説明

フルカラートナー

【課題】オフセット、特に高温オフセットや、記録材の定着器への巻き付きが起こりにくい上、光沢性や混色性の優れるフルカラー定着画像が得られ、かつ長時間読んでも目が疲れにくい印字物を与えるフルカラートナーを提供する。
【解決手段】ブラックトナーが記録材上の最上層になるフルカラー画像形成装置に使用されるフルカラートナーであって、ブラックトナー、マゼンタトナー、シアントナー及びイエロートナーからなり、(a)各トナーにおけるトナー母粒子が、バインダー樹脂、着色剤、ワックス及び電荷制御剤を含み、混練−粉砕法で形成され、かつ熱処理球形化処理してなるものであること、(b)ブラックトナーにおけるトナー母粒子のバインダー樹脂が、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であること、及び(c)マゼンタ、シアン及びイエローの3色カラートナーにおけるトナー母粒子のバインダー樹脂が、それぞれポリエステル系樹脂であること、を特徴とするフルカラートナーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフルカラートナーに関し、さらに詳しくは、ブラックトナーが記録材上の最上層になる画像形成装置に使用されるフルカラートナーであって、オフセット、特に高温オフセットや、記録材の定着器への巻き付きが起こりにくい上、光沢性や混色性の優れるフルカラー定着画像が得られ、かつ記録材最上層におけるブラックの文字画像の光沢が少ないので、長時間読んでも目が疲れにくい印字物を与えるフルカラートナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスにおいては、光導電性物質を利用した感光体上に種々の手段により静電的に潜像を形成し、この潜像をトナーを用いて現像し、感光体上のトナー像を中間転写体を介して又は介さずに、紙等の記録材に転写した後、この転写画像を紙などの記録材に定着する、という複数の工程を経て、定着画像を形成するのが一般的である。近年、情報化社会における機器の発達や通信網の充実により、電子写真プロセスは複写機のみならず、プリンターにも広く利用されるようになり、利用する装置の小型化、軽量化そして高速化、高信頼性がますます厳しく要求されてきている。
特にカラー電子写真の場合、形成される画像が高画質で高発色であることが要求される。高画質で高発色の画像を得るためには、透光性(特に、OHP透光性)や光沢等の観点から、トナーが十分に融解し定着後における画像の表面が平滑でなくてはならない。このため、電子写真プロセスにおける定着工程が特に重要となる。
フルカラートナーの定着はブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4色の重ね合わせとなるので、光沢があり、混色性に優れた定着画像を得ようとすると、オフセット(記録材における画像部でない部分に転移する現象)や、定着器への記録材の巻き付きが発生しやすい。特にマシンの高速化に伴って、定着器温度を高く設計しなければならない場合、トナーの粘弾性が不足して定着器への巻き付きが避けられなくなる。
特許文献1及び2においては、トナーの貯蔵弾性率G'を規定することで、高温オフセット、低温オフセット、定着性、混色性、光沢性の全てを改良することを試みているが、3色以上が重ね合ったフルカラー画像の定着においては、上層のトナーと下層のトナー(記録材に近いトナー)の溶融の度合いが異なり、満足のいくフルカラー画像は得られないのが実状である。
特許文献3には、ブラックトナーの軟化温度をカラー(3色)トナーの軟化温度をよりやや高くすることで、カラー画像と白黒画像の光沢の差を制御する技術が提案されているが、軟化温度を100℃以下に規制するので、定着器への巻き付きの問題をクリアすることはできない。
また、特許文献4では、記録材上の最上層のトナーと第2層のトナーのバインダー樹脂中に架橋成分を存在させ、混色性や光沢性を維持しつつ高温オフセットしにくいフルカラー定着方法が開示されている。しかしながら、この場合、第2層のトナー(実施例ではイエロートナー)の定着画像の表面平滑度が粗くなり、イエロートナーだけ光沢のない画像になってしまうという問題が生じる。
最近、優れた現像性、転写性を得るために、球形トナーが上市されている。球形トナーの製法としては、懸濁重合法や乳化重合凝集法のような重合法によるものや、混練−粉砕して得られる粒子を300℃近くの熱風で球形化する方法に大別される。この中で熱風で球形化処理する方法においては、球形化の際にワックス成分がトナー表面に滲み出てきて、トナーの耐久性や流動性を悪化させたり、トナー同士が溶融して粒度分布がブロード化してしまうという問題がある。これらの問題を解決するために、特許文献5においては、酸価を有する特定のワックスを使用し、熱処理球形化の後に分級工程を設けるといった工夫を試みているが、フルカラー画像の3色以上の重ねあわせの場合には、定着器に記録材が巻き付きやすく、ワックス成分の添加量を増やすことが必要であり、この場合熱処理時のワックス染み出しが著しくなるのを免れない。
【特許文献1】特開2005−91984号公報
