説明

フレキシブルプリント配線板の製造方法

【課題】層間導通させてなるフレキシブルプリント配線板の製造方法において、製造効率の高効率化と製造コストの低コスト化とを図ることができると共に、薄肉化が可能なフレキシブルプリント配線板の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】両面導電積層板を準備する工程、両面導電積層板の一面側と他面側にマスクパターン3を被覆する工程、両面導電積層板の一面側と他面側との対向する位置に導電層2の一部を除去して凹所2−aを形成する工程、凹所2−aの位置に露出される基材層1をレーザー加工を用いて除去し両面導電積層板にスルーホールを形成する工程、スルーホールの一面側若しくは他面側の何れか一方の開口部を遮蔽させた状態で、スルーホールの内面及びスルーホールの一面側若しくは他面側の残る他方の開口部の周縁部にめっき層を形成するめっき層形成工程を備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数層に形成される導電層を電気的に接続(層間導通)させてなるフレキシブルプリント配線板の製造方法において、製造効率の高効率化と製造コストの低コスト化とを実現することができると共に、フレキシブルプリント配線板の薄肉化を実現することができるフレキシブルプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリイミド等からなる基材層の一面側及び他面側に備える導電層を、例えばブラインドビアホールを介して層間導通させてなるフレキシブルプリント配線板の製造方法においては、両面導電積層板を準備する工程と、エッチング等を用いて一面側若しくは他面側の何れか片側の導電層に凹所を形成する工程と、レーザー加工等を用いて凹所に露出される基材層を除去することでブラインドビアホールを形成する工程と、ブラインドビアホール内に残る残渣(以下、スミアとする。)を除去する工程と(以下、デスミア工程とする。)、ブラインドビアホールの内面及び開口部の周縁部にめっき層を形成する工程とを少なくとも備えるものが一般的であった。
このようなフレキシブルプリント配線板の製造方法を示す従来技術として、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−50397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、プリント配線板の製造方法に関する発明で、廃液処理が容易であり、且つスミアの除去効果が充分に得られるメリットがある。
しかし、このような複数層に形成される導電層を層間導通させてなる従来のフレキシブルプリント配線板の製造方法においては、デスミア工程を備えるものが一般的であることから、加工時間及び加工コストがかかるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、複数層に形成される導電層を層間導通させてなるフレキシブルプリント配線板の製造方法において、製造効率の高効率化と製造コストの低コスト化とを実現することができると共に、フレキシブルプリント配線板の薄肉化を実現することができるフレキシブルプリント配線板の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、基材層の一面側及び他面側に導電層を積層してなる両面導電積層板を準備する両面導電積層板準備工程と、前記両面導電積層板の一面側と他面側とにマスクパターンを被覆するマスクパターン被覆工程と、前記マスクパターンを用いて前記両面導電積層板の一面側と他面側との対向する位置にそれぞれ前記導電層の一部を除去してなる凹所を形成する凹所形成工程と、該凹所形成工程により前記凹所の位置に露出される前記基材層をレーザー加工を用いて除去することで、前記両面導電積層板にスルーホールを形成するスルーホール形成工程と、該スルーホール形成工程で形成されるスルーホールの一面側若しくは他面側の何れか一方の開口部を遮蔽させた状態で、前記スルーホールの内面及び前記スルーホールの一面側若しくは他面側の残る他方の開口部の周縁部にめっき層を形成するめっき層形成工程とを備えることを第1の特徴としている。
【0007】
