硫する。したがって、本発明は、フルオロカーボンエラストマー基剤組成物を調製する方法であって、
硬化性オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン基剤(A)と、任意選択の架橋剤(B)と、硬化剤(C)とを混合して、シリコーンコンパウンドを形成する工程(I)、
そのシリコーンコンパウンドを、フルオロカーボンエラストマー(D)と、任意選択の相溶化剤(E)と、任意選択の触媒(F)と混合する工程(II)、及び、
そのシリコーンコンパウンドを動的に加硫する工程(III)
を含み、エラストマー基剤組成物中のフルオロカーボンエラストマー(D)とシリコーン基剤(A)との重量比が95:5〜30:70である、フルオロカーボンエラストマー基剤組成物を調製する方法に関する。
【0013】
本発明は、本発明の方法によって得られるフルオロカーボンエラストマー基剤組成物、及びそれから調製される硬化フルオロカーボンエラストマー組成物にさらに関する。
本発明による方法の第1の工程(I)は、硬化性オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン基剤(A)と、任意選択の架橋剤(B)と、硬化剤(C)とを混合して、シリコーンコンパウンドを形成することである。
【0014】
成分(A)は、硬化性オルガノポリシロキサン(A')及び場合によっては充填剤(A'')を含むシリコーン基剤である。本明細書で、硬化性オルガノポリシロキサンとは、その分子中に少なくとも2つの硬化性基を有する任意のオルガノポリシロキサンと定義される。オルガノポリシロキサンは、当該技術分野で既知であり、任意の数のMユニット(R3SiO0.5)、Dユニット(R2SiO)、Tユニット(RSiO1.5)、又はQユニット(SiO2)(式中、Rは独立に任意の一価炭化水素基である)を含むとして示されることが多い。また、オルガノポリシロキサンは、次の一般式、[RmSi(O)4-m/2n(式中、Rは独立に任意の一価炭化水素基であり、m=1〜3であり、nは少なくとも2である)を有するとして記載されることが多い。
【0015】
シリコーン基剤(A)中のオルガノポリシロキサンは、その分子内に少なくとも2つの硬化性基をもたなければならない。本明細書では、硬化性基を、それ自体又は別の有機基と、若しくは架橋剤と反応してオルガノポリシロキサンを架橋させる能力のある任意の有機基と定義する。この架橋によって硬化されたオルガノポリシロキサンが生じることになる。シリコーン基剤中で使用できる硬化性オルガノポリシロキサンの代表的な種類は、硬化するとシリコーンゴムを生成することが当該技術分野で既知であるオルガノポリシロキサンである。限定されるものではないが、このようなオルガノポリシロキサンの代表例は、参照により本明細書に援用される、Kirk-Othmer著、”Encyclopedia of Chemical Technology”(第4版、22巻、82〜142頁、John Wiley and Sons、ニューヨーク)に開示されている。一般に、オルガノポリシロキサンは、オルガノポリシロキサン上の様々な硬化基、硬化剤、及び任意選択の架橋剤を使用するいくつかの架橋機構によって硬化できる。多くの架橋機構があるが、硬化性オルガノポリシロキサンからシリコーンゴムを調製するのに当該技術分野で使用されるより一般的な3種の架橋機構は、フリーラジカルで開始される架橋、ヒドロシリル化すなわち付加硬化、及び縮合硬化である。したがって、硬化性オルガノポリシロキサンは、限定されるものではないが、これら上記架橋機構のいずれか1つを受容する能力のある任意のオルガノポリシロキサンから選択できる。成分(A)、(B)及び(C)の選択は、硬化機構又は架橋機構の選択と矛盾しないようにする。例えば、ヒドロシリル化すなわち付加硬化を選択した場合には、成分(A')として、少なくとも2つのアルケニル基(硬化性基)を有するオルガノポリシロキサンを含むシリコーン基剤を使用し、成分(B)としてオルガノヒドリドケイ素化合物を使用し、成分(C)として白金触媒を使用する。縮合硬化の場合には、成分(A)として、ケイ素に結合した少なくとも2つのヒドロキシ基、又はヒドロキシ基の加水分解性前駆体(すなわち、シラノール又はアルコキシシラン、硬化性基と考えられる)を有するオルガノポリシロキサンを含むシリコーン基剤を選択し、成分(C)として錫触媒などの当該技術分野で既知の縮合硬化触媒を選択する。フリーラジカルで開始される架橋の場合には、成分(A)として任意のオルガノポリシロキサンを選択することが可能であり、動的加硫工程(III)の時間及び温度制約の範囲内で配合物が硬化されるなら、成分(C)としてフリーラジカル開始剤が選択される。このようなフリーラジカルで開始される架橋における成分(C)の選択によっては、メチルなどの任意のアルキル基を硬化性基と考えることができる。なぜなら、アルキル基はフリーラジカルで開始されるこのような条件下で架橋するからである。
【0016】
使用されるシリコーンコンパウンド、すなわち成分(A)、(B)及び(C)を含む混合物の量は、FKMエラストマー(D)の量に応じて変化可能である。一般に、95:5〜30:70、あるいは90:10〜40:60、あるいは80:20〜40:60の範囲であるフルオロカーボンエラストマー(D)とシリコーン基剤(A)との重量比が示されると有益である。
【0017】
一般に、使用される成分(C)の量は、オルガノポリシロキサン及び硬化系の選択に応じて変化する。しかしながら、上記オルガノポリシロキサンを硬化させるのに十分な成分(C)の量を使用することが望ましい。
【0018】
本発明のヒドロシリル化(hydrosilation)硬化の実施形態では、ヒドロシリル化硬化手法による加硫プロセスの間にシリコーンゴムが生成するように成分(A)、(B)及び(C)を選択できる。この実施形態を、本明細書ではヒドロシリル化硬化態様と呼ぶ。したがって、ヒドロシリル化硬化態様において、(A')は、2〜20個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサンから選択され、任意選択的に(A'')は強化充填剤から選択される。アルケニル基を具体的に例示すれば、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル及びデセニル、好ましくはビニル又はヘキセニルである。アルケニル官能基の位置は、それほど問題ではなく、分子鎖末端、分子鎖の非末端位、又はその双方の位置で結合していてもよい。一般に、アルケニル基は、ビニル又はヘキセニルであり、且つ、この基はジオルガノポリシロキサン中に0.0001〜3モルパーセント、あるいは0.0005〜1モルパーセントの濃度で存在する。ジオルガノポリシロキサン中でケイ素に結合した残りの(すなわち、非アルケニル)有機基は、脂肪族性不飽和を含まない炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基から独立に選択される。これらの基を具体的に例示すれば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルなど、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル及びシクロヘプチルなどのシクロアルキル基、フェニル、トリル及びキシリルなど、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、ベンジル及びフェニルエチルなど、7〜20個の炭素原子を有するアラルキル基、及び、3,3,3−トリフルオロプロピル及びクロロメチルなど、1〜20個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基である。もちろん、これらの基は、ジオルガノポリシロキサンが室温未満のガラス温度(glass temperature)を有するように選択され、したがって硬化ポリマーがエラストマー性であることを理解されたい。一般には、ジオルガノポリシロキサン中でケイ素に結合した非アルケニル有機基が、ジオルガノポリシロキサン中の有機基の少なくとも85、あるいは少なくとも90モルパーセントを構成する。したがって、ジオルガノポリシロキサン(A')は、このような有機基を含む、ホモポリマー、コポリマー又はターポリマーでもよい。例としては、特に、ジメチルシロキシ単位を含むホモポリマー、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキシ単位を含むホモポリマー、ジメチルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位を含むコポリマー、ジメチルシロキシ単位及び3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキシ単位を含むコポリマー、ジメチルシロキシ単位及びジフェニルシロキシ単位から成るコポリマー、並びにジメチルシロキシ単位、ジフェニルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位から成るインターポリマーが挙げられる。分子構造もそれほど問題ではなく、例としては直鎖及び一部分岐した直鎖構造が挙げられるが、直鎖系が最も一般的である。
【0019】
ジオルガノポリシロキサン(A')の具体例としては、トリメチルシロキシで末端をブロックしたジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシで末端をブロックしたメチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシで末端をブロックした3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシで末端をブロックした3,3,3−トリフルオロプロピルメチル−メチルビニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシで末端をブロックしたジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシで末端をブロックしたジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシで末端をブロックしたメチルフェニルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシで末端をブロックしたメチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー、及び少なくとも1つの末端基がジメチルヒドロキシシロキシである類似のコポリマーが挙げられる。
【0020】
