説明

フレキシブルプリント配線板及び該フレキシブルプリント配線板の製造方法

【課題】フレキシブルプリント配線板の製造段階において絶縁層を形成する領域に割れ等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができるフレキシブルプリント配線板及び該フレキシブルプリント配線板の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】基材層11と、配線回路12aと、感光性樹脂からなる絶縁層13とからなるフレキシブルプリント配線板10であって、絶縁層13で被覆される絶縁層被覆領域Q1と絶縁層13で被覆されない絶縁層非被覆領域Q2とを備えるものにおいて、フレキシブルプリント配線板10の表面Hに対して垂直方向から見た、絶縁層被覆領域Q1と絶縁層非被覆領域Q2との境界線K1と、絶縁層被覆領域Q1により被覆される配線回路12aの側面12a−1を表す線T2とが交差する交差角度A1〜交差角度A4を鋭角に形成してあるフレキシブルプリント配線板10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂からなる絶縁層を備えるフレキシブルプリント配線板及び該フレキシブルプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型化が進む電子機器の内部に配設されるプリント配線板においては、柔軟性、屈曲性等の特性を備えたフレキシブルプリント配線板が好適に用いられている。
このようなフレキシブルプリント配線板は、絶縁性の樹脂からなる基材層と、基材層上に形成される導電性金属からなる配線回路と、基材層及び配線回路を被覆する絶縁性の樹脂からなる絶縁層とで形成されるものが一般的である。
またこのようなフレキシブルプリント配線板においては、基材層及び配線回路に感光性樹脂を被覆させた後、露光処理、現像処理、硬化処理を経て絶縁層を形成するものがあった。
このようなフレキシブルプリント配線板を示す従来技術として、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−321993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記特許文献1に示すような、感光性樹脂で絶縁層を形成するフレキシブルプリント配線板においては、配線回路の回路方向(配線回路の敷設方向)との関係を考慮することなく絶縁層の端面形状を設計しているものが一般的である。
よって絶縁層の端面形状によっては、フレキシブルプリント配線板の製造段階において(具体的には絶縁層を形成するための現像処理及び硬化処理において)、絶縁層を形成する領域に割れ等の被覆不良が発生するという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、配線回路の回路方向(配線回路の敷設方向)との関係を考慮して感光性樹脂からなる絶縁層の端面形状を設計することで、フレキシブルプリント配線板の製造段階において絶縁層を形成する領域に割れ等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができるフレキシブルプリント配線板及び該フレキシブルプリント配線板の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、基材層と、該基材層上に形成される配線回路と、前記基材層及び前記配線回路を被覆する感光性樹脂からなる絶縁層とからなるフレキシブルプリント配線板であって、前記絶縁層で被覆される絶縁層被覆領域と前記絶縁層で被覆されない絶縁層非被覆領域とを備えるものにおいて、フレキシブルプリント配線板の表面に対して垂直方向から見た、前記絶縁層被覆領域と前記絶縁層非被覆領域との境界線と、前記絶縁層被覆領域により被覆される前記配線回路の側面を表す線とが交差する交差角度を鋭角に形成してあることを第1の特徴としている。
【0007】
上記本発明の第1の特徴によれば、フレキシブルプリント配線板は、基材層と、該基材層上に形成される配線回路と、前記基材層及び前記配線回路を被覆する感光性樹脂からなる絶縁層とからなるフレキシブルプリント配線板であって、前記絶縁層で被覆される絶縁層被覆領域と前記絶縁層で被覆されない絶縁層非被覆領域とを備えるものにおいて、フレキシブルプリント配線板の表面に対して垂直方向から見た、前記絶縁層被覆領域と前記絶縁層非被覆領域との境界線と、前記絶縁層被覆領域により被覆される前記配線回路の側面を表す線とが交差する交差角度を鋭角に形成してあることから、フレキシブルプリント配線板の製造段階において絶縁層を形成する領域に割れ等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができる。よって製造効率が良く、歩留まりの良いフレキシブルプリント配線板とすることができる。
【0008】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記交差角度は、15度以上90度未満であることを第2の特徴としている。