上記本発明の第1の特徴によれば、フレキシブルプリント配線板の製造方法は、基材層の一面側及び他面側に導電層を積層してなる両面導電積層板を準備する両面導電積層板準備工程と、前記両面導電積層板の一面側と他面側とにマスクパターンを被覆するマスクパターン被覆工程と、前記マスクパターンを用いて前記両面導電積層板の一面側と他面側との対向する位置にそれぞれ前記導電層の一部を除去してなる凹所を形成する凹所形成工程と、該凹所形成工程により前記凹所の位置に露出される前記基材層をレーザー加工を用いて除去することで、前記両面導電積層板にスルーホールを形成するスルーホール形成工程と、該スルーホール形成工程で形成されるスルーホールの一面側若しくは他面側の何れか一方の開口部を遮蔽させた状態で、前記スルーホールの内面及び前記スルーホールの一面側若しくは他面側の残る他方の開口部の周縁部にめっき層を形成するめっき層形成工程とを備えることから、レーザー加工を行う際、基材層だけにレーザーを照射させることができることで、基材層の除去を迅速且つ効率的に行うことができる。従って製造効率の高効率化を実現することができる。
また貫通孔たるスルーホールを形成する構成とすることで、デスミア工程を省略若しくは簡略化させることができ、製造効率の高効率化と製造コストの低コスト化とを実現することができる。
まためっき層形成工程において、スルーホールの開口部の周縁部に形成するめっき層を、両面導電積層板の片側のみに形成することができる。よってフレキシブルプリント配線板の薄肉化を実現することができる。
【0008】
また本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記凹所形成工程において、前記両面導電積層板の他面側に前記マスクパターンを用いて形成する前記凹所の大きさを、前記両面導電積層板の一面側に前記マスクパターンを用いて形成する前記凹所の大きさに含まれる大きさとすることを第2の特徴としている。
【0009】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記凹所形成工程において、前記両面導電積層板の他面側に前記マスクパターンを用いて形成する前記凹所の大きさを、前記両面導電積層板の一面側に前記マスクパターンを用いて形成する前記凹所の大きさに含まれる大きさとすることから、スルーホール形成工程において、一段と確実に所望の大きさのスルーホールを形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法によれば、複数層に形成される導電層を層間導通させてなるフレキシブルプリント配線板の製造方法において、製造効率の高効率化と製造コストの低コスト化とを実現することができると共に、フレキシブルプリント配線板の薄肉化を実現することができる。
またスルーホール形成工程において、一段と確実に所望の大きさのスルーホールを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を簡略化して示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を簡略化して示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法の変形例を簡略化して示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法の変形例を簡略化して示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法の変形例に対する比較例を簡略化して示す断面図である。
【図6】従来のフレキシブルプリント配線板の製造方法を簡略化して示す断面図である。
【図7】従来のフレキシブルプリント配線板の製造方法を簡略化して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
【0013】
まず図1、図2を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明する。
【0014】
本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、基材層の一面側及び他面側の両面に備える導電層を、めっき層を介して電気的に接続させてなる、いわゆる両面フレキシブルプリント配線板の製造方法である。
【0015】
まず図1(a)を参照して、両面導電積層板準備工程Cにより、基材層1の一面側及び他面側に導電層2を積層してなる両面導電積層板を準備する。
なお、ここで及び以下の説明において、本実施形態における「一面側、他面側」とは、基材層1の上面側を一面側、基材層1の下面側を他面側とするものとする。
前記基材層1は、後述するフレキシブルプリント配線板100の基台となるものであり、絶縁性の樹脂フィルムで形成されている。
樹脂フィルムとしては、柔軟性に優れた樹脂材料からなるものが使用される。例えばポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等、フレキシブルプリント配線板の基材層を形成する樹脂フィルムとして通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
