フレキシブルチューブ材料およびその材料を製造する方法
フレキシブルチューブ材料が、スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリオレフィンエラストマーを含む第一のエラストマー性ポリマーと、ポリオレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、またはそれらの組合せを含む第二のエラストマー性ポリマーとの放射線架橋されたブレンド物を含むが、ただし、その第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとは異なっている。実施態様においては、材料を作成する方法には、第一のエラストマー性ポリマーを備える工程、第二のエラストマー性ポリマーを備える工程、第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとをブレンドする工程、そのブレンド物を押出成形または射出成形する工程、および照射によってそのブレンド物を架橋させる工程、が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、一般的には、フレキシブルチューブ材料および前述の材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療的処置の際に各種の液体を輸送するために、フレキシブル医療用チューブが使用されている。軟質ポリ塩化ビニル(PVC)が、その固有の可撓性および半透明性が理由で、医療用チューブのめに使用される典型的な材料である。残念ながら、ポリ塩化ビニルチューブには顕著な量の低分子量化学物質が含まれていて、それらが、医療的処置の間に人体の中に浸出される可能性がある。さらに、焼却によってPVCベース廃棄物を処理すると、毒性ガスの放出のために環境問題の原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
軟質PVCに対する代替え材料が、フレキシブルな医療用チューブを作成するために採用されてきた。望ましいポリマーとしては、典型的には、フレキシブルであり、透明であり、ある種の用途に適切なものが挙げられる。残念ながら、それらのポリマーは、フレキシブルな医療用チューブ用途に望ましい物理的または機械的性質をすべて具備している訳ではない。さらに、それらのポリマーの多くは、約100℃よりも高い温度において激しい軟化が起きるために、蒸気滅菌の下では、充分な性能発揮ができない。その結果として、製造業者は多くの場合、それが蒸気滅菌可能であるかどうかについての選択肢なしで、所望の物理的および機械的性質を選択せざるを得ない。
【0004】
そのような次第で、蒸気滅菌が可能である、改良されたポリマー材料が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの特定な実施態様においては、フレキシブルチューブ材料には、以下のものを含む、放射線架橋されたブレンド物が含まれている:a)スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの組合せを含む、第一のエラストマー性ポリマー;およびb)ポリオレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、またはそれらの組合せを含む第二のエラストマー性ポリマー(ただし、その第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとは異なっている)。
【0006】
また別な例示的実施態様においては、材料を製造する方法には以下の工程が含まれる:スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの組合せを含む、第一のエラストマー性ポリマーを備える工程;ポリオレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、またはそれらの組合せを含む第二のエラストマー性ポリマーを備える工程(ただし、その第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとは異なっている);その第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとをブレンドする工程;そのブレンド物を、押出成形または射出成形する工程;およびそのブレンド物を、照射を用いて架橋させる工程。
【0007】
添付の図面を参照することにより、本明細書の開示がよりよく理解され、その多くの特徴と利点が当業者に明確となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】架橋前のスチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物の物理的性質を示す表である。
【図2】架橋後のスチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物の物理的性質を示す表である。
【図3】電子ビーム架橋処理有りおよび無しの場合の、スチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物についての動的機械分析(DMA)の結果を示すグラフである。
【図4】電子ビーム架橋処理前の、スチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物のチューブの物理的性質を示す表である。
【図5】電子ビーム架橋処理後の、スチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物のチューブの物理的性質を示す表である。
【図6】電子ビーム架橋処理有りおよび無しの場合の、スチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物についての動的機械分析(DMA)の結果を示すグラフである。
【図7】電子ビーム架橋処理有りおよび無しの場合の、エチレン、プロピレン、ジエンモノマーのターポリマー(EPDM)とエチレン−アクリル酸メチル(EMA)との例示的ブレンド物についての動的機械分析(DMA)の結果を示すグラフである。
【図8】電子ビーム架橋処理有りおよび無しの場合の、ポリオレフィンエラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物についての引裂試験の結果を示すグラフである。
【図9】電子ビーム架橋処理有りおよび無しの場合の、ポリオレフィンエラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物についての動的機械分析(DMA)の結果を示すグラフである。
【図10】電子ビーム架橋処理をした、ポリオレフィンエラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物についてのゲル含量試験の結果を示すグラフである。
【図11】架橋前の、熱可塑性エラストマーとアイオノマーエラストマーとの例示的ブレンド物の物理的性質を示す表である。
【0009】
異なった図面において同じ参照記号を用いている場合には、類似または同一の項目を表している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一つの特定な実施態様においては、フレキシブルチューブ材料には、第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとのブレンド物が含まれる。典型的には、その第一のエラストマー性ポリマーが、スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの組合せである。典型的には、その第二のエラストマー性ポリマーが、ポリオレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、またはそれらの組合せである。そのフレキシブルチューブ材料には、第一のエラストマー性ポリマーおよび第二のエラストマー性ポリマーが含まれるが、ただし、その第一のエラストマー性ポリマーとその第二のエラストマー性ポリマーとは異なっている。一つの特定な実施態様においては、その第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとは、いずれもポリオレフィンエラストマーではない。第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマーとのブレンド物が、放射線架橋可能な材料を与えるのが有利である。一つの例においては、放射線架橋には、ガンマ線照射および電子ビーム照射が含まれる。さらに、放射線架橋された材料を、滅菌することもできる。
【0011】
典型的には、そのスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレンベースのブロックコポリマー、たとえばスチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、それらのブレンド物、それらの混合物などである。ある実施態様においては、いかなるスチレン系熱可塑性エラストマーも想定される。例示的なスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、以下のものが挙げられる:トリブロックのスチレン系ブロックコポリマー(SBC)たとえば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEEBS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEEPS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン(SIBS)、またはそれらの組合せ。市販品の例としては、Kraton(商標)樹脂およびHybrar(商標)樹脂のいくつかのグレードが挙げられる。ある実施態様においては、そのスチレン系熱可塑性エラストマーには、少なくとも1個の遊離のオレフィン性二重結合、すなわち不飽和二重結合が含まれる。たとえば、ポリマーの中に遊離のオレフィン性二重結合が存在することによって、照射下で架橋するであろう分子の部位が得られる。例示的な不飽和二重結合を有するスチレン系ポリマーとしては、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン(SIBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)などが挙げられる。ある実施態様においては、そのスチレン系熱可塑性エラストマーが飽和である、すなわち、遊離のオレフィン性二重結合をまったく含まない。
【0012】
典型的には、そのスチレン系熱可塑性エラストマーが、少なくとも約15,000Mn、たとえば少なくとも約25,000Mnの分子数(molecular number)を有している。ある実施態様においては、そのスチレン系熱可塑性エラストマーが、ブレンド物の全重量の、少なくとも10重量%、たとえば少なくとも約20重量%、さらには少なくとも約30重量%の量で存在している。典型的には、ブレンド物中に存在しているスチレン系熱可塑性エラストマーのレベルは、望まれる最終的な性質を基準にして最適化すればよい。
【0013】
典型的には、そのエチレン酢酸ビニルエラストマーが、非晶質で極性のポリマーである。本明細書で使用するとき、「非晶質」という用語は、実質的に非結晶性、すなわち結晶融点を持たないポリマーを指している。エチレン酢酸ビニルポリマー中に見出される酢酸ビニルの量が、そのポリマーの結晶化度を決定する。具体的には、EVAコポリマー中の酢酸ビニルの比率が高いほど、エチレン鎖の結晶規則性が乱されたり、破壊されたりすることが多い。結晶化が次第に妨害され、約50%の酢酸ビニルを含むEVAコポリマーでは実質的に消失して、非晶質ポリマーとなる。ある実施態様においては、本発明の開示のエチレン酢酸ビニルが、エチレン酢酸ビニルの全重量の約50重量%を超える酢酸ビニル含量を有している。たとえば、そのエチレン酢酸ビニルが、エチレン酢酸ビニルの全重量約60重量%を超え約80重量%まで、たとえばエチレン酢酸ビニルの全重量の約60重量%〜約70重量%の酢酸ビニル含量を有している。さらに、非晶質ポリマーでは、そのガラス転移温度Tgが、典型的には、低い、すなわち約0℃未満である。ある実施態様においては、その非晶質エチレン酢酸ビニルにおけるガラス転移温度が、約0℃未満、たとえば約−15℃未満、さらには約−25℃未満である。ある実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルが、約70,000〜約90,000、たとえば約80,000〜約85,000の数平均分子量(Mn)を有している。そのエチレン酢酸ビニルが、約250,000〜約400,000、たとえば約280,000〜約350,000の重量平均分子量(Mw)を有していてもよい。ある実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルが、約3.0〜約5.0、たとえば約3.5〜約4.0の多分散度指数(Mw/Mn)を有している。ある実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルが、190℃/21.1Nの試験パラメーターにおいて、たとえば約1〜約7、たとえば約1.5〜約6の、望ましいメルトフローインデックス(MI)を有している。一般的には、200℃、剪断速度100sec−1におけるその溶融粘度は、約600Pa・sまで、たとえば約400Pa・s〜約500Pa・sであってよい。剪断速度1000sec−1の場合には、その溶融粘度は、約300Pa・sまで、たとえば約100Pa・s〜約200Pa・sであってよい。ある実施態様においては、その溶液粘度が、トルエン中濃度15%では約2000mPa・sまで、たとえば約200mPa・s〜1500mPa・sであるか、またはトルエン中30%濃度では約50,000mPa・sまで、たとえば約7000mPa・s〜30,000mPa・sである。市販されているEVAとしては、DuPontから入手可能なElvax(商標)がある。
【0014】
ある例示的実施態様においては、そのエラストマー性エチレン酢酸ビニルポリマーが、望ましいショアーA硬度、たとえば約30〜約40を有している。対照的に、結晶性の極性ポリマー、たとえば結晶性EVAは、典型的には、40を超えるショアーA硬度を有している。
【0015】
典型的には、非晶質エチレン酢酸ビニルは、約200bar〜約1000barの圧力および約50℃〜約120℃の温度での溶液重合によって合成される。ある実施態様においては、非晶質エチレン酢酸ビニルを、約1bar〜約200barの圧力および30〜70℃の温度での乳化重合によって合成してもよい。対照的に、結晶性エチレン酢酸ビニルは、約1000bar〜約3000barの圧力、約150℃〜約350℃の温度での塊状重合によって調製される。
【0016】
一つの例においては、そのブレンド物には、ポリマーブレンド物の全重量の約1重量%〜約99重量%の範囲で存在しているエチレン酢酸ビニルが含まれる。ある実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルが、ポリマーブレンド物の全重量の少なくとも約5重量%を超える、たとえばポリマーブレンド物の全重量の少なくとも約約15重量%を超える量で存在している。一つの特定な実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルが、ポリマーブレンド物の全重量の少なくとも約10重量%を超える、たとえばポリマーブレンド物の全重量の約10重量%〜約90重量%の範囲、さらにはポリマーブレンド物の全重量の約25重量%〜約80重量%の範囲で存在している。典型的には、ブレンド物中に存在しているエチレン酢酸ビニルのレベルは、望まれる最終的な性質を基準にして最適化すればよい。
【0017】
