説明

フレアスタック

【課題】燃焼熱を電力として回収することで燃焼熱をそのままエネルギー源として回収することが可能なフレアスタックを提供する。
【解決手段】火炎Fを覆う風防1の外壁に熱電素子4を取付け、当該熱電素子4の風防1側(加熱側)の温度と風防1と反対側の温度との温度差に応じて電力を回収する。熱電素子4の風防1側と反対側(冷却側)の面を冷却水で冷却することにより、熱電素子4の加熱側の温度と冷却側の温度との温度差を大きくすることができる。熱電素子4が取付けられている部位の風防1の内壁に蓄熱体5を取付けることにより、燃焼停止時でも熱電素子4の加熱側の温度と冷却側の温度とに温度差を付与して電力を回収することができる。風防1の内部天井側に火炎の長さを規制し且つ輻射熱源として機能するデミスター6を設ける。風防1の内壁面を黒色にすることにより輻射熱を効率よく集めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要な可燃性ガスなどの発生ガスを燃焼処理するフレアスタックに関し、特にフレアスタックの火炎の燃焼熱を回収するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
可燃性ガスのフレアスタックは一酸化炭素などの可燃性成分や有害ガス成分を燃焼により無害化し、大気中へ放散する設備である。放散を目的とする設備であるため、高所に取付けられる場合も多く、また常時放散を前提としないものが多いことなどから、燃焼によって発生した熱を回収するのが困難である。更に、可燃性ガスが酸素のような支燃性成分を少量含むものもあり、燃焼環境は大気開放状態で設計しなければならないことが熱回収をより困難なものとしている。そうした中、下記特許文献1では、火炎燃焼部の上方に円筒部を設け、この円筒部の外周を熱交換手段としての温水コイルで覆い、当該温水コイル中に送給した水を燃焼熱で昇温し、熱回収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−270962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載されるフレアスタックでは、火炎燃焼部の上方に円筒部を設け、更にその円筒部を温水コイルで覆うなど、構造が大がかりで複雑である上に、燃焼熱を温水でしか回収できない。多くの場合、温水をそのままエネルギー源として使用することは困難であるため、温水の温度や量が重要な管理項目となる。しかし、前述のようにフレアスタックは常時燃焼を前提としないものが多いことから、温水の温度を調整することが困難であり、温水の温度を制御すると温水の量が不安定になるという面倒が生じる。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、燃焼熱を電力として回収することで燃焼熱をそのままエネルギー源として回収することが可能なフレアスタックを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のフレアスタックは、発生ガスを燃焼処理するフレアスタックにおいて、火炎を覆う風防の外壁に熱電素子を取付け、当該熱電素子の風防側の温度と風防と反対側の温度との温度差に応じて電力を回収することを特徴とするものである。
また、前記熱電素子の風防側と反対側の面を冷却水で冷却することを特徴とするものである。
【0007】
また、前記熱電素子が取付けられている部位の風防の内壁に蓄熱体を取付けたことを特徴とするものである。
また、前記風防の内部天井側に火炎の長さを規制し且つ輻射熱源として機能する耐熱性網部材を設けたことを特徴とするものである。
また、前記風防の内壁面を黒色にしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
而して、本発明のフレアスタックによれば、火炎を覆う風防の外壁に熱電素子を取付け、当該熱電素子の風防側の温度と風防と反対側の温度との温度差に応じて電力を回収する構成としたため、簡潔な構成にして燃焼熱をそのままエネルギー源として回収することができる。
また、熱電素子の風防側と反対側の面を冷却水で冷却する構成としたため、熱電素子の風防側の温度と風防と反対側の温度との温度差を大きくしてより電力を回収することができる。
【0009】
また、熱電素子が取付けられている部位の風防の内壁に蓄熱体を取付けたことにより、熱電素子の風防側(加熱側)の温度を耐熱温度以下に設計することができると共に、燃焼停止時でも熱電素子の風防側(加熱側)の温度と風防と反対側(冷却側)の温度とに温度差を付与して電力を回収することができる。
また、風防の内部天井側に火炎の長さを規制し且つ輻射熱源として機能する耐熱性網部材を設けたことにより、加熱側が直接火炎と触れることがなく、風防の上側外壁に取付けられた熱電素子の温度を耐熱温度以下にすることができると共に、熱電素子の風防側の温度と風防と反対側の温度との温度差を安定して大きく設計でき、電力を回収することができる。
【0010】
また、風防の内壁面を黒色にしたことにより、風防内部の輻射熱を効率よく集めて熱電素子の風防側の温度を高めることができ、これにより熱電素子の風防側の温度と風防と反対側の温度との温度差を大きくしてより電力を回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のフレアスタックの一実施形態を示す風防部分の一部断面斜視図である。
