説明

フレキシブルプリント回路基板補強用フィルム、フレキシブルプリント回路基板補強板およびフレキシブルプリント回路基板積層体

【課題】FPC基板の補強用フィルムとして市販の接着シートとの密着性に優れ、はんだリフロー工程において、市販の接着シートを用いてFPC基板と補強板とを貼り合せた場合であっても、接着界面に部分的な剥がれや膨れの生じない、FPC基板補強用フィルム、FPC基板補強板およびFPC基板積層体を提供する。
【解決手段】二軸配向ポリエステルフィルム基材層を有するフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムであって、基材層を構成するポリエステルがポリエチレンナフタレートであり、該基材層の少なくとも片面にオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を含む高分子バインダーを含む塗布層を有しており、かつ230℃で10分間加熱処理したときの該補強用フィルムの熱収縮率がフィルム長手方向および幅方向の両方向において−1%以上4%未満であるフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント回路基板の補強用フィルムとして接着シートとの接着性に優れ、はんだリフロー後も接着性を保つことができるフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム、フレキシブルプリント回路基板補強板およびフレキシブルプリント回路基板積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの電子機器の技術進歩に伴って、フレキシブルプリント回路(以下、FPCと略記することがある)基板の需要が急激に伸びている。FPCを製造する際の加工性において、フィルムの薄膜化に伴い、基板フィルム自体の剛性が低下し、FPCを製造する際の加工性が困難になってきている。このような加工性低下を改良する方法として、基板フィルムとは別にFPC補強用フィルムを補強板として用い、加工性が求められる部位に接着シートを介して補強板をFPC基板と貼りあわせることにより保持し、全体として剛性を持たせる方法が用いられている。
【0003】
従来、かかるFPC補強用フィルムにはポリイミドフィルムを2層以上貼り合わせた積層フィルムが使用されてきた。しかしながら、ポリイミドは素材の性質上、フィルム化や75μm以上の膜厚フィルムの作成が困難であり、また非常に高価なものである。その他、ポリイミドは比較的吸水しやすくFPC などの電子材料として取り扱いにくい特性も有している。一方、耐熱性に優れてはいるが、本用途においては過剰品質である点も否めない。
【0004】
一方、FPC基板フィルムとしてはポリイミド以外の他素材も検討されており、例えば特許文献1では、ポリエチレンナフタレートフィルムを用いたFPC基板用フィルムが提案されており、加工時の補強用フィルムとして用いてもよいことが開示されている。しかしながら特許文献1に開示されているポリエチレンナフタレートフィルムを用いてはんだリフロー処理を行うと、接着シートとの密着性が十分でないことがあり、補強用フィルムの剥がれや、接着界面に膨れが発生したり、FPC基板と補強用フィルムの間のピール強度が低下することがあった。
【0005】
また、特許文献2においてポリエチレンナフタレートよりなるFPC基板の補強板としてポリエチレンナフタレートを用い、その片面に特定の接着剤層を形成することが開示されているが、接着性を高めるために特定の接着剤を使用する必要があった。
【0006】
このように、ポリエチレンナフタレートをフレキシブル回路基板の補強用フィルムとして用いたときに、市販の接着シートを介した方法では、ポリエチレンナフタレート補強フィルムとの密着性は未だ十分ではなく、はんだリフロー工程において部分的に剥がれや膨れが生じるという課題があり、その改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−129699号公報
【特許文献2】特開2007−109952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、FPC基板の補強用フィルムとして市販の接着シートとの密着性に優れ、はんだリフロー工程において、市販の接着シートを用いてFPC基板と補強板とを貼り合せた場合であっても、接着界面に部分的な剥がれや膨れの生じない、FPC基板補強用フィルム、FPC基板補強板およびFPC基板積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、二軸配向ポリエステルフィルム基材層を有する補強用フィルムにおいて、高温での寸法安定性を有するとともに、基材層の少なくとも片面にオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を含む高分子バインダーを含む塗布層を有することにより、市販の接着シートとの密着性が従来よりも向上し、260℃程度のリフロー工程における部分的な剥がれや膨れが生じなくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明によれば、本発明の目的は、二軸配向ポリエステルフィルム基材層を有するフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムであって、基材層を構成するポリエステルがポリエチレンナフタレートであり、該基材層の少なくとも片面にオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を含む高分子バインダーを含む塗布層を有しており、かつ230℃で10分間加熱処理したときの該補強用フィルムの熱収縮率がフィルム長手方向および幅方向の両方向において−1%以上4%未満であるフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムによって達成される。