また特に、柔軟性に加えて高い耐熱性をも有しているものが望ましい。例えばポリアミド系の樹脂フィルムや、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系の樹脂フィルムや、ポリエチレンナフタレートを好適に用いることができる。
また耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等、フレキシブルプリント配線板を形成する耐熱性樹脂として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
なお基材層1の厚みは、10μm〜50μm程度とすることが望ましい。
【0016】
前記導電層2は、基材層1上に積層され、フレキシブルプリント配線板100の配線回路や電極等を構成する層である。
この導電層2は、基材層1上に導電性金属箔をめっきを用いて積層すること等で形成することができる。
また導電性金属箔としては、銅(Cu)を用いることができる。勿論、銅(Cu)に限るものではなく、プリント配線板の導電層を形成する導電性金属箔として通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。
なお導電層2の厚みは、9μm〜35μm程度とすることが望ましい。
【0017】
次に図1(b)を参照して、マスクパターン被覆工程Dにより、両面導電積層板の一面側と他面側とにマスクパターン3を被覆する。この際、図1(b)に示すように、後述する凹所2−aを導電層2に形成するための開口部3−aが、両面導電積層板の一面側と他面側との対向する位置にそれぞれ形成されるようにマスクパターン3を被覆する。
このマスクパターン3は、導電層2上にスクリーン印刷等を用いて形成することができる。
また詳しくは図示していないが、両面導電積層板の一面側と他面側との対向する位置にそれぞれ形成される開口部3−aは、その大きさを同一の大きさに形成してある。
【0018】
次に図1(c)を参照して、凹所形成工程Eにより、図1(b)に示す開口部3−aを備えるマスクパターン3を用いて、両面導電積層板の一面側と他面側との対向する位置にそれぞれ導電層2の一部を除去してなる凹所2−aを形成する。
この凹所2−aは、開口部3−aに露出される導電層2をエッチングすることで形成することができる。
【0019】
次に図1(d)、図2(a)を参照して、スルーホール形成工程Fにより、凹所形成工程Eにより凹所2−aの位置に露出される基材層1を、レーザー加工手段4を用いて除去することで、両面導電積層板に貫通ビアたるスルーホールTを形成する。
【0020】
次に図2(b)、図2(c)を参照して、めっき層形成工程Gにより、スルーホール形成工程で形成されるスルーホールTの一面側若しくは他面側の何れか一方の開口部を遮蔽させた状態で、スルーホールTの内面及びスルーホールTの一面側若しくは他面側の残る他方の開口部の周縁部にめっき層6を形成する。
より具体的には、まず図2(b)を参照して、スルーホールTが形成された2枚の両面導電積層板の間に遮蔽板5を介在させることで、遮蔽板5の上側においてはスルーホールTの他面側の開口部を遮蔽させ、且つ遮蔽板5の下側においてはスルーホールTの一面側の開口部を遮蔽させる。そしてこの状態で図2(c)に示すように、遮蔽板5の上側においてはスルーホールTの内面及び一面側の開口部の周辺部にめっき層6を形成する。これと同時に、遮蔽板5の下側においてはスルーホールTの内面及び他面面側の開口部の周辺部にめっき層6を形成する。
なお詳しくは図示していないが、めっき層6は、無電解めっき等で導電化処理を行った後、銅による電解めっきを行うことで形成することができる。
まためっき層6の厚みは5μm〜25μm程度とすることが望ましい。
また遮蔽板5としては、例えば塩化ビニル板を用いることができる。
【0021】
次に図2(d)を参照して、絶縁層形成工程Hにより、遮蔽板5を取り除き2枚の両面導電積層板を分離させた後、2枚の両面導電積層板の一面側及び他面側のそれぞれの表面に絶縁性樹脂からなるカバーレイ等を被覆することで絶縁層7を形成する。
なお絶縁性樹脂としては、ポリイミドフィルム等、フレキシブルプリント配線板における絶縁層を形成する絶縁性樹脂として通常用いられるものであれば、その材質、性状等は如何なるものを用いてもよい。
また絶縁層7の厚みは15μm〜80μm程度とすることが望ましい。
以上の工程を経ることで、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板100が製造される。
【0022】