【特許文献2】特開2002−131969号公報
【特許文献3】特開2002−244349号公報
【特許文献4】特開平2−19861号公報
【特許文献5】特開平11−295929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情のもとで、オフセット、特に高温オフセットや、記録材の定着器への巻き付きが起こりにくい上、光沢性や混色性の優れるフルカラー定着画像が得られ、かつ長時間読んでも目が疲れにくい印字物を与えるフルカラートナーを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の好ましい性質を有するフルカラートナーを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、ブラックトナーが記録材上の最上層になるフルカラー画像形成装置に使用されるフルカラートナーであって、各トナーにおけるトナー母粒子が特定の方法で処理されたものであり、かつブラックトナー及びマゼンタ、シアン及びイエローの3色カラートナーにおけるトナー母粒子のバインダー樹脂として、特定の樹脂を用いることにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]ブラックトナーが記録材上の最上層になるフルカラー画像形成装置に使用されるフルカラートナーであって、ブラックトナー、マゼンタトナー、シアントナー及びイエロートナーからなり、
(a)各トナーにおけるトナー母粒子が、バインダー樹脂、着色剤、ワックス及び電荷制御剤を含み、混練−粉砕法で形成され、かつ熱処理球形化処理してなるものであること、
(b)ブラックトナーにおけるトナー母粒子のバインダー樹脂が、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であること、及び
(c)マゼンタ、シアン及びイエローの3色カラートナーにおけるトナー母粒子のバインダー樹脂が、それぞれポリエステル系樹脂であること、
を特徴とするフルカラートナー、
[2]マゼンタトナー、シアントナー及びイエロートナーの中から選ばれる少なくとも1種のカラートナーが、予め作製された着色剤のマスターバッチを希釈混練することにより得られたものである上記[1]項に記載のフルカラートナー、
[3]170℃におけるトナーの貯蔵弾性率G'が、ブラックトナー:100〜2000Pa及び3色カラートナー:30〜1000Paであり、かつブラックトナーのG'が3色カラートナーのG'よりも大きい上記[1]又は[2]項に記載のフルカラートナー、
[4]各トナーにおけるトナー母粒子中のワックス含有量が、1〜3質量%である上記[1]〜[3]項のいずれかに記載のフルカラートナー、及び
[5]各トナーが、それぞれ球形化処理トナー母粒子100質量部に対し、外添剤として疎水性シリカ粉末0.3〜3質量部を含有させたものである上記[1]〜[4]項のいずれかに記載のフルカラートナー、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ブラックトナーが記録材上の最上層になる画像形成装置に使用されるフルカラートナーであって、オフセット、特に高温オフセットや、記録材の定着器への巻き付きが起こりにくい上、光沢性や混色性の優れるフルカラー定着画像が得られ、かつ記録材最上層におけるブラックの文字画像の光沢が少ないので、長時間読んでも目が疲れにくい印字物を与えるフルカラートナーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のフルカラートナーは、ブラックトナーが記録材上の最上層になるフルカラー画像形成装置に使用されるフルカラートナーであって、ブラックトナー、マゼンタトナー、シアントナー及びイエロートナーからなる。
[トナー母粒子]
本発明のフルカラートナーにおいては、各トナーにおける母粒子は、バインダー樹脂、着色剤、ワックス及び電荷制御剤を含み、混練−粉砕法で形成され、かつ熱処理球形化処理してなるものである。
(バインダー樹脂)
本発明においては、高温オフセットや、記録材の定着器への巻き付きを起こりにくくし、かつ光沢や定着性の観点から、トナー母粒子中のバインダー樹脂として、記録材の最上層になるブラックトナーにおいては、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用い、マゼンタ、シアン及びイエローの3色カラートナーにおいては、ポリエステル系樹脂を用いる。
上記ブラックトナーに用いるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体に特に制限はないが、例えばスチレンと、下記の(メタ)アクリル酸エステルの中から選ばれる少なくとも1種との共重合体を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルなどを例示することができる。
当該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、性能の観点から、スチレン−アクリル酸ブチル−メタクリル酸ブチルが好適である。
【0007】