【0011】
また本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、好ましい態様として、高分子バインダーの含有量が該塗布層の重量を基準として10重量%以上80重量%以下であること、オキサゾリン基を有するアクリル樹脂の含有量が高分子バインダー重量を基準として3重量%以上90重量%以下であること、高分子バインダーとしてさらにポリエステル樹脂を含むこと、150〜200℃における温度膨張係数(αt)が8×10−6/℃以上30×10−6/℃以下であること、の少なくとも1つを具備するものも包含する。
【0012】
本発明はまた、本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムを用いたフレキシブルプリント回路基板補強板に関するものである。
さらに本発明は、フレキシブルプリント回路基板に接着シートを介して本発明のフレキシブルプリント回路基板補強板が貼りあわされたフレキシブルプリント回路基板積層体に関するものであり、その好ましい態様として接着シートがエポキシ系接着シートまたはアクリル系接着シートであること、フレキシブルプリント回路基板のベースフィルムがポリイミドまたはポリエステルであること、のいずれか1つを包含するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、はんだリフロー後の密着性が良好で、部分的な剥がれや膨れがなく生産性に優れており、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
<二軸配向ポリエステルフィルム基材層>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルム基材層を構成するポリエステルは、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとの重縮合によって得られるポリエチレンナフタレートであり、中でもポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。ポリエステルとしてポリエチレンナフタレートを用いることにより、フィルムの耐熱寸法安定性を高めることができる。
【0015】
本発明におけるポリエステルは、ホモポリマーであってもよく、また共重合体、2種以上のポリエステルとの混合体のいずれであってもかまわない。共重合体または混合体における他の成分は、全酸成分を基準として10モル%以下、さらに5モル%以下であることが好ましい。共重合成分としては、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分が挙げられる。
【0016】
ポリエステルは、公知の方法を適用して製造することができる。例えば、ジオールとジカルボン酸および必要に応じて共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。
【0017】
ポリエステルの固有粘度は、o−クロロフェノール中、35℃において、0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40dl/g以上0.80dl/g以下であることがさらに好ましい。固有粘度が0.40dl/g未満ではフィルム製膜時に切断が多発したり、成形加工後の製品の強度が不足することがある。一方固有粘度が0.80dl/gを超える場合は重合時の生産性が低下する。
【0018】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、本質的に上述のポリエステルからなるが、本発明の目的を損なわない範囲で、極少量の添加剤、例えば滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、熱安定剤を含んでいてもよい。これらの添加剤を含む場合、その含有量はフィルムの重量を基準として5重量%以下であることが好ましく、さらに3重量%以下、特に1重量%以下であることが好ましい。
また滑剤として、たとえば炭酸カルシウム、シリカ、タルク、クレー、などの無機粒子、シリコーンや熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる有機粒子、硫酸バリウム、酸化チタン等の顔料といった不活性粒子を単独あるいは2種以上添加しても良い。
【0019】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、公知の方法を用いて二軸延伸された二軸配向フィルムである。基材層が二軸配向フィルムであることにより、補強用フィルムとして十分な機械的特性および耐熱寸法安定性を有する。
【0020】
<塗布層>
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、上述の二軸配向ポリエステルフィルム基材層の少なくとも片面に塗布層を有しており、該塗布層はオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を含む高分子バインダーを含有してなるものである。
