説明

フレキシャ及びこれを備えたヘッドサスペンション

【課題】端子部周囲の絶縁層を剥離することなく電気特性を正確に測定することが可能なフレキシャを提供する。
【解決手段】金属基板19上にベース絶縁層21を介して配線パターン23が設けられ配線パターン23の一端側に読み取り・書き込み用のスライダ9が接続され他端側に相互に隣接する複数の外部接続用の端子部27a〜27fを備えたフレキシャ7であって、端子部27a〜27fに対し隣接する端子部よりも近接した位置に設けられベース絶縁層21を貫通する孔部44a〜44fと、該孔部44a〜44fを介して金属基板19を端子部27a〜27f側に露出させた露出部32a〜32fとを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ等の読み取り・書き込み用のヘッド部が取り付けられるフレキシャ及びこれを備えたヘッドサスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD)においては、高速で回転するディスク上をヘッドサスペンションに支持されたヘッド部が僅かに浮上してデータの記録・再生を行う。ヘッドサスペンションには、例えば特許文献1及び2のように、フレキシャが取り付けられてヘッド部を支持するようになっている。
【0003】
フレキシャは、金属基板上に絶縁層を介して配線パターンが設けられ、配線パターンの一端側に読み取り・書き込み用のヘッド部が接続されると共に他端側に外部接続用の複数の端子部を有している。このフレキシャは、端子部がハードディスクドライブの基板側の端子部に対して接続される。これにより、ヘッド部と基板との間の電気的な接続を確保することができる。
【0004】
このようなフレキシャにおいては、近年、ハードディスクドライブの低消費電力化や高速化等に伴い、電気特性を正確に把握することが非常に重要となってきている。
【0005】
フレキシャの電気特性評価としては、例えば、TDR(Time Domain Reflectometry)による特性インピーダンス評価やSパラメータによる伝送損失評価等が行われている。
【0006】
この電気特性評価を正確に行うには、評価用の測定機器をインピーダンス50Ωで正確にキャリブレーションを行い、これを維持することが重要となる。
【0007】
このため、測定機器側では、シグナル側プローブ及びグランド側プローブとの間隔(測定プローブ間隔)が一定の測定プローブを用い、且つフレキシャにGHzオーダーの高周波が流れることから測定プローブ間隔を広いものでも350μm程度に設定する必要がある。
【0008】
これに応じて、フレキシャ側でも、シグナル側プローブの接触ポイントとなる端子部周囲に、グランド側プローブの接触ポイントを確保する必要がある。
【0009】
しかしながら、従来のフレキシャでは、グランド側プローブの接触ポイントについて構造上考慮されておらず、測定サンプルの絶縁層を端子部周囲で剥離して、金属基板を露出させた接触ポイントを形成していた。
【0010】
この結果、従来のフレキシャでは、測定作業性が低下するばかりか、グランド側プローブの接触ポイントの金属面が絶縁層の剥離時に荒れて高価な測定プローブの寿命を悪化させる傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−031915号公報
【特許文献2】特開2007−287280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、フレキシャの電気特性を正確に測定する場合に端子部周囲の絶縁層を剥離する必要があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、フレキシャの端子部周囲の絶縁層を剥離することなく電気特性を正確に測定するために、金属基板上に絶縁層を介して配線パターンが設けられ前記配線パターンの一端側に読み取り・書き込み用のヘッド部が接続され他端側に相互に隣接する少なくとも一対の外部接続用の端子部を備えたフレキシャであって、前記端子部に対して隣接する端子部よりも近接した位置に設けられ前記絶縁層を貫通する開口部と、該開口部を介して前記金属基板を前記端子部側に露出させた露出部とを備えたことを最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、絶縁層の孔部を介して露出した金属基板の露出部を端子部周囲に備えたので、絶縁層等を剥離することなく電気特性の正確な測定を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ヘッドサスペンションの一例を示す概略平面図である(実施例1)。
