説明

フルフェイス型マスク着用具

【課題】フルフェイス型マスク用の着用具に対して頭部へのフィット性が向上するように改良を施す。
【解決手段】フルフェイス型マスク用の着用具1が一対の上方連結部23と一対の下方連結部24とを有する。各連結部23,24は、マスクに連結される先端部分とその反対側の基端部分を有し、基端部分のそれぞれがマスク着用者の頭部に後方から当接可能なシート状中枢部分21に集結する。中枢部分21は、弾性的に伸長・収縮可能であり、上方連結部23の基端部分27aどうしは、これら両部分27aの間隔の拡大を抑えることが可能な実質的に非伸長性の抑制手段41を介してつながれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防塵用マスクや防毒用マスク等として使用されるフルフェイス型マスクをマスク着用者の顔面に密着させることが可能な着用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フルフェイス型マスクを着用するための締めひもやヘッドバンド等の着用具は周知である。例えば、特開2000−102624号公報(特許文献1)には、そのような着用具として、固定部材から枝分かれして延びる2本の非伸縮性のヘッドバンド部と2本の伸縮性のテープ部とからなる四つの連結部位を有するものが開示されている。
【特許文献1】特開2000−102624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の実施例では、ヘッドバンド部と固定部材とがポリエチレン樹脂を用いて一体成形されている。一対のヘッドバンド部は、マスク着用者の頭部に上方から圧接するものであり、固定部材は着用者の頭部に後方から圧接するものであって、一対のヘッドバンド部は固定部材からV字形を画いてマスクの周縁部にまで延びている。かような着用具は、一対のヘッドバンド部と一対のテープ部とをマスクに連結するものであるから、さらに多くのヘッドバンド部やテープ部を有する着用具に比べてマスクの着用が容易である。しかし、その反面、ヘッドバンド部と固定部材とは、ポリエチレン樹脂で形成されていて比較的剛性が高く、これらの部位が頭部にフィットし難く、ヘッドバンド部がずれ易いとか、顔面に密着させたはずのマスクが顔面に対して動き易いという問題が生じかねない。
【0004】
この発明が課題とするところは、フルフェイス型マスクを着用するときに、四つの部位でそのマスクに連結される着用具に対して、その着用具の頭部へのフィット性が向上するように改良を施すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、フルフェイス型マスクを前記マスクの着用者顔面に密着させることが可能であり、前記マスクの上方部分の両側それぞれに対して取り外し可能に連結される一対の上方連結部と、前記マスクの下方部分の両側それぞれに対して取り外し可能に連結される一対の下方連結部とを有するフルフェイス型マスク着用具である。
【0006】
かかる着用具において、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。一対の前記上方連結部と一対の前記下方連結部との各連結部が前記マスクに連結される先端部分と前記先端部分の反対側である基端部分とを有している。前記先端部分は前記マスクに対して取り外し可能であって、前記基端部分のそれぞれは前記着用者の頭部に後方から当接可能なシート状中枢部分に集結している。前記中枢部分は、前記頭部の上下方向と横方向とに弾性的に伸長・収縮可能である。一対の前記上方連結部の基端部分どうしは、前記頭部の横方向における間隔の拡大を抑えることが可能な実質的に非伸長性の抑制手段を介してつながれており、前記上方連結部が実質的に非伸長性である一方、前記下方連結部が弾性的に伸長・収縮可能である。
【0007】
この発明の実施態様の一つにおいて、前記中枢部分は、前記上下方向の頂部に前記上方連結部の基端部分どうしの間に延びる頂縁部を有し、前記抑制手段が前記頂縁部を実質的に非伸長性にすることにより形成されている。
【0008】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、前記中枢部分は、前記上下方向の頂部に前記上方連結部の基端部分どうしの間に延びる頂縁部を有し、前記抑制手段が前記中枢部分とは別体であって前記頂縁部に対して離間並行して前記上方連結部の基端部分どうしの間に延びる実質的に非伸長性の帯状材料によって形成されている。
【0009】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、前記上方連結部は、長さが固定されていて、前記下方連結部が長さ調節可能である。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る着用具では、一対の上方連結部と一対の下方連結部とが、それらの基端部分において弾性的に伸長・収縮可能なシート状の中枢部分に集結している。マスクを着用するときに、連結部のそれぞれは、それに張力が作用すると、その張力が中枢部分に及んで中枢部分が弾性的に伸長したり収縮したりするので、互いの動きに影響を及ぼすことがなく、マスク着用者の頭部によくフィットする。また、上方連結部は基端部分どうしが非伸長性の抑制手段を介してつながれているから、マスクを着用したときに、上方連結部どうしの間に頭部が深く入り込んでしまうということがない(請求項1に対応)。
【0011】
