説明

フレキシブルプリント配線板

【課題】ハンダを介して発光素子を実装するフレキシブルプリント配線板において、発光素子の実装時や発光素子のON−OFF時等における温度昇降時の温度変化によりハンダに加わる応力を緩和できることで、ハンダにクラック等が発生することを防止でき、電気的及び機械的な高接続信頼性を実現できるフレキシブルプリント配線板の提供を課題とする。
【解決手段】基板層11の上面側に、回路部12aを備える導電層12を積層すると共に、基板層11の下面側に、熱伝導率の高い金属材料からなる放熱層13を積層するフレキシブルプリント配線板10であって、回路部12aの一部にハンダ部を介して発光素子部30を実装すると共に、放熱層13の下面側に、温度昇降時の温度変化によりハンダ部20に加わる応力を緩和するための、金属材料からなる応力緩和層14を形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブルプリント配線板に関し、詳しくはハンダを介して発光素子を実装するフレキシブルプリント配線板において、温度昇降時の温度変化によりハンダに加わる応力を緩和できることで、電気的及び機械的な高接続信頼性を実現できるフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力―光変換効率の向上に伴う省エネルギー化が可能で長寿命な発光素子として、発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下LEDとする。)が照明用に利用され始めている。しかしながら効率が向上したと雖も、投入電力の半分近くは熱として消費されているのが事実であり、その熱により効率が低下してしまうため、いかにして熱を逃がしてやるかが課題となっている。
LEDは、その素子自体は0.3〜1mm程度で、セラミック基板に搭載された後に回路基板に実装される場合や、回路基板に直接実装される場合等がある。用いられる基板としては、FR4(Flame Retardant Type 4)等のガラスエポキシ基板やアルミ板上に絶縁レジストを介して回路を形成したメタル配線板、フレキシブルプリント配線板等がある。
上記のうち、FR4等のガラスエポキシ基板は、その構成上、熱伝導率が低く、放熱性能が不十分であるという問題があった。
またメタル配線板は、アルミの熱伝導率が高いため、放熱性能は高いが、一方で熱膨張係数が高いため、ハンダ実装時やLEDのON−OFF時に伴う温度変化の繰り返しでハンダにクラック等が生じるという問題があった。
これに対してフレキシブルプリント配線板は、一般的に熱伝導率が良好な銅を配線層として使用していると共に、配線層とは別に放熱層として銅の層を形成することで、熱をいち早く拡散させることが可能となる。また絶縁層として介在する樹脂層は、樹脂自体の熱伝導率は高くないが、薄肉なため、それほど大きな熱抵抗層とはならない。
よって近年LEDを実装する基板として、フレキシブルプリント配線板を用いるものが一般的である。
このようなLEDを実装するフレキシブルプリント配線板を示すものとして、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−184209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は照明装置に関する発明で、製造工程において、発光ダイオードの3次元的配置作業の自動化を図って生産効率を向上させ、また発光ダイオードの温度上昇に伴ってその発光効率が低下するのを抑制し、より高い光出力を得ることができるメリットがある。
しかし、このようなLEDを実装するフレキシブルプリント配線板においては、従来はハンダを介してLEDを実装するものが一般的であった。
またLEDを搭載するための基台となるセラミック基板と、フレキシブルプリント配線板を構成する放熱層等の導電層とを、熱膨張係数の異なる金属材料で形成するものが一般的であった。
よってハンダの上面側と下面側とで熱膨張係数の異なる金属材料が積層されることで、メタル配線板と同様に、LEDの実装時やLEDのON−OFF時等における温度昇降時の温度変化によってハンダに応力が加わり、クラック等が生じ、電気的及び機械的な接続信頼性を損なう場合があるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記従来技術における問題点を解消し、ハンダを介して発光素子を実装するフレキシブルプリント配線板において、発光素子の実装時や発光素子のON−OFF時等における温度昇降時の温度変化によりハンダに加わる応力を緩和できることで、ハンダにクラック等が発生することを防止でき、電気的及び機械的な高接続信頼性を実現できるフレキシブルプリント配線板の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、基板層の上面側に、回路部を備える導電層を積層すると共に、前記基板層の下面側に、熱伝導率の高い金属材料からなる放熱層を積層するフレキシブルプリント配線板であって、前記回路部の一部にハンダを介して発光素子を実装すると共に、前記放熱層の下面側に、温度昇降時の温度変化によりハンダに加わる応力を緩和するための、金属材料からなる応力緩和層を形成してあることを第1の特徴としている。