【図2】(a)は図1のフレキシャの端子形成部を示す拡大平面図、(b)は図1の配線パターンを透過した拡大平面図である(実施例1)。
【図3】図2(a)の要部拡大平面図である(実施例1)。
【図4】図2(a)の要部拡大斜視図である(実施例1)。
【図5】図3のV−V線矢視に係る断面図である(実施例1)。
【図6】フレキシャに対する測定プローブの接触状態の概略を示し、(a)は要部拡大平面図、(b)は要部拡大断面図である(実施例1)。
【図7】フレキシャの端子形成部を示す平面図である(実施例2)。
【図8】図7のVIII−VIII線矢視に係る断面図である(実施例2)。
【図9】フレキシャの端子部形成部を示す平面図である(実施例3)。
【図10】図9のX−X線矢視に係る断面図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
フレキシャの端子部周囲の絶縁層を剥離することなく電気特性を正確に測定するという目的を、相互に隣接する複数の端子部に対し隣接する端子部よりも近接した位置に設けられて絶縁層を貫通する孔部と、この孔部を介して金属基板を端子部側に露出させた露出部とを備えることで実現した。端子部と露出部との間の間隔は、250μm以下に設定するのが好ましい。
【実施例1】
【0017】
[ヘッドサスペンションの概略構成]
図1は、本発明実施例1のヘッドサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【0018】
図1のように、ヘッドサスペンション1は、ロードビーム3と、ベースプレート5と、フレキシャ7とを備えている。
【0019】
ロードビーム3は、読み取り書き込み用のヘッド部としてのスライダ9に負荷荷重を与えるもので、剛体部11とばね部13とを備えている。剛体部11は、例えばステンレス鋼で形成され、その厚みは比較的厚く、例えば100μm程度に設定されている。
【0020】
ばね部13は、剛体部11とは別体に形成されたもので、例えばばね性のある薄いステンレス鋼圧延板からなる。このばね部13は、剛体部11よりもそのばね定数が低く、精度の高い低ばね定数を有している。ばね部13の板厚は、例えば、t=40μm程度に設定されている。ばね部13の一端部は剛体部11の後端部に、他端部はベースプレート5の先端部にレーザ溶接等によって固着されている。
【0021】
ベースプレート5は、ロードビーム3のばね部13を介して剛体部11を支持するものである。このベースプレート5が、キャリッジのアームに取り付けられて軸回りに回転駆動される。
【0022】
フレキシャ7は、ロードビーム3に沿って延設されると共にレーザ溶接等によって取り付けられている。フレキシャ7の先端側にはスライダ9が支持され、基端側はベースプレート5を超えて延設されたテール部15となっている。
【0023】
テール部15の端部は、後述する端子部27a〜27fを備えた端子形成部17となっている。この端子部27a〜27fがハードディスクドライブの基板側端子部(図示せず)に超音波接合やはんだ付け等によって接続され、スライダ9と基板との間の接続を確保する。
[フレキシャの構成]
図2(a)は、図1のフレキシャの端子形成部を示す拡大平面図、図2(b)は、同配線パターンを透過した拡大平面図、図3は、図2(a)の要部拡大平面図、図4は、図2(a)の要部拡大斜視図、図5は、図3のV−V線矢視に係る断面図である。
【0024】
フレキシャ7は、図1〜図5のように、金属基板19上にベース絶縁層21を介して配線パターン23が形成されている。
【0025】
金属基板19は、例えば、ばね性を有する薄いステンレス鋼圧延板(SST)等の導電性薄板で形成されている。金属基板19の積層方向での厚みは、12〜20μm程度に設定されている。
【0026】
ベース絶縁層21は、例えば、可撓性絶縁樹脂であるポリイミドで形成されている。ベース絶縁層21の積層方向での厚みは、5〜15μm程度に設定されている。
【0027】
配線パターン23は、例えば銅等の導電性金属からなり、積層方向での厚みが8〜15μm程度に設定されている。この配線パターン23は、ベース絶縁層21上に設けられたカバー絶縁層24によって被覆されている。
【0028】
カバー絶縁層24は、例えば可撓性絶縁樹脂のポリイミドからなり、積層方向での厚みが1〜5μm程度に設定されている。なお、カバー絶縁層24は省略することも可能である。
【0029】
配線パターン23は、信号伝送用の読み取り用配線及び書き込み用配線並びにスライダ9の微少調整用のヒータ配線やセンサ配線等として機能するものであり、図1及び図2のように、複数のパターン部25a〜25fからなっている。
【0030】
