説明

フルカラー有機電界発光素子の作製方法

【課題】本発明の目的は、低駆動電圧、高発光効率な大画面のフルカラー表示が可能な電界発光素子の提供にある。
【解決手段】赤用、緑用、青用の発光領域を区画する隔壁9と、赤用、緑用、青用の各透明画素電極(陰極)3とを備えた透明基板1上に、赤用、緑用、青用の各正孔注入層5が形成され、前記各正孔注入層上に、赤用、緑用、青用の各発光層6、7、8が形成され、前記各発光層上に、電子輸送層11が形成され、前記電子輸送層上に、陽極12が形成されていることを特徴とするフルカラー有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルカラー表示の可能な有機電界発光(EL)素子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EL素子は、低電圧で高輝度の発光を得ることができ、有望な表示素子として注目されている。
【0003】
具体的には、10V以下の低電圧で発光する高い蛍光量子効率を持った有機化合物を含有した薄膜を積層した有機電界発光素子が報告されている(非特許文献1)。この方法は、金属キレート錯体を発光層、アミン系化合物を正孔注入層に使用して、高輝度の緑色発光を得ており、6〜7Vの直流電圧で輝度は数10000cd/m2に達している。しかしながら、有機化合物の蒸着操作を伴う有機電界発光素子作成は、生産性に問題が有り、製造工程の簡略化、大面積化の観点から、塗布方式の素子作成が望ましい。
【0004】
インクジェット法では、基板サイズの制限は無く、印刷業界では等身大のポスターなども印刷されている。従って、将来、大型基板を用いた大面積有機電界発光型テレビやポスターの製造が可能となることより、多くの報告がなされている(特許文献1〜3)。高精細印刷も、すでに写真画質のプリンターも実用化されており200ppi程度のRGB形成は可能となる。特に、インクジェット法は、一般的な印刷技術としてかなりの技術蓄積がなされており、この点も有機電界発光素子への展開に有利であると言える。また、低分子有機電界発光素子のRGBパターン形成に用いるマスク蒸着法に比べ、材料利用効率も高い。
【0005】
塗布型りん光発光素子として、正孔輸送層と発光層を塗布により素子を作成した例が報告されている(非特許文献2)。正孔輸送層には、PEDOT/PSS、発光層には、非共役高分子の側鎖にホスト部位、発光部位をペンダント状にした化合物が用いられていた。ただし、正孔輸送層と発光層の二層構成のため、駆動電圧が高くなってしまうという問題があった。
【0006】
一方、駆動電圧を下げるために、塗布により電子輸送層を積層した例がある(非特許文献 3)。具体的には、有機溶媒への溶解性を上げるために高分子中にアンモニウム塩を有する電子輸送材料を用いていた。正孔注入層と蛍光系高分子発光層を塗布し、さらに電子輸送材料を塗布することにより、駆動電圧を下げられた。しかしながら、蛍光発光材料を用いているために輝度、電流効率、電力効率が低いという問題点があった。
【0007】
また、隔壁成分については、隔壁で区分けされた隙間にインキを充填すると隔壁を越えてインキが濡れ広がり、隣接する領域にインキが混入してフィルタセグメントの色相を損なう混色という現象が発生するため、従来は、インキに対しぬれの良い膜を形成し、複数のカラーフィルタの隙間はインキに対し濡れ性の悪い膜を形成することが行われていた(特許文献4)。また、隔壁上部にシリコンゴム層を設けることにより撥インキ性を付与してインキの混色を防止(特許文献5)が行われていた。
【0008】
エチレン性不飽和二重結合およびフルオロアルキル基を有するビニル重合体を含む該隔壁用組成物を用いて形成される隔壁(特許文献6)は、その上部表面にフルオロアルキル基を有する重合体が配向し、それによって、上部表面が撥インキ性を有する。さらに、隔壁を構成するフルオロアルキル基を有するビニル重合体が活性エネルギーによる架橋反応により隔壁の網目構造中にセットされているため、隔壁部から基材部へフルオロアルキル基を有するビニル重合体がブリードすることがない。
【0009】
【非特許文献1】C. W. Tang and S. A. Van Slyke, Appl. Phys. Lett. 51, 913 (1987)
【非特許文献2】平成15年度技研公開 講演・パネルディスカッション研究発表予稿集P52-56
【非特許文献3】Wanli Ma, Parameswar K. Iyer, Xiong Gong, Bin Liu, Daniel Moses, Guillermo C. Bazan, and Alan J. Heeger, Adv. Mater. 17(3) 274 (2005)
【特許文献1】特開平10-12377号公報
【特許文献2】特開平10-153967号公報
【特許文献3】特開平11-24604号公報
【特許文献4】特開昭59−75205号公報
【特許文献5】特開平4−123005号公報
【特許文献6】特開2005-60515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の有機色素を用いたフルカラー有機電界発光素子は、赤色、緑色、青色の発光を示す。しかし、よく知られているように、フルカラー表示体を実現するためには、3原色を発光する有機電界発光層を画素毎に配置する必要がある。従来、発光層をパターニングする技術は非常に困難とされていた。原因は、蒸着のパターニング精度が出ないという点と、正孔注入層および有機電界発光層を形成するポリマーや前駆体がフォトリソグラフィー等のパターニング工程に対して耐性が無いという点であった。しかし、近年、インクジェット方式により、高精細化が可能になった。
【0011】
しかし、このインクジェット方式でフルカラー塗布型りん光発光素子を作成した場合、正孔輸送層と発光層の二層構成のため、駆動電圧が高くなってしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、上述したような課題を解決するものであり、その目的は、赤色、緑色、青色の有機電界発光層をインクジェット方式により画素毎にパターニングし、さらに、その層の上に電子輸送層を塗布、インクジェット方式、もしくは蒸着方式にて形成することにより、フルカラー表示可能な駆動電圧が低く、発光効率が高い電界発光素子を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、赤用、緑用、青用の発光領域を区画する隔壁と、赤用、緑用、青用の各透明画素電極とを備えた透明基板上に、赤用、緑用、青用の各正孔注入層が形成され、
前記各正孔注入層上に、赤用、緑用、青用の各発光層が形成され、
前記各発光層上に、電子輸送層が形成され、
前記電子輸送層上に、陽極が形成されていることを特徴とするフルカラー有機電界発光素子に関する。
【0014】
また、本発明は、隔壁が、フルオロアルキル基を有するビニル重合体を含んでなることを特徴とする上記フルカラー有機電界発光素子に関する。
【0015】
また、本発明は、正孔注入層を形成する正孔注入層形成材料が、PEDOT・PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン・ポリスチレンスルホン酸)である上記フルカラー有機電界発光素子に関する。
【0016】
また、本発明は、赤用、緑用、青用の各発光層を形成する各発光層形成材料の少なくとも1つが、
下記一般式[1]で表されるユニットと、アミノ基を有するユニットとの共重合体、および、
発光材料を含むことを特徴とする上記フルカラー有機電界発光素子に関する。
【0017】
一般式[1]
【化1】

【0018】
[式中Aは非共役の3価の有機残基を表し、Bは直接結合、または、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、および置換もしくは未置換のエテニレン基からなる群より一つ以上選ばれてなる2価の有機残基を表し、
Cは下記一般式[2]または一般式[3]で表される一価の有機残基を表す。]
【0019】
一般式[2]
【化2】

【0020】
[式中R1〜R7は、ぞれぞれ独立に、結合部位、水素原子もしくは置換基を表し、
Xは直接結合、−O−、−S−、−Se−、−NH−、−NR8−(R8はアルキル基またはアリール基を表す。)、−S (=O)2−、−(CO)−、−COO−、−OCO−、−CH2−を示し、
R1〜R8は互いに結合してアリール環を形成しても良く、さらにそのアリール環に置換基を有しても良い。]
【0021】
一般式[3]
【化3】