一つの特定な実施態様においては、そのブレンド物にポリオレフィンエラストマーを含む。各種のポリオレフィンエラストマーが想定される。典型的なポリオレフィンとしては、モノマー、たとえばエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテン、またはそれらの各種組合せから形成される、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、アロイ、またはそれらの各種組合せが挙げられる。ある実施態様においては、そのポリオレフィンエラストマーが、メタロセン重合法または非メタロセン重合法によって作成される、エチレンとプロピレンもしくはアルファ−オレフィンとのコポリマー、または ポリプロピレンとエチレンもしくはアルファ−オレフィンとのコポリマーであってよい。市販されているポリオレフィンの例としては、以下のものが挙げられる:Affinity(商標)、Engage(商標)、Flexomer(商標)、Versify(商標)、Infuse(商標)、Exact(商標)、Vistamaxx(商標)、Softel(商標)、およびTafmer(商標)、Notio(商標)(Dow、ExxonMobil、Londel−Basell、およびMitsui製)。ある実施態様においては、そのポリオレフィンエラストマーが、エチレンと極性ビニルモノマーとのコポリマー、たとえば酢酸エステル(EVA)、アクリル酸(EAA)、アクリル酸メチル(EMA)、メタクリル酸メチル(EMMA)、アクリル酸エチル(EEA)、およびアクリル酸ブチル(EBA)を含んでいてよい。これらのエチレンコポリマー樹脂のメーカーの例としては、DuPont、Dow Chemical、Mitusi、およびArkemaなどが挙げられる。また別な実施態様においては、そのポリオレフィンエラストマーを、エチレンと無水マレイン酸とアクリレートのターポリマー、たとえばArkema製のLotader(商標)およびDuPont製のEvalloy(商標)とすることもできる。さらに別な実施態様においては、そのポリオレフィンエラストマーを、エチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸とのアイオノマー、たとえばDuPont製のSurlyn(商標)とすることもできる。ある実施態様においては、そのポリオレフィンが、反応器グレード(reactor grade)の熱可塑性プラスチックポリオレフィンエラストマー、たとえばFlint Hills Resourcesから入手可能なP6E2A−005Bである。ある実施態様においては、そのポリオレフィンエラストマーが、200MPaより低い曲げ弾性率を有しているべきである。典型的には、そのポリオレフィンエラストマーが、ブレンド物の全重量の、少なくとも10重量%、たとえば少なくとも約20重量%、さらには少なくとも約30重量%の量で存在している。典型的には、ブレンド物中に存在しているポリオレフィンエラストマーのレベルは、望まれる最終的な性質を基準にして最適化すればよい。
【0018】
ある実施態様においては、そのブレンド物にはジエンエラストマーが含まれていてよい。各種適切なジエンエラストマーが想定される。たとえば、そのジエンエラストマーは、ポリブタジエンおよびポリイソプレンまたはそれらのコポリマーであってよいが、さらにはそれを、エチレン、プロピレン、ジエンモノマーのターポリマー(EPDM)とすることもできる。ある実施態様においては、そのジエンエラストマーは、想定される各種の手段によって合成してよい。たとえば、ジエンエラストマーを、メタロセン重合法または非メタロセン重合法によって合成する。ある例示的実施態様においては、そのEPDMが、ジエン、たとえばDCPD(ジシクロペンタジエン)、ENB(エチリデンノルボルネン)およびVNB(ビニルノルボルネン)の反応生成物である。EPDM樹脂の例としては、ExxonMobil ChemicalからVistalon(商標)として、およびDow ChemicalからNordel(商標)として、ならびにその他のメーカーから入手することが可能である。ある実施態様においては、そのジエンエラストマーが、ブレンド物の全重量の、少なくとも10重量%、たとえば少なくとも約20重量%、さらには少なくとも約30重量%の量で存在している。典型的には、ブレンド物中に存在しているジエンエラストマーのレベルは、望まれる最終的な性質を基準にして最適化すればよい。
【0019】
電子ビームまたはガンマ線を照射することによってそれらのブレンド物を架橋させるためには、そのブレンド物の中に反応性の部位が必要である。たとえば、そのスチレン系熱可塑性エラストマーが少なくとも1個の遊離のオレフィン性二重結合を含むような実施態様においては、そのポリマー中の遊離のオレフィン性二重結合が、照射下において架橋するであろう分子部位を与える。ある実施態様においては、ブレンド物を作成するために飽和樹脂を使用する場合には、少量の照射増感剤または架橋促進剤を添加して、充分な架橋を起こさせ、かつ照射線に暴露させている際の鎖切断が原因の材料の分解を防止してもよい。各種適切な照射増感剤を想定することができる。例示的な照射増感剤としては、典型的には、たとえば以下のような多官能モノマーが挙げられる:ジエチレングリコールジメタアリレート(DEGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、ジペンタエリトリトールアクリレート(DPEA)、テトラメチロールメタンテトラアクリレート(TMMTA)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、m−フェニレンジマレイミドなど、およびそれらの各種組合せ。使用する場合には、照射増感剤は、ブレンド物の全重量の約0.5重量%〜約3.0重量%で存在させるのがよい。
【0020】
ある実施態様においては、架橋促進剤を使用して、照射によってブレンド物を架橋させるための反応性部位を与えてもよい。各種適切な架橋促進剤を想定することができる。例示的な架橋促進剤としては、その分子鎖の中に不飽和二重結合を有するポリマー、たとえばポリイソプレン、ポリブタジエン、EPDM、SIS、SBSなど、およびそれらの各種組合せが挙げられる。一つの特定な実施態様においては、その架橋促進剤の不飽和二重結合が、電子ビームまたはガンマ線によって架橋するであろう。典型的には、架橋促進剤は、ブレンド物の全重量の約5.0重量%を超える量で存在していてよい。
【0021】
ある実施態様においては、ブレンド物の中でオイルを使用してもよい。各種適切なオイルを想定することができる.一つの特定な実施態様においては、そのオイルが、芳香族含量がゼロのパラフィン系もしくはナフテン系のいずれか、またはパラフィン系もしくはナフテン系の混合物である、鉱油である。たとえば、ブレンド物の全重量の約0重量%〜約70重量%の量で鉱油を使用してよい。ある実施態様においては、そのブレンド物には実質的にオイルを含まない。本明細書で使用するとき、「実質的にオイルを含まない(substantially oil−free)」という用語は、ブレンド物の全重量の約0.1重量%未満でしか鉱油を含まないブレンド物を指している。たとえば、そのスチレン系熱可塑性エラストマーは、伸展油または可塑剤を添加することなく、溶融加工することが可能である。ある実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルエラストマーを、伸展油または可塑剤を添加することなく、溶融加工することが可能である。
【0022】
ある例示的実施態様においては、そのブレンド物に、想定される各種の添加剤、たとえば潤滑剤、充填剤、可塑剤、抗酸化剤、またはそれらの各種組合せをさらに含む。潤滑剤の例としては、シリコーンオイル、ワックス、スリップ助剤、粘着防止剤などが挙げられる。潤滑剤の例としてはさらに、シリコーングラフト化ポリオレフィン、ポリエチレンもしくはポリプロピレンワックス、オレイン酸アミド、エルクアミド、ステアリン酸エステル、脂肪酸エステルなどが挙げられる。典型的には、潤滑剤は、ブレンド物の全重量の約2.0重量%未満の量で存在していてよい。ある実施態様においては、潤滑剤は、ブレンド物の全重量の約0.5重量%未満の量で存在していてよい。抗酸化剤の例としては、フェノール系抗酸化剤、ヒンダードアミン系抗酸化剤が挙げられる。充填剤の例としては、炭酸カルシウム、タルク、放射線不透過性充填剤たとえば硫酸バリウム、オキシ塩化ビスマス、それらの各種組合せなどが挙げられる。可塑剤の例としては、各種公知の可塑剤たとえば鉱油などが挙げられる。典型的には、添加剤は、ブレンド物の全重量の約50重量%以下、たとえばブレンド物の全重量の約40重量%以下、さらにはブレンド物の全重量の約30重量%以下の量で存在させてよい。別な方法においては、そのブレンド物に、潤滑剤、充填剤、可塑剤、および抗酸化剤をまったく含まなくてもよい。
【0023】
第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとのブレンド物の成分は、各種公知の方法によって溶融加工して、ブレンド物を形成させてもよい。ある実施態様においては、第一のエラストマー性ポリマーを第二のエラストマー性ポリマーと共に、ドライブレンド法またはコンパウンディング法によって溶融加工してもよい。そのドライブレンド法は、粉体、粒状体またはペレットの形態で実施してよい。ブレンド物は、二軸スクリューコンパウンディング法によるか、またはバッチ式のバンバリー法によって作成することができる。次いで、それらのブレンド物のペレットを単軸スクリュー押出機の中にフィードして、物品たとえばフレキシブルチューブ製品を作成すればよい。ブレンド物を混合要素を備えた単軸スクリュー押出機の中で混合してから、押出成形して直接、物品たとえばチューブ製品とすることも可能である。一つの特定な実施態様においては、当業者に公知の想定される各種の方法、たとえばラミネート法、キャスティング法、モールド法などによってブレンド物を溶融加工することも可能である。ある実施態様においては、そのブレンド物を射出成形することもできる。
【0024】
ある実施態様においては、特定の応用面でのニーズに応じて、そのブレンド物から各種の物品を作成することができる。そのようにして得られた物品を、電子ビームまたはガンマ線を使用して、バッチ法またはロール・ツゥ・ロール(roll−to−roll)法で照射する。一つの特定な実施態様においては、電子ビーム照射には、Van de Graaff起電機(電子加速器)によって発生させた電子ビームが含まれる。電子ビーム加速器からの約0.5MeV〜約10.0MeVの間のエネルギーを有する電子ビームを使用して、得られた物品のブレンド物を架橋させることができる。約10KGy〜約200KGy(約1Mrad〜約20Mrad)の間の線量が、典型的である。ある例示的実施態様においては、ガンマ線によってブレンド物を架橋させるために、60Coからの約1Mrad〜約10Mradの放射線を使用することができる。
【0025】
そのポリマーブレンド物が、滅菌法に耐えられるのが有利である。ある実施態様においては、そのポリマーブレンド物が、各種想定される方法によって滅菌される。たとえば、放射線架橋の後で、ポリマーブレンド物が滅菌される。滅菌方法の例としては、蒸気法、ガンマ線法、エチレンオキシド法、電子線法、それらの組合せなどが挙げられる。一つの特定な実施態様においては、そのポリマーブレンド物が、蒸気滅菌法によって滅菌される。ある例示的実施態様においては、そのポリマーブレンド物が、約30分間までの時間、約121℃までの温度での蒸気滅菌に対する耐熱性を有している。ある実施態様においては、そのポリマーブレンド物が、約20分間までの時間、約135℃までの温度での蒸気滅菌を実施することに対する耐熱性を有している。
【0026】
ある実施態様においては、ポリマーブレンド物を成形して単層物品、多層物品としてもよいし、あるいは基材の上に積層、塗装、または成形することもできる。多層物品には、たとえば補強層、粘着剤層、バリヤー層、耐薬品性層、金属層、それらの各種組合せなどの層が含まれる。ブレンド物を成形して、各種の有用な形状、たとえばフィルム、シート、チューブなどとすることも可能である。ポリマーブレンド物を、ポリオレフィン系化合物(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)など)およびスチレン系化合物(ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)など)を含めた、その他の基材に粘着または接着させてもよい。
【0027】
一つの特定な実施態様においては、そのポリマーブレンド物を使用して、チューブおよびホースを製造してもよい。たとえば、ポリマーブレンド物を、低毒性ポンプチューブ、強化ホース、耐薬品性ホース、ブレードホース、ならびに低透過性のホースおよびチューブを製造するためのチューブまたはホースとして使用することもできる。たとえば、選択された特定の用途のための各種有用な直径サイズを有するチューブを得ることもできる。ある実施態様においては、そのチューブが、約2.0インチまで、たとえば約0.25インチ、0.50インチ、および1.0インチの外径(OD)を有していてもよい。そのポリマーブレンド物のチューブは、所望の性質、たとえば化学的安定性および改良された製品寿命を示すのが有利である。たとえば、そのチューブが、標準ポンプヘッドを使用し600RPMで測定して、約10時間を超える、たとえば約20時間を超えるかまたはそれ以上のポンプ寿命を有していてもよい。
【0028】
本発明の実施態様では、所望の機械的性質を有する低毒性の物品を製造することができる。一つの特定な実施態様においては、その成形される放射線架橋された物品が、それが輸送する流体の中に浸出する可能性がある可塑剤またはその他の低分子量連鎖延長剤を実質的に含まない。本明細書で使用するとき、「実質的に含まない(substantially free)」という用語は、(ISO 15705およびEPA 410.4に従って測定した)全有機物含量(TOC)を約100ppm未満しか有さない、放射線架橋された物品を指している。
【0029】
実施態様においては、そのようにして得られた放射線架橋された物品が、さらに望ましい物理的および機械的性質を有していてもよい。たとえば、その放射線架橋された物品が、フレキシブルで、キンク抵抗性があり、そして透明または少なくとも半透明の外観を有する。特に、そのようにして得られた放射線架橋された物品は、望ましい可撓性、実質的に透明もしくは半透明、望ましいガラス転移温度、望ましい低温性能、ならびにオイルおよびアルコールに対する耐薬品性を有している。たとえば、第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとの放射線架橋された物品では、有利なことには、低硬度物品を製造することができる。たとえば、望ましい機械的性質を有する、約40〜約90の間のショアーA硬度を有する放射線架橋された物品を形成することもできる。そのような性質は、フレキシブルな材料であることを示している。
【0030】
望ましい硬度に加えて、その放射線架橋された物品は、有利な物理的性質、たとえば望ましい極限伸びおよび高温における低い圧縮永久歪みを有している。極限伸びは、ASTM D−412試験方法に従って、Instron装置を使用して測定する。たとえば、その放射線架橋された物品は、少なくとも約400%、たとえば少なくとも約500%、たとえば少なくとも約600%、さらには少なくとも約700%の極限伸びを示す可能性がある。ある実施態様においては、放射線架橋された物品についてASTM D−395に従い約121℃で測定した圧縮永久歪みが、約50%未満である。
【0031】
それらのポリマーブレンド物の用途は極めて多い。特に、そのポリマーブレンド物が非毒性の性質を有しているために、その材料は、毒性が望ましくない各種の用途において有用なものとなる。たとえば、そのポリマーブレンド物は、FDA、USP、およびその他の規制の承認に対する潜在的能力を有している。ある例示的実施態様においては、そのポリマーブレンド物を、たとえば工業、医療、ヘルスケア、バイオ医薬品、飲料水、食品・飲料、実験室などの用途において使用することが可能である。ある実施態様においては、そのポリマーブレンド物を安全に廃棄することもまた可能であるが、その理由は、焼却しても有毒ガスを実質的に発生させず、また埋立てをしても、環境に可塑剤を浸出させることがないからである。
【実施例】
【0032】
実施例1.スチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィンとのブレンド物