【0009】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記交差角度は、15度以上90度未満であることから、フレキシブルプリント配線板の製造段階において絶縁層を形成する領域に割れ等の被覆不良が発生することを一段と効果的に防止することができる。よって一段と製造効率が良く、歩留まりの良いフレキシブルプリント配線板とすることができる。
【0010】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1又は第2の特徴に加えて、前記交差角度は、30度以上60度未満であることを第3の特徴としている。
【0011】
上記本発明の第3の特徴によれば、上記本発明の第1又は第2の特徴による作用効果に加えて、前記交差角度は、30度以上60度未満であることから、フレキシブルプリント配線板の製造段階において絶縁層を形成する領域に割れ等の被覆不良が発生することを一段と効果的に防止することができる。よって一段と製造効率が良く、歩留まりの良いフレキシブルプリント配線板とすることができる。
【0012】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1〜第3の何れか1つの特徴に加えて、前記配線回路は、複数本からなると共に、配線回路の幅と隣接する配線回路間の間隔との少なくとも何れか一方が20μm以下であることを第4の特徴としている。
【0013】
上記本発明の第4の特徴によれば、上記本発明の第1〜第3の何れか1つの特徴による作用効果に加えて、前記配線回路は、複数本からなると共に、配線回路の幅と隣接する配線回路間の間隔との少なくとも何れか一方が20μm以下であることから、配線回路の微細化や高密度配線化が可能なフレキシブルプリント配線板とすることができる。
【0014】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1〜第4の何れか1つの特徴に加えて、前記絶縁層被覆領域と前記絶縁層非被覆領域との境界線は、波形であることを第5の特徴としている。
【0015】
上記本発明の第5の特徴によれば、上記本発明の第1〜第4の何れか1つの特徴による作用効果に加えて、前記絶縁層被覆領域と前記絶縁層非被覆領域との境界線は、波形であることから、絶縁層被覆領域と絶縁層非被覆領域との境界線と、絶縁層被覆領域に被覆される配線回路の側面とが交差する角度を、配線回路の両側の側面において効率的に鋭角とすることができる。よって一段と製造効率が良く、歩留まりの良いフレキシブルプリント配線板とすることができる。
【0016】
また本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、基材層を形成する基材層形成工程と、前記基材層上に配線回路を形成する配線回路形成工程と、前記基材層及び前記配線回路に感光性樹脂を被覆した後、露光処理、現像処理、硬化処理を経て、絶縁層で被覆される絶縁層被覆領域と絶縁層で被覆されない絶縁層非被覆領域とを形成する絶縁層形成工程とを少なくとも備えると共に、前記絶縁層被覆領域における前記絶縁層非被覆領域との境界部分に割れが生じないようにする手段として、前記絶縁層形成工程においては、フレキシブルプリント配線板の表面に対して垂直方向から見た、前記絶縁層被覆領域と前記絶縁層非被覆領域との境界線と、前記絶縁層被覆領域により被覆される前記配線回路の側面を表す線とが交差する交差角度を鋭角にして絶縁層を形成することを第6の特徴としている。
【0017】
上記本発明の第6の特徴によれば、フレキシブルプリント配線板の製造方法は、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、基材層を形成する基材層形成工程と、前記基材層上に配線回路を形成する配線回路形成工程と、前記基材層及び前記配線回路に感光性樹脂を被覆した後、露光処理、現像処理、硬化処理を経て、絶縁層で被覆される絶縁層被覆領域と絶縁層で被覆されない絶縁層非被覆領域とを形成する絶縁層形成工程とを少なくとも備えると共に、前記絶縁層被覆領域における前記絶縁層非被覆領域との境界部分に割れが生じないようにする手段として、前記絶縁層形成工程においては、フレキシブルプリント配線板の表面に対して垂直方向から見た、前記絶縁層被覆領域と前記絶縁層非被覆領域との境界線と、前記絶縁層被覆領域により被覆される前記配線回路の側面を表す線とが交差する交差角度を鋭角にして絶縁層を形成することから、絶縁層形成工程において、絶縁層被覆領域に割れ等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができる。よって製造効率が良く、歩留まりの良いフレキシブルプリント配線板の製造方法とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフレキシブルプリント配線板によれば、フレキシブルプリント配線板の製造段階において、感光性樹脂からなる絶縁層を形成する領域に割れ等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができる。よって製造効率が良く、歩留まりの良いフレキシブルプリント配線板とすることができる。また配線回路の微細化や高密度配線化が可能なフレキシブルプリント配線板とすることができる。
