説明

フレキシブルプリント配線板の部品実装用搬送治具への位置決め方法および位置決め装置

【課題】個々の片に切断されたフレキシブルプリント配線板を搬送治具に複数固定する際に、高精度で位置決めする方法および装置を提供する。
【解決手段】搬送治具22を装着用治具23の上面に第1の位置決め手段24を介して装着する。この装着用治具23に装着した搬送治具22の上面に第2の位置決め手段26を介してフレキシブルプリント配線板(FPC)11を密着して保持させる。しかる後に、前記FPC11を保持させたまま搬送治具22を装着用治具23から取り外して、第1の位置決め手段24および第2の位置決め手段26との接触を解除し、FPC11を保持した搬送治具22を部品実装工程へ搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブルプリント配線板の部品実装用搬送冶具への位置決め方法および位置決め装置に関するものであり、特に、多数のフレキシブルプリント配線板を搬送冶具へ位置精度よく密着保持させる位置決め方法および位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板などのフィルム状の薄い基板は、柔軟であるため部品実装装置へ直接セットして部品の搭載を行うことができない。このため、金属板や合成樹脂板などで形成された専用の搬送冶具に、個々の片の製品に打ち抜く前のシート状基板を固定して部品実装を行っているが、同一シート内に不適合品が含まれることがあり、不適合箇所の検査を行う必要がある。
【0003】
不適合品の検査には、一製品当たり0.2〜0.5秒を要しており、多数の製品を検査するのに長時間を費やすことになり、大きな損失となる。また、不適合箇所には部品を実装しないため、同一シートに部品を搭載した適合品と部品を搭載しない不適合品が混在することになり、部品実装ラインの効率低下を招いている。
【0004】
個々の片に切断された複数のフレキシブルプリント配線板を搬送冶具に固定すれば、部品実装作業性が向上するが、基板が柔軟で変形しやすいため、個々の製品の位置精度が確保されず、クリームはんだの印刷がずれることがあり、微小部品や狭いピッチの部品では、ショートの発生やはんだ不足、あるいは、はんだの未接続が発生し易い。このように、微少部品や、狭いピッチの部品搭載では歩留まりが悪化し、個々の片に切断された複数のフレキシブルプリント配線板を精度よく固定して部品搭載を行う方法が望まれていた。
【0005】
搬送冶具に複数のフレキシブルプリント配線板を保持させて、部品実装を行う方法としては、位置決め用の基準穴を有する複数の基板の下面と密着する樹脂層が形成されたベース板と、半導体装置のボンディング部が貫通するバックアップ用開口部と、基板の基準穴に挿入されて基板を位置決めする基準ピンが貫通する基準ピン開口部とによってキャリア(搬送冶具)を構成し、該キャリアを位置決めピンによって装着用冶具に位置決めし、前記基準ピンを基準ピン開口部に貫通させて基準穴に挿入し、基準ピンで基板をキャリアに位置決めした状態でキャリアの樹脂層に密着保持させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、フレキシブルプリント配線板における回路配線パターン接続部(フレキシブルベース材と銅箔の回路パターンの両方)に、接続相手方の導電性ピン部材の径より小さな挿通用切り欠きを穿設し、該切り欠きの周辺(表面被覆材と補強板)に前記ピン部材の径より大きな透穴を設け、前記切り欠きを押し広げるように前記ピン部材を挿通して、はんだ付けを行う実装構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−71863号公報
【特許文献2】実開昭61−79567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の発明は、位置決めピンによりキャリアを装着用冶具に位置決めし、基準ピンによって基板をキャリアに位置決めして樹脂層に密着保持させる。この方法によれば、基板の位置決め精度は、位置決めピンの位置精度、基板に開けられた基準穴と回路パターンとの位置精度、基板をキャリアに固定するときの位置ずれを合算した数値となる。