Kraton D2109について、機械的および物理的性質の試験をする。一般的に言えば、Kraton D2109は、スチレン系TPE樹脂、ポリオレフィン、および鉱油を溶融コンパウンディングした材料であって、Sonneborn(Petrolia,PA)から入手される。Kraton D2109を、約400゜Fのフラットなプロファイルで射出成形して、ショアーA硬度、引張および高温圧縮永久歪み試験用のプラックとする。さらに、それを押出成形して、0.375インチ外径(OD)×0.25インチ内径(ID)のチューブとする。チューブの寸法と温度ウィンドウに関してはまったく問題がないので、加工性は良好である。それは、(C−Flexの場合のような「粘り着く(grabby)」のとは対照的に)、触ると滑らか(silky)であり、「シリコーンの触感(silicone feel)」を有している。そのチューブは、レジリエンスおよびエラスティシティの徴候を明らかに示した。プラックおよびチューブコイルを、電子ビームを用い、約6.8MRadおよび約13.6MRadの2種の異なった線量率で照射するが、これは、約1.7MRadをそれぞれ、4パスおよび8パスさせることに相当する。次いで、その照射したプラックを、ASTM D−395において規定されたようにして、硬度、引張、および圧縮永久歪みについての試験をする。それらの結果を表1および2にまとめた。圧縮永久歪みの試験では、Advanced Elastomer Systemsから入手した3種のグレードのSantopreneを比較用チューブとして使用する。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
電子ビーム架橋させたチューブは、ヒートシールすることが可能ではあるが、ただし、標準のC−Flexを用いた通常のものよりは高い温度設定を用いる。しかしながら、ヒートセット温度は、放射線架橋されたKraton D2109チューブをヒートシールするためには、標準のC−Flexチューブの場合の160℃から約180℃にまで上げなければならない。照射したKraton D2109製品は、より高い破断強度、より低い破断時伸び、および顕著に改良された高温(120℃)圧縮永久歪みを示し、これは、Santopreneの性能を上回っている。照射したKraton D2109配合物は、約50Aの硬度、約1000psiの破断強度、約735%の極限伸び、および約120℃で約12%の圧縮永久歪みを与える。
【0036】
架橋を起こさせるために最高8パスまでで電子ビームを照射した、Kraton D2109のポンプチューブ(0.25×0.38インチ)を、600RPMで標準ヘッドを使用した蠕動ポンプ試験にかける。照射したチューブについて、EZロード(EZ load)ヘッドを使用した、600RPMでのポンプ寿命試験もした。比較のために、透明なR70−374 C−Flex サイズ17のチューブについてもEZロードで試験する。以下の表3の結果からも見られるように、XL−CFlex(Kraton D2109)は、標準ヘッドで約50時間のポンプ動作した後で、破損する。驚くべきことには、同一のチューブが、EZロードでは、約1000時間のポンプ動作した後で、破損する。それらに比較して、透明なC−Flex R70−374では、標準ヘッドおよびEZロードヘッドのいずれにおいても、約10時間のポンプ動作で破損するが、このことは、ポンプヘッドの設計が問題なのではないことを示している。さらに、R70−374のスポーリング挙動は、照射したKraton D2109(XL−CFlex)よりも視覚的に悪く、後者は、(ポンプ試験の際に肉眼で観察して)最小限のスポーリングしか示さない。
【0037】
【表3】
【0038】
実施例2.EPDMと飽和スチレン系ブロックコポリマー(SBC)とのブレンド物:
フレキシブルチューブを作成するために、ショアーA硬度範囲約40〜約90の、ジエンエラストマーとスチレン系熱可塑性エラストマーとのブレンド物を使用することができる。イオン化照射によって架橋性のブレンド物を製造するというコンセプトを実証するために使用した、ジエンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを表4に列記した。化学構造および物理的性質が異なる4種のスチレン系熱可塑性エラストマーを選択している。Kraton G1643MおよびKraton MD6945は、Kraton Polymers製の樹脂であって、ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチレン−ブチレン)−ブロック−ポリスチレン(SEBS)の化学構造をベースとしたものである。Hybrar 7125がポリスチレン−ブロック−ポリ(エチレン−co−プロピレン)−ブロック−ポリスチレン(SEPS)の化学構造を有しているのに対して、Hybrar 7311は、ポリスチレン−ブロック−ポリ[エチレン−co−(エチレン−co−プロピレン)]−ブロック−ポリスチレン(SEEPS)の化学構造を有している。Hybrar樹脂は、(株)クラレ(日本、倉敷)によって供給される。架橋性ブレンド物を作成するために、EPDMを選択している。ある実施態様においては、ブレンド物からチューブを作成するために一般的な熱可塑性プラスチック押出法を使用する目的で、メタロセン重合法によって作成したEPDM樹脂を使用することができる。完全に非晶質であり、そのために室温ではベールの形状であるEPDMゴムとは異なって、メタロセン法EPDM樹脂は、このタイプの材料において存在する幾分かの結晶化度(典型的には、10℃/分でのDSCで測定して、約5%〜約20%の範囲)を有しているために、ペレットの形状で製造することが可能である。Dow Chemicalから提供されるNordel IP4725は、この実施例において架橋性ブレンド物を作成するために選択したメタロセン法EPDM樹脂である。Nordel IP4725樹脂は、透明なペレットの形状であり、メーカーによれば約12%の結晶化度を有している。
【0039】
【表4】
【0040】
ブレンド物の小さなバッチを作成するために、ブラベンダーミキサーの中で、約200℃、約60rpmで約5分間かけて、それらのポリマー成分を各種の比率で混合する。得られた混合物を使用して、Carverホットプレスの中で、厚み約1mmのスラブを成形する。それらのスラブから、引張試験のためのダンベル状(dog−bone)試験片を切り出す。図1に、架橋前のブレンド物の機械的および光学的性質を列記する。EPDM/Kraton MD6945およびEPDM/Hybrar 7311系についてはすべての混合レベルで透明なブレンド物が得られるのに対して、EPDM/Kraton G1643およびEPDM/Hybrar 7125のブレンド物では半透明なブレンド物が得られるということが明らかである。これらのブレンド物の硬度は、ショアーAで約40〜約70の範囲であり、これは、フレキシブルな熱可塑性エラストマーチューブについての所望の範囲内である。そのようにして得られたブレンド物の伸びは通常、約1000%よりも高い。それらのブレンド物の弾性率は、一般的に、原料の樹脂の両極端の間にあり、ブレンド物の引張強度は、それらの原料樹脂の値よりは高い。
【0041】
ブレンド物を架橋させる目的で、成形したスラブを、E−BEAM Services Inc.(Lebaron,Ohio)に送って架橋処理をさせる。EPDM/Kraton MD6945およびEPDM/Hybrar 7311の系列の10種のサンプルに、約10MeVの電子ビームで約6.8Mrad(4パス×1.7Mrad/パス)の照射を行わせる。電子ビーム処理をした後では、いずれのサンプルにおいても、透明性の変化や分解のための黄変は認められない。ゲル含量試験は、架橋させたサンプルを沸騰ヘキサンの中に約12時間浸漬させてから、サンプル中に残っている固形分含量パーセントを測定することにより実施する。EPDM/Kraton MD6945およびEPDM/Hybrar 7311の電子ビーム処理したブレンド物では、それらの組成に応じて、ブレンド物の全重量の約40重量%〜約70重量%のゲル含量が測定される。未処理のEPDM/スチレン系熱可塑性エラストマーのサンプルでは、ゲル含量が0%である(完全に溶解する)ことが見出される。図2における架橋させたサンプルについての物理的性質を、図1におけるそれらに対応する非架橋サンプルの結果と比較すると、電子ビーム処理したブレンド物においては硬度および弾性率に関しては顕著な変化は見出されず、電子ビーム処理の後では引張弾性率におけるわずかな上昇が見出されるが、それに対して、架橋させたサンプルの伸びが、約10%〜約20%低下することが認められる。
【0042】
ブレンド物の耐熱性に対する電子ビーム照射の影響をチェックするために、約−80℃〜約200℃の温度範囲において動的機械分析(DMA)を実施する。この試験では、温度に伴う材料の粘弾性挙動における変化を追跡することによって、熱可塑性プラスチックのガラス転移温度、融点を求めることができる。典型的なDMA試験においては、貯蔵弾性率が、その材料の剛性および弾性の目安となり、損失弾性率が、その材料の流体性および粘性を示し、そして損失正接が、損失弾性率の貯蔵弾性率に対する比である。高温に暴露させたときに、自身の重量による変形が起きないような幾分かの耐熱性を示すポリマー材料では、その材料の貯蔵弾性率は、典型的には、少なくとも約1MPaよりも高いが、それに対して、損失正接の値は典型的には、約0.25MPaよりも低い。これらの判定基準を使用すると、熱可塑性エラストマー材料を、たとえば蒸気滅菌法で短時間の間暴露させることが可能な最大温度を推定することが可能となる。図3に、Nordel IP4725/EPDMの50/50ブレンド物についての、温度に伴う貯蔵弾性率および損失正接の変化を示す。電子ビームによる架橋をさせないと、そのブレンド物の貯蔵弾性率が、約100℃より上では急激な低下を示し、溶融および流動の挙動を示唆している。約95℃で貯蔵弾性率が約1MPよりも低くなり、約82℃で損失正接が約0.25よりも高くなり、その結果、このブレンド物の場合の短時間暴露の最大温度は、約80℃となるであろう。約6.8Mradの電子ビームで架橋させた後では、Nordel IP4725/EPDMの50/50ブレンド物の貯蔵弾性率は、約70℃から約200℃まで平坦域を示す。約160℃になるまでは、約1MPa未満に下がることはない。損失正接は、約195℃になってさえも約0.25MPaを下回らない。したがって、この架橋させたブレンド物は、約121℃および約135℃、いずれの蒸気滅菌法にも適している。
【0043】
実施例3.EPDM/スチレン系熱可塑性エラストマーブレンド物から作成したチューブ:それらのブレンド物のフレキシブルチューブを作成する目的で、Kraton G1643M/Nordel IP45の50/50混合物を、潤滑用添加剤の存在下または非存在下に、共回転二軸スクリュー押出機を通過させてコンパウンディングし、水浴で冷却し、切断してペレットとする。その後、そのようにして得られたペレットを、チューブダイを備えた単軸スクリュー押出機の中にフィードする。チューブの押出しには、通常の3ゾーンスクリューを使用する。押出機の3つのセグメントで、約280゜F、約320゜Fおよび約400゜Fの温度プロファイルになるように設定する。アダプターおよびダイ温度はそれぞれ、約405゜Fおよび約415゜Fに設定する。ダイから溶融流出してくるポリマーを、冷却のための浸漬用水タンクの中に排出させると、そこで押出し物が固化して、チューブの形状となる。内部空気圧、スクリュー速度および引抜き速度を組み合わせて、チューブの寸法および壁厚を調節する。上述のコンパウンディングおよび押出し法により、IDが0.25インチ、ODが0.375インチの寸法を有する半透明でフレキシブルなチューブが得られる。ミキシングスクリューセクションを有する押出機が使用できるのであれば、2軸スクリューコンパウンディングプロセスを省略することができる。EPDMとスチレン系熱可塑性エラストマーとでは比較的に高い相溶性があるので、これらの樹脂のドライブレンド物をその押出機に直接フィードすることによって、ブレンド物からフレキシブルチューブを押出加工することが可能である。
【0044】
電子ビーム架橋処理なしの場合のチューブ配合物と得られるチューブの性質とを図4に示す。表面摩擦が低いと、通常は、蠕動ポンプ用途におけるポンピング寿命に役立つので、3種の潤滑剤について、ブレンド物の全重量の約1重量%の添加レベルで評価する。EVAキャリア樹脂中50重量%シリコーンオイル(ビニル末端ポリジメチルシロキサン)マスターバッチは、Dow Corningから入手される。Lubotene RLF4006は、Optatch Corporationから得られるシリコーングラフト低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂である。Ampacet 102468は、Ampacet Corporationによって供給される、LDPE中Eruamideのマスターバッチである。ブレンド物の全重量の約1.0重量%の添加レベルでは、3種の潤滑剤すべてで、チューブの、MBR(最小曲げ半径)によって測定されるキンク抵抗性、透明性、および機械的性質における顕著な影響は認められなかった。これらのチューブを、Masterflex(商標)蠕動ポンプの標準ヘッドにおけるポンプセグメントとして使用した場合、潤滑剤がチューブのポンピング寿命を向上させる。この検討においては、ポンピング試験は、約400rpmの速度で実施する。潤滑剤を使用しないと、チューブは、摩耗が原因の故障のために、わずかに約2時間しか運転できない。約1.0重量%の潤滑剤を添加することによって、チューブのポンピング寿命が、約6〜11時間にまで延長される。
【0045】
Kraton G1643M/Nordel IP45の50/50ブレンド物から押出成形したチューブを、約6.8Mradの電子ビーム処理によってさらに架橋させる。図5に、電子ビーム架橋させた後のチューブの性質を列記している。それに対応する図4における結果と比較すると、電子ビーム架橋法が、透明度、キンク抵抗性、硬度、および引張の機械的性質には影響していないことが明らかである。しかしながら、チューブのポンピング寿命においては、極めて顕著な改良を見ることができる。潤滑無しのチューブでは、ポンプ寿命が約2時間〜約24時間上昇するが、それに対して、潤滑チューブはそれらのポンプ寿命を、約6〜11時間から約13〜39時間の範囲にまで改良する。さらに、電子ビーム架橋処理によって、チューブの耐熱性における顕著な改良を達成することができる。図6のDMAの結果からわかるように、未潤滑のKraton G1643M/Nordel IP45の50/50のチューブは、約80℃への短時間の暴露にしか耐えられないが、それに対して、電子ビーム架橋させたチューブは、短時間なら約130℃で使用することが可能である。したがって、この架橋させたブレンド物は、約121℃で約30分間まで、および約135℃で約20分間まで、の両方の蒸気滅菌法に好適である。
【0046】
実施例4:ポリオレフィンエラストマーとジエンエラストマーとのブレンド物
ブラベンダーミキサーを使用し、約200℃〜230℃で、下記のポリマーのブレンド物を各種の比率で混合する。そのようにして得られた混合物を成形して、厚み2mmのスラブとし、そのスラブから引張および引裂試験のためのダンベル状試験片を、それぞれASTM 638およびASTM 624に従って切り出す。
【0047】
【表5】
【0048】
図7に、電子ビーム照射有りおよび無しのEPDM/EMAブレンド物の動的機械分析を見ることができる。6.8MRad(4パス)の電子ビーム照射で、EPDM/EMAブレンド物は充分に架橋される。たとえば、電子ビーム照射されなかったEPMA/EMAブレンド物は、明らかに架橋されていないが、これは、温度を上げると貯蔵弾性率が劇的に低下することで証明される。さらに、6.8Mrad(4パス)の電子ビーム照射は、100℃を超える温度、特に約121℃で約30分間までおよび約135℃で約20分間までの両方の蒸気滅菌での耐熱性をブレンド物に与えるのに充分なものである。
【0049】
評価のために、4種のサンプルを選択して、押出加工して、0.5625インチ(OD)×0.375インチ(ID)のチューブとする。配合と、電子ビーム処理前後での性質を、表6、7、および8に見ることができる。
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