【0021】
(高分子バインダー)
接着シートを介してフレキシブルプリント回路基板とフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムとの接着性を高める観点から、塗布層を構成する高分子バインダーとしてオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を含むことが必要である。
【0022】
オキサゾリン基を有するアクリル樹脂として、以下のオキサゾリン基を有するモノマーからなるアクリル樹脂が例示される。
オキサゾリン基を有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。
オキサゾリン基を有するアクリル樹脂を用いることにより、塗布層の凝集力が向上し、塗布層での凝集破壊の発生を防ぐことができる。そのため、接着シートと接着させる際に塗布層面に接着させることにより、接着シートとの密着性が強固なものとなり、同時に補強用フィルムの熱収縮率が一定の範囲にあることにより、はんだリフロー工程を経ても接着シートとの接着界面が剥がれにくく、また膨れの発生を抑制することができ、フレキシブルプリント回路基板補強板として十分に回路基板を補強することができる。
オキサゾリン基を有するモノマー成分は、アクリル樹脂の繰り返し単位を基準として、5モル%以上80モル%以下であることが好ましく、10モル%以上50モル%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
また、アクリル樹脂は共重合成分として、さらにポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーを含有してもよい。かかるポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたものを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖はポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等を挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100であることが好ましい。
塗布層中にさらにポリエステル樹脂を含む場合、ポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を用いることで、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性がポリアルキレンオキシド鎖を含有しないアクリル樹脂に比べて向上する。
アクリル樹脂がポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーを含有する場合、ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位が3より少ないとポリエステル樹脂とアクリル樹脂との相溶性が十分に向上しないことがある。一方、ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位が100より大きいと塗布層の耐湿熱性が下がり、高湿度、高温下で接着シートとの密着性が低下することがある。
【0024】
さらに、アクリル樹脂を構成するその他の共重合成分として、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシル基またはその塩を有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N,N−ジアルコキシアクリルアミド、N,N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエンが挙げられる。
【0025】
また、高分子バインダーとして、該アクリル樹脂に加えて、さらに他の成分を併用することができ、例えばポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂を併用することにより、ポリエステル基材層と塗布層との接着性を高めることができる。
ポリエステル樹脂として、多価塩基酸成分とジオール成分から得られるポリエステルを用いることが好ましい。多価塩基成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂としては、2種以上のジカルボン酸成分を用いた共重合ポリエステルを用いることが好ましい。ポリエステル樹脂には、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分が、或いはp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
ポリエステル樹脂のジオール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを例示することができる。
【0026】
高分子バインダーのポリエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは40〜100℃、更に好ましくは60〜80℃である。この範囲であれば、ポリエステル基材層との優れた接着性に加え、さらに優れた耐傷性を得ることができる。他方、ガラス転移温度が40℃未満であるとフィルム同士でブロッキングが発生しやすくなり、100℃を超えると塗膜が硬く、また脆くなることがある。