オルガノポリシロキサンは、2種又はそれ以上のオルガノポリシロキサンの組み合わせから構成してもよい。あるいは、ジオルガノポリシロキサン(A')は、直鎖ポリジメチルシロキサンホモポリマーであり、好ましくは、その分子の各末端がビニル基で終わるか、又は、その主鎖に沿って少なくとも1つのビニル基をさらに含むようなホモポリマーである。
【0021】
本発明の目的のためには、好ましいジオルガノポリシロキサンは、米国試験材料協会(ASTM)試験法926で測定して、少なくとも約30のウィリアムス可塑度を与えるに十分な分子量を有するジオルガノポリシロキサンゴムである。成分(A')の可塑度に絶対的な上限はないが、通常の混合装置での加工性を考慮すると、実際には、この値に限界があるのが一般的である。一般に、可塑度数は、40〜200、あるいは50〜150であるべきである。
【0022】
不飽和基を含む粘稠度の高いジオルガノポリシロキサンを調製する方法は既知であり、本明細書で詳細に述べるまでもない。
【0023】
任意選択の成分(A'')は、ジオルガノポリシロキサン(A')を補強することが既知である任意の充填剤であり、好ましくは、少なくとも約50m2/gの比表面積を有するヒュームドシリカ及び沈降シリカ、シリカエーロゲル及び二酸化チタンなどの微細で熱に安定な無機物から選択される。ヒュームドシリカは、450m2/gにも達することのできるその大きな表面積に基づく代表的な補強充填剤である。また、50〜400m2/g、あるいは90〜380m2/gの表面積を有するヒュームドシリカが使用できる。充填剤は、ジオルガノポリシロキサン(A')の各100重量部に対して約5〜約150重量部、あるいは10〜100、あるいは15〜70重量部の量で添加する。
【0024】
シリコーンゴムの技術分野で一般的に行われているように、一般には、充填剤を処理し、その表面に疎水性を付与する。疎水性の付与は、シリカを、シラノール基又はシラノール基の加水分解性前駆体を含む液状有機ケイ素化合物と反応させることによって達成できる。シリコーンゴムの技術分野で抗クレーピング剤(anti-creping agent)又は可塑剤とも呼ばれる、充填剤処理剤として使用できる化合物としては、低分子量、液状の、ヒドロキシ−又はアルコキシ末端ポリジオルガノシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、シクロジメチルシラザン及びヘキサオルガノジシラザンが挙げられる。
【0025】
成分(A)には、限定されるものではないが、抗酸化剤、架橋助剤、加工剤、顔料、及び以下に記載する工程(III)を妨害しない当該技術分野で既知のその他添加剤を含む、シリコーンゴムの配合に通常的に使用されるその他の材料を含めてもよい。
【0026】
本発明のヒドロシリル化硬化態様においては、化合物(B)を添加し、且つ化合物(B)はオルガノヒドリドケイ素化合物(B')であり、この化合物はジオルガノポリシロキサン(A')と架橋する。オルガノヒドリドケイ素化合物は、各分子中にケイ素に結合した少なくとも2個の水素原子を含むオルガノポリシロキサンであり、本発明による方法の動的加硫工程(III)の際に(A')のアルケニル官能基と反応する。さらなる(分子量)制約として、成分(B')は、ケイ素に結合した、少なくとも約0.1重量パーセントの水素、あるいは0.2〜2、あるいは0.5〜1.7パーセントの水素を有さなくてはならない。もちろん、当業者であれば、ジオルガノポリシロキサン(A')又は成分(B')、若しくはその双方が、ジオルガノポリシロキサンを硬化させるために2つ以上の官能基をもたなければならない(すなわち、これら官能基の総和は、平均で4つ以上でなければならない)ことが理解されるであろう。成分(B')でケイ素に結合した水素の位置はそれほど問題ではなく、分子鎖末端、分子鎖に沿った非末端位、又はその双方の位置で結合していてもよい。成分(B')のケイ素に結合した有機基は、その好ましい実施形態を含む、ジオルガノポリシロキサン(A')に関して上記した、任意の飽和炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基のいずれかから独立に選択される。成分(B')の分子構造もそれほど問題ではなく、例として、直鎖、一部分岐した直鎖、分岐鎖、環状構造、及び網状構造が挙げられ、網状構造、線状のポリマー又はコポリマーが代表的である。もちろん、この成分は、A'と相溶でなければならない(すなわち、このことはジオルガノポリシロキサンを硬化させる上で効果的である)ことを理解されたい。
【0027】
成分(B')の例としては、PhSi(OSiMe2H)3などの低分子量シロキサン、トリメチルシロキシで末端をブロックしたメチルヒドリドポリシロキサン、トリメチルシロキシで末端をブロックしたジメチルシロキサン−メチルヒドリドシロキサンコポリマー、ジメチルヒドリドシロキシで末端をブロックしたジメチルポリシロキサン、ジメチル水素シロキシで末端をブロックしたメチル水素ポリシロキサン、ジメチルヒドリドシロキシで末端をブロックしたジメチルシロキサン−メチルヒドリドシロキサンコポリマー、環状メチル水素ポリシロキサン、環状ジメチルシロキサン−メチルヒドリドシロキサンコポリマー、テトラキス(ジメチル水素シロキシ)シラン、SiO4/2単位を含有するトリメチルシロキシで末端をブロックしたメチルヒドリドシロキサンポリマー、(CHHSiO1/2、及びSiO4/2単位から構成されるシリコーン樹脂、(CH32HSiO1/2、(CH33SiO1/2、及び SiO4/2単位から構成されるシリコーン樹脂、(CH32HSiO1/2及びCF3CH2CH3SiO3/2単位から構成されるシリコーン樹脂、並びに(CH32HSiO1/2、(CH33SiO1/2、CH3SiO3/2、PhSiO3/2及びSiO4/2単位(式中、Phは以後フェニル基を意味する)から構成されるシリコーン樹脂が挙げられる。
【0028】
代表的なオルガノヒドリドケイ素化合物は、RSiO1/2又はHR2SiO1/2単位で終わるRHSiO単位(式中、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキルラジカル、フェニル、又はトリフルオロプロピルから選択され、一般にはメチルである)を含むポリマー又はコポリマーである。また、一般に、成分(B')の粘度は、25℃で約0.5〜3,000mPa・s、あるいは1〜2,000mPa・sである。成分(B')は、一般に、0.5〜1.7重量パーセントのケイ素に結合した水素を有している。あるいは、成分(B')は、本質的にメチルヒドリドシロキサン単位から成るポリマー、又は本質的にジメチルシロキサン単位及びメチルヒドリドシロキサン単位から成るコポリマーから選択され、0.5〜1.7重量パーセントのケイ素に結合した水素を有し、25℃で1〜2,000mPa・sの粘度を有する。このような代表的な系は、トリメチルシロキシ又はジメチルヒドリドシロキシ基から選択される末端基を有している。あるいは、成分(B')は、樹脂の単位を含むコポリマー又は網状構造から選択される。コポリマー又は網状構造の単位は、RSiO3/2単位又はSiO4/2単位から成り、R3SiO1/2単位、R2SiO2/2単位又はRSiO3/2単位を含んでいてもよい。式中、Rは独立に水素又は1〜20個の炭素原子を有するアルキルラジカル、フェニル又はトリフルオロプロピルから選択され、一般にはメチルである。Rが水素で差し支えない場合、成分(B')は、一般に、0.5〜1.7重量パーセントのケイ素に結合した水素を有するように選択されることは理解されている。また、成分(B')の粘度は、25℃で約0.5〜3,000mPa・s、あるいは1〜2,000mPa・sである。成分(B')は、上記系の2つ又はそれ以上の組み合わせでもよい。
【0029】
オルガノヒドリドケイ素化合物(B')は、以下に記載する成分(C)の存在下で、ジオルガノポリシロキサン(A')を硬化させるのに十分な量で使用される。一般に、その含有量は、(B')中のSiHの(A')中のSi−アルケニルに対するモル比が1より大であるように調節される。一般に、このSiH/アルケニル比は、約50未満、あるいは1〜20、あるいは1〜12である。これらのSiH官能性材料は、当該技術分野で既知であり、その多くは市販されている。
【0030】
本発明のヒドロシリル化硬化態様において、成分(C)は、ヒドロシリル化触媒(C')であり、この触媒はジオルガノポリシロキサンの硬化を促進する。その例としては、白金黒、シリカ担持白金、炭素担持白金、塩化白金酸、塩化白金酸アルコール溶液、白金/オレフィン錯体、白金/アルケニルシロキサン錯体、白金/β−ジケトン錯体、白金/ホスフィン錯体などの白金触媒、塩化ロジウム及び塩化ロジウム/ジ(n−ブチル)スルフィド錯体などのロジウム触媒、パラジウム炭素、塩化パラジウムなどのパラジウム触媒が挙げられる。成分(C')は、一般に、塩化白金酸、二塩化白金、四塩化白金、Willingへの米国特許第3,419,593号に従って調製される、塩化白金酸をジメチルビニルシロキシで末端をブロックしたポリジメチルシロキサンで希釈したジビニルテトラメチルジシロキサンと反応させることによって生じる白金錯体触媒、及びBrown他への米国特許第5,175,325号に従って調製される、塩化白金とジビニルテトラメチルジシロキサンとの中和錯体などの白金をベースにした触媒であり、これらの特許は参照により本明細書に援用される。あるいは、触媒(C)は、塩化白金とジビニルテトラメチルジシロキサンとの中和錯体である。
【0031】
成分(C')は、ジオルガノポリシロキサン(A')と成分(B')との間の反応を促進し、動的加硫工程(III)の時間及び温度の制約範囲内でオルガノポリシロキサンを硬化させるのに十分な触媒量で本発明組成物に添加される。一般に、ヒドロシリル化触媒は、シリコーン基剤(A)の総重量を基準にして、金属原子が約0.1〜500パーツパーミリオン(ppm)、あるいは0.25〜50ppmとなるように添加される。
【0032】
