説明

フレキシブルプリント配線板用圧延銅箔

【課題】フォトレジストに紫外線を照射するフォトリソグラフィー工程において、配線パターンへのハレーションを防止することができ、その製造工程を簡略化できるフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔を提供する。
【解決手段】樹脂基板に貼り合わせる圧延銅箔11の表面に紫外線反射防止膜12を形成し、その紫外線反射防止膜12上にフォトレジスト13を形成し、そのフォトレジスト13に紫外線UVを照射して配線パターン13pを形成するためのフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔10において、紫外線に対する反射率が銅よりも低い金属膜を、紫外線反射防止膜12として用いたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板用圧延銅箔に係り、特に、配線パターン形成時のフォトリソグラフィー工程において、紫外線反射(ハレーション)を防止するフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体製造時のフォトリソグラフィー工程にて、配線パターンへの紫外線反射(ハレーション)を防止すべく、反射防止膜をフォトレジスト下の半導体表面に、塗布、CVD方法、スパッタリング方法で形成している。
【0003】
フォトリソグラフィー工程において、フォトレジスト下の下地の金属が紫外線を反射しやすい金属の場合、フォトレジストを通過した紫外線が下地の金属の段差などで斜めに反射され、本来は紫外線が照射されない遮光部分のフォトレジストに作用してしまう(所謂ハレーション現象が生じてしまう)。そこで、紫外線の反射を防止する反射防止膜をフォトレジスト下の下地の金属に形成するようにしている。
【0004】
このハレーションについて図5によりさらに説明する。フォトレジスト13を通過した紫外線UVが下地の金属51の段差Sで斜めに反射され、レチクル14の遮光部14cで紫外線UVが遮光されている部分のフォトレジスト13に作用すると、遮光部分に形成される配線パターン13pの形状が変化する。このとき、形成する配線パターン13pが微細であると、配線パターン13pに断線などの異常が発生し、フォトリソグラフィー工程後のエッチング工程にて、下地の金属51から形成される配線に断線などの異常が発生する。このように、ハレーションは微細な配線パターン13pを断線させるなどの原因となり、フォトリソグラフィー工程における課題となっている。
【0005】
半導体のフォトリソグラフィー工程では、フォトレジスト下に反射防止膜を形成してハレーション防止を行うことにより、配線パターンの異常(パターン欠け、パターン細り、断線など)が少なくなり、より高密度、高微細な配線パターンを形成することが可能になっている。
【0006】
半導体のフォトリソグラフィー工程で使用されている反射防止膜材としては、一般的にTiN、SiON、アモルファス−Si、アモルファス−Cが使用されている。これらの反射防止膜は、枚葉方式でのCVD方式、スパッタリング方式、スピンコーティング方式を使用して形成されている。
【0007】
近年、FPC(Flexible Printed Circuit;フレキシブルプリント配線板)業界においても、高密度、高微細な配線パターンを要求されており、ハレーションによる配線パターンの異常が問題になりつつある。
【0008】
なお、本出願に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4172704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のFPC用圧延銅箔材を使用してFPC製品の製作を行う場合、フォトリソグラフィー工程での配線パターンへのハレーション対策として、圧延銅箔上に反射防止膜を形成するための技術は確立されていない。今後、FPC製品においても半導体製品と同様に、配線パターンの高密度、高微細化が進むと考えられることから、フォトリソグラフィー工程において、ハレーション対策は必須である。
【0011】
また、枚葉方式である半導体の製作工程と違い、圧延銅箔材が巻き状であるFPCの製作工程はロールtoロール方式が一般的である。そのため、FPCの製作工程においては、半導体の製作工程のような枚葉方式での反射防止膜の形成は容易ではなく、TiN、SiON、アモルファス−Si、アモルファス−Cを反射防止膜として使用することは困難である。よって、FPCの製作工程においては、ロールtoロール方式での形成を行うことができる反射防止膜が望ましい。
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、フォトレジストに紫外線を照射するフォトリソグラフィー工程において、配線パターンへのハレーションを防止することができ、その製造工程を簡略化できるフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために創案された本発明は、樹脂基板に貼り合わせる圧延銅箔の表面に紫外線反射防止膜を形成し、その紫外線反射防止膜上にフォトレジストを形成し、そのフォトレジストに紫外線を照射して配線パターンを形成するためのフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔において、紫外線に対する反射率が銅よりも低い金属膜を、紫外線反射防止膜として用いたものである。
【0014】
ニッケル金属膜を紫外線反射防止膜として用いると良い。
【0015】
コバルト金属膜を紫外線反射防止膜として用いても良い。
【0016】
ニッケルコバルト合金膜を紫外線反射防止膜として用いても良い。
【0017】
前記紫外線反射防止膜は、その膜厚が10nm以上100nm以下であると良い。
【0018】
