説明

フルーツプレパレーションとそれを使用した層状ヨーグルト

【課題】フルーツプレパレーションとヨーグルトとからなる層状ヨーグルトにおいて、層状に充填されたフルーツプレパレーションとヨーグルトとの間に離水が発生するのを抑え、フルーツプレパレーションからヨーグルトの方へフルーツの色素が移行しないようにすること。
【解決手段】フルーツプレパレーションとヨーグルトとからなる層状ヨーグルトにおいて微細繊維状セルロースを含有するフルーツプレパレーションを用いる。微細繊維状セルロースはフルーツプレパレーション中に0.02〜3質量%含有させることが好ましく、また、微細繊維状セルロースは水分散性セルロース50〜95質量%と水溶性高分子および/または親水性物質とを5〜50質量%からなる複合体であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細繊維状セルロースを含有することで離水や食品への色素移行が抑制されたフルーツプレパレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
フルーツプレパレーションは主に糖類とフルーツから構成され、ヨーグルトの味付けの為等に広く用いられている。また、フルーツの分散を均一にするためにグアーガム等の安定剤を添加することも知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
ヨーグルトをおいしく食べる為にフルーツプレパレーションを用いる場合、フルーツプレパレーションは別容器に入ったものから取り出しヨーグルトに掛ける方法が一般的であった。ヨーグルトとこれらフルーツプレパレーションを容器内に層状で充填すると、食べる時にいちいちフルーツプレパレーションをヨーグルトに注ぐ手間が省けて便利であるが、フルーツプレパレーションの水分が離水したり、色素がヨーグルトの方へ移行する現象が起こり、フルーツの色素が白色のヨーグルトににじんでしまう為、ヨーグルトの商品価値が低下する問題があった。
【特許文献1】特開2006−211940号公報
【特許文献2】特開昭60−118162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、微細繊維状セルロースを含有するフルーツプレパレーションを用いることで、層状に充填されたフルーツプレパレーションとヨーグルトとの間に発生する離水を抑え、フルーツプレパレーションからヨーグルトの方へフルーツの色素が移行しない層状ヨーグルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、微細繊維状セルロースを含有するフルーツプレパレーションを使用することで課題を解決し、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は下記の通りである。
(1)微細繊維状セルロースを含有するフルーツプレパレーション。
(2) 微細繊維状セルロースを0.02〜3質量%を含有するフルーツプレパレーション。
(3)ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンを含有する(1)、(2)記載のフルーツプレパレーション。
(4)微細繊維状セルロースが水分散性セルロース50〜95質量%と水溶性高分子および/または親水性物質5〜50質量%とからなる複合体である(1)〜(3)記載のフルーツプレパレーション。
(5)(1)〜(4)記載のフルーツプレパレーションおよびヨーグルトからなる層状ヨーグルト。
【発明の効果】
【0005】
微細繊維状セルロースを含有するフルーツプレパレーションとヨーグルトとを層状に充填した層状ヨーグルトは、フルーツプレパレーションとヨーグルトとの間の離水がなく、フルーツプレパレーションからヨーグルトの方へのフルーツ色素の移行も抑制されるので、ヨーグルトとしての商品価値が低下する問題がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明の内容を詳細に説明する。発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、微細繊維状セルロースを含有するフルーツプレパレーションを用いることで、層状ヨーグルトにおけるフルーツプレパレーションからの離水やフルーツ色素のヨーグルトへの移行が抑えられることを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の微細繊維状セルロースは、植物細胞壁を起源としたセルロース性物質を湿式で粉砕し、短繊維化し、高圧ホモジザイザーでより微細なセルロースとした後に水溶性高分子および/または親水性物質を配合して得られる水分散性セルロースで、その製造法の例としては、特開2004−41119号公報がある。
【0008】
本発明のフルーツプレパレーションは、フルーツを糖やその他固形分を含有する溶液中で加工しソース状にした果実加工食品であり、一般にヨーグルトやアイスクリームなどにおいて、生のフルーツの代わりに使用される。糖質としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、水飴、還元水飴、果糖ブドウ糖液糖、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)等の糖質を使用することができる。なお、糖質のみで甘みが足りない場合は、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア末等の高甘味度甘味料を添加してもよい。
【0009】