別の実施形態では、オルガノポリシロキサンの縮合硬化が起こるように、成分(A)、(B)及び(C)を選択する。縮合硬化に関して、少なくとも2つのケイ素と結合したヒドロキシ基、又はヒドロキシ基の加水分解性前駆体(すなわち、シラノール又はアルコキシシラン、硬化性基と考えられる)を有するオルガノポリシロキサンは、成分(A)として選択されるであろう。また、成分(C)として、錫触媒などの当該技術分野で既知の縮合硬化触媒が選択されるであろう。縮合硬化性オルガノポリシロキサンとして有用なオルガノポリシロキサンは、少なくとも2つのケイ素と結合したヒドロキシ基、又はヒドロキシ基の加水分解性前駆体(すなわち、シラノール基(SiOH))を分子中に含有する1種又は複数種のオルガノポリシロキサンである。一般に、付加硬化態様における成分(A)である、以下に記載するいずれかのオルガノポリシロキサンは、アルケニル基は縮合硬化態様には必要ないが、少なくとも2つのSiOH基又はSiOH前駆体基が付加されて存在するのであれば、縮合硬化態様におけるオルガノポリシロキサンとして使用できる。任意選択の成分(B)は、成分(B)に関して以下に記載するようにオルガノヒドリドケイ素化合物から選択できる。しかしながら、より一般的には、架橋剤は、アルコキシ又はアセトキシで末端をブロックされたオルガノポリシロキサンから選択され、これは、オルガノポリシロキサンの縮合硬化を引き起こすとして当該技術分野で既知である。この実施形態で硬化剤として有用な縮合触媒は、存在する場合、Si−O−Si−結合の形成によってオルガノポリシロキサンを硬化させるような、ジオルガノポリシロキサン(A)のSiOH基同士の縮合反応、及びジオルガノポリシロキサン(A)のSiOH基と任意選択の架橋剤(B)上の反応性基との間の反応を促進する任意の化合物である。適切な触媒の例としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、錫トリプロピルアセテート、オクタン酸第一錫、シュウ酸錫、ナフテン酸第一錫などのカルボン酸金属塩、トリエチルアミン、エチレントリアミンなどのアミン、及びベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2−エチルヘキサン酸−β−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム及びβ−ヒドロキシエチルベンジルトリメチルジメチルアンモニウムブトキシドなどの第四級アンモニウム化合物が挙げられる(米国特許第3,024,210号参照)。
【0033】
さらに他の実施形態では、オルガノポリシロキサンのフリーラジカル硬化が起こるように、成分(A)、(B)及び(C)を選択する。この実施形態において、オルガノポリシロキサンは任意のオルガノポリシロキサンでもよいが、一般に、そのオルガノポリシロキサンは少なくとも2つのアルケニル基を有する。したがって、前に付加硬化態様における(A')に対する適切な選択として記載したオルガノポリシロキサンのいずれかを本発明のフリーラジカルによる実施形態に使用することもできる。フリーラジカル硬化態様では架橋剤(B)を必要としないが、助長する可能性がある。硬化剤(C)は、成分(F)の選択のために以下に記載するフリーラジカル開始剤のいずれかから選択できる。
【0034】
方法の工程(I)は、本明細書で「シリコーンコンパウンド」と呼ばれる、成分(A)、任意選択的に(B)及び(C)を含む混合物を生成する。一般に、この混合物の続く加硫が硬化シリコーンゴムをもたらすため、必須ではないが、シリコーンコンパウンドは、シリコーンゴムプレミックスと考えられることができる。したがって、このようなエラストマー材料を混合するのに既知である、限定はされないが、混合機、混練機、又はロール及び押出法を含む任意の混合手法が、混合工程(I)に利用される。
【0035】
また、工程(I)のシリコーンコンパウンドは、上記のように少なくとも成分(A)及び(C)を含むのであれば、シリコーンゴム前駆体組成物と考えられ得る任意の市販のシリコーンコンパウンドから選択できる。
【0036】
シリコーンコンパウンドを次にフルオロカーボンエラストマーである成分(D)と混合させる。成分(D)は、室温未満の、あるいは23℃未満の、あるいは15℃未満の、あるいは0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する任意のフルオロカーボンエラストマーである。「ガラス転移温度」とは、ポリマーがガラス状のガラス状態からゴム状態に変化する温度を意味する。ガラス転移温度は、動的機械分析(DMA)及び示差走査熱量法(DSC)など、通常の方法によって測定できる。フルオロカーボンエラストマーは、当該技術分野で既知であり、多くのものが市販されている。フルオロカーボンエラストマーは、ASTMにより、FKM、FEP及びFFKMと示され、本明細書でもFKMと略記する。限定はしないが本発明の成分(D)として有用なFKMエラストマーの代表的な例は、Kirk-Othmer著、”Encyclopedia of Chemical Technology”(第4版、8巻、990〜1005頁、John Wiley & Sons、ニューヨーク)、J. C. Salamone著、”Polymeric Materials Encyclopedia”(4巻、2495〜2498頁、CRC Press、ニューヨーク)、”Encyclopedia of Polymer Science and Engineering”(第2版、7巻、257〜269頁)、K. -L. Ring, A. Leder及びK Sakota著、”Fluoroelastomers”(Chemical Economics HandbookーSRI International 2000, Elastomers-Specialty 525.6000A)(これらはすべて参照により本明細書に援用される)など、この種の材料に関する要約的論文中に見出される。
【0037】
したがって、フルオロカーボンエラストマーは、以下のフッ素含有モノマー、すなわち、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)及びパーフルオロ(プロピルビニリデン)の組み合わせから成り得る。これらのモノマーは、硬化部位を有する共重合性モノマー、すなわち硬化部位モノマーと共重合されることもできる。この共重合性モノマーには、限定されるものではないが、アクリレートエステルなどのビニル化合物、プロピレンなどのオレフィン化合物、ジエン化合物、及び1つ又は複数の以下の基、すなわち炭素と結合した塩素、炭素と結合した臭素又は炭素と結合したヨウ素を含有するモノマーが挙げられる。このように生成されるフッ素ゴムの例としては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレンターポリマー、テトラフルオロエチレン−プロピレンコポリマー、及びテトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−プロピレンターポリマーが挙げられる。
【0038】
また、フルオロカーボンエラストマーには、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとテトラフルオロエテンとのターポリマー、又はフッ化ビニリデンとテトラフルオロエテンとパーフルオロメチルビニルエーテルとのターポリマーが含まれる。
【0039】
限定されるものではないが、成分(D)として有用な市販の代表的な材料としては、Dupont-Dow Elastomers(デラウェア州、Wilmington)によるVITON(登録商標)、Dyneon LLC(ミネソタ州、OakDale)によるDyneon(商標)、Solvay Solexis、Inc.(イタリア、Bollate)によるTecnoflon(登録商標)、旭硝子株式会社(千葉県、市原)がAflas(商標)、ダイキン工業株式会社(大阪府、摂津)がDai−el(商標)の商品名で販売しているフルオロカーボンエラストマーが挙げられる。
【0040】
フルオロカーボンエラストマー又はシリコーン基剤は、任意選択の相溶化剤、すなわち成分(E)の添加によって改質されて、改質エラストマーを生成することができる。改質エラストマーは、成分(D)又は(C)、(E)及び(F)の選択、並びに以下にさらに記述されるこの混合工程に使用される付随条件に応じて、化学改質又は物理改質されたもののいずれかであると考えられることができる。化学改質フルオロカーボンエラストマーを調製する本発明の実施形態では、成分(D)、(E)及び任意選択的に(F)が選択され、フルオロカーボンエラストマーと相溶化剤との反応生成物を生成するように混合される。物理改質フルオロカーボンエラストマーを調製する本発明の実施形態では、成分(D)、(E)及び任意選択的に(F)が選択され、フルオロカーボンエラストマーと相溶化剤との物理的な混合物を生成するように混合される。場合によっては、フルオロカーボン/シリコーン混合物のためのFKM、シリコーン基剤は、フルオロカーボンの連続相及びシリコーンの不連続相(すなわち分散相)を有するフルオロカーボン/シリコーン混合物を生成するように改質される。
【0041】
化学改質フルオロカーボンの実施形態において、(D)は、相溶化剤(E)と反応して、改質フルオロカーボンエラストマーを生成することのできるフルオロカーボンポリマーを含むFKMから選択される。一般に、化学改質フルオロカーボンの実施形態におけるフルオロカーボンエラストマー成分(D)として有用なフルオロカーボンポリマーは、オレフィン基、又は、水素、塩素、臭素若しくはヨウ素から選択される、炭素に結合した反応性基を有する少なくとも1種のモノマー、及び炭素に結合したフッ素を有する1種のモノマーから調製されるポリマー、コポリマー、又はターポリマーである。炭素に結合した反応性基及び炭素に結合したフッ素は、同一モノマー又は別個のモノマー中に存在できる。フルオロカーボンポリマーは、同一物であってもよいし、あるいは様々なフルオロカーボンポリマーの混合物でもよい。したがって、フルオロカーボンポリマーは、二フッ化ビニリデン又はフッ化ビニルと、テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロペン(HFP)などの1種又は複数のフルオロオレフィン又はパーフルオロメチルビニルエーテルなどのパーフルオロアルキルビニルエーテルとのコポリマーでもよいと考えられる。TFEとエチレンのコポリマー、又はヘキサフルオロプロペンとエチレンのコポリマーでもよい。しかし、フルオロカーボンポリマーは、後に記載するように、化学改質フルオロカーボンエラストマーの実施形態における相溶化剤と反応しなければならない。ある理論に拘束さることは望まないが、本発明者等は、FKMポリマーを調製するのに使用される少なくとも1種のモノマー中に、オレフィン基、又は、水素、塩素、臭素若しくはヨウ素から選択される、炭素に結合した反応性基の存在が、フルオロカーボンポリマーと、化学改質フルオロカーボンエラストマーの実施形態における相溶化剤、すなわち成分(E)との反応を可能にしていると考える。
【0042】
FKMエラストマー、すなわち成分(D)は、フルオロカーボンポリマーの混合物であってもよいと予想される。しかし、化学改質フルオロカーボンの実施形態では、フルオロカーボンエラストマー組成物の少なくとも2重量%、あるいは少なくとも5重量%、あるいは少なくとも10%は、オレフィン基を含有する少なくとも1種のモノマー、すなわち、以下の基の1つ、例えば、炭素に結合した水素、炭素に結合した塩素、炭素に結合した臭素、又は炭素に結合したヨウ素を有する少なくとも1種のモノマーから調製されるフルオロカーボンポリマーを含むべきである。
【0043】