パターン部25a〜25fは、フレキシャ7の先端側から基端側にかけて延設されている。パターン部25a〜25fの先端側はスライダ9に接続され、基端側にはフレキシャ7の端子形成部17上に位置する外部接続用の端子部27a〜27fが各別に設けられている。
【0031】
端子部27a〜27fは、基板側の端子部との接続が行われるものである。また、端子部27a〜27fは、フレキシャ7の電気特性評価の際に、後述する測定プローブ46のシグナル側プローブ48の接触ポイントとなるものである。
【0032】
この端子部27a〜27fは、3対の端子セット28a,28b,28cとして形成されている。端子セット28a,28b,28cは、フレキシャ7の延設方向に位置ずれして配置されている。
【0033】
なお、端子セット28a〜28cは、略同一構成であるため、端子セット28aについて説明し、他の端子セット28b及び28cについては端子セット28aに対する相違部分のみを説明する。また、他の端子セット28b及び28cにおいては、端子セット28aと対応する構成に同符号又は同符号に異なるアルファベットを付する。
【0034】
端子セット28aは、図3〜図5のように、開口部30aと、一対の端子部27a及び27bと、一対の露出部32a,32bとを備えている。
【0035】
開口部30aは、フレキシャ7にエッチング等によって形成されている。この開口部30aは、フレキシャ7の積層方向で金属基板19、ベース絶縁層21、及びカバー絶縁層24にわたって貫通している。
【0036】
開口部30aの平面形状は、フレキシャ7の幅方向縁部で開口した略矩形となっている。なお、端子セット28bでは、開口部30bがフレキシャ7の幅方向中間部に位置して閉じた矩形の平面形状を有している。
【0037】
開口部30aでは、ベース絶縁層21及びカバー絶縁層24での開口縁部21a,24aが略同一形状に形成され、金属基板19での開口縁部19aがベース絶縁層21及びカバー絶縁層24での開口縁部21a,24aよりも大きく形成されている。
【0038】
これにより、ベース絶縁層21及びカバー絶縁層24は、金属基板19の開口縁部19aに対して開口部30a内に突出している。開口部30a内には、幅方向中央部に対する両側に端子部27a及び27bが設けられている。
【0039】
端子部27a,27bは、いわゆるフライングリード型であり、開口部30a上を配線パターン23のパターン部25a,25bの一部が通ることで形成されている。端子部27a,27bでは、パターン部25a,25bの他の部分に対して幅広に設定されている。
【0040】
端子部27a,27bは、フレキシャ7の延設方向に沿って設けられ、所定の間隔を有して相互に略平行に隣接配置されている。端子部27a,27b間には、孔部44a,44bを介してフレキシャ7の端子部27a,27b側に露出する露出部32a,32bが設けられている。
【0041】
孔部44a,44bは、エッチング等によって形成され、フレキシャ7の積層方向でベース絶縁層21及びカバー絶縁層24を貫通している。この孔部44a,44bは、端子部27a,27bに対し、隣接する端子部27b,27aよりも近接した位置に形成されている。
【0042】
本実施例の孔部44a,44bは、開口部30aの幅方向中央部において、開口縁部21a,24aに対向して設けられている。これにより、孔部44a,44bは、端子部27a,27bとの間の間隔が250μm以下に設定されている。
【0043】
孔部44a,44bの平面形状は、相互に対称な略半円であり、開口縁部21a,24aからフレキシャ7の延設方向(放射方向)で凹状に設けられている。なお、端子セット28bの孔部44c,44dでは、略矩形の平面形状となっている。
【0044】
露出部32a,32bは、後述する測定プローブ46のグランド側プローブ50の接触ポイントとして機能するものである。この露出部32a,32bは、それぞれ孔部44a,44bを介して露出する金属基板19からなっている。
【0045】
従って、露出部32a,32bは、孔部44a,44bの形成位置に応じて、端子部27a,27bに対し隣接する端子部27b,27aよりも近接した位置に形成されている。これにより、露出部32a,32bは、端子部27a,27bとの間で、GHzオーダーの高周波を測定可能とする測定プローブ間隔への対応を実現できる。
【0046】
具体的には、露出部32a,32bと端子部27a及び27bとの間の間隔dが、孔部44a,44bの形成位置に応じた250μm以下に設定されている。なお、間隔dは、これに限られず、測定プローブ間隔に応じて適宜設定すればよい。
【0047】
露出部32a,32bの平面形状は、孔部44a,44bに応じて略半円となっている。なお、端子セット28bの露出部32c,32dでは、平面形状が孔部44c,44dに応じた略矩形となっている。