【0022】
[式中R9〜R17は、ぞれぞれ独立に、結合部位、水素原子もしくは置換基を表す。]
【0023】
また、本発明は、電子輸送層を形成する電子輸送材料が、下記一般式[4]で示される繰り返し単位を含む化合物であることを特徴とする上記フルカラー有機電界発光素子に関する。
【0024】
一般式[4]
【化4】

【0025】
[式中、Arは、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、または、これらの組み合わせである2価の有機残基を表す。
1、D2は、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換のアルケニレン基、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、ヘテロ原子またはこれらの組み合わせより選ばれてなる2価の有機残基を表す。
1およびm2は、0または1であり、nは、0から10である。
11、Q21、Q12およびQ22は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のヘテロアルキル基からなる群より選ばれてなる1価の有機残基を表す。そしてQ31およびQ32は、それぞれ独立して、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のヘテロアルキル基からなる群より選ばれてなる1価の有機残基を表し、ただし、m1およびm2が1である場合、Q11、Q21、Q12およびQ22は、水素原子以外であり、E1 -およびE2 -は、負に荷電した対イオンを表す。]
【0026】
また、本発明は、上記フルカラー有機電界発光素子の、各正孔注入層、各発光層、および電子輸送層を、インクジェット方式により形成することを特徴とするフルカラー有機電界発光素子の製造方法に関する。
【0027】
また、本発明は、上記フルカラー有機電界発光素子の、各正孔注入層、および各発光層を、インクジェット方式により形成し、かつ、電子輸送層を、真空蒸着方式により形成することを特徴とするフルカラー有機電界発光素子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、インクジェット方式を用いても駆動電圧が低く、発光効率が高いフルカラー電界発光素子を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の課題を解決するためには、図1に示すように、透明電極3の上に正孔注入層5を形成し、その上に、赤色発光層6、緑色発光層7、青色発光層8を形成し、さらに電子輸送層11を形成し、さらに、これらの上層に対向電極12が形成されることによる。
なお、正孔注入層、発光層の形成は、それぞれの材料をインクジェット法によりパターニング塗布成膜し、電子輸送層は、インクジェット方式によりパターニング塗布成膜、もしくは蒸着法にて製膜することで、フルカラー表示を実現するものである。
この電子輸送層の製膜方法には、インクジェット方式、スピンコート方式などの塗布方式と真空蒸着方式とがあり、生産性の観点ではインクジェット方式による塗布方式が好ましい。しかし、上記素子作製方法では、電子輸送層は、パターニングが不要であるため、真空蒸着方式であっても構わない。
また、膜の安定性や膜に含まれる水分の影響を考慮すると、電子輸送層は真空蒸着方式で製膜することが好ましい場合もある。
【0030】
具体的には、本発明の課題を解決するためには、具体的には、図1で示される有機電界発光素子において、陰極より素子内部に注入された電子(電荷)を効率的に陽極より注入されたホール(正孔)と再結合させる為に、陰極より素子内部に電子を効率的に注入させる役割をする層(電子輸送層)が必要である。
【0031】
この役割を果たすのが電子輸送層である。しかし、三重項励起子からの発光が可能な発光材料を含む塗布型界発光素子の場合、塗布方式で、この電子輸送層を成膜することは困難であった。それは、電子輸送層を形成する電子輸送材料を塗布し溶剤揮散した後の膜安定性に欠けるなどの理由により、均一に製膜可能な材料が見いだせなかったからである。電子輸送層を塗布できない為、陰極より直接発光層に電子が注入する構成となる。しかし、この場合、陰極(例えば、Ca、Ba)と発光層の間のエネルギーバンドギャップが非常に大きく、電子の注入が困難になり、駆動電圧が高く、電力効率が低下した。従って、さらに、この電子輸送層と電極の間に電子注入層を入れる事により、さらなる低電圧駆動化が期待される。
【0032】
本発明で用いられる隔壁について説明する。本発明で用いられる隔壁は、赤用、緑用、青用の発光領域を区画することができれば特に限定されるものではなく、隔壁を形成する材料、隔壁の形成方法に関しても特に限定されるものではない。
例えば、透明基板上に一様に隔壁を形成する材料を形成し、その後、各色の発光領域に相当する部分を湿式または乾式の現像やレーザアブレーションなどで取り除いてもよいし、透明基材上にインクジェット方式などで隔壁相当分だけを形成してもよいし、別途形成した隔壁を透明基材上に転写する方法であってもよい。
隔壁形成後、各色の発光領域に各正孔注入層形成材料あるいは、各発光層形成材料が、インキとなって、インクジェット方式で吐出される。このとき、吐出されたインキが他の色の発光領域へ隔壁を越えて侵入することのないように撥インキ性が付与されていることが好ましい。
撥インキ性を付与するためには、例えば、隔壁を形成する材料として、フルオロアルキル基を有する重合体を含む隔壁用組成物を用いることが挙げられる。このような重合体としては、フルオロアルキル基を有するビニル重合体があり、これを用いて隔壁を形成した場合にフルオロアルキル基が隔壁の上部表面に配向して、インキの侵入を効果的に防止する働きをする。
【0033】
また、ビニル重合体が、さらにエチレン性不飽和二重結合を有する場合には、活性エネルギー線が照射されると、配向しているビニル重合体が隔壁の網目構造中にセットされ、隔壁から発光領域へビニル重合体がブリードすることを防ぐ働きをする。特に、ビニル重合体がアルカリ現像型フォトレジストとして調製される場合には、活性エネルギー線露光により架橋されるので、アルカリ現像時の塗膜減りが少なく、透明基材内および透明基材間での撥インキ性能のバラツキが少ない。
【0034】
ビニル重合体は、一段法または二段法で製造することができるが、二段法の方がビニル重合体を安定に製造できるので好ましい。
一段法では、エチレン性不飽和二重結合およびフルオロアルキル基を有する単量体と、必要に応じて、エチレン性不飽和二重結合およびこれ以外の活性エネルギー線反応性官能基を有する単量体とを重合してビニル重合体を製造することができる。
【0035】
また、二段法では、エチレン性不飽和二重結合およびフルオロアルキル基を有する単量体(a)と、エチレン性不飽和二重結合および反応性官能基を有する(a)以外の単量体(b)と、必要に応じて(a)および(b)以外のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c)との重合体(A)に、重合体(A)中の反応性官能基と反応可能な官能基およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)を反応させることにより製造することができる。
【0036】
エチレン性不飽和二重結合およびフルオロアルキル基を有する単量体(a)として具体的には、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロー3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロー7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H、1H、7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H、1H、9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
単量体(a)は、要求性能に応じて1種、または2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
重合体(A)における単量体(a)の共重合比率は、重合体を構成する単量体の総重量を基準として1〜90重量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。単量体(a)の共重合比率が1重量%未満の場合には、隔壁の上部表面に充分な撥インキ性を付与することが困難となり、90重量%を越える場合には、光架橋成分の導入量が少なくなるため隔壁底面で重合体(A)がブリードし、隔壁で区分された領域内にインキを充填する際にインキがはじかれ、塗膜欠陥を生じる。
エチレン性不飽和二重結合および反応性官能基を有する(a)以外の単量体(b)は、一段目に重合した重合体(A)にエチレン性不飽和二重結合を導入する起点となり、基材に隔壁用組成物を塗工後にビニル重合体を活性エネルギー線で架橋させてセットすることにより、ビニル重合体のブリードを抑制し、強靭な隔壁を形成させるために不可欠のものである。
反応性官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。
【0038】
ヒドロキシル基を有する単量体(b)として具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0039】
カルボキシル基を有する単量体(b)として具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
イソシアネート基を有する単量体(b)として具体的には、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート等や、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートとを反応させて得られるものが挙げられる。
【0040】
エポキシ基を有する単量体(b)として具体的には、グリシジル(メタ)アクリレートグリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサンモノエポキサイド、1、3−ブタジエンモノエポキサイドなどが挙げられる。
単量体(b)は、要求性能に応じて1種、または2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
重合体(A)における単量体(b)の共重合比率は、重合体を構成する単量体の総重量を基準として10〜90重量%であることが好ましく、さらに好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは25〜70重量%である。単量体(b)の共重合比率が10重量%未満の場合には、充分な光硬化性を得ることが困難となり、90重量%を越える場合には、隔壁上部表面の撥インキ性が低下する。