フルーツとしては、食用可能であるものであれば特に制限はなく、例えば、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、梨、桃、リンゴ、ミカン、ブドウ、パイナップル、メロン、キーウィ、バナナ、アロエ等の果肉、葉肉、種子、果皮などを挙げることができ、適宜カットしたり、ピューレ状やすりおろし状としたり、任意の形状で使用することができる。フルーツプレパレーションに適度な粘度を付与する目的で、グアーガム、キサンタンガム、ペクチン等の増粘多糖類を添加してもよい。
【0010】
更には、本発明のフルーツプレパレーションの副原料として、香料、酸味料、風味調整剤、酸化防止剤等を挙げることができる。また、必要に応じて、ビタミン類、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム等のカルシウム類、鉄、マグネシウム、リン、カリウム等のミネラル類等を添加してもよい。
【0011】
本発明のヨーグルトは、プレーンヨーグルト、ハードヨーグルト、ソフトヨーグルト等乳等省令上「はっ酵乳」に分類されるものであり、製法としては、生乳、牛乳、脱脂乳等の乳成分を混合し、その後均質化、殺菌、冷却したヨーグルト原液にスターターを接種し発酵を行う一般的な方法で良く、特に製造方法は限定されない。発酵スターターとして用いる乳酸菌や酵母も特に限定されない。ヨーグルトの原料には、必要に応じて、砂糖、果糖、ブドウ糖等の甘味料、香料、酸味料、着色料、果肉、果汁等を適当な割合で配合してもよい。
【0012】
次に層状ヨーグルトの製造方法について述べる。本発明のフルーツプレパレーションを先に容器に充填し、その後ヨーグルト原液を充填し発酵することで層状ヨーグルトを得ることができる。先にヨーグルト原液を容器に充填した後その上にフルーツプレパレーションを充填すると、フルーツプレパレーションとヨーグルト原液が混ざってしまい層状ヨーグルトが得られない場合がある。また、ヨーグルト原液を容器に充填し発酵させたものの上に本発明のフルーツプレパレーションを充填してもよい。更に、ヨーグルト原液を容器に充填し発酵させたのち、ヨーグルトの一部を取り出すなどの方法で、ヨーグルトに空隙部分を作り、そこに本発明のフルーツプレパレーションを充填してもよい。その際、ヨーグルトの空隙の形は、四角柱や円柱など任意に形成すればよく特に限定されない。
【0013】
本発明で使用される親水性高分子は、冷水および/もしくは温水に溶解もしくは膨潤する高分子であり、乾燥時におけるセルロース同士の角質化を防止する作用を有するものである。具体的にはアラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸およびその塩、カート゛ラン、ガッティーガム、カラギーナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、グアーガム、酵素分解グアーガム、クインスシードガム、ジェランガム、ゼラチン、タマリンド種子ガム、難消化性デキストリン、トラガントガム、ファーセルラン、プルラン、ペクチン、ポリデキストロース、ローカストビーンガム、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムなどから選ばれた1種または2種以上の物質が使用される。
【0014】
本発明で使用される水溶性物質は、冷水への溶解性が高く粘性をも殆どもたらさず、常温で固体の物質であり、デキストリン類、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、蔗糖、乳糖、異性化等、キシロース、トレハロース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等)、より選ばれた1種または2種以上の物質である。
【0015】
フルーツプレパレーションに微細繊維状セルロースを添加する際、微細繊維状セルロース単独でもいいし、ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンを組み合わせても良い。その場合の微細繊維状セルロースとガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンの比率は、微細繊維状セルロース:ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナン=10:90〜90:10質量%が好ましい。より好ましくは20:80〜70:30質量%
である。
【0016】
ガラクトマンナンとは、β−D−マンノースがβ−1、4結合した主鎖と、α−D−ガラクトースがα−1、6結合した側鎖からなる構造を有する多糖類である。ガラクトマンナンの例としては、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム等があり、マンノースとグルコースの比率は、グアーガムで約2:1、ローカストビーンガムで約4:1、タラガムで約3:1である。
グルコマンナンとは、D−グルコースとD−マンノースがβ−1、4結合した構造を有し、グルコースとマンノースの比率が約2:3の多糖類である。精製度が低いと独特の刺激臭があるので、精製度の高いものを使用することが好ましい。
【0017】
微細繊維状セルロースの添加量は0.02〜3質量%が好ましい。より好ましくは0.05〜2質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。微細繊維状セルロースの添加量が0.02質量%未満の場合は、フルーツプレパレーションとヨーグルトとの間に離水が生じたり、フルーツプレパレーションからフルーツの色素が白色のヨーグルトへ移行しにじんでしまう。
微細繊維状セルロースの添加量が3質量%を超える場合、フルーツプレパレーションの粘度が高くなり食感が重くなる。
【0018】