【0008】
この中で最も不安定な要因は、基板をキャリアに固定するときに基準穴の変形により発生する位置ずれである。このずれは、フレキシブルプリント配線板の基本特性である柔らかさが原因となっているものであり、位置決めピンで基板が変形して位置ずれを生じてしまうため、回避することが困難である。上記特許文献1記載の作業では、ずれ量に大きなバラツキを生じてしまい、多数の基板をセットした場合に、基板の位置決め精度が損なわれるおそれが大である。
【0009】
特許文献2記載の発明は、導電性ピン部材が切り欠きを押し広げるように挿通して、ピン部材と接続部との位置合わせをしてはんだ付け処理するが、銅箔を含めた状態で前記切り欠きを押し広げるため、銅箔の組成変形により位置決めの精度を確保できない。はんだ処理では効果があるとしても、多数のフレキシブルプリント配線板の位置決めでは、ずれが発生しやすく高精度がえられない。
【0010】
そこで、本発明は個々の片に切断されたフレキシブルプリント配線板を搬送冶具に複数固定する際に、高精度で位置決めする方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、フレキシブルプリント配線板へ部品を実装する際に使用される搬送冶具であって、該搬送冶具を装着用冶具の上面に第1の位置決め手段を介して装着し、さらに、この装着用冶具に装着した前記搬送冶具の上面に第2の位置決め手段を介して前記フレキシブルプリント配線板を密着して保持させ、しかる後に、前記フレキシブルプリント配線板を保持させたまま前記搬送冶具を装着用冶具から取り外して、前記第1および第2の位置決め手段との接触を解除するフレキシブルプリント配線板の位置決め方法において、上記第2の位置決め手段は、フレキシブルプリント配線板に設けられた基準位置決め穴に、装着用冶具に設けられた前記基準位置決め穴よりも大径の位置決めピンを挿通して、フレキシブルプリント配線板を搬送冶具に位置決めすることを特徴とするフレキシブルプリント配線板の部品実装用搬送冶具への位置決め方法を提供する。
【0012】
この構成によれば、第1の位置決め手段により装着用冶具の上面に搬送冶具を位置決めして装着し、さらに、第2の位置決め手段により前記搬送冶具の上面にフレキシブルプリント配線板を位置決めして密着保持させる。このとき、フレキシブルプリント配線板の基準位置決め穴に装着用冶具に設けた大径の位置決めピンを挿通すると、フレキシブルプリント配線板の弾性変形により、前記基準位置決め穴の中心が位置決めピンの中心に近づいて、第2の位置決め手段の位置決めが行われる。この状態でフレキシブルプリント配線板および搬送冶具を装着用冶具から取り外して、第1および第2の位置決め手段との接触を解除し、搬送冶具にフレキシブルプリント配線板を位置決め保持する。
【0013】
請求項2記載の発明は、フレキシブルプリント配線板へ部品を実装する際に使用される搬送冶具であって、装着用冶具上面の所定位置に前記搬送冶具を装着するための第1の位置決め手段と、前記装着用冶具に装着した前記搬送冶具上面の所定位置にフレキシブルプリント配線板を密着保持させるための第2の位置決め手段とを備え、前記フレキシブルプリント配線板を保持した搬送冶具を、装着用冶具から取り外して前記第1および第2の位置決め手段との接触を解除するフレキシブルプリント配線板の位置決め装置において、上記装着用冶具の上面の所定位置には、第1の位置決め手段の一部を構成する搬送冶具用位置決めピンと、第2の位置決め手段の一部を構成するフレキシブルプリント配線板用位置決めピンを立設し、上記搬送冶具には、前記搬送冶具用位置決めピンに対応する位置に第1の位置決め手段の他の一部を構成する位置決め穴と、前記フレキシブルプリント配線板用位置決めピンに対応する位置に第2の位置決め手段の他の一部を構成する補助位置決め穴を設け、さらに、上記フレキシブルプリント配線板には