また本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法によれば、絶縁層形成工程において、感光性樹脂からなる絶縁層を形成する領域に割れ等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができる。よって製造効率が良く、歩留まりの良いフレキシブルプリント配線板の製造方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を示す図で、(a)はフレキシブルプリント配線板の全体を示す平面図、(b)は(a)のa−a線方向における要部の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を簡略化して示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を簡略化して示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を簡略化して示す図で、(a)は露光処理において樹脂層13aの上方にパターンマスク20が配置された状態を示す要部の平面図、(b)は現像処理によって現像された後の基材層11、配線回路12a、樹脂層13aを示す要部の平面図、(c)は(b)のb−b線方向における断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の要部を示す平面図である。
【図6】従来のフレキシブルプリント配線板及び従来のフレキシブルプリント配線板の製造方法を簡略化して示す図で、(a)は従来のフレキシブルプリント配線板の要部を示す平面図、(b)は(a)のc−c線方向における断面図を示す図、従来のフレキシブルプリント配線板の製造段階における現像処理及び硬化処理で樹脂層130aに割れ(クラック)が生じる状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板10及び該フレキシブルプリント配線板10の製造方法を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
【0021】
本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板10は、図1(b)に示すように、基材層11の片面にのみ配線回路12aを設ける、いわゆる片面フレキシブルプリント配線板である。
また図1(a)に示すように、絶縁層13から配線回路12aを露出してなる配線回路露出領域Rを備えるフレキシブルプリント配線板である。この配線回路露出領域Rは、端子部等として利用される。
【0022】
次に図2〜図5も参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板10の製造方法を説明しつつ、フレキシブルプリント配線板10を更に詳細に説明する。
【0023】
図2(a)を参照して、基材層形成工程Dにより、絶縁性樹脂からなる基材層11を形成する。
なお絶縁性樹脂としては、例えばポリイミド、ポリエステル等、フレキシブルプリント配線板の基材層を形成する絶縁性樹脂として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
また特に、柔軟性に加えて高い耐熱性をも有しているものが望ましい。例えばポリアミド系の樹脂や、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系の樹脂や、ポリエチレンナフタレートを好適に用いることができる。
また耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等、フレキシブルプリント配線板の基材層を形成する耐熱性樹脂として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
なお基材層11の厚みは、5μm〜50μm程度とすることが望ましい。
【0024】
次に図2(b)を参照して、配線回路形成工程Eにより、まず基材層11に導電性金属を積層して導電層12を形成する。
この導電層12は、公知の形成方法を用いて形成することができる。例えば基材層11に導電性金属箔をめっきすることで形成することができる(いわゆるアディティブ法)。
なお導電性金属箔としては、銅(Cu)を用いることができる。勿論、銅(Cu)に限るものではなく、フレキシブルプリント配線板の導電層を形成する導電性金属箔として通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。
次に図2(c)を参照して、配線回路形成工程Eにより、導電層12に複数本の配線回路12aを形成する。
より具体的には、導電層12の所定領域(配線回路を形成しない領域)をエッチングにより除去することで配線回路12aを形成する。