非伸長性の抑制手段は、中枢部分の頂縁部に設けることができる(請求項2に対応)。
【0012】
非伸長性の抑制手段は、中枢部分とは別体の非伸長性帯状材料で上方連結部における基端部分どうしをつなぐことによって形成することもできる(請求項3に対応)。
【0013】
上方連結部の長さが固定され、下方連結部のみが長さ調節可能であると、マスクを着用するときに、一対の下方連結部のみの長さを調整すればよいから、マスクの着用が容易である。マスクを着用するときに、下方連結部の伸長量が足りないときには、中枢部分が伸長することによって、その伸長量を補うことができる(請求項4に対応)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
添付の図面を参照してこの発明に係るフルフェイス型マスク着用具の詳細を説明すると、以下のおとりである。
【0015】
図1,2は、フルフェイス型マスク着用具1の使用状態が示された図であって、図1は、着用具1を使用してフルフェイス型マスク2を着用したときの着用具1の側面図であり、図2は図1の着用具1とマスク2との頂面図である。図1,2には、着用者の頭部3が仮想線で示されている。
【0016】
マスク2は、透明なフェイスシールド部6と、フェイスシールド部6と一体を成しており着用者の顔面に密着可能な接顔部7とを有する。フェイスシールド部6は、透明な硬質プラスチックで形成されていて、フィルタ(図示せず)を着脱可能であって吸気用逆止弁8が取り付けられている吸気孔9と、排気用逆止弁(図示せず)が取り付けられている排気孔11と、伝声器12とを有する。接顔部7は、合成ゴム等の柔軟弾性材料で形成されており、後方周縁部13のうちで頭部3の側部それぞれに位置する部分から頭部3の上部後方へ向かって延びる一対の上方延出部16と、頭部3の下部後方へ向かって延びる一対の下方延出部17とを有し、それぞれの延出部16,17には、マスク2の外側へ向かって延びる突起18,19が形成されている。
【0017】
着用具1は、頭部3の上下方向と横方向とに広がり、頭部3に後方から密着可能な当て布として作られたシート状の中枢部分21を有する。中枢部分21は、その上方にマスク2の上方延出部16に向かって延びる一対の上方連結部23を有し、下方にマスク2の下方延出部17に向かって延びる一対の下方連結部24を有する。かような中枢部分21は、一対の上方連結部23と一対の下方連結部24とが集結する部分ということができる。上方連結部23は、その先端に上方延出部16の突起18が離脱可能に嵌合している上方嵌合部材26を有し、その上方嵌合部材26と中枢部分21との間に上方バンド部27を有する。下方連結部24は、その先端に下方延出部17の突起19が離脱可能に嵌合している下方嵌合部材28を有し、その下方嵌合部材28と中枢部分21との間に下方バンド部29を有する。
【0018】
図3,4は、着用具1の平面図であるが、図3では、下方バンド部29が頭部3の横方向(図における左右方向)へ伸長された状態にあり、図4では、その下方バンド部29が収縮した状態にあって、中枢部分21の底縁部31にギャザー32が生じている。中枢部分21は、頭部3の上方において横方向へ延びる頂縁部36と、下方において横方向へ延びる底縁部37と、頂縁部36と底縁部37との間に延びる両側縁部38とを有する。頂縁部36の両端部分それぞれからは上方連結部23が延出している。また、側縁部38が底縁部37と交差する部位の近傍からは、下方連結部24が延出している。中枢部分21は、上下方向と横方向とに弾性的に伸長・収縮可能なシート材料35によって形成されるもので、好ましくはそのシート材料35が図示例の如くシート材料35aとシート材料35bとの2枚からなり、これらが重ね合わせられて互いの周縁部で縫合される。上下方向と横方向とに伸長・収縮可能な中枢部21は、頭部3の曲面形状に対してよくフィットする。但し、中枢部分21では、頂縁部36に沿って縫合された非伸長性の帯片41が一対の上方連結部23をつなぐように延びており、頂縁部36は横方向へ実質的な意味において伸長することがない。したがってまた、一対の上方連結部23では、中枢部分21に縫合されている上方バンド部27の基端部分27aどうしの間隔が、マスク2の着用中に大きくは広がらない。
【0019】
上方連結部23は、嵌合部材26が硬質プラスチックで形成されており、その嵌合部材26は、突起18に係止するためと上方バンド部27を挿通するために使用される透孔42と、上方バンド部27を掛け回すために使用される掛回部43とを有する。その上方バンド部27は、非伸長性であるか、または多少伸長することがあってもその伸長量は中枢部分21や下方バンド部29の伸長量ほどではなくて、マスク2を着用するときの妨げにならないという意味において、実質的に非伸長性であり、嵌合部26の反対側である基端部分27aが中枢部分21に対して縫合されている。
【0020】
下方連結部24は、中枢部分21の底縁部37に対して伸長状態で縫合されている弾性的に伸長・収縮可能な1本の帯状材料を含み、その帯状材料のうちで側縁部38のそれぞれから延出する部分が下方バンド部29となっている。下方連結部24の先端部分を成す嵌合部材28は上方連結部23の嵌合部材26と同じものであるが、この嵌合部材28には下方バンド部29の自由端部29aが長さ調節可能に掛け回されている。また、その自由端部29aの先端29bは折り重ねられたうえで縫合され、嵌合部材28からの抜け止めとして機能している(図1を併せて参照)。下方連結部24において、先端部分の反対側を成す基端部分は、中枢部分21の側縁部38近傍に位置する部分である。かような下方連結部24は、マスク2を着用するときに頭部3の周り方向に伸長されて中枢部分21とともに後頭部に密着し、それと同時にマスク2を着用者の顔面に密着させる。