、前記フレキシブルプリント配線板用位置決めピンおよび前記補助位置決め穴に対応する位置に第2の位置決め手段の他の一部を構成する基準位置決め穴を設け、上記フレキシブルプリント配線板に設けられた基準位置決め穴は、フレキシブルプリント配線板のベースフィルムの穴径を上記フレキシブルプリント配線板用位置決めピンの直径よりも小さく形成し、導体およびカバーフィルムの穴径を上記フレキシブルプリント配線板用位置決めピンの直径よりも大きく形成したことを特徴とするフレキシブルプリント配線板の部品実装用搬送冶具への位置決め装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、第1の位置決め手段の位置決め穴に搬送冶具用位置決めピンを挿通して、装着用冶具上面の所定位置に搬送冶具を位置決めする。これと同時に、第2の位置決め手段の補助位置決め穴にフレキシブルプリント配線板用位置決めピンが挿通されて、搬送冶具の上面からフレキシブルプリント配線板用位置決めピンが突出する。そして、第2の位置決め手段の基準位置決め穴に前記補助位置決め穴から突出しているフレキシブルプリント配線板用位置決めピンを挿通して、搬送冶具上面の所定位置にフレキシブルプリント配線板を密着保持させる。このとき、フレキシブルプリント配線板に設けられた基準位置決め穴のうち、ベースフィルムの穴径がフレキシブルプリント配線板用位置決めピンの直径よりも小さく形成されているので、フレキシブルプリント配線板用位置決めピンを挿通したときに、該フレキシブルプリント配線板用位置決めピンによってベースフィルムの穴が押し広げられる。フレキシブルプリント配線板に設けられた基準位置決め穴のうち、導体およびカバーフィルムの穴径は、フレキシブルプリント配線板用位置決めピンの直径よりも大きく形成されているので、ベースフィルムの変形が妨げられることなく、該ベースフィルムの弾性変形により、前記ベースフィルムの穴の中心すなわち基準位置決め穴の中心がフレキシブルプリント配線板用位置決めピンの中心に近づいて、第2の位置決め手段の位置決めが行われる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上述したように、第1の位置決め手段により装着用冶具の上面に搬送冶具を位置決めして装着し、さらに、第2の位置決め手段により前記搬送冶具の上面にフレキシブルプリント配線板を位置決めして密着保持させる。第2の位置決め手段は、フレキシブルプリント配線板に設けられた基準位置決め穴に、装着用冶具に設けられた前記基準位置決め穴よりも大径のフレキシブルプリント配線板用位置決めピンを挿通して、フレキシブルプリント配線板を搬送冶具に位置決めするため、フレキシブルプリント配線板の弾性変形により、前記基準位置決め穴の中心がフレキシブルプリント配線板用位置決めピンの中心に近づいて、高精度の位置決めが行える。
【0016】
したがって、個々の片に切断された多数のフレキシブルプリント配線板を搬送冶具に位置精度よく密着保持させることができ、位置ずれなどの不適合品の発生をなくすことが可能である。このため、正確に位置決めされた多数のフレキシブルプリント配線板を保持した搬送冶具を部品実装工程へ搬送して、部品実装作業性および効率向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るフレキシブルプリント配線板の部品実装用搬送冶具への位置決め方法および位置決め装置について、好適な実施例をあげて説明する。個々の片に切断されたフレキシブルプリント配線板を搬送冶具に複数固定する際に、高精度で位置決めするという目的を達成するために、本発明はフレキシブルプリント配線板へ部品を実装する際に使用される搬送冶具であって、該搬送冶具を装着用冶具の上面に第1の位置決め手段を介して装着し、さらに、この装着用冶具に装着した前記搬送冶具の上面に第2の位置決め手段を介して前記フレキシブルプリント配線板を密着して保持させ、しかる後に、前記フレキシブルプリント配線板を保持させたまま前記搬送冶具を装着用冶具から取り外して、前記第1および第2の位置決め手段との接触を解除するフレキシブルプリント配線板の位置決め方法において、上記第2の位置決め手段は、フレキシブルプリント配線板に設けられた基準位置決め穴に、装着用冶具に設けられた前記基準位置決め穴よりも大径の位置決めピンを挿通して、フレキシブルプリント配線板を搬送冶具に位置決めすることにより実現した。