【0027】
高分子バインダーの含有量は、塗布層の重量を基準として10重量%以上80重量%以下であることが好ましい。また、高分子バインダーの含有量の下限値は20重量%であることがさらに好ましく、高分子バインダーの含有量の上限値は50重量%であることがさらに好ましい。高分子バインダーの含有量がかかる範囲にあることにより、接着シートとの接着性を強固なものにすることができ、かつ補強用フィルムの熱収縮率が一定の範囲にある場合にはんだリフロー後の界面の剥がれや膨れの発生を抑制することができる。
【0028】
また、オキサゾリン基を有するアクリル樹脂の含有量は、高分子バインダーの重量を基準として3重量%以上90重量%以下であることが好ましい。また該アクリル樹脂の含有量の下限値は15重量%であることがより好ましく、25重量%であることがさらに好ましい。また、該アクリル樹脂の含有量の好ましい上限値は80重量%である。
高分子バインダーに占めるオキサゾリン基を有するアクリル樹脂の割合がかかる範囲にあることにより、塗布層の凝集力が向上して凝集破壊が生じにくくなり、はんだリフロー後の接着界面における剥がれや膨れを抑制することができ、好ましい範囲になるほどその効果が高くなる。一方、該アクリル樹脂が下限に満たない場合、塗布層の凝集力が低下し、接着シートとの接着性が不十分となることがある。また、該アクリル樹脂が上限を超える場合、ポリエステルフィルムと塗布層との密着性が低下することがある。
【0029】
また、高分子バインダーがさらにポリエステル樹脂を含む場合、ポリエステル樹脂の含有量は、高分子バインダーの重量を基準として5重量%以上95重量%以下であることが好ましい。またポリエステル樹脂の含有量の下限値は10重量%であることがより好ましく、20重量%であることがさらに好ましい。またポリエステル樹脂の含有量の上限値は90重量%であることがより好ましく、さらには85重量%であり、75重量%であることが特に好ましい。
【0030】
(微粒子)
本発明の塗布層はフィルムの滑り性を高める目的で微粒子を含有することができる。微粒子の種類は特に制限されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機微粒子、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂等の有機微粒子を挙げることができる。これらのうち、水不溶性の固体物質は、水分散液中で沈降するのを避けるため、比重が3を超えない微粒子を選ぶことが好ましい。
【0031】
微粒子の平均粒子径は40〜120nmの範囲が好ましい。平均粒子径が120nmより大きいと粒子の落脱が発生しやすくなり、40nmよりも小さいと十分な滑性、耐傷性が得られない場合がある。
微粒子の含有量は、塗布層の重量を基準として10重量%未満の範囲が好ましい。10重量%を超えると塗膜の凝集力が低くなり接着性が悪化することがある。また微粒子の含有量の下限は、塗布層の重量を基準として0.1重量%であることが好ましい。
【0032】
(脂肪族ワックス)
塗布層には、ブロッキングを防止する目的で脂肪族ワックスを添加してもよい。かかる目的で脂肪族ワックスを添加する場合、その含有量は塗布層の重量を基準として、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1重量%〜10重量%である。含有量が下限に満たない場合、フィルム表面の滑性が得られず、フィルム同士がブロッキングすることがある。一方、含有量が上限を超えるとポリエステルフィルム基材層および接着シートに対する接着性が不足する場合がある。
脂肪族ワックスの具体例としては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックスを挙げることができる。これらの中でも、接着シートとの接着性と滑り性が良好なことから、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが特に好ましい。これらは環境負荷の低減が可能であることおよび取扱のし易さから水分散体として用いることが好ましい。
【0033】
(その他の成分)
本発明においては塗布層を形成する成分として、上記成分以外に、塗布する場合の濡れ性を改良するために界面活性剤などの濡れ剤を用いてもよい。また、所望に応じてその他の成分を配合することができる。その他の配合剤としては、メラミン樹脂等の他の樹脂、帯電防止剤、着色剤、軟質重合体、フィラー、熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、レベリング剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、天然油、合成油、乳剤、充填剤、硬化剤、難燃剤などが挙げられ、その配合割合は、あくまで本発明の目的を損なわない範囲で選択される。
【0034】
(塗布層の形成方法)