なお図1(b)に示す配線回路12aの幅Lは、5μm〜150μm程度とすることが望ましい。また隣接する配線回路12a間の間隔Sは、5μm〜150μm程度とすることが望ましい。より好適には、配線回路12aの幅Lと隣接する配線回路12a間の間隔Sとの少なくとも何れか一方は、5μm以上〜20μm以下であることが望ましい。このような構成とすることで、配線回路12aの微細化や高密度配線化が可能なフレキシブルプリント配線板とすることができる。
また配線回路12aの高さMは、5μm〜35μm程度とすることが望ましい。
なお本実施形態においては、詳細には図示していないが、幅Lと間隔Sとを同一長としてある。
【0025】
次に図2(d)を参照して、絶縁層形成工程Fにおける樹脂層形成処理F1により、基材層11及び配線回路12aの表面に感光性樹脂を被覆することで樹脂層13aを形成する。
より具体的には、本実施形態においては、基材層11及び配線回路12aの表面に液状の感光性ポリイミドを塗布することで、樹脂層13aを形成してある。
なお液状の感光性樹脂としては、感光性ポリイミドに限るものではなく、感光性エポキシ系樹脂、感光性アクリル系樹脂等を用いることができる。
【0026】
次に絶縁層形成工程Fにおける図示しない乾燥処理により、樹脂層13aの溶媒を蒸発させる。
その後、図3(a)を参照して、絶縁層形成工程Fにおける露光処理F2により、露光手段30を用いてパターンマスク20を介して樹脂層13aを露光する。
より具体的には、図4(a)に示すように、プリント配線板10において、絶縁層13で被覆される絶縁層被覆領域Q1(1点斜線で示す)と、絶縁層13で被覆されない絶縁層非被覆領域Q2(主として配線回路12aを露出させて配線回路露出領域Rを形成する領域)とに対応するパターンを備えるパターンマスク20を用いて樹脂層13aを露光する。
なお本実施形態においては、図4(a)に示すように、パターンマスク20のパターン形状を、絶縁層被覆領域Q1と絶縁層非被覆領域Q2との境界線K1が波形となるようなパターン形状としてある。
更に具体的には、図4(b)に示すように、絶縁層被覆領域Q1における絶縁層非被覆領域Q2との境界部分K2に割れが生じないようにする手段として、フレキシブルプリント配線板の表面Hに対して垂直方向から見た、絶縁層被覆領域Q1と絶縁層非被覆領域Q2との境界線K1(後に形成される絶縁層13の端面13−1を表す線T1)と、絶縁層被覆領域Q1により被覆される配線回路12aの両側の側面12a−1を表す線T2とが交差する交差角度A1〜交差角度A4とが鋭角となるような波形のパターンを備えるパターンマスク20を用いて露光を行う構成としてある。
なお、ここで「境界部分K2」とは、「フレキシブルプリント配線板の表面Hに対して垂直方向から見た、境界線K1と、絶縁層被覆領域Q1により被覆される配線回路12aの側面12a−1を表す線T2との交点から配線回路12aの幅方向外側に5μm程度の範囲内の領域」のことを意味するものとする。
また「フレキシブルプリント配線板の表面H」とは、図1、図5に示すように、「フレキシブルプリント配線板10において、配線回路12aが配設されている面」のことを意味するものとする。
また交差角度A1〜交差角度A4の角度は、鋭角であれば配線回路12aの幅L、隣接する配線回路12a間の間隔Sに合わせて適宜変更可能である。が、好適には15度以上90度未満とすることが望ましく、更に好適には30度以上60度以下とすることが望ましい。また配線回路12aの幅方向の両側に形成される交差角度A1と交差角度A2とは(交差角度A3と交差角度A4とは)、同じ角度であってもよいし、異なる角度であってもよい。
また露光処理F2における露光量、露光時間は、適宜変更可能である。が、好適には露光量は200mj/cm〜1500mj/cm程度、露光時間は20秒〜90秒程度とすることが望ましい。
またパターンマスク20は、ポジ型、ネガ型の何れを用いる構成としてもよい。
また波の形状、より具体的には波の振幅、周期等は、配線回路12aの幅L、隣接する配線回路12a間の間隔Sによって適宜変更可能である。なお本実施形態においては、図4(b)に簡略化して示すように、振幅が上下対称な正弦波とすると共に、1本の配線回路12a(1つの配線回路12aの幅L)に1つの波の山を、隣接する配線回路12a間(隣接する配線回路12a間の間隔S)に1つの波の谷を配置する構成としている。
【0027】
次に絶縁層形成工程Fにおける図示しない現像処理において、露光処理F2で露光された樹脂層13aを現像する。
より具体的には、樹脂層13aにおける絶縁層非被覆領域Q2に対応する領域を現像液で溶解除去する。
この処理により、図4(b)に示すように、絶縁層被覆領域Q1と絶縁層非被覆領域Q2とが形成される。
なお現像液としては、有機溶剤、アルカリ水溶液等、フレキシブルブルプリント配線板の絶縁層を形成する感光性樹脂を現像するために通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。が、好適には有機溶剤を用い、現像時間を5分〜15分程度とすることが望ましい。
【0028】
次に図3(b)、図3(c)を参照して、絶縁層形成工程Fにおける硬化処理F3により、現像処理により現像された樹脂層13aを硬化させて絶縁層13を形成する。
より具体的には、現像工程で溶解除去されなかった絶縁層被覆領域Q1を形成する樹脂層13aを熱硬化手段40で熱硬化させる。