【0021】
このように形成された着用具1では、マスク2を着用するときに、下方連結部24や中枢部分21が弾性的に伸長・収縮して頭部3にフィットする一方、上方連結部23や中枢部分21の頂縁部36、マスク2における接顔部7の後方周縁部13が伸長しないか、または実質的に伸長することがない。したがって、マスク2を着用している間に、頭部3が上方連結部23どうしの間に少しずつ進入して、マスク2の着用状態が次第に悪くなるということがない。
【0022】
図示例において、中枢部分21の頂縁部36を非伸長性ないし実質的に非伸長性にするには、帯片41を頂縁部36に縫合することに代えて、中枢部分21を形成しているシート材料35を頂縁部36において折り重ねて縫合し、頂縁部36を中枢部分21のその他の部位よりも伸長し難くしてもよい。また、下方連結部24における左右の下方バンド部29は、1本の長い帯状材料で形成することに代えて、下方バンド部29のそれぞれを別体の短い帯状材料で形成し、その短い帯状材料のそれぞれを中枢部分21の側縁部38に縫合してもよい。さらには、図示例においてほぼ四角形である中枢部分21の形状は、適宜の形状、寸法のものに代えることが可能である。中枢部分21には、弾性的に伸長・収縮可能なシート材料であれば織布やゴムシート等どのようなものを使用してもよいが、そのシート材料として通気性のメッシュ生地を使用すれば、中枢部分21で頭部3の広い面積を覆っても頭部3はむれることがない。
【0023】
図5は、実施態様の一例を示す図3と同様な図である。この着用具1では、頂縁部36を含む中枢部分21の全体が弾性的に伸長・収縮可能に形成されている。ただし、上方連結部23の上方バンド部27どうしは、それらの間隔が拡大することを抑制するための手段である非伸長性、または実質的に非伸長性の帯片51によってつながれている。かような着用具1でも、上方連結部23や下方連結部24、中枢部分21が頭部3によくフィットし、またマスク2を着用している間に頭部3が上方連結部23どうしの間に次第に深く進入していくということがない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明によれば、一対の上方連結部と一対の下方連結部とをフルフェイス型マスクに連結させてそのマスクを着用するための着用具であって、それぞれの連結部が頭部に対してよくフィットする着用具の製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】使用状態にある着用具の側面図。
【図2】使用状態にある着用具の頂面図。
【図3】着用具の部分破断平面図。
【図4】下方連結部が収縮した状態にある図3と同様な図。
【図5】実施態様の一例を示す図3と同様な図。
【符号の説明】
【0026】
1 着用具
2 マスク
21 中枢部分
23 上方連結部
24 下方連結部
26 先端部分(嵌合部分)
27a 基端部分
41 抑制手段(帯片)
51 抑制手段(帯片)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルフェイス型マスクを前記マスクの着用者顔面に密着させることが可能であり、前記マスクの上方部分の両側それぞれに対して取り外し可能に連結される一対の上方連結部と、前記マスクの下方部分の両側それぞれに対して取り外し可能に連結される一対の下方連結部とを有するフルフェイス型マスク着用具であって、
一対の前記上方連結部と一対の前記下方連結部との各連結部が前記マスクに連結される先端部分と前記先端部分の反対側である基端部分とを有していて、前記先端部分が前記マスクに対して取り外し可能であって、前記基端部分のそれぞれが前記着用者の頭部に後方から当接可能なシート状中枢部分に集結しており、
前記中枢部分は、前記頭部の上下方向と横方向とに弾性的に伸長・収縮可能であり、
一対の前記上方連結部の基端部分どうしは、前記頭部の横方向における間隔の拡大を抑えることが可能な実質的に非伸長性の抑制手段を介してつながれており、
前記上方連結部が実質的に非伸長性である一方、前記下方連結部が弾性的に伸長・収縮可能であることを特徴とする前記着用具。
【請求項2】
前記中枢部分は、前記上下方向の頂部に前記上方連結部の基端部分どうしの間に延びる頂縁部を有し、前記抑制手段が前記頂縁部を実質的に非伸長性にすることにより形成されている請求項1記載の着用具。
【請求項3】
前記中枢部分は、前記上下方向の頂部に前記上方連結部の基端部分どうしの間に延びる頂縁部を有し、前記抑制手段が前記中枢部分とは別体であって前記頂縁部に対して離間並行して前記上方連結部の基端部分どうしの間に延びる実質的に非伸長性の帯状材料によって形成されている請求項1記載の着用具。
【請求項4】
前記上方連結部は、長さが固定されていて、前記下方連結部が長さ調節可能である請求項1〜3のいずれかに記載の着用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−29524(P2007−29524A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218911(P2005−218911)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000162940)興研株式会社 (75)
【Fターム(参考)】