層状ヨーグルトにおいて、微細繊維状セルロースを含有したフルーツプレパレーションの離水抑制、およびフルーツの色素移行を防止するメカニズムは明確には分かっていないが、水中で分散された微細繊維状セルロースは、それ自身が水中で三次元網目構造を形性することから、フルーツプレパレーション中でも分散された微細繊維状セルロースは、三次元網目構造を形成していると考えられる。この微細繊維状セルロースの三次元網目構造を形成する微細繊維状セルロースが、フルーツプレパレーションの水分やフルーツの色素を取り込むことで、フルーツプレパレーションからの離水や、ヨーグルトへのフルーツの色素移行を抑制すると考える。
【実施例】
【0019】
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、測定は以下の通りに行った。
<原料(セルロース性物質)の平均重合度>
ASTM Designation: D 1795−90「Standerd Test Method for Intrinsic Viscosity of Cellulose」に準じて行う。
<原料(セルロース)のα−セルロース含有量>
JIS P8101−1976(「溶解パルプ試験法」5.5 α−セルロース)に準じて行う。
【0020】
<セルロース繊維(粒子)の形状(長径、短径、長径/短径比)>
セルロース繊維(粒子)のサイズの範囲が広いので、一種類の顕微鏡で全てを観察することは不可能である。そこで、繊維(粒子)の大きさに応じて光学顕微鏡、走査型顕微鏡(中分解能SEM、高分解能SEM)を適宜選択し、観察・測定する。
光学顕微鏡を使用する場合は、適当な濃度に調整したサンプル水分散液をスライドガラスにのせ、さらにカバーグラスをのせて観察に供する。
また、中分解能SEM(JSM−5510LV、日本電子株式会社製)を使用する場合は、サンプル水分分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約3nm蒸着して観察に供する。
高分解能SEM(S−5000、株式会社日立サイエンスシステムズ製)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約1.5nm蒸着して観察に供する。
セルロース繊維(粒子)の長径、短径、長径/短径比は撮影した写真から15本(個)以上を選択し、測定した。繊維はほぼまっすぐから、髪の毛のようにカーブしているものがあったが、糸くずのように丸まっていることはなかった。短径(太さ)は、繊維1本の中でもバラツキはあったが、平均的な値を採用した。高分解能SEMは短径が数nm〜200nm程度の繊維の観察時に使用したが、一本の繊維が長すぎて、一つの視野に収まらなかった。そのため、視野を移動しつつ写真撮影を繰り返し、その後、写真を合成して解析した。
【0021】
<損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)>
(1)0.5%の水分散液となるようにサンプルと水を量り取り、エースホモジナイザー(日本精機株式会社製、AM−T型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)25℃の雰囲気中に3時間静置する。
(3)動的粘弾性測定装置にサンプル液を入れてから5分間静置後、下記の条件で測定し、周波数10rad/sにおける損失正接(tanδ)を求める。
【0022】
装置 :ARES(100FRTN1型)
(Rheometric Scientific,Inc.製)
ジオメトリー:Double Wall Couette
温度 :25℃
歪み :10%
周波数 :1→100rad/s(約170秒かけて上昇させる)
【0023】
<0.25%粘度>
(1)固形分濃度が0.25%の水分散液となるようにサンプルと水を量り取り、エクセルオートホモジナイザー(日本精機株式会社製、ED−7型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)25℃の雰囲気中に3時間静置する。
(3)よく攪拌した後、回転粘度計(株式会社トキメック製、B形粘時計、BL形)をセットし、攪拌終了30秒後にローターの回転を開始し、それから30秒後の指示置より粘度を算出する。なお、ローター回転数は60rpmとし、ローターは粘度によって適宜変更する。
【0024】
<「水中で安定に懸濁する成分」の含有量>
(1)セルロース濃度が0.1%の水分散液となるようにサンプルと水を量り取り、エクセルオートホモジナイザー(日本精機株式会社製、ED−7型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)サンプル液20gを遠沈管に入れ、遠心分離機にて1000Gで5分間遠心分離する。
(3)上層の液体部分を取り除き、沈降成分の重量(a)を測定する。
(4)次いで、沈降成分を絶乾し、固形分の重量(b)を測定する。
(5)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [%]
サンプルが水溶性高分子(および親水性物質)を含まない場合は、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。
k1=0.02−b
k2={k1×(a−b)}/(19.98−a+b)
また、サンプルが水溶性高分子(および親水性物質)を含む場合は、k1およびk2は下記の式を用いて使用する。
k1=0.02−b+s2
k2=k1×w2/w1
セルロース/水溶性高分子(親水性物質)=f/d [配合比率]
w1=19.98−a+b−0.02×d/f
w2=a−b
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+W2)}
【0025】
「水中で安定に懸濁する成分」の含有量が非常に多い場合は、沈降成分の重量が小さな値となるので、上記の方法では測定精度が低くなってしまう。その場合は(3)以降の手順を以下のようにして行う。
(3’)上層の液体部分を取得し、重量(a’)を測定する。
