説明

フレキシブルな薄膜太陽電池を機械的に構造化する方法および装置

【課題】 フレキシブルな薄膜太陽電池を機械的に構造化するための方法および装置を提供する。
【解決手段】本発明は、薄膜太陽電池2を機械的に構造化するための方法および装置に関する。この複数の薄膜太陽電池2は、材料ウェブの形態のフレキシブルな1つの担体層1上に予め作り上げられた層構造をもって一緒に存在している。本発明によれば、材料ウェブが支持板4上に保持され、ここで、構造化のために溝3が機械的な切り込み工具によって設けられる溝の領域(b)が、材料ウェブを、隣接する溝のない領域(a)において摩擦係合によって保持することによって、弾性の基板上に引かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池の分野に関し、さらに具体的には、フレキシブルな薄膜太陽電池を構造化するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスまたはアルミニウムのような剛性の担体層を有する薄膜太陽電池の層構造を形成すべき機械的な構造化が知られており、技術的に習得されている。構造化とは、異なる層を電気的に接続するために、あるいはそれらを互いに絶縁するために、複数の薄膜太陽電池の外側の縁部(external edge)に平行に、層構造に異なる深さの溝を形成することを指す。通常、できる限り小さい相互の間隔(separation)を生じる2つの溝が、各薄膜太陽電池に対して形成される。
【0003】
これを実現するため、通常、例えば特許文献1に記載されるような、特殊形状のニードルチップを有する圧力調整されたニードルホルダが用いられる。この場合、加工部品支持板(work piece support)または加工部品ホルダには、なんら特別な要求は課せられない。それは、担体層そのものが、構造化されるべき層に対する硬質かつ固体のベースを構成し、この担体層は構造化によって影響を受けることがないからである。
【0004】
薄膜技術によって製造される薄膜太陽電池の場合、担体層は、専ら、被着される機能層に対する支持体として作用する。この目的に対しては、ガラスなどの剛性材料の代わりに、プラスチックフィルムまたは金属フィルムなどのフレキシブルな層を用いることも有利である。
【0005】
フレキシブルな担体層を備えた薄膜太陽電池は、多様な用途の可能性を開くだけでなく、リールの形で加工処理しかつ保存できるので大きな面積の製造が可能になる。
【0006】
しかし、このような薄膜太陽電池の特に柔軟性および軽量の結果である有利な利点は、構造化に関連する難しい要件を同時に伴っている。
【0007】
特許文献2から知られる従来技術の明細書において、フレキシブルな材料上への被覆によって形成される薄膜太陽電池の場合には、機械的な切り込み(scoring)は必ずしも適していないことが示されている。担体層用の材料として代替的に使用し得るガラスとは対照的に、フレキシブルな支持材料は、切り込みニードルの圧力に降伏して平坦面を保持し難くなり、その結果、機械的な切り込みが影響を受けてより重大な問題が生じる。これらの問題を回避するために、特許文献2においては分離および構造化用としてレーザ法が提案されている。
【0008】
機械的構造化のための従来技術から知られる方法は、主として工具の最適化に関係している。加工部品の支持板に関する示唆はなんら与えられていない。
【0009】
通常、複数の薄膜太陽電池は1つの担体層上に一緒に生産され、薄膜太陽電池の製造後に、その1つの担体層が切断されて、薄膜太陽電池が相互に分離される。
【0010】
複数の長方形の薄膜太陽電池を製造するため、薄膜太陽電池を構成する層構造は、全面に被着されるか、あるいは、好ましくは、予備成形された薄膜太陽電池の形態において、担体層上に格子形状のパターンとして被着される。このパターンにおいては、予備成形された薄膜太陽電池の縁部は、互いに対してかつ材料ウェブの端部に対して、平行かつ直角に延びている。これに対応して、予備成形された薄膜太陽電池に構造化によって設けられる溝を、全体として同じ方向に形成でき、これによって、担体材料の分割による分離前のまだ結合している状態において一緒に構造化することが有利になる。
【0011】
フレキシブルな担体層を有する薄膜太陽電池は、巻き取り可能な材料ウェブとして予め作り上げられかつ加工処理することが望ましい。この場合、材料ウェブは、展開と巻き取りとの間において部分断片ごとに加工処理される。また、材料ウェブは、加工処理可能な材料ウェブ部分に等しい長さで存在することも可能である。