【0048】
この露出部32a,32bは、それぞれ突出部40a,40bを一体に備えている。
【0049】
突出部40a,40bは、露出部32a,32bからフレキシャ7の延設方向に沿って設けられている。この突出部40a,40bにより、露出部32a,32bの面積が拡大されている。
【0050】
突出部40a,40bの先端は、開口部30aの開口縁部21a,24aに対して内側に突出し、端子部27a,27b間に配置されている。これにより、露出部32a,32bは、突出部40a,40bにおいても端子部27a及び27bとの間の間隔が250μm以下に設定されている。
【0051】
突出部40a,40b先端の平面形状は、略半円となっており、露出部32a,32bの平面形状は、全体として略長円又は楕円となっている。なお、端子セット28bの露出部32c,32dでは、突出部40c,40d先端が略矩形の平面形状であり、全体としても略矩形の平面形状となっている。なお、露出部の平面形状は、任意であり、長円形状や矩形形状以外であってもよい。
【0052】
突出部40a,40bの先端間は、フレキシャ7の延設方向で間隔を開けて離反している。このため、突出部40a,40bは、端子部27a及び27bの変位による接触及びそれによる短絡が抑制される。
【0053】
ただし、突出部は、開口部30aを跨いで設け、開口部30a内全域で端子部27a及び27b間に位置する構成としてもよい。また、突出部40a,40bは、省略することも可能である。
[フレキシャの作用]
図6は、フレキシャに対する測定プローブの接触状態の概略を示し、(a)は要部拡大平面図、(b)は要部拡大断面図である。なお、図6では、フレキシャ7の端子セット28a(端子部27a,27b及び露出部32a,32b)での電気特性評価を行う場合を例示している。電気特性評価としては、TDR(Time Domain Reflectometry)による特性インピーダンス評価やSパラメータによる伝送損失評価等が行われる。
【0054】
電気特性評価に用いられる測定プローブ46は、図6のように、シグナル側プローブ48及びグランド側プローブ50を備えている。プローブ48,50間の間隔(測定プローブ間隔D)は、例えば350μm程度の一定となっている。
【0055】
なお、測定プローブ間隔Dは、高周波になるにつれて狭くしないと測定を行わせることができなくなるが、350μm程度であればGHzオーダーの高周波に対する測定が可能となる。
【0056】
また、測定プローブ間隔Dは、350μmよりも狭く設定して測定可能周波数を大きくしてもよい。この場合は、端子部27a,27bと露出部32a,32bとの間隔dも測定プローブ間隔に応じて狭くすればよい。最小測定プローブ間隔は、プローブ製品毎に異なる。
【0057】
かかる測定プローブ間隔Dの設定により、測定プローブ46は、GHzオーダーの高周波に対する測定が可能であると共に、インピーダンス50Ωで正確にキャリブレーションを行ってこれを維持することが可能となる。
【0058】
フレキシャ7の電気特性評価を行う際には、例えばTDRによる特性インピーダンス評価測定の場合、測定プローブ46のシグナル側プローブ48をフレキシャ7の端子部27a(27b)に接触させると共に、グランド側プローブ50を端子部27a(27b)周囲の露出部32a(32b)に接触させる。
【0059】
これにより、測定プローブ46は、シグナル側プローブ48がフレキシャ7の端子部27a(27b)及び配線パターン23のパターン部25a(25b)に導通する。一方、グランド側プローブ50は、露出部32a(32b)を介してフレキシャ7の金属基板19に接地される。
【0060】
このとき、フレキシャ7では、端子部27a(27b)及び露出部32a(32b)間の間隔dが測定プローブ間隔Dに応じた250μm以下に設定されているので、測定プローブ46のシグナル側プローブ48及びグランド側プローブ50を確実に接触させることができる。
【0061】
しかも、露出部32a(32b)は、突出部40a(40b)によって面積が拡大されているため、グランド側プローブ50を確実に接触させることができる。
【0062】
さらに、露出部32a(32b)は、凹状の孔部44a(44b)によってグランド側プローブ50を位置決めることができ、グランド側プローブ50を確実に接触させることができる。結果として、シグナル側プローブ48も端子部27a(27b)に確実に接触させることができる。
【0063】
この状態で、フレキシャ7の電気特性評価のための測定が正確に行われる。
【0064】
このように、フレキシャ7では、露出部32a(32b)により端子部27a(27b)周囲でベース絶縁層21等を剥離することなくグランド側プローブ50の接触ポイントを確保することができる。