塗布層の形成については、例えば延伸可能なポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗膜を形成する成分を含む水溶液を塗布した後、乾燥、延伸し必要に応じて熱処理することにより積層することができる。塗布層の形成時期について、さらに具体的には、未延伸フィルム、縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、あるいは縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたフィルム(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)のいずれかの時期に塗布液を塗布することが好ましく、その後、さらに縦延伸および/または横延伸させる方法が挙げられる。
【0035】
塗布液の固形分濃度は塗布液の重量を基準として1〜20重量%であることが好ましい。かかる範囲にある場合、塗布斑の発生を抑制しやすい。
塗布方法としては、公知の任意の塗布方が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法およびカーテンコート法などを単独または組み合わせて用いることができる。
【0036】
<熱収縮率>
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、230℃で10分間加熱処理したときの熱収縮率がフィルム長手方向および幅方向の両方向において−1%以上4%未満である。かかる熱収縮率の下限値は、好ましくは−1%、さらに好ましくは−0.5%である。また熱収縮率の上限値は、好ましくは2.5%、より好ましくは2.2%、さらに好ましくは1.1%、特に好ましくは0.6%である。
【0037】
補強用フィルムの熱収縮率が下限に満たない場合あるいは上限を超える場合は、上述の塗布層を有していても、FPC基板との貼り合せに用いる市販の接着シートとの密着性が低下し、はんだリフロー後にその密着性を保つことができず、接着シートと補強板との接着界面に剥がれや膨れが生じ、またピール強度の低下を引き起こす。かかる範囲内でも、補強用フィルムの熱収縮率が好ましい範囲になるほど、さらにFPC基板とのひずみが小さくなり、接着シートとの界面部分の剥がれ面積が小さくなることに加え、FPC積層体としての反りが低減される。
【0038】
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、フィルム長手方向および幅方向の両方向においてかかる熱収縮率特性を有することを要する。一方でも熱収縮率がはずれる場合、はんだリフロー後にその密着性を保つことができず、接着シートと補強板との接着界面に剥がれや膨れ、およびピール強度の低下を引き起こす。
【0039】
かかる熱収縮率は、ポリエステルの種類がポリエチレンナフタンジカルボキシレートであること、後述する延伸条件で二軸延伸を行った後に熱固定処理を施し、かかる熱固定処理温度が(Tm−100℃)以上の温度、好ましくは220℃〜250℃の温度条件で施すこと、その後150℃〜250℃の温度条件で1〜3%の熱弛緩処理を行い、さらにオフライン工程にて150〜250℃で5分以上熱処理(アニール処理)し、50〜80℃で除冷することによって達成される。また、かかる熱処理条件の範囲内で温度を高くするか、または処理時間を長くすることにより、熱収縮率を好ましい範囲にすることができる。
【0040】
<温度膨張係数>
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、150℃から200℃の昇温時における温度膨張係数(αt)が、8×10-6/℃以上30×10-6/℃以下であることが好ましい。該温度膨張係数の下限値は、さらに好ましくは12×10-6/℃、特に好ましくは13×10-6/℃である。また該温度膨張係数の上限値は、さらに好ましくは20×10-6/℃である。
温度膨張係数が、かかる範囲からはずれる場合、補強板として用いた場合、はんだリフロー後に接着シートとの密着性を保つことができず、接着シートと補強板との接着界面に剥がれや膨れを引き起こすことがある。
【0041】
かかる熱膨張係数特性は、9倍〜16倍の面延伸倍率でフィルム二軸延伸を行い、その後、200℃以上260℃の範囲で熱固定処理を施すことにより得られる。また、かかる面延伸倍率を満たす範囲内で、縦方向および横方向の延伸倍率が近いことがさらに好ましい。
【0042】
<フィルム厚み>
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムのフィルム厚みは50μm以上250μm以下であることが好ましい。
【0043】
<フィルム製膜方法>
本発明のフィルムを得る方法を以下に具体的に述べるが、以下の例に特に限定されるものではない。
ポリエステルは、所望に応じて乾燥後、押出機に供給してTダイよりシート状に成形される。
Tダイより押し出されたシート状成形物を表面温度10〜60℃の冷却ドラムで冷却固化し、この未延伸フィルムを例えばロール加熱または赤外線加熱によって加熱した後、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。かかる縦延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸温度はポリエステルのガラス転移点(Tg)より高い温度、更にはTgより20〜40℃高い温度とするのが好ましい。縦延伸倍率は、2.5倍以上4.0倍以下の範囲で行い、さらに2.8倍以上3.9倍以下の範囲で行うことが好ましい。縦延伸倍率が下限に満たない場合、補強板としての強度が十分でないことがある他、フィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られないことがある。また縦延伸倍率が上限を超える場合、本発明の熱収縮率特性が得られず、また製膜中に破断が発生しやすくなる。