このような構成からなる本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板100の製造方法は、以下の効果を奏する。
まずスルーホール形成工程Fにおいて、凹所2−aに露出される基材層1にレーザーを照射する際、図1(d)に示すように、基材層1において、レーザーが照射される面とは反対側の面に導電層2が積層された状態となることがない。よって凹所2−a部分においては、基材層1だけにレーザーを照射させることができ、少ないショット数でも基材層1を除去することができる。よって基材層1の除去を迅速且つ効率的に行うことができる。従って製造効率の高効率化を実現することができる。
また貫通ビアたるスルーホールTを形成する構成とすることで、ビア内にスミアが残ることを防止することができる。よってデスミア工程を省略若しくは簡略化させる(本実施形態においては、デスミア工程を設けない構成としてある。)ことができ、製造効率の高効率化と製造コストの低コスト化とを実現することができる。
まためっき層形成工程Gにおいて、スルーホールTの一面側若しくは他面側の何れか一方の開口部を遮蔽させた状態で、スルーホールTの内面及びスルーホールTの一面側若しくは他面側の残る他方の開口部の周縁部にめっき層6を形成する構成とすることで、図2(c)に示すように、スルーホールTの開口部の周縁部に形成するめっき層6を、両面導電積層板の片側のみに形成することができる。つまり両面導電積層板の表面からめっき層6が出っ張る部分を、両面導電積層板の片側のみに抑えることができる。よってフレキシブルプリント配線板100の薄肉化を実現することができる。
また遮蔽板5を介して2枚の両面導電積層板に同時にめっき層6を形成する構成とすることで、めっき工程の効率化を実現することができると共に、遮蔽板5は繰り返し使用が可能であることから、一段と製造効率の高効率化と製造コストの低コスト化とを実現することができる。
【0023】
これに対して、図6、図7に示す基材層10の一面側及び他面側の両面に備える導電層20を、めっき層60を介して電気的に接続させてなる、いわゆる両面フレキシブルプリント配線板の従来の製造方法は、例えば以下の工程を備えるものであった。
なお従来の製造方法において、既述した本発明の実施形態におけるフレキシブルプリント配線板100の製造方法と、同一の部材には十の位に同一の番号を付すと共に、同一の工程には同一のアルファベットを付すことで以下の詳細な説明は省略するものとする。
【0024】
まず、図6(a)を参照して、両面導電積層板準備工程Cにおいて、両面導電積層板を準備する。この際、2枚の両面導電積層板をウレタン樹脂等からなる熱発泡材80の上面側と下面側との両面に貼り付ける。
なお以下の工程は、熱発泡材80の上面側と下面側との両面に貼りつけてある両面導電積層板において同一の工程となることから、以下の説明においては熱発泡材80の上面側に貼り付けてある両面導電積層板についての説明のみを行うこととする。
次に図6(b)を参照して、マスクパターン被覆工程Dにより、両面導電積層板の一面側に開口部30−aが形成されるようにマスクパターン30を被覆する。
次に図6(c)を参照して、凹所形成工程Eにより、開口部30−aを備えるマスクパターン30を用いて、両面導電積層板の一面側の導電層20の一部を除去してなる凹所20−aを形成する。
次に図6(d)を参照して、ブラインドビアホール形成工程Iにより、凹所20―aに露出される基材層10を、レーザー加工手段40を用いて除去することで、両面導電積層板にブラインドビアホールBを形成する。
次に図6(d)、図7(a)を参照して、デスミア工程Jにより、薬液によるウェット法やプラズマ等によるドライ法等の公知の方法を用いてブラインドビアホールB内に残るスミアSを除去する。
次に図7(b)を参照して、めっき層形成工程Gにより、ブラインドビアホールBの内面及びブラインドビアホールBの開口部の周縁部にめっき層60を形成する。
次に図7(c)を参照して、絶縁層形成工程Hにより、熱発泡材80を取り除き2枚の両面導電積層板を分離させた後、2枚の両面導電積層板の導電層20及びめっき層60の表面に、それぞれ絶縁性樹脂からなるカバーレイ等を被覆することで、絶縁層70を形成する。
以上の工程により、従来のフレキシブルプリント配線板300が製造される。
【0025】
このような構成からなる従来のフレキシブルプリント配線板300の製造方法においては、ブラインドビアホールBの開口部の周縁部に形成するめっき層60を、両面導電積層板の片側のみに形成することができる。つまり両面導電積層板の表面からめっき層60が出っ張る部分を、両面導電積層板の片側のみに抑えることができ、フレキシブルプリント配線板300の薄肉化を実現することができるというメリットがある。また熱発泡材80を介して2枚の両面導電積層板を貼り付けて、2枚の両面導電積層板を同時に加工する構成とすることで、製造効率の効率化を図ることができるというメリットがある。