【0065】
加えて、フレキシャ7では、露出部32a(32b)と端子部27a(27b)との間隔dが、GHzオーダーの高周波の測定が可能な測定プローブ間隔D=350μmに対応して250μm以下に設定されているので、正確な電気特性評価を行わせることができる。
【0066】
なお、本実施例のフレキシャ7は、TDRによる特性インピーダンス評価測定以外の電気測定にも対応させることができる。例えば、Sパラメータによる差動信号の周波数領域伝達測定や時間領域伝送特性の測定或いはクロストーク特性の測定等を行う場合は、上記TDRの場合に加えて、スライダ9が取り付けられるフレキシャ7先端側においても測定プローブ46の接触を行わせればよい。
【0067】
具体的には、先端側の端子部(図示せず)とその周辺の金属基板19とに、測定プローブ46のシグナル側プローブ48とグランド側プローブ50とを接触させる。
【0068】
この他にも、各種の電気測定に応じてフレキシャ7の先端側や場合によっては中間部においても測定プローブ46の接触を行わせればよい。
[実施例1の効果]
本実施例のフレキシャ7は、金属基板19上にベース絶縁層21を介して配線パターン23が設けられ配線パターン23の一端側に読み取り・書き込み用のスライダ9が接続され他端側に相互に隣接する複数の外部接続用の端子部27a〜27fを備えたフレキシャ7であって、端子部27a〜27fに対し隣接する端子部よりも近接した位置に設けられベース絶縁層21を貫通する孔部44a〜44fと、該孔部44a〜44fを介して金属基板19を端子部27a〜27f側に露出させた露出部32a〜32fとを備えている。
【0069】
従って、フレキシャ7では、露出部32a〜32fにより、端子部27a〜27f周囲でベース絶縁層21等を剥離することなく測定プローブ46のグランド側プローブ50の接触ポイントを確保することができる。
【0070】
しかも、フレキシャ7では、露出部32a〜32fが孔部44a〜44fに応じて端子部27a〜27fに対して隣接する端子部よりも近接した位置に設けられるので、GHzオーダーの高周波の測定が可能な狭い測定プローブ間隔Dに確実に対応させることができる。
【0071】
このため、本実施例のフレキシャ7では、端子部27a〜27f周囲のベース絶縁層21を剥離することなく電気特性の正確な測定を行わせることができる。結果として、本実施例では、測定作業性の向上や測定プローブ46の長寿命化をも図ることができる。
【0072】
また、フレキシャ7では、電気特性評価の際にベース絶縁層21等を剥離しないので、測定サンプルも製品とすることができる。
【0073】
本実施例のフレキシャ7では、露出部32a〜32fと端子部27a〜27fとの間隔dが250μm以下に設定されているので、より確実にGHzオーダーの高周波の測定が可能な測定プローブ間隔Dに対応させることができる。
【0074】
また、フレキシャ7では、露出部32a〜32fが隣接する端子部27a〜27f間に配置されているので、端子部27a〜27fの周囲に確実に露出部32a〜32fを形成できると共に容易に狭い測定プローブ間隔Dに対応可能な構造を実現することができる。
【0075】
また、フレキシャ7は、金属基板19及びベース絶縁層21にわたって貫通形成された開口部30a〜30cを備え、端子部27a〜27fが、開口部30a〜30c上を通る配線パターン23の一部によって形成されたフライングリード型である。
【0076】
従って、フレキシャ7では、露出部32a〜32fを開口部30a〜30c内に位置させることが可能となり、露出部32a〜32fの他部材に対する不用意な接触を抑制できる。
【0077】
孔部44a〜44fは、開口部30a〜30cの開口縁部21a,24aから放射方向で凹状に設けられている。
【0078】
従って、フレキシャ7では、孔部44a〜44fによってグランド側プローブ50を位置決めることができ、グランド側プローブ50を確実に接触させることができる。結果として、シグナル側プローブ48も端子部27a〜27fに確実に接触させることができる。
【0079】
また、露出部32a〜32fは、開口部30a〜30c内に突出する突出部40a〜40fを備えている。このため、フレキシャ7では、接触ポイントの面積を拡大してグランド側プローブ50を確実に接触させることができる。
【0080】
上記フレキシャ7を有するヘッドサスペンション1は、ベースプレート5及び該ベースプレート5に支持されるロードビーム3を備え、フレキシャ7がロードビーム3に支持されている。
【0081】
従って、ヘッドサスペンション1では、フレキシャ7の支持後においても、端子部27a〜27f周囲のベース絶縁層21を剥離することなく電気特性の正確な測定を行わせることができる。