【0044】
得られた縦延伸フィルムは、続いて横延伸を行い、その後熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、かかる処理はフィルムを走行させながら行う。
横延伸処理は樹脂のガラス転移点(Tg)より20℃高い温度から始め、樹脂の融点(Tm)より(120〜30)℃低い温度まで昇温しながら行う。かかる横延伸開始温度は、好ましくは(Tg+40)℃以下である。また横延伸最高温度は、好ましくはTmより(100〜40)℃低い温度である。横延伸開始温度が低すぎるとフィルムに破れが生じやすい。また横延伸最高温度が(Tm−120)℃より低いと、得られたフィルムの熱収縮率が大きくなり、また幅方向の物性の均一性が低下しやすい。一方横延伸最高温度が(Tm−30)℃より高いとフィルムが柔らかくなりすぎ、製膜中にフィルムの破れが起こり易い。
横延伸過程の昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが、通常は段階的に昇温する。例えば、ステンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、各ゾーンごとに所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。
【0045】
横延伸倍率は、2.5倍以上4.0倍以下の範囲で行い、さらに2.8倍以上3.9倍以下の範囲で行うことが好ましい。横延伸倍率が下限に満たない場合、補強板としての強度が十分でないことがある他、フィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られないことがある。また横延伸倍率が上限を超える場合、本発明の熱収縮率特性が得られず、また製膜中に破断が発生しやすくなる。
【0046】
二軸延伸されたフィルムは、その後熱固定処理が施される。熱固定処理を施すことにより、得られたフィルムの高温条件下での寸法安定性を高めることができる。熱固定処理は、好ましくは(Tm−100℃)以上、さらに好ましくは(Tm−70)℃〜(Tm−40)℃の範囲で行うことができ、特に220℃〜250℃の範囲で行うことが好ましい。
熱固定処理後、150℃〜250℃の温度条件で1〜3%の熱弛緩処理を行い、さらにオフライン工程にて150〜250℃で熱処理(アニール処理)し、50〜80℃で除冷する。オフライン工程で行うアニール処理は、かかる熱処理条件の範囲内で温度を高くするか、または処理時間を長くすることにより、熱収縮率を好ましい範囲にすることができる。アニール処理時間の上限は特に制限されないが、長時間すぎるとフィルム物性が低下する可能性があるため、高々1時間であることが好ましい。
【0047】
塗布層の形成については、未延伸フィルム、縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、または縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめた状態のフィルム(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)、のいずれかの時期に、上記組成物の水性塗液を塗布し、その後さらに縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに塗布層を施すのが好ましい。
【0048】
塗液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組合せて用いることができる。
【0049】
<接着シート>
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムとフレキシブルプリント回路基板とを貼りあわせるに際し、接着シートを介して貼りあわせることが好ましい。かかる接着シートとして市販の接着シートを用いることができ、例えばエポキシ系接着シートまたはアクリル系接着シートを用いることができる。これら市販の接着シートの具体例として、TFA−880CC35(京セラケミカル株式会社製)、SAFV(ニッカン工業株式会社製)、D3410(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製)が挙げられる。
【0050】
<フレキシブルプリント回路基板積層体>
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムを用いてフレキシブルプリント回路基板補強板に加工し、得られた補強板をフレキシブルプリント回路基板の補強が必要な部位に貼り合せて用いることができる。
【0051】
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムと貼りあわせて用いられるフレキシブルプリント回路基板のベースフィルムとして、ポリイミドまたはポリエステルが例示される。ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。フレキシブルプリント回路基板の厚みは、通常7.5〜250μm程度である。
【0052】