【0007】
上記本発明の第1の特徴によれば、基板層の上面側に、回路部を備える導電層を積層すると共に、前記基板層の下面側に、熱伝導率の高い金属材料からなる放熱層を積層するフレキシブルプリント配線板であって、前記回路部の一部にハンダを介して発光素子を実装すると共に、前記放熱層の下面側に、温度昇降時の温度変化によりハンダに加わる応力を緩和するための、金属材料からなる応力緩和層を形成してあることから、温度昇降時の温度変化によりハンダに加わる応力を緩和することができ、ハンダにクラック等が生じることを防止することができる。よって電気的及び機械的な接続信頼性の高いフレキシブルプリント配線板とすることができる。また放熱性の良好なフレキシブルプリント配線板とすることができる。
【0008】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記応力緩和層を形成する金属材料は、前記放熱層を形成する金属材料よりも熱膨張係数が小さい金属材料からなることを第2の特徴としている。
【0009】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記応力緩和層を形成する金属材料は、前記放熱層を形成する金属材料よりも熱膨張係数が小さい金属材料からなることから、温度昇降時の温度変化によりフレキシブルプリント配線板に生じる応力を効果的に調整することができる。
【0010】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1又は第2の特徴に加えて、前記フレキシブルプリント配線板には、屈曲を予定する屈曲部と、屈曲を予定しない非屈曲部とを設けると共に、該非屈曲部にのみ、前記発光素子を実装する回路部と前記応力緩和層とを形成してあることを第3の特徴としている。
【0011】
上記本発明の第3の特徴によれば、上記本発明の第1又は第2の特徴による作用効果に加えて、前記フレキシブルプリント配線板には、屈曲を予定する屈曲部と、屈曲を予定しない非屈曲部とを設けると共に、該非屈曲部にのみ、前記発光素子を実装する回路部と前記応力緩和層とを形成してあることから、柔軟性が良好なフレキシブルプリント配線板とすることができる。
【0012】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第3の特徴に加えて、前記応力緩和層を、前記非屈曲部のうち、前記発光素子を実装する回路部に対応する部分にのみ形成してあることを第4の特徴としている。
【0013】
上記本発明の第4の特徴によれば、上記本発明の第3の特徴による作用効果に加えて、前記応力緩和層を、前記非屈曲部のうち、前記発光素子を実装する回路部に対応する部分にのみ形成してあることから、一段と柔軟性が良好なフレキシブルプリント配線板とすることができる。
【0014】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1〜第4の特徴に加えて、前記応力緩和層を形成する金属材料は、モリブデン、タングステン、鉄の単体若しくはそれらを含む合金のうち、何れか1種からなることを第5の特徴としている。
【0015】
上記本発明の第5の特徴によれば、上記本発明の第1〜第4の特徴による作用効果に加えて、前記応力緩和層を形成する金属材料は、モリブデン、タングステン、鉄の単体若しくはそれらを含む合金のうち、何れか1種からなることから、応力緩和層を、熱膨張係数の小さい層として効率的に形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフレキシブルプリント配線板によれば、ハンダを介して発光素子を実装するフレキシブルプリント配線板において、発光素子の実装時や発光素子のON−OFF時等における温度昇降の温度変化によりハンダに加わる応力を緩和できることで、電気的及び機械的な接続信頼性の高いフレキシブルプリント配線板とすることができる。また柔軟性の良好なフレキシブルプリント配線板とすることができる。また応力緩和層を、熱膨張係数の小さい層として効率的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の要部を示す断面図で、(a)はフレキシブルプリント配線板に発光素子部を実装した状態を示し、(b)は温度昇降時の温度変化によりフレキシブルプリント配線板及び発光素子部に発生する応力を簡略化して示す。