【実施例1】
【0018】
図1は外形を打ち抜かれた個々片のフレキシブルプリント配線板(以下FPCという)11の概念図であり、個々の片に打ち抜かれたFPC11には、2箇所以上に基準位置決め穴12が設けられている。図示例では、回路パターン(図示せず)に半導体13をはじめとしてコネクタ14、チップ部品15など、複数の部品が実装されている。
【0019】
前記基準位置決め穴12は後述の第2の位置決め手段26の一部を構成するが、FPC11を構成しているベースフィルムと導体とカバーフィルムを貫通して設けられているが、ベースフィルムの穴と導体およびカバーフィルムの穴とでは、穴径を異にしている。
【0020】
図2はFPCシート10を示し、該FPCシート10には打ち抜かれる前の複数個の製品FPC11が配置されている。この状態で、各々の製品FPCの所定位置に前記基準位置決め穴12をはじめとして各種の穴(図示せず)が穿孔される。また、後述のパターン形成工程もFPCシート10の状態で行う。このように、一括して穴明け加工することにより、パターンとの位置精度を正確に保持することができる。
【0021】
ここで、本発明では、パターン形成前に基準穴を穿孔しているが、基準穴の形成方法はこれに限定されず、例えばパターン形成後に、画像認識によって基準穴を穿孔することもできる。この場合は、画像認識を行うことにより、パターンとの位置精度を確保しながら穿孔することが可能である。
【0022】
図3は前記FPCシート10に感光体塗布やエッチング処理を施して、基準位置決め穴や回路パターンなどを形成する手順を示し、説明の都合上、一個のFPC11のみを表示してパターン形成工程を説明する。
【0023】
同図(a)に示すように、初期状態のFPC11はベースフィルム16の表面に導体17が形成されている。そして、予め決められた2箇所以上の位置に基準位置決め穴12aを穿孔する。該基準位置決め穴12aはベースフィルム16と導体17が同一の穴径で貫通してある。なお、前記基準位置決め穴12a以外の穴加工も、この段階で穿孔しておく。
【0024】
回路パターンを形成するために、同図(b)に示すように、前記導体17の表面にパターニング用感光体18を一定厚さで塗布する。続いて、同図(c)に示すように、前記パターニング用感光体18の表面に露光フィルム19を貼着する。例えばネガティブタイプの露光フィルム19を使用する場合は、基準位置決め穴12aの周囲の領域20の部分だけが露光しないように被蔽し、それ以外の部分は露光させる。また、図示は省略するが、回路パターンの部分も露光するように露光フィルム19が形成されている。
【0025】
前記露光フィルム19を透して露光させた後に、露光フィルム19を剥離して現像すれば、同図(d)に示すように、前記パターニング用感光体18のうち、露光した部分は光と反応して硬化し、露光しなかった基準位置決め穴12aの周囲の領域20が除去されて導体17が露出する。これと同時に、回路パターン以外の領域(図示せず)も、パターニング用感光体18が除去されて導体17が露出する。
【0026】
しかる後に、エッチング処理を行えば、導体17が露出している基準位置決め穴12aの周囲の領域20が、同図(e)に示すように、エッチングにより導体17が除去されて、前記ベースフィルム16の基準位置決め穴12aよりも大径の基準位置決め穴12bが形成される。また、図示しない回路パターン以外の領域も導体17が除去されて、残された導体17にて回路パターンが形成される。
【0027】
エッチング処理が終了した後に前記パターニング用感光体18を剥離すれば、同図(f)に示すように、再び導体17の表面が露出して、前記ベースフィルム16に形成した基準位置決め穴12aと、導体17に形成されたそれよりも大径である基準位置決め穴12bが露出する。また、図示しない回路パターンも露出する。