【0042】
(a)および(b)以外のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c)は、ビニル重合体と隔壁用組成物に含まれる他の成分との相溶性の向上、および隔壁に硬度、強靭性、耐擦傷性等の物性を付与するために用いられる。単量体(c)としては、(i)(メタ)アクリル酸誘導体、(ii)芳香族ビニル単量体、(iii)オレフィン系炭化水素単量体、(iv)ビニルエステル単量体、(v)ビニルハライド単量体、(vi)ビニルエーテル単量体等が挙げられる。
(i)(メタ)アクリル酸誘導体として具体的には、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
(ii)芳香族ビニル単量体として具体的には、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、モノフルオロメチルスチレン、ジフルオロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン等のスチレン類が挙げられる。
(iii)オレフィン系炭化水素単量体として具体的には、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、1、4−ペンタジエン等が挙げられる。
(iv)ビニルエステル単量体として具体的には、酢酸ビニル等が挙げられる。
(v)ビニルハライド単量体として具体的には、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
(vi)ビニルエーテル単量体として具体的には、ビニルメチルエーテル等が挙げられる。
【0044】
これらの単量体は、2種以上を混合して用いても良い。
重合体(A)における単量体(c)の共重合比率は、重合体を構成する単量体の総重量を基準として0〜89重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜75重量%、特に好ましくは0〜65重量%である。単量体(c)の共重合比率が89重量%を超える
場合には、撥インキ性が低下したり、十分な光硬化性が得られない。
【0045】
重合体(A)は、公知の方法、例えば、溶液重合で合成することができる。重合時の溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エーテル、酢酸ブチルなどのエステル類などの使用が可能である。溶媒は、2種以上を混合して用いてもよい。重合時の単量体の仕込み濃度は、0〜80重量%が好ましい。
【0046】
重合開始剤としては、通常の過酸化物またはアゾ化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチルバレノニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオクトエート、クメンヒドロキシペルオキシドなどが用いられ、重合温度は、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは70〜140℃である。
得られる重合体(A)の好ましい重量平均分子量は、2,000〜100,000である。
【0047】
このようにして得られた反応性官能基およびフルオロアルキル基を有する重合体(A)に、前記反応性官能基と反応可能な官能基およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合(B)を反応させることにより、エチレン性不飽和二重結合およびフルオロアルキル基を有するビニル重合体が得られる。
重合体(A)と化合物(B)とは、重合体(A)が有する反応性官能基の数に対し、該反応性官能基と反応可能な、化合物(B)が有する官能基の数が100%となる割合で反応させることが好ましいが、十分な光硬化性が得られれば100%未満となる割合で反応させてもかまわない。
【0048】
未反応の反応性官能基を残す場合には、架橋剤と架橋触媒を添加して、残った未反応の反応性官能基を熱硬化することにより、塗膜の架橋密度を高め、カラーフィルタ製造の後工程で要求される隔壁の耐溶剤性を確保することが可能となる。
重合体(A)が有する反応性官能基の数に対する化合物(B)が有する反応可能な官能基の数の割合が1%未満では、活性エネルギー線露光によるビニル重合体の架橋密度が低く、基板内および基板間での撥インキ性能のバラツキが生じる。また、50%を越えると、熱硬化による効果が少なくなり、隔壁の耐溶剤性が低くなる。
【0049】
反応性官能基と、該反応性官能基と反応可能な官能基との組み合わせとしては、以下に示すような公知の種々の組み合わせを採用することができる。
(1)反応性官能基がヒドロキシル基である場合には、イソシアネート基、ハロゲン基、カルボキシル基あるいはエポキシ基との反応。
(2)反応性官能基がカルボキシル基である場合には、エポキシ基、あるいはヒドロキシル基との反応。
(3)反応性官能基がイソシアネート基である場合には、ヒドロキシル基、あるいはアミノ基との反応。
(4)反応性官能基がエポキシ基である場合には、カルボキシル基、あるいはヒドロキシル基との反応。
【0050】
重合体(A)が有する反応性官能基と、該反応性官能基と反応可能な、化合物(B)が有する官能基とを反応させる際には、触媒を用いることができる。
触媒としては、反応性官能基がヒドロキシル基の場合には、酸性化合物及びそれらのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩などを用いることが好ましい。カルボキシル基の場合には、酸性化合物及びそれらのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩などを用いることが好ましい。イソシアネート基の場合には、アミン類、金属塩化合物などを用いることが好ましい。エポキシ基の場合には、アミン類を用いることが好ましい。
【0051】
酸性化合物として具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イタコン酸、シュウ酸、マレイン酸、無水フタル酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリクロロ酢酸、リン酸、モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのリン酸エステル、モノアルキル亜リン酸、ジアルキル亜リン酸などが挙げられる。
アミン類として具体的には、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルエチルアミンなどが挙げられる。
【0052】
金属塩化合物として具体的には、酢酸ナトリウム、オクチル酸錫、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレートジブチル錫ジ(2−エチルヘキソエート)などが挙げられる。
触媒は2種類以上を混合して使用してもよく、触媒を用いる場合の使用量は、重合体(A)および化合物(B)の合計100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5重量部の範囲である。
【0053】
ビニル重合体が反応性官能基を有する場合には、ビニル重合体を熱架橋するために、隔壁用組成物に種々の架橋剤を含有させることが好ましい。代表的な架橋剤としては、ヒドラジン類、ポリアミン、ポリイソシアネート、ジカルボン酸、多価エポキシ化合物、多価アルコール、多価フェノール等が挙げられる。
ヒドラジン類として具体的には、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0054】
ポリアミンとして具体的には、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ジアミノオクタン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの直鎖状ジアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、m−キシレンジアミン、ポリシクロヘキシルポリアミン、ビス(アミノメチル)ビシクロ[2・2・1]ヘプタン、メチレンビス(フランメタンアミン)などの環状ジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチレントリアミンなどが挙げられる。
【0055】
ポリイソシアネートとして具体的には、トルイレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート、あるいはこれらとグリコール類またはジアミン類との両末端イソシアネートアダクト体、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどが挙げられる。
ジカルボン酸として具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサン二酸、クエン酸、マレイン酸、メチルナディク酸、ドデセニルコハク酸、セバシン酸、ピロメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などが挙げられる。
【0056】
多価エポキシ化合物として具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1、6ーヘキサンジオールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステルなどのビスエポキシ化合物、油化シェルエポキシ社製の商品名エピコート801、802、807、815、827、828、834、815X、815XA1、828EL、828XA、1001、1002、1003、1055、1004、1004AF、1007、1009、1010、1003F、1004F、1005F、1100L、834X90、1001B80、1001X70、1001X75、1001T75、5045B80、5046B80、5048B70、5049B70、5050T60、5050、5051、152、154、180S65、180H65、1031S、1032H60、604、157S70などのエポキシ樹脂が挙げられる。
【0057】
多価アルコールとして具体的には、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどのジオール、1,1,1−トリメチロールプロパンエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトールなどが挙げられる。
多価フェノールとして具体的には、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、グアヤコール、ヘキシルレゾルシン、ピロガロール、トリヒドロキシベンゼン、フロログルシン、ジメチロールフェノールなどが挙げられる。