また、3色カラーに用いるポリエステル系樹脂に特に制限はないが、多塩基酸と多価アルコールとの脱水縮合により得られたものを使用することができる。
多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類などが挙げられる。これらの多塩基酸は、単独で用いることもでき、2種類以上を併用して用いることもできる。これらの多塩基酸の中でも、芳香族カルボン酸を使用するのが好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの脂肪族ジオールやポリオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物などの芳香族ジオール類等が挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で用いることもでき、2種以上を併用して用いることもできる。これらの多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、芳香族ジオール類がより好ましい。
当該ポリエステル系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、性能の観点から、芳香族ジカルボン酸とアルキレンエーテル化ビスフェノールAとの重縮合ポリエステルが好適である。
バインダー樹脂として用いられる上記のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びポリエステル系樹脂は、ガラス転移温度が50〜75℃であることが好ましく、52〜70℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が50℃未満であると、トナーの保存性が低下するおそれがあり、ガラス転移温度が75℃を超えると、トナーの低温定着性が不充分となるおそれがある。
なお、4色トナーが、いずれもバインダー樹脂として、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いたトナーである場合、耐高温オフセット性や定着器への巻き付きに関しては効果的であるが、定着画像の混色性が阻害されたり、光沢がなくなるので、写真画像としては好ましくない。
【0008】
(着色剤)
トナー母粒子中の着色剤としては、ブラックトナーにおいては黒色着色剤が、イエロートナーにおいてはイエロー着色剤が、シアントナーにおいてはシアン着色剤が、マゼンタトナーにおいてはマゼンタ着色剤が用いられる。
上記黒色着色剤としては、カーボンブラック、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が利用される。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12,13,14,15,17,62,74,83,93,94,95,109,110,111,128,129,147,169,180等が好適に用いられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用される。具体的には、C.I.ピグメントブルー1,7,15,15:1,15:2,15:3,15:4,60,62,66等が特に好ましい。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アソスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2,3,5,6,7,23,48:2,48:3,48:4,57:1,81:1,122,144,146,166,169,177,184,185,202,206,220,221,254が特に好ましい。
【0009】
(ワックス)
本発明において、トナー母粒子に用いるワックスは、熱ロール定着時の離型性を良くする目的で用いられるものであり、このようなものとしては、例えばカルナウバワックス、ライスワックスなどの植物ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス、モンタンワックス、キャンデリアワックスなどの鉱物ワックス、カーボワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン−プロピレン共重合体ワックス、塩素化ナフタレンワックスなどの合成ワックス、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸などの高級脂肪酸、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの高級アルコール、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドなどのアミド系ワックス、脂肪酸エステル、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレートなどの多価アルコールエステル、シリコーンワニスなどを挙げることができる。これらのワックスは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