【0028】
そして、同図(g)に示すように、FPC11の表面にカバーフィルム21を貼着して保護する。該カバーフィルム21には、前記導体17に形成した基準位置決め穴12bと同じ位置に、ほぼ同一穴径の基準位置決め穴12cが形成されている。このように、FPC11の基準位置決め穴12は、ベースフィルムに設けた小径の基準位置決め穴12aと、導体17およびにカバーフィルム21に設けた大径の基準位置決め穴12b,12cから構成される。
【0029】
図4は前記FPC11に設けられた基準位置決め穴12の拡大断面図であり、図5は基準位置決め穴12の拡大平面図である。図4(a)に示すように、ベースフィルム16の片面に回路パターンの導体17が設けられた構成、あるいは、図4(b)に示すように、ベースフィルム16の両面に回路パターンの導体17が設けられた構成の何れの場合であっても、前述したように、ベースフィルム16に設けた基準位置決め穴12aの穴径よりも、導体17およびカバーフィルム21に設けた基準位置決め穴12b,12cの穴径のほうが、0.1mmから2mm大きく形成されている。
【0030】
前記ベースフィルム16に設けた基準位置決め穴12aの穴径は、後述のフレキシブルプリント配線板用位置決めピン(以下FPC用位置決めピンという)29の直径よりも0.01mm〜0.6mm程度小さく形成されており、前記導体17およびカバーフィルム21に設けた基準位置決め穴12b,12cの穴径は、前記FPC用位置決めピン29の直径よりも0.1mmから2mm大きく形成されている。
【0031】
図6は本発明の位置決め装置を示し、符号22はFPC11へ部品を実装するための搬送冶具、23は前記搬送冶具22へ複数のFPC11を位置決めするための装着用冶具である。前記搬送冶具22は、第1の位置決め手段24を介して、前記装着用冶具23の上面の所定位置に装着される。前記搬送冶具22の上面には粘着層25が設けられており、第2の位置決め手段26を介して、複数のFPC11が粘着層25を介して搬送冶具22の上面に密着保持される。前記粘着層25は、粘着性を有する樹脂にて形成され、搬送冶具22上面の全面に亘って設けられているが、各FPC11の装着位置に対応させて、搬送冶具22上面の部分的に粘着層25を設けてもよい。
【0032】
前記第1の位置決め手段24は、装着用冶具23の上面に突設された搬送冶具用位置決めピン27と、前記搬送冶具22(粘着層25を含む、以下同様)において前記搬送冶具用位置決めピン27に対応する位置に設けた位置決め穴28とから構成され、前記第2の位置決め手段26は、装着用冶具23の上面に突設されたフレキシブルプリント配線板用位置決めピン(以下FPC用位置決めピンという)29と、前記搬送冶具22において前記FPC用位置決めピン29に対応する位置に設けた補助位置決め穴30と、前記FPC11において前記FPC用位置決めピン29および補助位置決め穴30に対応する位置に設けた前述の基準位置決め穴12とから構成される。
【0033】
前記装着用冶具23の上面に前記搬送冶具22を装着する場合は、前記第1の位置決め手段24の一部を構成する搬送冶具22の位置決め穴28に前記搬送冶具用位置決めピン27を挿通して、装着用冶具23の上面の所定位置に搬送冶具22を位置決めして装着する。このとき、前記第2の位置決め手段26の一部を構成する搬送冶具22の補助位置決め穴30に前記FPC用位置決めピン29が挿通されて、搬送冶具22の上面からFPC用位置決めピン29が突出する。
【0034】
そして、搬送冶具22の上面にFPC11を装着する場合は、前記第2の位置決め手段26の一部を構成するFPC11の該基準位置決め穴12に、前記搬送冶具22の上面から突出しているFPC用位置決めピン29を挿通して、搬送冶具22の上面の所定位置にFPC11を密着して保持させる。
【0035】