【図2】従来のフレキシブルプリント配線板の要部を示す断面図で、(a)はフレキシブルプリント配線板に発光素子部を実装した状態を示し、(b)は温度昇降時の温度変化によりフレキシブルプリント配線板及び発光素子部に発生する応力を簡略化して示す。
【図3】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を簡略化して示す断面図で、(a)はフレキシブルプリント配線板が電子機器に配設される前の状態を示し、(b)はフレキシブルプリント配線板が電子機器に配設された状態を示す。
【図4】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の変形例を示す断面図で、(a)は変形例1を示す図、(b)は変形例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の図面を参照して、本発明に係るフレキシブルプリント配線板についての実施形態を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
【0019】
まず図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を説明する。
本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板10は、ハンダ部20を介して発光素子部30を実装するフレキシブルプリント配線板であり、図示しない電子機器内部に配設されるものである。
このフレキシブルプリント配線板10は、図1に示すように、基板層11と、導電層12と、放熱層13と、応力緩和層14と、カバーレイ層15とから構成される。
【0020】
前記基板層11は、フレキシブルプリント配線板10の基台となる樹脂層であり、絶縁性の樹脂フィルムで形成されている。
樹脂フィルムとしては、柔軟性に優れた樹脂材料からなるものが使用される。例えばポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等のフレキシブルプリント配線板を形成する樹脂フィルムとして通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。
また、特に、柔軟性に加えて高い耐熱性をも有しているものが望ましい。例えばポリアミド系の樹脂フィルムや、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系の樹脂フィルムやポリエチレンナフタレートを好適に用いることができる。
また耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等、フレキシブルプリント配線板を形成する耐熱性樹脂として通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。
なお基板層11としては、樹脂フィルムの表面に導電性金属からなる導電層を耐熱性接着樹脂等で積層した、いわゆる金属張積層板を用いる構成としてもよい。
【0021】
前記導電層12は、図1に示すように、基板層11の上面側に積層される金属箔層であり、フレキシブルプリント配線板10の回路部12aを形成するためのものである。
本実施形態においては、図示していない回路部を含めた複数の回路部のうち、一部の回路部12aにハンダ部20を介して発光素子31を備える発光素子部30を実装している。より具体的には、図1に示すように、一部の回路部12aの上面をカバーレイ層15で被覆することなく露出状態で配設し、該上面にハンダ部20を介して発光素子部30を実装している。
この回路部12aは、導電層12をエッチングする等の公知の形成方法を用いて形成される。
なお本実施形態においては、導電層12は銅で形成されている。勿論、銅に限るものではなく、フレキシブルプリント配線板の回路を形成する導電性金属として通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。
また導電層12の厚みは、35μm程度とすることが望ましい。
【0022】
前記放熱層13は、図1に示すように、基板層11の下面側に積層される金属箔層であり、主として発光素子部30の実装時や発光素子31のON−OFF時等におけるハンダ部20に加わる熱を放熱させるためのものである。
なお本実施形態においては、放熱層13は、銅で形成されている。勿論、銅に限るものではなく、熱伝導率の高い金属材料であれば如何なるものであってもよい。