【0058】
ビニル重合体が有する反応性官能基がヒドロキシル基またはカルボキシル基の場合には、ポリイソシアネート、多価エポキシ化合物などを架橋剤として用いることが好ましい。 イソシアネート基の場合には、多価アルコール、ジカルボン酸などを架橋剤として用いることが好ましい。
エポキシ基の場合には、ジカルボン酸、多価アルコール、多価フェノール、ポリアミンなどを架橋剤として用いることが好ましい。
架橋剤は、2種類以上を混合して使用してもよく、架橋剤を含有させる場合の使用量は、隔壁用組成物の不揮発分100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10重量部の範囲である。
【0059】
また、隔壁用組成物には、ビニル重合体が反応性官能基を有する場合には、反応性官能基同士の反応、もしくは反応性官能基と架橋剤との反応を促進させるために、それぞれの官能基に応じて、種々の架橋触媒を含有させることができる。架橋触媒としては、先に例示した酸性化合物及びそのアンモニウム塩、低級アミン塩または多価金属塩、アミン類金属塩化合物の他、金属錯化合物を用いることができる。
金属錯化合物として具体的には、アルミニウムトリアセチルアセトネート、鉄トリアセチルアセトネート、マンガンテトラアセチルアセトネート、ニッケルテトラアセチルアセトネート、クロムヘキサアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、コバルトテトラアセチルアセトネートなどが挙げられる。
【0060】
これらの架橋触媒の中で、ビニル重合体が有する反応性官能基がヒドロキシル基の場合には、酸性化合物及びそれらのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩などを用いることが好ましい。 カルボキシル基の場合には、酸性化合物及びそれらのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩などを用いることが好ましい。
イソシアネート基の場合には、アミン類、金属塩化合物などを用いることが好ましい。
エポキシ基の場合には、アミン類を用いることが好ましい。
架橋触媒は、2種類以上を混合して使用してもよく、架橋触媒を含有させる場合の使用量は、隔壁用組成物の不揮発分100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5重量部の範囲である。
【0061】
また、隔壁用組成物には、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含有させることもできる。これにより塗膜の架橋密度を高め、カラーフィルタ製造の後工程で要求される隔壁の耐溶剤性を確保することが可能となる。
エチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、モノマー、オリゴマー、感光性樹脂などを用いることができる。
モノマーとしては、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート等の1官能モノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス〔4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-アクリロキシ・ジエトキシ〕フェニル〕プロパン等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上のモノマーが挙げられる。一方、オリゴマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のヘキサアクリレート、メラミンアクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートプレポリマ等が挙げられる。これらは、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0062】
また、隔壁用組成物を用いて画素形成用基材を形成する際に、紫外線照射により隔壁用組成物中のビニル重合体を架橋させる場合には、エチレン性不飽和二重結合の光重合反応を促進させるために、隔壁用組成物に光開始剤を含有させることが好ましい。
【0063】
光開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系、ベンゾフェノン系光開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリルs−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光開始剤、カルバゾール系光開始剤、イミダゾール系光開始剤等が用いられる。
【0064】
上記光開始剤は、2種以上を混合して用いることもできるが、増感剤として、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。
【0065】
隔壁を着色する場合には、隔壁用組成物に、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、具体的には C.I. ピグメントブラック1、6、7、12、20、31、32などの黒色顔料を含有させることができる。黒色顔料の中では、価格、遮光性の大きさの点から、カーボンブラックが好適に用いられる。カーボンブラックは、樹脂などで表面処理されていてもよい。
隔壁用組成物中の黒色顔料の含有量は、隔壁用組成物の不揮発分重量を基準として3〜80重量%であることが好ましい。黒色顔料の含有量が3重量%未満の場合は、単位膜厚あたりの遮光性が低下し、80重量%を越えると薄膜形成が困難になる。
【0066】
また、隔壁用組成物には、分散性改良、色相調整などの目的で、黒色顔料以外のアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体系顔料、メチン・アゾメチン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料やこれらの顔料の誘導体、体質顔料、染料を含有させてもよい。
【0067】
隔壁用組成物中のビニル重合体の組成比は、隔壁用組成物の不揮発分重量を基準とする単量体(a)の含有量が0.01〜10重量%、特に0.01〜0.4重量%となるような比率であることが好ましい。単量体(a)の含有量が0.01重量%未満の場合には、隔壁の上部表面に充分な撥インキ性を付与することが困難となり、10重量%を越える場合には、隔壁用組成物をアルカリ現像型感光性レジストとして調製し基板上に隔壁を形成する際に、現像ムラや隔壁の欠陥が生じやすくなる。
【0068】
隔壁用組成物は、フルオロアルキル基を有するビニル重合体、および必要に応じて架橋剤、架橋触媒、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、光開始剤、顔料、添加剤等を溶剤に混合溶解することにより得られる。溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エーテル、酢酸ブチルなどのエステル類などの内から、重合体の単量体組成に応じ選択して使用する。溶剤は2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
隔壁用組成物を着色しない場合には、隔壁用組成物の製造方法に特に限定はないが、通常は、ビニル重合体の重合溶液と架橋剤等の添加成分を混合し、攪拌羽根、振とう攪拌機、回転攪拌機などで攪拌すればよい。
隔壁用組成物を着色する場合には、顔料、ビニル重合体の重合溶液、および必要に応じて樹脂型または界面活性剤型の顔料分散剤や、顔料誘導体、アントラキノン誘導体、トリアジン誘導体等を分散機に投入し、顔料が所望の平均粒子径・粒度分布になるまで分散することにより製造することができる。原料は一括して混合、分散しても良いし、それぞれの原料の特性や経済性を考慮して別々に混合、分散しても良い。
【0070】
分散機としては、サンドミル、ビーズミル、アジテータミル、ダイノミル、ボールミルなどが好適である。それぞれの分散機において顔料分散に適切な粘度領域がある場合には、重合体と顔料の比率を変える等して粘度を調整する。
隔壁用組成物は、分散機で分散後に、粗大粒子や異物除去を目的にフィルタや遠心法により濾過することが好ましい。
【0071】
また、隔壁用組成物の塗工性などを向上するために、さらに溶剤を加えて均一に攪拌あるいは濃縮して粘度を調整してもよい。
隔壁用組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤剤等の各種の添加剤を含有させてもよい。
【0072】
次に、基板上に、隔壁用組成物により形成された隔壁を有する画素形成用基板について説明する。
基板としては、ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂板、樹脂フィルム等を用いることができる。得られる画素形成用基板をカラーフィルタの製造に用いる場合には、可視光領域(400〜700nm)の全波長領域において透過率が80%以上、特に好ましくは95%以上の透明基板を用いることが好ましい。
基板上への隔壁の形成法としては、グラビアオフセット印刷法、水無しオフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型感光性レジストを用いるフォトリソグラフィー法、ビニル重合体からなるコロイド粒子の電気泳動により透明導電膜の上に隔壁を電着形成する電着法、転写ベースシートの表面に予め形成した隔壁層を基板上に転写させる転写法等が挙げられる。
【0073】
印刷法は、印刷と乾燥を繰り返すだけでパターン化ができるため、隔壁の製造法としては、低コストで量産性に優れている。さらに、印刷技術の発展により高い寸法精度および平滑度を有する微細パターンの印刷を行うことができる。印刷法により隔壁を製造する場合には、印刷機上での隔壁用組成物の流動性の制御が重要である。
溶剤現像型あるいはアルカリ現像型感光性レジストを用いるフォトリソグラフィー法は、基板上に、スピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により隔壁用レジストを塗布し、次いでフォトマスクを介して紫外線露光を行い、未露光部を溶剤またはアルカリ現像液で洗い流して所望のパターンを形成して隔壁を形成する方法である。この方法によれば、上記印刷法より精度の高い隔壁を形成できる
【0074】
次に、発光層を形成する材料である一般式[1]においてAはB、Cを側鎖に有する非共役主鎖骨格を形成することのできる任意の3価の有機残基を表す。例をE−1〜E−12に示すがこれらに限定されるものではない。
【0075】
【化5】