しかる後は、複数のFPC11を密着保持したまま前記搬送冶具22を上昇させ、前記搬送冶具用位置決めピン27から位置決め穴28を抜き出すとともにし、FPC用位置決めピン29から基準位置決め穴12および補助位置決め穴30を抜き出して、第1の位置決め手段24および第2の位置決め手段25との接触を解除して、前記搬送冶具22を装着用冶具23から取り外し、前記FPC11を密着保持したまま該搬送冶具22を部品実装工程へ搬送する。
【0036】
図4および図5にて前述したように、第2の位置決め手段26の一部を構成する前記FPC11に設けた基準位置決め穴12は、ベースフィルム16に設けた基準位置決め穴12aと、導体17に設けた基準位置決め穴12bと、カバーフィルム21に設けた基準位置決め穴12cから構成されている。そして、前記ベースフィルム16に設けた基準位置決め穴12aの穴径は、前記FPC用位置決めピン29の直径よりも0.01mm〜0.6mm程度小さく形成されており、前記導体17およびカバーフィルム21に設けた基準位置決め穴12b,12cの穴径は、前記FPC用位置決めピン29の直径よりも0.1mmから2mm大きく形成されている。
【0037】
したがって、図7に示すように、前記FPC11に設けた基準位置決め穴12にFPC用位置決めピン29を挿入すると、同図(a)に示すように、該FPC用位置決めピン29の先端がベースフィルム16に設けた基準位置決め穴12aに当接して押圧し、同図(b)に示すように、基準位置決め穴12aを押し広げながら挿通される。
【0038】
前記FPC11に設けた基準位置決め穴12のうち、導体17に設けた基準位置決め穴12bとカバーフィルム21に設けた基準位置決め穴12cの穴径は、前記FPC用位置決めピン29の直径よりも大きく形成されているので、前記ベースフィルム16の基準位置決め穴12aが押し広げられて該ベースフィルム16の変形が妨げられることがなく、該ベースフィルム16の弾性変形により、ベースフィルム16の基準位置決め穴12aの中心、すなわち、前記FPC11の基準位置決め穴12の中心がFPC用位置決めピン29の中心に近づいて、第2の位置決め手段の位置決めが行われる。
【0039】
図8はベースフィルム16の両面に回路パターンの導体17が設けられた構成であるが、この場合も図7にて説明した構成と同様に、前記FPC11に設けた基準位置決め穴12にFPC用位置決めピン29を挿入すると、該FPC用位置決めピン29の先端がベースフィルム16に設けた基準位置決め穴12aに当接して押圧し、さらに、基準位置決め穴12aを押し広げながら挿通される。そして、前記ベースフィルム16の弾性変形により、ベースフィルム16の基準位置決め穴12aの中心、すなわち、前記FPC11の基準位置決め穴12の中心がFPC用位置決めピン29の中心に近づいて、第2の位置決め手段の位置決めが行われる。
【0040】
このように、FPC用位置決めピン29をFPC11の基準位置決め穴12へ挿入するときに、FPC11を意識的に変形させることにより、該FPC11が有している弾性力によってFPC用位置決めピン29の中心位置に基準位置決め穴12を近づけることができ、該FPC11を所定位置に位置決めすることが可能となる。また、搬送冶具22の上面に複数のFPC11を固定する際に、それぞれのFPC11の変形応力で各FPC用位置決めピン29が同一位置となる動きをするため、位置精度を確保できる。
【0041】
また、前記FPC11には回路パターン形成前に基準位置決め穴12を穿孔するので、各基準位置決め穴12間の寸法と各FPC用位置決めピン29間の寸法を予め合わせることができ、精度の高い位置決めが可能となる。FPC11に設ける回路パターン形成の位置精度は50μm程度となっているが、本発明の位置決め方法では個々の片のFPC11を搬送冶具22に密着保持したときの位置精度は、前記FPC用位置決めピン29に対して50μm以下であるため、部品の実装には影響しない。
【0042】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る個々片のFPCの概念図。
【図2】本発明に係るFPCシートの説明図。