任意選択の相溶化剤(E)の構造は、それほど問題ではない。相溶化剤の機能は、FKMエラストマー(D)又はシリコーン基剤(A)を改質して、フルオロカーボンの連続相及びシリコーンの不連続相(すなわち分散相)を有する混合物を生成することである。相溶化剤(E)は、シリコーン基剤(A)のFKMエラストマー(D)との混合を増強してフルオロカーボンの連続相及びシリコーンの不連続相(すなわち分散相)を有する混合物を生成するようにFKMエラストマーを改質すると期待される、任意の炭化水素、オルガノシロキサン、フルオロカーボン、又はそれらの組み合わせから選択できる。しかしながら、相溶化剤、又は得られた改質FKMエラストマーは、以下に記載されるオルガノポリシロキサン成分の動的硬化を防止してはならない。あるいは、相溶化剤(E)は、シリコーン基剤(A)とFKMエラストマー(D)の混合を増強してフルオロカーボンの連続相及びシリコーンの不連続相(すなわち分散相)を有する混合物を生成するようにシリコーン基剤を改質すると期待される、任意の炭化水素、オルガノシロキサン、フルオロカーボン、又はそれらの組み合わせから選択できる。しかしながら、相溶化剤、又は得られた改質シリコーンは、以下に記載されるオルガノポリシロキサン成分の動的硬化を防止してはならない。
【0044】
物理改質の実施形態においては、当該技術分野でシリコーン基剤とFKMエラストマーとの混合を増強することが知られている任意の相溶化剤から相溶化剤(E)を選択できる。一般に、このような相溶化剤は、オルガノポリシロキサンとフルオロカーボンポリマーとの反応生成物である。限定されるものではないが、このような相溶化剤の代表的な例は、米国特許第5,554,689号及び同第6,035,780号に記載されており、その双方を参照により本明細書に援用する。
【0045】
化学改質の実施形態においては、一般に、相溶化剤(E)は、2つ以上のオレフィン基を含む有機(すなわち、非シリコーン)化合物(E1)、少なくとも2つのアルケニル基を含むオルガノポリシロキサン(E2)、少なくとも1つの加水分解性基又はそのケイ素原子に結合した少なくとも1つのヒドロキシル基をさらに含むオレフィン官能性シラン(E3)、アミン基、アミド基、イソシアヌレート基、フェノール基、アクリレート基、エポキシ基及びチオール基から選択される少なくとも1つの有機官能基を有するオルガノポリシロキサン(E4)、脱フッ化水素剤(E5)、並びに(E1)、(E2)、(E3)、(E4)及び(E5)の任意の組み合わせから選択できる。
【0046】
有機相溶化剤(E1)の例としては、特に、フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、2,4,6ートリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、トリメシン酸トリアリル、低分子量ポリブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、2,2’−ジアリルビスフェノールA、N,N’−ジアリル酒石酸ジアミド、ジアリル尿素、コハク酸ジアリル及びジビニルスルホンなどの化合物を挙げることができる。
【0047】
相溶化剤(E2)は、分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有する、直鎖、分岐鎖又は環状オルガノポリシロキサンから選択できる。このようなオルガノポリシロキサンの例としては、ジビニルテトラメチルジシロキサン、シクロトリメチルトリビニルトリシロキサン、シクロ−テトラメチルテトラビニルテトラシロキサン、ヒドロキシで末端をブロックしたポリメチルビニルシロキサン、ヒドロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン−コ−ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、テトラキス(ジメチルビニルシロキシ)シラン及びトリス(ジメチルビニルシロキシ)フェニルシランが挙げられる。あるいは、相溶化剤(B'')は、約25〜100mPa・sの粘度を有し、ビニル基を20〜35%、及びケイ素に結合したヒドロキシ基を2〜4%含むヒドロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン[HO(MeViSiO)xH]オリゴマーである。
【0048】
相溶化剤(E3)は、一般にはビニル性不飽和を含む少なくとも1つのアルキレン基、及び加水分解性基又はヒドロキシル基から選択されるケイ素に結合した少なくとも1つの部分を含むシランである。加水分解性基として適当なものには、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基又はアミド基が含まれる。このようなシランの例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシ、メチルビニルジシラノール、オクテニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−エトキシエトキシ)シラン、メチルビニルビス(N−メチルアセトアミド)シラン、メチルビニルジシラノールがある。
【0049】
相溶化剤(E4)は、アミン基、アミド基、イソシアヌレート基、フェノール基、アクリレート基、エポキシ基及びチオール基から選択される少なくとも1つの有機官能基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0050】
相溶化剤(E5)は、アルカリ金属酸化物又はアルカリ金属水酸化物から選択される脱フッ化水素剤である。脱フッ化水素剤は、脱フッ化水素反応によりFKMエラストマーを改質して、FKMエラストマー上に付加的な二重結合を形成する。得られた二重結合は、FKMエラストマーと他の相溶化剤及び/又はシリコーン基剤(D)とのさらなる反応のための反応性基を生じる。一般に、脱フッ化水素剤は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムから選択されるアルカリ酸化物又はアルカリ水酸化物である。脱フッ化水素剤を使用する場合、以下に記載されるFKM硬化剤が添加されることが好ましい。
【0051】
上述された、シリコーン基剤成分(A)の硬化性オルガノポリシロキサン部分は、相溶化剤としても機能することができる。例えば、硬化剤(C)又は触媒(F)は、シリコーン基剤(A)の硬化性オルガノポリシロキサン部分をFKMエラストマーと反応させて改質FKMエラストマーを生成するのに使用できる。別の化学改質の実施形態では、FKMエラストマーが少なくとも部分的にシリコーンコンパウンドと反応可能な少なくとも1つの基を含むのであれば、任意のFKMエラストマーを成分(D)として選択できる。すなわち、FKMエラストマーは、オルガノポリシロキサンのために選択される有効な硬化機構によってシリコーン基剤と反応可能でなければならない。硬化剤(C)をオルガノポリシロキサン、すなわち成分(A)、任意選択的に架橋剤成分(B)に添加して、オルガノポリシロキサンを動的加硫法によって硬化させる。一般に動的加硫法、すなわち工程(III)の間に、シリコーンコンパウンドの表面で起こる硬化化学作用は、FKMエラストマーと反応させることができ、FKMエラストマー中のシリコーンの分散を促す。限定されるものではないが、FKMエラストマー上の反応性基の代表例としては、メチル、メチレン、ビニル及びハロゲンが挙げられる。例えば、FKMエラストマー上の水素は、シリコーンコンパウンドのための硬化剤として選択される過酸化物と反応して、それゆえ、オルガノポリシロキサンとFKMエラストマーとの間に結合を形成することができるだろう。別の例として、ビニルエラストマー上のビニル基は、付加硬化機構又はラジカル硬化機構によって反応することができるだろう。
【0052】
FKMエラストマー(D)100部に対して使用される相溶化剤(E)の量は、通常の実験によって決定できる。一般には、各100部のFKMエラストマーに対し、0.05〜15重量部、又は0.05〜10重量部、あるいは0.1〜5部の相溶化剤を使用する。
【0053】
改質の種類に応じて、一般に、相溶化剤を、工程(I)でシリコーンコンパウンド、工程(II)の前にFKMエラストマー、又は工程(II)の最中にFKM/シリコーン混合物のいずれかに添加することができる。
【0054】
任意選択の成分(F)は触媒である。一般に、触媒は化学改質の実施形態で使用される。したがって、触媒は、高温でフリーラジカルを発生させると当該技術分野で既知である、任意の有機化合物から選択されるラジカル開始剤であるのが一般的である。開始剤は、特に限定されるものではないが、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの任意の既知のアゾ又はジアゾ化合物でもよいが、好ましくは、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシジカルボナート、ペルオキシケタール、ペルオキシ酸、アシルアルキルスルホニルペルオキシド及びアルキルモノペルオキシジカルボナートなどの有機過酸化物から選択される。しかし、重要な要件は、工程(I)又は工程(III)における時間及び温度の制約の中で、相溶化剤(E)とFKMエラストマー(D)又はシリコーン基剤(A)との反応を促進できるように、開始剤の半減期が十分に短いことである。一方、改質温度は、選択されるエラストマー及び相溶化剤の種類によって左右され、一般には、成分を均一に混合することと実際上両立するような低い温度である。本発明の方法に従って使用されてもよい適切な過酸化物の具体例としては、特に、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ペルオキシO−トルイル酸t−ブチル、環状ペルオキシケタール、t−ブチルヒドロペルオキシド、ペルオキシピバル酸t−ブチル、ラウロイルペルオキシド及びペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−アミル、ビニルトリス(t−ブチルペルオキシ)シラン、ジ−t−ブチルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,2,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロペルオキシド、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキシン−3、ペルオキシ−3,5,5−トリメチルへキサン酸t−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、ペルオキシ安息香酸t−ブチル及びジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシドが挙げられる。シリコーン基剤100部に対して、10重量部未満のペルオキシドを使用するのが一般的である。あるいは、0.05〜3部、及び0.1〜1部を利用することもできる。
【0055】