【表8】
【0053】
表5〜8から判るように、ブレンド物を架橋させることによって、材料に有利な性質が与えられる。電子ビーム照射の後でも、その材料はフレキシブルなままである。それらの材料は、電子ビーム処理の後でも、ヤング率、100%弾性率、300%弾性率、および引張強度では無視できる程度の変化しか示さない。電子ビーム処理の後では、材料では伸びがわずかに低下するが、このことは物質の鎖の切断が起きていないことを示している。
【0054】
図8に引裂試験を見ることができる。図9は、EPDM/Affinityのブレンド物の動的機械分析(DMA)を表している。そのグラフは、電子ビームの4パスから8パスまででは、性質における変化は無視可能であることを示している。図9に見られるように、6.8Mrad(4パス)の電子ビーム照射は、100℃を超える温度、特に約121℃で約30分間までおよび約135℃で約20分間までの両方の蒸気滅菌での耐熱性をブレンド物に与えるのに充分なものである。
【0055】
表5の材料について、上述のゲル含量試験を実施する。図10に見られるように、ゲル含量試験からは、電子ビームの4パスと8バスの間では、架橋密度には顕著な変化はないことがわかる。
【0056】
実施例5:熱可塑性エラストマーとアイオノマーとのブレンド物ブラベンダーミキサーを使用し、約300゜F〜約400゜Fの温度で、下記のポリマーのブレンド物を各種の比率で混合する。それらのブレンド物を、約375゜Fのフラットな温度プロファイルで圧縮成形して、ショアーA硬度、ヤング率(E)、100%弾性率伸び(E−100%)、伸び(ε)、引張強度、および引裂強度の試験のためのプラックとする。ショアーA硬度は約50〜約85の範囲で、軟質でフレキシブルな材料であることを示している。
【0057】
2種のサンプルを選択し、押出加工して、電子ビーム処理前後でのポンプ寿命を評価するための、0.385インチ(OD)×0.255インチ(ID)のチューブとする。チューブの寸法と温度ウィンドウに関してはまったく問題がないので、加工性は良好である。ポンプ寿命は、EZロードIIポンプヘッドを使用し、600RPMで試験する。結果は表9に見ることができる。
【0058】
【表9】
【0059】
表9に見られるように、チューブを照射すると、いずれのブレンド物でもポンプ寿命が長くなる。
【0060】
上述の一般的な記述または実施例における動作のすべてが必要とされるのではなく、また特定の動作の一部が必要とされない可能性もあり、また記述された動作に加えて一つまたは複数のさらなる動作が実施されてもよいということに注意されたい。さらに、列記されている動作の順序が、必ずしもそれらを実施する順序である必要もない。
【0061】
上述の明細書において、特定の実施態様に関連してコンセプトを記述してきた。しかしながら、当業熟練者の理解するところであるが、添付の特許請求項において記述される本発明の範囲から外れることなく、各種の修正および変更を加えることができる。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味とみなされるべきであって、そのような修正はすべて、本発明の範囲の中に含まれると考えるべきである。
【0062】
本明細書で使用するとき、「含む(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(has、having)」、またはそれらのその他の変化形は、非排他的な包含をカバーするものと考えるべきである。たとえば、一連の特徴を含むプロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの特徴だけに限定される訳ではなく、そのようなプロセス、方法、物品または装置に対して明示的にリストされたり固有であったりするのではない、他の特徴を含んでいてもよい。さらに、そうではないと明確に記述されていない限りにおいては、「または(or)」という用語は、「包括的なor(inclusive−or)」を指しているのであって、「排他的なor(exclusive−or)」を指しているのではない。たとえば、「条件AまたはB」ということは、以下のいずれかが満足されている:『Aが真(または、存在する)で、かつBが偽(または、存在しない)』、『Aが偽(または、存在しない)で、かつBが真(または、存在する)』、ならびに、『AおよびBが共に真(または、存在する)』。
【0063】
さらに、不定冠詞の「a」または「an」の使用は、本明細書に記述された、要素(element)および構成要素(component)を記述するためである。これは、単に利便性のためだけであって、本発明の範囲の一般的な感覚を与えるためである。この記述は、一つまたは少なくとも一つを含むと読むべきであって、そういう意味ではないことが明白でない限りにおいて、単数が複数も包含している。
【0064】
利益(benefit)、その他の利点(advantage)および問題の解決法を、特定の実施態様に関連させて、ここまで記述してきた。しかしながら、それらの利益、利点、問題の解決法、ならびに将来起きるかまたはより顕著となるような各種の利益、利点、解決法の原因となりうる各種の特徴が、特許請求項のいずれかまたは全部の、決定的であるか必要とされるかまたは必須である、特徴であると受け取ってはならない。
【0065】
本明細書を読めば、明確を期する目的で、ある種の個別の実施態様の文脈において本明細書に記載されたある種の特徴が、単一の実施態様の中に組み合わせた形で提供されてもよいということは、当業者ならば理解するである。逆に、簡略化のために、単一の実施態様の文脈において記載された各種の特徴が、個別にか、または各種の二次的な組合せで提供されてもよい。さらに、範囲の形で表現された数値を参照する場合には、その範囲内の個別またはすべての数値が含まれる。
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、一般的には、フレキシブルチューブ材料および前述の材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療的処置の際に各種の液体を輸送するために、フレキシブル医療用チューブが使用されている。軟質ポリ塩化ビニル(PVC)が、その固有の可撓性および半透明性が理由で、医療用チューブのめに使用される典型的な材料である。残念ながら、ポリ塩化ビニルチューブには顕著な量の低分子量化学物質が含まれていて、それらが、医療的処置の間に人体の中に浸出される可能性がある。さらに、焼却によってPVCベース廃棄物を処理すると、毒性ガスの放出のために環境問題の原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
軟質PVCに対する代替え材料が、フレキシブルな医療用チューブを作成するために採用されてきた。望ましいポリマーとしては、典型的には、フレキシブルであり、透明であり、ある種の用途に適切なものが挙げられる。残念ながら、それらのポリマーは、フレキシブルな医療用チューブ用途に望ましい物理的または機械的性質をすべて具備している訳ではない。さらに、それらのポリマーの多くは、約100℃よりも高い温度において激しい軟化が起きるために、蒸気滅菌の下では、充分な性能発揮ができない。その結果として、製造業者は多くの場合、それが蒸気滅菌可能であるかどうかについての選択肢なしで、所望の物理的および機械的性質を選択せざるを得ない。
【0004】
そのような次第で、蒸気滅菌が可能である、改良されたポリマー材料が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの特定な実施態様においては、フレキシブルチューブ材料には、以下のものを含む、放射線架橋されたブレンド物が含まれている:a)スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの組合せを含む、第一のエラストマー性ポリマー;およびb)ポリオレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、またはそれらの組合せを含む第二のエラストマー性ポリマー(ただし、その第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとは異なっている)。
【0006】
また別な例示的実施態様においては、材料を製造する方法には以下の工程が含まれる:スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの組合せを含む、第一のエラストマー性ポリマーを備える工程;ポリオレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、またはそれらの組合せを含む第二のエラストマー性ポリマーを備える工程(ただし、その第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとは異なっている);その第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとをブレンドする工程;そのブレンド物を、押出成形または射出成形する工程;およびそのブレンド物を、照射を用いて架橋させる工程。
【0007】
添付の図面を参照することにより、本明細書の開示がよりよく理解され、その多くの特徴と利点が当業者に明確となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】架橋前のスチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物の物理的性質を示す表である。
【図2】架橋後のスチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物の物理的性質を示す表である。
【図3】電子ビーム架橋処理有りおよび無しの場合の、スチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物についての動的機械分析(DMA)の結果を示すグラフである。
【図4】電子ビーム架橋処理前の、スチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物のチューブの物理的性質を示す表である。
【図5】電子ビーム架橋処理後の、スチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物のチューブの物理的性質を示す表である。
【図6】電子ビーム架橋処理有りおよび無しの場合の、スチレン系熱可塑性エラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物についての動的機械分析(DMA)の結果を示すグラフである。
【図7】電子ビーム架橋処理有りおよび無しの場合の、エチレン、プロピレン、ジエンモノマーのターポリマー(EPDM)とエチレン−アクリル酸メチル(EMA)との例示的ブレンド物についての動的機械分析(DMA)の結果を示すグラフである。
【図8】電子ビーム架橋処理有りおよび無しの場合の、ポリオレフィンエラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物についての引裂試験の結果を示すグラフである。
【図9】電子ビーム架橋処理有りおよび無しの場合の、ポリオレフィンエラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物についての動的機械分析(DMA)の結果を示すグラフである。
【図10】電子ビーム架橋処理をした、ポリオレフィンエラストマーとジエンエラストマーとの例示的ブレンド物についてのゲル含量試験の結果を示すグラフである。
【図11】架橋前の、熱可塑性エラストマーとアイオノマーエラストマーとの例示的ブレンド物の物理的性質を示す表である。
【0009】
異なった図面において同じ参照記号を用いている場合には、類似または同一の項目を表している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一つの特定な実施態様においては、フレキシブルチューブ材料には、第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとのブレンド物が含まれる。典型的には、その第一のエラストマー性ポリマーが、スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの組合せである。典型的には、その第二のエラストマー性ポリマーが、ポリオレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、またはそれらの組合せである。そのフレキシブルチューブ材料には、第一のエラストマー性ポリマーおよび第二のエラストマー性ポリマーが含まれるが、ただし、その第一のエラストマー性ポリマーとその第二のエラストマー性ポリマーとは異なっている。一つの特定な実施態様においては、その第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとは、いずれもポリオレフィンエラストマーではない。第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマーとのブレンド物が、放射線架橋可能な材料を与えるのが有利である。一つの例においては、放射線架橋には、ガンマ線照射および電子ビーム照射が含まれる。さらに、放射線架橋された材料を、滅菌することもできる。
【0011】
典型的には、そのスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレンベースのブロックコポリマー、たとえばスチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、それらのブレンド物、それらの混合物などである。ある実施態様においては、いかなるスチレン系熱可塑性エラストマーも想定される。例示的なスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、以下のものが挙げられる:トリブロックのスチレン系ブロックコポリマー(SBC)たとえば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEEBS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEEPS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン(SIBS)、またはそれらの組合せ。市販品の例としては、Kraton(商標)樹脂およびHybrar(商標)樹脂のいくつかのグレードが挙げられる。ある実施態様においては、そのスチレン系熱可塑性エラストマーには、少なくとも1個の遊離のオレフィン性二重結合、すなわち不飽和二重結合が含まれる。たとえば、ポリマーの中に遊離のオレフィン性二重結合が存在することによって、照射下で架橋するであろう分子の部位が得られる。例示的な不飽和二重結合を有するスチレン系ポリマーとしては、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン(SIBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)などが挙げられる。ある実施態様においては、そのスチレン系熱可塑性エラストマーが飽和である、すなわち、遊離のオレフィン性二重結合をまったく含まない。
【0012】
典型的には、そのスチレン系熱可塑性エラストマーが、少なくとも約15,000Mn、たとえば少なくとも約25,000Mnの分子数(molecular number)を有している。ある実施態様においては、そのスチレン系熱可塑性エラストマーが、ブレンド物の全重量の、少なくとも10重量%、たとえば少なくとも約20重量%、さらには少なくとも約30重量%の量で存在している。典型的には、ブレンド物中に存在しているスチレン系熱可塑性エラストマーのレベルは、望まれる最終的な性質を基準にして最適化すればよい。
【0013】