【図3】本発明に係るFPCシートにおけるパターン形成工程を示す説明図。
【図4】本発明に係るFPCに設けられた基準位置決め穴の拡大断面図。
【図5】本発明に係るFPCに設けられた基準位置決め穴の拡大平面図。
【図6】本発明に係るFPCの位置決め装置を示す説明図。
【図7】本発明に係る片面FPCの基準位置決め穴にFPC用位置決めピンを挿入したときの挙動を示す説明図。
【図8】本発明に係る両面FPCの基準位置決め穴にFPC用位置決めピンを挿入したときの挙動を示す説明図。
【符号の説明】
【0044】
11 フレキシブルプリント配線板(FPC)
12 基準位置決め穴
12a ベースフィルムの基準位置決め穴
12b 導体の基準位置決め穴
12c カバーフィルムの基準位置決め穴
16 ベースフィルム
17 導体
21 カバーフィルム
22 搬送冶具
23 装着用冶具
24 第1の位置決め手段
25 粘着層
26 第2の位置決め手段
27 搬送冶具用位置決めピン(第1の位置決め手段)
28 位置決め穴(第1の位置決め手段)
29 フレキシブルプリント配線板用位置決めピン(FPC用位置決めピン)
(第2の位置決め手段)
30 補助位置決め穴(第2の位置決め手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント配線板へ部品を実装する際に使用される搬送冶具であって、
該搬送冶具を装着用冶具の上面に第1の位置決め手段を介して装着し、さらに、この装着用冶具に装着した前記搬送冶具の上面に第2の位置決め手段を介して前記フレキシブルプリント配線板を密着して保持させ、
しかる後に、前記フレキシブルプリント配線板を保持させたまま前記搬送冶具を装着用冶具から取り外して、前記第1および第2の位置決め手段との接触を解除するフレキシブルプリント配線板の位置決め方法において、
上記第2の位置決め手段は、フレキシブルプリント配線板に設けられた基準位置決め穴に、装着用冶具に設けられた前記基準位置決め穴よりも大径の位置決めピンを挿通して、フレキシブルプリント配線板を搬送冶具に位置決めすることを特徴とするフレキシブルプリント配線板の部品実装用搬送冶具への位置決め方法。
【請求項2】
フレキシブルプリント配線板へ部品を実装する際に使用される搬送冶具であって、
装着用冶具上面の所定位置に前記搬送冶具を装着するための第1の位置決め手段と、前記装着用冶具に装着した前記搬送冶具上面の所定位置にフレキシブルプリント配線板を密着保持させるための第2の位置決め手段とを備え、
前記フレキシブルプリント配線板を保持した搬送冶具を、装着用冶具から取り外して前記第1および第2の位置決め手段との接触を解除するフレキシブルプリント配線板の位置決め装置において、
上記装着用冶具の上面の所定位置には、第1の位置決め手段の一部を構成する搬送冶具用位置決めピンと、第2の位置決め手段の一部を構成するフレキシブルプリント配線板用位置決めピンを立設し、
上記搬送冶具には、前記搬送冶具用位置決めピンに対応する位置に第1の位置決め手段の他の一部を構成する位置決め穴と、前記フレキシブルプリント配線板用位置決めピンに対応する位置に第2の位置決め手段の他の一部を構成する補助位置決め穴を設け、
さらに、上記フレキシブルプリント配線板には、前記フレキシブルプリント配線板用位置決めピンおよび前記補助位置決め穴に対応する位置に第2の位置決め手段の他の一部を構成する基準位置決め穴を設け、
上記フレキシブルプリント配線板に設けられた基準位置決め穴は、フレキシブルプリント配線板のベースフィルムの穴径を上記フレキシブルプリント配線板用位置決めピンの直径よりも小さく形成し、
導体およびカバーフィルムの穴径を上記フレキシブルプリント配線板用位置決めピンの直径よりも大きく形成したことを特徴とするフレキシブルプリント配線板の部品実装用搬送冶具への位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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