上記のような触媒の選択に伴う、具体的な限定及び方法条件以外に、工程(II)は、このような混合を達成するのに当該技術分野で既知である様々な条件で行われる。混合は、このようなエラストマー材料を混合するのに当該技術分野で既知である、任意の手法又は方法で行われる。したがって、限定されるものではないが、混合機、バンバリーミキサー、混練機、又はロール及び押出法を含む、このようなエラストマー材料を混合するのに既知である任意の混合手法を混合工程(II)に利用できる。
【0056】
上述の主要成分(A)〜(F)に加え、本発明のフルオロカーボン基剤エラストマー性組成物に、少量(すなわち、全組成物の50重量パーセント未満)の1種又は複数の任意選択の添加剤(G)を組み込むことができる。これら任意選択の添加剤の例としては、限定されるものではないが、石英、炭酸カルシウム、及び珪藻土などの増量充填剤、酸化鉄及び酸化チタンなどの顔料、カーボンブラック及び微細金属などの充填剤、水和化酸化セリウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの熱安定剤、ハロゲン化炭化水素、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、珪灰石、有機リン化合物などの難燃剤及びその他の防火剤(FR)、及びゴム技術分野で一般に使用される他の添加物が挙げられる。これらの添加剤は、一般に、動的硬化の後の最終組成物に添加されるが、その添加物が動的加硫の機構を妨害しないなら、調製の任意の時点で添加することもできる。これらの添加剤は、以下に記載する硬化エラストマー組成物を調製するために添加される追加成分と同一物でも異なるものでもよい。
【0057】
本発明による方法の第3の工程(III)は、オルガノポリシロキサンを動的に加硫している。動的加硫工程は、オルガノポリシロキサンを硬化させる。工程(III)は、工程(II)と同時に、あるいは工程(II)の後に行うことができる。工程(III)は、工程(II)に記載される同様の混合手順によって達成される。
【0058】
本発明の方法は、まず硬化剤(C)とシリコーン基剤(A)とを混合してシリコーンコンパウンドを形成し、その後フルオロカーボンエラストマー(D)と混合することを特徴とする。したがって、フルオロカーボンエラストマー基剤組成物は一般に、シリコーンコンパウンドをフルオロカーボンエラストマー(D)、任意選択的に成分(E)及び(F)と混合して、次にシリコーンコンパウンドのオルガノポリシロキサンを動的に加硫することによって調製される。一般に、(G)は、工程(III)の後に添加されるが、(G)がシリコーンコンパウンド相の硬化を妨害しないのであれば、プロセス中いつでも添加することもできる(例えば、(G)は、FKMエラストマー又はシリコーンコンパウンドと予め混合される)。
【0059】
本発明による方法のすべての工程に関する混合は、密閉式混合機又は二軸押出機などの、成分を均一に分散し得る任意の装置において実行でき、商業的な調製では二軸押出機が好ましい。限定されるものではないが、混合機、バンバリーミキサー、混練機、又はロールを含む、このようなエラストマー材料を混合するのに既知である任意の混合手法を本発明の方法に利用できる。あるいは、押出法が利用できる。あるいは、本発明による方法の混合工程(II)及び動的加硫工程(III)は、二軸押出機を使用することによって達成できる。本発明による方法の1つの実施形態では、工程(II)−(III)は、二軸押出機において2分未満の時間内で実行される。
【0060】
本発明は、本明細書に教示した方法により調製されるフルオロカーボンエラストマー組成物、さらには、該組成物から調製される硬化エラストマー組成物にも関する。本発明者等は、他の方法又は手法により調製されるフルオロカーボンエラストマーとシリコーン基剤から成る類似組み合わせの組成物と比較して、本発明の方法が、フルオロカーボン基剤エラストマー組成物本来の物理的特性によって示されるような、独特で有用なフルオロカーボンエラストマー組成物を提供すると考える。さらに、本発明のフルオロカーボン基剤エラストマー組成物から調製される以下に記載するような硬化フルオロカーボンエラストマー組成物もまた、独特で有用な特性を有している。例えば、本発明のフルオロカーボン基剤エラストマー組成物から調製される硬化フルオロカーボンエラストマーは、炭化水素燃料に対し驚くほど優れた膨潤特性と低い浸透性を有している。多くのシリコーン、特にジメチルポリシロキサンを基剤としたゴムは、炭化水素燃料と接触すると、その容積が膨張することが知られている。したがって、シリコーンをフルオロカーボンと組み合わせると、得られる硬化エラストマー組成物の燃料膨潤又は浸透特性が、フルオロカーボン単独と較べて悪化することが多い。ある理論に制約されるものではないが、本発明者等は本発明の方法により、(in situ動的加硫により調製された)加硫されたシリコーン相がフルオロカーボンの内部に完全に分散した組成物が得られると考える。すなわち、フルオロカーボンは混合物の連続相であり、シリコーンは分散相であると考えられる。その結果、硬化組成物が炭化水素燃料と接触した場合に、フルオロカーボンの連続相が存在するので、炭化水素燃料とシリコーン相との直接接触が最小になる。結果として、同等レベルのシリコーン(特にシリコーンゴム)を含むがシリコーンゴムとフルオロカーボンエラストマーとを単純に混合するような他の手法によって調製される硬化フルオロカーボンエラストマー組成物の燃料膨潤特性と比較すると、本発明の方法に従って調製される硬化FKMエラストマー組成物の燃料膨潤特性、又は燃料浸透性は、実質的に低下しない。さらに、フルオロカーボン混合物中のシリコーン相と別の点でシリコーン相に悪影響を与えるかもしれない外部媒質との接触を防ぐことが有利である、本発明組成物のその他の使用及び応用分野において、物理的特性のさらなる利点が期待される。
【0061】
本発明の硬化FKMエラストマー組成物は、既知の硬化手法によって、本発明のフルオロカーボン基剤エラストマー組成物中のFKMエラストマー成分を硬化させることによって調製できる。FKMエラストマーの硬化、及び硬化前に添加される追加成分は、当該技術分野で既知である。これらの既知の手法、及び添加剤のいずれかを使用して本発明のフルオロカーボン基剤エラストマー組成物を硬化し、その組成物から硬化フルオロカーボンエラストマーを調製できる。このような硬化手法の代表例、及び典型的な添加剤は、Kirk-Othmer著、”Encyclopedia of Chemical Technology”(第4版、8巻、990〜1005頁、John Wiley anD Sons、ニューヨーク)(参照により本明細書に援用される)中に開示されている。さらに、限定されるものではないが、使用可能な硬化手法の代表例及び典型的な添加剤は、例えば、www.dyneon.com(2002年5月)で示されているような、Dyneonによる”Fluoroelastomers; Compoundinng Fluoroelastomers”及び”Fluoroelastomers Curing Fluoroelastomers”など、FKMエラストマーの主な供給業者が提供している技術情報刊行物に記載されている。一般に、FKMエラストマーは、ジアミン化合物、ビスフェノール−オニウム化合物、又は過酸化物から選択される硬化剤を用いる3つの架橋機構の中の1つによって硬化される。(これらの硬化剤を本発明のシリコーン基剤成分を硬化させるために添加される硬化剤と区別するために、本明細書では、FKMエラストマーを硬化させる目的で添加される硬化剤をFKM硬化剤と呼ぶ)。また、FKMエラストマーの硬化プロセスは、一般に2つの工程を伴う。第1工程では、物品を成型するための金型中で熱及び圧力を加え、場合によっては、続いて完全に硬化された生成物を生成するために高温での後硬化工程を伴うことが多い。
【0062】
FKMエラストマー成分を硬化させる前に、フルオロカーボン基剤エラストマー組成物に追加の成分を添加することができる。この添加は、他のFKMエラストマー又は他のフルオロカーボン基剤エラストマー組成物を本発明のフルオロカーボン基剤エラストマー組成物中に配合することを含む。これらの追加成分は、硬化FKMエラストマー組成物を調製する目的でFKMエラストマー又はFKMエラストマーゴムに一般的に添加される任意の成分又は材料でもよい。一般に、これらの成分は、受酸剤、充填剤、加工助剤、及び改質剤(curatives)から選択できる。多くの市販のFKMエラストマーに、前以てこれらの追加成分を含めておいてもよい。これらの追加成分を含むFKMエラストマーは、前に述べたように、本発明による方法の工程(III)でシリコーン基剤の動的加硫を妨害しないなら、成分(D)として使用可能である。あるいは、このような追加成分を、FKMエラストマーの最終硬化の前に、フルオロカーボン基剤エラストマー組成物に添加することができる。
【0063】
本発明のフルオロカーボン基剤エラストマー組成物から硬化FKMエラストマーを調製するのに有用な受酸剤の例としては、限定されるものではないが、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛(リサージ)、PbHPO3(ジホス)、酸化カルシウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。
【0064】
改質剤は、基剤FKMエラストマー組成物に添加され、FKMエラストマーの硬化を増強する任意の成分である。したがって、改質剤には、(前に記載した)FKM硬化剤、硬化促進剤、及び受酸剤を含めることができる。例えば、FKM硬化剤、又はビスフェノールなどのFKM硬化剤と有機オニウム塩促進剤の組み合わせ、例えばビスフェノールA若しくはビスフェノールAFとトリフェニルベンジルホスホニウムクロリド若しくはジフェニルベンジル(ジエチルアミン)ホスホニウムクロリドの組み合わせ、多官能性有機アミン又はカーバメート、例えばヘキサメチレンジアミンカーバメートなどのアミン誘導体、並びに、有機過酸化物及び過酸化物の分解から生じたフリーラジカルと作用し、より有用な硬化を生じさせる硬化促進剤を組み込むことによって基剤FKMエラストマーを架橋できる。
【0065】
硬化FKMエラストマー組成物には、充填剤を含めることもできる。充填剤の例としては、カーボンブラック、炭塵微紛、シリカ、酸化鉄及び酸化亜鉛などの金属酸化物、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、珪灰石、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、及びその他当該技術分野で既知の物が挙げられる。
【0066】