典型的には、そのエチレン酢酸ビニルエラストマーが、非晶質で極性のポリマーである。本明細書で使用するとき、「非晶質」という用語は、実質的に非結晶性、すなわち結晶融点を持たないポリマーを指している。エチレン酢酸ビニルポリマー中に見出される酢酸ビニルの量が、そのポリマーの結晶化度を決定する。具体的には、EVAコポリマー中の酢酸ビニルの比率が高いほど、エチレン鎖の結晶規則性が乱されたり、破壊されたりすることが多い。結晶化が次第に妨害され、約50%の酢酸ビニルを含むEVAコポリマーでは実質的に消失して、非晶質ポリマーとなる。ある実施態様においては、本発明の開示のエチレン酢酸ビニルが、エチレン酢酸ビニルの全重量の約50重量%を超える酢酸ビニル含量を有している。たとえば、そのエチレン酢酸ビニルが、エチレン酢酸ビニルの全重量約60重量%を超え約80重量%まで、たとえばエチレン酢酸ビニルの全重量の約60重量%〜約70重量%の酢酸ビニル含量を有している。さらに、非晶質ポリマーでは、そのガラス転移温度Tgが、典型的には、低い、すなわち約0℃未満である。ある実施態様においては、その非晶質エチレン酢酸ビニルにおけるガラス転移温度が、約0℃未満、たとえば約−15℃未満、さらには約−25℃未満である。ある実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルが、約70,000〜約90,000、たとえば約80,000〜約85,000の数平均分子量(Mn)を有している。そのエチレン酢酸ビニルが、約250,000〜約400,000、たとえば約280,000〜約350,000の重量平均分子量(Mw)を有していてもよい。ある実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルが、約3.0〜約5.0、たとえば約3.5〜約4.0の多分散度指数(Mw/Mn)を有している。ある実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルが、190℃/21.1Nの試験パラメーターにおいて、たとえば約1〜約7、たとえば約1.5〜約6の、望ましいメルトフローインデックス(MI)を有している。一般的には、200℃、剪断速度100sec−1におけるその溶融粘度は、約600Pa・sまで、たとえば約400Pa・s〜約500Pa・sであってよい。剪断速度1000sec−1の場合には、その溶融粘度は、約300Pa・sまで、たとえば約100Pa・s〜約200Pa・sであってよい。ある実施態様においては、その溶液粘度が、トルエン中濃度15%では約2000mPa・sまで、たとえば約200mPa・s〜1500mPa・sであるか、またはトルエン中30%濃度では約50,000mPa・sまで、たとえば約7000mPa・s〜30,000mPa・sである。市販されているEVAとしては、DuPontから入手可能なElvax(商標)がある。
【0014】
ある例示的実施態様においては、そのエラストマー性エチレン酢酸ビニルポリマーが、望ましいショアーA硬度、たとえば約30〜約40を有している。対照的に、結晶性の極性ポリマー、たとえば結晶性EVAは、典型的には、40を超えるショアーA硬度を有している。
【0015】
典型的には、非晶質エチレン酢酸ビニルは、約200bar〜約1000barの圧力および約50℃〜約120℃の温度での溶液重合によって合成される。ある実施態様においては、非晶質エチレン酢酸ビニルを、約1bar〜約200barの圧力および30〜70℃の温度での乳化重合によって合成してもよい。対照的に、結晶性エチレン酢酸ビニルは、約1000bar〜約3000barの圧力、約150℃〜約350℃の温度での塊状重合によって調製される。
【0016】
一つの例においては、そのブレンド物には、ポリマーブレンド物の全重量の約1重量%〜約99重量%の範囲で存在しているエチレン酢酸ビニルが含まれる。ある実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルが、ポリマーブレンド物の全重量の少なくとも約5重量%を超える、たとえばポリマーブレンド物の全重量の少なくとも約約15重量%を超える量で存在している。一つの特定な実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルが、ポリマーブレンド物の全重量の少なくとも約10重量%を超える、たとえばポリマーブレンド物の全重量の約10重量%〜約90重量%の範囲、さらにはポリマーブレンド物の全重量の約25重量%〜約80重量%の範囲で存在している。典型的には、ブレンド物中に存在しているエチレン酢酸ビニルのレベルは、望まれる最終的な性質を基準にして最適化すればよい。
【0017】
一つの特定な実施態様においては、そのブレンド物にポリオレフィンエラストマーを含む。各種のポリオレフィンエラストマーが想定される。典型的なポリオレフィンとしては、モノマー、たとえばエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテン、またはそれらの各種組合せから形成される、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、アロイ、またはそれらの各種組合せが挙げられる。ある実施態様においては、そのポリオレフィンエラストマーが、メタロセン重合法または非メタロセン重合法によって作成される、エチレンとプロピレンもしくはアルファ−オレフィンとのコポリマー、または ポリプロピレンとエチレンもしくはアルファ−オレフィンとのコポリマーであってよい。市販されているポリオレフィンの例としては、以下のものが挙げられる:Affinity(商標)、Engage(商標)、Flexomer(商標)、Versify(商標)、Infuse(商標)、Exact(商標)、Vistamaxx(商標)、Softel(商標)、およびTafmer(商標)、Notio(商標)(Dow、ExxonMobil、Londel−Basell、およびMitsui製)。ある実施態様においては、そのポリオレフィンエラストマーが、エチレンと極性ビニルモノマーとのコポリマー、たとえば酢酸エステル(EVA)、アクリル酸(EAA)、アクリル酸メチル(EMA)、メタクリル酸メチル(EMMA)、アクリル酸エチル(EEA)、およびアクリル酸ブチル(EBA)を含んでいてよい。これらのエチレンコポリマー樹脂のメーカーの例としては、DuPont、Dow Chemical、Mitusi、およびArkemaなどが挙げられる。また別な実施態様においては、そのポリオレフィンエラストマーを、エチレンと無水マレイン酸とアクリレートのターポリマー、たとえばArkema製のLotader(商標)およびDuPont製のEvalloy(商標)とすることもできる。さらに別な実施態様においては、そのポリオレフィンエラストマーを、エチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸とのアイオノマー、たとえばDuPont製のSurlyn(商標)とすることもできる。ある実施態様においては、そのポリオレフィンが、反応器グレード(reactor grade)の熱可塑性プラスチックポリオレフィンエラストマー、たとえばFlint Hills Resourcesから入手可能なP6E2A−005Bである。ある実施態様においては、そのポリオレフィンエラストマーが、200MPaより低い曲げ弾性率を有しているべきである。典型的には、そのポリオレフィンエラストマーが、ブレンド物の全重量の、少なくとも10重量%、たとえば少なくとも約20重量%、さらには少なくとも約30重量%の量で存在している。典型的には、ブレンド物中に存在しているポリオレフィンエラストマーのレベルは、望まれる最終的な性質を基準にして最適化すればよい。
【0018】
ある実施態様においては、そのブレンド物にはジエンエラストマーが含まれていてよい。各種適切なジエンエラストマーが想定される。たとえば、そのジエンエラストマーは、ポリブタジエンおよびポリイソプレンまたはそれらのコポリマーであってよいが、さらにはそれを、エチレン、プロピレン、ジエンモノマーのターポリマー(EPDM)とすることもできる。ある実施態様においては、そのジエンエラストマーは、想定される各種の手段によって合成してよい。たとえば、ジエンエラストマーを、メタロセン重合法または非メタロセン重合法によって合成する。ある例示的実施態様においては、そのEPDMが、ジエン、たとえばDCPD(ジシクロペンタジエン)、ENB(エチリデンノルボルネン)およびVNB(ビニルノルボルネン)の反応生成物である。EPDM樹脂の例としては、ExxonMobil ChemicalからVistalon(商標)として、およびDow ChemicalからNordel(商標)として、ならびにその他のメーカーから入手することが可能である。ある実施態様においては、そのジエンエラストマーが、ブレンド物の全重量の、少なくとも10重量%、たとえば少なくとも約20重量%、さらには少なくとも約30重量%の量で存在している。典型的には、ブレンド物中に存在しているジエンエラストマーのレベルは、望まれる最終的な性質を基準にして最適化すればよい。
【0019】
電子ビームまたはガンマ線を照射することによってそれらのブレンド物を架橋させるためには、そのブレンド物の中に反応性の部位が必要である。たとえば、そのスチレン系熱可塑性エラストマーが少なくとも1個の遊離のオレフィン性二重結合を含むような実施態様においては、そのポリマー中の遊離のオレフィン性二重結合が、照射下において架橋するであろう分子部位を与える。ある実施態様においては、ブレンド物を作成するために飽和樹脂を使用する場合には、少量の照射増感剤または架橋促進剤を添加して、充分な架橋を起こさせ、かつ照射線に暴露させている際の鎖切断が原因の材料の分解を防止してもよい。各種適切な照射増感剤を想定することができる。例示的な照射増感剤としては、典型的には、たとえば以下のような多官能モノマーが挙げられる:ジエチレングリコールジメタアリレート(DEGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、ジペンタエリトリトールアクリレート(DPEA)、テトラメチロールメタンテトラアクリレート(TMMTA)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、m−フェニレンジマレイミドなど、およびそれらの各種組合せ。使用する場合には、照射増感剤は、ブレンド物の全重量の約0.5重量%〜約3.0重量%で存在させるのがよい。
【0020】
ある実施態様においては、架橋促進剤を使用して、照射によってブレンド物を架橋させるための反応性部位を与えてもよい。各種適切な架橋促進剤を想定することができる。例示的な架橋促進剤としては、その分子鎖の中に不飽和二重結合を有するポリマー、たとえばポリイソプレン、ポリブタジエン、EPDM、SIS、SBSなど、およびそれらの各種組合せが挙げられる。一つの特定な実施態様においては、その架橋促進剤の不飽和二重結合が、電子ビームまたはガンマ線によって架橋するであろう。典型的には、架橋促進剤は、ブレンド物の全重量の約5.0重量%を超える量で存在していてよい。
【0021】
ある実施態様においては、ブレンド物の中でオイルを使用してもよい。各種適切なオイルを想定することができる.一つの特定な実施態様においては、そのオイルが、芳香族含量がゼロのパラフィン系もしくはナフテン系のいずれか、またはパラフィン系もしくはナフテン系の混合物である、鉱油である。たとえば、ブレンド物の全重量の約0重量%〜約70重量%の量で鉱油を使用してよい。ある実施態様においては、そのブレンド物には実質的にオイルを含まない。本明細書で使用するとき、「実質的にオイルを含まない(substantially oil−free)」という用語は、ブレンド物の全重量の約0.1重量%未満でしか鉱油を含まないブレンド物を指している。たとえば、そのスチレン系熱可塑性エラストマーは、伸展油または可塑剤を添加することなく、溶融加工することが可能である。ある実施態様においては、そのエチレン酢酸ビニルエラストマーを、伸展油または可塑剤を添加することなく、溶融加工することが可能である。
【0022】
ある例示的実施態様においては、そのブレンド物に、想定される各種の添加剤、たとえば潤滑剤、充填剤、可塑剤、抗酸化剤、またはそれらの各種組合せをさらに含む。潤滑剤の例としては、シリコーンオイル、ワックス、スリップ助剤、粘着防止剤などが挙げられる。潤滑剤の例としてはさらに、シリコーングラフト化ポリオレフィン、ポリエチレンもしくはポリプロピレンワックス、オレイン酸アミド、エルクアミド、ステアリン酸エステル、脂肪酸エステルなどが挙げられる。典型的には、潤滑剤は、ブレンド物の全重量の約2.0重量%未満の量で存在していてよい。ある実施態様においては、潤滑剤は、ブレンド物の全重量の約0.5重量%未満の量で存在していてよい。抗酸化剤の例としては、フェノール系抗酸化剤、ヒンダードアミン系抗酸化剤が挙げられる。充填剤の例としては、炭酸カルシウム、タルク、放射線不透過性充填剤たとえば硫酸バリウム、オキシ塩化ビスマス、それらの各種組合せなどが挙げられる。可塑剤の例としては、各種公知の可塑剤たとえば鉱油などが挙げられる。典型的には、添加剤は、ブレンド物の全重量の約50重量%以下、たとえばブレンド物の全重量の約40重量%以下、さらにはブレンド物の全重量の約30重量%以下の量で存在させてよい。別な方法においては、そのブレンド物に、潤滑剤、充填剤、可塑剤、および抗酸化剤をまったく含まなくてもよい。
【0023】
第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとのブレンド物の成分は、各種公知の方法によって溶融加工して、ブレンド物を形成させてもよい。ある実施態様においては、第一のエラストマー性ポリマーを第二のエラストマー性ポリマーと共に、ドライブレンド法またはコンパウンディング法によって溶融加工してもよい。そのドライブレンド法は、粉体、粒状体またはペレットの形態で実施してよい。ブレンド物は、二軸スクリューコンパウンディング法によるか、またはバッチ式のバンバリー法によって作成することができる。次いで、それらのブレンド物のペレットを単軸スクリュー押出機の中にフィードして、物品たとえばフレキシブルチューブ製品を作成すればよい。ブレンド物を混合要素を備えた単軸スクリュー押出機の中で混合してから、押出成形して直接、物品たとえばチューブ製品とすることも可能である。一つの特定な実施態様においては、当業者に公知の想定される各種の方法、たとえばラミネート法、キャスティング法、モールド法などによってブレンド物を溶融加工することも可能である。ある実施態様においては、そのブレンド物を射出成形することもできる。
【0024】
ある実施態様においては、特定の応用面でのニーズに応じて、そのブレンド物から各種の物品を作成することができる。そのようにして得られた物品を、電子ビームまたはガンマ線を使用して、バッチ法またはロール・ツゥ・ロール(roll−to−roll)法で照射する。一つの特定な実施態様においては、電子ビーム照射には、Van de Graaff起電機(電子加速器)によって発生させた電子ビームが含まれる。電子ビーム加速器からの約0.5MeV〜約10.0MeVの間のエネルギーを有する電子ビームを使用して、得られた物品のブレンド物を架橋させることができる。約10KGy〜約200KGy(約1Mrad〜約20Mrad)の間の線量が、典型的である。ある例示的実施態様においては、ガンマ線によってブレンド物を架橋させるために、60Coからの約1Mrad〜約10Mradの放射線を使用することができる。
【0025】
そのポリマーブレンド物が、滅菌法に耐えられるのが有利である。ある実施態様においては、そのポリマーブレンド物が、各種想定される方法によって滅菌される。たとえば、放射線架橋の後で、ポリマーブレンド物が滅菌される。滅菌方法の例としては、蒸気法、ガンマ線法、エチレンオキシド法、電子線法、それらの組合せなどが挙げられる。一つの特定な実施態様においては、そのポリマーブレンド物が、蒸気滅菌法によって滅菌される。ある例示的実施態様においては、そのポリマーブレンド物が、約30分間までの時間、約121℃までの温度での蒸気滅菌に対する耐熱性を有している。ある実施態様においては、そのポリマーブレンド物が、約20分間までの時間、約135℃までの温度での蒸気滅菌を実施することに対する耐熱性を有している。
【0026】