(4’)次いで、上層部分を絶乾し、固形分の重量(b’)を測定する。
(5’)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [%]
サンプルが水溶性高分子(および親水性物質)を含まない場合は、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。
k1=b’
k2=k1×(19.98−a’+b’)/(a’−b’)
また、サンプルが親水性高分子(および親水性物質)を含む場合、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。
k1=b’−s2×w1/w2
k2=k1×w2/w1
セルロース/親水性物質(水溶性物質)=f/d [配合比率]
w1=a’―b’
w2=19.98−a’+b’―0.02×d/f
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
もし、(3’)の操作で上層の液体部分と沈降成分の境界が明瞭ではなく分離が難しい場合は全体の上部1/3量(約7g)を取得し、以降は(4’)、(5’)に従って操作する。以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明する。
【0026】
[実施例1]
市販バガスパルプ(平均重合度=1320、α−セルロース含有量=77%)を、6×16mm角の矩形に裁断した。次いでセルロース濃度が3質量%、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムの濃度が0.176質量%となるように、それぞれの水を量り取り、家庭用ミキサーで5分間攪拌した。
この水分散液を砥石回転型粉砕機(「セレンディピター」MKCA−6−3型、グラインダー:MKE6−46、グラインダー回転数1800rpm)で3回処理した。得られた水分散液の沈降体積は100%であった。
次いで得られた水分散液を水で希釈して2質量%にし、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザー」M−140K型、処理圧力110MPa)で4パスし、微細な繊維状のセルロースの水分散液Aを得た。結晶化度は73%以上であった。0.25%粘度は120mPa・sであった。光学顕微鏡および中分解能SEMで観察したところ、長径が10〜500μm、短径が1〜25μm、長径/短径比が5〜190の微細繊維状のセルロースが観察された。損失正接は0.32であった。「水中で安定に懸濁する成分」は99質量%であった。
【0027】
固形分でセルロース:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン=70:18:12(質量部)となるように、水分散液Aにカルボキシメチルセルロース・ナトリウムとデキストリンを添加し、攪拌型ホモジナイザーで、15分間攪拌・混合した。これをドラムドライヤーにて乾燥し、スクレーパーで掻き取り、得られたものをカッターミル(不二パウダル株式会社製「フラッシュミル」)で、目開き2mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕し、微細繊維状セルロースを得た。微細繊維状セルロースの結晶化度は66%、0.25%粘度は143mPa・s、損失正接は0.38、「水中で安定に懸濁する成分」は98質量%であった。「水中で安定に懸濁する成分」を高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜17μm、短径が10〜350nm、長径/短径比が20〜250のきわめて微細な繊維状セルロースが観察された。
【0028】
次にフルーツプレパレーションBを製造した。果糖ぶどう糖液糖40質量部に純水14.95質量部を入れ、次いで、微細繊維状セルロース0.05質量部とグラニュー糖5質量部とを粉体混合したものを加え、高速回転型ミキサー(特殊機化工業(株)製「T.K.ホモミクサーMARK II」)で攪拌(10000rpm、15分間、80℃)した。さらに、加温処理(30分間、80℃中に静置)したブルーベリー40質量部を加え、プロペラ300rpmで攪拌しながら、80℃を3分間維持し(加熱殺菌処理)、さらに30℃まで放冷した。
【0029】
次にヨーグルト原液を製造した。牛乳83質量部に純水2.9質量部を入れ、次いでグラニュー糖7質量部と脱脂粉乳4.1質量部とを予め粉体混合したものを加え、プロペラ攪拌(300rpm、10分間、40℃)した。次に均質化処理(ピストン型高圧ホモジナイザー、一次均質圧:15MPa、二次均質圧:5MPa)を施した。次に、プロペラ200rpmで攪拌しながら、80℃達温後30分間加熱し(加熱殺菌処理)、次にプロペラ200rpmで攪拌しながら25℃まで冷却した。次に発酵乳(明治乳業(株)明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン)を3質量部入れてプロペラ300rpmで1分間攪拌した。
【0030】
次に透明プラスチック製カップに微細繊維状セルロースを配合したフルーツプレパレーションB40gを充填し、次いでその上から、スポイドにてヨーグルト原液50gを充填した。これを40℃、13時間静置発酵し、層状ヨーグルト1を製造した。その後10℃で2週間保存し、目視にてヨーグルトとフルーツプレパレーションの層間の離水状況、フルーツプレパレーションからヨーグルトへのフルーツの色素移行を観察した。また、層状ヨーグルトのヨーグルトとフルーツプレパレーションとをスプーンで混合した後、口に含み食感を評価した。結果を表1に示す。
【0031】
[実施例2]