【0076】
本発明で用いられる発光層形成材料は、低分子発光材料、もしくは一般式[2]で表されるユニットと、その他のユニットとの共重合体であることが好ましい。その他のユニットとしては、アミノ基を有するユニット、電子輸送性の骨格を有するユニットなどが挙げられる。
【0077】
共重合体を形成する際の非共役主鎖骨格モノマーの重合様式はラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などのビニル重合、縮重合、開環重合、種々の重合反応による共重合体形成を行うことができ、重合方法は特に限定しないが、本発明では特にビニル重合モノマーの重合による共重合体形成反応が好ましい。
【0078】
また、一般式[2]のB、Cからなる一価の有機残基は、あるいは、アミノ基を有するユニットのアミノ基が側鎖にある場合のアミノ基を含む有機残基は、非共役主鎖骨格モノマーの段階で導入されていなくとも、非共役主鎖骨格が形成されたあと、導入・変性されてもよい。
【0079】
一般式[2]で表されるユニット、およびアミノ基を有するユニットの共重合体において、アミノ基を有するユニットの、アミノ基は、共重合体の主鎖または側鎖に存在する。
好ましくは、下記一般式[4]で表される構造を有するユニットである。
【0080】
一般式[4]
【化6】

【0081】
[式中E、およびFは、それぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、置換もしくは未置換のエテニレン基からなる群より1つ以上選ばれてなる2価の有機残基を表す(ただし、エテニレン基が選ばれる場合は、2つの、アリーレン基もしくはヘテロアリーレン基の間になる場合である。)。]
【0082】
また、好ましくは下記一般式[5]で表される構造を有するユニットである。
一般式[5]
【化7】

【0083】
[式中D、E、Fは、それぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、置換もしくは未置換のエテニレン基からなる群より1つ以上選ばれてなる2価の有機残基を表す(ただし、エテニレン基が選ばれる場合は、2つの、アリーレン基もしくはヘテロアリーレン基の間になる場合である。)。]
【0084】
アミノ基を有するユニットはさらに好ましくは下記一般式[6]で表される。
一般式[6]
【化8】

【0085】
[式中Dは、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、置換もしくは未置換のエテニレン基からなる群より1つ以上選ばれてなる2価の有機残基を(ただし、エテニレン基が選ばれる場合は、2つの、アリーレン基もしくはヘテロアリーレン基の間になる場合である。)を表し、HおよびIは置換もしくは未置換のアリール基または置換もしくは未置換のヘテロアリール基群より1つまたは2つ選ばれてなる1価の有機残基を表し、Gは非共役の3価の有機残基を表す。]
一般式[6]のGは、前述の例一般式[1]のAの同様のものが例示できる。
【0086】
アミノ基を有するユニットは、さらに好ましくは以下、H−1からH−12に示す構造が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0087】
【化9】

【0088】
一般式[1]〜[6]におけるアリーレン基として好ましくは炭素数6〜60の単環または縮合環のアリーレン基であり、より好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基である。具体例としてはフェニレン、ビフェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル、フェナントロリンジイル、ピレンジイル、トリフェニレンジイル、ベンゾフェナントロリンジイル、ペリレンジイル、ペンタフェニレンジイル、ペンタセンジイルなどが挙げられ、これらの基に置換基を有しても良い。
【0089】
一般式[1]〜[2]におけるヘテロアリーレン基としては好ましくは炭素数4ないし60の単環または縮合環の芳香族ヘテロ環基であり、より好ましくは窒素原子、酸素原子または硫黄原子の少なくとも一つを含有する炭素数4ないし60の単環または縮合環の芳香族ヘテロ環基であり、更に好ましくは炭素数4ないし30の5員または6員の芳香族ヘテロ環基である。芳香族ヘテロ環基の具体例としてはピロールジイル、フランジイル、チエニレン、ピリジンジイル、ピリダジンジイル、ピリミジンジイル、ピラジンジイル、キノリンジイル、イソキノリンジイル、シンノリンジイル、キナゾリンジイル、キノキサリンジイル、フタラジンジイル、プテリジンジイル、アクリジンジイル、フェナジンジイル、フェナントロリンジイルなどが挙げられ、これらの基に置換基を有しても良い。
【0090】
一般式[1]〜[2]におけるエテニレン基としては、エテニレン基、1−メチルエテニレン基、1−エチルエテニレン基などが挙げられる。
【0091】
本発明における化合物の置換基とはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。)、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のチオアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、水酸基、メルカプト基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基を表し、また置換基は、隣接した置換基同士で置換もしくは未置換の環を形成しても良い。
【0092】
置換もしくは未置換のアリール基としては、フェニル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、テトラフェニレニル基、3−ニトロフェニル基、4−メチルチオフェニル基、3,5−ジシアノフェニル基、o−,m−およびp−トリル基、キシリル基、o−,m−およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、アントラキノニル基、3−メチルアントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、2−エチル−1−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、6−クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等がある。
【0093】
置換もしくは未置換のヘテロアリール基としては、チオニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、2−メチルピリジル基、3−シアノピリジル基等がある。
【0094】
モノまたはジ置換アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(アセトオキシメチル)アミノ基、ビス(アセトオキシエチル)アミノ基、ビス(アセトオキシプロピル)アミノ基、ビス(アセトオキシブチル)アミノ基、ジベンジルアミノ基等がある。
【0095】
置換もしくは未置換のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフロロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基、2,4−シクロペンタジエン−1−イリデニル基などがある。
【0096】
置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフロロメトキシ基等がある。
【0097】
置換もしくは未置換のチオアルコキシ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等がある。
【0098】
置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、p−tert−ブチルフェニキシ基、3−フルオロフェニキシ基等がある。
置換もしくは未置換のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基等がある。
【0099】
好ましい置換基しては、水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、もしくはアルコキシ基である。また、隣接した置換基同士で5ないし7員環の酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が含まれてもよい脂肪族、炭素環式芳香族、複素環式芳香族、複素環を形成してもよく、これらの環の任意の位置にさらに置換基を有してもよい。
【0100】
なお、本発明の一般式[1]で表されるユニットをとアミノ基を有するユニットの共重合体は、ランダム、ブロック、またはグラフト共重合体であってもよく、それらの中間的な構造を有する高分子たとえばブロック性をもつランダム共重合体であってもよい。
本発明の一般式[1]で表されるユニットをとアミノ基を有するユニットの共重合体はさらにスチレンおよびその誘導体、アクリル酸およびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、有機酸ビニルエステルなどと共重合体としてもよい。
【0101】
本発明の有機電界発光素子用材料は耐熱性、薄膜状態の安定性を考えると重量平均分子量は特に限定しないが、たとえばゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定法によるポリスチレン換算で1000〜1000000、特に3000〜500000であることが好ましい。
【0102】
本発明の一般式[1]のBは、直接結合、または、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、および置換もしくは未置換のエテニレン基からなる群より一つ以上選ばれてなる2価の有機残基である。前記アリーレン基もしくはヘテロアリーレン基が置換基を有する場合、置換基同士が一体となって新たな環を形成することがあってもよい。
ポリマーに用いられるユニットの構造例を表1に具体的に示すが、本発明のポリマーは以下の代表例に限定されるものではない。表1は、各ユニットモノマーの構造を示すのみで、その重合形態を示したものではない。また、表中の%は、モル%を表す。
【0103】
【表1】