本明細書に記載の硬化フルオロカーボンエラストマーは、その燃料膨潤性及び/又は耐薬品性は従来のFKMエラストマーと同等であるが、低温性能及び加工特性の向上が期待される。本発明の硬化エラストマーは、FKM及びシリコーンエラストマーを含む従来の又は既知の高性能エラストマーと同じように使用することができる。これらのエラストマーは、限定されるものではないが、自動車、船舶及び航空機などを含む輸送手段、化学及び石油プラント、電気、ワイヤー及びケーブル、食品加工装置、原子力発電プラント、航空宇宙、医療分野、石油及びガス掘削産業を含む応用分野、並びに、一般にECO、FKM、HNBR、アクリルゴム及びシリコーンエラストマーなどの高性能エラストマーを使用するその他の応用分野で使用するための、例えばそれに限定はされないがO−リング、ガスケット、シール、ライナー、ホース、チューブ、ダイヤフラム、ブーツ、バルブ、ベルト、ブランケット、コーティング、ローラー、成型品、押出シート、コーキング材、押出品などで例示される各種製品を構成するのに使用できる。
【実施例】
【0067】
本発明の組成物及び方法をさらに説明するため、以下に実施例を提示する。実施例中の部及びパーセントはすべて重量基準であり、特に指摘しない限り、測定値はすべて約23℃で得られたものである。
【0068】
(材料)
GP−50は、Dow Corning CorporationからSilastic(登録商標)GP−50 Silicone Rubberとして販売されているシリコーンゴム基剤である。
【0069】
GP−70は、Dow Corning CorporationからSilastic(登録商標)GP−70 Silicone Rubberとして販売されているシリコーンゴム基剤である。
【0070】
GP−700は、Dow Corning CorporationからSilastic(登録商標)New GP700 Silicone Rubberとして販売されているシリコーンゴム基剤である。
【0071】
LCS−755は、Dow Corning CorporationからSilastic(登録商標)LCS−755 Silicone Rubberとして販売されているシリコーンゴム基剤である。
【0072】
LS4−9062は、Dow Corning CorporationからSilastic(登録商標)LS4−9062 Fluorosilicone Rubberとして販売されているフルオロシリコーンゴム基剤である。
【0073】
LS5−2040は、Dow Corning CorporationからSilastic(登録商標)LS5−2040 Fluorosilicone Rubberとして販売されているフルオロシリコーンゴム基剤である。
【0074】
触媒1は、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金錯体1.5%、テトラメチルジビニルジシロキサン6%、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン92%及び6個又はそれ以上のジメチルシロキサン単位を有するジメチルシクロポリシロキサン0.5%である。
【0075】
ETCHは、Aldrich Chemical Company, Inc.から販売されている1−エチニル−1−シクロヘキサノール99%(CAS#78−27−3)である。
【0076】
TRIG 101は、Akzo Nobel Chemicals Inc.からTRIGONOX(登録商標)101として販売されている2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン(CAS#78−63−7)である。
【0077】
TRIG 145Eは、Akzo Nobel Chemicals Inc.からTRIGONOX(登録商標)145−E85として販売されている2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン(CAS#78−63−7)である。
【0078】
TRIG 145PDは、Akzo Nobel Chemicals Inc.からTRIGONOX(登録商標)145B−45PDとして販売されている2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン(CAS#78−63−7)である。
【0079】
TRIG A−W70は、Akzo Nobel Chemicals Inc.からTRIGONOX(登録商標)A−W70として販売されているtert−ブチルヒドロペルオキシド(CAS#75−91−2)が70%、水が30%の溶液である。
【0080】
VAROXは、R.T.Vanderbilt, Company, Inc.からVAROX(登録商標)DBPH−50として販売されている不活性充填剤に付着させた2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンである。
【0081】
相溶化剤1は、粘度が約35mPa・sで、30%の−CH=CH基及び3%のOH基を有する、ヒドロキシで末端をブロックしたメチルビニルシロキサンオリゴマーである。
【0082】
AN−3は、メチルビニルシリコーンゴム担体における酸化マグネシウムのマスターバッチであり、Dow Corning CorporationからSilastic(登録商標)AN−3Modifierとして販売されている。
【0083】
SR633は、ジアクリル酸亜鉛(CAS#14643−87−9)であり、Sartomer Company, Inc.からSaret(登録商標)Modified Metallic Diacrylate(Difunctional)Saret(登録商標)SR633として販売されている。
【0084】
HT−1は、ジメチルシリコーンゴム担体における水酸化セリウムのマスターバッチであり、Dow Corning CorporationからSilastic(登録商標)HT−1 Modifierとして販売されている。
【0085】
TAICは、Aldrich Chemical Company, Inc.から販売されている、イソシアヌル酸トリアリルとして知られているトリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)−トリオン(CAS#1025−15−6)である。
【0086】
ZnOは、Fisher Scientificから販売されている酸化亜鉛USP粉末(CAS#1314−13−2)である。
【0087】
VC−20は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー(CAS#9011−17−0)67%と、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(CAS#1100−88−5)33%とから構成され、Dupont Dow Elastomers, LLCからViton(商標)Curative No.20として販売されているマスターバッチである。
【0088】
VC−30は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー(CAS#9011−17−0)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとテトラフルオロエテンとのターポリマー(CAS#25190−89−0)、ビスフェノールAF(CAS#1478−61−1)、及び4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(CAS#80−07−9)から構成され、Dupont Dow Elastomers, LLCからViton(商標)Curative No.30として販売されているマスターバッチである。
【0089】
P457は、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー(CAS#25190−89−0)であり、Solvay Solexis, Inc.からTecnoflon(登録商標)P457として販売されている。
【0090】
G−902は、1,1−ジフルオロエテン及びテトラフルオロエテンヨード改質フルオロエラストマーを有する1−プロペン,1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−ポリマー(CAS#25190−89−0)であり、Daikin America, Inc.からDAI−EL(商標)Fluoroelastomer G−902として販売されている。
【0091】
B−200は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとテトラフルオロエテンとのターポリマー(CAS#25190−89−0)から構成され、Dupont Dow Elastomers, LLCからViton(登録商標)B−200として販売されている。
【0092】
B−600は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとテトラフルオロエテンとのターポリマー(CAS#25190−89−0)から構成され、Dupont Dow Elastomers, LLCからViton(登録商標)B−600として販売されている。
【0093】
GBL 200は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとテトラフルオロエテンとブロモテトラフルオロベテンとのターポリマー(CAS#74398−72−4)から構成され、Dupont Dow Elastomers, LLCからViton(登録商標)GBL200として販売されている。
【0094】
N990は、Engineered Carbons, Inc.からMT Carbon Black N990として販売されているカーボンブラックである。
【0095】
CRI−ACT−45は、IMMIX Technologies、LLCの一部門、Cri-Techから供給されるフルオロエラストマーにCa(OH)2及び酸化マグネシウムを2/1の比で45%分散させた活性分散物である。
【0096】
X−リンカー1は、本質的に65.6%のMeHSiO単位、32.3%のMeSiO単位及び1.8%のMe3SiO1/2単位から成り、粘度が約29mPa・sであるSiH官能性架橋剤である。
【0097】
(試験)
硬化エラストマー基剤組成物の引張り、伸び、及び100%モジュラス特性を、ASTM D412に基づく方法によって測定した。ショアAデュロメーター硬度をASTM D2240に基づく方法によって測定した。
【0098】
ペインカップを使用し、修正ASTM E96法によって浸透性を評価した。試験燃料CE10は、標準燃料Cに10容積パーセントでエタノールを混合したものである。CE10を浸透カップに入れ、カップの上部にゴムダイヤフラムを被せ(placed)、次いで、止めネジで押さえ付ける密閉具でしっかり締め付けた。燃料とダイヤフラムが直接接触するように、カップを逆さまにした。カップを60℃のオーブン内に置いた。浸透速度が一定になるまで、重量損失を測定した。浸透速度は、ダイヤフラムの表面積を用い、ASTM E96によって計算し、mm・g/m2・dayの単位で報告した。