また放熱層13の厚みは、70μm程度とすることが望ましい。
【0023】
前記応力緩和層14は、図1に示すように、放熱層13の下面側に積層される金属箔層であり、発光素子部30の実装時や発光素子31のON−OFF時等における温度昇降時の温度変化によりハンダ部20に加わる応力を緩和するためのものである。
この応力緩和層14は、放熱層13を形成する金属材料よりも熱膨張係数が小さい金属材料で形成されている。なお本実施形態においては、モリブデンで応力緩和層14を形成している。
このような構成とすることで、発光素子部30の実装時や発光素子31のON−OFF時等における温度昇降時の温度変化によりハンダ部20に加わる応力を緩和することができ、ハンダ部20にクラック等が生じることを防止することができる。よって電気的及び機械的な接続信頼性の高いフレキシブルプリント配線板10とすることができる。
また応力緩和層14を、高熱伝導、低熱膨張且つ圧延可能なモリブデンで形成することで、熱膨張係数の小さい層として容易且つ効率的に応力緩和層14を形成することができる。
【0024】
つまり図2(a)に示すように、ハンダ部20を介して発光素子部30を実装する従来のフレキシブルプリント配線板40においては、放熱層43と、後述するセラミックパッケージ32とを、熱膨張係数の異なる金属材料で形成するものが一般的であった。より具体的には、放熱層43を銅で形成し、セラミックパッケージ32を窒化アルミニウムで形成するものが一般的であった。
よって放熱層43の熱膨張係数は、セラミックパッケージ32の熱膨張係数よりも大きく、その差も大きいものであった。
従って図2(b)に白抜き矢印で示すように、発光素子部30の実装時や発光素子31のON−OFF時等における温度昇降時において、セラミックパッケージ32の収縮量に比べ、放熱層43の収縮量が大きくなり、フレキシブルプリント配線板40に反り等が発生し、これに伴う応力がハンダ部20に加わることで、ハンダ部20にクラック等が生じ、電気的及び機械的な接続信頼性を損なう場合があった。
なお従来のフレキシブルプリント配線板40において、フレキシブルプリント配線板10と同一部材、同一機能を果たすものには、下一桁の番号及びアルファベットに同一なものを付し、以下詳細な説明は省略するものとする。
【0025】
これに対して本実施形態の構成とすることで、発光素子部30の実装時や発光素子31のON−OFF時等における温度昇降時の温度変化によりフレキシブルプリント配線板10に生じる応力を、効果的に調整することができる。
より具体的には、放熱層13の下面側に、放熱層13を形成する銅よりも熱膨張係数が小さいモリブデンからなる応力緩和層14を形成することで、図1(b)に白抜き矢印で示すように、発光素子部30の実装時や発光素子31のON−OFF時等における温度昇降時において、セラミックパッケージ32の収縮量に比べ、放熱層43の収縮量が大きいものであっても、応力緩和層14により、フレキシブルプリント配線板10の収縮量を、セラミックパッケージ32の収縮量とバランスさせることができる。
よって発光素子部30の実装時や発光素子31のON−OFF時等における温度昇降時の温度変化により、フレキシブルプリント配線板10に反り等が発生することを防止することができる。
従ってハンダ部20の上面側と下面側とで熱膨張係数の異なる金属材料が積層される場合であっても、温度昇降時に熱膨張率の違いに起因してハンダ部20に加わる応力を緩和させることができ、ハンダ部20にクラック等が生じることを効果的に防止できる。よって電気的及び機械的な接続信頼性の高いフレキシブルプリント配線板10とすることができる。
【0026】
なお本実施形態においては、応力緩和層14をモリブデンで形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、放熱層13を形成する金属材料よりも熱膨張係数が小さい金属材料であれば如何なるものであってもよい。が、より好適には、モリブデン、タングステン、鉄の単体若しくはそれらを含む合金のうち、何れか1種で形成することが望ましい。このような構成とすることで、高熱伝導、低熱膨張且つ圧延可能な金属材料で応力緩和層14を形成することができる。よって放熱層13よりも熱膨張係数が小さい層として容易且つ効率的に応力緩和層14を形成することができる。
また応力緩和層14の厚みは、50μm程度とすることが望ましい。
なお図1に示すように、応力緩和層14の下面側には、カバーレイ層15が積層されている。
【0027】
前記カバーレイ層15は、フレキシブルプリント配線板10の絶縁層を形成するものである。
なおカバーレイ層15としては、接着剤付きポリイミドフィルム、感光性レジスト、液状レジスト等を用いることができる。
またカバーレイ層15の厚みは、15〜100μm程度とすることが望ましい。