【0104】

【0105】

【0106】

【0107】
本発明で用いられる有機電界発光素子用材料は、単独で使用しても、他の有機材料や無機材料と併用して使用してもよい。併用する有機材料は低分子有機材料であっても高分子有機材料であってもよい。また、他の高分子有機材料と積層塗布して使用することも可能である。更には、低分子化合物と混合したり、積層したりして使用することも可能である。この場合、低分子化合物はポリマーバインダーと混合して塗布しても、真空蒸着、スパッタリング等の方法で積層してもよい。以下、本発明の有機電界発光素子材料の具体例を示すが、それらは本発明を限定するものではない。
【0108】
発光材料には一重項励起子から発光するもの、三重項励起子から発光するもの、並びにその両者から発光するものがあり、本発明の有機電界発光素子においてはそれらのいずれの発光材料も使用可能である。本発明で使用できる発光材料またはドーパント材料としては、ポリアルキルフルオレン誘導体、およびポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、その他発光性高分子を使用できる。また、この他に、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレンおよび色素レーザー用や増感用の蛍光色素等があるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
本発明で使用できる発光材料またはドーパント材料として特に三重項励起子からの発光が可能な発光材料が好ましい。三重項励起子からの発光が可能な発光材料としては、三重項発光性の金属錯体があり、イリジウム錯体Ir(ppy)3(Tris-Ortho-Metalated Complexof Iridium (III) with 2-Phenylpyridine)等が知られている。Ir(ppy)3を用いた緑色発光素子は8%の外部量子収率を達成しており、従来有機電界発光素子の限界といわれていた外部量子収率5%を凌駕した(Applied Physics Letters 75, 4(1999))。その他Ir錯体化合物、金属配位ポリフィリン化合物が本発明の有機電界発光素子用材料と共に使用可能であるがこれらに限定されるものではない。
【0110】
発光層には、必要があればさらに正孔注入材料や電子注入材料を使用することもできる。有機電界発光素子は、多層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。必要があれば、発光材料、ドーパント材料、正孔注入材料や電子注入材料を組み合わせて使用することが出来る。また、ドーパント材料により、発光輝度や発光効率の向上、赤色や青色の発光を得ることもできる。また、正孔注入帯域、発光層、電子注入帯域は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良い。その際には、正孔注入帯域の場合、電極から正孔を注入する層を正孔注入層、正孔注入層から正孔を受け取り発光層まで正孔を輸送する層を正孔輸送層と呼ぶ。同様に、電子注入帯域の場合、電極から電子を注入する層を電子注入層、電子注入層から電子を受け取り発光層まで電子を輸送する層を電子輸送層と呼ぶ。これらの各層は、材料のエネルギー準位、耐熱性、有機層もしくは金属電極との密着性等の各要因により選択されて使用される。
【0111】
正孔注入材料としては、正孔を輸送する能力を持ち、陽極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入帯域または電子注入材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が挙げられる。具体的には、PEDOT、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料等があるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
電子注入材料としては、電子を輸送する能力を持ち、陰極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子の正孔注入帯域への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が挙げられる。例えば、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体があるが、これらに限定されるものではない。また、正孔注入材料に電子受容物質を、電子注入材料に電子供与性物質を添加することにより増感させることもできる。
【0113】
本発明で使用される有機化合物薄膜の成膜方法としては、各正孔注入層、各発光層、および電子輸送層を、インクジェット方式により形成することを特徴としている。このインクジェット法の溶媒としては、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、などの有機ハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、1.4-ジオキサンなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、またはこれらの混合溶媒であっても良い。高分子の構造、分子量によっても異なるが、通常溶媒の0.01から10重量%、好ましくは0.1から5重量%溶解した溶液を用いて成膜する。
しかし、正孔ブロッキング層は、インクジェット法に限らない。一般的な、粉末状態からの真空蒸着法や、スピンコート法、スリットコート、ロールコート等の塗布方法が上げられる。
【0114】
有機電界発光素子の陽極に使用される導電性物質としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが好適であり、炭素、アルミニウム、セシウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板と称される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。
陰極に使用される導電性物質としては、4.0eVより小さな仕事関数を持つものが好適であり、マグネシウム、バリウム、カルシウム、セシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン等およびそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。また、陰極は、各画素を駆動する薄膜トランジスタが形成されたものあることが好ましい。陽極および陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていても良い。
【0115】
本発明では、三重項励起子からの発光が可能な発光材料を含む有機電界発光素子において、一般式[4]で示されるような高分子化合物は、塗布後の膜安定性に優れ、電子を発光層に効率的に送ることができるので、電子輸送層形成材料して用いることができる。
一般式[4]において、式中、Arは、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、または、これらの組み合わせである2価の有機残基を表す。
1、D2は、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換のアルケニレン基、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、ヘテロ原子またはこれらの組み合わせより選ばれてなる2価の有機残基を表す。
1およびm2は、0または1であり、nは、0から10である。
11、Q21、Q12およびQ22は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基、置換もしくは未置換のアルキル、置換もしくは未置換のヘテロアルキルからなる群より選ばれてなる1価の有機残基を表す。そしてQ31およびQ32は、それぞれ独立して、置換もしくは未置換のアルキル、置換もしくは未置換のヘテロアルキルからなる群より選ばれてなる1価の有機残基を表し、ただし、m1およびm2が1である場合、Q11、Q21、Q12およびQ22は、水素原子以外であり、E1 -およびE2 -は、負に荷電した対イオン(例えば、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオンのようなハロゲンのアニオン種や、過塩素酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、テトラペンタフルオロホウ酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオンまたはシアンアニオン)である。
【0116】
本発明で言う有機残基、あるいは置換基としては、特に断らない限り、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のチオアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、水酸基、メルカプト基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0117】
置換もしくは未置換のアリール基としては、好ましくは炭素数6〜60の単環または縮合環のアリール基であり、フェニル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、テトラフェニレニル基、3−ニトロフェニル基、4−メチルチオフェニル基、3,5−ジシアノフェニル基、o−,m−およびp−トリル基、キシリル基、o−,m−およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、アントラキノニル基、3−メチルアントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、2−エチル−1−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、6−クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等がある。
【0118】
置換もしくは未置換のヘテロアリール基としては、好ましくは炭素数4ないし60の単環または縮合環の芳香族ヘテロアリール基であり、より好ましくは窒素原子、酸素原子または硫黄原子の少なくとも一つを含有する炭素数4ないし60の単環または縮合環の芳香族ヘテロアリール基であり、更に好ましくは炭素数4ないし30の5員または6員の芳香族ヘテロアリール基である。チオニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、2−メチルピリジル基、3−シアノピリジル基等がある。
【0119】
置換もしくは未置換のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフロロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基、2,4−シクロペンタジエン−1−イリデニル基などがある。
【0120】
置換もしくは未置換のアルケニル基としては、エチニル基、1−プロペニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテンー4−イニル基、3−メチル−2−ブテニル基、1−ペンチニル基、トリクロロエチニル基、トリフルオロエチニル基、3−α,α−ジトリフルオロメチル−2−ブテニル基等の炭素数1〜20のアルケニル基およびその置換体がある。
【0121】
また、発明において、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基は、上記アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基の対応する2価の残基が挙げられる。
【0122】
置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフロロメトキシ基等がある。
【0123】
置換もしくは未置換のチオアルコキシ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等がある。
【0124】
置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、p−tert−ブチルフェニキシ基、3−フルオロフェニキシ基等がある。
置換もしくは未置換のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基等がある。
【0125】
モノまたはジ置換アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(アセトオキシメチル)アミノ基、ビス(アセトオキシエチル)アミノ基、ビス(アセトオキシプロピル)アミノ基、ビス(アセトオキシブチル)アミノ基、ジベンジルアミノ基等がある。
【0126】
好ましい置換基しては、水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、もしくはアルコキシ基である。また、隣接した置換基同士で5ないし7員環の酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が含まれてもよい脂肪族、炭素環式芳香族、複素環式芳香族、複素環を形成してもよく、これらの環の任意の位置にさらに置換基を有してもよい。
【0127】
一般式[1]のAr部分の具体例をA−1〜A−12 に示すがこれらに限定されるものではない。
【0128】
【化10】

【0129】

【0130】
本発明の一般式[1]のD1、D2としては、好ましくは、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換のアルケニレン基、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、置換もしくは未置換の縮合アリーレン基、置換もしくは未置換の縮合ヘテロアリーン基、ヘテロ原子またはこれらの組み合わせより選ばれてなる2価の有機残基である。具体例を下記に示すが、これに限定されるものではない。
【0131】
【化11】