このワックスの融点は好ましくは50〜160℃であり、より好ましくは60〜150℃である。ワックスの融点が50℃未満であると、トナーの保存性が低下するおそれがあり、ワックスの融点が150℃を超えると、トナーの低温定着性が不充分となるおそれがある。ワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いる分析において、10℃/分で昇温したときの吸熱ピーク温度として求めることができる。
本発明においては、トナー母粒子中のワックスの含有量は、0.5〜5質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。このワックスの含有量が0.5質量%未満であると、トナーの低温定着性が不充分となるおそれがある。ワックスの含有量が5質量%を超えると、製造工程において粒子の付着や堆積が生じやすい、特に熱処理球形化の際にトナー表面にワックス成分がにじみ出やすくなり、トナーの帯電性能を低下させる。また、トナーの流動性や保存性が低下するおそれがある。
【0010】
(電荷制御剤)
本発明において、トナー母粒子に用いられる電荷制御剤としては、負帯電性を制御する電荷制御剤として、例えば、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ヒドロキシカルボン酸、含金属サリチル酸系化合物、ホウ素錯体化合物、カリックスアレーンなどを挙げることができる。また、トナーを正帯電性に制御する電荷制御剤として、例えば、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、ニグロシン、グアニジン化合物、トリフェニルメタン染料、第四級アンモニウム塩などを挙げることができる。
本発明はフルカラートナーであるので、マゼンタ、シアン及びイエローの3色カラーにおいては、上記電荷制御剤の中で、色調、光透過性に悪影響を及ぼさない無色、白色または淡色の電荷制御剤が使用可能である。なお、ブラックトナーに用いる電荷制御剤としては黒色等の有色のものも使用可能である。例えば、含金属系あるいはメタルフリー系等の負帯電性電荷制御剤、ニグロシン系あるいはトリフェニルメタン系等の正帯電性電荷制御剤が挙げられる。電荷制御剤を添加する場合は、バインダー樹脂100質量部に対して、通常0.1〜10質量部程度使用する。
トナー母粒子に、これらの電荷制御剤を含有させることにより、トナーの帯電特性を安定させ、かぶりの発生を防止することができる。これらの電荷制御剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
(シリカ粉末)
本発明におけるトナー母粒子には、所望により内添剤としてシリカ粉末を含むことができる。このシリカ粉末を含有させることにより、バインダー樹脂と親和性の低いワックスがシリカ粒子の凝集体に吸着され、バインダー樹脂中に均一に分散し、トナー粒子の表面への滲み出しが抑制される。その結果、粉砕されたトナー粒子の流動性が向上し、製造装置内での付着と堆積が防止される。
本発明に用いるシリカ粉末の平均一次粒子径は0.005〜0.02μmであることが好ましく、0.007〜0.016μmであることがより好ましい。
このシリカ粉末に特に制限はなく、例えば、乾式法シリカ、湿式沈降法シリカ、湿式ゲル法シリカなどを挙げることができる。また、多数のシラノール基を有する親水性シリカ、シラノール基のトリメチルシリル化やシリコーンオイルなどにより疎水化処理した疎水性シリカのいずれをも用いることができる。これらの中で、疎水性シリカは、バインダー樹脂との親和性が大きいので、特に好適に用いることができる。
トナー母粒子中のシリカ粉末の含有量は、通常0.25〜5質量%程度である。シリカ粉末の含有量が0.25質量%未満であると、ワックスを吸着し保持する効果が十分に発現しないおそれがある。シリカ粉末の含有量が5質量%を超えると、トナーの定着性が阻害されるとともに、カラートナーの場合は、トナーの透明性が低下するおそれがある。
【0012】
<疎水性シリカ粉末>
内添剤として好ましい疎水性シリカ粉末の材料としては、四塩化ケイ素などのハロゲン化シランを、蒸気相酸化により生成され、ヒュームドシリカと称せられる乾式シリカ粉末、及び水ガラスなどから製造されるいわゆる湿式シリカ粉末のいずれも使用することができるが、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3-などの製造残渣の少ない乾式シリカ粉末が好ましい。
上記シリカ粉末の疎水化処理に用いられる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラザン化合物、環状ジメチルシロキサン、シランカップリング剤などを挙げることができる。これらの中で、シリコーンオイル、シラザン化合物、環状ジメチルシロキサン、シランカップリング剤が好ましい。