【0028】
前記ハンダ部20は、フレキシブルプリント配線板10に発光素子部30を固定すると共に、回路部12aと発光素子部30とを電気接続するためのものである。
なおハンダ部20を形成するハンダの厚みは、5〜200μm程度とすることが望ましい。
【0029】
前記発光素子部30は発光素子を搭載する、いわゆる発光素子ユニットであり、図1に示すように、発光素子31と、セラミックパッケージ32と、樹脂モールド33とから構成される。
【0030】
前記発光素子31は、フレキシブルプリント配線板10の回路部12aからのデジタル信号を光信号に変化させて発光する図示しない発光部を備える集積回路である。
なお本実施形態においては、発光素子31として、窒化ガリウムからなる発光ダイオード(LED)を用いている。
勿論、LEDを形成する材料は窒化ガリウムに限るものではなく、発色させる色により、適宜変更可能である。
また図示していないが、発光素子31は、電極及び該電極とハンダ部20とを電気接続する金属ワイヤを備えている。
【0031】
前記セラミックパッケージ32は、発光素子31を搭載するための基台となるセラミック基板である。
なお本実施形態においては、セラミックパッケージ32は窒化アルミニウムで形成されている。勿論、窒化アルミニウムに限るものではなく、発光素子を搭載するセラミック基板を形成する材料として通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。
【0032】
前記樹脂モールド33は、図示しない発光素子31に備える金属ワイヤが断線や腐食といった不具合を生じないようにするための絶縁性の樹脂である。
絶縁性の樹脂としては、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等、いわゆる発光素子ユニットを形成する樹脂モールドとして通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。
【0033】
次にハンダ部20を介して発光素子部30を実装するフレキシブルプリント配線板10の形成方法を説明する。
図3(a)を参照して、まず基板層11の上面に、ハンダ部20との接続部以外がカバーレイ層15で被覆される回路部12aを備えると共に、基板層11の下面に、カバーレイ層15で被覆される放熱層13を備えるフレキシブルプリント配線板10aを用意する。なお図3(a)に示すように、発光素子部30を実装する回路部12aは、フレキシブルプリント配線板10aにおいて、屈曲を予定しない非屈曲部Fにのみ形成される。
そして放熱層13を被覆するカバーレイ層15の下面に、図示しない接着剤を介して、モリブデンからなる応力緩和層14を貼り付け、更に応力緩和層14をカバーレイ層15で被覆する。以上でフレキシブルプリント配線板10が形成される。
そして回路部12aにおいてカバーレイ層15で被覆されない表面に、発光素子部30をハンダ部20を介して実装する。
以上の工程を経ることで、ハンダ部20を介して発光素子部30を実装するフレキシブルプリント配線板10が形成される。
【0034】
勿論、ハンダ部20を介して発光素子部30を実装するフレキシブルプリント配線板10の形成方法は、このような構成に限るものではなく、適宜変更可能である。
また本実施形態においては、放熱層13を被覆するカバーレイ層15の下面に、接着剤を用いて応力緩和層14を貼り付ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、放熱層13を被覆するカバーレイ層15の下面に、応力緩和層14を積層できるものであれば如何なる構成であってもよい。
また回路部12a及び発光素子部30の数、非屈曲部Fにおける配置位置も本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
なお図3においては、便宜上、ハンダ部20及び発光素子部30の大きさをフレキシブルプリント配線板10の大きさよりも小さいものとして図示するものとする。
【0035】
このようにして形成されるハンダ部20を介して発光素子部30を実装するフレキシブルプリント配線板10は、図3(b)に簡略化して示すように、屈曲を予定する屈曲部Kのみが屈曲された状態で図示しない電子機器内部に配設される。
なお図3において、非屈曲部F及び屈曲部Kを示す範囲は、応力緩和層14が積層される、放熱層13を被覆するカバーレイ15の下面を基準として図示するものとする。
【0036】
次に図4を参照して本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板10の変形例1、2を説明する。