なお熱硬化の条件は、適宜変更可能である。が、好適には150℃〜350℃程度の温度雰囲気中で、30分〜10時間程度の加熱処理を行うことが望ましい。
なお絶縁層13の厚みは、3μm〜25μm程度とすることが望ましい。
【0029】
以上の工程を経ることで、図3(c)に示す本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板10が形成される。より具体的には、図5に示すように、フレキシブルプリント配線板10の表面Hに対して垂直方向から見た、絶縁層被覆領域Q1と絶縁層非被覆領域Q2との境界線K1と、絶縁層被覆領域Q1により被覆される配線回路12aの側面12a−1を表す線T2とが交差する交差角度A1〜交差角度A4を鋭角に形成してあると共に、波形の端面13−1を有する絶縁層13を備えるフレキシブルプリント配線板10が形成される。
このように形成されるフレキシブルプリント配線板10は、携帯電話等の各種電子機器の内部に配設される。
【0030】
このような構成からなる本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板10及び該フレキシブルプリント配線板10の製造方法は、以下の効果を奏する。
露光処理F2において用いるパターンマスク20を、フレキシブルプリント配線板10の表面Hに対して垂直方向から見た、絶縁層被覆領域Q1と絶縁層非被覆領域Q2との境界線K1(後に形成される絶縁層13の端面13−1を表す線T1)と、絶縁層被覆領域Q1により被覆される配線回路12aの両側の側面12a−1を表す線T2とが交差する交差角度A1〜交差角度A4とが鋭角となるような波形の境界線K1を備えるパターンマスクとすることで、現像処理(図示しない)及び硬化処理F3において、図4(b)、図4(c)に示す絶縁層被覆領域Q1における絶縁層非被覆領域Q2との境界部分K2に割れ(クラック)等が生じることに起因する被覆不良が発生することを効果的に防止することができる。
つまり現像処理及び硬化処理F3では、樹脂層13aにおいて、現像液を吸うことに伴う膨潤と、その後の乾燥に伴う収縮とが発生する。このような現象に対して交差角度A1〜交差角度A4を鋭角に設計することで、特に絶縁層被覆領域Q1における樹脂層13aの境界部分K2で乾燥に伴う収縮が多方向で発生することを効果的に防止することができ、樹脂層13aの境界部分K2に応力集中が生じることを防止することができる。よって現像処理において絶縁層被覆領域Q1における樹脂層13aの境界部分K2に割れ(クラック)等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができる。
更に硬化処理F3では、樹脂層13aにおいて、イミド前駆体を加熱してイミド化する際に体積収縮が発生する。このような現象に対して交差角度A1〜交差角度A4を鋭角に設計することで、特に絶縁層被覆領域Q1における樹脂層13aの境界部分K2で加熱に伴う収縮が多方向で発生することを効果的に防止することができ、樹脂層13aの境界部分K2に応力集中が生じることを防止することができる。よって硬化処理F3において、絶縁層被覆領域Q1における樹脂層13aの境界部分K2に割れ(クラック)等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができる。
従って製造段階において絶縁層被覆領域Q1の樹脂層13aに割れ等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができ、製造効率が良く、歩留まりの良いフレキシブルプリント配線板及びフレキシブルプリント配線板の製造方法とすることができる。
またこのように配線回路12aの回路方向(配線回路12aの敷設方向)と、現像処理及び硬化処理F3での樹脂層13aの挙動とを考慮してパターンマスク20のパターン設計(絶縁層13の端面形状の設計)を行う構成とすることで、樹脂層13a(絶縁層13)を形成する感光性樹脂の材質そのものを変えることなくパターン設計を変更するだけで、絶縁層被覆領域Q1における樹脂層13aの境界部分K2に被覆不良が発生することを防止することができる。よって製造効率が良く、歩留まりの良いフレキシブルプリント配線板及びフレキシブルプリント配線板の製造方法を省コストで実現することができる。
また図4(a)に示すように、パターンマスク20のパターン形状を、絶縁層被覆領域Q1と絶縁層非被覆領域Q2との境界線K1が波形となるようなパターン形状とすることで、フレキシブルプリント配線板10の表面Hに対して垂直方向から見た、境界線K1と、絶縁層被覆領域Q1に被覆される配線回路12aの両側の側面12a−1を表す線K2とが交差する交差角度A1〜交差角度A4とを容易に鋭角とすることができる。よって一段と製造効率の良いフレキシブルプリント配線板及びフレキシブルプリント配線板の製造方法とすることができる。