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどが、シラザン化合物としては、例えばヘキサメチルジシラザンなどが、環状ジメチルシロキサンとしては、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどが挙げられる。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0013】
(各トナー母粒子の作製)
本発明においては、各トナー母粒子は、以下に示す方法によって作製することができる。
まず、バインダー樹脂、着色剤、ワックス、電荷制御剤及び所望によりシリカ粉末を溶融混練する。この溶融混練する方法に特に制限はなく、例えば、これらの材料をリボン型混合機、二重円錐型混合機、高速混合機、円錐型スクリュー混合機などを用いてあらかじめ混合したのち、バンバリーミキサー、二軸混練押出機などを用いて溶融混練することができる。
なお、イエロー、シアン、マゼンタのカラートナー着色剤として、有機顔料を用いることが多いが、これらの有機顔料が混練時に細かく分散できていないと、定着でトナーが熱溶融しても優れた混色性が得られにくい。そこで、あらかじめ顔料のマスターバッチを作製して、顔料を微分散化してから、残りのバインダー樹脂、ワックス、電荷制御剤及び所望によりシリカ微粉末と混合して溶融混練する方が好ましい。
マスターバッチを混練する方法に特に制限はなく、公知の方法が使用できる。
例えば、2本ロール、3本ロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダーなどを用いる方法や、フラッシング法などを採用することができる。
マスターバッチ中の顔料濃度は、20〜45質量%程度、好ましくは30〜40質量%であり、またマスターバッチ混練に使用されるバインダー樹脂は、希釈混練に使用する樹脂と同じものでもよいし、モノマー成分が類似であれば分子量分布が異なるものでもよい。
溶融混練物は、冷却後、粉砕される。用いる粉砕機としては、例えば、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャーなどの衝撃式粉砕機、ロッドミル、ボールミルなどの打撃式粉砕機、カウンタージェットミルなどの圧縮空気源を利用したジェット式粉砕機などを挙げることができる。粉砕された粒子は、分級することにより粗粒子と微粒子を除いて粒径分布の狭いトナー粒子とすることが好ましい。分級する方法に特に制限はなく、例えば、気流式分級装置などを用いて分級することができる。
本発明方法においては、分級により粒径分布が狭められた粉体をトナー母粒子として、浮遊状態で加熱処理することにより、粒子を球形化する。加熱処理に際しては、あらかじめシリカ粉末、好ましくは疎水性シリカ粉末を流動化剤として外添することにより、球形化工程の生産性を向上することができる。外添シリカの添加量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.1〜3質量部であることが好ましく、0.3〜2質量部であることがより好ましい。トナー母粒子を加熱処理する手段としては、例えば、流動床槽や、熱気流中にトナー母粒子を分散させて表面を溶融させて球形化する熱風球形化装置などを用いることができる。加熱処理により、トナー粒子の平均円形度を転写性に優れる0.930〜0.980とすることが好ましく、平均円形度を0.945〜0.970とすることがより好ましい。
上記平均円形度の測定方法については後で説明する。
なお、バインダー樹脂、着色剤、ワックス、電荷制御剤及び所望によりシリカ粉末を溶融混練する際に、予めバインダー樹脂と着色剤とを含むマスターバッチを、定法に従って作製し、着色剤の代わりに用いることができる。
【0014】
[フルカラートナー]
前述のようにして作製された各トナー母粒子100質量部に対し、外添剤として疎水性シリカ粉末を、好ましくは0.3〜3質量部、より好ましくは0.8〜2.5質量部の割合で添加することにより、ブラックトナー、イエロートナー、シアントナー及びマゼンタトナーからなる本発明のフルカラートナーが得られる。上記疎水性シリカ粉末の添加は、トナーの帯電特性や流動性の調整などのために行われる。
このようにして得られた本発明のフルカラートナーにおいては、高温オフセットや、記録材の定着器への巻き付きを抑制する観点から、170℃におけるトナーの貯蔵弾性率G'が、ブラックトナーで100〜2000Pa、好ましくは300〜1800Paであることが望ましく、イエロー、シアン及びマゼンタの3色カラートナーで30〜1000Pa、好ましくは40〜900Paであることが望ましい。そして、ブラックトナーのG'が、3色カラートナーのG'よりも大きいことが望ましい。
なお、上記貯蔵弾性率G'の測定方法については後で説明する。
本発明のフルカラートナーは、オフセット、特に高温オフセットや、記録材の定着器への巻き付きが起こりにくく、かつ光沢性や混色性に優れるフルカラー定着画像を与えることができる。また、記録材の最上層に印字されるブラックの文字画像は光沢が少ないので、長時間読んでも目が疲れにくい印字物を与えることができる。
【実施例】
【0015】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性の測定及び評価は下記の方法により行った。