まず図4(a)を参照して、本変形例1は、フレキシブルプリント配線板10における応力緩和層14の構成を変化させたものである。その他の構成については、既述した本発明の実施形態を同一であることから、同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号を付し、以下の説明を省略する。
【0037】
図4(a)に示すように、本変形例1においては、発光素子部30を実装する回路部12aと応力緩和層14とを、フレキシブルプリント配線板10において、屈曲を予定しない非屈曲部Fにのみ形成する構成としてある。
このような構成とすることで、ハンダ部20にクラック等が生じることを防止できると共に、柔軟性の良好なフレキシブルプリント配線板10とすることができる。
【0038】
次に図4(b)を参照して、本変形例2は、フレキシブルプリント配線板10における応力緩和層14の構成を変化させたものである。その他の構成については、既述した本発明の実施形態を同一であることから、同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号を付し、以下の説明を省略する。
【0039】
図4(b)に示すように、本変形例2においては、応力緩和層14を、屈曲を予定しない非屈曲部Fのうち、発光素子部30を実装する回路部12aに対応する部分にのみ形成する構成としてある。
このような構成とすることで、ハンダ部20にクラック等が生じることを防止できると共に、一段と柔軟性の良好なフレキシブルプリント配線板10とすることができる。
なお図4においては、便宜上、ハンダ部20及び発光素子部30の大きさをフレキシブルプリント配線板10の大きさよりも小さいものとして図示するものとする。
また図4において、非屈曲部F及び屈曲部Kを示す範囲は、応力緩和層14が積層される、放熱層13を被覆するカバーレイ15の下面を基準として図示するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、ハンダを介して発光素子を実装するフレキシブルプリント配線板において、温度昇降時の温度変化によりハンダに加わる応力を緩和できることで、ハンダにクラック等が生じることを防止することができ、電気的及び機械的な高接続信頼性を実現できることから、ハンダを介して発光素子を実装するフレキシブルプリント配線板を備える電子機器の分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0041】
10 フレキシブルプリント配線板
10a フレキシブルプリント配線板
11 基板層
12 導電層
12a 回路部
13 放熱層
14 応力緩和層
15 カバーレイ層
20 ハンダ部
30 発光素子部
31 発光素子
32 セラミックパッケージ
33 樹脂モールド
40 フレキシブルプリント配線板
41 基板層
42 導電層
42a 回路部
43 放熱層
45 カバーレイ層
F 非屈曲部
K 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板層の上面側に、回路部を備える導電層を積層すると共に、前記基板層の下面側に、熱伝導率の高い金属材料からなる放熱層を積層するフレキシブルプリント配線板であって、前記回路部の一部にハンダを介して発光素子を実装すると共に、前記放熱層の下面側に、温度昇降時の温度変化によりハンダに加わる応力を緩和するための、金属材料からなる応力緩和層を形成してあることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記応力緩和層を形成する金属材料は、前記放熱層を形成する金属材料よりも熱膨張係数が小さい金属材料からなることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記フレキシブルプリント配線板には、屈曲を予定する屈曲部と、屈曲を予定しない非屈曲部とを設けると共に、該非屈曲部にのみ、前記発光素子を実装する回路部と前記応力緩和層とを形成してあることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記応力緩和層を、前記非屈曲部のうち、前記発光素子を実装する回路部に対応する部分にのみ形成してあることを特徴とする請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記応力緩和層を形成する金属材料は、モリブデン、タングステン、鉄の単体若しくはそれらを含む合金のうち、何れか1種からなることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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