ある実施態様においては、ポリマーブレンド物を成形して単層物品、多層物品としてもよいし、あるいは基材の上に積層、塗装、または成形することもできる。多層物品には、たとえば補強層、粘着剤層、バリヤー層、耐薬品性層、金属層、それらの各種組合せなどの層が含まれる。ブレンド物を成形して、各種の有用な形状、たとえばフィルム、シート、チューブなどとすることも可能である。ポリマーブレンド物を、ポリオレフィン系化合物(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)など)およびスチレン系化合物(ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)など)を含めた、その他の基材に粘着または接着させてもよい。
【0027】
一つの特定な実施態様においては、そのポリマーブレンド物を使用して、チューブおよびホースを製造してもよい。たとえば、ポリマーブレンド物を、低毒性ポンプチューブ、強化ホース、耐薬品性ホース、ブレードホース、ならびに低透過性のホースおよびチューブを製造するためのチューブまたはホースとして使用することもできる。たとえば、選択された特定の用途のための各種有用な直径サイズを有するチューブを得ることもできる。ある実施態様においては、そのチューブが、約2.0インチまで、たとえば約0.25インチ、0.50インチ、および1.0インチの外径(OD)を有していてもよい。そのポリマーブレンド物のチューブは、所望の性質、たとえば化学的安定性および改良された製品寿命を示すのが有利である。たとえば、そのチューブが、標準ポンプヘッドを使用し600RPMで測定して、約10時間を超える、たとえば約20時間を超えるかまたはそれ以上のポンプ寿命を有していてもよい。
【0028】
本発明の実施態様では、所望の機械的性質を有する低毒性の物品を製造することができる。一つの特定な実施態様においては、その成形される放射線架橋された物品が、それが輸送する流体の中に浸出する可能性がある可塑剤またはその他の低分子量連鎖延長剤を実質的に含まない。本明細書で使用するとき、「実質的に含まない(substantially free)」という用語は、(ISO 15705およびEPA 410.4に従って測定した)全有機物含量(TOC)を約100ppm未満しか有さない、放射線架橋された物品を指している。
【0029】
実施態様においては、そのようにして得られた放射線架橋された物品が、さらに望ましい物理的および機械的性質を有していてもよい。たとえば、その放射線架橋された物品が、フレキシブルで、キンク抵抗性があり、そして透明または少なくとも半透明の外観を有する。特に、そのようにして得られた放射線架橋された物品は、望ましい可撓性、実質的に透明もしくは半透明、望ましいガラス転移温度、望ましい低温性能、ならびにオイルおよびアルコールに対する耐薬品性を有している。たとえば、第一のエラストマー性ポリマーと第二のエラストマー性ポリマーとの放射線架橋された物品では、有利なことには、低硬度物品を製造することができる。たとえば、望ましい機械的性質を有する、約40〜約90の間のショアーA硬度を有する放射線架橋された物品を形成することもできる。そのような性質は、フレキシブルな材料であることを示している。
【0030】
望ましい硬度に加えて、その放射線架橋された物品は、有利な物理的性質、たとえば望ましい極限伸びおよび高温における低い圧縮永久歪みを有している。極限伸びは、ASTM D−412試験方法に従って、Instron装置を使用して測定する。たとえば、その放射線架橋された物品は、少なくとも約400%、たとえば少なくとも約500%、たとえば少なくとも約600%、さらには少なくとも約700%の極限伸びを示す可能性がある。ある実施態様においては、放射線架橋された物品についてASTM D−395に従い約121℃で測定した圧縮永久歪みが、約50%未満である。
【0031】
それらのポリマーブレンド物の用途は極めて多い。特に、そのポリマーブレンド物が非毒性の性質を有しているために、その材料は、毒性が望ましくない各種の用途において有用なものとなる。たとえば、そのポリマーブレンド物は、FDA、USP、およびその他の規制の承認に対する潜在的能力を有している。ある例示的実施態様においては、そのポリマーブレンド物を、たとえば工業、医療、ヘルスケア、バイオ医薬品、飲料水、食品・飲料、実験室などの用途において使用することが可能である。ある実施態様においては、そのポリマーブレンド物を安全に廃棄することもまた可能であるが、その理由は、焼却しても有毒ガスを実質的に発生させず、また埋立てをしても、環境に可塑剤を浸出させることがないからである。
【実施例】
【0032】
実施例1.スチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィンとのブレンド物
Kraton D2109について、機械的および物理的性質の試験をする。一般的に言えば、Kraton D2109は、スチレン系TPE樹脂、ポリオレフィン、および鉱油を溶融コンパウンディングした材料であって、Sonneborn(Petrolia,PA)から入手される。Kraton D2109を、約400゜Fのフラットなプロファイルで射出成形して、ショアーA硬度、引張および高温圧縮永久歪み試験用のプラックとする。さらに、それを押出成形して、0.375インチ外径(OD)×0.25インチ内径(ID)のチューブとする。チューブの寸法と温度ウィンドウに関してはまったく問題がないので、加工性は良好である。それは、(C−Flexの場合のような「粘り着く(grabby)」のとは対照的に)、触ると滑らか(silky)であり、「シリコーンの触感(silicone feel)」を有している。そのチューブは、レジリエンスおよびエラスティシティの徴候を明らかに示した。プラックおよびチューブコイルを、電子ビームを用い、約6.8MRadおよび約13.6MRadの2種の異なった線量率で照射するが、これは、約1.7MRadをそれぞれ、4パスおよび8パスさせることに相当する。次いで、その照射したプラックを、ASTM D−395において規定されたようにして、硬度、引張、および圧縮永久歪みについての試験をする。それらの結果を表1および2にまとめた。圧縮永久歪みの試験では、Advanced Elastomer Systemsから入手した3種のグレードのSantopreneを比較用チューブとして使用する。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
電子ビーム架橋させたチューブは、ヒートシールすることが可能ではあるが、ただし、標準のC−Flexを用いた通常のものよりは高い温度設定を用いる。しかしながら、ヒートセット温度は、放射線架橋されたKraton D2109チューブをヒートシールするためには、標準のC−Flexチューブの場合の160℃から約180℃にまで上げなければならない。照射したKraton D2109製品は、より高い破断強度、より低い破断時伸び、および顕著に改良された高温(120℃)圧縮永久歪みを示し、これは、Santopreneの性能を上回っている。照射したKraton D2109配合物は、約50Aの硬度、約1000psiの破断強度、約735%の極限伸び、および約120℃で約12%の圧縮永久歪みを与える。
【0036】
架橋を起こさせるために最高8パスまでで電子ビームを照射した、Kraton D2109のポンプチューブ(0.25×0.38インチ)を、600RPMで標準ヘッドを使用した蠕動ポンプ試験にかける。照射したチューブについて、EZロード(EZ load)ヘッドを使用した、600RPMでのポンプ寿命試験もした。比較のために、透明なR70−374 C−Flex サイズ17のチューブについてもEZロードで試験する。以下の表3の結果からも見られるように、XL−CFlex(Kraton D2109)は、標準ヘッドで約50時間のポンプ動作した後で、破損する。驚くべきことには、同一のチューブが、EZロードでは、約1000時間のポンプ動作した後で、破損する。それらに比較して、透明なC−Flex R70−374では、標準ヘッドおよびEZロードヘッドのいずれにおいても、約10時間のポンプ動作で破損するが、このことは、ポンプヘッドの設計が問題なのではないことを示している。さらに、R70−374のスポーリング挙動は、照射したKraton D2109(XL−CFlex)よりも視覚的に悪く、後者は、(ポンプ試験の際に肉眼で観察して)最小限のスポーリングしか示さない。
【0037】
【表3】
【0038】
実施例2.EPDMと飽和スチレン系ブロックコポリマー(SBC)とのブレンド物:
フレキシブルチューブを作成するために、ショアーA硬度範囲約40〜約90の、ジエンエラストマーとスチレン系熱可塑性エラストマーとのブレンド物を使用することができる。イオン化照射によって架橋性のブレンド物を製造するというコンセプトを実証するために使用した、ジエンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを表4に列記した。化学構造および物理的性質が異なる4種のスチレン系熱可塑性エラストマーを選択している。Kraton G1643MおよびKraton MD6945は、Kraton Polymers製の樹脂であって、ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチレン−ブチレン)−ブロック−ポリスチレン(SEBS)の化学構造をベースとしたものである。Hybrar 7125がポリスチレン−ブロック−ポリ(エチレン−co−プロピレン)−ブロック−ポリスチレン(SEPS)の化学構造を有しているのに対して、Hybrar 7311は、ポリスチレン−ブロック−ポリ[エチレン−co−(エチレン−co−プロピレン)]−ブロック−ポリスチレン(SEEPS)の化学構造を有している。Hybrar樹脂は、(株)クラレ(日本、倉敷)によって供給される。架橋性ブレンド物を作成するために、EPDMを選択している。ある実施態様においては、ブレンド物からチューブを作成するために一般的な熱可塑性プラスチック押出法を使用する目的で、メタロセン重合法によって作成したEPDM樹脂を使用することができる。完全に非晶質であり、そのために室温ではベールの形状であるEPDMゴムとは異なって、メタロセン法EPDM樹脂は、このタイプの材料において存在する幾分かの結晶化度(典型的には、10℃/分でのDSCで測定して、約5%〜約20%の範囲)を有しているために、ペレットの形状で製造することが可能である。Dow Chemicalから提供されるNordel IP4725は、この実施例において架橋性ブレンド物を作成するために選択したメタロセン法EPDM樹脂である。Nordel IP4725樹脂は、透明なペレットの形状であり、メーカーによれば約12%の結晶化度を有している。
【0039】
【表4】
【0040】
ブレンド物の小さなバッチを作成するために、ブラベンダーミキサーの中で、約200℃、約60rpmで約5分間かけて、それらのポリマー成分を各種の比率で混合する。得られた混合物を使用して、Carverホットプレスの中で、厚み約1mmのスラブを成形する。それらのスラブから、引張試験のためのダンベル状(dog−bone)試験片を切り出す。図1に、架橋前のブレンド物の機械的および光学的性質を列記する。EPDM/Kraton MD6945およびEPDM/Hybrar 7311系についてはすべての混合レベルで透明なブレンド物が得られるのに対して、EPDM/Kraton G1643およびEPDM/Hybrar 7125のブレンド物では半透明なブレンド物が得られるということが明らかである。これらのブレンド物の硬度は、ショアーAで約40〜約70の範囲であり、これは、フレキシブルな熱可塑性エラストマーチューブについての所望の範囲内である。そのようにして得られたブレンド物の伸びは通常、約1000%よりも高い。それらのブレンド物の弾性率は、一般的に、原料の樹脂の両極端の間にあり、ブレンド物の引張強度は、それらの原料樹脂の値よりは高い。
【0041】
ブレンド物を架橋させる目的で、成形したスラブを、E−BEAM Services Inc.(Lebaron,Ohio)に送って架橋処理をさせる。EPDM/Kraton MD6945およびEPDM/Hybrar 7311の系列の10種のサンプルに、約10MeVの電子ビームで約6.8Mrad(4パス×1.7Mrad/パス)の照射を行わせる。電子ビーム処理をした後では、いずれのサンプルにおいても、透明性の変化や分解のための黄変は認められない。ゲル含量試験は、架橋させたサンプルを沸騰ヘキサンの中に約12時間浸漬させてから、サンプル中に残っている固形分含量パーセントを測定することにより実施する。EPDM/Kraton MD6945およびEPDM/Hybrar 7311の電子ビーム処理したブレンド物では、それらの組成に応じて、ブレンド物の全重量の約40重量%〜約70重量%のゲル含量が測定される。未処理のEPDM/スチレン系熱可塑性エラストマーのサンプルでは、ゲル含量が0%である(完全に溶解する)ことが見出される。図2における架橋させたサンプルについての物理的性質を、図1におけるそれらに対応する非架橋サンプルの結果と比較すると、電子ビーム処理したブレンド物においては硬度および弾性率に関しては顕著な変化は見出されず、電子ビーム処理の後では引張弾性率におけるわずかな上昇が見出されるが、それに対して、架橋させたサンプルの伸びが、約10%〜約20%低下することが認められる。
【0042】
ブレンド物の耐熱性に対する電子ビーム照射の影響をチェックするために、約−80℃〜約200℃の温度範囲において動的機械分析(DMA)を実施する。この試験では、温度に伴う材料の粘弾性挙動における変化を追跡することによって、熱可塑性プラスチックのガラス転移温度、融点を求めることができる。典型的なDMA試験においては、貯蔵弾性率が、その材料の剛性および弾性の目安となり、損失弾性率が、その材料の流体性および粘性を示し、そして損失正接が、損失弾性率の貯蔵弾性率に対する比である。高温に暴露させたときに、自身の重量による変形が起きないような幾分かの耐熱性を示すポリマー材料では、その材料の貯蔵弾性率は、典型的には、少なくとも約1MPaよりも高いが、それに対して、損失正接の値は典型的には、約0.25MPaよりも低い。これらの判定基準を使用すると、熱可塑性エラストマー材料を、たとえば蒸気滅菌法で短時間の間暴露させることが可能な最大温度を推定することが可能となる。図3に、Nordel IP4725/EPDMの50/50ブレンド物についての、温度に伴う貯蔵弾性率および損失正接の変化を示す。電子ビームによる架橋をさせないと、そのブレンド物の貯蔵弾性率が、約100℃より上では急激な低下を示し、溶融および流動の挙動を示唆している。約95℃で貯蔵弾性率が約1MPよりも低くなり、約82℃で損失正接が約0.25よりも高くなり、その結果、このブレンド物の場合の短時間暴露の最大温度は、約80℃となるであろう。約6.8Mradの電子ビームで架橋させた後では、Nordel IP4725/EPDMの50/50ブレンド物の貯蔵弾性率は、約70℃から約200℃まで平坦域を示す。約160℃になるまでは、約1MPa未満に下がることはない。損失正接は、約195℃になってさえも約0.25MPaを下回らない。したがって、この架橋させたブレンド物は、約121℃および約135℃、いずれの蒸気滅菌法にも適している。
【0043】
実施例3.EPDM/スチレン系熱可塑性エラストマーブレンド物から作成したチューブ:それらのブレンド物のフレキシブルチューブを作成する目的で、Kraton G1643M/Nordel IP45の50/50混合物を、潤滑用添加剤の存在下または非存在下に、共回転二軸スクリュー押出機を通過させてコンパウンディングし、水浴で冷却し、切断してペレットとする。その後、そのようにして得られたペレットを、チューブダイを備えた単軸スクリュー押出機の中にフィードする。チューブの押出しには、通常の3ゾーンスクリューを使用する。押出機の3つのセグメントで、約280゜F、約320゜Fおよび約400゜Fの温度プロファイルになるように設定する。アダプターおよびダイ温度はそれぞれ、約405゜Fおよび約415゜Fに設定する。ダイから溶融流出してくるポリマーを、冷却のための浸漬用水タンクの中に排出させると、そこで押出し物が固化して、チューブの形状となる。内部空気圧、スクリュー速度および引抜き速度を組み合わせて、チューブの寸法および壁厚を調節する。上述のコンパウンディングおよび押出し法により、IDが0.25インチ、ODが0.375インチの寸法を有する半透明でフレキシブルなチューブが得られる。ミキシングスクリューセクションを有する押出機が使用できるのであれば、2軸スクリューコンパウンディングプロセスを省略することができる。EPDMとスチレン系熱可塑性エラストマーとでは比較的に高い相溶性があるので、これらの樹脂のドライブレンド物をその押出機に直接フィードすることによって、ブレンド物からフレキシブルチューブを押出加工することが可能である。