【0082】
この結果、製品としてのヘッドサスペンション1に対する電気特性評価も可能となり、この評価を通じて信頼性の高いヘッドサスペンション1を実現することができる。
【実施例2】
【0083】
図7は、本発明の実施例2に係るフレキシャの端子形成部を示す平面図、図8は、図7のVIII−VIII線矢視に係る断面図である。なお、本実施例では、上記実施例1と基本構成が共通しているため、対応する部分に同符号或いは同符号にAを付して重複した説明を省略する。
【0084】
本実施例は、図7及び図8のように、フレキシャ7Aの端子部27Aa〜27Agを非フライングリード型(以下、「パッド型」と称する)としたものである。
【0085】
すなわち、端子部27Aa〜27Agは、矩形のパッド状であり、フレキシャ7Aの延設方向に対する交差方向に沿って配置されている。この端子部27Aa〜27Agは、隣接間に所定の間隔を有して平行に配置されている。
【0086】
端子部27Aa〜27Agの表側は、カバー絶縁層24Aに設けられた開口部52を介して外部に露出している。この端子部27Aa〜27Agの表側には、ハードディスクドライブの基板側の端子部が導電性接着剤等の導電性部材を介して導通接続される。
【0087】
端子部27Aa〜27Agの裏側は、ベース絶縁層21A及び金属基板19Aによって支持されている。裏側のベース絶縁層21Aは、端子部27Aa〜27Agの裏側からその周辺を囲む部分にかけて連続している。
【0088】
従って、端子部27Aa〜27Agを支持するベース絶縁層21A及び金属基板19Aは、その支持強度に影響する範囲内にフライングリード型のような開口や孔を有しておらず、端子部27Aa〜27Agを確実に支持することができる。
【0089】
端子部27Aa〜27Agに対しては、それぞれ隣接する端子部よりも近接した位置に露出部32Aa〜32Agが形成されている。
【0090】
本実施例の露出部32Aa〜32Agは、それぞれ端子部27Aa〜27Agに対してフレキシャ7Aの延設方向前方側に位置している。これにより、露出部32Ab〜32Agが、少なくとも端子部27Aa〜27Agの隣接間に設けられている。
【0091】
この露出部32Aa〜32Agは、実施例1同様、ベース絶縁層21Aに形成された孔部44Aa〜44Agを介して金属基板19Aが露出して形成されている。露出部32Aa〜32Agは、孔部44Aa〜44Agに応じて端子部27Aa〜27Agよりも小さい略矩形形状であり、端子部27Aa〜27Agに平行に配置されている。
【0092】
露出部32Aa〜32Agと端子部27Aa〜27Agとの各間の間隔は、実施例1同様に250μm以下に設定されている。
【0093】
従って、本実施例においても、上記実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0094】
加えて、本実施例のフレキシャ7Aでは、端子部27Aa〜27Agが、その裏側から周辺を囲む部分にかけて連続するベース絶縁層21A上に形成されたパッド型である。
【0095】
このため、フレキシャ7Aでは、端子部27Aa〜27Agの強度を向上して測定プローブ46のシグナル側プローブ48を確実に接触させることができ、電気特性の測定を安定して行わせることができる。
【0096】
また、金属基板19Aが、ベース絶縁層21Aに沿って連続して形成されているので、端子部27Aa〜27Agの強度をより向上して電気特性の測定をより安定して行わせることができる。
【実施例3】
【0097】
図9は、本発明の実施例3に係るフレキシャの端子形成部を示す平面図、図10は、図9のX−X線矢視に係る断面図である。なお、本実施例では、上記実施例2と基本構成が共通しているため、対応する部分に同符号或いは同符号にBを付して重複した説明を省略する。
【0098】
本実施例は、図9及び図10のように、フレキシャ7Bの端子部27Ba〜27Bgの裏側で金属基板19Bに裏側開口部54a〜54fを設けたものである。
【0099】
すなわち、裏側開口部54a〜54fは、それぞれエッチング等により端子部27Ba〜27Bg裏側の金属基板19Bを除去することで形成されている。これにより、金属基板19Bは、端子部27Ba〜27Bg裏側を避けて位置するようになっている。裏側開口部54a〜54fの周囲には、ベース絶縁層21Bの孔部44Ba〜44Bgに臨む延設部56a〜56fが設けられている。
【0100】
延設部56aは、金属基板19bの本体部58に一体に設けられている。延設部56b〜56fは、本体部58に対して櫛歯状に形成され、フレキシャ7Bの延設方向に対する交差方向に沿っている。本実施例では、この延設部56a〜56fにより、露出部32Ba〜32Bgが形成されている。