しかし、図6(d)に示すように、ブラインドビアホール形成工程Iにおいて、レーザー加工を行う際、基材層10において、レーザーが照射される面とは反対側の面に導電層20が積層された状態となる。
よって基材層10だけにレーザーを照射させることができないことから、少ないショット数では基材層10を除去することができず、基材層10の除去に多数回のレーザー照射が必要となることで、製造効率の高効率化を実現することができないという問題があった。
また基材層10に多数回のレーザー照射を行っても、ブラインドビアホールBは有底であることから、図6(d)に示すように、特にブラインドビアホールBの内底に依然としてスミアが残り、デスミア工程Jを設ける必要が生じることで、製造効率の高効率化と製造コストの低コスト化とを実現することができないという問題があった。
また熱発泡材80は繰り返し使用が不可能であると共に、価格が高く、構造効率の効率化と製造コストの低コスト化とを実現することができないという問題があった。
【0026】
よって本発明の実施形態の構成とすることで、複数層に形成される導電層を層間導通させてなるフレキシブルプリント配線板の製造方法において、製造効率の高効率化と製造コストの低コスト化とを実現することができると共に、フレキシブルプリント配線板の薄肉化を実現することができる。
【0027】
次に図3〜図5を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法の変形例を説明する。
【0028】
本変形例におけるフレキシブルプリント配線板200の製造方法は、既述した本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板100の製造方法におけるマスクパターン被覆工程D及び凹所形成工程Eの構成を変化させたものである。
その他の構成は、既述した本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板100の製造方法と同一であることから、同一の部材、同一の機能を果たすものには、同一の番号及び同一のアルファベットを付し、以下の詳細な説明は省略するものとする。
【0029】
図3(c)に示すように、本変形例においては、両面導電積層板の他面側(下側)にマスクパターン3を用いて形成する凹所2−aの大きさを、両面導電積層板の一面側(上側)にマスクパターン3を用いて形成する凹所2−aの大きさに含まれる大きさとしてある。
より具体的には、図3(a)に示すように、他面側の凹所2−aの形成基準となる開口部3−aの幅Kを、一面側の凹所2−aの形成基準となる開口部3−aの幅Lに含まれる大きさと(幅Lより小さい大きさ)してある。
なお本変形例においては、他面側の開口部3−aの幅Kを、後にスルーホール形成工程Fで形成したいスルーホールTの幅とするものとする。
【0030】
このような構成とすることで、マスクパターン被覆工程Dにおいては、図3(a)に1点鎖線で示すように、通常一面側及び他面側の開口部3−aの中心が垂直方向に重なるようにマスクパターン3を両面導電積層板の一面側及び他面側に被覆させるところ、図3(b)に示すように、例えば他面側のマスクパターン3が正規の被覆位置(破線で示す)からズレ幅Zの分だけ右側にズレた状態で被覆された場合でも、図3(c)に示すように、凹所形成工程Eにおいて、開口部3−aの幅Kを基準として形成される他面側の凹所2−aの幅Mの大きさを、開口部3−aの幅Lを基準として形成される一面側の凹所2−aの幅Nに含ませることができる。
よって図3(d)に示すように、スルーホール形成工程Fにおいて、レーザー加工手段4を用いてスルーホールTを形成する際、開口部3−aの幅Kと同一の幅である幅Mの大きさのスルーホールTを確実に形成することができる。
【0031】
つまり図5(a)に示すように、両面導電積層板の一面側及び他面側に被覆するマスクパターン3の開口部3−aの幅を同一な幅Oとする場合、マスクパターン被覆工程Dにおいて、例えば両面導電積層板の他面側に被覆するマスクパターン3が、正規の被覆位置(破線で示す)からズレ幅Zの分だけ右側にズレた状態で被覆された場合、図5(b)に示すように、凹所形成工程Eにおいて他面側に形成される凹所2−aは、ズレ幅Zの分だけ右側にズレて形成されることとなる。これにより図5(c)に示すように、スルーホール形成工程Fにおいてレーザー加工を用いて形成されるスルーホールTは、本来形成されるべき幅Pではなく、幅Qの分だけ狭められた幅Rの大きさで形成されることになる。つまりスルーホールTの幅が所望の幅未満に狭められることになる。よってスルーホールTの大きさが所望の大きさより小さくなることで、図示しないめっき層形成工程Gにおいて、めっき層6の形成を十分に行うことができず、電気的な接続信頼性が低下する。