【図2】図1のフレアスタックの風防部分に設けられた熱電素子と蓄熱体の状態を示す横断面上面図である。
【図3】図1のフレアスタックの風防部分に設けられた蓄熱体の厚さと熱電素子の加熱側温度の関係を示す説明図である。
【図4】図1のフレアスタックの風防部分に設けられた蓄熱体の厚さと熱電素子の加熱側温度の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明のフレアスタックの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のフレアスタックの風防部分の一部断面斜視図である。本実施形態のフレアスタックでは、燃焼部で燃焼処理される可燃性ガスの火炎Fを風防1で覆う。この風防1は、例えば煙突に接続される下方細りの下方円錐台部1aと、その下方円錐台部1aの上方に連続する円筒部1bと、その円筒部1bの上方に連続する上方細りの上方円錐台部1cと、その上方円錐台部1cの上面を覆う上面部1dを備えて構成される。このうち、下方円錐台部1aと円筒部1bには、周方向に等間隔に通気用穴2が形成され、上方円錐台部1cには、通気用穴2の上方に排気口3が形成されている。本実施形態では、火炎Fを風防1で覆ってしまうので、火炎Fに空気中の酸素を供給するための通気用穴2を火炎Fの下方及び側方に設け、火炎Fの燃焼排ガスを上方の排気口3から排気する。
【0013】
前記円筒部1bと上方円錐台部1cの連結部、つまり風防1の内部天井側には耐熱性網部材としてデミスター6が当該風防1の内部全体に張られて設けられている。このデミスター6は、例えば細い金属線材を編んだ網(メリヤス状)の積層体からなり、本来は分留精留を効果的にする分離促進機、或いは噴霧分離機として使用されるが、本実施形態では火炎Fの長さを規制すると共に、火炎Fで加熱され、自ら輻射熱源として機能する。後述するように、本実施形態では風防1の外壁に熱電素子を取付け、上面部1dにも熱電素子を取付けるので、その上面部1dに取付けられた熱電素子を耐熱温度以下にすると共に、デミスター6が火炎Fによって均一に加熱されることで均一な輻射熱を熱電素子に付与できるようにする。
【0014】
前述のように、風防1の円筒部1bの通気用穴2の間の部分、及び上面部1dの上面に複数の熱電素子4を取付ける。熱電素子4は、例えば2種類の異種金属又は半導体の両端を接続し、その両端に温度差を設けると起電力が発生する、所謂ゼーベック効果を利用して発電を行うものである。熱電素子4の風防1側(以下、加熱側とも記す)は風防1内部の輻射熱で加熱されるが、前述のように熱電素子4は温度差で発電するものであるから、例えば熱電素子4の風防1と反対側の温度は低いほど発電力(起電力)が大きくなる。そこで、図1の最も右側の熱電素子4に代表して示すように、全ての熱電素子4の風防1と反対側に冷却水を供給して当該熱電素子4の風防1と反対側(以下、冷却側とも記す)を冷却する。このようにすることで、熱電素子4の風防1側(加熱側)の温度と熱電素子4の風防1と反対側(冷却側)の温度との温度差が大きくなり、発電力(起電力)が大きくなる。
【0015】
更に、本実施形態では、同じく図1の最も右側の熱電素子4に代表して示すように、熱電素子4が取付けられている部位の風防1の内壁に蓄熱体5を取付ける。図2には、風防1の円筒部1bにおける熱電素子4と蓄熱体5の状態を示す。蓄熱体5は加熱・冷却の緩衝体として機能するので、熱電素子4の内側に取付けることで熱電素子4の加熱側を耐熱温度以下で運用することができる。また、前述のように、フレアスタックでは燃焼と停止が繰り返されるので、燃焼時の蓄熱で燃焼停止時に熱電素子4の風防1側(加熱側)を加熱することができ、一方、熱電素子4の風防1と反対側(冷却側)は冷却されているので、両側の温度差で発電を行うことが可能となる。また、上面部1dでは燃焼熱が衝突するので、熱電素子4を保護するために蓄熱体5の厚さを厚くする。
【0016】
蓄熱体5は、周知のように、材質によっても温度プロファイルが変わるが、一般的には蓄熱体5の厚さが厚いほど加熱側と反対側の温度差は小さくなる。この蓄熱体5の材質と厚さ、つまり凡そ円筒形の風防1の径方向の大きさは、熱電素子4の加熱側の温度を耐熱温度以下に保つことができるならば、熱電素子4の加熱側の温度と冷却側の温度との温度差をできるだけ大きくとれるように決定することが第1優先事項であり、蓄熱によって発電時間を長時間確保することは第2優先事項となる。
【0017】
例えば図3aは、蓄熱体5の厚さが厚い状態を示しているが、蓄熱体5の厚さが厚いと加熱・冷却の緩衝効果が大きくなるので、図3bに示すように熱電素子4の加熱側(風防1側)の温度はさほど低くもならなければさほど高くもならない。熱電素子4の冷却側(風防1と反対側)の温度が冷却温度に等しいと考えると、熱電素子4の加熱側の温度は平均的に冷却側の温度より高いので発電は継続されるけれども、両者の温度差はさほど大きくないので発電力(起電力)もさほど大きくない。
【0018】