(1)球形化トナー粒子の平均円形度
フロー式粒子像分析装置[シスメックス社製、機種名「FPIA−2100」]を用いて、円相当径3μm以上の粒子の平均円形度を求める。
円形度=(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の周長)/(粒子投影図の輪郭長さ)
(2)トナーの貯蔵弾性率G'
被測定トナーに、ペレット成形機にて20.6N/mm2の荷重を1分間かけて、直径25mm、厚み3mmのペレットを作製し、測定用試料とする。この試料について、ティーエーインスツルメント社製のアレス粘弾性測定システムを用い、歪み1.0%、周波数1.0Hz、スタート温度100℃、昇温速度3℃/minの条件にて、170℃における貯蔵弾性率G'を測定する。
(3)定着器への巻き付き性
評価には、非磁性1成分現像装置を備えたタンデム方式のフルカラーレーザープリンタ[ヒューレットパッカード社製、機種名「HP CLJ5550」]を使用し、定着の際の記録材(紙)上のトナーは、最上層:ブラック、第2層:マゼンタ、第3層:シアン、最下層:イエローとなっている。
印字画像
(イ)JIS X 9201−1995(色再現評価用標準物体色分光データベース)N3画像
(ロ)JIS X 9201−1995(色再現評価用標準物体色分光データベース)N7画像
(ハ)イエローとシアンの2色を重ね合わせたベタ画像(グリーン)
(ニ)マゼンタとイエローの2色を重ね合わせたベタ画像(レッド)
(ホ)シアンとマゼンタの2色を重ね合わせたベタ画像(ブルー)
上記(イ)〜(ホ)の画像を連続10枚印字し、下記の判定基準に従い評価する。
○:定着器への巻き付きが発生しない。
△:定着器への巻き付きには至らなかったが、印字画像に分離爪の後がスジ状に見られる。
×:定着器への巻き付きが発生する。
(4)光沢
印字画像
・ブラック 単色ベタ
・シアン 単色ベタ
・マゼンタ 単色ベタ
・イエロー 単色ベタ
・上記(ハ) イエローとシアンの2色を重ね合わせたベタ画像(グリーン)
・上記(ニ) マゼンタとイエローの2色を重ね合わせたベタ画像(レッド)
・上記(ホ) シアンとマゼンタの2色を重ね合わせたベタ画像(ブルー)
上記印字画像について、測定装置[ミノルタ社製、機種名「Uni−Gloss60」]を用い、下記の判定基準に従い評価する。
○:4.0以上
△:2.0以上4.0未満
×:2.0未満
(5)定着性
印字画像
・ブラック 単色ベタ
・マゼンタ 単色ベタ
・シアン 単色ベタ
・イエロー 単色ベタ
・上記(ハ) イエローとシアンの2色を重ね合わせたベタ画像(グリーン)
・上記(ニ) マゼンタとイエローの2色を重ね合わせたベタ画像(レッド)
・上記(ホ) シアンとマゼンタの2色を重ね合わせたベタ画像(ブルー)
方法
予め各画像の画像濃度を、マクベス社製「マクベス濃度計RD−19」で測定しておき、印字面にセロハン粘着テープを粘着した後に剥離し、剥離後の画像濃度を測定する。次式により定着性を算出する。
定着性=[(テープ剥離後の画像濃度/テープ剥離前の画像濃度)]×100(%)
○:95%以上
△:85%以上 95%未満
×:85%未満
【0016】
製造例1 ブラックトナー(スチレン−アクリル共重合体タイプ)の製造
バインダー樹脂としてスチレン−ブチルアクリレート共重合体[三井化学社製、商品名「PA−805」、Tg:60℃、数平均分子量(Mn):3200、重量平均分子量(Mw):266000、酸価:6.5mgKOH/g]91.0質量部と、カーボンブラック[キャボット社製、商品名「Black Pearls L」]5.0質量部と、電荷制御剤[オリエント化学工業社製、商品名「ボントロンE−304」]1.5質量部と、ワックス[三洋化成工業社製、商品名「ユーメックス110TS」]2.5質量部を、ヘンシェルミキサー[三井鉱山社製、機種名「75Lヘンシェルミキサー」]で混合したのち、二軸押出機[池貝社製、機種名「PCM30」]で溶融混練した。この際、二軸押出機の出口温度は153℃であった。
次いで、この溶融混練物を冷却後、ジェット式粉砕機[ホソカワミクロン社製、機種名「カウンタージェットミル」]で、体積平均粒径8.2μmに粉砕した。続いて、上記粉砕物を、気流式分級装置[日鉄鉱業社製、機種名「エルボージェットEJ−PURO」]により、粗粉と微粉を分級し、粒度分布がシャープなトナー母粒子を得た。
次に、上記トナー母粒子100質量部に対し、前外添剤として疎水性シリカ[キャボット社製、商品名「TS−530」、BET比表面積225m2/g]0.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサー「20Lヘンシェルミキサー」(前出)で混合したのち、熱風球形化装置[日本ニューマチック工業社製、機種名「SFS−3」]を用いて、熱風温度360℃で加熱処理し、平均円形度0.963、体積平均粒径8.6μmの球形化トナー粒子を得た。