実施例1記載の微細繊維状セルロースを1.5質量部と純水を13.5質量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてフルーツプレパレーションを製造した。このフルーツプレパレーションと実施例1のヨーグルト原液を用いて、実施例1と同様の方法で層状ヨーグルト2を製造し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0032】
[実施例3]
実施例1記載の微細繊維状セルロースを2.5質量部と純水を12.5質量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてフルーツプレパレーションを製造した。このフルーツプレパレーションと実施例1のヨーグルト原液を用いて、実施例1と同様の方法で層状ヨーグルト3を製造し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0033】
[実施例4]
実施例1記載の微細繊維状セルロースを0.5質量部と純水を14.0質量部に代え、グアーガム0.5質量部を加えた以外は、実施例1と同様にしてフルーツプレパレーションを製造した。このフルーツプレパレーションと実施例1のヨーグルト原液を用いて、実施例1と同様の方法で層状ヨーグルト4を製造し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0034】
[実施例5]
実施例1記載の微細繊維状セルロースを1.05質量部と純水を13.5質量部に代え、グルコマンナン0.45質量部を加えた以外は、実施例1と同様にしてフルーツプレパレーションを製造した。このフルーツプレパレーションと実施例1のヨーグルト原液を用いて、実施例1と同様の方法で層状ヨーグルト5を製造し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0035】
[実施例6]
実施例1記載の微細繊維状セルロース0.84質量部と純水12.2質量部とグアーガム1.96質量部に代えた以外は実施例4と同様にしてフルーツプレパレーションを製造した。
このフルーツプレパレーションと実施例1のヨーグルト原液を用いて、実施例1と同様の方法で層状ヨーグルト6を製造し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0036】
[比較例1]
実施例1記載の微細繊維状セルロース0.01質量部と純水14.99質量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてフルーツプレパレーションを製造した。このフルーツプレパレーションと実施例1のヨーグルト原液を用いて、実施例1と同様の方法で層状ヨーグルト7を製造し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0037】
[比較例2]
実施例1記載の微細繊維状セルロースを3.5質量部と純水を11.7質量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてフルーツプレパレーションを製造した。このフルーツプレパレーションと実施例1のヨーグルト原液を用いて、実施例1と同様の方法で層状ヨーグルト8を製造し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0038】
[比較例3]
実施例1記載の微細繊維状セルロースに代えグアーガム1.5質量部と純水を13.5質量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてフルーツプレパレーションを製造した。このフルーツプレパレーションと実施例1のヨーグルト原液を用いて、実施例1と同様の方法で層状ヨーグルト9を製造し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0039】
[比較例4]
実施例1記載の微細繊維状セルロースを2.0質量部と純水11.0質量部とグアーガム2.0質量部に代えた以外は、実施例1と同様にしてフルーツプレパレーションを製造した。このフルーツプレパレーションと実施例1のヨーグルト原液を用いて、実施例1と同様の方法で層状ヨーグルト10を製造し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の微細繊維状セルロースを含有するフルーツプレパレーションは、離水やフルーツからの色素移行が抑えられるため、ヨーグルトとフルーツプレパレーションからなる層状ヨーグルトに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細繊維状セルロースを含有することを特徴とするフルーツプレパレーション。
【請求項2】
微細繊維状セルロースを0.02〜3質量%含有することを特徴とする請求項1記載のフルーツプレパレーション。
【請求項3】
ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンを含有することを特徴とする請求項1又は2記載のフルーツプレパレーション。
【請求項4】
微細繊維状セルロースが水分散性セルロース50〜95質量%と水溶性高分子および/または親水性物質5〜50質量%とからなる複合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフルーツプレパレーション。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフルーツプレパレーションおよびヨーグルトからなることを特徴とする層状ヨーグルト。

【公開番号】特開2008−104436(P2008−104436A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292787(P2006−292787)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】