一方、図4aは、蓄熱体5の厚さが薄い状態を示しているが、蓄熱体5の厚さが薄いと加熱・冷却の緩衝効果が小さくなるので、図4bに示すように熱電素子4の加熱側(風防1側)の温度は急激に高くなったり低くなったりする。熱電素子4の冷却側(風防1と反対側)の温度が冷却温度に等しいと考えると、熱電素子4の加熱側の温度が冷却温度に等しいときには発電しないが、熱電素子4の加熱側の温度が高いときには冷却側の温度との温度差が大きくなるので発電力(起電力)は大きい。
【0019】
現時点での熱電素子4は、加熱側の温度と冷却側の温度との温度差が大きいほど、加速度的に起電力が大きくなるので、より多くの電力を回収するためには、加熱側の温度と冷却側の温度との温度差が大きくなるように蓄熱体5の材質や厚さを決定する方が効率がよい。そうした意味合いから、熱電素子4の加熱側の温度と冷却側の温度との温度差をできるだけ大きくとれるように蓄熱体5の材質や厚さを決定することを第1優先事項とし、蓄熱によって発電時間を長時間確保することは第2優先事項とした。
【0020】
また、風防1の内壁面の色は黒色とするのが好ましい。輻射熱の着熱量は、温度差や距離にも依存するが、物体の放射率にも依存する。黒色は物体表面における放射率が大きいので、風防1の内壁面の色を黒色にしておくと輻射熱の着熱量が大きくなり、熱電素子4の加熱側(風防1側)の温度をより高くすることが可能となる。なお、すすは一般に黒色であり、従って風防内壁へのすすの付着は輻射熱の着熱を促進するが、すすが堆積して厚みが大きくなると熱の移動を妨げるため、定期的な洗浄が必要である。
【0021】
また、熱電素子4の加熱側(風防1側)の温度と冷却側(風防1と反対側)の温度との温度差を大きくするため、熱電素子4を冷却する冷却水の温度はなるべく低温とするのがよい。また、熱電素子の冷却面への炭酸カルシウムなどの析出を抑制するため、ミネラルの少ない軟水、より好ましくは純水を用いる。
このように本実施形態のフレアスタックでは、火炎Fを覆う風防1の外壁に熱電素子4を取付け、当該熱電素子4の風防1側の温度と風防1と反対側の温度との温度差に応じて電力を回収することにより、簡潔な構成にして燃焼熱をそのままエネルギー源として回収することができる。
【0022】
また、熱電素子4の風防側と反対側の面を冷却水で冷却することにより、熱電素子4の風防1側の温度と風防1と反対側の温度との温度差を大きくしてより電力を回収することができる。
また、熱電素子4が取付けられている部位の風防1の内壁に蓄熱体5を取付けることにより、熱電素子4の風防1側の温度を耐熱温度以下にすることができると共に、燃焼停止時でも熱電素子4の風防1側の温度と風防1と反対側の温度とに温度差を付与して電力を回収することができる。
【0023】
また、風防1の内部天井側に火炎の長さを規制し且つ輻射熱源として機能するデミスター6を設けることにより、風防1の上面部(上側外壁)1dに取付けられた熱電素子4の温度を耐熱温度以下にすることができると共に、熱電素子4の風防1側の温度と風防1と反対側の温度との温度差を大きくしてより電力を回収することができる。
また、風防1の内壁面を黒色にすることにより、風防1内部の輻射熱を効率よく集めて熱電素子4の風防1側の温度を高めることができ、これにより熱電素子4の風防1側の温度と風防1と反対側の温度との温度差を大きくしてより電力を回収できる。
【0024】
なお、本実施形態のフレアスタックは、可燃性ガスを燃焼処理する設備であればどのような設備にも適用可能である。例えば製鉄所であれば、高炉ガス、コークス炉ガス、合金精錬炉ガス、転炉ガス、ミックスガス、産業廃棄物の処理に伴う複製ガス、石油精製で発生する放散ガス、都市ガス、プロパンガスなど、種々の可燃性ガスの燃焼処理に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1は風防
2は通気用穴
3は排気口
4は熱電素子
5は蓄熱体
6はデミスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生ガスを燃焼処理するフレアスタックにおいて、火炎を覆う風防の外壁に熱電素子を取付け、当該熱電素子の風防側の温度と風防と反対側の温度との温度差に応じて電力を回収することを特徴とするフレアスタック。
【請求項2】
前記熱電素子の風防側と反対側の面を冷却水で冷却することを特徴とする請求項1に記載のフレアスタック。
【請求項3】
前記熱電素子が取付けられている部位の風防の内壁に蓄熱体を取付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフレアスタック。
【請求項4】
前記風防の内部天井側に火炎の長さを規制し且つ輻射熱源として機能する耐熱性網部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のフレアスタック。
【請求項5】
前記風防の内壁面を黒色にしたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のフレアスタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−44442(P2013−44442A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180266(P2011−180266)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】