【0012】
以下の説明においては、材料ウェブがウェブ幅の多数倍のウェブ長さを有し、かつ、部分ごとに加工処理し得るような実際の場合を前提とする。
【0013】
工具と加工部品としての材料ウェブとの間の、溝の形成に必要な相対的な動きが、ウェブの長さの方向(ウェブの方向)あるいはこれに直角に生じて、後の薄膜太陽電池の2つの外側の縁部の間の平行な溝を形成できる。
【0014】
溝を機械的に形成する工具としての、個別の切り込みニードル、あるいは、場合によっては相互の間隔が調整可能な複数の切り込みニードルを備えたくし歯状ニードル(needle combs)は、すでに公知の技術である。従来技術は、切り込みニードルの実施形態として、異なる形状と、切り込みニードルが加工部品上に導かれる、異なる切り込み角度と、切り込みニードルを加工部品上に場合によっては力を調整して押し当てる、異なる方法とを開示している。従来技術においては、ウェブ材料の支持に関して特別な手段を講じなければならないという趣旨の示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1544172A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102004016313A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、フレキシブルな担体層を備えた薄膜太陽電池を、高い品質で機械的に構造化し得る方法を開発するという課題に基づいている。
【0017】
本発明の別の課題は、上記の方法に適した装置の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
薄膜太陽電池を機械的に構造化する方法の開発に関する課題は、請求項1に記載の方法によって解決され、薄膜太陽電池を機械的に構造化する装置の開発に関する課題は請求項3に記載の装置によって解決される。
【0019】
有利な実施形態が、それぞれ請求項1および3の従属請求項に記載される。
【0020】
本発明の方法および装置を、以下に、添付の図面を参照して例に関連付けて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1a】加工処理されるべき材料ウェブ部分に対する支持板を示す。
【図1b】図1aによる支持板を用いて加工処理するために形成されたものとしての材料ウェブ部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による方法によって、層構造を有して予め作り上げられた薄膜太陽電池2を、フレキシブルな担体層1上において構造化するものとする。担体層1は材料ウェブの形態である。この材料ウェブはその全長にわたってリール上に巻回され、かつ、この材料ウェブ上には、後に形成される縁部を含む予め作り上げられた薄膜太陽電池2が、ウェブの端部に対して平行に配置される。後に形成される縁部は、構造化後に薄膜太陽電池2の分離によって生成される。
【0023】
このような材料ウェブの例が図1bに示される。
【0024】
フレキシブルな担体層1の上に、完成されたその層構造を有する4列の薄膜太陽電池2が被着される。1つの例として、3つの列は、それぞれ同じ寸法、例えば20mm×20mmの薄膜太陽電池2を有することができ、第4列(図のページの最下段に近く示されるウェブの端部に隣接して図1(b)に示される)は、小さい寸法、例えば10mm×10mmの薄膜太陽電池2から構成される。
【0025】
構造化用の溝3は、薄膜太陽電池2の向かい合う2つの縁部に平行に延びるべきであるので、溝3は、材料ウェブの全長にわたって担体層1の1つの側方の端部にすべて平行に形成するか、あるいは、その側方の端部に対して直角に形成できる。
【0026】
この例においては、溝3は、担体層1の側方の端部(図のページの上端および下端に平行に示される)に平行に延びており、それらは点線で示される。それぞれ薄膜太陽電池2の上を延びる2つの溝3で、以下溝の対と呼称する2つの溝3の間の間隔は、僅かに約100〜150μmである。
【0027】
溝の対が形成されるべき相互の間隔は、個々の薄膜太陽電池2の所定の大きさと、担体層1上におけるその配置とから定められる。例えば、この場合の例においては、担体層1の幅、従って材料ウェブの幅が80mmであり、溝の対の間隔は、薄膜太陽電池2の間の間隔を2mmと仮定すると22mmである。
【0028】