また、本発明のフレキシブルプリント回路基板積層体は、フレキシブルプリント回路基板に接着シートを介して本発明のフレキシブルプリント回路基板補強板を貼り合せた構成を有する。フレキシブルプリント回路基板積層体は、はんだリフロー工程後に接着シートを介した接着界面における剥がれや膨れの発生がなく、ピール強度が高く、補強効果が高いことから、部品搭載部など回路基板だけでは撓みが生じやすい部位や、コネクター接続部などコネクターに取り付ける際に折れ曲がったりしやすい部位といった、より補強性が必要とされる部位に好適に用いることができる。
【0053】
なお、本発明のフレキシブルプリント回路のベースフィルム又は基板に形成される回路パターンについては特に制限はなく、従来から用いられている一般的なものが使用される。本発明のフレキシブルプリント回路基板積層体は、特に補強板の接着性及び接着部の耐熱性に優れることから、車載用の電子機器等の高温環境下で使用される電子機器の電気回路に有用である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
【0055】
(1)熱収縮率
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに230℃のオーブンで10分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム連続製膜方向(MD方向)と、製膜方向に垂直な方向(TD方向)において、下記式にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)
={(熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離}×100
【0056】
(2)温度膨張係数 αt
セイコーインスツレメント社製TMA/SS 120Cにフィルムを試料幅3mm、チャック間15.05mmとしてセットし、荷重80g/mmの条件で、30℃から200℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した。得られた温度寸法変化曲線において、150〜200℃の傾きより温度膨張係数を求めた。
【0057】
(3)はんだリフローテスト
はんだリフローは、ピーク温度260℃で10秒間のリフロー処理を行い、処理後の外観評価およびピール強度についてそれぞれ評価した。なお評価にあたり、以下の方法で作成された二軸配向ポリエステルフィルム/市販の補強用フィルム接着用接着シート/ポリイミドフィルムを基材とした片面銅張積層板からなるフレキシブルプリント回路基板積層体を用いた。
【0058】
<フレキシブルプリント回路基板積層体の作成方法>
作成した二軸配向ポリエステルフィルムの上に、市販の補強用フィルム接着用接着シート(SAFV(商品名):ニッカン工業株式会社製)、さらに接着シートの上にポリイミドフィルムを基材とした片面銅張積層板(F―30VC1(商品名):ニッカン工業株式会社製)をポリイミドフィルム側が接着シートに面するようにしてのせた。この積層体に温度100℃、圧力3MPaで5分間プレスした後、さらに温度を上げ160℃、圧力3MPaで5分間プレスし、そのまま60分間の熱処理を施した。その後室温まで冷却し取り出した。
【0059】
[外観評価]
(気泡、膨れ)
リフロー処理後のフレキシブルプリント回路基板積層体について、接着シートと補強板との界面に気泡や膨れの発生があるか補強板側から観察し、測定範囲5cm×5cm四方における気泡、膨れの発生面積を測り、その比率を算出した。
気泡、膨れ発生分部比率=(気泡、膨れ発生分部面積/サンプルの面積)×100
【0060】
(基材の反り)
リフロー処理後のフレキシブルプリント回路基板積層体サンプルを水平な試験台に置き、四隅の高さを測り、最も高い部分の高さを値とした。補強用フィルム側に反ったものはプラス、銅張積層板側に反ったものはマイナスとした。
【0061】
[ピール強度]
JIS C 5016に準拠して、銅張り積層板側からのピール強度について、常温下、引き剥がし方向90°で評価した。
【0062】
<塗布層中の樹脂組成と各成分の配合比>
実施例と比較例で用いた塗布層の組成と配合は、表1の通りである。ここで塗布層を構成する各成分は以下の物を用いた。
【0063】
(アクリル): メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されているアクリル樹脂(Tg=50℃)を用いた。なお、アクリル樹脂は次の方法で製造されたものであり、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じている。すなわち、四つ口フラスコに、イオン交換水302部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が25%のアクリルの水分散体を得た。
【0064】
(ポリエステル): 酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸63モル%/イソフタル酸32モル%/5− ナトリウムスルホイソフタル酸5モル% 、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されているポリエステル(Tg=76℃、平均分子量12000)を用いた。なお、ポリエステルは次の方法で製造したものであり、特開平06−116487 号公報の実施例1に記載の方法に準じている。すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル42部、イソフタル酸ジメチル17部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール33部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃ にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。