更に幅Lと間隔Sとを同一長とし、且つ波の形状を振幅が上下対称な正弦波とすると共に、1本の配線回路12a(1つの配線回路12aの幅L)に1つの波の山を、隣接する配線回路12a間(隣接する配線回路12a間の間隔S)に1つの波の谷を配置する構成とすることで、交差角度A1〜交差角度A4を同じ角度とすることができる。よって絶縁層被覆領域Q1における樹脂層13aの複数の境界部分K2に負荷される応力を均一なものとすることができる。よって高密度配線を施す場合でも、樹脂層13aの複数の境界部分K2で割れ(クラック)等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができる。従って歩留まりの良い高密度配線を実現できるフレキシブルプリント配線板及びフレキシブルプリント配線板の製造方法とすることができる。またパターンマスク20のパターン形成も容易化することができ、一段と製造効率の良いフレキシブルプリント配線板及びフレキシブルプリント配線板の製造方法とすることができる。
【0031】
これに対して従来のフレキシブルプリント配線板及びフレキシブルプリント配線板の製造方法においては、配線回路の回路方向(配線回路の敷設方向)と、現像処理及び硬化処理での樹脂層の挙動とを考慮することなくパターンマスクのパターン設計(絶縁層の端面形状の設計)を行っているものが一般的であった。
例えば図6(a)に示すように、フレキシブルプリント配線板100の表面Hに対して垂直方向から見た、絶縁層被覆領域Q1と絶縁層非被覆領域Q2との境界線K1(絶縁層130の端面130−1を示す線T1)を傾斜させた直線形状とするフレキシブルプリント配線板100があった。
このような構成においては、図6(a)に示すように、交差角度B1及び交差角度B3は鋭角とすることができるものの、交差角度B2及び交差角度B4が鈍角となってしまう。
よって現像処理及び硬化処理において、交差角度B2及び交差角度B4に対応する樹脂層130aの境界部分K2で乾燥に伴う収縮が多方向で発生する。よって交差角度B2及び交差角度B4に対応する樹脂層130aの境界部分K2で応力集中が生じる。従って図6(b)に示すように、現像処理において交差角度B2及び交差角度B4に対応する樹脂層130aの境界部分K2で割れ(クラック)等の被覆不良が発生するという問題があった。
更に硬化処理では、交差角度B2及び交差角度B4に対応する樹脂層130aの境界部分K2でイミド化に伴う収縮が多方向で発生する。よって交差角度B2及び交差角度B4に対応する樹脂層130aの境界部分K2で応力集中が生じる。従って図6(b)に示すように、硬化処理において交差角度B2及び交差角度B4に対応する樹脂層130aの境界部分K2で割れ(クラック)等の被覆不良が発生するという問題があった。
なお従来のフレキシブルプリント配線板100において、既述したフレキシブルプリント配線板10と同一部材、同一機能を果たすものには、上2桁の番号及びアルファベットに同一なものを付し、詳細な説明は省略するものとする。
【0032】
よって本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板10及びフレキシブルプリント配線板10の製造方法の構成とすることで、現像処理及び硬化処理F3において、絶縁層被覆領域Q1における樹脂層13aの境界部分K2に割れ(クラック)等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができる。
従って製造効率が良く、歩留まりの良いフレキシブルプリント配線板及びフレキシブルプリント配線板の製造方法とすることができる。
【0033】
なお本実施形態においては、フレキシブルプリント配線板10を、基材層11の片面にのみ配線回路12aを備える、いわゆる片面フレキシブルプリント配線板とする構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、基材層11の両面に配線回路12aを備える、いわゆる両面フレキシブルプリント配線板とする構成としてもよい。
また本実施形態においては、樹脂層13aを液状の感光性樹脂で形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、基材層11及び配線回路12aにフィルム状の感光性樹脂を貼り付ける構成としてもよい。
また本実施形態においては、絶縁層被覆領域Q1と絶縁層非被覆領域Q2との境界線K1を波形とする構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、フレキシブルプリント配線板100の表面Hに対して垂直方向から見た、境界線K1と絶縁層被覆領域Q1に被覆される配線回路12aの両側の側面12a−1を表す線T2とが交差する交差角度を鋭角にできるものであれば、如何なる形状としてもよい。
また本実施形態においては、基材層11と導電層12と絶縁層13とでフレキシブルプリント配線板10を形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、ステンレス鋼板等の金属板を加えてフレキシャを構成するフレキシブルプリント配線板とする構成としてもよい。
また本実施形態においては、配線回路12aの幅Lと、隣接する配線回路12a間の間隔Sとを同一長とする構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、幅Lと間隔Sとを異なる長さとする構成としてもよい。