【0044】
電子ビーム架橋処理なしの場合のチューブ配合物と得られるチューブの性質とを図4に示す。表面摩擦が低いと、通常は、蠕動ポンプ用途におけるポンピング寿命に役立つので、3種の潤滑剤について、ブレンド物の全重量の約1重量%の添加レベルで評価する。EVAキャリア樹脂中50重量%シリコーンオイル(ビニル末端ポリジメチルシロキサン)マスターバッチは、Dow Corningから入手される。Lubotene RLF4006は、Optatch Corporationから得られるシリコーングラフト低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂である。Ampacet 102468は、Ampacet Corporationによって供給される、LDPE中Eruamideのマスターバッチである。ブレンド物の全重量の約1.0重量%の添加レベルでは、3種の潤滑剤すべてで、チューブの、MBR(最小曲げ半径)によって測定されるキンク抵抗性、透明性、および機械的性質における顕著な影響は認められなかった。これらのチューブを、Masterflex(商標)蠕動ポンプの標準ヘッドにおけるポンプセグメントとして使用した場合、潤滑剤がチューブのポンピング寿命を向上させる。この検討においては、ポンピング試験は、約400rpmの速度で実施する。潤滑剤を使用しないと、チューブは、摩耗が原因の故障のために、わずかに約2時間しか運転できない。約1.0重量%の潤滑剤を添加することによって、チューブのポンピング寿命が、約6〜11時間にまで延長される。
【0045】
Kraton G1643M/Nordel IP45の50/50ブレンド物から押出成形したチューブを、約6.8Mradの電子ビーム処理によってさらに架橋させる。図5に、電子ビーム架橋させた後のチューブの性質を列記している。それに対応する図4における結果と比較すると、電子ビーム架橋法が、透明度、キンク抵抗性、硬度、および引張の機械的性質には影響していないことが明らかである。しかしながら、チューブのポンピング寿命においては、極めて顕著な改良を見ることができる。潤滑無しのチューブでは、ポンプ寿命が約2時間〜約24時間上昇するが、それに対して、潤滑チューブはそれらのポンプ寿命を、約6〜11時間から約13〜39時間の範囲にまで改良する。さらに、電子ビーム架橋処理によって、チューブの耐熱性における顕著な改良を達成することができる。図6のDMAの結果からわかるように、未潤滑のKraton G1643M/Nordel IP45の50/50のチューブは、約80℃への短時間の暴露にしか耐えられないが、それに対して、電子ビーム架橋させたチューブは、短時間なら約130℃で使用することが可能である。したがって、この架橋させたブレンド物は、約121℃で約30分間まで、および約135℃で約20分間まで、の両方の蒸気滅菌法に好適である。
【0046】
実施例4:ポリオレフィンエラストマーとジエンエラストマーとのブレンド物
ブラベンダーミキサーを使用し、約200℃〜230℃で、下記のポリマーのブレンド物を各種の比率で混合する。そのようにして得られた混合物を成形して、厚み2mmのスラブとし、そのスラブから引張および引裂試験のためのダンベル状試験片を、それぞれASTM 638およびASTM 624に従って切り出す。
【0047】
【表5】
【0048】
図7に、電子ビーム照射有りおよび無しのEPDM/EMAブレンド物の動的機械分析を見ることができる。6.8MRad(4パス)の電子ビーム照射で、EPDM/EMAブレンド物は充分に架橋される。たとえば、電子ビーム照射されなかったEPMA/EMAブレンド物は、明らかに架橋されていないが、これは、温度を上げると貯蔵弾性率が劇的に低下することで証明される。さらに、6.8Mrad(4パス)の電子ビーム照射は、100℃を超える温度、特に約121℃で約30分間までおよび約135℃で約20分間までの両方の蒸気滅菌での耐熱性をブレンド物に与えるのに充分なものである。
【0049】
評価のために、4種のサンプルを選択して、押出加工して、0.5625インチ(OD)×0.375インチ(ID)のチューブとする。配合と、電子ビーム処理前後での性質を、表6、7、および8に見ることができる。
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
【表8】
【0053】
表5〜8から判るように、ブレンド物を架橋させることによって、材料に有利な性質が与えられる。電子ビーム照射の後でも、その材料はフレキシブルなままである。それらの材料は、電子ビーム処理の後でも、ヤング率、100%弾性率、300%弾性率、および引張強度では無視できる程度の変化しか示さない。電子ビーム処理の後では、材料では伸びがわずかに低下するが、このことは物質の鎖の切断が起きていないことを示している。
【0054】
図8に引裂試験を見ることができる。図9は、EPDM/Affinityのブレンド物の動的機械分析(DMA)を表している。そのグラフは、電子ビームの4パスから8パスまででは、性質における変化は無視可能であることを示している。図9に見られるように、6.8Mrad(4パス)の電子ビーム照射は、100℃を超える温度、特に約121℃で約30分間までおよび約135℃で約20分間までの両方の蒸気滅菌での耐熱性をブレンド物に与えるのに充分なものである。
【0055】
表5の材料について、上述のゲル含量試験を実施する。図10に見られるように、ゲル含量試験からは、電子ビームの4パスと8バスの間では、架橋密度には顕著な変化はないことがわかる。
【0056】
実施例5:熱可塑性エラストマーとアイオノマーとのブレンド物ブラベンダーミキサーを使用し、約300゜F〜約400゜Fの温度で、下記のポリマーのブレンド物を各種の比率で混合する。それらのブレンド物を、約375゜Fのフラットな温度プロファイルで圧縮成形して、ショアーA硬度、ヤング率(E)、100%弾性率伸び(E−100%)、伸び(ε)、引張強度、および引裂強度の試験のためのプラックとする。ショアーA硬度は約50〜約85の範囲で、軟質でフレキシブルな材料であることを示している。
【0057】
2種のサンプルを選択し、押出加工して、電子ビーム処理前後でのポンプ寿命を評価するための、0.385インチ(OD)×0.255インチ(ID)のチューブとする。チューブの寸法と温度ウィンドウに関してはまったく問題がないので、加工性は良好である。ポンプ寿命は、EZロードIIポンプヘッドを使用し、600RPMで試験する。結果は表9に見ることができる。
【0058】
【表9】
【0059】
表9に見られるように、チューブを照射すると、いずれのブレンド物でもポンプ寿命が長くなる。
【0060】
上述の一般的な記述または実施例における動作のすべてが必要とされるのではなく、また特定の動作の一部が必要とされない可能性もあり、また記述された動作に加えて一つまたは複数のさらなる動作が実施されてもよいということに注意されたい。さらに、列記されている動作の順序が、必ずしもそれらを実施する順序である必要もない。
【0061】
上述の明細書において、特定の実施態様に関連してコンセプトを記述してきた。しかしながら、当業熟練者の理解するところであるが、添付の特許請求項において記述される本発明の範囲から外れることなく、各種の修正および変更を加えることができる。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味とみなされるべきであって、そのような修正はすべて、本発明の範囲の中に含まれると考えるべきである。
【0062】
本明細書で使用するとき、「含む(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(has、having)」、またはそれらのその他の変化形は、非排他的な包含をカバーするものと考えるべきである。たとえば、一連の特徴を含むプロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの特徴だけに限定される訳ではなく、そのようなプロセス、方法、物品または装置に対して明示的にリストされたり固有であったりするのではない、他の特徴を含んでいてもよい。さらに、そうではないと明確に記述されていない限りにおいては、「または(or)」という用語は、「包括的なor(inclusive−or)」を指しているのであって、「排他的なor(exclusive−or)」を指しているのではない。たとえば、「条件AまたはB」ということは、以下のいずれかが満足されている:『Aが真(または、存在する)で、かつBが偽(または、存在しない)』、『Aが偽(または、存在しない)で、かつBが真(または、存在する)』、ならびに、『AおよびBが共に真(または、存在する)』。
【0063】
さらに、不定冠詞の「a」または「an」の使用は、本明細書に記述された、要素(element)および構成要素(component)を記述するためである。これは、単に利便性のためだけであって、本発明の範囲の一般的な感覚を与えるためである。この記述は、一つまたは少なくとも一つを含むと読むべきであって、そういう意味ではないことが明白でない限りにおいて、単数が複数も包含している。
【0064】
利益(benefit)、その他の利点(advantage)および問題の解決法を、特定の実施態様に関連させて、ここまで記述してきた。しかしながら、それらの利益、利点、問題の解決法、ならびに将来起きるかまたはより顕著となるような各種の利益、利点、解決法の原因となりうる各種の特徴が、特許請求項のいずれかまたは全部の、決定的であるか必要とされるかまたは必須である、特徴であると受け取ってはならない。
【0065】
本明細書を読めば、明確を期する目的で、ある種の個別の実施態様の文脈において本明細書に記載されたある種の特徴が、単一の実施態様の中に組み合わせた形で提供されてもよいということは、当業者ならば理解するである。逆に、簡略化のために、単一の実施態様の文脈において記載された各種の特徴が、個別にか、または各種の二次的な組合せで提供されてもよい。さらに、範囲の形で表現された数値を参照する場合には、その範囲内の個別またはすべての数値が含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルチューブ材料であって、a)スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの組合せを含む、第一のエラストマー性ポリマー;およびb)ポリオレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、またはそれらの組合せを含む第二のエラストマー性ポリマー(ただし、前記第一のエラストマー性ポリマーと前記第二のエラストマー性ポリマーとは異なっている)の放射線架橋されたブレンド物を含む、フレキシブルチューブ材料。
【請求項2】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEEBS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEEPS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン(SIBS)、またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項3】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、少なくとも1個の遊離のオレフィン性二重結合を含む、請求項2に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項4】
前記ポリオレフィンエラストマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンとプロピレンとのコポリマー、エチレンとアルファ−オレフィンとのコポリマー、エチレンと極性ビニルモノマーとのコポリマー、エチレンと無水マレイン酸とアクリレートとのターポリマー、エチレンとアクリル酸とのアイオノマー、エチレンとメタクリル酸とのアイオノマー、またはそれらの組合せを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項5】
前記ポリオレフィンエラストマーが、約200MPaよりも低い曲げ弾性率を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項6】
前記ジエンエラストマーが、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項7】
前記ブレンド物の全重量の約1.0重量%未満で存在している潤滑剤を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項8】
前記潤滑剤が、前記ブレンド物の全重量の約0.1重量%未満で存在している、請求項7に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項9】
前記ブレンド物の全重量の約0重量%〜約70.0重量%で存在している鉱油をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項10】
照射増感剤、架橋促進剤、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項11】
前記照射増感剤が、前記ブレンド物の全重量の約0.5重量%〜約3.0重量%で存在している、請求項10に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項12】
前記架橋促進剤が、前記ブレンド物の全重量の約5.0重量%を超える量で存在している、請求項10に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項13】
前記放射線架橋されたブレンド物が、約40〜約90のショアーA硬度計を有している、請求項1〜12のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項14】
放射線架橋が、ガンマ線照射、電子ビーム照射、またはそれらの組合せを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項15】
前記放射線架橋されたブレンド物が、少なくとも約121℃の蒸気滅菌温度に対する耐熱性を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項16】
前記放射線架橋されたブレンド物が、少なくとも約135℃の蒸気滅菌温度に対する耐熱性を有する、請求項15に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項17】
前記放射線架橋されたブレンド物が、単層チューブまたは多層チューブに成形される、請求項1〜16のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項18】
実質的に透明性を有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項19】
前記放射線架橋されたブレンド物が、標準ヘッドを使用し、600RPMで測定して、約50時間を超えるポンプ寿命を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項20】
前記放射線架橋されたブレンド物が、約100ppm未満の全有機物含量(TOC)を有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項21】
材料を作成する方法であって、
スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの組合せを含む、第一のエラストマー性ポリマーを備える工程;
ポリオレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、またはそれらの組合せを含む第二のエラストマー性ポリマーを備える工程(ただし、前記第一のエラストマー性ポリマーと前記第二のエラストマー性ポリマーとは異なっている);