材料ウェブを加工処理するために、材料ウェブは第1リールから巻き解かれ、支持板4上に導かれ、材料ウェブは、加工処理の間、その支持板4上に部分ごとに連続して固定され、続いて第2リール上に巻き取られる。固定される材料ウェブ部分の長さおよび幅は、支持板4の寸法によって決定される。
【0029】
溝3を形成するために、切り込み工具が、固定された材料ウェブ部分の上において、材料ウェブに対して、材料ウェブの端部に平行にあるいはそれに直角に導かれる。
【0030】
切り込み工具は、個別の切り込みニードル、あるいは、直線上に配置されかつ好ましくはその相互間隔が調整可能な数本の切り込みニードルから構成される切り込みくし歯とすることができる。
【0031】
切り込み工具と材料ウェブとの間の必要な相対的動きは、上記のように、原則的に、材料ウェブの端部に対して、従って材料ウェブの巻き取り方向に対して平行なあるいはそれに直角な直線運動とすることができ、それによって、予め作り上げられた薄膜太陽電池モジュールを構造化するために、切り込み工具によって層構造内に溝3を形成できる。
【0032】
材料ウェブの端部に対して直角の相対的動きの場合には、支持板4に固定される材料ウェブ部分は固定位置に保持され、切り込み工具が、材料ウェブ部分の全幅にわたって導かれる。
【0033】
材料ウェブの端部に対して平行な相対的動きの場合には、切り込み工具を、同様に、材料ウェブ部分の全長にわたって導くことができる。
【0034】
両方の場合において、一定の巻き取り速度にも拘らず、材料ウェブ部分を一時的に固定位置に保持するために、巻き取り動作を中断するか、あるいは追加的な手段を講じなければならない。このために、通常、第1および第2リール間の材料ウェブの径路を持ち上げかつ沈めて変化させる付加的な緩衝リールが用いられる。
【0035】
図示の例において想定されるような、材料ウェブの端部に平行な相対的動きの場合には、切り込み工具を動かすことまたは材料ウェブを動かすことが同様に可能である。このために、巻き取り動作を有利に用いることができる。本発明によれば、支持板4そのものが、以下に詳述するように、巻き取り方向に動かされる。
【0036】
本発明によれば、加工処理されるべき材料ウェブ部分が、溝のない領域「a」にて支持板4上に摩擦結合方式(friction lock)で保持され、かつ、隣接する溝の領域「b」にて、弾性の基板(elastic base)上に引っ張られることが、本方法にとって本質的な点である。この場合、溝のない領域「a」は、溝3が導入されない帯状部分であり、溝の領域「b」は、溝の対によってほぼカバーされる帯状部分である。
【0037】
溝のない領域「a」および溝の領域「b」の中に入る材料ウェブ部分の小区画は、予め作り上げられた薄膜太陽電池2の配置および寸法と、同時に溝3の位置・長さとによって、すなわち、導入されるべき溝の対の間隔に相当する溝の領域「b」の相互の間隔によって決定される。
【0038】
上記のように材料ウェブを部分ごとに支持板4上に保持するために、支持板4は、その2重の機能の結果として、切り込み領域「c」および保持領域「d」に細分化される。この場合、切り込み領域「c」は溝の対の幅よりも小さくはなく、切り込み領域「c」は溝の対の相互配置に等しくなるように互いに配置される。保持領域「d」は、大きさおよび相互配置において、材料ウェブ上の溝のない領域「a」の大きさおよび配置に合致する。このような支持板4が図1aに示される。
【0039】
切り込み領域「c」は、弾性の基板、例えば熱可塑性のエラストマーからなる帯状体によって形成される。その結果、一方では、切り込み領域「c」において、担体層1と支持板4との間に通常の金属支持板に比較して高い静摩擦係数が生じ、他方では、溝3の切り込みの間に加工処理力によって担体層1に導入されるエネルギーが、弾性の基板によって部分的に吸収される。その結果、担体層1が加工処理方向に一緒に押し込まれることが防止され、かつ、導入されるエネルギーが静摩擦に打ち勝った場合に、互いに対して当てがわれる2つの固体間に常に生じる結果、いわゆるスティック−スリップ効果が同様に回避される。切り込み工具は、予め作り上げられた薄膜太陽電池2の層構造上を大きな押圧力で導くことができる。従って、所定深さの溝3を、通常の金属製の標準的な支持板による場合よりも良好な品質で、しかも僅かに1回または数回の工具通過で形成できる。
【0040】
保持領域「d」は、支持板4上に載っている材料ウェブ部分において、担体層1を摩擦係合によって固定しなければならない。
【0041】