【0099】
(実施例1)
GP−70(100部)、AN−3(1部)、TAIC(1部)及びTrig 145E(0.5部)を二軸ロールミルにおいて混合し、シリコーンコンパウンドを形成させた。B−600(180g)を、160℃及び50rpm(毎分回転数)のロータローラを具備する310mlのHaakeミキサーに添加した。FKMの内部温度が160℃の時に、シリコーンコンパウンド(121g)を添加した。トルクが増加した後、材料温度は約220℃であった。フルオロカーボンエラストマー基剤組成物は、20分の時に除去された。
【0100】
得られたフルオロカーボン基剤エラストマー組成物(250g)を、VC−20(5.04g)、VC−30(6.38g)及びCri−Act−45(33.60g)と均一になるまで、ミルにおいて混合した。試料を、177℃で10分間、プレス硬化させ、その後、232℃で24時間、後硬化させて、7.0MPaの引張強度、286%の伸び及び2630mm・gm/day・m2の浸透度を得た。
【0101】
(実施例2)
GP−70(100部)及びP457(6.6部)をミキサー内で混合した。この混合物に、AN−3(0.73部)、TAIC(1.93部)及びTrig 145E(1.22部)を二軸ロールミルにおいて添加し、シリコーンコンパウンドを形成させた。B−600(214g)を、160℃及び50rpm(毎分回転数)のロータローラを具備する310mlのHaakeミキサーに添加した。FKMの内部温度が160℃の時に、シリコーンコンパウンド(110g)を添加した。トルクが増加した後、材料温度は約220℃であった。フルオロカーボンエラストマー基剤組成物は、16分の時に除去された。
【0102】
得られたフルオロカーボン基剤エラストマー組成物(250g)を、VC−20(5.79g)、VC−30(7.34g)及びCri−Act−45(38.62g)と均一になるまで、ミルにおいて混合した。試料を、177℃で10分間、プレス硬化させ、その後、232℃で24時間、後硬化させて、6.7MPaの引張強度、184%の伸び及び1372mm・gm/day・m2の浸透度を得た。
【0103】
(実施例3)
GP−700(100部)、TAIC(0.3部)、ZnO(1部)及びTrig 145PD(0.28部)を二軸ロールミルにおいて混合し、シリコーンコンパウンドを形成させた。P457(180g)を、160℃のロータローラを具備する310mlのHaakeミキサーに添加した。FKMの内部温度が160℃の時に、シリコーンコンパウンド(121g)を添加した。試料Aでは、rpm(毎分回転数)は50であったのに対して、試料Bでは100rpmであった。トルクが増加した後、フルオロカーボンエラストマー基剤組成物は、最大トルクの5分後に除去された。
【0104】
得られたフルオロカーボン基剤エラストマー組成物を、試料中に存在するP457 100部当たり、ZnO、TAIC及びTRIG 101それぞれ3部ずつと均一になるまで、ミルにおいて混合した。試料を、177℃で10分間、プレス硬化させ、その後、232℃で24時間、後硬化させて、試料Aでは、71のショアAデュロメーター硬度、9.3MPaの引張強度及び310の伸び、並びに試料Bでは、67のショアAデュロメーター硬度、10.6MPaの引張強度及び319の伸びを得た。
【0105】
(実施例4)
試料Aでは、LS4−9062(100部)、HT−1(1部)、ZnO(5部)及びTrig 145PD(0.2部)を二軸ロールミルにおいて混合し、シリコーンコンパウンドを形成させた。試料Bは、SR633(0.5部)を有する試料Aである。G902(270g)を、150℃のバンバリーローラを具備する379mlのHaakeミキサーに添加した。FKMの内部温度が140℃の時に、シリコーンコンパウンド(194g)を添加して、125rpm(毎分回転数)で混合した。トルクが増加した後、フルオロカーボンエラストマー基剤組成物は、9分の時の最大トルクの5分後に除去された。試料C及び試料Dはそれぞれ、G902がP457と置き換えられた以外は試料A及び試料Bと同様のものである。
【0106】
試料A及び試料Bを、試料中に存在するG902 100部当たり、ZnO(5部)、TAIC(4部)及びTRIG 101(1.5部)と均一になるまで、ミルにおいて混合した。試料を、160℃で10分間、プレス硬化させ、その後、200℃で4時間、後硬化させた。試料C及び試料Dを、試料中に存在するP457 100部当たり、ZnO(5部)、TAIC(3部)及びTRIG 101(3部)と均一になるまで、ミルにおいて混合した。試料を、177℃で10分間、プレス硬化させ、その後、200℃で4時間、後硬化させた。得られた特性を表1にまとめる。
【0107】
【表1】

【0108】
(実施例5)
試料A〜Cでは、表2に以下に列挙されるシリコーンコンパウンドを、二軸ロールミル上で混合し、化合物を形成した。Aflas150P(210g)及びシリコーンコンパウンドを、150℃のバンバリーローラを具備する379mlのHaakeミキサーに添加して、125rpm(毎分回転数)で混合した。トルクが増加した後、フルオロカーボンエラストマー基剤組成物は、約7〜8分の時の最大トルクの5分後に除去された。試料Dは、同様の混合条件下で14分間混合したAflas150P(210g)、N990(75g)及びGP−50(90g)の単純な混合物である。
【0109】
試料は、フルオロカーボンエラストマー組成物又は混合物100部当たり、TAIC(5部)及びVAROX(2.4部)と均一になるまで、ミルにおいて混合された。試料を、170℃で20分間、プレス硬化させ、その後、175℃で4時間、後硬化させた。調合物及び得られた特性を表2にまとめる。200グラムの非化合ゴム組成物を1.75mmの間隙を有する50℃の6本のロール(フロントロールが20rpm及びバックロールが28rpm)上に置いて、組成物がロールの周囲に完全に巻き付く(band)時間を測定することによって巻き付く時間を測定した。ブリードは、シートを室温で24時間以上放置した後、表面光沢により示された。
【0110】
【表2】

【0111】
(実施例6)
フルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、150℃まで加熱される加工セクション及び15kg/時間の押出量において300rpmのスクリュー回転数を有する25mmのWerner and Pfleiderer二軸押出機を用いて調製された。加工は、173.7グラム/分の供給速度でフルオロカーボンエラストマー(B−202)を押出機へ添加することにより開始され、続けて、GP−700(100部)、AN−3(0.6部)、TAIC(1部)及びTrig 145PD(3.33部)から成るシリコーンコンパウンドを供給速度76.3グラム/分で添加した。押出機から得られたフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、FKM100部当たり、6部の水酸化カルシウム及び3部の酸化マグネシウムとなるように、3部のVC−20、3.8部のVC−30及び20部のCri−Act−45と均一になるまでミルにおいて混合された。試料を、177℃で10分間、プレス硬化させ、その後、232℃で24時間、後硬化させて、62のショアAデュロメーター硬度、7.2MPaの引張強度、245%の伸び及び2079mm・gm/day・m2の浸透度を得た。
【0112】
(実施例7)
フルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、150℃まで加熱される加工セクション及び15kg/時間の押出量において600rpmのスクリュー回転数を有する25mmのWerner and Pfleiderer二軸押出機を用いて調製された。加工は、165グラム/分の供給速度でフルオロカーボンエラストマー(B−600)を押出機へ添加することにより開始され、続けて、GP−70(100部)、P457(11.1部)、AN−3(0.6部)、TAIC(2部)及びTrig 145E(1.5部)から成るシリコーンコンパウンドを供給速度85グラム/分で添加した。押出機から得られたフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、FKM100部当たり、6部の水酸化カルシウム及び3部の酸化マグネシウムとなるように、3部のVC−20、3.8部のVC−30及び20部のCri−Act−45と均一になるまでミルにおいて混合された。試料を、177℃で10分間、プレス硬化させ、その後、232℃で24時間、後硬化させて、7.3MPaの引張強度、203%の伸び及び1500mm・gm/day・m2の浸透度を得た。
【0113】
(実施例8)
2つのフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、150℃まで加熱される加工セクション及び21kg/時間の押出量において600rpmのスクリュー回転数を有する25mmのWerner and Pfleiderer二軸押出機を用いて調製された。試料Aに関して、加工は、216グラム/分の供給速度でフルオロカーボンエラストマー(P457)を押出機へ添加することにより開始され、続けて、GP−700(100部)、ZnO(0.75部)、TAIC(0.33部)及びTrig 145PD(0.3部)から成るシリコーンコンパウンドを供給速度133グラム/分で添加した。試料Bは、速度がFKMでは176グラム/分、シリコーンコンパウンドでは173グラム/分であった以外は、同様に供給された。押出機から得られたフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、FKM100部当たり、3部のZnO、3部のTAIC及び3部のTrig 101と均一になるまでミルにおいて混合された。試料を、177℃で10分間、プレス硬化させ、その後、232℃で24時間、後硬化させた。試料Aは、9.6MPaの引張強度、288%の伸び及び−30℃のASTM D 1329−88(98)により測定されたTR−10値を有していた。試料Bは、9.6MPaの引張強度、274%の伸び及び−36℃のTR−10値を有していた。比較のため試料A及び試料Bと同様に配合されたP457の試料は、−21℃のTR−10を有していた。
【0114】
(実施例9)