【0032】
これに対し、本変形例の構成とすることで、例えマスクパターン被覆工程Dにおいて、両面導電積層板の一面側及び他面側のそれぞれに被覆するマスクパターン3が、両面導電積層板の一面側若しくは/及び他面側において正規の被覆位置からズレた状態で被覆された場合でも、凹所形成工程Eにおいて形成される凹所2−aの幅が所望の幅未満に狭められることを効果的に防止することができる。よってスルーホール形成工程Fにおいて、一段と確実に所望の大きさのスルーホールTを形成することができる。
従って図4に示すように、めっき層形成工程Gにおいて、めっき層6の形成を十分に行うことができ、電気的な接続信頼性を確保することができると共に、製造効率の高効率化を実現することができるフレキシブルプリント配線板200の製造方法とすることができる。
【0033】
なお本実施形態においては、凹所形成工程Eにおいてエッチングにより凹所2−aを形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。例えば凹所形成工程Eにおいて、レーザー加工により凹所2−aを形成する構成としてもよい。このような構成とすることで、凹所形成工程Eとスルーホール形成工程Fとを、共にレーザー加工で一体的に行うことが可能となり、一段と製造効率の高効率化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、複数層に形成される導電層を層間導通させてなるフレキシブルプリント配線板の製造方法において、製造効率の高効率化と製造コストの低コスト化とを図ることができると共に、フレキシブルプリント配線板の薄肉化を図ることができることから、複数層に形成される導電層を層間導通させてなるフレキシブルプリント配線板の分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0035】
1 基材層
2 導電層
2−a 凹所
3 マスクパターン
3−a 開口部
4 レーザー加工手段
5 遮蔽板
6 めっき層
7 絶縁層
10 基材層
20 導電層
20−a 凹所
30 マスクパターン
30−a 開口部
40 レーザー加工手段
60 めっき層
70 絶縁層
80 熱発泡材
100 フレキシブルプリント配線板
200 フレキシブルプリント配線板
300 フレキシブルプリント配線板
B ブラインドビアホール
C 両面導電積層板準備工程
D マスクパターン被覆工程
E 凹所形成工程
F スルーホール形成工程
G めっき層形成工程
H 絶縁層形成工程
I ブラインドビアホール形成工程
J デスミア工程
K 幅
L 幅
M 幅
N 幅
O 幅
P 幅
Q 幅
R 幅
S スミア
T スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の一面側及び他面側に導電層を積層してなる両面導電積層板を準備する両面導電積層板準備工程と、前記両面導電積層板の一面側と他面側とにマスクパターンを被覆するマスクパターン被覆工程と、前記マスクパターンを用いて前記両面導電積層板の一面側と他面側との対向する位置にそれぞれ前記導電層の一部を除去してなる凹所を形成する凹所形成工程と、該凹所形成工程により前記凹所の位置に露出される前記基材層をレーザー加工を用いて除去することで、前記両面導電積層板にスルーホールを形成するスルーホール形成工程と、該スルーホール形成工程で形成されるスルーホールの一面側若しくは他面側の何れか一方の開口部を遮蔽させた状態で、前記スルーホールの内面及び前記スルーホールの一面側若しくは他面側の残る他方の開口部の周縁部にめっき層を形成するめっき層形成工程とを備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記凹所形成工程において、前記両面導電積層板の他面側に前記マスクパターンを用いて形成する前記凹所の大きさを、前記両面導電積層板の一面側に前記マスクパターンを用いて形成する前記凹所の大きさに含まれる大きさとすることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−248624(P2012−248624A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118228(P2011−118228)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】