担体層1の材料とは無関係に、低圧を用いる吸引によっても同じ結果が実現できる。このために、保持領域「d」が吸引用の表面として構成され、この表面は、複数の吸引開口によって、あるいは、例えば発泡アルミニウムまたは発泡高級鋼のような多孔質材料によって真空チャンバに接続される。
【0042】
金属の担体層1の場合には、磁力を利用する保持方法の使用が可能である。従って、保持領域「d」が磁性の帯状材によって形成される。この場合、支持板4を回転コンベアベルトとして有利に構成できる。それによって、材料ウェブ部分は支持板4に固定されているが、材料ウェブ部分を、同時に、コンベアベルトに連結される駆動装置によって、巻き取り速度に調整される速度で巻き取り方向に動かすこともできる。理想的なのは、材料ウェブ巻き取り用の第2リールおよびコンベアベルトを1つの駆動装置によって同期駆動することである。このような解決策は、溝3を、切り込み工具のただ1回の通過で形成する場合に特に有利である。この場合は、切り込み工具を固定位置に保持できる。この切り込み工具は、2つの切り込みくし歯から有利に構成される。この切り込みくし歯は、それぞれ、同一のニードル数とニードル間隔とを含む1群のニードルを有し、かつ、1群の溝を形成する複数ニードルの分離間隔だけ互いにずらされている。
【符号の説明】
【0043】
1 担体層
2 薄膜太陽電池
3 溝
4 支持板
a 溝のない領域
b 溝の領域
c 切り込み領域
d 保持領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持板(4)上に保持される材料ウェブの形態に予め作り上げられ層構造を有するフレキシブルな担体層(1)上に一緒に存在する複数の薄膜太陽電池(2)を、機械的に構造化する方法であり、前記材料ウェブの所定の溝の領域(b)にて前記層構造に溝(3)を切り込むために、切り込み工具が前記支持板(4)に対して直線的に動かされる方法であって、前記材料ウェブが、複数の溝の領域(b)の間にある保持領域にわたって、摩擦係合によって前記支持板(4)上に保持され、かつ、前記溝の領域(b)が弾性の基板上に引かれる方法。
【請求項2】
前記材料ウェブを、第1リールから巻き解いた後第2リール上に巻き取る前に、前記支持板(4)越しに導き、そこに部分ごとに保持することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
材料ウェブの形態に予め作り上げられ層構造を有するフレキシブルな担体層(1)上に一緒に存在する複数の薄膜太陽電池(2)を、前記材料ウェブの側端部に対して平行にまたは直角に配置される所定の相互間隔の複数の溝(3)を切り込むことによって機械的に構造化する装置であって、
前記切り込みの間前記材料ウェブが少なくとも部分ごとに載る支持板(4)であり、前記複数の溝(3)の相互配置に等しくなるように配置されると共に弾性材料から構成される複数の切り込み領域(c)を有する支持板(4)で、かつ、前記複数の切り込み領域(c)の間には保持領域(d)が存在し、前記保持領域(d)にわたって前記材料ウェブ部分が摩擦係合によってその上に保持される支持板(4)と、
切り込み工具と、
前記溝(3)に沿って、前記材料ウェブに対して前記切り込み工具を相対的に動かす手段と、
を有する装置。
【請求項4】
前記保持領域(d)が、真空装置に接続される吸引面によって形成されることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記保持領域(d)が、磁性の帯状材によって形成されることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記支持板(4)が回転コンベアベルトであり、前記相対的に動かす手段が前記コンベアベルトの駆動装置であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記切り込み領域(c)の弾性材料が、熱可塑性のエラストマーであることを特徴とする請求項3に記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【公開番号】特開2009−200490(P2009−200490A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−33779(P2009−33779)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(502122347)イェーノプティク アウトマティジールングステヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【Fターム(参考)】