【0101】
かかる本実施例においても、上記実施例2と同様の作用効果を奏することができる。
【0102】
加えて、本実施例では、端子27Ba〜27Bgの裏側で金属基板19Bに裏側開口部54a〜54fが設けられているので、端子27Ba〜27Bgと金属基板19Bとの間の寄生容量を低減して配線パターン23の電気特性を向上することができる。
[その他]
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種の変更が可能である。
【0103】
例えば、各実施例の露出部は、隣接する端子部間に少なくとも1つ設けて共用する構成としてもよい。
【0104】
また、実施例1では、孔部44a〜44fを開口部30a〜30cに対して凹状に設けていたが、これを省略してもよい。この場合は、開口部30a〜30cを孔部として機能させ、突出部40a〜40fを露出部とすればよい。
【0105】
また、実施例1では、開口部30a〜30cとは別に孔部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 ヘッドサスペンション
3 ロードビーム
5 ベースプレート
7,7A,7B フレキシャ
9 スライダ(ヘッド部)
19,19A,19B 金属基板
21,21A,21B ベース絶縁層(絶縁層)
23 配線パターン
25a〜25f パターン部
27a〜27f,27Aa〜27Ag,27Ba〜27Bg 端子部
30a,30b,30c 開口部
32a〜32f,32Aa〜32Ag,32Ba〜32Bg 露出部
40a〜40f 突出部
44a〜44f,44Aa〜44Ag,44Ba〜44Bg 孔部
54a〜54g 裏側開口部
56a〜56f 延設部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板上に絶縁層を介して配線パターンが設けられ前記配線パターンの一端側に読み取り・書き込み用のヘッド部が接続され他端側に相互に隣接する複数の外部接続用の端子部を備えたフレキシャであって、
前記端子部に対し隣接する端子部よりも近接した位置に設けられ前記絶縁層を貫通する孔部と、
該孔部を介して前記金属基板を前記端子部側に露出させた露出部と、
を備えたことを特徴とするフレキシャ。
【請求項2】
請求項1記載のフレキシャであって、
前記露出部と前記端子部との間の間隔が、250μm以下に設定された、
ことを特徴とするフレキシャ。
【請求項3】
請求項1記載のフレキシャであって、
前記露出部は、少なくとも前記隣接する端子部間に配置された、
ことを特徴とするフレキシャ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のフレキシャであって、
前記金属基板及び絶縁層にわたって貫通形成された開口部を備え、
前記端子部は、前記開口部上を通る前記配線パターンの一部によって形成されたフライングリード型である、
ことを特徴とするフレキシャ。
【請求項5】
請求項4記載のフレキシャであって、
前記孔部は、前記開口部の開口縁部から放射方向で凹状に設けられた、
ことを特徴とフレキシャ。
【請求項6】
請求項4又は5記載のフレキシャであって、
前記露出部は、前記開口部内に突出する突出部を備えた、
ことを特徴とするフレキシャ。
【請求項7】
請求項1〜3の何れかに記載のフレキシャであって、
前記端子部は、その裏側から周辺を囲む部分にかけて連続する前記絶縁層上に形成されたパッド型である、
ことを特徴とするフレキシャ。
【請求項8】
請求項7記載のフレキシャであって、
前記金属基板は、前記絶縁層に沿って連続して形成された、
ことを特徴とするフレキシャ。
【請求項9】
請求項7記載のフレキシャであって、
前記金属基板は、前記端子部の裏側に設けられた裏側開口部を備えると共に該裏側開口部の周囲に設けられて前記絶縁層の孔部に臨む延設部を備えた、
ことを特徴とするフレキシャ。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載のフレキシャを備えたヘッドサスペンションであって、
ベースプレート及び該ベースプレートに支持されるロードビームを備え、
前記フレキシャが前記ロードビームに支持された、
ことを特徴とするヘッドサスペンション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−185868(P2012−185868A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46364(P2011−46364)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】