フルオロカーボン基剤エラストマー組成物Aは、150℃及び180℃に加熱される加工セクションと20kg/時間の押出量において500rpmのスクリュー回転数とを有する25mmのWerner and Pfleiderer二軸押出機を用いて調製された。加工は、242グラム/分の供給速度でフルオロカーボンエラストマー(G902)を押出機へ添加することにより開始され、続けて、LCS−755(100部)、ZnO(5部)及びVarox(0.5部)から成るシリコーンコンパウンドを供給速度92グラム/分で添加した。フルオロカーボン基剤エラストマー組成物Bは、150℃及び200℃に加熱される加工セクションと80kg/時間の押出量において300rpmのスクリュー回転数とを有する40mmの二軸押出機を用いて調製された。加工は、289グラム/分の供給速度で同様のシリコーンコンパウンドを添加することにより開始され、続けて、同様のフルオロカーボンエラストマーを供給速度945グラム/分で添加した。押出機から得られたフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、FKM100部当たり、5部のZnO、4部のTAIC及び1.5部のTrig 101と均一になるまでミルにおいて混合された。試料を、160℃で10分間、プレス硬化させ、その後、200℃で4時間、後硬化させた。試料Aは、11.5MPaの引張強度、353%の伸び及び2320mm・gm/day・m2の浸透度を有していた。試料Bは、10.2MPaの引張強度、319%の伸び及び2170mm・gm/day・m2の浸透度を有していた。試料Bは、本来のフルオロカーボンエラストマーの−7℃と比べて、−18℃のTR−10値を有している。
【0115】
(実施例10)
フルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、180℃まで加熱される加工セクション及び20kg/時間の押出量において300rpmのスクリュー回転数を有する25mmのWerner and Pfleiderer二軸押出機を用いて調製された。加工は、237グラム/分の供給速度でフルオロカーボンエラストマー(P457)を押出機へ添加することにより開始され、続けて、GP−700(100部)、ZnO(0.75部)、TAIC(0.5部)及びTrig 145PD(0.455部)から成るシリコーンコンパウンドを供給速度97グラム/分で添加した。押出機から得られたフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、FKM100部当たり、3部のZnO、3部のTAIC及び3部のTrig 101と均一になるまでミルにおいて混合された。試料を、177℃で10分間、プレス硬化させ、その後、232℃で24時間、後硬化させて、14.0MPaの引張強度及び385%の伸びを得た。
【0116】
(実施例11)
2つのフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、120℃及び150℃に加熱される加工セクションと20kg/時間の押出量において300rpmのスクリュー回転数とを有する25mmのWerner and Pfleiderer二軸押出機を用いて調製された。双方の試料に関して、押出機の供給速度は、フルオロカーボンエラストマー(P457)では200グラム/分であり、GP−700(100部)、ZnO(5部)及びTrig 145PD(0.2部)から成るシリコーンコンパウンドでは134グラム/分であった。試料Aでは、FKMが押出機に添加された後、シリコーンコンパウンドが添加された。試料Bでは、シリコーンコンパウンドが押出機に添加された後、FKMが添加された。押出機から得られたフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、FKM100部当たり、5部のZnO、3部のTAIC及び3部のTrig 101と均一になるまでミルにおいて混合された。試料を、177℃で10分間、プレス硬化させ、その後、200℃で4時間、後硬化させた。試料Aは、66のショアAデュロメーター硬度、14.4Mpaの引張強度及び330%の伸びを有していた。試料Bは、64のショアAデュロメーター硬度、12.9MPaの引張強度及び320%の伸びを有していた。
【0117】
(実施例12)
以下のフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、200℃に加熱される加工セクション及び20kg/時間の押出量における500rpmのスクリュー回転数で、25mmのWerner and Pfleiderer二軸押出機を用いて調製された。フルオロカーボンエラストマー組成物は、シリコーンコンパウンドA、B及びCを含むGBL200で製造された。化合物Aは、LCS−755(100部)、ZnO(5部)及びVAROX(0.4部)を含有していた。化合物Bは、LS5−2040(100部)、HT−1(1部)及びVAROX(0.5部)を含有していた。化合物Cは、GP700(100部)、ZnO(5部)及びVAROX(0.2部)を含有していた。数種類の重量比で組成物を製造した。押出機から得られたフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、FKM100部当たり、5部のZnO、3部のTAIC及び6部のVAROXと混合された。試料を、160℃で10分間、プレス硬化させ、その後、200℃で4時間、後硬化させた。重量パーセントのFKM及び結果を表3に挙げる。
【0118】
【表3】

【0119】
(実施例13)
試料Aに関して、LCS−755(100部)及びG902(5部)は、混合機内で混ぜ合わされた。この混合物であるZnO(5部)及びVAROX(0.4部)は、二軸ロールミルに添加され、シリコーンコンパウンドを形成した。試料Bは、G902を添加しないこと以外は、試料Aと同様のものである。P457(329g)及びそれぞれのシリコーンコンパウンド(142g)を、150℃及び125rpm(毎分回転数)のバンバリーブレードを具備する310mlのHaakeミキサーに添加した。フルオロカーボンエラストマー基剤組成物は、トルクが増加した5分後に除去された。
【0120】
押出機から得られたフルオロカーボン基剤エラストマー組成物は、FKM100部当たり、5部のZnO、3部のTAIC及び6部のVAROXと混合された。試料を、160℃で10分間、プレス硬化させ(A/M指定)、その後、200℃で4時間、後硬化させた(PC指定)。結果を表4に示す。
【0121】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロカーボンエラストマー基剤組成物を調製する方法であって、
硬化性オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン基剤(A)と、任意選択の架橋剤(B)と、硬化剤(C)とを混合して、シリコーンコンパウンドを形成する工程(I)、
該シリコーンコンパウンドを、フルオロカーボンエラストマー(D)と、任意選択の相溶化剤(E)と、任意選択の触媒(F)と混合する工程(II)、及び
該シリコーンコンパウンドを動的に加硫する工程(III)
を含み、該エラストマー基剤組成物中のフルオロカーボンエラストマー(D)とシリコーン基剤(A)との重量比が95:5〜30:70である、フルオロカーボンエラストマー基剤組成物を調製する方法。
【請求項2】
前記シリコーン基剤が、
2〜20個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン(A')、及び
任意選択の強化充填剤(A'')
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記架橋剤が、存在し、且つオルガノヒドリドケイ素化合物である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化剤が白金触媒である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化剤がフリーラジカル開始剤である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記フルオロカーボンエラストマーが、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー、テトラフルオロエチレンとプロピレンとのコポリマー、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとテトラフルオロエテンとのターポリマー、又はフッ化ビニリデンとテトラフルオロエテンとパーフルオロメチルビニルエーテルとのターポリマーから成る請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記相溶化剤(E)が、存在し、且つ、
2つ以上のオレフィン基を含有する有機化合物(E1)、
少なくとも2つのアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン(E2)、
オレフィン官能性シランであって、少なくとも1つの加水分解性基又は該オレフィン官能性シランのケイ素原子と結合している少なくとも1つのヒドロキシル基を含有するオレフィン官能性シラン(E3)、
アミン基、アミド基、イソシアヌレート基、フェノール基、アクリレート基、エポキシ基及びチオール基から選択される少なくとも1つの有機官能基を有するオルガノポリシロキサン(E4)、
脱フッ化水素剤(E5)、並びに
(E1)、(E2)、(E3)、(E4)及び(E5)の任意の組み合わせ
から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒(F)が、存在し、且つ有機過酸化物から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程II及びIIIが、押出機において行われる請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程II及びIIIが、押出機において2分未満で行われる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項によって製造されるフルオロカーボンエラストマー基剤組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の生成物から調製される硬化フルオロカーボンエラストマー組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化フルオロカーボンエラストマーを含む製品。

【公表番号】特表2007−514055(P2007−514055A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545772(P2006−545772)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/041634
【国際公開番号】WO2005/059028
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】