【0132】
本発明の一般式[1]のQ11、Q21、Q12およびQ22としては、好ましくは、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基、置換もしくは未置換のアルキル、置換もしくは未置換のヘテロアルキルからなる群より選ばれてなる1価の有機残基である。具体例を下記に示すが、これに限定されるものではない。
【0133】
【化12】

【0134】
本発明の一般式[1]のE1 -およびE2 -としては、負に荷電した対イオンが挙げられる。これらは、対イオンであればよく、必ずしも1価のイオンである必要はない。具体例を下記に示すが、これに限定されるものではない。
【0135】
【化13】

【0136】
本発明の一般式[1]で示される繰り返し単位を含む化合物は耐熱性、薄膜状態の安定性を考えると重量平均分子量は特に限定しないが、たとえばゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定法によるポリスチレン換算で1000〜1000000、特に3000〜500000であることが好ましい。
一般式[1]の繰り返し単位の構造例を表2に具体的に示すが、本発明の繰り返し単位は以下の代表例に限定されるものではない。表2は、各繰り返し単位の構造を示すのみで、その重合形態を示したものではない。また、表中の%は、モル%を表す。
【0137】
表2
【表2】

【0138】

【0139】
本発明の有機電界発光素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや、平面発光体として、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等へ応用が考えられ、その工業的価値は非常に大きい。
【実施例】
【0140】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中、部および%は、重量部および重量%を表す。また、重合体の重量平均分子量は、GPC(ポリスチレン換算)で測定した。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。説明中、部は重量部、%は重量%を表す。
製造例1
(IPDIアダクトの合成)
イソホロンジイソシアネート(IPDI)222部を窒素気流中1Lの4つ口フラスコ内で80℃に加熱後、2-ヒドロキシエチルアクリレート116部およびハイドロキノン0.13部を2時間かけて滴下し、次いで80℃で3時間反応させて、液状のイソシアネート基1個とビニル基1個を有する化合物(IPDIアダクト 分子量338)を得た。
【0141】
(重合体A1の合成)
2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート40部、ブチル(メタ)アクリレート40部、メチルエチルケトン(MEK)200部を冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6部を加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4部を加えて2時間重合を行った。次いで、IPDIアダクト104部(イソシアネート基の数と、ヒドロキシル基の数が等しくなる割合)、オクチル酸錫1部をメチルエチルケトン(MEK)20部で溶解したものを約10分で滴下し、滴下後80℃で2時間反応させた。
この溶液に不揮発分が10%となるようにシクロヘキサノンを添加して、重合体A1溶液を得た。重合体A1の重量平均分子量は約20,000であった。
【0142】
製造例2
P−1の合成方法
【0143】
【化14】

【0144】
乾燥窒素気流下、p-ブロモヨードベンゼン (15.4g、54.4mmol) 、カルバゾール (10.0g、59.8mmol) 、Cu粉末0.3g、K2CO3 (7.9g、57.0mmol) と溶媒として1,3-dimethylimidazilijinone 100ml加え、190℃にて18時間撹拌した。反応液を水700mlに注ぎ、析出物をろ過後、70℃で乾燥してクルード生成物を得た。のち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離精製し、化合物(5)を得た。収率55%。この化合物(5)の構造決定は、元素分析、質量分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等により行った。
【0145】
四つ口フラスコに冷却管をつけ、化合物(5)(2.5g, 7.8mmol)、4-ビニルフェニルボロニックアシッド (1.72g, 11.6mmol)にTHF (30ml) を加えて撹拌した。ここに2M K2CO3 aq (30ml)を加えた。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) (Pd(PPh3)) (200mg, 174μmol) およびTHF (10ml) を加え、80℃で24時間環留した。カラムクロマ
トグラフィーおよびメタノール再沈殿により精製し、化合物(6)を得た。収率は62%であった。この化合物(6)の構造決定は、元素分析、質量分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等により行った。
【0146】
四つ口フラスコに冷却管をつけ、4−ブロモ−N,N−ジトリルアミン(6.79g, 19.27mmol)、4-ビニルフェニルボロニックアシッド (3.0g, 20.27mmol)にTHF (50ml) を加えて撹拌した。ここに2M K2CO3 aq (50ml)を加えた。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) (Pd(PPh3)) (351mg, 304μmol) およびTHF (10ml) を加え、80℃で24時
間環留した。カラムクロマトグラフィーおよびメタノール再沈殿により精製し、化合物(7)を得た。収率は65%であった。この化合物(7)の構造決定は、元素分析、質量分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等により行った。
【0147】
シュレンク型フラスコに化合物(6)および化合物(7)をそれぞれ0.8g、0.2g入れて真空脱気を数回繰り返した。ここにアゾビスイソブチロニトリル(0.02g)、THF (2.7ml)を加え、70℃で9時間撹拌した。反応液は粘度を帯びてきた。メタノール再沈殿により精製を行った。収率は90%であった。得られた白色粉末を、元素分析、GPC分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等を行った結果、化合物P−1であると判明した。
【0148】
製造例3
P−10の合成方法
【0149】
【化15】

【0150】
シュレンク型フラスコに化合物(8)、化合物(6)および化合物(7)をそれぞれ0.34g、0.45g、0.1g入れて真空脱気を数回繰り返した。ここにアゾビスイソブチロニトリル(0.02g)、THF (2.7ml)を加え、70℃で9時間撹拌した。反応液は粘度を帯びてきた。メタノール再沈殿により精製を行った。収率は90%であった。得られた白色粉末を、元素分析、GPC分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等を行った結果、化合物P−10であると判明した。
【0151】
以下に本発明の有機電界発光素子用材料を用いた実施例を具体的に示すが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、化合物(1)、化合物(2)は、文献(日本化学会誌、 11、1540(1991))記載の方法に従い合成した。
【0152】
共重合体を形成する際の非共役主鎖骨格モノマーの重合様式はラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などのビニル重合、縮重合、開環重合、種々の重合反応による共重合体形成を行うことができ、重合方法は特に限定しないが、本発明では特にビニル重合モノマーの重合による共重合体形成反応が好ましい。
【0153】
以下に本発明の有機電界発光素子用材料を用いた実施例を具体的に示すが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0154】
実施例1
第1図に示すように、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板1上に、ITO透明画素電極3をフォトリソグラフィー技術により、100μmピッチ、0.1μm厚のパターンを形成した。ITOパターン間に隔壁9をフォトリソグラフィーにて形成した。
この隔壁9は、カーボンブラック(デグサ社製「Pritex75」)7.5部、分散剤0.5部、重合体C溶液27.0部、およびシクロヘキサノン32.0部を均一に混合し、直径1mmのガラスビーズを用いて、サンドミルで5時間分散し、黒色分散体を調整した。得られた黒色分散体に、重合体A1溶液2.0部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製「NKエステルATMPT」)5.4部、光開始剤(チバガイギー社製「イルガキュアー907」)0.6部、 増感剤(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」)0.4部、およびシクロヘキサノン24.6部の混合物を均一に撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過してアルカリ現像型黒色感光性レジスト(隔壁用組成物)を作製し、上記ガラス基板上に、スピンコーターを用いて乾燥膜厚は1.0μmになるように得られたアルカリ現像型黒色感光性レジストを塗布し、70℃で20分乾燥した。
次いで、超高圧水銀ランプを用いて、マスクフィルムを介してレジスト塗布面側から光量200mJの紫外線を照射したのち、この塗布基板を2%の炭酸ナトリウム水溶液に約20秒浸漬して現像を行い、この後、180℃で1時間加熱して、画素形成用基板を作成した。この方法により得られた隔壁の幅は、20μm、厚さは1.0μmであった。次に、得られた画素形成用基板の隔壁で区分された領域内(凸部に囲まれた凹部)に、インクジェット方式の記録装置を用いて、正孔注入層5であるPEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシ)-2,5-チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)を50nmの厚みになるように吐出、乾燥させた。次に、トルエンに溶解させた赤色、緑色、青色に発色する発光材料をインクジェット方式の記録装置を用いて、厚さ50nmの発色層6,7,8を形成した。赤色発光材料には、化合物(9)、緑色発光材料には化合物(10)、青色発光材料には化合物(11)を使用し、ホスト材料には、化合物(P−1)を使用した。
次に、化合物(B−1)を500nmの膜厚でインクジェット方式の記録装置を用いて、電子注入層11を形成した。ついで、陽極12を真空蒸着法により、1nmの膜厚でLiFを製膜し、最後に、200nmの膜厚でAlを製膜し、フルカラー有機電界発光素子(1)を作製した。
【0155】
化合物(9)
【化16】