最後に、この球形化トナー粒子100質量部に、後外添剤として、疎水性シリカ「TS−530」(前出)0.5質量部及び疎水性シリカ[日本アエロジル社製、商品名「RX−50」、BET比表面積35m2/g]1.5質量部を加え、ヘンシェルミキサー「20Lヘンシェルミキサー」(前出)で混合することにより、ブラックトナーを製造した。このブラックトナーの170℃における貯蔵弾性率G'は600Paであった。
【0017】
比較製造例1 ブラックトナー(ポリエステルタイプ)の製造
製造例1において、バインダー樹脂としてポリエステル樹脂[Tg:61℃、Mn:3400、Mw:133800、酸価:5.0mgKOH/g]を用いた以外は、製造例1と同様にして、ヘンシェルミキサーで混合したのち、二軸押出機で溶融混練を実施した。この際、二軸押出機の出口温度は144℃であった。
次に、この溶融混練物に、製造例1と同様にして、粉砕−分級−球形化前外添−熱処理球形化−後外添の処理を施すことにより、ブラックトナーを製造した。
なお、粉砕処理品の体積平均粒径は8.3μmであった。熱処理球形化の熱風温度は300℃であり、この球形化品の平均円形度は0.965、体積平均粒径は8.6μmであった。また、ブラックトナーの170℃における貯蔵弾性率G'は90Paであった。
比較製造例2 ブラックトナー(ポリエステルタイプ)の製造
製造例1において、バインダー樹脂としてポリエステル樹脂[Tg:61℃、Mn:4000、Mw:206000、酸価:5.5mgKOH/g]を用いた以外は、製造例1と同様にして、ヘンシェルミキサーで混合したのち、二軸押出機で溶融混練を実施した。この際、二軸押出機の出口温度は147℃であった。
次に、この溶融混練物に、製造例1と同様にして、粉砕−分級−球形化前外添−熱処理球形化−後外添の処理を施すことにより、ブラックトナーを製造した。
なお、粉砕処理品の体積平均粒径は8.0μmであった。熱処理球形化の熱風温度は320℃であり、この球形化品の平均円形度は0.963、体積平均粒径は8.5μmであった。また、ブラックトナーの170℃における貯蔵弾性率G'は300Paであった。
【0018】
製造例2 イエロートナーの製造
バインダー樹脂としてポリエステル樹脂[Tg:61℃、Mn:3400、Mw:133800、酸価:5.0mgKOH/g]70質量部と、イエロー顔料として「C.I.ピグメントイエロー180」30質量部を、ヘンシェルミキサー「20Lヘンシェルミキサー」(前出)で前混合したのち、バンバリーミキサー[日本ロール社製、機種名「5Lインテンシブミキサー」]にて溶融混練し、冷却後、約3mm以下のサイズに粗砕して、イエロー顔料マスターバッチを調製した。
次いで、ポリエステル樹脂(前出)82.7質量部、上記イエロー顔料マスターバッチ13.3質量部、電荷制御剤「ボントロンE−304」(前出)1.5質量部及びワックス「ユーメックス110TS」(前出)2.5質量部を、ヘンシェルミキサー「75Lヘンシェルミキサー」(前出)で前混合したのち、二軸押出機「PCM30」(前出)にて溶融混練し、冷却後、約3mm以下のサイズに粗砕した。
次に、この粗砕品に、製造例1と同様にして、粉砕−分級−球形化前外添−熱処理球形化−後外添の処理を施すことにより、イエロートナーを製造した。
なお、粉砕処理品の体積平均粒径は8.1μmであった。熱処理球形化の熱風温度は300℃であり、この球形化品の平均円形度は0.965、体積平均粒径は8.5μmであった。また、イエロートナーの170℃における貯蔵弾性率G'は95Paであった。
【0019】
製造例3 シアントナーの製造
バインダー樹脂としてポリエステル樹脂[Tg:61℃、Mn:3400、Mw:133800、酸価:5.0mgKOH/g]70質量部と、シアン顔料として「C.I.ピグメントブルー15:3」30質量部を、ヘンシェルミキサー「20Lヘンシェルミキサー」(前出)で前混合したのち、バンバリーミキサー「5Lインテンシブミキサー」(前出)にて溶融混練し、冷却後、約3mm以下のサイズに粗砕して、シアン顔料マスターバッチを調製した。
次いで、ポリエステル樹脂(前出)82.7質量部、上記シアン顔料マスターバッチ13.3質量部、電荷制御剤「ボントロンE−304」(前出)1.5質量部及びワックス「ユーメックス110TS」(前出)2.5質量部を、ヘンシェルミキサー「75Lヘンシェルミキサー」(前出)で前混合したのち、二軸押出機「PCM30」(前出)にて溶融混練し、冷却後、約3mm以下のサイズに粗砕した。
次に、この粗砕品に、製造例1と同様にして、粉砕−分級−球形化前外添−熱処理球形化−後外添の処理を施すことにより、シアントナーを製造した。
なお、粉砕処理品の体積平均粒径は8.1μmであった。熱処理球形化の熱風温度は300℃であり、この球形化品の平均円形度は0.966、体積平均粒径は8.6μmであった。また、シアントナーの170℃における貯蔵弾性率G'は90Paであった。
【0020】
製造例4 マゼンタトナーの製造
バインダー樹脂としてポリエステル樹脂[Tg:61℃、Mn:3400、Mw:133800、酸価:5.0mgKOH/g]70質量部と、マゼンタ顔料として「C.I.ピグメントレッド122」30質量部を、ヘンシェルミキサー「20Lヘンシェルミキサー」(前出)で前混合したのち、バンバリーミキサー「5Lインテンシブミキサー」(前出)にて溶融混練し、冷却後、約3mm以下のサイズに粗砕して、マゼンタ顔料マスターバッチを調製した。