前記第一のエラストマー性ポリマーと前記第二のエラストマー性ポリマーとをブレンドする工程;前記ブレンド物を、押出成形または射出成形する工程;および前記ブレンド物を、照射線を用いて架橋させる工程;
を含む方法。
【請求項22】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEEBS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEEPS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン(SIBS)、またはそれらの組合せを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、少なくとも1個の遊離のオレフィン性二重結合を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリオレフィンエラストマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンとプロピレンとのコポリマー、エチレンとアルファ−オレフィンとのコポリマー、エチレンとプロピレンとジエンモノマーとのターポリマー、エチレンと極性ビニルモノマーとのコポリマー、エチレンと無水マレイン酸とアクリレートとのターポリマー、エチレンとアクリル酸とのアイオノマー、エチレンとメタクリル酸とのアイオノマー、またはそれらの組合せを含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリオレフィンエラストマーが、約200MPaよりも低い曲げ弾性率を有する、請求項21〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ジエンエラストマーが、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)である、請求項21〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ブレンド物が、前記ブレンド物の全重量の約1.0重量%未満の潤滑剤をさらに含む、請求項21〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記潤滑剤が、前記ブレンド物の全重量の約0.1重量%未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ブレンド物の全重量の約0重量%〜約70.0重量%で存在している鉱油をさらに含む、請求項21〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
照射増感剤、架橋促進剤、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項21〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記照射増感剤が、前記ブレンド物の全重量の約0.5重量%〜約3.0重量%で存在している、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記架橋促進剤が、前記ブレンド物の全重量の約5.0重量%を超える量で存在している、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ブレンド物を押出成形または射出成形する工程に、前記ブレンド物を押出成形または射出成形して、単層チューブまたは多層チューブとすることを含む、請求項21〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記ブレンド物の架橋が、ガンマ線照射、電子ビーム照射、またはそれらの組合せによる、請求項21〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記照射−架橋させたブレンド物を滅菌する工程をさらに含む、請求項21〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記照射−架橋させたブレンド物が、少なくとも約121℃の温度で蒸気滅菌により滅菌される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記照射−架橋させたブレンド物が、少なくとも約135℃の温度で蒸気滅菌により滅菌される、請求項36に記載の方法。
【請求項1】
フレキシブルチューブ材料であって、a)スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの組合せを含む、第一のエラストマー性ポリマー;およびb)ポリオレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、またはそれらの組合せを含む第二のエラストマー性ポリマー(ただし、前記第一のエラストマー性ポリマーと前記第二のエラストマー性ポリマーとは異なっている)の放射線架橋されたブレンド物を含む、フレキシブルチューブ材料。
【請求項2】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEEBS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEEPS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン(SIBS)、またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項3】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、少なくとも1個の遊離のオレフィン性二重結合を含む、請求項2に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項4】
前記ポリオレフィンエラストマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンとプロピレンとのコポリマー、エチレンとアルファ−オレフィンとのコポリマー、エチレンと極性ビニルモノマーとのコポリマー、エチレンと無水マレイン酸とアクリレートとのターポリマー、エチレンとアクリル酸とのアイオノマー、エチレンとメタクリル酸とのアイオノマー、またはそれらの組合せを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項5】
前記ポリオレフィンエラストマーが、約200MPaよりも低い曲げ弾性率を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項6】
前記ジエンエラストマーが、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項7】
前記ブレンド物の全重量の約1.0重量%未満で存在している潤滑剤を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項8】
前記潤滑剤が、前記ブレンド物の全重量の約0.1重量%未満で存在している、請求項7に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項9】
前記ブレンド物の全重量の約0重量%〜約70.0重量%で存在している鉱油をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項10】
照射増感剤、架橋促進剤、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項11】
前記照射増感剤が、前記ブレンド物の全重量の約0.5重量%〜約3.0重量%で存在している、請求項10に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項12】
前記架橋促進剤が、前記ブレンド物の全重量の約5.0重量%を超える量で存在している、請求項10に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項13】
前記放射線架橋されたブレンド物が、約40〜約90のショアーA硬度計を有している、請求項1〜12のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項14】
放射線架橋が、ガンマ線照射、電子ビーム照射、またはそれらの組合せを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項15】
前記放射線架橋されたブレンド物が、少なくとも約121℃の蒸気滅菌温度に対する耐熱性を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項16】
前記放射線架橋されたブレンド物が、少なくとも約135℃の蒸気滅菌温度に対する耐熱性を有する、請求項15に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項17】
前記放射線架橋されたブレンド物が、単層チューブまたは多層チューブに成形される、請求項1〜16のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項18】
実質的に透明性を有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項19】
前記放射線架橋されたブレンド物が、標準ヘッドを使用し、600RPMで測定して、約50時間を超えるポンプ寿命を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項20】
前記放射線架橋されたブレンド物が、約100ppm未満の全有機物含量(TOC)を有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載のフレキシブルチューブ材料。
【請求項21】
材料を作成する方法であって、
スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの組合せを含む、第一のエラストマー性ポリマーを備える工程;
ポリオレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、またはそれらの組合せを含む第二のエラストマー性ポリマーを備える工程(ただし、前記第一のエラストマー性ポリマーと前記第二のエラストマー性ポリマーとは異なっている);
前記第一のエラストマー性ポリマーと前記第二のエラストマー性ポリマーとをブレンドする工程;前記ブレンド物を、押出成形または射出成形する工程;および前記ブレンド物を、照射線を用いて架橋させる工程;
を含む方法。
【請求項22】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEEBS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEEPS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン(SIBS)、またはそれらの組合せを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、少なくとも1個の遊離のオレフィン性二重結合を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリオレフィンエラストマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンとプロピレンとのコポリマー、エチレンとアルファ−オレフィンとのコポリマー、エチレンとプロピレンとジエンモノマーとのターポリマー、エチレンと極性ビニルモノマーとのコポリマー、エチレンと無水マレイン酸とアクリレートとのターポリマー、エチレンとアクリル酸とのアイオノマー、エチレンとメタクリル酸とのアイオノマー、またはそれらの組合せを含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリオレフィンエラストマーが、約200MPaよりも低い曲げ弾性率を有する、請求項21〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ジエンエラストマーが、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)である、請求項21〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ブレンド物が、前記ブレンド物の全重量の約1.0重量%未満の潤滑剤をさらに含む、請求項21〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記潤滑剤が、前記ブレンド物の全重量の約0.1重量%未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ブレンド物の全重量の約0重量%〜約70.0重量%で存在している鉱油をさらに含む、請求項21〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
照射増感剤、架橋促進剤、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項21〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記照射増感剤が、前記ブレンド物の全重量の約0.5重量%〜約3.0重量%で存在している、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記架橋促進剤が、前記ブレンド物の全重量の約5.0重量%を超える量で存在している、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ブレンド物を押出成形または射出成形する工程に、前記ブレンド物を押出成形または射出成形して、単層チューブまたは多層チューブとすることを含む、請求項21〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記ブレンド物の架橋が、ガンマ線照射、電子ビーム照射、またはそれらの組合せによる、請求項21〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記照射−架橋させたブレンド物を滅菌する工程をさらに含む、請求項21〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記照射−架橋させたブレンド物が、少なくとも約121℃の温度で蒸気滅菌により滅菌される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記照射−架橋させたブレンド物が、少なくとも約135℃の温度で蒸気滅菌により滅菌される、請求項36に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【公表番号】特表2013−515102(P2013−515102A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544962(P2012−544962)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/062430
【国際公開番号】WO2011/090759
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(500149223)サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション (64)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/062430
【国際公開番号】WO2011/090759
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(500149223)サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション (64)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]