またフレキシブルプリント配線板10の形状、配線回路12aの数、配線回路露出領域Rの形成位置等も本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0035】
配線回路12aの幅Lの値、隣接する配線回路12a間の間隔Sの値、フレキシブルプリント配線板10の表面Hに対して垂直方向から見た、絶縁層被覆領域Q1と絶縁層非被覆領域Q2との境界線K1と、絶縁層被覆領域Q1により被覆される配線回路12aの側面12a−1を表す線T2とが交差する交差角度A1の値をそれぞれ変化させてフレキシブルプリント配線板を形成し、絶縁層被覆領域Q1における樹脂層13aの境界部分K2に割れ(クラック)が発生するかどうかを観察した。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1の結果から、交差角度A1を鋭角(30度以上60度以下)にすることで、絶縁層被覆領域Q1における樹脂層13aの境界部分K2に割れ(クラック)が生じることを効果的に防止することができることがわかる。特に配線回路12aの幅Lと隣接する配線回路12a間の間隔Sとを微細なもの(18μm以上20μm以下)とする場合に、絶縁層被覆領域Q1における樹脂層13aの境界部分K2に割れ(クラック)が生じることを効果的に防止することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、絶縁層形成工程において、感光性樹脂からなる絶縁層を形成する領域に割れ等の被覆不良が発生することを効果的に防止することができることから、感光性樹脂からなる絶縁層を備えるフレキシブルプリント配線板の分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0039】
10 フレキシブルプリント配線板
11 基材層
12 導電層
12a 配線回路
12a−1 側面
13 絶縁層
13−1 端面
13a 樹脂層
20 パターンマスク
30 露光手段
40 熱硬化手段
100 フレキシブルプリント配線板
110 基材層
120 導電層
120a 配線回路
120a−1 側面
130 絶縁層
130−1 端面
130a 樹脂層
A1 交差角度
A2 交差角度
A3 交差角度
A4 交差角度
B1 交差角度
B2 交差角度
B3 交差角度
B4 交差角度
C 割れ
D 基材層形成工程
E 配線回路形成工程
F 絶縁層形成工程
F1 樹脂層形成処理
F2 露光処理
F3 硬化処理
K1 境界線
K2 境界部分
L 幅
M 高さ
Q1 絶縁層被覆領域
Q2 絶縁層非被覆領域
R 配線回路露出領域
S 間隔
T1 線
T2 線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層上に形成される配線回路と、前記基材層及び前記配線回路を被覆する感光性樹脂からなる絶縁層とからなるフレキシブルプリント配線板であって、前記絶縁層で被覆される絶縁層被覆領域と前記絶縁層で被覆されない絶縁層非被覆領域とを備えるものにおいて、フレキシブルプリント配線板の表面に対して垂直方向から見た、前記絶縁層被覆領域と前記絶縁層非被覆領域との境界線と、前記絶縁層被覆領域により被覆される前記配線回路の側面を表す線とが交差する交差角度を鋭角に形成してあることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記交差角度は、15度以上90度未満であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記交差角度は、30度以上60度未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記配線回路は、複数本からなると共に、配線回路の幅と隣接する配線回路間の間隔との少なくとも何れか一方が20μm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記絶縁層被覆領域と前記絶縁層非被覆領域との境界線は、波形であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、基材層を形成する基材層形成工程と、前記基材層上に配線回路を形成する配線回路形成工程と、前記基材層及び前記配線回路に感光性樹脂を被覆した後、露光処理、現像処理、硬化処理を経て、絶縁層で被覆される絶縁層被覆領域と絶縁層で被覆されない絶縁層非被覆領域とを形成する絶縁層形成工程とを少なくとも備えると共に、前記絶縁層被覆領域における前記絶縁層非被覆領域との境界部分に割れが生じないようにする手段として、前記絶縁層形成工程においては、フレキシブルプリント配線板の表面に対して垂直方向から見た、前記絶縁層被覆領域と前記絶縁層非被覆領域との境界線と、前記絶縁層被覆領域により被覆される前記配線回路の側面を表す線とが交差する交差角度を鋭角にして絶縁層を形成することを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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