【0156】
化合物(10)
【化17】

【0157】
化合物(11)
【化18】

【0158】
実施例2
第1図に示すように、ガラス基板1上にITO透明画素電極3をフォトリソグラフィー技術により、100μmピッチ、0.1μm厚のパターンを形成した。ITOパターン間に隔壁9を、実施例1の方法にて形成した。隔壁の幅は、20μm、厚さは1.0μmであった。次に、インクジェット方式の記録装置を用いて、正孔注入層5であるPEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシ)-2,5-チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)を50nmの厚みになるように吐出、乾燥させた。次に、トルエンに溶解させた赤色、緑色、青色に発色する発光材料をインクジェット方式の記録装置を用いて、厚さ50nmの発色層6,7,8を形成した。赤色発光材料には、化合物(9)、緑色発光材料には化合物(10)、青色発光材料には化合物(11)を使用し、ホスト材料には、化合物(P−8)を使用した。
次に、化合物(B−6)を、インクジェット方式の記録装置を用いて、50nmの膜厚で製膜し、電子注入層11を形成した。ついで、陽極12を真空蒸着法により、1nmの膜厚でLiFを製膜し、最後に、200nmの膜厚でAlを製膜し、フルカラー有機電界発光素子(2)を作製した。
【0159】
実施例3
第1図に示すように、ガラス基板1上にITO透明画素電極3をフォトリソグラフィー技術により、100μmピッチ、0.1μm厚のパターンを形成した。ITOパターン間に隔壁9を、実施例1の方法にて形成した。隔壁の幅は、20μm、厚さは1.0μmであった。次に、インクジェットプリント装置により、正孔注入層5であるPEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシ)-2,5-チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)を50nmの厚みになるように吐出、乾燥させた。次に、トルエンに溶解させた赤色、緑色、青色に発色する発光材料をインクジェット方式の記録装置を用いて、厚さ50nmの発色層6,7,8を形成した。赤色発光材料には、化合物(9)、緑色発光材料には化合物(10)、青色発光材料には化合物(11)を使用し、ホスト材料には、化合物(P−10)を使用した。
次に、アルミニウムキノリノール錯体を、真空蒸着法により50nmの膜厚で製膜し、電子注入層11を形成した。ついで、陽極12を真空蒸着法により、1nmの膜厚でLiFを製膜し、最後に、200nmの膜厚でAlを製膜し、フルカラー有機電界発光素子(3)を作製した。
【0160】
比較例1
第2図に示すように、ガラス基板1上にITO透明画素電極3をフォトリソグラフィー技術により、100μmピッチ、0.1μm厚のパターンを形成した。ITOパターン間に隔壁9を、実施例1の方法にて形成した。隔壁の幅は、20μm、厚さは1.0μmであった。次に、インクジェットプリント装置により、正孔注入層5であるPEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシ)-2,5-チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)を50nmの厚みになるように吐出、乾燥させた。次に、トルエンに溶解させた赤色、緑色、青色に発色する発光材料をインクジェット方式の記録装置を用いて、厚さ50nmの発色層6,7,8を形成した。赤色発光材料には、化合物(9)、緑色発光材料には化合物(10)、青色発光材料には化合物(11)を使用し、ホスト材料には、化合物(P−1)を使用した。
次に、真空蒸着法により、陽極12を20nmの膜厚でCaを製膜し、最後に、200nmの膜厚でAlを製膜し、フルカラー有機電界発光素子(4)を作製した。
【0161】
実施例1〜3、および比較例1のEL特性を表3に示す。
【0162】
表3
【表3】

【0163】
表2から明らかなように本発明の電子輸送層を用いた有機電界発光素子(素子1〜2)電子輸送層を用いない有機電界発光素子(素子3)を比較すると前者のほうが低駆動電圧、高効率発光であることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明の素子構造の第1の実施形態
【図2】比較例の素子構造の第2の実施形態
【符号の説明】
【0165】
1はガラス基板
3は陰極(ITO)
5は正孔注入層
6は赤色発光層
7は緑色発光層
8は青色発光層
9は隔壁
11は電子輸送層
12は陽極



【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤用、緑用、青用の発光領域を区画する隔壁と、赤用、緑用、青用の各透明画素電極とを備えた透明基板上に、赤用、緑用、青用の各正孔注入層が形成され、
前記各正孔注入層上に、赤用、緑用、青用の各発光層が形成され、
前記各発光層上に、電子輸送層が形成され、
前記電子輸送層上に、陽極が形成されていることを特徴とするフルカラー有機電界発光素子。
【請求項2】
隔壁が、フルオロアルキル基を有するビニル重合体を含んでなることを特徴とする請求項1記載のフルカラー有機電界発光素子。
【請求項3】
正孔注入層を形成する正孔注入層形成材料が、PEDOT・PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン・ポリスチレンスルホン酸)である請求項1または2記載のフルカラー有機電界発光素子。
【請求項4】
赤用、緑用、青用の各発光層を形成する各発光層形成材料の少なくとも1つが、
下記一般式[1]で表されるユニットと、アミノ基を有するユニットとの共重合体、および、
発光材料を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のフルカラー有機電界発光素子。
一般式[1]
【化1】

[式中Aは非共役の3価の有機残基を表し、Bは直接結合、または、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、および置換もしくは未置換のエテニレン基からなる群より一つ以上選ばれてなる2価の有機残基を表し、
Cは下記一般式[2]または一般式[3]で表される一価の有機残基を表す。]
一般式[2]
【化2】

[式中R1〜R7は、ぞれぞれ独立に、結合部位、水素原子もしくは置換基を表し、
Xは直接結合、−O−、−S−、−Se−、−NH−、−NR8−(R8はアルキル基またはアリール基を表す。)、−S (=O)2−、−(CO)−、−COO−、−OCO−、−CH2−を示し、
R1〜R8は互いに結合してアリール環を形成しても良く、さらにそのアリール環に置換基を有しても良い。]
一般式[3]
【化3】

[式中R9〜R17は、ぞれぞれ独立に、結合部位、水素原子もしくは置換基を表す。]
【請求項5】
電子輸送層を形成する電子輸送材料が、下記一般式[4]で示される繰り返し単位を含む化合物であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のフルカラー有機電界発光素子。
一般式[4]
【化4】

[式中、Arは、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、または、これらの組み合わせである2価の有機残基を表す。
1、D2は、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換のアルケニレン基、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、ヘテロ原子またはこれらの組み合わせより選ばれてなる2価の有機残基を表す。
1およびm2は、0または1であり、nは、0から10である。
11、Q21、Q12およびQ22は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のヘテロアルキル基からなる群より選ばれてなる1価の有機残基を表す。そしてQ31およびQ32は、それぞれ独立して、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のヘテロアルキル基からなる群より選ばれてなる1価の有機残基を表し、ただし、m1およびm2が1である場合、Q11、Q21、Q12およびQ22は、水素原子以外であり、E1 -およびE2 -は、負に荷電した対イオンを表す。]
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載のフルカラー有機電界発光素子の、各正孔注入層、各発光層、および電子輸送層を、インクジェット方式により形成することを特徴とするフルカラー有機電界発光素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5いずれか記載のフルカラー有機電界発光素子の、各正孔注入層、および各発光層を、インクジェット方式により形成し、かつ、電子輸送層を、真空蒸着方式により形成することを特徴とするフルカラー有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−344869(P2006−344869A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170593(P2005−170593)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】