前記紫外線反射防止膜は、微小突起状に形成されても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、紫外線に対する反射率が銅よりも低い金属膜(ニッケル、コバルト、ニッケルコバルト合金膜)を、圧延銅箔の表面に形成する紫外線反射防止膜として用いることで、フォトリソグラフィー工程での配線パターンへのハレーションを防止することができる。また、圧延銅箔の製作時に反射防止膜を同時に形成することで、その製造工程の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔の構造を示す断面模式図である。
【図2】金属膜の紫外線に対する反射率の計測方法を説明する模式図である。
【図3】金属膜に照射した光の反射率を測定した結果を示すグラフ図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔の構造を示す断面模式図であり、(a)は全体図、(b)は拡大図である。
【図5】従来のフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔の構造を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
【0022】
上述のように、枚葉方式で形成されるTiN等を、ロールtoロール方式で形成されることが一般的なフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔(以下、FPC用圧延銅箔)の紫外線反射防止膜として用いるのは容易ではない。
【0023】
本発明者は鋭意検討の結果、紫外線に対する反射率が銅よりも低く、ロールtoロール方式で形成できる金属膜を、紫外線反射防止膜に用いることで、ハレーションによる配線パターンの異常を防止しつつ、その製造工程を簡略化できるとの知見に至った。
【0024】
そこで本発明者は、図2に示すように、各種金属膜の光反射率測定の実験を行って、紫外線に対する反射率が銅よりも低い金属膜の選定を行った。光反射率の測定には分光反射率計21を用い、分光反射率計21から照射した出射光L1に対する金属膜22からの反射光L2の強度比率を反射率として、365nm〜700nmの各光波長領域で求めた。
【0025】
測定する各種金属膜22に用いる材料の選定は、圧延銅箔の製作と同時にロールtoロール方式で容易に形成できる材料を中心に行い、Ag(銀)金属膜、Al(アルミニウム)金属膜、Ni(ニッケル)金属膜を用意した。また比較対象として、圧延銅箔を模したCu(銅)金属膜を用意した。反射率測定用の各金属膜22の膜厚は、30nm〜20μmとした。
【0026】
各金属膜22の反射率を測定した結果を図3及び表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
図3と表1に示すように、光波長400nm以下の紫外線領域で、Ni金属膜の反射率はCu金属膜よりも低くなる。具体的には、光波長365nmではCu金属膜の反射率は46.2%であり、Ni金属膜の反射率は42.2%である。また、光波長400nmではCu金属膜の反射率は47.3%であり、Ni金属膜の反射率は43.2%である。つまり、紫外線に対するNi金属膜の反射率が、Cu金属膜より4%程度低いことが確認された。
【0029】
これにより、Ni金属膜は紫外線反射防止膜として使用できることがわかった。このNi金属膜は、一般的な電解Niめっき方法を用いることでロールtoロールでの形成を容易に行えるため、FPC用圧延銅箔の紫外線反射防止膜として用いるのに好適である。
【0030】
また同様にして、Co(コバルト)金属膜、Ni−Co(ニッケルコバルト)合金膜が、Cu金属膜よりも紫外線の反射率が低いことを確認した。これらCo金属膜、Ni−Co合金膜も、一般的な電解めっき方法を用いてロールtoロールで形成でき、紫外線反射防止膜として用いるのに好適である。
【0031】
次に、本実施の形態のフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔について、図1により説明する。
【0032】
図1に示すように、フレキシブルプリント配線板用圧延銅箔10(以下、FPC用圧延銅箔10という)は、樹脂基板(図示せず)に貼り合わせる圧延銅箔11の表面に、紫外線反射防止膜12として、Ni金属膜、Co金属膜、Ni−Co合金膜を形成したものである。本実施の形態では、フォトレジスト13として、レチクル14の遮光部14cにより紫外線UVを遮光された部分が配線パターン13pとなる、ポジ型のフォトレジスト13を用いる場合について説明する。なお、本発明はネガ型のフォトレジストを用いるFPC用圧延銅箔10にも適用可能である。
【0033】
圧延銅箔11は、FPCの配線を形成するためのものであり、表面側にはフォトレジスト13が形成され、その裏面側はFPCの樹脂基板と貼り合わされる。圧延銅箔11を構成する銅基材料は特に限定されず、FPCの配線として好適な公知の銅基材料から選択できる。
【0034】
本実施の形態では、紫外線UVに対する反射率が銅よりも低い、Ni金属膜、Co金属膜、Ni−Co合金膜のいずれかを、紫外線反射防止膜12として用いる。
【0035】
この紫外線反射防止膜12は、その膜厚が10nm以上100nm以下であると良い。膜厚が10nm未満となると、紫外線UVの一部が紫外線反射防止膜12を通過して圧延銅箔11で反射するようになり、段差Sなどからの配線パターン13pへの反射光が増加して、ハレーションの防止効果が小さくなる。また、膜厚が100nm超となると、FPCの配線として求められる特性(導電率など)が低下する。
【0036】
本実施の形態のFPC用圧延銅箔10は、FPCの一般的な製造工程と同時に、ロールtoロール方式で製造される。例えば、FPC用圧延銅箔10は、電解めっきライン(電解Niめっき浴)などに圧延直後の圧延銅箔11を通過させることで、圧延銅箔11の製造と同時に紫外線反射防止膜12を形成され、ロールtoロール方式で巻き状に製造される。