【0065】
(微粒子): シリカの無機粒子(平均粒径:100nm)を用いた。
【0066】
(添加剤): カルナバワックス(中京油脂株式会社製、商品名「セロゾール524」)を用いた。
【0067】
(濡れ剤): ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製、商品名「ナロアクティーN−70」)を用いた。
【0068】
[実施例1、4〜7および比較例1]
ポリエチレンナフタレート樹脂(固有粘度0.6dl/g(o−クロロフェノール中、35℃))に、基材層の重量を基準として平均粒径0.3 μmの球状シリカ粒子を0. 1重量%添加し、290℃に加熱された押出機に供給し、290℃のダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度60℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを140℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に3.0倍で延伸し、60℃のロール群で冷却した後、その片面に表1に記載の塗布層用組成物からなる固形分濃度3%の水性塗液をロールコーターで均一に塗布した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き150℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.1倍で延伸した。その後テンタ−内で250℃の熱固定を行い、240℃で2%の弛緩後、均一に除冷して、室温まで冷やして175μm二軸延伸フィルムを得た。さらにそのロールをIRヒーターを用いて220度で1分間熱アニール処理を行った後、50度の温度雰囲気下で除冷した。
【0069】
[実施例2]
IRヒーターでのアニール処理を実施しなかった以外は実施例1と同様の方法にて作成した。
【0070】
[実施例3]
長手方向(縦方向)に3.1倍で延伸し、長手に垂直な方向(横方向)に3.1倍で延伸し、その後テンタ−内で250℃の熱固定を行った以外は実施例1と同様の方法にて作成した。
【0071】
[比較例2]
長手方向(縦方向)に3.3倍で延伸し、長手に垂直な方向(横方向)に3.2倍で延伸し、その後テンタ−内で230℃の熱固定を行った以外は実施例1と同様の方法にて作成した。
【0072】
[比較例3]
縦方向への延伸後に塗布層を設けなかった以外は実施例1と同様の方法にて作成した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、はんだリフロー後の密着性が良好で、部分的な剥がれや膨れがなく生産性に優れており、その工業的価値は極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸配向ポリエステルフィルム基材層を有するフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムであって、基材層を構成するポリエステルがポリエチレンナフタレートであり、該基材層の少なくとも片面にオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を含む高分子バインダーを含む塗布層を有しており、かつ230℃で10分間加熱処理したときの該補強用フィルムの熱収縮率がフィルム長手方向および幅方向の両方向において−1%以上4%未満であることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。
【請求項2】
高分子バインダーの含有量が該塗布層の重量を基準として10重量%以上80重量%以下である請求項1に記載のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。
【請求項3】
オキサゾリン基を有するアクリル樹脂の含有量が高分子バインダー重量を基準として3重量%以上90重量%以下である請求項1または2に記載のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。
【請求項4】
高分子バインダーとしてさらにポリエステル樹脂を含む請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。
【請求項5】
150〜200℃における温度膨張係数(αt)が8×10−6/℃以上30×10−6/℃以下である請求項1〜4のいずれかに記載のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムを用いたフレキシブルプリント回路基板補強板。
【請求項7】
フレキシブルプリント回路基板に接着シートを介して請求項6に記載のフレキシブルプリント回路基板補強板が貼りあわされたフレキシブルプリント回路基板積層体。
【請求項8】
接着シートがエポキシ系接着シートまたはアクリル系接着シートである請求項7に記載のフレキシブルプリント回路基板積層体。
【請求項9】
フレキシブルプリント回路基板のベースフィルムがポリイミドまたはポリエステルである請求項7または8に記載のフレキシブルプリント回路基板積層体。