次いで、ポリエステル樹脂(前出)82.7質量部、上記マゼンタ顔料マスターバッチ13.3質量部、電荷制御剤「ボントロンE−304」(前出)1.5質量部及びワックス「ユーメックス110TS」(前出)2.5質量部を、ヘンシェルミキサー「75Lヘンシェルミキサー」(前出)で前混合したのち、二軸押出機「PCM30」(前出)にて溶融混練し、冷却後、約3mm以下のサイズに粗砕した。
次に、この粗砕品に、製造例1と同様にして、粉砕−分級−球形化前外添−熱処理球形化−後外添の処理を施すことにより、マゼンタトナーを製造した。
なお、粉砕処理品の体積平均粒径は8.0μmであった。熱処理球形化の熱風温度は300℃であり、この球形化品の平均円形度は0.963、体積平均粒径は8.4μmであった。また、マゼンタトナーの170℃における貯蔵弾性率G'は150Paであった。
【0021】
実施例1
製造例1で得られたブラックトナー、製造例2で得られたイエロートナー、製造例3で得られたシアントナー及び製造例4で得られたマゼンタトナーを用い、定着器への巻き付き性、光沢・定着性の評価を行った。その結果を、それぞれ第1表、第2表及び第3表に示す。
比較例1
比較製造例1で得られたブラックトナー、製造例2で得られたイエロートナー、製造例3で得られたシアントナー及び製造例4で得られたマゼンタトナーを用い、定着器への巻き付き性、光沢・定着性の評価を行った。その結果を、それぞれ第1表、第2表及び第3表に示す。
比較例2
比較製造例2で得られたブラックトナー、製造例2で得られたイエロートナー、製造例3で得られたシアントナー及び製造例4で得られたマゼンタトナーを用い、定着器への巻き付き性、光沢・定着性の評価を行った。その結果を、それぞれ第1表、第2表及び第3表に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
各表における略号の意味は、次のとおりである。
Bk単色:ブラック単色ベタ画像
M単色:マゼンタ単色ベタ画像
C単色:シアン単色ベタ画像
Y単色:イエロー単色ベタ画像
Y/C:イエローとシアンの2色を重ね合わせたベタ画像
M/Y:マゼンタとイエローの2色を重ね合わせたベタ画像
C/M:シアンとマゼンタの2色を重ね合わせたベタ画像
第1〜第3表から分かるように、本発明のフルカラートナーである実施例1においては、定着器への巻き付きが発生せず、また、ブラック単色ベタ画像の光沢が低い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のフルカラートナーは、オフセット、特に高温オフセットや、記録材の定着器への巻き付きが起こりにくい上、光沢性や混色性の優れるフルカラー定着画像が得られ、かつ記録材最上層におけるブラックの文字画像の光沢が少ないので、長時間読んでも目が疲れにくい印字物を与えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラックトナーが記録材上の最上層になるフルカラー画像形成装置に使用されるフルカラートナーであって、ブラックトナー、マゼンタトナー、シアントナー及びイエロートナーからなり、
(a)各トナーにおけるトナー母粒子が、バインダー樹脂、着色剤、ワックス及び電荷制御剤を含み、混練−粉砕法で形成され、かつ熱処理球形化処理してなるものであること、
(b)ブラックトナーにおけるトナー母粒子のバインダー樹脂が、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であること、及び
(c)マゼンタ、シアン及びイエローの3色カラートナーにおけるトナー母粒子のバインダー樹脂が、それぞれポリエステル系樹脂であること、
を特徴とするフルカラートナー。
【請求項2】
マゼンタトナー、シアントナー及びイエロートナーの中から選ばれる少なくとも1種のカラートナーが、予め作製された着色剤のマスターバッチを希釈混練することにより得られたものである請求項1に記載のフルカラートナー。
【請求項3】
170℃におけるトナーの貯蔵弾性率G'が、ブラックトナー:100〜2000Pa及び3色カラートナー:30〜1000Paであり、かつブラックトナーのG'が3色カラートナーのG'よりも大きい請求項1又は2に記載のフルカラートナー。
【請求項4】
各トナーにおけるトナー母粒子中のワックス含有量が、1〜3質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のフルカラートナー。
【請求項5】
各トナーが、それぞれ球形化処理トナー母粒子100質量部に対し、外添剤として疎水性シリカ粉末0.3〜3質量部を含有させたものである請求項1〜4のいずれかに記載のフルカラートナー。

【公開番号】特開2009−8989(P2009−8989A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171792(P2007−171792)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(599044397)株式会社アイメックス (13)
【Fターム(参考)】