【0037】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0038】
FPCの配線を形成するためのFPC用圧延銅箔10は、圧延用銅条などを圧延して圧延銅箔11とし、これを電解めっき浴に浸漬して、圧延銅箔11上にNi金属膜、Co金属膜、Ni−Co合金膜のいずれかからなる紫外線反射防止膜12を形成することで、ロールtoロール方式で連続的に製造される。このFPC用圧延銅箔10の粗化面を樹脂基板と貼り合わせ、これにフォトレジスト13の形成、紫外線UVの照射、配線パターン13pの現像、圧延銅箔11のエッチング、を行うことで、FPC製品がロールtoロール方式で連続的に製造される。
【0039】
FPC用圧延銅箔10を製造する際には、Ni金属膜などを紫外線反射防止膜12として用いるので、圧延銅箔11の製造と同時に紫外線反射防止膜12を形成することができる。そのため、圧延用銅条などからFPC用圧延銅箔10をロールtoロール方式で連続的に製造することができ、FPC用圧延銅箔10の製造工程を簡略化することができる。
【0040】
また、FPC製品を製造する際には、圧延銅箔11上に予め紫外線反射防止膜12が形成されているので、枚葉方式のように反射防止膜の形成をフォトレジスト13の形成前に行う必要がない。加えて、FPC用圧延銅箔10の形状は、従来のFPC用圧延銅箔と同じく巻き状とされる。そのため、FPC用圧延銅箔10を既存のFPC製造ラインに適用することが可能となり、FPC製品をロールtoロール方式で連続的に製造することができる。
【0041】
さらに、FPC用圧延銅箔10上にはNi金属膜などからなる紫外線反射防止膜12が形成されるため、配線パターン13pを形成する際、フォトレジスト13を通過した紫外線UVは、下地の銅よりも低い反射率で紫外線反射防止膜12に反射され、ハレーションによる配線パターン13pの異常(パターン欠け、パターン細りなど)が少なくなる。配線パターン13pの異常が少なくなることで、高密度、高微細な(例えば、ライン/スペースの寸法が30μm/30μm以下の)配線パターン13pを形成することが可能となり、高密度の微細配線を有するFPC製品を製造することが可能となる。
【0042】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、種々の変形が可能である。
【0043】
例えば、図4に示すように、紫外線反射防止膜12を、多数の微小突起部12aを有する微小突起状に形成したFPC用圧延銅箔40としても良い。この微小突起部12aの形状及び寸法は特に限定されないが、紫外線反射防止膜12上に形成するフォトレジスト13との密着性や、FPCとして求められる特性(導電率など)を低下させない程度とすることが望ましい。
【0044】
図4(b)の拡大図に示すように、紫外線反射防止膜12の表面を微小突起状に形成したFPC用圧延銅箔40では、照射された紫外線UVが紫外線反射防止膜12内にて反射を繰り返すこととなり、反射を繰り返すうちに紫外線UVが十分に減衰するため、ハレーションを防止する効率が向上する。
【0045】
なお、紫外線反射防止膜12を微小突起状に形成する手段としては、エッチングやブラストによる粗化処理や、粗面ロールを用いての圧延による機械加工などの手段がある。これらの手段は、電解めっき浴などの紫外線反射防止膜12を形成する手段の後段に接続されることで、ロールtoロール方式でのFPC用圧延銅箔40の製造を行いつつ、紫外線反射防止膜12の表面を微小突起状に形成することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 フレキシブルプリント配線板用圧延銅箔(FPC用圧延銅箔)
11 圧延銅箔
12 紫外線反射防止膜
13 フォトレジスト
13p 配線パターン
UV 紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板に貼り合わせる圧延銅箔の表面に紫外線反射防止膜を形成し、その紫外線反射防止膜上にフォトレジストを形成し、そのフォトレジストに紫外線を照射して配線パターンを形成するためのフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔において、
紫外線に対する反射率が銅よりも低い金属膜を、紫外線反射防止膜として用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔。
【請求項2】
ニッケル金属膜を紫外線反射防止膜として用いた請求項1記載のフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔。
【請求項3】
コバルト金属膜を紫外線反射防止膜として用いた請求項1記載のフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔。
【請求項4】
ニッケルコバルト合金膜を紫外線反射防止膜として用いた請求項1記載のフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔。
【請求項5】
前記紫外線反射防止膜は、その膜厚が10nm以上100nm以下である請求項1〜4いずれか記載のフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔。
【請求項6】
前記紫外線反射防止膜は、微小突起状に形成される請求項1〜5いずれか記載のフレキシブルプリント配線板用圧延銅箔。

【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−33805(P2013−33805A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168347(P2011−168347)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】